(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の基板処理装置100の側面図である。基板処理装置100は、基板処理装置100に基板Wが搬入される前の工程(光配向処理装置で行われる光配向処理工程)にて処理された基板Wに、処理液を供給して処理を行う装置である。なお、基板処理装置100の前の工程である光配向処理工程については後述する。
【0017】
基板処理装置100は、
図1に示すように接液処理ユニットU1(接液処理装置)、リンス処理ユニットU2、乾燥ユニットU3の複数のユニットを有する。各ユニットU1、U2、U3には、図示しない駆動機構によって回転する搬送ローラ1(保持手段)が備えられ、この搬送ローラ1上に基板Wが載置され、図中X方向に搬送されて順次処理される。この駆動機構と搬送ローラ1は、搬送手段を構成する。
【0018】
なお、搬送ローラ1に関して、その一例として、例えば、回転軸の周囲にその幅方向に所定のピッチで基板Wと直接接触するローラ部を備えている搬送ローラを考えることができる。
【0019】
しかしながらこのような搬送ローラを採用した場合、基板Wを搬送ローラ上に載置するとローラ部が所定のピッチで設けられていることから、当該ローラ部と基板とが接触する部分と接触しない部分とができる。すると、基板Wが薄いことから搬送中に基板Wが撓むことが考えられる。このように基板Wが撓むと、接液処理を行った場合に処理ムラができる可能性がある。また、基板Wが撓まないとしても、接液処理を行った場合に、基板Wが搬送ローラの接触部と接触する部分と接触しない部分とでは、吐出された処理液が基板表面に当たる際の力が異なることが考えられ、これは処理ムラを招来しかねない。
【0020】
一方、ローラ部を備えず、搬送軸自体がローラの役割を果たす搬送ローラ1を使用する場合には、上述したような弊害が生ずる可能性を低減することができる。そこで、処理対象となる基板Wを搬送する搬送ローラ1としては、載置される基板表面が平滑な状態になるよう形成される搬送ローラ1が好適に使用される。
【0021】
接液処理ユニットU1には、処理液であるエチルラクテート液(Ethyl−L−lactate)を基板Wに供給するための第1ノズルN1と複数の第2ノズルN2が備えられている。リンス処理ユニットU2には、接液処理ユニットU1から搬入された基板Wにリンス液(たとえば、純水)を供給するためのシャワーノズル2が備えられている。さらに、乾燥ユニットU3には、リンス処理ユニットU2から搬入された基板Wに気体(たとえば、エア)を噴射して、基板Wを乾燥させるためのスリットノズル3が備えられている。
【0022】
なお、処理液としては、エチルラクテート液の他、例えば、IPA(イソプロピルアルコール:Isopropyl Alcohol)やオゾン水も考えられ、これらはいずれも光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高めることが可能な、例えば「異方性向上液」とも称することができる処理液である。そこで、以下においては、この異方性向上液の一例としてエチルラクテート液を挙げて説明をする。
【0023】
また、第1ノズルN1、第2ノズルN2、シャワーノズル2、スリットノズル3は、いずれも、搬送ローラ1によって搬送される基板と対向するように、基板Wの搬送経路の上方に、かつ基板Wの搬送方向に沿ってこの順番で設けられる。
【0024】
さらに、基板におけるX方向に直交する幅方向Yの長さをAとすると、シャワーノズル2によって形成される基板上でのY方向における塗布領域長さ、スリットノズル3のスリット長は、それぞれ少なくともA以上とされる。
【0025】
図2は、基板処理装置100の接液処理ユニットU1の概略構成図である。第1ノズルN1は、スリットノズルであり、処理液であるエチルラクテート液をカーテン状に吐出する構成となっている。さらに第1ノズルN1は、吐出されるエチルラクテート液に気泡が含まれることを防止するために、余剰気体を抜くための弁を有するなど、公知の気泡防止のための構成を有するノズルである(例えば、特開2008−53689号公報)。なお、ここでいう「防止」とは、ノズルから吐出されるエチルラクテート液の中に気泡が含まれること
を防ぐことであって、一度発生した気泡を除去してから吐出する機構も含まれる。
【0026】
一方、第2ノズルN2は、第1ノズルN1が吐出する液と同じエチルラクテート液を液滴状に吐出するシャワーノズルであり、気泡を含まないようにする機構等は特に具備していない。ただし、第2ノズルN2と基板Wとの高さ距離は、吐出されたエチルラクテートが基板Wに供給後、基板W上表面で泡立つことのないよう、吐出圧力を考慮して設定されている。
【0027】
