【文献】
Database GenBank [online],2000年 7月 8日,Accession No. AJ276355,[平成25年9月18日検索],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AJ276355
【文献】
Database GenBank [online],2009年 9月18日,Accession No. DQ392987,[平成25年9月18日検索],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ392987
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果、及び成長促進効果から選ばれる少なくとも1種以上の効果を有し、安全性が高い乳酸菌を提供することを課題とする。さらには、疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果、及び成長促進効果から選ばれる少なくとも1種以上の効果を有する乳酸菌を有効成分とする製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに特定の菌学的性質を有し、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上であるエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌が、優れた疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果、及び成長促進効果から選ばれる少なくとも1種以上の効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
【0010】
[1] 以下の菌学的性質を有し、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上であるエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌:
形態学的性質
1)グラム染色:陽性
2)胞子形成能:なし
3)運動性:なし
生理学的性質
1)カタラーゼ:陰性
2)ピルピン酸ナトリウムの分解:陽性
3)エスクリンの分解:陽性
4)ピロリドニル−2−ナフチルアミドの分解:陽性
5)2−ナフチル−β−D−ガラクトピラノシドの分解:陽性
6)L−ロイシン−2−ナフチルアミドの分解:陽性
7)L−アルギン酸の分解:陽性
8)各種炭水化物の分解性
D−リボース:+
D−マンニトール:+
乳糖:+
D−ソルビトール:−
D−トレハロース:−
D−ラフィノース:−
【0011】
[2] 以下の化学分類学的性質を有することを特徴とする[1]に記載のエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌:
化学分類学的性質
配列番号1に示す塩基配列、又は配列番号1と90%以上の配列同一性を示す塩基配列を有する。
【0012】
[3] エンテロコッカス・フェシウムR30株(NITE BP−01362)、エンテロコッカス・フェシウムR28株(NITE BP−01361)、又は前記菌株がDNA変異処理された変異体である、[1]又は[2]に記載のエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌。
【0013】
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の乳酸菌、又は該乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣を含有する組成物。
【0014】
[5] さらに保護剤を含むことを特徴とする[4]に記載の組成物。
【0015】
[6] 保護剤の含量が乾燥菌体重量に対して1重量%以上であることを特徴とする[5]に記載の組成物。
【0016】
[7] 保護剤が、ショ糖、トレハロース、グルタミン酸ナトリウム、ヒスチジン、リンゴ酸の群から選択される1種以上であることを特徴とする[5]に記載の組成物。
【0017】
[8] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を有効成分とする疲労改善剤。
【0018】
[9] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を有効成分とする血流改善剤。
【0019】
[10] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を有効成分とする便臭改善剤。
【0020】
[11] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を有効成分とする成長促進剤。
【0021】
[12] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を含有する食品。
【0022】
[13] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を含有する飼料または動物用医薬品。
【0023】
[14] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物を含有する医薬品。
【0024】
[15] 疲労、血流障害、便臭、及び成長不良から選ばれる少なくとも1種以上の状態の改善または緩和に使用するための、[4]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
【0025】
