特許第6290045号(P6290045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290045
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20180226BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G07D9/00 410B
   G07D1/00GBB
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-179320(P2014-179320)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-53826(P2016-53826A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】307003777
【氏名又は名称】株式会社日本コンラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100140165
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】近 藤 真 史
(72)【発明者】
【氏名】片 桐 良 二
(72)【発明者】
【氏名】片 桐 直 己
(72)【発明者】
【氏名】八 巻 昌 明
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−198835(JP,A)
【文献】 特開昭62−256191(JP,A)
【文献】 特開2013−37424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された硬貨の金種を識別する硬貨識別手段と、前記硬貨識別手段によって識別された硬貨を金種別に振り分ける硬貨振分手段と、前記硬貨振分手段によって振り分けられた硬貨を金種ごとに収納する複数のコインチューブと、前記コインチューブに収納された硬貨をペイアウトスライドによって引き出す払出動作によって払い出す硬貨払出手段とを有する硬貨処理装置であって、
特定金種について、1回の前記払出動作において2枚の硬貨が引き出される2枚払出用コインチューブと、1回の前記払出動作において1枚の硬貨が引き出される1枚払出用コインチューブと、
前記特定金種の硬貨が装置本体に投入される頻度を表す変数と、前記特定金種の硬貨の前記2枚払出用コインチューブ及び前記1枚払出用コインチューブへの振り分けの実績を表す変数と、前記特定金種の硬貨の前記2枚払出用コインチューブ及び前記1枚払出用コインチューブからの払い出しの実績を表す変数と、を含むロケーション情報を記憶するための手段であるロケーション情報記憶手段と、を有し、
前記ロケーション情報を、少なくとも、前記硬貨振分手段が前記特定金種の硬貨を振り分けるときのコインチューブの決定と、前記硬貨払出手段が前記特定金種の硬貨を払い出すときのコインチューブの決定と、のいずれかのために使用する
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の硬貨処理装置であって、
前記1枚払出用コインチューブの硬貨収納枚数が十分である通常状態においては、
前記硬貨振分手段は、投入された前記特定金種の硬貨を、前記ロケーション情報から前記2枚払出用コインチューブと前記1枚払出用コインチューブとの両方を利用した払い出しを行うことが可能な販売回数が長くなると予測されるように選択された前記コインチューブへ振り分ける
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の硬貨処理装置であって、
前記1枚払出用コインチューブの硬貨収納枚数が十分である通常状態においては、
前記硬貨払出手段は、前記特定金種の硬貨を、前記払出動作の回数が最小となるように選択された前記コインチューブから払い出し、前記払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、前記ロケーション情報から前記2枚払出用コインチューブと前記1枚払出用コインチューブとの両方を利用した払い出しを行うことが可能な販売回数が長くなると予測されるように選択されたパターンにしたがって払い出す
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載の硬貨処理装置において、
前記各コインチューブの硬貨収納枚数が所定枚数以下となったことを検知する硬貨検知手段を有し、
前記硬貨検知手段が前記1枚払出用コインチューブの1つ以上において硬貨収納枚数が所定枚数以下となったことを検知してない場合は、前記通常状態とする
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項5】
硬貨を金種ごとに収納する複数のコインチューブと、前記コインチューブに収納された硬貨をペイアウトスライドによって引き出す払出動作によって払い出す硬貨払出手段とを有する硬貨払出装置であって、
特定金種について、1回の前記払出動作において2枚の硬貨が引き出される2枚払出用コインチューブと、1回の前記払出動作において1枚の硬貨が引き出される1枚払出用コインチューブと、
少なくとも前記特定金種の硬貨の前記2枚払出用コインチューブ及び前記1枚払出用コインチューブからの払い出しの実績を表す変数を含むロケーション情報を記憶するための手段であるロケーション情報記憶手段と、を有し、
前記ロケーション情報を前記硬貨払出手段が前記特定金種の硬貨を払い出すときのコインチューブの決定のために使用する
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動販売機、両替機、精算機、券売機、サービス機器等(以下、「自動販売機等」という。)に搭載される硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動販売機等の内部には、投入硬貨の正偽を判別するとともに、正貨とみなされた投入硬貨を金種毎に選別収納し、さらに選別収納された硬貨を釣銭等の額に応じて払い出す硬貨処理装置が搭載されている。図14は、このような硬貨処理装置の概略図である。
【0003】
この硬貨処理装置1は、大別すると、投入硬貨の正偽を判別するとともに投入硬貨を金種別に振り分けるための硬貨選別装置2と、硬貨選別装置2により振り分けられた投入硬貨を金種毎に収納してそこから釣銭等の額に応じた硬貨を選択して払い出すための硬貨払出装置3とから構成されている。そして、硬貨選別装置2は、投入硬貨の正偽及び金種を判別するための硬貨識別手段4と、この硬貨識別手段4が真正硬貨とみなした硬貨を金種別に振り分ける硬貨振分手段5とを有している。また、硬貨払出装置3は、硬貨選別装置2により金種毎に振り分けられた硬貨をそれぞれ金種毎に収納する複数のコインチューブ6と、この複数のコインチューブ6から釣銭等の額に応じた硬貨を選択して払い出すための硬貨払出手段7とを有している。この硬貨払出手段7としては、コインチューブ6に収納された硬貨を、コインチューブ6の最下部に開口したスリット状の孔から、ペイアウトスライドと称されているスライド部材によって一枚ずつ引き出すことにより硬貨を払い出すものが広く採用されている。このペイアウトスライドには、それぞれのコインチューブ6の最下部に対応する部分に、硬貨収容孔が設けられており、この硬貨収容孔に収まった硬貨が引き出されるものとなっている。そして、この硬貨払出手段7は、チェンジスライドと称されているスライド部材によって、ペイアウトスライドの硬貨収容孔に収まった硬貨の下面支持とその解除を選択的に行うことによって、引き出された硬貨の払い出しと非払い出しを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−262426号公報