また基板におけるX方向に直交する幅方向Yの長さをAとすると、第1ノズルN1のスリット長、複数の第2ノズルN2によって形成される基板上でのY方向における処理液供給領域長さは、それぞれ少なくともA以上とされる。
【0028】
図3は、基板処理装置100に基板Wが搬送されてくる前の工程である光配向処理を行う光配向処理装置4の構成と、基板Wが基板処理装置100に搬入されて最初に搬入される接液処理ユニットU1とを表す図である。なお
図3においては、リンス処理ユニットU2、乾燥ユニットU3を省略している。
【0029】
光配向処理装置4は、ランプLが備えられており、基板WにUV光を照射(光配向処理)する装置である。ランプLからUV光が照射されると、基板W上に形成された感光性樹脂層の分子構造の一部に構造変化が生じ、配向規制力が付与される。この配向規制力が付与された基板Wには、低分子量成分が残存している。この低分子量成分とは、例えば、光が照射される前の高分子の末端付近で光分解した遊離成分であり、液晶配向膜の配向規制力の付与には寄与しないものである。この低分子量成分を除去することによって、液晶配向膜の異方性を高めることが可能となる。
【0030】
次に、基板処理装置100における処理の手順について説明する。なお、動作制御は、すべて図示しない制御部による。
【0031】
光配向処理装置4で光配向処理が行われた基板Wは、基板処理装置100に搬入され、搬送ローラ1によって搬送方向X方向に順次搬送されながら処理される。
【0032】
まず、接液処理ユニットU1に基板Wが搬入されると、図示しない制御部から信号が送られ、第1ノズルN1から、処理液であるエチルラクテート液がカーテン状に吐出される。
【0033】
処理液として用いるエチルラクテート液は、前工程である光配向処理によって基板Wの表面に残された低分子量成分を除去するために有効であることが知られているが、気泡を含みやすい性質を有している。気泡が多く含まれた状態のエチルラクテート液を基板Wに供給すると、エチルラクテート液と基板W表面との間に気泡が介在して、基板Wの表面への接液を邪魔する。そのため、エチルラクテート液が基板Wに効果的に作用せず、均一な液晶配向膜の形成ができないおそれがある。
【0034】
このため、第1ノズルN1は既述の通り、気泡を除去する構成を有する公知のスリットノズルを採用している。第1ノズルN1から供給されるエチルラクテート液は、基板W上で液膜を形成する。基板Wの搬送速度は、基板Wの表面にエチルラクテート液の液膜形成が可能な速度となるように、不図示の駆動機構によって搬送ローラ1の回転速度が設定される。
【0035】
また、前工程で基板Wの表面に残された低分子量成分は、このエチルラクテート液に一定時間接触することによって除去される。従って、基板W上のエチルラクテート液は、一定時間、気泡を含まない液膜として基板W上に存在する必要がある。
【0036】
基板Wは、搬送ローラ1によって搬送方向Xに搬送されつつ、第1ノズルN1からエチルラクテート液が供給されることによって処理されるが、処理が進行するにつれ、基板W上のエチルラクテート液(特に基板Wの端部に到達した液)が基板Wよりこぼれ落ちていく。したがって、基板Wにおける搬送方向Xの下流側に存在する液膜は、同時点で第1ノズルN1の真下を搬送される基板Wの一部と比較して薄くなる。このため、第2ノズルN2は、エチルラクテート液の液膜が一定時間、基板W上に形成され続けるために必要な箇所に設けられている。
【0037】
すなわち、第1ノズルN1から供給されたエチルラクテート液の液膜が、薄くなりつつも存在する状態(エチルラクテート液が存在しない箇所がない状態)である基板Wに対し、第2ノズルN2からエチルラクテート液が供給されるように、第2ノズルN2の設置位置が設定される。
【0038】
このようなことを考慮して配置される第2ノズルN2からは、基板Wが接液処理ユニットU1に搬入された後、一定時間経過後に、図示しない制御部からの信号によって、エチルラクテート液の供給が開始するよう構成されている。
【0039】
第2ノズルN2は、シャワーノズルであり、第1ノズルN1のような気泡を除去する機構は特に有していないため、第2ノズルN2から吐出されるエチルラクテート液には、第1ノズルN1から吐出されるエチルラクテート液と比較して、気泡が含まれる可能性が高い。
【0040】
しかしながら、次の理由から、第2ノズルN2から供給されるエチルラクテート液に気泡が含まれていたとしても、処理に影響を与えることは防止される。
【0041】
1つめは、第2ノズルN2からエチルラクテート液が供給される時点では、基板W上に第1ノズルN1から供給されたエチルラクテート液の液膜が存在しているからである。この時点の液膜は、第1ノズルN1から供給された直後と比べると薄くなってはいるものの、エチルラクテート液が存在しない箇所がない状態になっているため、第2ノズルN2から供給されるエチルラクテート液に含まれる気泡が処理の邪魔となることはない。