[16] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、疲労または血流障害を改善する方法。
【0026】
[17] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、便臭を改善する方法。
【0027】
[18] [4]〜[7]のいずれかに記載の組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、成長促進方法。
【0028】
本発明は、2012年7月31日に出願された日本国特許出願2012−170136号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の特定の菌学的性質を有するエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌は、疲労や血流障害を改善することが認められたことから、本発明の乳酸菌、又は当該乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣を含有する組成物は、安全性が高く、且つ疲労や血流障害の改善作用を有する食品、医薬品に用いることができる。さらに、当該乳酸菌は、便臭改善効果や成長促進効果が認められたことから、本発明の乳酸菌、又は当該乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣を含有する組成物は、畜産分野等において、抗生物質などの薬剤の代替として、安全性が高く、且つ便臭改善効果や成長促進効果を有する飼料、飼料添加物に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.本発明の乳酸菌
本発明の乳酸菌は、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上、好ましくは分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が90%以上、より好ましくは分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が95%以上であるエンテロカッコス・フェシウム(Enterococcus faecium)に属する乳酸菌である。
【0032】
分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%未満、又は40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%未満であると、疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果、及び成長促進効果から選ばれる少なくとも1種以上の効果を有する乳酸菌が得られないため、好ましくない。
【0033】
本発明の「分散媒非存在下で凍結乾燥を行う」とは、常法により培養した培養液中の菌体を遠心分離器などを用いて集菌し、集菌した菌体に分散媒を添加しないで、水中で菌体を分散させ、凍結乾燥することである。「分散媒」とは、集菌した菌体を均一に分散できる物質であって、生理食塩水、リン酸生理食塩水、保護剤を含有した溶液などが挙げられる。前記「保護剤」とは、凍結や乾燥などが菌体へ与えるダメージを軽減できる物質であって、トレハロース、ウシ血清アルブミン、脱脂粉乳、グルタミン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸、ヒスチジン、リンゴ酸、ホエー、グルコース、アスパラギン酸、メチオニン、デンプン、デキストリン、ショ糖、乳糖、塩化ナトリウム、リン酸塩などが挙げられる。
【0034】
本発明の乳酸菌は、以下に示すスクリーニング方法により得ることができる。
【0035】
(1)1次スクリーニング(分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率の算出)
乳酸菌が生育可能な培地を用いてスクリーニング株を37℃で24時間培養し、遠心分離により培養液と菌体を分離させ、培養液を除去し菌体を回収する。前記回収した菌体に、分散媒を添加しないで、適量の水を加え、分散させた菌体濃縮液を得る。当該菌体濃縮液中の総生菌数をコロニーカウント法などの常法により求める。次いで菌体濃縮液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥菌体中の総生菌数をコロニーカウント法などの常法により求める。そして、前記菌体濃縮液中の総生菌数と前記凍結乾燥菌体中の総生菌数により、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率を算出し、前記生残率が40%以上である乳酸菌を選抜する。
【0036】
(2)2次スクリーニング(40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率の測定)
1次スクリーニングにおいて分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であった乳酸菌を37℃で24時間培養し、遠心分離により培養液と菌体を分離させ、培養液を除去し湿菌体を得る。前記湿菌体に分散媒を添加した後、凍結乾燥し凍結乾燥菌体を得る。得られた凍結乾燥菌体を生菌数が1.0×10
10cfu/gになるよう賦形剤を添加し生菌製剤を調製する。調製した生菌製剤を40℃のインキュベータ内で4ヶ月間保存した後、生菌製剤1g当たりの生菌数をコロニーカウントなどの常法により求める。そして、保存前の生菌製剤中の生菌数(1.0×10
10cfu/g)と40℃で4ヶ月保存した生菌製剤1g当たりの生菌数により、40℃で4ヶ月保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率を算出し、前記生残率が80%以上である乳酸菌を選抜する。