【特許文献2】特開2013−37424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬貨処理装置においては、硬貨の払出処理を可能な限り短時間で行いたいという一般的な要求が存在する。そして、硬貨の払出処理を短時間で行うためには、払出動作自体を高速化する方法が考えられるが、払出動作自体を高速化する方法では、硬貨の詰まりなどの弊害が生じやすく、著しい高速化は困難である。
【0006】
本発明は、上記の弊害を発生させることなく硬貨の払出処理を高速化することができる硬貨処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の硬貨処理装置は、投入された硬貨の金種を識別する硬貨識別手段と、前記硬貨識別手段によって識別された硬貨を金種別に振り分ける硬貨振分手段と、前記硬貨振分手段によって振り分けられた硬貨を金種ごとに収納する複数のコインチューブと、前記コインチューブに収納された硬貨をペイアウトスライドによって引き出す払出動作によって払い出す硬貨払出手段とを有する硬貨処理装置であって、特定金種について、1回の前記払出動作において2枚の硬貨が引き出される2枚払出用コインチューブと、1回の前記払出動作において1枚の硬貨が引き出される1枚払出用コインチューブと、前記特定金種の硬貨が装置本体に投入される頻度を表す変数と、前記特定金種の硬貨の前記2枚払出用コインチューブ及び前記1枚払出用コインチューブへの振り分けの実績を表す変数と、前記特定金種の硬貨の前記2枚払出用コインチューブ及び前記1枚払出用コインチューブからの払い出しの実績を表す変数と、を含むロケーション情報を記憶するための手段であるロケーション情報記憶手段と、を有し、前記ロケーション情報を、少なくとも、前記硬貨振分手段が前記特定金種の硬貨を振り分けるときのコインチューブの決定と、前記硬貨払出手段が前記特定金種の硬貨を払い出すときのコインチューブの決定と、のいずれかのために使用することを特徴とする。
【0008】
請求項2の硬貨処理装置は、請求項1に記載の硬貨処理装置であって、前記1枚払出用コインチューブの硬貨収納枚数が十分である通常状態においては、前記硬貨振分手段は、投入された前記特定金種の硬貨を、前記ロケーション情報から前記2枚払出用コインチューブと前記1枚払出用コインチューブとの両方を利用した払い出しを行うことが可能な販売回数が長くなると予測されるように選択された前記コインチューブへ振り分けることを特徴とする。
【0009】
請求項3の硬貨処理装置は、請求項1に記載の硬貨処理装置であって、前記1枚払出用コインチューブの硬貨収納枚数が十分である通常状態においては、前記硬貨払出手段は、前記特定金種の硬貨を、前記払出動作の回数が最小となるように選択された前記コインチューブから払い出し、前記払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、前記ロケーション情報から前記2枚払出用コインチューブと前記1枚払出用コインチューブとの両方を利用した払い出しを行うことが可能な販売回数が長くなると予測されるように選択されたパターンにしたがって払い出すことを特徴とする。
【0010】
請求項4の硬貨処理装置は、請求項2又は請求項3のいずれかに記載の硬貨処理装置において、前記各コインチューブの硬貨収納枚数が所定枚数以下となったことを検知する硬貨検知手段を有し、前記硬貨検知手段が前記1枚払出用コインチューブの1つ以上において硬貨収納枚数が所定枚数以下となったことを検知してない場合は、前記通常状態とすることを特徴とする。
【0011】
請求項5の硬貨払出装置は、硬貨を金種ごとに収納する複数のコインチューブと、前記コインチューブに収納された硬貨をペイアウトスライドによって引き出す払出動作によって払い出す硬貨払出手段とを有する硬貨払出装置であって、特定金種について、1回の前記払出動作において2枚の硬貨が引き出される2枚払出用コインチューブと、1回の前記払出動作において1枚の硬貨が引き出される1枚払出用コインチューブと、少なくとも前記特定金種の硬貨の前記2枚払出用コインチューブ及び前記1枚払出用コインチューブからの払い出しの実績を表す変数を含むロケーション情報を記憶するための手段であるロケーション情報記憶手段と、を有し、前記ロケーション情報を前記硬貨払出手段が前記特定金種の硬貨を払い出すときのコインチューブの決定のために使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬貨の払出処理を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の硬貨処理装置のブロック図である。
図2】本発明の実施形態の硬貨処理装置の概略図である。
図3】本発明の実施形態の硬貨処理装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態の硬貨処理装置の振分処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態の硬貨処理装置の500W(50W)振分処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態の硬貨処理装置の100W振分処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態の硬貨処理装置の払出処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態の硬貨処理装置の払出チューブ決定処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態の硬貨処理装置の500W(50W)払出チューブ決定処理の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態の硬貨処理装置の100W払出チューブ決定処理の流れを示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態の硬貨処理装置の投入金クリア処理の流れを示すフローチャートである。
図12】本発明の実施形態の硬貨払出装置のブロック図である。
図13】本発明の実施形態の硬貨払出装置の概略図である。
図14】従来の硬貨処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の1つを図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1のブロック図であり、図2は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の概略図であって、硬貨処理装置1の断面を模式的に表したものである。この実施形態の硬貨処理装置1の構造は、以下で説明する部分を除いて、前述した従来の硬貨処理装置の構造と同様である。よって、この実施形態における構成部材のうち前述の従来の硬貨処理装置における構成部材と同等の部材には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0016】