【0042】
2つめは、第2ノズルN2はシャワーノズルであり、吐出される液体は液滴状であるため、エチルラクテート液に含まれる気泡の大きさは、吐出される液滴より小さいサイズであるからである。このような小さい気泡が基板W上に供給された場合、大きいサイズの気泡が含まれる場合と比較して、エチルラクテート液と基板との間に邪魔となる気泡が存在する面積が小さいので、処理に影響を与え難い。
【0043】
3つめは、既述したように、第2ノズルN2と基板Wとの高さ距離は、吐出されたエチルラクテートが基板Wに供給後、基板W上表面で泡立つことのないよう、吐出圧力を考慮して設定されているからである(たとえば、吐出圧力が0.15メガパスカル未満であるときに、基板W表面から第2ノズル吐出面までの高さ距離は、100ミリメートル未満が好ましい)。なお、第2ノズルN2の高さが固定されている場合は、吐出圧力を調整して泡立ちを防止することもできる。
【0044】
このように、第2ノズルN2は、第1ノズルN1と比べて、気泡を除去する機構などを備える必要がないため、機構は簡易であり、安価なもので良く、第1ノズルN1と同一の機構を有するノズルを複数個備える装置と比較して大幅にコストダウンを図ることが可能になる。第2ノズルN2からエチルラクテート液が基板Wに供給されることにより、基板Wの表面には、基板Wが接液処理ユニットU1から搬出されるまで液膜が絶えず形成され続けることになる。
【0045】
基板WのX方向先端が、最下流に配置された第2ノズルN2(
図2では、右側の第2のノズルN2)の真下に到達すると、図示しない制御部は、第1ノズルN1からのエチルラクテート液の供給を停止する。この時点では、基板Wは第1ノズルN1の真下には存在しない位置まで搬送されている。つまり、本実施の形態において、第1ノズルN1と、X方向最下流に位置する第2ノズルN2の間隔に対して、X方向における基板Wの長さは短い。複数の第2ノズルN2は、第1ノズルN1からのエチルラクテート液の供給が停止された時点から、第1ノズルN1側に設置されるものから順次、一定時間経過毎に供給が停止される。この一定時間は、十分な量のエチルラクテート液により基板Wを接液処理するに要する時間を考慮して設定される。
【0046】
次に、基板Wがリンス処理ユニットU2に搬入されると、図示しない制御部からの信号によって、ノズル2からの純水の供給が開始される。ノズル2は、たとえばシャワーノズルであり、一般的な基板のリンス工程に用いられる公知のノズルである。ノズル2から基板Wに純水が供給されると、接液処理ユニットU1で形成された基板W上のエチルラクテート液の液膜は純水に置換される。
【0047】
次に、基板Wが乾燥ユニットU3に搬入されると、図示しない制御部からの信号によって、スリットノズル3からエア供給が開始される。スリットノズル3は、一般的な基板の乾燥工程に用いられる公知のスリットノズルである。スリットノズルからのエアによってリンス処理ユニットU2で基板Wに供給された純水は吹き飛ばされ、基板Wは乾燥される。乾燥ユニットU3から搬出された基板Wは次の工程へと搬送される。
【0048】
上述した第1の実施の形態によれば、基板Wに対する接液処理が完了するまで、基板W上にはエチルラクテート液の液膜を絶えず存在させておくことができるため、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ、処理にムラが生じることがなく、均一な液晶配向膜の形成が可能となる。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0050】
上記第1の実施の形態と異なる点は、基板Wを接液処理ユニットU1から搬出してリンス処理ユニットU2に搬入するタイミングと、第1ノズルN1、第2ノズルN2の液供給のタイミングである。
【0051】
まず、第1の実施の形態と同様、光配向処理がなされた基板Wが接液処理ユニットU1に搬入されると、第1ノズルN1からエチルラクテート液が基板Wに向かって供給される。搬入された基板Wは、搬送ローラ1によって順次X方向に搬送され、第2ノズルN2の下に搬送され、第1の実施の形態と同様に第2ノズルN2からのエチルラクテート液が供給される。このように第1の実施の形態と同様に、基板W上にエチルラクテート液の液膜が形成される。
【0052】
その後、基板Wが第1ノズルN1の下に存在しなくなると、図示しない制御部は、第1ノズルN1からの吐出を停止するとともに、この時点で基板Wの搬送を一時的に停止する。この時点では基板Wの上方には複数の第2ノズルN2が対向している状態となる。
【0053】
