(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方向へ延設して形成されるとともに前記一方向の両端に磁極を有するように磁化された磁石体と、該磁石体により生じる磁界の向きを検知可能な磁気検出部材と、を有し、
前記磁気検出部材が前記一方向と交差する側に前記磁石体と対向して配置され、
前記磁石体と前記磁気検出部材との相対的な移動に伴って変化する前記磁界の向きを検知して、移動する被検知物の位置を検出する位置検出センサにおいて、
前記磁石体は、前記一方向に棒状で形成されたベース部と、該ベース部の前記一方向における両端部に形成され少なくとも前記磁気検出部材側に突出する突出部と、を有し、
前記突出部は、前記一方向と交差する全方向に亘って突出して形成されていることを特徴とする位置検出センサ。
一対の前記突出部の突出高さは、前記磁石体と前記磁気検出部材との間隔距離に対して、0.11から0.27の比率であることを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来例の位置検出センサ950を更に小型化したいと言う要望に対しては、可動磁石972及び磁気抵抗効果素子976を取り囲む磁性体(保護板974)を有しているので、難しいものがあった。一方、小型化のために、従来例の磁性体(保護板974)を除いた場合は、検出対象物(被検知物)の位置を正確に検出できるという良好な効果を失ってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、被検知物の位置を精度良く検出でき小型化が図れた位置検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明の位置検出センサは、一方向へ延設して形成されるとともに前記一方向の両端に磁極を有するように磁化された磁石体と、該磁石体により生じる磁界の向きを検知可能な磁気検出部材と、を有し、前記磁気検出部材が前記一方向と交差する側に前記磁石体と対向して配置され、前記磁石体と前記磁気検出部材との相対的な移動に伴って変化する前記磁界の向きを検知して、移動する被検知物の位置を検出する位置検出センサにおいて、前記磁石体が、前記一方向に棒状で形成されたベース部と、該ベース部の前記一方向における両端部に形成され少なくとも前記磁気検出部材側に突出する突出部と、を有
し、前記突出部は、前記一方向と交差する全方向に亘って突出して形成されていることを特徴としている。
【0010】
これによれば、本発明の位置検出センサは、磁石体により生じる磁界が一対の突出部を結ぶように形成され、突出部を有しない場合と比較して、磁石体に沿うように形成される磁界領域が磁石体の両端側に広がり安定したものとなる。このため、組み立て等により磁石体と磁気検出部材との相対的な距離が変化した場合であっても、所望の位置で検知すべき磁界との差が小さく、検出精度の低下を防止することができる。しかも安定した磁界領域が磁石体の両端側に広がっているので、磁石体を長くすることなしに、より長い検出領域を確保することができる。このことにより、被検知物の位置を精度良く検出でき小型化が図れた位置検出センサを提供することができる。
【0011】
また、本発明の位置検出センサは、一対の前記突出部の突出高さが、前記磁石体と前記磁気検出部材との間隔距離に対して、0.11から0.27の比率であることを特徴としている。
【0012】
これによれば、突出部の突出高さと磁石体の全長とのバランスが良くなり、一対の突出部を結ぶように形成されて磁石体に沿う磁界が安定したものとなる。このことにより、検出精度、特に、組み立て等により磁石体と磁気検出部材との相対的な距離が変化した場合でのリニアリティ精度の低下を防止することができる。
【0013】
また、本発明の位置検出センサは、前記突出部が前記一方向と交差する全方向に亘って突出して形成されていることを特徴としている。
【0014】
これによれば、磁気検出部材側にだけ突出部が突出して形成されている場合と比較して、位置検出センサの組み立て時において、突出部の突出方向を磁気検出部材に対して厳密に位置合わせする必要がない。このことにより、位置検出センサの組み立てが容易になるとともに、突出部と磁気検出部材との相対的な位置精度が確保されて検出精度の低下を防止することができる。
【0015】