この硬貨処理装置1は、硬貨識別手段4と硬貨振分手段5と5つのコインチューブ6と硬貨払出手段7と演算手段8と記憶手段9とを有している。この硬貨払出手段7は、それぞれのコインチューブ6に対応する5つの硬貨収容孔が設けられた1枚のペイアウトスライドを有し、このペイアウトスライドを引き出すことによって硬貨収容孔に収まった硬貨を払い出すものである。それぞれのコインチューブ6には、コインチューブ6に収納された硬貨が満杯になったことを検知するセンサである満杯検知スイッチ10と、コインチューブ6に収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知するセンサであるエンプティスイッチ11とが設けられている。また、この硬貨処理装置1は、それぞれのコインチューブ6に収納されている硬貨の枚数を把握するために、その記憶手段9に各コインチューブ6の増減カウンタ91を有している。この増減カウンタ91は、電源が投入されたとき又はコインチューブ6の着脱が認識されたときの初期値は0であり、各コインチューブ6に硬貨が振り分けられたとき加算され、各コインチューブ6から硬貨が払い出されたときに減算されるものである。また、この硬貨処理装置1の記憶手段9は、自動販売機等の主制御13からの返金指令を受信した後の処理に必要となる各コインチューブ6の払出可能枚数92と残り払出予定枚数93とを記憶するための領域を有している。この払出可能枚数92は、硬貨処理装置1が認識している各コインチューブ6から確実に払い出すことができる枚数である。この払出可能枚数92は、装置本体の電源が投入されたとき又はコインチューブ6の着脱が認識されたときに、エンプティスイッチ11によって各コインチューブ6に収納されている硬貨が所定枚数以下であることが検知されている場合は、0から計数が開始され、エンプティスイッチ11によって各コインチューブ6に収納されている硬貨が所定枚数以下であることが検知されていない場合は、その所定枚数に1を加えた枚数から計測が開始される。そして、基本的には、各コインチューブ6に硬貨が振り分けられたとき加算され、各コインチューブ6から硬貨が払い出されたときに減算される。ただし、この払出可能枚数92は、エンプティスイッチ11によって各コインチューブ6に収納されている硬貨が所定枚数以下であることが検知されていない間は、所定枚数以下に
は減算されず、満杯検知センサ10によって満杯が検知されたときは、満杯枚数とされる。この払出可能枚数92によって、各コインチューブ6から確実に払い出すことができる枚数、つまり各コインチューブ6に収納されている硬貨の最低限の収納枚数を把握することができる。以上の構成は、従来の硬貨処理装置と同様の構成である。
【0017】
この硬貨処理装置1の5本のコインチューブ6は、図1及び図2の左からそれぞれ、500ウォン硬貨が収納される500Wチューブ61、100ウォン硬貨が収納される100W2枚払出チューブ62、100ウォン硬貨が収納される100W1枚払出チューブA63、50ウォン硬貨が収納される50Wチューブ64、100ウォン硬貨が収納される100W1枚払出チューブB65となっている。ここで、100W2枚払出チューブ62は、一度の払出動作(ペイアウトスライドの引き出しと復帰の1往復分の動作)において2枚の硬貨が払い出される2枚払出用コインチューブとなっている。この2枚払出用コインチューブを用いる点は、本件出願人らが新たに導入した技術思想であり、従来にはない構成である。一度の払出動作(ペイアウトスライドの引き出しと復帰の1往復分の動作)において1つのコインチューブから一度に2枚の硬貨を払い出すことは、そのコインチューブに対応するペイアウトスライドの硬貨収容孔の内壁の高さを硬貨2枚分にすることによってその硬貨収容孔に2枚の硬貨を収容し、ペイアウトスライドの一度の引き出しでその硬貨収容孔に収容された2枚の硬貨を引き出すようにすることで実現可能である。このペイアウトスライドの硬貨収容孔の内壁の高さを硬貨2枚分にする方法としては、ペイアウトスライドの硬貨収納孔の周囲に立壁を設けることなどが考えられる。この100W2枚払出チューブ62以外の4本のコインチューブ61,63,64,65は、従来のものと同様、一度の払出動作(ペイアウトスライドの引き出しと復帰の1往復分の動作)において1枚の硬貨が払い出されるものである。
【0018】
このように、この硬貨処理装置1は、100ウォン硬貨について、2枚払出用コインチューブ(100W2枚払出チューブ62)と1枚払出用コインチューブ(100W1枚払出チューブA63、100W1枚払出チューブB65)とを併用するものであるが、本願発明者らは、このような構成においては以下で説明する問題点が生じること及びその問題点を解決するための手段を見いだした。
【0019】
2枚払出用コインチューブ62は、1回の払い出し動作で2枚の硬貨を払い出すことができるが、1枚の硬貨を払い出すことができないため、1枚払出用コインチューブ63,65に硬貨が収納されていないときは、奇数枚の払い出しに対応することができない。そのため、1枚払出用コインチューブ63,65に硬貨が収納されていないときは、2枚払出用コインチューブ62に多数の硬貨が収納されていたとしても、100ウォン硬貨をつり銭として払い出すことができない。つまり、1枚払出用コインチューブ63,65に硬貨が収納されていないときは、2枚払出用コインチューブ62内の硬貨の有無にかかわらず、硬貨処理装置1は払出可能枚数を0枚とする必要がある。
【0020】
このような問題点があるため、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65とを併用する場合は、2枚払出用コインチューブ62のみに硬貨が収納され、1枚払出用コインチューブ63,65には硬貨が収納されていない状態を回避することが求められる。そのための手段としては、投入された硬貨を1枚払出用コインチューブ62に優先的に振り分け、つり銭を2枚払出用コインチューブ62から優先的に払い出すことが考えられる。しかし、この方法では、2枚払出用コインチューブ62に硬貨がなく、1枚払出用コインチューブ63,65に多くの硬貨が収納されているという状態になりやすく、そのような状態では必要な払出動作の回数が多くなり、硬貨の払い出しが遅くなってしまう。
【0021】
そこで、本発明の実施形態の硬貨処理装置1では、投入された硬貨の振り分け先のコインチューブ6の決定と、硬貨の払い出しを行うコインチューブ6の決定とについて、1枚払出用コインチューブ63,65につり銭用硬貨が十分に収納されている通常状態の場合と、1枚払出用コインチューブ63,65につり銭用硬貨が十分に収納されていないつり銭不足状態の場合と、2枚払出用コインチューブ62及び1枚払出用コインチューブ63,65のいずれかが満杯になっている満杯チューブあり状態とで、異なる処理を行うようになっている。
【0022】
この1枚払出用コインチューブ63,65の硬貨収納枚数が十分であるかの判断は、本実施形態の硬貨処理装置1においては、硬貨検知手段であるエンプティスイッチ11の出力に基づいて行っており、いずれかの1枚払出用コインチューブ(100W1枚払出チューブA63又は100W1枚払出チューブB65)においてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知してない場合は、1枚払出用コインチューブ63,65の硬貨収納枚数が十分であるとし、すべての1枚払出用コインチューブ(100W1枚払出チューブA63及び100W1枚払出チューブB65)においてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知している場合は、1枚払出用コインチューブ63,65の硬貨収納枚数が十分でないとしている。このエンプティスイッチ11の所定枚数は、100ウォンでは通常10枚程度に設定されている。また、1枚払出用コインチューブ63,65のいずれかが満杯になっているか否かの判断は、満杯検知センサ10によって満杯が検知されているか否かにより行っている。
【0023】
まず、1枚払出用コインチューブ63,65につり銭用硬貨が十分に収納されている通常状態の場合における処理について説明する。この通常状態においては、硬貨処理装置1は、装置が使用される場所における硬貨の入金及び返金の傾向を学習する。そして、この硬貨処理装置1は、投入された硬貨の振り分けを、学習した硬貨の入金及び返金の傾向を前提として、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65との両方につり銭用硬貨が収納されている期間が最大になるように行う。また、この硬貨処理装置1は、硬貨の払い出しを、払出動作(ペイアウトスライドの引き出しと復帰の1往復分の動作)の回数が最小になるように行い、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、その複数のパターンの中で、学習した硬貨の入金及び返金の傾向を前提として、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65との両方につり銭用硬貨が収納されている期間が最大になるものを選択する。なお、この硬貨処理装置1は、1枚払出用コインチューブ63,65同士では、各1枚払出用コインチューブ63,65の硬貨収納枚数の差が最大で1枚になるように、均等に、投入された硬貨の振り分け及び硬貨の払い出しを行う。