【0037】
上記スクリーニングにより得られた本発明の乳酸菌の例である、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)R30株(以下、R30株ともいう)及びR28株(以下、R28株ともいう)は2012年5月16日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE P−1362、NITE P−1361として寄託され、2013年4月24日付でブタベスト条約の規定下で受託番号NITE BP−01362、NITE BP−01361としてそれぞれ国際寄託に移管されている。
【0038】
前記エンテロコッカス・フェシウムR30株及びR28株は、以下に示す菌学的性質を有している。
形態学的性質
1)グラム染色:陽性
2)胞子形成能:なし
3)運動性:なし
生理学的性質
1)カタラーゼ:陰性
2)ピルピン酸ナトリウムの分解:陽性
3)エスクリンの分解:陽性
4)ピロリドニル−2−ナフチルアミドの分解:陽性
5)2−ナフチル−β−D−ガラクトピラノシドの分解:陽性
6)L−ロイシン−2−ナフチルアミドの分解:陽性
7)L−アルギン酸の分解:陽性
8)各種炭水化物の分解性
D−リボース:+
D−マンニトール:+
乳糖:+
D−ソルビトール:−
D−トレハロース:−
D−ラフィノース:−
【0039】
以上の菌学的性質をAPI20ストレップ(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)等を用いて解析した結果、エンテロコッカス・フェシムと同一の菌学的性質を示した。また、16SrDNAの全塩基配列解析の結果から、R30株が配列同一性99.8%、R28株が配列同一性99.9%でエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)DSM20477株と一致した。但し、分散媒非存在下で凍結乾燥した時の生菌の生残率、及び40℃で4ヶ月保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率に関しては、明らかにDSM20477株とは異なっている。
【0040】
本発明のエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌は、さらに以下の化学分類学的性質を有することを特徴とする。
【0041】
化学分類学的性質
配列番号1に示す塩基配列、又は配列番号1と90%以上の配列同一性を示す塩基配列を有する。
【0042】
本発明のエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌は、DSM20477の16SrDNAの配列番号1に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有すればよく、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、最も好ましくは99.5%以上、99.8%以上、100%であると、優れた疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果、及び成長促進効果から選ばれる少なくとも1種以上の効果を有する乳酸菌を得ることができる点で好ましい。配列同一性が90%未満であると、優れた疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果、及び成長促進効果から選ばれる少なくとも1種以上の効果を有する乳酸菌が得られない。
【0043】
また本発明においては、上記R30株またはR28株だけでなく、それらの変異体も同等の効果を有する限り、本発明の技術範囲に属し、前記R30株またはR28株の代わりに本発明の組成物に含有させることができる。「変異体」とは、DNA変異処理された乳酸菌を示し、「DNA変異処理」とは、放射線や突然変異誘導物質などの公知の手段によって人為的に突然変異を誘導させる処理をいい、また、DNA変異には自然突然変異によるものも含まれる。
【0044】
本発明の乳酸菌の培養については、それらが生育可能な培地であればいかなる培地を使用してもよく、培養方法については、試験管培養、フラスコ培養、発酵槽による培養などにより培養することができ、特に制限されるものではないが、例えば、乳酸菌培養に一般的に使用されているMRS培地を用い、一般的な条件で通常の乳酸菌培養を行えばよい。
【0045】
2.本発明の組成物及び各種製剤
本発明の組成物は、前記の本発明の乳酸菌若しくはその変異体を含有する。また、本発明の組成物に含まれる乳酸菌若しくはその変異体は、菌体そのものであってもよく、当該乳酸菌若しくはその変異体の処理物若しくは抽出残渣であってもよい。
【0046】
本発明の組成物に含まれる菌体としては、生菌でも死菌(死滅菌)でもよい。ここで生菌とは、生きたままの乳酸菌であり、死菌(死滅菌)とは、加熱、加圧、薬物処理などにより殺菌処理を施した菌体のことである。
【0047】
本発明でいう「処理物」としては、乳酸菌の磨砕や破砕、抽出などによる液状化物、濃縮、ペースト化、乾燥(スプレードライ、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥など)、希釈から選ばれる少なくとも一つの処理を施した処理物が挙げられ、「抽出残渣」としては、例えば、菌体を煮沸水または熱水で処理し、菌体からエキスを抽出した後の残渣を遠心分離により回収した沈降物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の乳酸菌の生菌を含有した組成物は、例えば、常法で培養した培養液中の菌体を集菌し、集菌した菌体に保護剤を溶解した溶液を添加し、乾燥した後、適当な賦形剤と混合することで得ることができる。