また、本発明の位置検出センサは、前記ベース部が円柱形状に形成され、前記突出部が前記円柱形状の同心円となる円盤形状に形成されていることを特徴としている。
【0016】
これによれば、磁気検出部材側にだけ突出部が突出して形成されている場合と比較して、位置検出センサの組み立て時において、突出部の突出方向を位置決めする必要がない。このことにより、位置検出センサの組み立てがより容易になるとともに、突出部と磁気検出部材との相対的な位置精度が確保されて検出精度の低下をより防止することができる。
【0017】
また、本発明の位置検出センサは、前記ベース部と前記突出部とは一体の永久磁石からなることを特徴としている。
【0018】
これによれば、部品点数を少なくでき、組み立てを容易にすることができる。また、突出部の寸法精度や配設位置精度が確保することができ、検出精度の低下をより一層防止することができる。
【0019】
また、本発明の位置検出センサは、前記ベース部が永久磁石からなり、前記突出部が軟質磁性体からなることを特徴としている。
【0020】
これによれば、永久磁石のベース部を単純な形状で形成することができるとともに、永久磁石で形成する部分を減らすことができる。このことにより、磁石体を容易にしかも安価に作製することができる。
【0021】
また、本発明の位置検出センサは、前記突出部には、前記磁石体を固定するための取付部を有していることを特徴としている。
【0022】
これによれば、移動する被検知物側或いは移動しない固定側に容易に固定することができる。また、永久磁石を加工する場合と比較して、容易に取付部を作製することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の位置検出センサは、磁石体により生じる磁界が一対の突出部を結ぶように形成され、突出部を有しない場合と比較して、磁石体に沿うように形成される磁界領域が磁石体の両端側に広がり安定したものとなる。このため、組み立て等により磁石体と磁気検出部材との相対的な距離が変化した場合であっても、所望の位置で検知すべき磁界との差が小さく、検出精度の低下を防止することができる。しかも安定した磁界領域が磁石体の両端側に広がっているので、磁石体を長くすることなしに、より長い検出領域を確保することができる。このことにより、被検知物の位置を精度良く検出でき小型化が図れた位置検出センサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
[第1実施形態]
先ず、本発明の第1実施形態の位置検出センサ101が用いられる位置検出装置500について、簡単に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の位置検出センサ101を説明する図であって、位置検出センサ101が適用された位置検出装置500の斜視図である。
図2は、位置検出センサ101が適用された位置検出装置500の上面図である。
図3は、
図2に示すIII−III線における位置検出装置500の断面図である。なお、
図3においては、磁石体2が下方側に移動した下限状態を示している。
図4は、
図3の下限状態から磁石体2が上方側に移動して上限状態に位置した際の位置検出装置500の断面図である。
【0027】
位置検出装置500は、
図1及び
図2に示すような外観を呈し、
図3及び
図4に示すように、外観を構成する上ケースK11及び下ケースK19と、一方向AD(
図3及び
図4に示すZ方向)に移動する磁石体2及び磁界の向きを検知可能な磁気検出部材3を有した位置検出センサ101と、磁石体2と一体的に駆動可能な移動体25と、磁石体2を移動させる駆動部26と、を備えて構成されている。他に、位置検出装置500は、磁石体2の一方向ADへの移動を案内するガイド部材G17と、外部機器と電気的に接続するためのコネクタCNが内蔵されたコネクタケースH18と、図示しない減圧源等の空気式制御装置にチューブ等で接続されるフィッティングF19と、を有している。なお、本発明の第1実施形態の位置検出センサ101については、位置検出装置500の概要を説明した後、詳細に説明する。
【0028】
先ず、位置検出装置500の上ケースK11及び下ケースK19は、金属材を加工して作製されており、上ケースK11と下ケースK19とが組み合わされた際には、
図3及び
図4に示すように、磁石体2及び駆動部26を収容し、磁石体2が移動可能な収容部K1sを形成している。
【0029】