【0024】
この硬貨処理装置1は、装置が使用される場所における入金及び返金の傾向の学習のために、その記憶手段9に、入金及び返金の傾向を表す複数の変数で構成されるロケーション情報94を記憶するための領域を有している。このロケーション情報94は、100ウォン硬貨が投入される頻度を表す変数である100ウォン硬貨の補充率Hと、100ウォン硬貨の各コインチューブへの振り分けの実績を表す変数である2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdと、100ウォン硬貨の2枚払出用コインチューブ62からの払い出しの実績を表す変数である2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Udと、100ウォン硬貨の1枚払出用コインチューブ63,65からの払い出しの実績を表す変数である1枚払出用コインチューブ63,65の払出使用率Usとを有している。この硬貨処理装置1は、これらの変数の値を販売ごとに順次更新していくことによって、装置が使用される場所における入金及び返金の傾向の学習していく。
【0025】
100ウォン硬貨の補充率Hは、直近N回の販売において、1回の販売あたりの100ウォン硬貨の投入があった枚数を示す変数である。例えば、N=10として、直近10回の販売で合計3枚の100ウォン硬貨の投入があった場合の補充率Hは、30%である。この100ウォン硬貨の補充率Hは、100%を超える値をとりうる変数である。
【0026】
2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdは、直近N回の販売において、投入された100ウォン硬貨を、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65とのうちで、2枚払出用コインチューブ62へ振り分けた割合を示す変数である。この2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdは、0〜100%の値をとる変数である。なお、1枚払出用コインチューブ63,65への振分率Ssは、1−Sdと等しい値となる。
【0027】
2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Udは、直近N回の販売において、1回の販売あたりの2枚払出用コインチューブ62から硬貨の払い出しを行った払出動作の回数を示す変数である。例えば、N=10として、直近10回の販売で合計8回の2枚払出用コインチューブ62から硬貨の払い出しを行った払出動作があった場合の2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Udは、80%である。1回の販売において5枚以上の100ウォン硬貨の払い出しを行う場合など、1回の販売において2回以上の払出動作がなされる場合があるので、この2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Udは、100%を超える値をとりうる変数である。
【0028】
また、1枚払出用コインチューブ63,65の払出使用率Usは、直近N回の販売において、1回の販売あたりの1枚払出用コインチューブ63,65から硬貨の払い出しを行った払出動作の回数を示す変数である。この硬貨処理装置1のように、2つの1枚払出用コインチューブ63,65がある場合においては、1回の払出動作で2つの1枚払出用コインチューブ63,65から払い出しを行うときは、その1回の払出動作を2回とカウントする。この1枚払出用コインチューブ63,65の払出使用率Usも、2枚払出用コインチューブの払出使用率Udと同様に、100%を超える値をとりうる変数である。
【0029】
なお、ロケーション情報94を構成する各変数の値を算出する際の販売回数Nは、装置が使用される場所における入金及び返金の傾向の学習するための監視販売回数Nである。そして、装置が使用される場所における入金及び返金の傾向を正確に把握するためにはある程度の監視販売回数Nが必要であるが、この監視販売回数Nを多くすればするほど、後述する投入された硬貨の振り分け及び硬貨の払い出しのためのアルゴリズムの処理に時間を要したり、多くのメモリを必要としたりすることになるため、入金及び返金の傾向の把握の正確性と処理速度などとのバランスをとって、監視販売回数Nを決定することになる。また、入金及び返金の傾向が安定している場所で用いる場合には監視販売回数Nを多く設定して学習の正確性を高め、入金及び返金の傾向が短期間で変動する場所で用いる場合には監視販売回数Nをその変動の周期等にあわせて少なめに設定して入金及び返金の傾向の変動への追従性を高めるといった考慮も考えられる。
【0030】
以上のロケーション情報を構成する各変数の値は、通常状態においては、自動販売機等における各販売の終了時に更新される。一方、つり銭不足状態の場合と満杯チューブあり状態とにおいては、ロケーション情報を反映した投入硬貨の振り分け及び硬貨の払い出しを行っていないため、ロケーション情報を構成する各変数の値の更新を行わず、また、これらの状態における投入硬貨の振り分け及び硬貨の払い出しの結果をロケーション情報を構成する各変数の値の算定には用いない。各販売の終了は、自動販売機等の主制御から返金指令を受信後に硬貨の払出処理を終了したこと、または、自動販売機等の主制御から投入金クリア指令を受信したことによって判断する。この投入金クリア指令は、つり銭無しの販売、いわゆるジャスト販売、がなされたときに、投入された硬貨の受領を確定するために、出されるものである。また、この硬貨処理装置1を入金及び返金の傾向を学習していない場所へ設置する際には、経験上想定される変数の値を予め入力してこの硬貨処理装置1の運用を開始する。
【0031】
ロケーション情報を構成するこれらの変数を用いることによって、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65とのそれぞれに収納されているつり銭用硬貨がなくなる販売回数を予測できる。まず、2枚払出用コインチューブ62に収納されているつり銭用硬貨がなくなるまでの予測販売回数Ndは、2枚払出用コインチューブ62に収納する100ウォン硬貨の初期枚数をldとすると、近似的に、Nd=ld/(2×Ud−H×Sd)によって算出できる。同様に、1枚払出用コインチューブ63,65に収納されているつり銭用硬貨がなくなるまでの予測販売回数Nsは、1枚払出用コインチューブ63,65に収納する100ウォン硬貨の初期枚数をlsとすると、近似的に、Ns=ls/(Us−H×Ss)によって算出できる。ここで、Ss=1−Sdとの関係が成り立つので、Ns=ls/(Us−H×(1−Sd))となる。なお、ここでは、ld、lsとして初期枚数の値を用いて、硬貨補充時からの予測販売回数を算出するようにしているが、この場合だと累積販売回数が多くなり入金及び返金の傾向が初期から変化しているときなどは予測が現実とずれてしまう。この問題に対応するために、ld、lsとして初期枚数の代わりに払出可能枚数92を用いて、現時点からの予測販売回数を算出するようにしてもよい。
【0032】
そして、この硬貨処理装置1は、次に説明する振分アルゴリズムと払出アルゴリズムとに従って、この2枚払出用コインチューブ62の予測販売回数Ndと1枚払出用コインチューブ63,65の予測販売回数Nsとができるだけ多くなるように、つまり、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65との両方を利用した払い出しを行うことが可能な販売回数ができるだけ多くなるように、投入された硬貨の振り分け及び硬貨の払い出しを行う。
【0033】