第2ノズルN2は、この停止している基板Wに対して、エチルラクテート液の吐出を行う。第2ノズルN2は、停止している基板に対してエチルラクテート液を連続的に吐出するようにしても良いが、基板W上に形成された液膜が基板W上に絶えず形成され続けることが可能なように設定されれば良く、間欠的に吐出しても良い。さらに、基板Wの搬送が停止される時間は、エチルラクテート液によって十分に処理を行うことが可能な一定の時間である。この一定時間を経過すると、基板Wは再び搬送ローラ1によって搬送され、接液処理ユニットU1からリンス処理ユニットU2に搬入される。
【0054】
このように基板Wを接液処理ユニットU1から搬出してリンス処理ユニットU2に搬入するタイミングと、第1ノズルN1、第2ノズルN2の液供給のタイミングを制御することで、第1の実施の形態と同様の光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ、処理にムラが生じることがなく、均一な液晶配向膜の形成が可能となるという効果が得られる。
【0055】
しかも、停止している基板Wにエチルラクテート液を供給するための第2ノズルN2が設けられていれば良く、搬送中の基板Wにエチルラクテート液を供給するべく搬送経路に多数第2ノズルN2を設けなくて良いため、接液処理ユニットU1に備えられる第2ノズルN2の数や搬送ローラ1の数が最小限で足りることになる。さらに、接液処理ユニットU1の大きさを小さくすることができ、基板処理装置100自体の設置スペースを削減することが可能になる。
【0056】
(第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0057】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る接液処理装置の概略構成図である。
【0058】
第3の実施の形態に係る接液処理ユニットU12は、第1ノズルN1、第2ノズルN2の他に、第3ノズルN3を有していること以外、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同じであり、同じ機構については同じ符号を用いて示し、説明は省略する。
【0059】
第3ノズルN3は、第1ノズルN1と同じ機構を有するスリットノズルであり、常に清浄なエチルラクテート液が、カーテン状に供給される。ここで第1ノズルN1および第2ノズルN2は、たとえば、図示しないタンクに貯留されているエチルラクテート液を吐出するように構成されている。この第1ノズルN1および第2ノズルN2から吐出されるエチルラクテート液は、基板Wに供給された後、図示しない回収手段によって回収されタンクに戻され、再び第1ノズルN1および第2ノズルN2より吐出されるようになっている。
【0060】
これに対し、第3ノズルN3に供給されるエチルラクテート液は、毎回未使用のエチルラクテート液が供給されるようになっている。つまり、第3ノズルN3からは、基板Wに対して循環供給されないエチルラクテート液を供給する。第3ノズルN3は、基板Wが次のリンス処理ユニットに搬送される前に、基板W上の液膜を清浄なエチルラクテート液に置換する。この第3ノズルN3は、第1ノズルN1および第2ノズルN2によって基板W上にエチルラクテート液が供給されて接液処理に十分な時間が経過した後に、基板W上にエチルラクテート液を供給する。
【0061】
このように、第3ノズルN3から吐出される清浄なエチルラクテート液が基板Wに供給されることによって、リンス工程前に基板W上の液膜に含まれる異物を除去することができる。またこれまで各実施の形態において説明したように、基板Wに対する接液処理が完了するまで、基板W上にはエチルラクテート液の液膜を絶えず存在させておくことができるため、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ、処理にムラが生じることがなく、均一な液晶配向膜の形成が可能となる。
【0062】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る接液処理装置の概略構成図である。
【0063】
第4の実施の形態に係る接液処理ユニットU12は、搬送ローラ1の下方にタンクTを有していることと、循環配管10、給液配管20、廃液配管30を有していること以外、上記第3の実施の形態と同じであり、同じ機構については同じ符号を用いて示し、説明は省略する。
【0064】
タンクTは、基板Wの搬送方向における長さの約半分の地点に仕切りT1を有し、この仕切りT1によって、A領域(第1の領域)とB領域(第2の領域)とに分けられている。A領域の底面には、循環配管10の始端が接続され、循環配管10の終端は第1ノズルN1および第2ノズルN2に接続されており、循環配管10の途中には、図示しないポンプが備えられている。B領域の底部には給液配管20の始端が設けられており、給液配管20の終端はA領域の底部に接続されており、給液配管20の途中には、図示しないポンプが備えられている。