上ケースK11の収容部K1s内には、
図3及び
図4に示すように、ガイド部材G17が配設されるとともに、上ケースK11の外側の上方には、
図1に示すように、コネクタケースH18が配設されている。また、上ケースK11には、
図1に示すように、その中間部の側壁から側壁に対して垂直方向に延設されたフィッティングF19が設けられている。このフィッティングF19は、中空に形成されており、この中空により収容部K1sと外部とが空間で繋がっている。
【0030】
下ケースK19には、
図3及び
図4に示すように、中央部に開口した開口部K19hを有しており、後述する移動体25の移動軸J5が挿通されている。そして、この開口部K19hにより、下ケースK19側の収容部K1s内を大気圧に保持している。
【0031】
次に、位置検出装置500の移動体25は、磁石体2と一体的に移動動可能となっており、
図3及び
図4に示すように、磁石体2を固定するホルダ部H5と、ホルダ部H5が固着されたピストン部P5と、ピストン部P5に係合された移動軸J5と、移動軸J5と係合しピストン部P5の下方(
図3に示すZ2方向)に配設された補強板A5と、を有して構成されている。
【0032】
移動体25のホルダ部H5及びピストン部P5は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT、polybutyleneterephtalate)等の合成樹脂を用いて射出成形されており、詳細な図示はしていないが、ピストン部P5は、円筒状に形成されて、その底面部P5bの中央には穴部を有している。
【0033】
移動体25の補強板A5は、金属材を用いて作製されており、詳細な図示はしていないが、円盤状に形成されて、その中央には貫通孔を有している。また、補強板A5は、
図3及び
図4に示すように、補強板A5とピストン部P5の底面部P5bとで、駆動部26(後述するダイヤフラムD6)を挟む位置に配設されている。
【0034】
移動体25の移動軸J5は、金属材を用いて作製されており、詳細な図示はしていないが、略円柱状に形成されている。そして、移動軸J5は、
図3及び
図4に示すように、移動軸J5の一方側の先端部がピストン部P5の穴部及び補強板A5の貫通孔に挿通され、図示していない軸受けやリング等を用いて、ピストン部P5及び補強板A5に固着されている。また、移動軸J5の他方側の先端部には、位置検出装置500で検出したい操作対象部品(被検知物)が接続される。なお、
図1では、他方側の端面が平面の円柱形状であるが、接続される操作対象部品との結合の都合により、種々の形状に変更が可能である。
【0035】
次に、位置検出装置500の駆動部26は、
図3及び
図4に示すように、収容部K1s内を2つの空間に分けるダイヤフラムD6と、ダイヤフラムD6の底部26bを付勢する付勢部材F6と、を有して構成されている。なお、2つの空間とは、ダイヤフラムD6の上ケースK11側の減圧室とダイヤフラムD6の下ケースK19側の大気室とを指している。
【0036】
駆動部26のダイヤフラムD6は、弾性を有するゴム材を用いて作製されており、
図3及び
図4に示すように、上ケースK11と下ケースK19とに挟持されるフランジ部26fと、変形自在な変形部26eと、中央に移動軸J5が挿通される貫通穴を有する底部26bと、から構成されている。また、前述したように、ダイヤフラムD6の底部26bがピストン部P5の底面部P5bと補強板A5とに挟持されて配設されているので、移動体25の上下方向(
図3及び
図4に示すZ方向)への移動に伴いダイヤフラムD6が変形しても、ダイヤフラムD6の底部26bは、平面を保つことができる。
【0037】
駆動部26の付勢部材F6は、両端を平面に研磨したコイルバネで、
図3及び
図4に示すように、一方端が上ケースK11の天井面に当接し、他方端がピストン部P5の底面部P5bに当接している。そして、付勢部材F6は、ピストン部P5を下方に付勢している。
【0038】
以上のようにして構成された位置検出装置500は、
図3に示す下限状態から減圧室が減圧されると、ダイヤフラムD6が変形し、付勢部材F6の付勢力に抗してダイヤフラムD6の底部26bが上方(
図3に示すZ1方向)に移動するようになる。そして、減圧室の減圧による力が付勢部材F6の付勢力より勝った場合には、
図4の上限状態にまでダイヤフラムD6の底部26bの移動が行われる。一方、減圧室の減圧が解除されると、付勢部材F6の付勢力により、