まず、振分アルゴリズムについては、この硬貨処理装置1は、販売前の時点において、その時点における100ウォン硬貨の補充率H、2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Ud及び1枚払出用コインチューブ63,65の払出使用率Usを前提として、2枚払出用コインチューブ62の予測販売回数Ndと1枚払出用コインチューブ63,65の予測販売回数Nsとのうちの小さい方の値が最も大きくなる2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdを算出し、その算出された振分率を2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdとする。また、このときの1枚払出用コインチューブ63,65への振分率を1枚払出用コインチューブ63,65への理想振分率Ideal-Ssとする。このとき、Ideal-Ss=1−Ideal-Sdの関係が成り立つ。
【0034】
そして、この理想振分率Ideal-Sd、Ideal-Ssと販売前における実際の振分率Sd、Ssとから、あと何枚の100ウォン硬貨を2枚払出用コインチューブ62又は1枚払出用コインチューブ63,65に振り分ければ実際の振分率Sd、Ssが理想振分率Ideal-Sd、Ideal-Ssと同じ値になるかを算出する。
【0035】
2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdが実際の振分率Sdよりも大きい場合において、実際の2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdが理想振分率Ideal-Sdと同じ値になるために必要となる100ウォン硬貨の2枚払出用コインチューブ62への振分枚数をXdとすると、近似的に、(過去N回販売で2枚払出用コインチューブへ振り分けてきた枚数+Xd)/(過去N回販売での100ウォン硬貨投入枚数+Xd)=Ideal-Sdの関係が成り立つ。そして、過去N回販売で2枚払出用コインチューブ62へ振り分けてきた枚数は、H×Sd×Nで表され、過去N回販売での100ウォン硬貨投入枚数は、H×Nで表されるので、(H×Sd×N+Xd)/(H×N+Xd)=Ideal-Sdの関係が成り立つことになる。この関係式を変形すると、Xd=H×N×(Ideal-Sd−Sd)/(1−Ideal-Sd)となり、この関係式によって、実際の振分率Sdが理想振分率Ideal-Sdと同じ値になるときの100ウォン硬貨の投入枚数Xdを算出できる。
【0036】
また、逆に、2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdが実際の振分率Sd以下の場合、つまり、1枚払出用コインチューブ63,65への理想振分率Ideal-Ss(=1−Ideal-Sd)が実際の振分率Ss以上の場合において、実際の1枚払出用コインチューブ63,65への振分率Ss(=1−Sd)が理想振分率Ideal-Ss(=1−Ideal-Sd)と同じ値になるために必要となる100ウォン硬貨の1枚払出用コインチューブ63,65への振分枚数をXsとすると、近似的に、(過去N回販売で1枚払出用コインチューブへ振り分けてきた枚数+Xs)/(過去N回販売での100ウォン硬貨投入枚数+Xs)=Ideal-Ssの関係が成り立つ。そして、過去N回販売で1枚払出用コインチューブへ振り分けてきた枚数は、H×Ss×Nで表され、過去N回販売での100ウォン硬貨投入枚数は、H×Nで表されるので、(H×Ss×N+Xs)/(H×N+Xs)=Ideal-Ssの関係が成り立つことになる。この関係の式を変形すると、Xs=H×N×(Ideal-Ss−Ss)/(1−Ideal-Ss)となり、この関係式によって、実際の振分率Ssが理想振分率Ideal-Ssと同じ値になるときの100ウォン硬貨の投入枚数Xsを算出できる。ここで、Ss=1−SdとIdeal-Ss=1−Ideal-Ssとの関係が成り立つので、Xs=H×N×(Sd−Ideal-Sd)/Ideal-Sdとなる。
【0037】
このように、この硬貨処理装置1においては、自動販売機等における販売前に、あらかじめ、実際の2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdが理想振分率Ideal-Sdと同じ値になるために必要となる100ウォン硬貨の2枚払出用コインチューブ62への振分枚数Xd又は1枚払出用コインチューブ63,65への振分枚数Xsを算出し、この必要となる振分枚数を振り分けの目標枚数Xd、Xsとする。
【0038】
この硬貨処理装置1は、以上の算出方法によって、販売前の時点において、つまり、前回の販売の終了時において、その時点における100ウォン硬貨の補充率H、2枚払出用コインチューブ62への振分率Sd、2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Ud及び1枚払出用コインチューブ63,65の払出使用率Usを前提とした、2枚払出用コインチューブ62又は1枚払出用コインチューブ63,65への振り分けの目標枚数Xd又はXsを算出しておく。
【0039】
そして、この硬貨処理装置1は、自動販売機等における販売時に1枚又は2枚以上の硬貨が投入された際には、2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdが実際の振分率Sdよりも大きい場合には、投入された硬貨を2枚払出用コインチューブ62へ目標枚数Xdに達するまで振り分け、2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdが実際の振分率Sd以下の場合には、投入された硬貨を1枚払出用コインチューブ63,65へ目標枚数Xsに達するまで振り分ける。また、この硬貨処理装置1は、一販売中に2枚払出用コインチューブ62又は1枚払出用コインチューブ63,65への振り分けが目標枚数Xd、Xsに達した後は、投入された硬貨を2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65とへ交互に振り分けるか、2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdに略比例した特定のパターンに従って振り分ける。なお、一定の割り切りを行って、目標枚数Xd、Xs に達した後はすべて他方のコインチューブへ振り分ける処理を採用し、短い間隔での硬貨が連続投入された場合でも振り分けできるようにすることも考えられる。
【0040】
このように、この硬貨処理装置1は、通常状態においては、実際の振分率Sdが理想振分率Ideal-Sdに近づくように振り分けを行い、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65との両方を利用した払い出しを行うことの可能な販売回数ができるだけ長くなるようにしている。
【0041】
また、払出アルゴリズムについては、この硬貨処理装置1は、硬貨の払い出しは、払出動作の回数が最小になるように行うが、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、その複数のパターンの中で、学習した硬貨の入金及び返金の傾向を前提として、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65との両方につり銭用硬貨が収納されている期間が最大になるものを選択する。なお、ここで払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合を例示すると、1回の販売で100ウォン硬貨を2枚払い出す場合には、2枚払出用コインチューブ62から2枚払い出すパターンと、1枚払出用コインチューブ63,65 から1枚ずつ同時に払い出すパターンとがある。そして、前述のとおり、2枚払出用コインチューブ62に収納されているつり銭用硬貨がなくなるまでの予測販売回数Ndは、近似的に、Nd=ld/(2×Ud−H×Sd)の関係式から算出でき、1枚払出用コインチューブ63,65に収納されているつり銭用硬貨がなくなるまでの予測販売回数Nsは、近似的に、Ns=ls/(Us−H×(1−Sd))の関係式から算出できる。この関係式に、仮にそれぞれの払い出しパターンを選択して販売を行った場合における販売後の2枚払出用コインチューブの払出使用率Udと1枚払出用コインチューブの払出使用率Usとを代入することによって、それぞれの払い出しパターンを選択した場合の予測販売回数Nd及びNsを算出できる。そして、この硬貨処理装置1は、このように算出された2枚払出用コインチューブ62の予測販売回数Ndと1枚払出用コインチューブ63,65の予測販売回数Nsとのうちの小さい方の値が最も大きくなる払い出しパターンを選択する。
