特許第6290130号(P6290130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290130
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/14 20060101AFI20180226BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B66F7/14
   F16H25/20 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-77928(P2015-77928)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-196364(P2016-196364A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】坂田 英維
(72)【発明者】
【氏名】奥井 紀匡
(72)【発明者】
【氏名】茂木 一宏
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−290996(JP,A)
【文献】 特開2008−188906(JP,A)
【文献】 米国特許第04782920(US,A)
【文献】 登録実用新案第3126440(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/08、 3/16
B66F 7/02、 7/14
F16H 19/00 − 37/16
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートとトッププレートの間に挟持されている一対の支柱と、
前記両支柱の中心を結ぶ想定線に対して水平方向に直交し、且つ、前記両支柱の中心に対して等間隔の位置に配設されるねじ軸と、
記トッププレートの下面に取付けられ、駆動装置から伝達されるトルクを前記ねじ軸が嵌込まれている中空出力軸から出力するギアボックスと、
前記ねじ軸の回転により該ねじ軸上を進退動する昇降部材と、
前記両支柱の間を通る連結部材によって前記昇降部材に連結され、前記想定線に対し前記ねじ軸と反対側の垂直方向に面するワーク取付ベースと、
前記ワーク取付ベースの昇降を前記両支柱の面上でそれぞれ案内する一対のガイド部材を具えることを特徴とする、
昇降装置。
【請求項2】
前記ねじ軸の中心が前記両支柱の間に位置している、請求項1の昇降装置。
【請求項3】
前記両支柱が横断面H形状である、請求項1又は2の昇降装置。
【請求項4】
前記両支柱が横断面コ字状である、請求項1又は2の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を昇降させるための昇降装置に関し、特に、支柱と並行して配設されたねじ軸をモータ等で回転させ、ボールねじ機構等の進退動を利用して対象物を昇降させ、その昇降をガイド部材で案内するという昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような昇降装置は、主に、支柱、モータ等の駆動部、ボールねじ機構等の昇降機構、及び昇降を案内するガイド部材で構成されており、その例として、特許文献1,2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−91093号公報
【特許文献2】特開2013−127275号公報
【0004】
特許文献1は、コ字形の支柱の内側にボールねじ機構が配設され、ボールねじ機構のねじ軸に沿って、支柱内側面に直線ガイドが設けられ、支柱の下部にねじ軸と連結するギアボックスを具え、そのギアボックスにモータが連結されるという昇降装置を開示する。
【0005】
特許文献1の昇降装置は、設置床面積が小さく、この点でコンパクト化を実現している。しかし、モータとギアボックスからなる駆動機構が設置される駆動部ベースが支柱の範囲内(直下)に配設されているという構成であるため、昇降装置の長手方向(高さ方向)寸法が大きくなる傾向にある。
【0006】
一方、特許文献2には、支柱の内側に、ボールねじ機構のねじ軸と直線ガイドが並設され、ねじ軸を駆動するモータも、これらに並設されている昇降装置が開示されている。この構成によれば、特許文献1の昇降装置に比べて、昇降装置の高さ方向寸法を小さくすることができる。また、直線ガイドの長手方向寸法が比較的長いため、特許文献1の昇降装置のような、直線ガイドとねじ軸の長手方向寸法がほぼ一致しているものに比べて、昇降部材の昇降を案内できる範囲が広い。