【0049】
上記保護剤とは、トレハロース、ウシ血清アルブミン、脱脂粉乳、グルタミン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸、ヒスチジン、リンゴ酸、ホエー、グルコース、アスパラギン酸、メチオニン、デンプン、デキストリン、ショ糖、乳糖、塩化ナトリウム、リン酸塩など、凍結や乾燥などが菌体へ与えるダメージを軽減できる物質であればよい。これらの保護剤は、単独または組み合わせて使用することができる。例えば、定法により培養した培養液中の菌体を遠心分離して集菌し、集菌した菌体に、トレハロース、グルタミン酸ナトリウム、ヒスチジン、リンゴ酸、ショ糖等の保護剤を溶解した溶液を添加することができる。各保護剤の配合割合は限定されないが、保護剤総量の下限は、乾燥菌体重量に対して1重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは100重量%以上である。保護剤の最終濃度が乾燥菌体重量に対して1重量%未満であると、凍結や乾燥などが菌体へ与えるダメージを十分に軽減できず、好ましくない。
【0050】
本発明の乳酸菌の死菌を含有した組成物は、例えば、常法で培養した培養液中の菌体を集菌し、集菌した菌体を殺菌処理し、乾燥した後、適当な賦形剤と混合することで得ることができる。
【0051】
上記殺菌処理とは、加熱、加圧、薬物処理等により菌を死滅させることであり、例えば、乾熱殺菌、蒸気殺菌、高圧蒸気殺菌、化学的殺菌、超音波殺菌、電磁波殺菌、紫外線殺菌等を挙げることができる。また、殺菌処理は、集菌した菌体を乾燥した後行ってもよい。
【0052】
本発明の組成物は、優れた疲労改善効果を有することから、疲労改善剤として使用できる。本発明の疲労改善剤は、過度のストレス、偏った食生活、睡眠不足などの不規則な生活習慣などによる疲労感の予防または改善、運動能力向上、持久力向上などの作用を有する。
【0053】
さらに本発明の組成物は、優れた血流改善効果を有することから、血流改善剤として使用できる。本発明の血流改善剤は、過度のストレス、偏った食生活、睡眠不足などの不規則な生活習慣などによる冷え性、肩こり、肌荒れ、腰痛などの病態を予防または改善する作用を有する。
【0054】
さらに本発明の組成物は、優れた便臭改善効果を有することから、便臭改善剤として使用できる。本発明の便臭改善剤は、腸内環境のバランスが乱れやすい乳幼児、高齢者、体力が低下したヒトの便臭を改善する作用を有する。また、多頭飼育やワクチンなどの薬剤投与によるストレスで腸内環境が悪化している家畜の便臭を改善する作用を有する。
【0055】
さらに本発明の組成物は、優れた成長促進効果を有することから、成長促進剤として使用できる。本発明の成長促進剤は、乳幼児などの成長を促進したり、老人、病人などの体重減少を抑制したりする作用を有する。また、多頭飼育やワクチンなどの薬剤投与によるストレスで腸内環境が悪化している家畜の成長を促進する作用を有する。
【0056】
本発明において、疲労改善効果は、例えば後述する実施例のように、トレッドミル装置を用いて、ラットを10m/minの速度で走行させ、3分毎に5m/minずつ段階的に速度を上げていき、ラットが走行不能となるまでの時間(最大走行時間)を測定することで評価できる。被検物質投与前のラットの最大走行時間と比べ、被検物質投与後のラットの最大走行時間が延長していれば、当該被検物質は疲労改善効果を有すると評価する。
【0057】
本発明において、血流改善効果は、例えば後述する実施例のように、ボランティアに左手を15℃の冷水に10秒間浸水してもらい、冷水負荷直前、冷水負荷後10分の時点での皮膚温度をサーモグラフィーを用いて測定することで評価できる。被検者の冷水負荷直後と冷水負荷後10分の皮膚温度の差を比べ、被検物質摂取により、被検者の皮膚温度の差が大きくなれば、当該被検物質は血流改善効果を有すると評価する。
【0058】
本発明において、便臭改善効果は、例えば後述する実施例のように、鶏ひなの便臭を測定することで評価できる。被検物質投与前の便臭と、被検物質投与後の便臭とから、便臭の低減率を求め、便臭の低減率が大きければ、当該被検物質は便臭改善効果を有すると評価する。便臭は、官能評価で評価しても良いし、糞便中の酢酸ガス濃度などを測定することでも評価できる。
【0059】
本発明において、成長促進効果は、例えば後述する実施例のように、マウスの体重を測定することで評価できる。被検物質を投与していないマウスと比べ、被検物質を投与したマウスの体重が大きれば、当該被検物質は成長促進効果を有すると評価する。
【0060】
3.本発明の組成物の使用
本発明の組成物は、食品、機能性食品またはサプリメント、飼料(ペットフードを含む)、動物用医薬品、または医薬品として使用できる。
【0061】
本発明の組成物は、食品として日常的に摂取する場合、本発明の組成物を含有する食品の形態は、特には限定されず、例えば、食用油脂組成物、調理油類、スプレー油類、バター類、マーガリン類、ショートニング類、ホイップクリーム類、濃縮乳類、ホワイトナー類、ドレッシング類、ピックル液類、パン類、ケーキ類、パイ類、クッキー類、和菓子類、スナック菓子類、油菓子類、チョコレート及びチョコレート菓子類、米菓類、ルウ類、ソース類、たれ類、トッピング類、氷菓類、麺類、ベーカリーミックス類、フライ食品類、加工肉製品類、豆腐・こんにゃくなどその他加工品、水産練り製品類、冷凍アントレ類、畜産冷凍食品、農産冷凍食品などの冷凍食品類、米飯類、ジャム類、チーズ、チーズフード、チーズ様食品、ガム類、キャンディー類、発酵乳類、缶詰類、飲料類などの一般食品形態が挙げられる。尚、本発明の乳酸菌およびDNA変異処理された変異体を用いて一般食品を発酵した発酵物であってもよい。