【0042】
このように、この硬貨処理装置1は、通常状態における硬貨の払い出しにおいて、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、2枚払出用コインチューブ62の予測販売回数Ndと1枚払出用コインチューブ63,65の予測販売回数Nsとができるだけ多くなるように、つまり、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65との両方を利用した払い出しを行うことが可能な販売回数ができるだけ長くなるように、硬貨の払い出しを行う。
【0043】
次に、1枚払出用コインチューブ63,65につり銭用硬貨が十分に収納されていないつり銭不足状態の場合における処理について説明する。このつり銭不足状態においては、この硬貨処理装置1は、投入された硬貨の振り分けは、1枚払出用コインチューブ63,65に対して集中的に行い、硬貨の払い出しは、払出動作の回数が増えても可能な限り2枚払出用コインチューブ62から行う。具体的には、この硬貨処理装置1は、投入された硬貨の振り分けにおいては、1枚払出用コインチューブ63,65のうちの硬貨収納枚数の多い方へ行い、硬貨の払い出しにおいては、可能な限り2枚払出用コインチューブ62のみから行い、払出枚数が奇数のときだけ1枚払出用コインチューブ63,65から行う。そして、この硬貨の払い出しは、1枚払出用コインチューブ63,65同士では、硬貨収納枚数が少ないものから優先して行われる。ここで、硬貨の振り分けを硬貨収納枚数の多い方へ優先して行い、硬貨の払い出しを硬貨収納枚数の少ない方から優先して行うのは、出来るだけ早くつり銭不足状態を脱し、通常状態とするためである。
【0044】
最後に、2枚払出用コインチューブ62及び1枚払出用コインチューブ63,65のいずれかが満杯になっている満杯チューブあり状態の場合における処理について説明する。この満杯チューブあり状態においては、この硬貨処理装置1は、投入された硬貨の振り分けは、満杯になっていないコインチューブ6に対して集中的に行い、硬貨の払い出しは、基本的には払出動作の回数が最小になるように行うが、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、その複数のパターンの中で、満杯になっているコインチューブ6からの払い出しを優先して選択する。
【0045】
以上の構成により、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65から同時に払い出しを行う期間を長くすることが可能となる。
【0046】
以上において、硬貨処理装置1における投入された硬貨の振り分け先のコインチューブ6の決定と硬貨の払い出しを行うコインチューブ6の決定とについて説明したが、硬貨処理装置1による硬貨の振り分けだけでなく、つり銭の補充を行う作業者がつり銭を補充する際にも同様の配慮が必要となる。つまり、作業者がつり銭の補充を行う際も、つり銭不足状態とならないよう、作業者は100W1枚払出チューブ63,65においてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知してない状態になるまで硬貨を補充する必要がある。しかし、通常、作業者はどこまで補充したらエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知してない状態になるかが分からない。そのため、この硬貨処理装置1においては、各コインチューブ6にエンプティスイッチ11の状態を表示するための表示手段としてエンプティスイッチ状態表示LED12を設けている。この表示手段によって、作業者はエンプティスイッチ11の検知状態を確認することが可能となる。
【0047】
また、この硬貨処理装置1が搭載された自動販売機等で販売される商品の価格が900ウォンのみである場合など、2枚払出用コインチューブ62からの払い出しを利用できない場合が有ることが想定される。そのため、この硬貨処理装置1では、作業者が、手動で、2枚払出用コインチューブ62を使用する設定と2枚払出用コインチューブ62を使用しない設定とを相互に切り替えることが可能となっている。この2枚払出用コインチューブ62を使用しない設定では、この硬貨処理装置1は、2枚払出用コインチューブ62への硬貨の振り分けを行わず、2枚払出用コインチューブ62から硬貨の払い出しを行わない。さらに、この硬貨処理装置1では、2枚払出用コインチューブ62を使用する設定と2枚払出用コインチューブ62を使用しない設定とを自働で行うよう設定する自動設定が可能となっている。この自働設定においては、この硬貨処理装置1は、電源が投入された後、まずは2枚払出用コインチューブ62を使用しない設定で動作し、その後、一度でも2枚以上のつり銭の払出命令を受信したら、2枚払出用コインチューブ62を使用する設定に切り替えるようになっている。このような構成により、この硬貨処理装置1は、2枚払出用コインチューブ62を活用できない商品価格設定の場合にも対応可能となっている。
【0048】
さらに、この硬貨処理装置1から硬貨選別装置2を構成する硬貨識別手段4と硬貨振分手段5とを除外することで硬貨払出装置3を構成することが可能である。図12は、この硬貨払出装置3のブロック図であり、図13は、この硬貨払出装置3の概略図であって、硬貨払出装置3の断面を模式的に表したものである。
【0049】
この硬貨払出装置3の硬貨の払い出しの処理は、基本的に、硬貨処理装置1における硬貨の払い出しの処理と同じである。ただし、この硬貨払出装置3は、硬貨処理装置1とは異なり、硬貨の投入がなされないため、硬貨処理装置1において100ウォン硬貨の補充率Hの値を0としたときと同じ処理となる。また、この硬貨払出装置3は、ロケーション情報を構成する変数として、100ウォンの2枚払出用コインチューブ62からの払い出しの実績を表す変数である2枚払出用コインチューブ62の払出使用率Udと、100ウォンの1枚払出用コインチューブ63,65からの払い出しの実績を表す変数である1枚払出用コインチューブ63,65の払出使用率Usとを有していれば足り、100ウォン硬貨の補充率Hと2枚払出用コインチューブ62への振分率Sdとは不要である。また、この硬貨払出装置3では、硬貨処理装置1における監視販売回数Nに相当するものを監視払出回数Nといい、予測販売回数Nd、Nsに相当するものを予測払出回数Nd、Nsということにする。
【0050】
この硬貨払出装置3は、1枚払出用コインチューブ63,65につり銭用硬貨が十分に収納されている通常状態の場合においては、硬貨の払い出しを、払出動作の回数が最小になるように行うが、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、その複数のパターンの中で、2枚払出用コインチューブ62の予測払出回数Ndと1枚払出用コインチューブ63,65の予測払出回数Nsとのうちの小さい方の値が最も大きくなる払い出しパターンを選択する。一方、この硬貨払出装置3は、1枚払出用コインチューブ63,65につり銭用硬貨が十分に収納されていないつり銭不足状態においては、硬貨の払い出しを、払出動作の回数が増えても可能な限り2枚払出用コインチューブ62から行う。
【0051】
ここで、2枚払出用コインチューブ62に収納されているつり銭用硬貨がなくなるまでの予測払出回数Ndは、近似的に、Nd=ld/(2×Ud)の関係式から算出でき、1枚払出用コインチューブ63,65に収納されているつり銭用硬貨がなくなるまでの予測払出回数Nsは、近似的に、Ns=ls/Usの関係式から算出できる。この関係式に、仮にそれぞれの払い出しパターンを選択して払い出しを行った場合における払い出し後の2枚払出用コインチューブの払出使用率Udと1枚払出用コインチューブの払出使用率Usとを代入することによって、それぞれの払い出しパターンを選択した場合の予測払出回数Nd及びNsを算出できる。
