特許第6290167号(P6290167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290167耐震補強金具、吊り天井の耐震補強構造及び吊り天井の脱落防止構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290167
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】耐震補強金具、吊り天井の耐震補強構造及び吊り天井の脱落防止構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/16 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   E04B9/16 B
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-254661(P2015-254661)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-115517(P2017-115517A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2016年1月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年7月20日 一般社団法人日本建築学会発行の「2015年度大会(関東) 学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集」に発表
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502306903
【氏名又は名称】八潮建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 康
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昇
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕樹
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4963484(JP,B2)
【文献】 実開昭50−117381(JP,U)
【文献】 実開昭58−187973(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00− 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を、前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部において補強する耐震補強金具であって、
上方に配置される前記野縁受け部に固定される第1金具と、
前記第1金具に跨らせて前記野縁部に固定される第2金具と、
前記第1金具と前記第2金具とを接合させる複数本のビス材とを備え、
前記第1金具は、前記野縁受け部に跨らせる折曲げ部と、前記野縁部が嵌合可能となるように下部に形成された切欠き部と、前記第1金具と前記野縁受け部のウェブとに連続して貫通されて、せん断抵抗によって両者間にずれが生じないように接合させるビス材とを有し、
前記第2金具は、前記野縁部のリップ部を挟んで対向させる一対の板部と、前記リップ部側の前記板部の下部に設けられた引掛け部と、前記引掛け部が前記リップ部に引っ掛けられる状態で前記板部間に締結力を導入させるボルト部と、前記ボルト部の座金部と、前記座金部の回転を制限させ、かつ曲げに対する剛性を高めるために一方の前記板部から張り出された制限リブ部とを有することを特徴とする耐震補強金具。
【請求項2】
前記一対の板部は、前記リップ部側に配置されるリップ部側板部と止め板部とによって構成され、前記リップ部側板部及び止め板部は前記第1金具を跨らせるために略門形に形成されているとともに、前記リップ部側板部の側縁から前記制限リブ部が張り出されていることを特徴とする請求項1に記載の耐震補強金具。
【請求項3】
建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を補強させた吊り天井の耐震補強構造であって、
前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部に取り付けられた請求項1又は2に記載の耐震補強金具と、
前記野縁受け部及び前記野縁部の少なくとも一方の軸方向に沿って側面視略V形に配置された斜め部材とを備え、