【0062】
本発明の組成物を食品とする場合の乳酸菌又は乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣の含有量は特に限定されないが、例えば食品中の含有量の下限は、0.00001重量%以上、好ましくは、0.001重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、食品中の含有量の上限は、100重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下の割合となるように含有させることが出来る。
【0063】
本発明の組成物はまた、カプセル剤や錠剤などのサプリメント形態で、特定保健用食品、栄養機能食品などの保健機能食品や、健康食品、栄養補助食品などの機能性食品とすることができ、疲労状態の予防や改善、運動能力、持久力向上、及び/又は冷え性、肩こり、肌荒れ、腰痛の予防や改善、及び/又は便臭の軽減又は緩和、及び/又は成長促進のために用いるものであるとの表示をすることもできる。その場合は、本発明の組成物の投与量としては、乳酸菌又は乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣として、成人一日あたりの下限は、0.01mg/kg体重以上、好ましくは1mg/kg体重以上、成人一日あたりの上限は、1000mg/kg体重以下、好ましくは300mg/kg体重以下を摂取できるように1回ないし数回に分けて投与する。
【0064】
本発明の組成物を機能性食品またはサプリメントとして用いる場合は、その剤形は特に限定されず、例えばカプセル剤、シロップ剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、ドリンク剤、注射剤、輸液、点鼻剤、点眼剤、座薬、貼付剤、噴霧剤などが挙げられる。製剤化においては、薬剤学的に許容されるほかの製剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などを適宜添加して調製することができる。
【0065】
また、本発明の組成物を、飼料(ペットフードを含む)または動物用医薬品として用いる場合は、上記の乳酸菌又は乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣を主原料として用いるが、通常の配合飼料に使用される原料を動物の種類、発育ステージ、地域などの飼育環境に応じて適宜配合してもよい。かかる原料としては、例えば穀物類または加工穀物類(とうもろこし、マイロ、大麦、小麦、ライ麦、燕麦、キビ、小麦粉、小麦胚芽粉等)、糟糠類(ふすま、米糠、コーングルテンフィード等)、植物性油粕類(大豆油粕、ごま油粕、綿実油粕、落花生粕、ヒマワリ粕、サフラワー粕等)、動物性原料(脱脂粉乳、魚粉、肉骨粉等)、ミネラル類(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、食塩、無水ケイ酸等)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6 、ビタミンB12、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸等)、アミノ酸(グリシン、メチオニン等)、ビール酵母などの酵母類、無機物質の微粉末(結晶性セルロース、タルク、シリカ、白雲母、ゼオライト等)などが挙げられる。
【0066】
本発明の飼料は、上記の飼料原料に、配合飼料に通常使用される賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料等の飼料用添加剤、所望によりその他の成分(抗生物質や殺菌剤、駆虫剤、防腐剤等)を配合してもよい。
【0067】
本発明の飼料の形態は特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、ペレット状、カプセル剤(ハードカプセル,ソフトカプセル)、錠剤等が挙げられる。本発明の飼料の給与対象となる動物は、特に限定されるものではないが、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等の家畜類、ニワトリ(ブロイラー、採卵鶏の両方を含む)、七面鳥、合鴨等の家禽類、マウス、ラット、モルモット等の実験動物、イヌ、ネコなどのペットなどが挙げられる。
【0068】
これらの場合、本発明の組成物は、乳酸菌又は乳酸菌の処理物若しくは抽出残渣として、動物の種類に関わらず、一日あたりの摂取量の下限は、0.001mg/kg体重以上、好ましくは0.01mg/kg体重以上、さらに好ましくは0.1mg/kg体重以上、一日あたりの摂取量の上限は、1000mg/kg体重以下、好ましくは500mg/kg体重以下、が摂取できるよう1回ないし数回に分けて与える。
【0069】
本発明の組成物を、医薬品として用いる場合は、その剤形は特に限定されず、例えばカプセル剤、シロップ剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、ドリンク剤、注射剤、輸液、点鼻剤、点眼剤、座薬、貼付剤、噴霧剤などが挙げられる。製剤化においては、薬剤学的に許容されるほかの製剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などを適宜添加して調製することができる。
【0070】
医薬品として用いる場合の本発明の組成物の投与量としては、前記の機能性食品またはサプリメントの投与量に準じればよい。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例においては、以下に示す1次スクリーニング法、2次スクリーニング法で乳酸菌の選抜を行い、疲労改善効果の評価法、血流改善効果の評価法、便臭改善効果の評価法、成長促進効果の評価法により、生理活性を評価した。