図3の下限状態にまで、ダイヤフラムD6の底部26bの移動が行われる。このようにして、駆動部26が上下方向に移動することで、磁石体2及び移動体25が上下方向に移動している。そして、位置検出装置500は、移動する被検知物(検出したい操作対象部品)の位置を、本発明の第1実施形態の位置検出センサ101を用いて、検出するようにしている。
【0039】
次に、本発明の位置検出センサ101について、詳細に説明する。
図5は、磁石体2の斜視図である。
図6は、本発明の第1実施形態の位置検出センサ101を説明する模式図であって、磁石体2と磁気検出部材3の断面構成図である。
【0040】
本発明の第1実施形態の位置検出センサ101は、上ケースK11及び下ケースK19内の収容部K1sを一方向AD(
図3及び
図4に示すZ方向)に沿って移動する磁石体2と、磁石体2の移動動作を検出する磁気検出部材3と、を有して構成されている。そして、位置検出センサ101は、磁石体2が移動する一方向ADと交差する側に、磁気検出部材3を磁石体2と対向して配置して構成し、この磁石体2と磁気検出部材3との相対的な移動に伴って変化する磁界の向きを磁気検出部材3で検知している。これにより、磁石体2と連動して移動する被検知物(検出したい操作対象部品)の位置を検出できるようになっている。
【0041】
先ず、位置検出センサ101の磁石体2は、
図5に示すように、一方向ADに棒状に延設して形成されたベース部M2と、ベース部M2の一方向ADにおける両端部に形成された突出部T2と、を有して構成されている。そして、磁石体2は、一方向ADの両端に磁極を有するように磁化されている。
【0042】
磁石体2のベース部M2は、ネオジウム磁石等の永久磁石からなり、
図5に示すように、円柱形状に形成されている。これにより、ベース部M2を単純な形状で形成することができるとともに、永久磁石で形成する部分を減らすことができる。このことにより、磁石体2を容易にしかも安価に作製することができる。
【0043】
磁石体2の突出部T2は、鉄または鉄合金等の軟質磁性体からなり、
図5に示すように、ベース部M2の円柱形状の同心円となる外形を有した円盤形状に形成されており、ベース部M2の両端部にそれぞれ装着されている。なお、本発明の第1実施形態では、円盤形状の中心部に貫通孔を設けた円環形状に形成されているが、これに限るものではなく、例えば、ベース部M2側に凹部を設けた形状とし、ベース部M2と凹部とを嵌めて装着する構成でも良い。
【0044】
そして、位置検出センサ101が組み立てられた際には、
図3及び
図4に示すように、この突出部T2の一部は、磁気検出部材3に対して、磁気検出部材3側に突出するように配設されている。これにより、磁石体2により生じる磁界が一対の突出部T2を結ぶように形成され、突出部T2を有しない場合と比較して、磁石体2に沿うように形成される磁界領域が磁石体2の両端側に広がるようになる。言い換えると、磁石体2の両端側においても磁石体2により平行な磁界が形成され、磁石体2に平行な磁界領域が広がり、磁気検出部材3が受ける磁界領域が安定したものとなる。このため、磁石体2を長くすることなしに、より長い検出領域を確保することができる。
【0045】
また、本発明の第1実施形態では、突出部T2が円盤形状に形成されて円柱形状のベース部M2に装着されているので、突出部T2が一方向ADと交差する全方向に亘って突出して形成されるように構成されている。これにより、磁気検出部材3側にだけ突出部T2が突出して形成されている場合と比較して、位置検出センサ101の組み立て時において、突出部T2の突出方向を磁気検出部材3に対して厳密に位置合わせする必要がなく、位置検出センサ101を容易に組み立てることができる。
【0046】
また、一対の突出部T2の突出高さTH(
図6を参照)は、いずれも同じ高さに設定されており、磁石体2の磁気検出部材3側の表面と磁気検出部材3の感磁点との間隔距離SD(
図6を参照)に対して、0.11から0.27の比率にするのが好適である。これにより、突出部T2の突出高さTHと磁石体2の全長とのバランスが良くなり、一対の突出部T2を結ぶように形成されて磁石体2に沿う磁界が安定したものとなる。また、突出部T2の幅TW(
図6を参照)は、磁気検出部材3の幅と同等若しくは少し広めに設定するのが好適である。
【0047】