前記斜め部材の下端が前記第1金具及び前記第2金具の少なくとも一方に取り付けられていることを特徴とする吊り天井の耐震補強構造。
【請求項4】
建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を補強させた吊り天井の耐震補強構造であって、
前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部に取り付けられた請求項1又は2に記載の耐震補強金具と、
前記野縁受け部の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁受け方向の斜め部材と、
前記野縁部の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁方向の斜め部材とを備え、
前記一対の野縁受け方向の斜め部材の下端が前記第1金具に取り付けられているとともに、前記一対の野縁方向の斜め部材の下端が前記第2金具に取り付けられていることを特徴とする吊り天井の耐震補強構造。
【請求項5】
前記耐震補強金具が取り付けられた野縁受け部に対して、前記耐震補強金具を挟んだ両側の前記野縁受け部と前記野縁部との交差部に、前記野縁受け部に接合されるとともに下部が前記野縁部に固定される補強クリップが取り付けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の吊り天井の耐震補強構造。
【請求項6】
建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を補強させた吊り天井の脱落防止構造であって、
前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部に、請求項1又は2に記載の耐震補強金具が接合金具として取り付けられていることを特徴とする吊り天井の脱落防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を、野縁受け部と野縁部との交差部において補強する耐震補強金具、及びそれが取り付けられた吊り天井の耐震補強構造、並びに吊り天井の脱落防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、床スラブ又は梁などの建物の構造体から吊り下げられた野縁受け及び野縁を有する吊り天井構造を、野縁受けと野縁との交差部において補強する耐震補強金具が開発されている。
【0003】
一方、2013年8月5日、建築基準法施行令の一部が改正されて、「建築物における天井の脱落防止」の対応義務が課される「特定天井」が定義された。さらに、「脱落防止を図る際の技術基準」が制定され、「天井を耐震化する」ことによる法対応に関しては、天井に求められる性能目標が、「中地震時に損傷しない」となった。
【0004】
要するに、法改正前は、「大地震時に落ちない」ことが性能目標であったのに対し、法改正によって天井の耐震性に求められる基準が「落ちない」ことから「損傷しない」ことに変移したことに伴って、さらなる高い性能の耐震補強金具が求められることになった。なお、法改正への対応義務が課されるのは特定天井として定義されたものに限られるが、特定天井以外の吊り天井構造についても、高い性能の耐震補強金具が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4963484号公報
【特許文献2】特許第4845212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、高い剛性及び耐震性能を吊り天井構造に付与することが可能となる耐震補強金具、並びにそれが取り付けられた吊り天井の耐震補強構造を提供することを目的としている。または、吊り天井の脱落が起きにくくするための吊り天井の脱落防止構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の耐震補強金具は、建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を、前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部において補強する耐震補強金具であって、上方に配置される前記野縁受け部に固定される第1金具と、前記第1金具に跨らせて前記野縁部に固定される第2金具と、前記第1金具と前記第2金具とを接合させる一体化手段とを備え、前記第1金具は、前記野縁受け部に跨らせる折曲げ部と