【0065】
さらに、A領域底部には廃液配管30が設けられており、循環配管10、給液配管20、廃液配管30はそれぞれ、開閉弁10a、10b、20a、30aを有している。また、A領域のタンクTには、A領域内に貯留されるエチルラクテート液を加温するためのヒータH、冷却するための冷却手段Cが設けられている。ヒータHは、例えばタンクTのA領域の底部に設けられ、冷却手段Cは、例えばタンクTのA領域内に設けた配管内に冷却水を流すものである。
【0066】
基板Wの処理に使用されたエチルラクテート液は、タンクTに回収される。
【0067】
第1ノズルN1或いは第2ノズルN2から供給されるエチルラクテート液は、前述の通り、循環供給されており、複数回基板Wの接液処理に供されている。これに対して、第3ノズルN3から供給されるエチルラクテート液は、前述の通り、常に清浄なエチルラクテート液が使用される。タンクTにおいて、A領域は主に第1ノズルN1からのエチルラクテート液を、B領域は主に第3ノズルN3からのエチルラクテート液を回収するように、仕切りT1の位置が決められている。
【0068】
ここで、「主に」とは、A領域で回収されるエチルラクテート液は、第1ノズルN1から基板Wに供給されたエチルラクテート液と、第2ノズルN2から基板Wに供給されたエチルラクテート液が含まれることになるが、第1ノズルN1は前述の通り、基板W上に液膜を形成するものである。これに対し第2ノズルN2は、すでに第1ノズルN1によって液膜が形成された基板Wに対し補助的にエチルラクテート液を供給するためのノズルである。そのため、A領域において回収されるエチルラクテート液は、第1ノズルN1からのエチルラクテート液が圧倒的に多くなることを意味している。
【0069】
また、B領域において回収されるエチルラクテート液は、第3ノズルN3から基板Wに供給されたエチルラクテート液と、第2ノズルN2から基板Wに供給されたエチルラクテート液と、基板W上に液膜として存在する第1ノズルN1からのエチルラクテート液とが含まれることになる。ただし、第3ノズルN3は前述の通り、基板W上の液膜を置換するためのノズルであるため、B領域において回収されるエチルラクテート液は、第3ノズルN3からのエチルラクテート液が圧倒的に多くなることを意味する。
【0070】
タンクTのA領域には、濃度計Dが設けられている。濃度計Dで測定されたA領域に貯留されるエチルラクテート液の濃度の測定結果は、図示しない制御部に送信される。制御部では受信した測定結果を用いて接液処理に用いる許容範囲(予め実験等により求め設定される)の濃度であるか否かを判定する。
【0071】
A領域に貯留されるエチルラクテート液の濃度が、制御部によって許容範囲から外れたと判断されると、循環配管10の途中に設けられる図示しないポンプが停止し、弁10a、10bが閉じられる。これによって、タンクTから循環配管10へのエチルラクテート液の供給が停止され、接液処理ユニットU12における処理が一時的に停止される。そして廃液配管30の弁30aが開かれ、A領域内のエチルラクテート液が廃液され、弁30aが閉じられる。すなわち、エチルラクテート液の濃度が許容範囲から外れた場合、エチルラクテート液の使用が中止され、当該エチルラクテート液は廃液される。
【0072】
次に、給液配管20の弁20aが開かれ、B領域のエチルラクテート液が給液配管20の途中に設けられる図示しないポンプの駆動によってA領域へと移動させられる。予め設定された量のエチルラクテート液がA領域に満たされると、給液配管20の弁20aは閉じられ、ヒータHの電源が入れられる。循環配管10の弁10a、循環配管10から分岐し第2ノズルN2に接続される配管に備えられる弁10bが開かれ、第1ノズルN1および第2ノズルN2へのエチルラクテート液の供給が再開され、接液処理が再開される。
【0073】
なお、B領域に貯留される一度だけ接液処理に供されたエチルラクテート液は、図示しない廃液用の配管から廃液することが可能になっており、A領域のエチルラクテート液の濃度が許容範囲内、すなわちB領域からA領域にエチルラクテート液を給液する必要がない場合であって、B領域のエチルラクテート液が満杯になった場合は、廃液することができるようになっている。なお、基板Wが第1ノズルN1、第2ノズルN2の下方に存在するときは、その基板Wが通過してから循環配管10の途中に設けられたポンプを停止させるようにする。
【0074】