【0072】
<1次スクリーニング法>
乳酸菌を10mLのMRS液体培地(MRSブイヨン、関東化学株式会社製0.52gを10mLの水に溶解し121℃、15分オートクレーブ滅菌したもの)で、37℃、24時間培養し前培養液を得た。前培養液1mLを100mLのMRS液体培地に加え、37℃、24時間培養した。培養終了後、8000rpm、10分間遠心分離し、培養液と菌体を分離させた。菌体を100mLの滅菌水で洗浄後、再度遠心分離により、滅菌水と菌体を分離し、菌体に滅菌水2mLを加え、菌体濃縮液を得た。前記菌体濃縮液0.1mLを0.9mLの生理食塩水に懸濁し、さらに生理食塩水で10
6倍希釈した希釈液0.1mLをMRS寒天培地(MRS寒天培地、関東化学株式会社製1.24gを20mLの水に溶解し121℃、15分オートクレーブ滅菌したものを、90φ×20の滅菌シャーレに加え、固まらせたもの)に塗抹し、37℃、2日間培養し出現するコロニー数をカウントし、菌体濃縮液中の総生菌数を求めた。また、前記菌体濃縮液を、凍結乾燥(凍結乾燥機 VirTis社製 advantage Plus、凍結条件; −30℃、12時間、乾燥条件; 10×10
−1torr、棚温20℃、48時間)し、凍結乾燥菌体を得た。前記凍結乾燥菌体20mgを、1mLの生理食塩水に分散した菌体懸濁液を生理食塩水で10
6倍希釈した希釈液0.1mLをMRS寒天培地に塗抹し、37℃、2日間培養し出現するコロニー数をカウントし、凍結乾燥菌体中の総生菌数を求め、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率を次式より算出し、生残率が40%以上の乳酸菌を選抜した。
分散媒非存在下で凍結乾燥した際の生菌の生残率(%)=(乾燥菌体中の総生菌数/菌体濃縮液の総生菌数)×100
【0073】
<2次スクリーニング法>
1次スクリーニング法で選抜した乳酸菌を10mLのMRS液体培地で37℃、24時間培養し前培養液を得た。前培養液10mLを1LのMRS液体培地に加え、37℃、24時間培養した。培養終了後、8000rpm、10分間遠心分離し、培養液と菌体を分離させた。菌体を1Lの滅菌水で洗浄後、再度遠心分離により、滅菌水と菌体を分離し、菌体を滅菌水で20mLにメスアップし、菌体濃縮液を得た。該菌体濃縮液にショ糖が0.4重量%、トレハロースが0.2重量%、グルタミン酸ナトリウムが0.2重量%、ヒスチジンが0.2重量%、リンゴ酸が0.2重量%からなる保護剤を溶解した溶液2mL加えて、上記と同条件で凍結乾燥し、凍結乾燥菌体を得た。該凍結乾燥菌体を生菌数が1.0×10
10cfu/gになるようにデキストリンに混合し、生菌製剤を得た。生菌製剤を10gずつチャック付きポリエチレン袋(ユニパック B−8、株式会社セイニチ社製)に分注したものを、シリカゲル1g(富士シリシア化学株式会社製)を入れたアルミパウチ(ラミジップ、株式会社セイニチ社製)に梱包し、ヒートシールにより密閉したものを保存サンプルとした。保存サンプルを40℃のインキュベーターで4ヶ月間保存した後、生菌製剤100mgを1mLの生理食塩水に分散した菌体懸濁液を生理食塩水で10
7倍希釈した希釈液0.1mLをMRS寒天培地に塗抹し、37℃、2日間培養し出現するコロニー数をカウントし、40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率を次式より算出した。そして前記生残率が80%以上である乳酸菌を選抜した。
40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率(%)=(40℃で4ヶ月間保存後の生菌製剤1gあたりの生菌数/1.0×10
10)×100
【0074】
<疲労改善効果の評価法>
疲労改善効果は、トレッドミル装置(5連式形式 MK−680S−02A、室町機会社製)を用いて、7〜10週齢のSD系雄性ラット(1群;n=10)を10m/minの速度で走行させ、3分ごとに5m/minずつ段階的に速度を上げていき、ラットが走行不能となるまでの時間(最大走行時間)を測定することで評価した。被検物質投与前の最大走行時間と被検物質投与後2時間の最大走行時間を測定し、被検物質投与後2時間の最大走行時間から被検物質投与前の最大走行時間を引いた値(被検物質投与前後における最大走行時間の差)を算出し、被検物質投与により、被検物質投与前後における最大走行時間の差が増加しているか否かで評価した。
【0075】
<血流改善効果の評価法>
血流改善効果は、20〜50歳の健常男性(1群;n=5)を対象に、被検物質を1週間摂取後に冷水負荷試験を実施することで評価した。冷水負荷試験は、被検者の左手を15℃の冷水に10秒間浸し、冷水負荷直後及び冷水負荷後10分の皮膚温度をサーモグラフィー(TVS 600、日本アビオニクス社製)を用い測定した。被検物質摂取により、冷水負荷後10分の平均皮膚温度から、冷水負荷直後の平均皮膚温度を引いた値(平均皮膚温度の差)が有意に増加しているか否かで評価した。平均皮膚温度は手背部の中指の指先、中指基節骨の中間点及び第3中指手骨の中間点の3ポイントの皮膚温度の平均値とした。
【0076】
<便臭改善効果の評価法>