また、軟磁性体からなる突出部T2には、
図5に示すように、磁石体2を移動体25のホルダ部H5に固定するための取付部T2rが形成されている。この取付部T2rは、本発明の第1実施形態では、貫通孔となっており、ネジ等を用いて突出部T2をネジ止めすることにより、磁石体2を容易に固定することができる。また、軟磁性体からなる突出部T2なので、永久磁石を加工して取付部T2rを設ける場合と比較して、容易に取付部T2rを作製することができる。
【0048】
最後に、位置検出センサ101の磁気検出部材3は、ホール素子を2つ用いており、詳細な図示はしていないが、半導体素子と併せて熱硬化性の合成樹脂でパッケージングされて、回路基板に搭載されている。この2つのホール素子は、
図5に示すZ方向及びX方向にそれぞれ感度軸を有している。そして、磁気検出部材3は、一方向ADと交差する側に磁石体2と対向して配置され、磁石体2の上下方向の動作に伴う磁界の変化を2軸のホール素子により検出して、磁石体2の位置を検出している。
【0049】
この位置検出センサ101は、前述したように、磁気検出部材3が受ける磁界領域が安定したものとなっているので、組み立て等により磁石体2と磁気検出部材3との相対的な距離が変化した場合であっても、磁気検出部材3が所望の位置で検知すべき磁界との差が小さく、検出精度の低下が防止されている。特に、突出部T2を有しない場合と比較して、磁石体2の両端部における検出精度の低下が防止されている。
【0050】
[実施例]
以上のように構成された位置検出センサ101について、シミュレーションを行い、効果の検証を行った。
図7は、位置検出センサ101における効果を説明する図であって、
図7(a)は、位置検出センサ101のシミュレーション結果(A)であり、
図7(b)は、比較として行った比較例のシミュレーション結果(Z)である。なお、
図7の縦軸は、基準の間隔距離SDの位置で得られる磁気検出部材3の出力値に対する差(変動差)の割合であり、
図7の横軸は、磁気検出部材3が移動するストロークSTである。また、
図8は、位置検出センサ101における効果を説明する図であって、
図8(a)は、位置検出センサ101のシミュレーション結果(B)であり、
図8(b)は、位置検出センサ101のシミュレーション結果(C)である。なお、
図8の縦軸は、基準の間隔距離SDの位置で得られる磁気検出部材3の出力値に対する差(変動差)の割合であり、
図8(a)の横軸は、ストロークSTに対する磁石体長MLの比率であり、
図8(b)の横軸は、間隔距離SDに対する突出高さTHの比率である。また、説明を分かり易くするため、
図8(a)には、比較例のシミュレーション結果(図中に示すZ1)を2点鎖線で示している。
図9は、位置検出センサ101における効果を説明する図であって、
図9(a)は、磁石体2が発生する磁気の流れを示したシミュレーション結果に模式図であり、
図9(b)は、
図9(a)に対し、突出部T2を有しない場合の比較例のシミュレーション結果を示した模式図である。
【0051】
また、シミュレーションで用いた各サイズ(
図6に示すサイズ)は、次のような値となっている。先ず、
図7及び
図8で共通するサイズとして、基準の間隔距離SDを7.25(mm)と固定して、この基準値から±2(mm)の間隔距離SDが変動するとした。
図7に示す実線の値は、基準値から+2(mm)ずれた時の結果を示し、
図7に示す破線の値は、基準値から−2(mm)ずれた時の結果を示している。また、磁気検出部材3が移動するストロークSTを12(mm)と固定した。
図7に示すストロークSTは、磁石体長MLの中心と対向する位置を“0"として表している。
【0052】
次に、
図7では、磁石体2の磁石体長MLを25(mm)に固定し、ベース部径MWを10.7(mm)に固定した。また、
図7(a)では、突出部T2の幅TWを2.5(mm)に固定し、突出高さTHを1.6(mm)に固定した。なお、この際のストロークSTに対する磁石体長MLの比率は2.1であり、突出高さTHと間隔距離SDとの比率は0.22である。また、
図7(b)では、比較例なので、突出部T2を設けない構成とした。
【0053】
次に、
図8(a)では、磁石体2の磁石体長MLを12(mm)から30(mm)と可変させ、磁石体2のベース部径MWを10.7(mm)に固定し、突出高さTHを1.6(mm)に固定し、突出部T2の幅TWを2.5(mm)に固定した。なお、この際の突出高さTHと間隔距離SDとの比率は0.22である。最後に、