、前記野縁部が嵌合可能となるように下部に形成された切欠き部と、前記第1金具を前記野縁受け部に固定する接合手段とを有し、前記第2金具は、前記野縁部のリップ部を挟んで対向させる一対の板部と、前記リップ部側の前記板部の下部に設けられた引掛け部と、前記引掛け部が前記リップ部に引っ掛けられる状態で前記板部間に締結力を導入させるボルト部と、前記ボルト部の座金部と、前記座金部の回転を制限させるために一方の前記板部から張り出された制限リブ部とを有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記一対の板部は、前記リップ部側に配置されるリップ部側板部と止め板部とによって構成され、前記リップ部側板部及び止め板部は前記第1金具を跨らせるために略門形に形成されているとともに、前記リップ部側板部の側縁から前記制限リブ部が張り出されている構成とすることができる。
【0009】
また、前記接合手段は、前記第1金具と前記野縁受け部とを貫通させるビス材である構成とすることができる。さらに、前記一体化手段は、複数本のビス材である構成とすることができる。
【0010】
そして、吊り天井の耐震補強構造の発明は、建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を補強させた吊り天井の耐震補強構造であって、前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部に取り付けられた上記いずれかに記載の耐震補強金具と、前記野縁受け部及び前記野縁部の少なくとも一方の軸方向に沿って側面視略V形に配置された斜め部材とを備え、前記斜め部材の下端が前記第1金具及び前記第2金具の少なくとも一方に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
また、建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を補強させた吊り天井の耐震補強構造であって、前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部に取り付けられた上記いずれかに記載の耐震補強金具と、前記野縁受け部の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁受け方向の斜め部材と、前記野縁部の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁方向の斜め部材とを備え、前記一対の野縁受け方向の斜め部材の下端が前記第1金具に取り付けられているとともに、前記一対の野縁方向の斜め部材の下端が前記第2金具に取り付けられている構成とすることができる。
【0012】
さらに、前記耐震補強金具が取り付けられた野縁受け部に対して、前記耐震補強金具を挟んだ両側の前記野縁受け部と前記野縁部との交差部に、前記野縁受け部に接合されるとともに下部が前記野縁部に固定される補強クリップが取り付けられている構成とすることができる。
【0013】
また、吊り天井の脱落防止構造の発明は、建物の構造体から吊り下げられた野縁受け部及び野縁部を有する吊り天井構造を補強させた吊り天井の脱落防止構造であって、前記野縁受け部とリップ部を有する前記野縁部との交差部に、上記いずれかに記載の耐震補強金具が接合金具として取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の耐震補強金具は、野縁受け部とリップ部を有する野縁部との交差部において吊り天井構造を補強する。この耐震補強金具では、野縁受け部に固定される第1金具に野縁部に固定される第2金具を跨らせ、2つの金具を一体化手段で接合させる。
【0015】
そして、第2金具には、野縁部のリップ部を挟んで対向させる一対の板部から制限リブ部が張り出されており、この制限リブ部によってボルト部の座金部の回転が制限される。
【0016】
このため、座金部が正確な向きで配置され、ボルト部による締結力が所望した大きさで導入されてリップ部を圧潰させることができるようになるので、高い剛性及び耐震性能を吊り天井構造に付与することが可能となる。
【0017】
このような座金部の回転を制限させる制限リブ部を、リップ部側板部の側縁から張り出させることによって、リップ部側板部自体の曲げに対する剛性も高めることができる。
【0018】
さらに、第1金具を野縁受け部に固定するための接合手段を、双方を貫通させるビス材とすることで、ビス材のせん断抵抗による強固な接合とすることができる。また、第1金具と第2金具との一体化手段を複数本のビス材とすることで、接合強度が増加して両者の一体性をさらに高めることができる。