【0052】
以上の構成により、2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65から同時に払い出しを行う期間を長くすることが可能となる。
【0053】
次に、上述した本発明の実施形態の硬貨処理装置1において行われる処理の流れについて説明する。
【0054】
図3は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の動作の流れを示すフローチャートである。この硬貨処理装置1は、電源が投入されると、最初に初期動作を行い(S101)、ロケーション情報に基づいて目標枚数Xd又はXsの算出処理(S102)を行う。その後、待機状態となり、硬貨の投入が検知されると振分処理(S103)を行い、自動販売機等の主制御13から返金指令を受信すると払出処理(S104)を行い、自動販売機等の主制御13から投入金クリア指令を受信すると投入金クリア処理(S105)を行う。
【0055】
図4は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の振分処理(S103)の流れを示すフローチャートである。振分処理(S103)では、この硬貨処理装置1は、待機状態において硬貨の投入が検知されると(S201)、金種判定処理を行い(S202)、投入された硬貨が500ウォン硬貨と判定されると(S203)、500W振分処理を行い(S204)、100ウォン硬貨と判定されると(S205)、100W振分処理を行い(S206)、50ウォン硬貨と判定されると(S207)、50W振分処理を行う(S208)。最後に、この硬貨処理装置1は、振り分けられた硬貨の枚数に応じて増減カウンタ91及び払出可能枚数92の更新などの加算処理を行う(S209)。
【0056】
図5は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の500W振分処理(S204)の流れを示すフローチャートである。500W振分処理(S204)では、この硬貨処理装置1は、500Wチューブ61が満杯であるかの判断を行い(S301)、満杯である場合は、投入された硬貨を金庫へ振り分け(S303)、満杯でない場合は、投入された硬貨を500Wチューブ61へ振り分ける(S302)。50W振分処理(S208)も、500W振分処理と同様である。
【0057】
図6は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の100W振分処理(S206)の流れを示すフローチャートである。
【0058】
100W振分処理(S206)では、この硬貨処理装置1は、最初に、すべての100Wチューブ(100W2枚払出チューブ62、100W1枚払出チューブA63、100W1枚払出チューブB65)が満杯であるかの判断を行い(S401)、すべての100Wチューブ62,63,65が満杯である場合は、投入硬貨を金庫へ振り分け(S405)、満杯でない場合は、いずれかの100Wチューブ(100W2枚払出チューブ62、100W1枚払出チューブA63、100W1枚払出チューブB65)が満杯であるかの判断を行う(S402)。いずれかの100Wチューブ62,63,65が満杯である場合は、投入硬貨を満杯になっていない100Wチューブ62,63,65へ振り分け、満杯となっている100Wチューブ62,63,65がない場合は、100W1枚払出チューブ(100W1枚払出チューブA63、100W1枚払出チューブB65)の硬貨収納枚数が十分であるかの判断を行う(S403)。
【0059】
100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分である場合(通常状態)は、この硬貨処理装置1は、投入された硬貨をロケーション情報94に基づいて選択された100Wチューブ62,63,65へ振り分ける(S404)。このロケーション情報94に基づいた振り分けは、振り分けの目標枚数Xd又はXsに達するまでは、その対応する1枚払出用コインチューブ62,63,65への振り分け、振り分けの目標枚数Xd又はXsに達した後は、投入された硬貨を2枚払出用コインチューブ62と1枚払出用コインチューブ63,65とへ交互に振り分けるか、2枚払出用コインチューブ62への理想振分率Ideal-Sdに略比例した特定のパターンに従って振り分けるか、すべて他方のコインチューブへ振り分けるというものである。
【0060】
そして、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分でない場合(つり銭不足状態)は、この硬貨処理装置1は、2つの100W1枚払出チューブ63,65のうち払出可能枚数の大きい方へ投入された硬貨を振り分ける(S407)。
【0061】
100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分であるかの判断は、前述のとおり、エンプティスイッチ11の出力に基づいて行っており、100W1枚払出チューブA63又は100W1枚払出チューブB65のいずれかにおいてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知してない場合は、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分であるとし、100W1枚払出チューブA63及び100W1枚払出チューブB65の両者においてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知している場合は、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分でないとしている。
【0062】
図7は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の払出処理(S104)の流れを示すフローチャートである。この硬貨処理装置1は、自動販売機等の主制御13から返金指令を受信すると払出処理を開始する。この返金指令は、払い出しを行う硬貨の金種と払出予定枚数とをその内容としている。払出処理(S104)では、この硬貨処理装置1は、自動販売機等の主制御13から返金指令を受信すると(S501)、残り払出予定枚数93の設定を行い(S502)、払出可能枚数92を参照して返金指令分のつり銭を保有しているかの判断を行う(S503)。この硬貨処理装置1は、返金指令分のつり銭を保有していない場合は、払出処理を終了し、返金指令分のつり銭を保有している場合は、払出チューブ決定処理を行う(S504)。この払出チューブ決定処理では、次の1回の払出動作(ペイアウトスライドの引き出しと復帰の1往復分の動作)において硬貨の払い出しを行うコインチューブ6を決定する。次に、この硬貨処理装置1は、1回の払出動作(ペイアウトスライドの引き出しと復帰の1往復分の動作)を行い、払出チューブ決定処理において払い出しを行うと決定されたコインチューブ6から硬貨を払い出す(S505)。次に、この硬貨処理装置1は、払い出された硬貨の枚数に応じて増減カウンタ91及び払出可能枚数92の更新などの減算処理を行う(S506)。次に、この硬貨処理装置1は、すべての払い出しが終了したかの判断を行い(S507)、すべての払い出しが終了した場合は、ロケーション情報の更新処理(S508)とロケーション情報に基づく目標枚数Xd又はXsの算出処理(S509)とを順次行った上で、払出処理(S104)を終了し、すべての払い出しが終了していない場合は、残りの払い出し予定の硬貨について、払出チューブ決定処理を行い(S504)、以後、同様の処理を繰り返すことになる。
【0063】