図8(b)では、磁石体2の磁石体長MLを30(mm)に固定し、ベース部径MWを10.7(mm)に固定し、突出部T2の幅TWを2.5(mm)に固定し、突出高さTHを1.0(mm)から3.6(mm)と可変させた。なお、この際のストロークSTに対する磁石体長MLの比率は2.5である。
【0054】
本発明の第1実施形態の位置検出センサ101は、
図7(b)に示す突出部T2を有しない比較例の結果(Z)と比較して、
図7(a)に示すように、磁気検出部材3で得られ
る出力値の変動差(リニアリティ)が大幅に低減されている。これは、
図9(a)に示すように、磁石体2により生じる磁界が一対の突出部T2を結ぶように形成され、磁石体2に沿うように形成される磁界領域が磁石体2の両端側に広がり安定したものとなっているからである。一方、突出部T2を有しない比較例では、
図9(b)に示すように、磁界が磁石体702の両端部間を結ぶように形成され、磁石体702に沿うように形成される磁界領域が狭まっている。以上のことにより、位置検出センサ101は、組み立て等により磁石体2と磁気検出部材3との相対的な距離が変化した場合であっても、所望の位置で検知すべき磁界との差が小さく、検出精度の低下を防止することができる。
【0055】
また、位置検出センサ101は、
図8(a)に示す比較例のシミュレーション結果Z1と比較して、
図8(a)に示すように、いずれの磁石体長MLにおいて、磁気検出部材3で得られ
る出力値の変動差(リニアリティ)が大幅に低減されている。これは、磁石体2を長くすることなしに、より長い検出領域を確保することができ
るということである。逆に、同じ変動差(リニアリティ)を得ようとした場合、比較例よりストロークSTに対する磁石体長MLの比率を小さくすることができる。つまり、磁石体長MLを短くすることができ、位置検出センサ101の小型化を図ることができる。
【0056】
また、位置検出センサ101における突出部T2の突出高さTHには、
図8(b)に示すように、間隔距離SDに対に対する比率に極小値(
図8(b)では0.21前後)を有している。つまり、間隔距離SDに対する突出高さTHの比率が大きくなるにつれ、徐々にリニアリティが向上し、ある比率(極小値)を超えると、徐々にリニアリティが低下するようになる。これは、突出部T2の突出高さTHと磁石体2の全長(磁石体長ML)とのバランスがある比率で良くなり、一対の突出部T2を結ぶように形成されて磁石体2に沿う磁界が安定したものとなるからである。これにより、一対の突出部T2の突出高さTHが、磁石体2と磁気検出部材3との間隔距離SDに対して、0.11から0.27の比率であるのが好適である。
【0057】
以上のように構成された本発明の第1実施形態の位置検出センサ101における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0058】
本発明の第1実施形態の位置検出センサ101は、磁石体2が一方向ADに棒状で形成されたベース部M2の両端部に磁気検出部材3側に突出する突出部T2を有しているので、磁石体2により生じる磁界が一対の突出部T2を結ぶように形成され、突出部T2を有しない場合と比較して、磁石体2に沿うように形成される磁界領域が磁石体2の両端側に広がり安定したものとなる。このため、組み立て等により磁石体2と磁気検出部材3との相対的な距離が変化した場合であっても、所望の位置で検知すべき磁界との差が小さく、検出精度の低下を防止することができる。しかも安定した磁界領域が磁石体2の両端側に広がっているので、磁石体2を長くすることなしに、より長い検出領域を確保することができる。このことにより、被検知物の位置を精度良く検出でき小型化が図れた位置検出センサ101を提供することができる。
【0059】
また、一対の突出部T2の突出高さTHが、磁石体2と磁気検出部材3との間隔距離SDに対して、0.11から0.27の比率であるので、突出部T2の突出高さTHと磁石体2の全長とのバランスが良くなり、一対の突出部T2を結ぶように形成されて磁石体2に沿う磁界が安定したものとなる。このことにより、検出精度、特に、組み立て等により磁石体2と磁気検出部材3との相対的な距離が変化した場合でのリニアリティ精度の低下を防止することができる。
【0060】