便臭改善効果は、8日齢の雄の鶏ひな(1群;n=10)に試験飼料を6日間与え、試験開始前及び試験終了時に回収した糞便の便臭を測定し、試験前後の便臭の低減率を算出することで評価した。被検物質を混合していない試験飼料(標準飼料)を与えた群の便臭の低減率と比べ、被検物質を混合した試験飼料(被検物質混合飼料)を与えた群の便臭の低減率が大きいか否かで評価した。便臭は、糞便の臭気指数、硫化水素ガス濃度、酢酸ガス濃度で評価し、試験前後の臭気指数、硫化水素ガス濃度、酢酸ガス濃度の低減率を算出した。臭気指数は、糞便1gを100mLの無臭蒸留水に懸濁し25℃30分間静置後、さらに10倍希釈したものを試験水とし、3点比較式フラスコ法にて求めた。また、硫化水素ガス濃度及び酢酸ガス濃度は、糞便100gをガラスシャーレに乗せ10Lのポリスチレン製袋に入れ、袋内の空気を全て排出した後、活性炭を通し精製した無臭空気を袋内に充満させ密閉し、約22℃の室温で1時間静置した後、袋内の硫化水素ガス及び酢酸ガス濃度をガス検知管で測定することで求めた。尚、回収した糞便は測定時まで密閉し、−80℃で保管した。
【0077】
<成長促進効果の評価法>
成長促進効果は、5週齢のICR雄性マウス(1群;n=10)に試験飼料を1ヶ月間与え、試験終了時の体重を測定することで評価した。被検物質を混合していない試験飼料(標準飼料)を与えた群と比べ、被検物質を混合した試験飼料(被検物質混合飼料)を与えた群の体重が大きいか否かで評価した。試験期間中の各マウスの摂餌量を測定するため、マウスは個別飼育とし、試験飼料はローデンカフェ(オリエンタル酵母社製)付き粉末給餌器を用いて自由摂取させた。
【0078】
下記の実施例では、エンテロコッカス・フェシウムの基準株であるエンテロコッカス・フェシウム DSM20477株を基準株と称する。尚、基準株の分散媒非存在下で凍結乾燥をした際の生菌の生残率は25%であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率は40%である。
【0079】
(実施例1)<R30株のスクリーニング>
食品素材等から分離した乳酸菌125株(分離株1−分離株125)を対象に、上記1次スクリーニング法により、各分離株の分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率を求めた。
【0080】
125株中、分離株17及び分離株82の2株が分散媒非存在下で凍結乾燥をした際の生菌の生残率が40%以上であった。
【0081】
次いで分離株17及び分離株82について、上記2次スクリーニング法により40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率を求めた。その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
2株中、分離株82が40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上であった。
【0084】
得られた分離株82の菌学的性質をAPI20ストレップ(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)を用いて調べた結果、エンテロコッカス・フェシウムと同一の菌学的性質を示した。さらに分離株82の16S rDNAの塩基配列の配列番号1との配列同一性を調べた結果、99.8%の配列同一性であることが明らかとなり、分離株82はエンテロコッカス・フェシウム属であることがわかった。以下実施例において、分離株82はR30株と称す。
【0085】
(実施例2)<R30株の疲労改善効果の測定>
2次スクリーニング法に記載の方法に準じてR30株及び基準株の凍結乾燥菌体を調製し、各々の凍結乾燥菌体を生菌数が5.0×10
10cfu/gになるようにデキストリンに混合した生菌製剤を得た。R30株の生菌製剤を1g/kg投与するR30株投与群、基準株の生菌製剤を1g/kg投与する基準株投与群、及びデキストリンを1g/kg投与するデキストリン投与群について上記疲労改善効果の評価法を実施した。その結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表2より、R30株投与群は、デキストリン投与群及び基準株投与群と比較して被検物質投与前後における最大走行時間の差が有意に増加した。したがって、R30株は、疲労改善効果を有することが明らかとなった。
【0088】
(実施例3)<R30株の血流改善効果の測定>
実施例2で調製したR30株の生菌製剤を1g/日摂取するR30株摂取群、実施例2で調製した基準株の生菌製剤を1g/日摂取する基準株摂取群及びデキストリンを1g/日摂取するデキストリン摂取群について、上記血流改善効果の評価法を実施した。その結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3より、R30株摂取群はデキストリン摂取群及び基準株摂取群と比較して、被検物質を1週間摂取後の平均皮膚温度の差が有意に増加した。したがって、R30株は、血流改善効果を有することが明らかとなった。
【0091】
(実施例4)<R30株の便臭改善効果の測定>
2次スクリーニング法に記載の方法に準じてR30株の凍結乾燥菌体を調製し、該凍結乾燥菌体を生菌数が1.0×10
10cfu/gになるようにデキストリンに混合した生菌製剤を得た。当該R30株の生菌製剤が0.3重量%になるように標準飼料(ブロイラー肥育前期用標準飼料;日本配合飼料株式会社製)に混合した試験飼料(R30株混合飼料)を調製し、上記便臭改善効果の評価法を実施した。その結果を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
表4より、R30株混合飼料群は、標準飼料群と比べ、臭気指数、硫化水素ガス濃度、酢酸ガス濃度の低減率が大きかった。したがって、R30株は便臭改善効果を有することが明らかとなった。
【0094】
(実施例5)<R30株の成長促進効果の測定>