【0019】
そして、側面視略V形に配置された斜め部材の下端を耐震補強金具に取り付ける耐震補強構造であれば、効果的に軸力が伝達される構造にすることができる。特に、2方向にそれぞれ側面視略V形に配置された斜め部材の下端を、耐震補強金具に集約して取り付ける耐震補強構造であれば、作業が集約されて効率よく構築することができる。
【0020】
さらに、耐震補強金具を挟んだ両側の野縁受け部と野縁部との交差部に補強クリップが取り付けられていれば、野縁受け方向の斜め部材から伝達された軸力を天井の広い範囲に分散させることができる。さらには、等方性に優れた吊り天井の耐震補強構造を構築することができるようになる。
【0021】
また、野縁受け部とリップ部を有する野縁部との交差部に、耐震補強金具が接合金具として取り付けられている吊り天井の脱落防止構造であれば、耐震補強構造の吊り天井とは言えないまでも、風揺れや鉛直荷重の継続作用等に伴う脱落であれば充分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態の吊り天井の耐震補強構造の構成を説明するための斜視図である。
図2】本発明の実施の形態の吊り天井の耐震補強構造の構成を説明するための断面図である。
図3】本発明の実施の形態の耐震補強金具の構成を説明するための斜視図である。
図4】本発明の実施の形態の耐震補強金具の構成を説明するための平面図である。
図5図4のA−A矢視方向で見た断面図である。
図6図4のB−B矢視方向で見た断面図である。
図7図4のC−C矢視方向で見た断面図である。
図8図4のD−D矢視方向で見た断面図である。
図9】野縁受け方向のブレース軸力の伝達経路を説明するための拡大斜視図である。
図10】補強クリップが配置された場合の野縁受け方向のブレース軸力の伝達経路を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1,2は、本実施の形態の吊り天井の耐震補強構造となる吊り天井構造1の構成を説明するための図である。
【0024】
吊り天井構造1は、例えば体育館、集会場、災害応急対策の拠点となる公共施設、ビルなどの様々な建物に設けられる。本実施の形態の耐震補強構造は、既存の吊り天井に対しても、新設される吊り天井に対しても適用することができる。また、「特定天井」として定義された以外の吊り天井に対しても、耐震性能を向上させるために適用することができる。
【0025】
図2に示すように、建物の構造体となる梁や床スラブ11の下面には、間隔を置いて複数の吊りボルト13,・・・が吊り下げられており、吊りボルト13の下端のハンガー131に野縁受け部14が吊り下げられる。
【0026】
そして、図1に示すように、野縁受け部14の軸方向に間隔を置いて、略直交する方向に向けて野縁部15,・・・が取り付けられる。さらに野縁部15,・・・の下面には、石こうボードなどの天井板材16が取り付けられる。
【0027】
なお、この吊り天井が「特定天井」に該当する場合は、図2に示すように、天井板材16の端部16aを建物の壁面12から6cm以上離隔させて、地震時の揺れで端部16aが壁面12に押し付けられて損傷しないようにすることができる。
【0028】
本実施の形態の吊り天井構造1は、野縁受け部14の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁受け方向の斜め部材としてのブレース21,21と、野縁部15の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁方向の斜め部材としてのブレース22,22とを備えている。
【0029】
ブレース21の上端は、取付金物212を介して吊りボルト13の上部に固定される。また、ブレース22の上端も、取付金物222を介して吊りボルト13の上部に固定される。
【0030】
一方、野縁受け部14と野縁部15との交差部には、本実施の形態の耐震補強金具3が取り付けられる。そして、この耐震補強金具3に、ブレース21,21,22,22の下端が取り付けられる。
【0031】
詳細には、図3に示すように、耐震補強金具3の第1金具4にブレース21,21がアーム材211,211を介して取り付けられ、耐震補強金具3の第2金具5にブレース22,22がアーム材221,221を介して取り付けられる。
【0032】
ここで、吊りボルト13のハンガー131が引っ掛けられる野縁受け部14は、例えば略水平面を形成する上フランジ141と、それに略平行な下フランジ142と、上フランジ141と下フランジとの側縁間を繋ぐ略鉛直面のウェブ143とによって、断面視略コ字形に形成されている。