【0007】
しかしながら、特許文献2の昇降装置は、薄型の昇降装置を実現するためのもので、モータ、ねじ軸、ガイド部材が一列に並ぶように配置されているため、対象物による負荷が昇降装置に対して偏って掛かり易いという問題もある。昇降装置には、設置床面積と高さ方向のコンパクト性だけでなく、高い剛性も求められているため、これらの両立を図った昇降装置が望まれている。
【0008】
また、組立の容易さ、メインテナンス性の向上、軽量化、及び製造コストの低減の面から、昇降装置は、部品点数が少ない方が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点及びニーズに鑑み、設置床面積と高さ方向のコンパクト性を両立し、且つ、高剛性を実現し、さらに部品点数の少ない昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ベースプレートとトッププレートの間に挟持されている一対の支柱と、
前記両支柱の中心を結ぶ想定線に対して水平方向に直交し、且つ、前記両支柱の中心に対して等間隔の位置に配設されるねじ軸と、
記トッププレートの下面に取付けられ、駆動装置から伝達されるトルクを前記ねじ軸が嵌込まれている中空出力軸から出力するギアボックスと、
前記ねじ軸の回転により該ねじ軸上を進退動する昇降部材と、
前記両支柱の間を通る連結部材によって前記昇降部材に連結され、前記想定線に対し前記ねじ軸と反対側の垂直方向に面するワーク取付ベースと、
前記ワーク取付ベースの昇降を前記両支柱の面上でそれぞれ案内する一対のガイド部材を具えることを特徴とする昇降装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベースプレートとトッププレートの間に一対の支柱が挟持され、ギアボックスがトッププレートの下面に取付けられており、両支柱の中心を結ぶ想定線に対して水平方向に直交し、且つ、両支柱の中心に対して等間隔の位置にねじ軸が配設されている。また、ねじ軸上を進退動する昇降部材に両支柱の間を通る連結部材によって連結されるワーク取付ベースが、当該想定線に対し、ねじ軸と反対側の垂直方向に面しており、且つ、一対のガイド部材によって両支柱の面上で案内されるという構成であるため、以下の効果を奏する。すなわち、第一に、ねじ軸を中心として支柱が対称に配設され、両方の支柱にガイド部材が設けられているため、対象物による負荷を両支柱で均等に受けることができ、結果として、昇降装置の剛性を高めることができる。これにより、ガイド部材を比較的小型にできるため、その分、昇降装置をコンパクトにすることもできる。第二に、支柱の一端を設置面に近付けることができるため、ガイド部材が支柱の上部から設置面近くの下部まで全部に亘ってワーク取付ベースの昇降を案内することができる。これにより、ワーク取付ベースの昇降をスムーズに、且つ、安定させることができる。また、昇降装置の高さ方向寸法を比較的コンパクトにできる。第三に、スペースを効率的に使用した、支柱及びねじ軸の配置を実現できるため、剛性を高めながら、設置床面積を最小限に抑えることができる。よって、高剛性とコンパクト性の両立を実現した昇降装置とすることができる。また、ギアボックスがトッププレートの下面に取付けられており、ねじ軸がギアボックスの中空出力軸に嵌込まれているという構成であるため、本来、ねじ軸のトッププレート側端部とベースプレート側端部に配設すべき軸受の内、トッププレート側端部の軸受を省略することができる。これにより、ねじ軸を軸支する1つの軸受の分、部品点数を削減することができるから、組立が容易であり、メインテナンス性を向上させることができる。また、軽量化と製造コストの低減も図ることができる。
【0012】
また、ねじ軸の中心が両支柱の間に位置している構成とすれば、ねじ軸の中心と負荷の中心との距離を縮めることができ、ねじ軸が許容できる荷重が増すため、ガイド部材に掛かる負荷を軽減することができる。
【0013】
また、支柱を横断面H形状又はコ字状とすれば、同形状の市販品の鋼材を支柱として使用することができるので、生産性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態の昇降装置のトッププレートを外した状態の平面図。
図2】本発明の第一実施形態の昇降装置の一部透視の側面図。
図3】本発明の第二実施形態の昇降装置のトッププレートを外した状態の平面図。
図4】本発明の第二実施形態の昇降装置の側方縦断面図。
図5】本発明の第二実施形態の昇降装置の側面図。