図8は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の払出チューブ決定処理(S504)の流れを示すフローチャートである。払出チューブ決定処理(S504)では、この硬貨処理装置1は、500ウォン硬貨の払い出しを行うコインチューブ6を決定する500W払出チューブ決定処理(S510)と、100ウォン硬貨の払い出しを行うコインチューブ6を決定する100W払出チューブ決定処理(S511)と、50ウォン硬貨の払い出しを行うコインチューブ6を決定する50W払出チューブ決定処理(S512)とを順次行う。
【0064】
図9は、本発明の実施形態の硬貨処理装置の500W(50W)払出チューブ決定処理(S510)の流れを示すフローチャートである。500W払出チューブ決定処理(S510)では、この硬貨処理装置1は、最初に500ウォン硬貨の残りの払出予定枚数93が0でないかの判断を行う(S601)。この硬貨処理装置1は、500ウォン硬貨の残り払出予定枚数93が0である場合は、500W払出チューブ決定処理を終了し、500ウォン硬貨の残り払出予定枚数93が0でない場合は、500Wチューブ61を次の1回の払出動作において払い出すコインチューブ6として決定する(S602)。その後、この硬貨処理装置1は、500ウォン硬貨の残り払出予定枚数93の値を1減算することによって更新して(S603)、500W払出チューブ決定処理を終了する。50W払出チューブ決定処理(S512)も、500W払出チューブ決定処理と同様である。
【0065】
図10は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の100W払出チューブ決定処理(S511)の流れを示すフローチャートである。
【0066】
100W払出チューブ決定処理(S511)では、この硬貨処理装置1は、最初に、100ウォン硬貨の残り払出予定枚数93が0でないかの判断を行う(S701)。この硬貨処理装置1は、100ウォン硬貨の残りの払出予定枚数93が0である場合は、100W払出チューブ決定処理(S511)を終了し、100ウォン硬貨の残り払出予定枚数93が0でない場合は、いずれかの100Wチューブ(100W2枚払出チューブ62、100W1枚払出チューブA63、100W1枚払出チューブB65)が満杯であるかの判断を行う(S702)。
【0067】
いずれかの100Wチューブ62,63,65が満杯である場合は、満杯になっている100Wチューブ62,63,65を優先して次の1回の払出動作において払い出すコインチューブ6に決定する(S706)。この満杯になっている100Wチューブ62,63,65を優先した払い出しは、基本的には払出動作の回数が最小になるように払い出しを行うが、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、その複数のパターンの中で、満杯になっているチューブ62,63,65からの払い出しを優先して選択するというものである。満杯となっている100Wチューブ62,63,65がない場合は、100W1枚払出チューブ(100W1枚払出チューブA63、100W1枚払出チューブB65)の硬貨収納枚数が十分であるかの判断を行う(S703)。
【0068】
この硬貨処理装置1は、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分である場合(通常状態)は、ロケーション情報94に基づいて選択された100Wチューブ62,63,65を次の1回の払出動作において払い出すコインチューブ6に決定し(S704)、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分でない場合(つり銭不足状態)は、可能な限り100W2枚払出チューブ62から払い出しを行うように、次の1回の払出動作において払い出すコインチューブ6に決定する(S707)。このロケーション情報94に基づく払い出すコインチューブ6の決定は、この硬貨処理装置1は、硬貨の払い出しは、払出動作の回数が最小になるように行うが、払出動作の回数が最小になるパターンが複数ある場合には、その複数のパターンの中で、2枚払出用コインチューブ62の予測販売回数Ndと1枚払出用コインチューブ63,65の予測販売回数Nsとのうちの小さい方の値が最も大きくなる払い出しパターンを選択するというものである。
【0069】
そして、最後に残り払出予定枚数の更新処理(S705)を行って100W払出チューブ決定処理(S511)を終了する。
【0070】
なお、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分であるかの判断は、前述のとおり、エンプティスイッチ11の出力に基づいて行っており、100W1枚払出チューブA63又は100W1枚払出チューブB65のいずれかにおいてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知してない場合は、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分であるとし、100W1枚払出チューブA63及び100W1枚払出チューブB65の両者においてエンプティスイッチ11が収納されている硬貨が所定枚数以下となったことを検知している場合は、100W1枚払出チューブ63,65の硬貨収納枚数が十分でないとしている。
【0071】
図11は、本発明の実施形態の硬貨処理装置1の投入金クリア処理(S105)の流れを示すフローチャートである。この硬貨処理装置1は、自動販売機等の主制御13から投入金クリア指令を受信すると投入金クリア処理(S105)を開始する。この投入金クリア処理(S105)では、この硬貨処理装置1は、自動販売機等の主制御13から投入金クリア指令を受信すると(S801)、ロケーション情報の更新(S802)とロケーション情報に基づく目標枚数Xd又はXsの算出処理(S803)とを順次行った上で、投入金クリア処理(S105)を終了する。
【0072】
上述の実施形態の硬貨払出装置1によれば、硬貨の払出処理を高速化することが可能であり、また、その高速化された払出性能を長期間維持することが可能である。
【0073】
以上、本発明の実施形態の1つについて説明したが、本発明の硬貨処理装置はこの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態の硬貨処理装置1は、2つの1枚払出用コインチューブを有するものであるが、1つ又は3つ以上の1枚払出用コインチューブを有するものであってもよい。また、前述した予測販売回数Nd、Ns、理想振分率Ideal-Sd及び目標枚数Xd、Xsなどの算定方法についても、その考えられる算定方法の一例を示したものであって、前述の算定方法に限定されるものではない。また、上述の実施形態の硬貨処理装置1は、投入された硬貨の振り分けと硬貨の払い出しとの両方におけるコインチューブの決定のためにロケーション情報を使用するものであるが、投入された硬貨の振り分け又は硬貨の払い出しのいずれかのみにおいてロケーション情報を使用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 硬貨処理装置
2 硬貨選別装置
3 硬貨払出装置
4 硬貨識別手段
5 硬貨振分手段
6 コインチューブ
61 500Wチューブ
62 100W2枚払出チューブ
63 100W1枚払出チューブA
64 50Wチューブ
65 100W1枚払出チューブB
7 硬貨払出手段
8 演算手段
9 記憶手段
91 増減カウンタ
92 払出可能枚数
93 残り払出予定枚数
94 ロケーション情報
10 満杯検知スイッチ
11 エンプティスイッチ
12 エンプティスイッチ状態表示LED
13 自動販売機等の主制御
C 硬貨
図1
図2
図3
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図5
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図8
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