【0033】
一方、野縁受け部14に固定される野縁部15は、底部153と、その両側から立ち上がる側壁部152,152と、側壁部152,152のそれぞれの上縁から内側に2度屈曲させたリップ部151,151とによって形成される。すなわち野縁部15には、リップ部151,151を有する断面略U字形の鋼材が使用できる。また、リップ部151は、上面と垂下面とによって断面略L字形に形成される。
【0034】
耐震補強金具3は、図3図8に示すように、上方に配置される野縁受け部14に固定される第1金具4と、第1金具4に跨らせて野縁部15に固定される第2金具5と、第1金具4と第2金具5とを接合させる一体化手段とによって主に構成される。
【0035】
第1金具4は、中央に設けられて野縁受け部14に跨らせる折曲げ部41と、野縁部15が嵌合可能となるように下部に形成された切欠き部42と、第1金具4を野縁受け部14に固定する接合手段としてのビス材43とによって主に構成される。
【0036】
折曲げ部41は、図3図7図8に示すように、野縁受け部14を上方から覆うように、断面視略門形に形成される。要するに折曲げ部41は、野縁受け部14の上方及び両側方を覆う形状に形成される。
【0037】
そして、折曲げ部41の下部には、図3図5図6に示すように、野縁部15の上部が嵌合可能となる形状に切り欠かれた切欠き部42が設けられる。要するに切欠き部42によって、野縁部15の上方及び両側方が囲まれることになる。
【0038】
このように形成された折曲げ部41を野縁受け部14の上フランジ141に載せるとともに、切欠き部42をその下方の野縁部15に嵌めることで、側壁部152,152の上端に第1金具4を載せる。
【0039】
また、折曲げ部41を挟んだ両側では、図5図6に示すように、野縁受け部14のウェブ143と第1金具4とにビス材43,43を連続して貫通させて、両者を接合させる。
【0040】
この結果、第1金具4は野縁受け部14に固定される。そしてこの状態では、仮に野縁受け部14と野縁部15とが接合されていないとしても、野縁部15の軸方向以外の方向への第1金具4の移動は制限されることになる。
【0041】
また、第1金具4の野縁受け部14の軸方向の両側縁には、図4に示すように、野縁部15の軸方向と略平行となる方向に向けてリブ44,44が張り出される。このリブ44,44によって、鋼板などの板材を折り曲げ加工することで製作される第1金具4の剛性を高めることができる。
【0042】
また、折曲げ部41の上面の一部には、図4図7図8に示すように、長方形の3辺が切り込まれた切抜き部451が設けられて、立起し片45が引き起こされる。
【0043】
このようにして野縁受け部14に取り付けられた第1金具4の上方から第2金具5を跨らせる。この第2金具5は、野縁部15の片方のリップ部151を挟んで対向させる一対の板部(51,52)を有している。
【0044】
一対の板部(51,52)は、いずれも野縁受け部14を跨ぐことができるように略門形の鋼板等によって形成される。ここで、リップ部151側(野縁部15の内側)に配置される板部をリップ部側板部51とし、野縁部15の外側に配置される板部を止め板部52とする。
【0045】
リップ部側板部51の下部には、図5図6に示すように側面視略レ字形の引掛け部53が設けられる。この引掛け部53は、リップ部151に下方から引っ掛けられる位置に設けられる。
【0046】
引掛け部53は、図3図7に示すように、リップ部側板部51の下部の一部に対して、長方形の上辺及び両側辺に切り込みを入れてリップ部151側に倒し込むことによって形成される。
【0047】
一方、引掛け部53の上方には、リップ部151を挟んでボルト部54が貫通される。このボルト部54は、リップ部側板部51から止め板部52に向けて貫通されて、止め板部52側に突出される先端には、図8に示すようにナット541が装着される。
【0048】
これに対してボルト部54の頭部側には、図7に示すように長方形(略正方形)の鋼板等によって形成される座金部55が配置される。すなわちボルト部54を締め付けることによってリップ部側板部51と止め板部52との間に導入される締結力は、座金部55とリップ部側板部51とが接触する面を通して伝達される。
【0049】
そして、この座金部55の回転を制限させるために、リップ部側板部51の側縁からは、図3に示すように制限リブ部56が張り出される。詳細には図4図7に示すように、リップ部側板部51の野縁部15の軸方向の両側縁には、野縁受け部14の軸方向と略平行となる方向に向けて制限リブ部56,56が張り出される。