図6】本発明の第三実施形態の昇降装置のバリエーションを示す平面図(トッププレートを外した状態)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を、図1〜6を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1に示す昇降装置10は、ベースプレート12とトッププレート16(図2参照)の間に配設された一対の支柱30,40と、ねじ軸22及びねじ軸22上を進退動する昇降部材(昇降ナット)24を具えるボールねじ機構20を有する。ねじ軸22は、支柱30の中心Pと支柱40の中心Qを結ぶ想定線Xに対して水平方向に直交し、且つ、支柱30,40の中心P,Qに対して等間隔の位置に配設されている。ワーク取付ベース21は、支柱30,40の中心P,Qを結ぶ想定線に対してねじ軸22と反対側の垂直方向に面しており、ワーク取付ベース21と昇降部材24は、支柱30,40の間を通る連結部材26によって連結されている。ワーク取付ベース21には、対象物を載せる荷受部材(図3の符号25を参照。)が取付けられる。
【0017】
図2に示すように、支柱40はトッププレート16とベースプレート12により挟持され、モータMが連結されているギアボックスGは、トッププレート16の内面側に取付けられている。具体的には、ギアボックスGは、ギアボックスGに設けられたねじ孔62にトッププレート16の上面側からボルトが挿入されることによって固定されている。ねじ軸22は、ギアボックスGの中空出力軸64に嵌込まれ、中空出力軸64とベースプレート12上に設けられる軸受14によって回転可能に軸支されている。これにより、本来、ねじ軸22のトッププレート16側端部とベースプレート12側端部に配設すべき軸受の内、トッププレート16側端部の軸受を省略することができるから、その分、部品点数を削減することができる。よって、昇降装置10は、組立が容易であり、メインテナンス性を向上させることができる。また、軽量化と製造コストの低減も図ることができる。
【0018】
ギアボックスGは、図1に示すように、モータMに連結されているため、モータMのトルクはギアボックスG内のギアを介して中空出力軸64に出力され、ねじ軸22に伝達される。これによりねじ軸22は回転し、昇降部材24がねじ軸22上を進退動する。なお、ギアボックスGの内部構成は既に知られているものを適用すればよい。
【0019】
上記のとおり、昇降装置10のねじ軸22は、支柱30の中心Pと支柱40の中心Qを結ぶ想定線Xに対して水平方向に直交し、且つ、支柱30,40の中心P,Qに対して等間隔の位置に配設されている(図1参照)。よって、ねじ軸22を中心として支柱30,40が対称に配設されるという構成が実現される。そして、上記のとおり、支柱30,40の双方にワーク取付ベース21を案内するガイド部材50が設けられているため、対象物による負荷を両方の支柱30,40で均等に受けることができ、昇降装置10の剛性を高めることができる。これにより、ガイド部材50を従来に比べて小型にすることもできるため、その分、昇降装置10をコンパクトにすることもできる。また、昇降装置10のような支柱30,40及びねじ軸22の配置によれば、スペースを効率的に使用できるため、設置床面積を最小限に抑えることができる。
【0020】
また、支柱30,40のそれぞれの範囲外に、ねじ軸22に連結されるギアボックスGが設置されているため、特許文献1のような、ギアボックスが支柱の範囲内に設置されており、ねじ軸と支柱の長手方向寸法が同じ昇降装置に比べて、支柱の長手方向寸法を大きくすることができ、また、支柱の一端を設置面に近付けることができる。換言すれば、特許文献1の昇降装置の支柱と同等の寸法とした場合、昇降装置10の長手方向寸法を比較的コンパクトにできるということである(図2参照。)。これにより、昇降装置の低床化を図ることもでき、その場合、昇降装置の上部に作業者がアクセスし易くなるため、メインテナンス性を向上させることができる。
【0021】
ワーク取付ベース21の昇降を案内するガイド部材50は、直線ガイド52と直線ガイド52上を図示しない転動体が転動して転がり案内する、上下一対のスライド部材54から構成されている。スライド部材54は、昇降ベース31,41を介してワーク取付ベース21と連結されている。直線ガイド52は、図2に示されているように、支柱40の長手方向の略全てに亘って設けられているため(支柱30も同様。)、ワーク取付ベース21の昇降を支柱40の上部から設置面近くの下部まで全部に亘って案内することができる。よって、ワーク取付ベース21の昇降をスムーズに、且つ、安定させることができる。
【0022】