エチルラクテート液を用いる接液処理工程においては、エチルラクテート液の温度が処理効率に関わるため、所望の温度のエチルラクテートを第1ノズルN1、第2ノズルN2へ供給することが重要となる。ここで、タンクTのA領域側に設置されるヒータH、冷却手段Cによって、これから基板Wに供給されようとしているA領域のエチルラクテート液の温度管理をしておくことで、効率よく接液処理を行うことができる。
【0075】
さらに上述したように、タンクTが仕切りT1によって二つの領域に分けられている。一方のA領域は主に複数回接液処理に供されたエチルラクテート液が、他方のB領域は主に一度だけ接液処理に供されたエチルラクテート液が回収される。そのため、仕切りT1を備えないときと比べ、処理に用いるエチルラクテート液の濃度の均一性が保ちやすくなる。
【0076】
すなわち、仕切りT1を備えない場合、第1ノズルN1、第2ノズルN2、第3ノズルN3から供給されるすべてのエチルラクテート液が同じ領域に回収される。したがって、第1ノズルN1、第2のノズルN2に循環供給されて徐々に濃度が薄くなっていくエチルラクテート液と、循環供給されず常に新液を供給する第3ノズルN3からのエチルラクテート液が不均一に混ざり合い、エチルラクテート液の濃度が著しく変化する。
【0077】
一方、仕切りT1を備えていることによって、濃度変化が大きいA領域内のエチルラクテート液の濃度測定をし、許容範囲を外れればそのようなエチルラクテート液を廃液した後、循環供給に用いていなかった領域B内のエチルラクテート液を使用するようにする。このような処理を行うことによって、常に許容範囲内の濃度であって、比較的均一な濃度のエチルラクテート液を基板Wに供給することができる。
【0078】
このことは併せて、上述した各実施の形態で説明したように、基板Wに対する接液処理が完了するまで、基板W上にはエチルラクテート液の液膜を絶えず存在させておくことができるため、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ、処理にムラが生じることがなく、均一な液晶配向膜の形成が可能となる、との効果を奏する。
【0079】
また、基板Wのサイズが大きくなり、使用されるエチルラクテート液の量が多量になったとしても、仕切りT1を備えてエチルラクテート液の濃度管理をすることによって、タンクT内のエチルラクテート液すべての濃度を管理する必要がなくなるため、常に比較的容易に許容範囲内の濃度のエチルラクテート液を第1ノズルN1、第2ノズルN2に供給することができる。
【0080】
さらに、これから第1ノズルN1に供給されるエチルラクテート液の温度を調整するためにはA領域にのみヒータH、冷却手段Cを備えれば足りるため、タンクTの底部全体にヒータH、冷却手段Cを備える場合と比較して、エネルギーを削減することができる。
【0081】
なお、B領域のエチルラクテート液が満杯になった場合に、図示しない別のタンクに貯留しておくこともできる。または、仕切りT1を介して、B領域からA領域にオーバーフローすることができるようにしておいても良い。
【0082】
また、A領域のエチルラクテート液は、濃度計Dによってその濃度が測定されることにより、接液処理において制御部が当該測定結果を用いて許容範囲であるか否かが判断される例を挙げたが、これに限らず、時間的に管理をしても良い。
【0083】
また、A領域のエチルラクテート液の濃度測定は、エチルラクテート液中に含まれる不純物の濃度を測定することによって管理するようにしても良い。
【0084】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。なお、第5の実施の形態において、上述の第1ないし第4の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0085】
図6は、第5の実施の形態に係る接液処理装置U13の概略構成図である。接液処理装置U13は、第1の処理ユニットU13A,U13Bと第2の処理ユニットU13Cとから構成されている。
【0086】
このうち第1の処理ユニットU13A,U13Bは、ともに同じ構成を採用しており、第1ノズルN4と液膜除去ノズル5の2種類のノズルを備えている。
【0087】
すなわち、第1ノズルN4は、これまで説明してきた第1ノズルN1と同様、気泡を除去する手段を備え、基板に対してエチルラクテート液等の異方性向上液を供給することで、基板表面上に液膜を形成する役割を担っている。したがって、この第1ノズルN4はスリットノズルであり、処理液である異方性向上液をカーテン状に吐出する。また、吐出する異方性向上液は、上述したように、少なくとも、エチルラクテート液、IPA、或いは、オゾン水のいずれかである。
【0088】
基板Wが搬送手段により搬送される方向(すなわち、
図6のX方向)上流に、この第1ノズルN4が設けられている。そして搬送方向下流に液膜除去ノズル5が設けられている。当該液膜除去ノズル5は、第1ノズルN4によって基板Wの表面上に形成された液膜を除去するために、例えば、気体(たとえばエア)を噴射するためのノズルである。