【0050】
そして、制限リブ部56,56によって、鋼板などの板材を折り曲げ加工することで製作されるリップ部側板部51の剛性を高めることができる。さらに、図5図6図8に示すように、止め板部52の野縁部15の軸方向の両側縁にも、野縁受け部14の軸方向と略平行となる方向に向けてリブ521,521が張り出されて剛性が高められている。
【0051】
また、リップ部側板部51の上縁には、図5図6に示すように、止め板部52の上方を覆うように庇部511が張り出される。また、リップ部側板部51の高さ方向の中央付近からは、図3図4に示すように、接合片57が張り出される。
【0052】
ボルト部54によって板部(51,52)間に締結力が導入されると、リップ部151が圧潰して第2金具5が野縁部15に固定される。すなわち、ボルト部54の締付力が座金部55を介してリップ部側板部51に伝達されると、それに接するリップ部151が変形して押しつぶされる。
【0053】
そして、導入された締結力と変形したリップ部151とによって圧着された第2金具5は、野縁部15の軸方向への移動が制限されることになる。また、門形に成形されて第1金具4及び野縁受け部14に跨るリップ部側板部51及び止め板部52によっても、第2金具5の野縁部15の軸方向への移動は制限される。
【0054】
また、リップ部側板部51から略直交するように突出されて折曲げ部41の外側面に沿って配置される接合片57には、第1金具4と第2金具5とを接合させる一体化手段としての複数のビス材31,31がねじ込まれる。
【0055】
ビス材31,31は、図3図5図7に示すように、上下に2本、ねじ込まれる。ビス材31,31は、接合片57と折曲げ部41とを貫通して、図7に示すように先端が野縁受け部14の内空に突出される。
【0056】
このようにして野縁受け部14と野縁部15との交差部に強固に固定される剛性の高い耐震補強金具3には、図3図4に示すように、ブレース21,22の下端を取り付けるための断面視略L字形のアーム材211,221が取り付けられる。
【0057】
詳細には、アーム材211,211は、図5図6に示すように、ボルト23,23によって第1金具4の上部の両側の隅角部に連結される。また、アーム材211は、回り止めビス24によって角度が固定される。この回り止めビス24は、アーム材211の孔から挿入されて第1金具4の隅角部に打ち込まれる。さらに、アーム材211とブレース21とは、接合ビス25,25によって接続されて、応力の伝達が可能な構造になる。
【0058】
一方、アーム材221,221は、図7図8に示すように、ボルト23,23によって第2金具5の上部の両側の隅角部に連結される。また、アーム材221は、回り止めビス24によって角度が固定される。この回り止めビス24は、アーム材221の孔から挿入されて第2金具5のリップ部側板部51の隅角部に打ち込まれる。
【0059】
ここで、図8に示すように、リップ部側板部51に対向させる第2金具5の止め板部52は、上部の両側の隅角部が切落し部522,522として切り落されており、回り止めビス24を止め板部52に貫通させなくてもアーム材221を固定できる構成となっている。さらに、アーム材221とブレース22とは、接合ビス25,25によって接続されて、応力の伝達が可能な構造になる。
【0060】
一方、図9に示すように、4本のブレース21,21,22,22が集約される耐震補強金具3が取り付けられた交差部17Aに隣接する交差部17B,17Bには、補強クリップ6,6が取り付けられる。
【0061】
詳細には、耐震補強金具3が取り付けられた野縁受け部14に対して、耐震補強金具3を挟んだ両側の野縁受け部14と野縁部15,15との交差部17B,17Bに、補強クリップ6,6がそれぞれ取り付けられる。
【0062】
以下では、耐震補強金具3の両側にそれぞれ1つの補強クリップ6が配置される場合について説明するが、これに限定されるものではなく、耐震補強金具3の両側にそれぞれ複数の補強クリップ6,・・・を配置することもできる。
【0063】
補強クリップ6は、図10に示すように、耐震補強金具3が取り付けられていない野縁受け部14と野縁部15との交差部に取り付けられる通常のクリップ7よりも、強固に野縁受け部14と野縁部15とを連結させる。
【0064】
補強クリップ6は、図9に示すように、野縁受け部14を跨いで固定されるビス付きクリップ61と、ビス付きクリップ61の下部を野縁受け部14及び野縁部15に固定させる補強金物62とによって主に構成される。