図1に示すように、昇降装置10の支柱30,40は、フランジ32,42,36,46とウェブ34,44を有する横断面H形状のものである。支柱30,40は、ワーク取付ベース21が一方のフランジ32,42の外側に位置するように配設されているが、支柱30,40の向きは適宜変更することができる。また、昇降装置10の直線ガイド52は、ウェブ34,44に取付ける以外に、フランジ32,42,36,46の内外面のいずれに取付けてもよい。
【0023】
支柱30,40には、支柱30,40及びねじ軸22を囲うカバー28,38,48が取付けられている。これにより、ボールねじ機構20とガイド部材50へ粉塵等の異物が侵入することを防ぐことができる。
【0024】
図3は、本発明の第二実施形態の昇降装置10aを示す平面図である。昇降装置10aの基本的な構成は昇降装置10と同様である。昇降装置10aのように、横断面コ字状の支柱30a,40aを用いることもできる。ギアボックスGは、昇降装置10と同様に、支柱30a,40aのそれぞれの範囲外に設置されている。連結部材26aと昇降ベース31aの形状は、支柱30a,40aの形状、及びこれらに取付けられるガイド部材50の位置によって適宜変更される。また、ガイド部材50は、図5に示すように、上下一対のスライド部材54,54を具えている。
【0025】
図3に示すように、ねじ軸22は、支柱30aの中心P´と支柱40aの中心Q´を結ぶ想定線X´に対して水平方向に直交し、且つ、支柱30a,40aの中心P´,Q´に対して等間隔の位置に配設されており、さらに、ねじ軸22の中心は、支柱30a,40aの間に位置している。この構成により、ワーク取付ベース21に取付けられるワーク25上に載せられる対象物の負荷の中心Lとねじ軸22との距離を縮めることができ、ねじ軸22が許容できる荷重が増すため、ガイド部材50に掛かる負荷を軽減することができる。よって、ガイド部材50を一層コンパクトにすることができ、その分、昇降装置全体としてもコンパクト化を図ることができる。
【0026】
図4は、昇降装置10aの側方縦断面図である。同図では、便宜上、ガイド部材50の図示を省略している。図4に示すとおり、支柱30aはトッププレート16aとベースプレート12aにより挟持され、モータMが連結されているギアボックスGは、トッププレート16aの内面側に取付けられている。ねじ軸22は、ギアボックスの中空出力軸64に嵌め込まれており、中空出力軸64とベースプレート12a上に設けられる軸受14によって回転可能に軸支されている。これにより、本来、ねじ軸22のトッププレート16a側端部とベースプレート12a側端部に配設すべき軸受の内、トッププレート16a側端部の軸受を省略することができるから、その分、部品点数を削減することができる。よって、昇降装置10aは、組立が容易であり、メインテナンス性を向上させることができる。また、軽量化と製造コストの低減も図ることができる。
【0027】
図6は、本発明の第三実施形態の昇降装置10b〜10eを示す平面図である。昇降装置10b〜10eは、図1に示されている昇降装置10と同様に、トッププレート16(図2参照。)が外されている状態である。
【0028】
昇降装置10b〜10eの支柱30b〜e,40b〜eのように、支柱の向きは適宜決定することができる。また、ワーク取付ベース21の昇降を案内するガイド部材50の支柱に対する位置も適宜決定することができ、ガイド部材50の位置に応じて、昇降ベース31,41の形状を変更すればよい。
【0029】
以上に説明した昇降装置10〜10eのように、支柱として横断面H形状又はコ字状というような市販されている形鋼を使用すれば、昇降装置の生産性を高めることができる。なお、横断面H形状又はコ字状以外の形状の支柱を採用することができることは言うまでもない。
【0030】
本発明の昇降装置のガイド機構は、上記に説明した直線ガイド52とスライド部材54から構成されるもの以外に、ローラやメタル軸受を用いたものでもよい。また、ボールねじ機構の他に台形ねじ機構等の昇降機構を適用することもできる。
【0031】
以上に説明したとおり、本発明によれば、高剛性とコンパクト性の両立を実現した、部品点数の少ない昇降装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
M 駆動装置(モータ)
G1,G2 ギアボックス
X 想定線
P,Q 支柱の中心
10〜10f 昇降装置
12 ベースプレート
16 トッププレート
21 ワーク取付ベース
22 ねじ軸
24 昇降部材
26 連結部材
30,40 支柱
50 ガイド部材
62,64 入出力軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6