また、突出部T2が一方向ADと交差する全方向に亘って突出して形成されているので、磁気検出部材3側にだけ突出部T2が突出して形成されている場合と比較して、位置検出センサ101の組み立て時において、突出部T2の突出方向を磁気検出部材3に対して厳密に位置合わせする必要がない。このことにより、位置検出センサ101の組み立てが容易になるとともに、突出部T2と磁気検出部材3との相対的な位置精度が確保されて検出精度の低下を防止することができる。
【0061】
また、突出部T2がベース部M2の円柱形状の同心円となる円盤形状に形成されているので、磁気検出部材3側にだけ突出部T2が突出して形成されている場合と比較して、位置検出センサ101の組み立て時において、突出部T2の突出方向を位置決めする必要がない。このことにより、位置検出センサ101の組み立てがより容易になるとともに、突出部T2と磁気検出部材3との相対的な位置精度が確保されて検出精度の低下をより防止することができる。
【0062】
また、磁石体2のベース部M2を永久磁石、磁石体2の突出部T2を軟磁性体としたので、永久磁石のベース部M2を単純な形状で形成することができるとともに、永久磁石で形成する部分を減らすことができる。このことにより、磁石体2を容易にしかも安価に作製することができる。
【0063】
また、突出部T2には磁石体2を固定するための取付部T2rを有しているので、移動する被検知物側に容易に固定することができる。また、軟磁性体からなる突出部T2なので、永久磁石を加工する場合と比較して、容易に取付部T2rを作製することができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0065】
<変形例1>
上記第1実施形態では、磁石体2のベース部M2を永久磁石、磁石体2の突出部T2を軟磁性体とした構成にしたが、磁石体2のベース部M2と突出部とは一体の永久磁石として構成しても良い。これにより、部品点数を少なくでき、組み立てを容易にすることができる。また、突出部の寸法精度や配設位置精度を確保することができ、検出精度の低下を防止することができる。
【0066】
<変形例2>
上記第1実施形態では、突出部T2が一方向ADと交差する全方向に亘って突出して形成された構成としたが、これに限るものではなく、少なくとも磁気検出部材3側に突出する突出部であれば良い。
【0067】
<変形例3>
上記第1実施形態では、突出部T2がベース部M2の円柱形状の同心円となる円盤形状に形成された構成としたが、これに限るものではない。例えば、突出部を多角形に形成し、その辺に対応した突出部の部分の突出高さTHを各々変えた構成にしても良い。これにより、磁石体2と磁気検出部材3との間隔距離SDを、場合により変化させることもでき、その変化した場合に対応して、最適な突出部の突出高さTHに設定することができる。
【0068】
<変形例4>
上記第1実施形態では、取付部T2rとして、簡易な貫通孔を用いたが、これに限るものではなく、例えば円盤形状の突出部T2から延出させたフック状の取付部でも良い。その際には、磁気検出部材3と対向する側とは反対側の突出部に取付部を設けるのがより好ましい。
【0069】
<変形例5>
上記第1実施形態では、磁石体2のベース部M2として、単純な形状の円柱形状の永久磁石を用いた構成としたが、これに限るものではなく、例えば円筒形状の永久磁石を用いてベース部を構成しても良い。その際には、円柱状の軸部を有した磁石ホルダを用い、この軸部をベース部の円筒内に挿入して、磁石体を保持するようにしても良い。更に、移動体25のホルダ部H5にこの軸部を設けて、磁石ホルダとしても良い。
【0070】
<変形例6>
上記第1実施形態では、磁気検出部材3としてホール素子を用いたが、これに限るものではなく、例えば、GMR(Giant Magneto Resistive)素子、MR(Magneto Resistive)素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子等であっても良い。
【0071】
<変形例7>
上記第1実施形態では、位置検出センサ101が位置検出装置500に適用された場合の例で説明を行ったが、これに限るものではなく、本発明の位置検出センサは、移動する被検知物の位置を検出する装置に、適宜、利用することができる。
【0072】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。