【0089】
このように第1処理ユニットU13A,U13Bは、いずれも同じ構成を持っていることから、基板Wに対して同じ処理を2度行うことになる。そして
図6に示すように、第1処理ユニットU13Aと第1処理ユニットU13Bは、隣接して設置されていることから、基板Wに対する処理は連続して行われる。
【0090】
なお、ここでは2つの第1の処理ユニットを隣接して設けていることから連続して2度同じ処理を行う構成となっているが、連続して処理をする回数については、1回ではなく複数回であれば良く、2度、或いは、3度でも良い。
【0091】
一方、第2の処理ユニットU13Cは、エチルラクテート液等の異方性向上液を液滴状に吐出するシャワーノズルである第2ノズルN5を備えている。第2の処理ユニットU13Cは、第2ノズルN5から基板Wに向けて異方性向上液を吐出することで、第1の処理ユニットU13A,U13Bにおいて除去できず残ってしまった可能性のある低分子量成分を除去する役割を有する処理ユニットである。当該第2ノズルN5は、気泡を除去する機構は特に有していない。
【0092】
そのため第2ノズルN5と基板Wとの高さ距離は、基板Wに当たった異方性向上液が十分に低分子量成分を除去することができるとともに、基板Wに異方性向上液を当てることによるムラの発生を回避することのできる距離に設定される。また、当該第2ノズルN5は、
図6に示す第2の処理ユニットU13Cにおいては基板Wの搬送方向に沿って5つ設けられている。但し、第2の処理ユニットU13C内にいくつの第2ノズルN5を設けるかは任意に設定することができる。
【0093】
ここで、これまで各実施の形態においても説明してきた通り、本発明は、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ均一な液晶配向膜の形成が可能となる接液処理装置等を提供することを目的としている。これまでは、例えば第1の実施の形態に係る接液処理装置U1のように、エチルラクテート液の利用によって低分子量成分の除去を行う際、第1ノズルN1から供給されたエチルラクテート液の液膜が存在はするものの薄くなった場合に、第2ノズルN2から別途エチルラクテート液を供給することで、基板Wに対する接液処理が完了するまで、基板W上にはエチルラクテート液の液膜を絶えず存在させておくことで、処理の促進を図ってきた。
【0094】
第5の実施の形態においては、液晶配向膜の異方性を高め、且つ均一な液晶配向膜の形成の促進に当たって、基板Wの表面上にエチルラクテート液の液膜を形成した後、形成された当該液膜を一旦全て除去し、再度液膜を形成する方法を採用する。具体的には以下の流れで処理がなされる。なおこの処理は、
図6において、接液処理装置U13内を基板WがX方向に搬送される間に行われる。
【0095】
搬送ローラ1によって基板Wが接液処理装置U13内に搬送されると、まず第1の処理ユニットU13Aにおける第1ノズルN4からエチルラクテート液がカーテン状に吐出される。エチルラクテート液が吐出されることで、基板Wの表面上に液膜が形成される。この基板Wの表面上に形成された液膜によって、基板表面上の低分子量成分の除去処理が行われる。
【0096】
基板Wの表面上に液膜が存在する状態のまま、基板Wは搬送ローラ1によって搬送される。搬送中も低分子量成分の除去処理は継続して行われているが、時間の経過とともに、例えば、エチルラクテート液が基板Wとの接触面に対して流動しないため、処理が飽和状態となり、低分子量成分の除去処理の効率が低下する。
【0097】
ここで、基板W上のエチルラクテート液を流動させることによってこの課題を解消することが考えられるが、基板W上には、既述の通り光配向法による処理が行われており、この基板W表面上でエチルラクテート液を様々な方向に流動させると、基板W上の配向方向が狂ってしまい、表示不良を起こすなどの新たな課題が生じる可能性がある。
【0098】
そこで、一旦基板Wの表面上に形成されたエチルラクテート液の液膜を液膜除去ノズル5によって除去する。液膜除去ノズル5は、エアを基板Wの表面に吹き付けることによって液膜を除去する。そして、この状態で、次の第1の処理ユニットU13Bへと基板Wが搬送される。
【0099】
第1の処理ユニットU13Bにおいて、搬入された基板Wに対して改めて第1ノズルN4からエチルラクテート液がカーテン状に吐出され、基板表面に液膜が形成される。基板Wの表面に改めて液膜が形成されることによって、再度エチルラクテート液による低分子量成分の除去処理が進められる。
【0100】