【0065】
ビス付きクリップ61は、断面視略逆U字形に形成され、頭部がビス材611によって締め付けられる。また、補強金物62は、ビス材622によって野縁受け部14に接合される。そして、ビス付きクリップ61の下部は、前述のように野縁受け部14と接合された補強金物62とビス材621などによって、野縁部15にも堅固に接合される。
【0066】
次に、本実施の形態の耐震補強金具3及び吊り天井構造1の作用について説明する。
【0067】
このように構成された本実施の形態の耐震補強金具3は、野縁受け部14とリップ部151,151を有する野縁部15との交差部17Aにおいて吊り天井構造を補強する。
【0068】
この耐震補強金具3では、野縁受け部14に固定される第1金具4に野縁部15に固定される第2金具5を跨らせ、2つの金具を一体化手段となる2本のビス材31,31で接合させる。
【0069】
そして、第2金具5には、野縁部15のリップ部151を挟んで対向させる一対の板部(51,52)のリップ部側板部51から制限リブ部56が張り出されており、この制限リブ部56によって座金部55の回転が制限される。
【0070】
すなわち、この制限リブ部56がなければ、ボルト部54を締め付ける際に座金部55が共回りしてしまい、座金部55の全面をリップ部側板部51に接触させられない状態になることがある。この両者の接触面積が減ると、その分ボルト部54から導入される締結力が減少するので、リップ部151を圧潰させる力、換言すると第2金具5が野縁部15に固定される力(固定度)が減少するおそれがある。
【0071】
これに対して座金部55が正確な向きで配置されて座金部55の全面がリップ部側板部51に接触していれば、ボルト部54による締結力が設計通りの所望した大きさで導入されて、リップ部151を設計した範囲で圧潰させることができる。
【0072】
ここで、リップ部側板部51にボルト部54を通すための孔には、雌ねじ溝を設けてボルト部54とリップ部側板部51との接合強度を増加させることもできる。また、単なる挿通孔としても、座金部55が正確な向きで配置されていれば、所望する設計力を導入することができる。
【0073】
さらに、座金部55,55の回転を制限させる制限リブ部56,56が、リップ部側板部51の両方の側縁から張り出されていれば、リップ部側板部51自体の曲げに対する剛性も高めることができる。この結果、高い剛性及び耐震性能の吊り天井構造1にすることができる。
【0074】
さらに、第1金具4を野縁受け部14に固定するための接合手段を双方を貫通させるビス材43とすることで、ビス材43のせん断抵抗による強固な接合とすることができる。
【0075】
要するに、野縁受け部14のウェブ143に第1金具4を貫通させたビス材43が直接、ねじ込まれていれば、野縁受け部14と第1金具4との間にずれが生じない強固な接合とすることができる。
【0076】
また、第1金具4と第2金具5との一体化手段を複数本のビス材31,31とすることで、1本のビス材で一体化させた場合に比べて接合強度が増加して両者の一体性をさらに高めることができる。
【0077】
そして、2方向にそれぞれ側面視略V形に配置されたブレース21,21,22,22の下端を、耐震補強金具3に集約して取り付ける耐震補強構造であれば、施工性がよく効率的に構築することができる。
【0078】
このようにしてブレース21,21,22,22が耐震補強金具3を介して交差部17Aに接続されると、ブレース21,22からの力が天井板材16に伝達されることになる。
【0079】
要するに、側面視略V形に配置されたブレース21,21,22,22の下端を耐震補強金具3に取り付けるのであれば、効果的に軸力が伝達されるように固定させることができる。
【0080】
例えば図9に示すように、地震力Qが野縁受け部14の軸方向に作用すると、ブレース21,21のブレース軸力P1,P2が耐震補強金具3に入力されることになる。
【0081】
耐震補強金具3から真下の野縁部15に伝達される伝達力R0は、耐震補強金具3を介して伝達力R1として野縁部15の軸方向(材軸方向)に伝達され、野縁部15と天井板材16とを接合させる留付けビス161の位置において、伝達力R2,・・・として天井板材16に伝達される。
【0082】
ここで、耐震補強金具3が取り付けられた野縁受け部14と、耐震補強金具3が取り付けられた交差部17A以外の野縁部15との交差部17B,17Bとの連結が、連結強度の弱い通常のクリップ7で行われている場合は、これ以上の応力の分散は期待できない。
【0083】