被検物質として実施例4で調製したR30株の生菌製剤が0.1重量%となるように標準飼料(CE−2粉末飼料;日本クレア社製)に混合した試験飼料(R30株混合飼料)を調製し、上記成長促進効果の評価法を実施した。試験終了時の標準飼料を与えた群の体重を100%とした時のR30株混合飼料を与えた群の体重の割合を算出した。その結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
【0096】
表5より、R30株混合飼料を与えた群の体重の割合が107%と有意に高くなり、R30株が成長促進効果を有することが明らかとなった。また、標準飼料を与えた群及びR30株混合飼料を与えた群の試験期間中の総摂餌量の平均値は、各々200g、199gと差を認めないことから、R30株は飼料効率向上効果を有することが明らかとなった。
【0097】
上記表2から表5の結果より、R30株が疲労改善効果、血流改善効果、便臭改善効果及び成長促進効果を有することが明らかとなったため、本発明者らはさらにR30株と同一の菌学的性質を有し、且つ分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、40℃で4カ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上であるエンテロコッカス・フェシウム属である乳酸菌をスクリーニングすることにした。
【0098】
(実施例6)<R28株のスクリーニング>
食品素材等から分離した乳酸菌を、API20ストレップ(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)を用いてエンテロコッカス・フェシウム属と同一の菌学的性質を示した10株(エンテロコッカス・フェシウム株1〜10)を選抜した。各株に対して上記1次スクリーニング法を実施し、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であった3株(エンテロコッカス・フェシウム株1、エンテロコッカス・フェシウム株2、エンテロコッカス・フェシウム株3)について2次スクリーニングを実施し、40℃で4カ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率を求めた。その結果を表6に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
表6の結果より、エンテロコッカス・フェシウム株1が分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4カ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上であった。また、エンテロコッカス・フェシウム株1について、16SrDNAの全塩基配列解析の結果、配列番号1と配列同一性が99.9%であった。以下実施例において、エンテロコッカス・フェシウム株1をR28株と称する。
【0101】
(実施例7)<R28株の疲労改善効果及び血流改善効果の測定>
実施例6により得られたR28株の疲労改善効果及び血流改善効果について、実施例2及び実施例3と同様に調べた。尚、エンテロコッカス・フェシウム株2及びエンテロコッカス・フェシウム株4はR28株の比較対象とした。その結果を表7に示す。
【0102】
【表7】
【0103】
表7より、R28株はエンテロコッカス・フェシウム株2及びエンテロコッカス・フェシウム株4と比較して、有意な疲労改善効果及び血流改善効果を有していることが明らかとなり、結果として特定の菌学的性質を有し、分散媒非存在下で凍結乾燥を行った際の生菌の生残率が40%以上であり、且つ40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率が80%以上であるエンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌が優れた効果を持つことが明らかとなった。
【0104】
(実施例8)<R28株の便臭改善効果及び成長促進効果の測定>
R28株の便臭改善効果及び成長促進効果について、実施例4及び実施例5と同様に調べた。その結果を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
表8より、標準飼料のみを与えた群と比べR28株混合飼料を与えた群は顕著な便臭改善効果、並びに、有意な成長促進効果を有することが明らかとなった。また、R28株の成長促進効果の測定の結果、試験期間中の総摂餌量の平均値は標準飼料群、R28混合飼料群共に200gとなり、R28株は、飼料効率向上効果を有することが明らかとなった。
【0107】
(実施例9)<R30株、R28株を用いた生菌製剤の製造方法>
R30株を1LのMRS液体培地で37℃、24時間培養した。培養終了後、遠心分離した菌体を1Lの滅菌水で洗浄後、再度遠心分離することにより、菌体と滅菌水を分離させた。菌体を滅菌水で20mLにメスアップした菌体濃縮液に対して、ショ糖、トレハロース、グルタミン酸ナトリウム、ヒスチジン、リンゴ酸からなる保護剤が菌体濃縮液中の乾燥菌体重量に対して、0、1、3、10、100、1000、10000重量%になるよう保護剤を溶解した溶液を添加し、凍結乾燥した。該凍結乾燥菌体を生菌数が1.0×10
10cfu/gになるようにデキストリンに混合し、生菌製剤を調整し、40℃で4ヶ月間保存した際における生菌製剤中の生菌の生残率を求めた。また、R28株についても同様の実験を行った。その結果を表9に示す。
【0108】
【表9】
【0109】
表9の結果より、保護剤を乾燥菌体重量に対して1重量%以上添加することで、40℃で4ヶ月間保存した際の生菌製剤の生菌の生残率が向上した。また、乾燥菌体重量に対して保護剤の量を、3重量%、10重量%、100重量%と増やすことで、40℃で4ヶ月間保存した際の生菌製剤中の生菌の生残率は向上した。