但し、第1の処理ユニットU13A内を搬送される場合と同様、第1の処理ユニットU13B内を搬送されるに従って、次第にエチルラクテート液による低分子量成分の除去処理の効率は低下する。そこで再度、液膜除去ノズル5によって基板Wの表面上に形成されたエチルラクテート液の液膜を除去する。
【0101】
液膜が除去された基板Wは、搬送ローラ1によって第2の処理ユニットU13Cへと搬送される。この第2の処理ユニットU13Cにおいては、第2ノズルN5によってエチルラクテート液が液滴としてシャワー状に基板Wの表面に向けて吐出される。
【0102】
これまで複数回にわたって第1の処理ユニットU13A,U13Bにおいてエチルラクテート液の液膜により低分子量成分の除去処理が行われてきたが、未だ基板Wの表面上には低分子量成分が残っている可能性がある。そこで、第2の処理ユニットU13Cにおいてシャワー状にエチルラクテート液を吐出し、エチルラクテート液を基板Wの表面に対して叩くように当てて、その衝撃を利用して残っている低分子量成分の除去を行う。
【0103】
これらの処理によって、接液処理装置U13内におけるエチルラクテート液等の異方性向上液を利用した低分子量成分の除去処理が終了し、搬送ローラ1によって
図6には図示しない、リンス処理ユニットU2や乾燥ユニットU3へと基板Wが搬送され、それぞれ処理が行われる。
【0104】
接液処理装置U13内において以上説明した処理が行われることで、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高め、且つ均一な液晶配向膜の形成が可能となる接液処理装置、接液処理方法、基板洗浄装置および基板処理方法を提供することが可能となる。
【0105】
特に、一旦基板Wの表面上に形成された液膜を除去した後、改めて液膜を形成することによって、チルラクテート液等の異方性向上液による低分子量成分の除去処理の促進を図ることができる。すなわち、複数回にわたって液膜の形成、除去を繰り返すことにより、その都度新しい液膜が形成されるため、処理速度が低下したとしてもそのたびに回復させることができることから、処理促進を図ることができる。
【0106】
なお、第5の実施の形態においては、このような処理を行うことで低分子量成分の除去処理の促進を図ることから、液膜の形成、除去の組み合わせを1回にのみ限ることは前提としない。それは、液膜の形成、除去がそれぞれ1回のみであると、基板Wの表面とエチルラクテート液とが接する界面に動きがなく、上述したように次第に処理速度が落ちてしまうからである。一方、当該組み合わせを何度繰り返すかについては自由に設定することが可能である。
【0107】
また、第1ノズルN4や第2ノズルN5において使用するエチルラクテート液については特に限定を加えていないことから、例えば、第4の実施の形態で説明したような、循環供給されるエチルラクテート液を使用しても、或いは、循環供給されない清浄なエチルラクテート液を使用しても良い。
(その他の変形例)
なお、上記各実施の形態において、基板が搬送ローラによって搬送される例を説明したが、これに限らず、たとえばノズル側が移動するなど、基板とノズルが相対移動する機構を有していれば良い。
【0108】
また、上記、特に第1ないし第4の実施の形態において、第2ノズルは複数備えられる例を説明したが、これに限らず、基板のサイズや搬送速度によって最適な個数を採用することができる。最小限の個数のノズルを設置することができ、コストダウンを図ることが可能になる。
【0109】
さらに、上記、特に第1ないし第4の実施の形態において、第1ノズルと第2ノズルからの処理液の供給開始および供給停止のタイミングは、各ユニットに基板が搬入されてからの時間の経過に応じて、制御部により制御される例を説明したが、これに限らず、基板の搬入タイミングとは関係のないタイミングでの制御や、あるいは基板Wが接液処理ユニットU1に搬入されて以降、乾燥ユニットU3より次工程へ搬出されるまで供給したままでも良い。また、搬送ローラ1が基板を保持するタイミングを感知し、これに応じて制御しても良い。この場合、時間によって制御する場合と比べて、より正確に、必要なタイミングにだけ処理液の供給を行うことができるため、必要最低限の処理液を使用することができるため、コストダウンを図ることが可能になる。
【0110】
また、上記各実施の形態において、リンス液を供給する手段はシャワーノズルであるとして説明したが、これに限らず、スリットノズル等でも良い。スリットノズルを採用する場合においては、一対のスリットノズルをスリット同士が向かい合うように配置することが好ましい。この場合、基板上に形成されるリンス液の液膜を厚くすることができ、これによって、基板表面のリンス処理は均一に、かつ、迅速に行うことが可能となる。
【0111】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。