これに対して、図10に示すように、耐震補強金具3が取り付けられた交差部17Aの両側に隣接する交差部17B,17Bに、連結強度の高い補強クリップ6,6を配置することで、天井の広い範囲に力を分散させることができる。
【0084】
すなわち、ブレース軸力P1,P2は、野縁受け部14に沿って伝達力Tとして伝達された後に、補強クリップ6,6を介して効率的に野縁部15,15に伝達力S1,S1として伝達され、各野縁部15,15から留付けビス161の位置において伝達力S2,・・・として天井板材16に分散されることになる。なお、説明の流れを重視したため、図9では、補強クリップ6,6の位置の伝達力T,S1,S2の図示を省略している。
【0085】
このように耐震補強金具3が取り付けられた野縁受け部14が交差する野縁部15,・・・の交差部17B,・・・に補強クリップ6,・・・が取り付けられていれば、ブレース21,21から伝達されたブレース軸力P1,P2を天井板材16の広い範囲に分散させることができる。
【0086】
一方、野縁部15の軸方向に作用する地震力に対しては、ブレース22,22の軸力が耐震補強金具3からそのまま直下の野縁部15に伝達され、その野縁部15を介して効率よく天井板材16に分散されていく。
【0087】
特に、本実施の形態の耐震補強金具3であれば、制限リブ部56によって座金部55が正確な向きに配置され、所望する範囲のリップ部151を圧潰させて第2金具5の野縁部15の軸方向のずれを防ぐことができるので、安定した性能で効率よく野縁方向に応力を伝達させることができる。
【0088】
そして、補強クリップ6,・・・が配置された吊り天井構造1は、野縁方向だけでなく野縁受け方向の地震力に対しても効率的に力を分散させることができるので、等方性に優れた吊り天井構造1にすることができる。
【0089】
要するに、耐震補強金具3,・・・が取り付けられる交差部17A以外は、自由に使用することができるので、他の補強金具と組み合わせた構造にすることができるなど、拡張性や汎用性に優れている。
【0090】
例えば、分散による野縁受け方向の性能向上は、野縁受け部14に取り付けられる補強クリップ6の数で制御することができるので、野縁方向の構造性能との整合を図って補強クリップ6を配置する数を設定することで、天井全体として等方性に優れた吊り天井構造1にすることができる。
【0091】
そして、水平力に対する等方性に優れた吊り天井構造1であれば、ブレース21,21(22,22)の組数がいずれの方向も同じになるので、組数を多く配置すべき方向を間違えることがなく、施工ミスを未然に防ぐことができる。
【0092】
また、本実施の形態の耐震補強金具3を使用することで、既存の吊り天井構造を法改正に適合した「中地震時に損傷しない」剛性及び耐震化性能の高い構造に容易に改修することができる。
【0093】
すなわち、既存の吊り天井構造には、吊りボルト13,・・・、野縁受け部14,・・・及び野縁部15,・・・が備わっているため、野縁受け部14と野縁部15との交差部17Aに耐震補強金具3を取り付け、耐震補強金具3と吊りボルト13,・・・の上部とを4本のブレース21,21,22,22でそれぞれ繋ぐだけで、効率よく補剛及び耐震化の施工を行うことができる。
【0094】
また、この際に既存の吊り天井構造に追加される重量は、耐震補強金具3,・・・の重量及び補強クリップ6,・・・によって追加される重量だけなので、補剛及び耐震化による吊り天井構造1の重量増加が抑えられ、設計上も有利な構造とすることができる。
【0095】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0096】
例えば、前記実施の形態では、耐震補強金具3と補強クリップ6,・・・とが配置された吊り天井構造1について説明したが、これに限定されるものではなく、所望する剛性や耐震性を満たすのであれば、補強クリップ6,・・・を省略することもできる。
【0097】
また、前記実施の形態では、野縁受け部14及び野縁部15の軸方向に沿って側面視略V形にそれぞれ一対のブレース21,21及びブレース22,22を備えた吊り天井構造1について説明したが、これに限定されるものではなく、野縁受け部14又は野縁部15のいずれか一方の軸方向に沿って側面視略V形に一対の斜め部材が配置された吊り天井の耐震補強構造とすることもできる。
【0098】
さらに、耐震補強金具3を、ブレース21,22を取り付けるために使用するのではなく、野縁受け部14と野縁部15との交差部を堅固に接合させるためだけに使用することもできる。例えば、上述した補強クリップ6に代えて耐震補強金具3を使用することで、大地震によって揺れが非常に大きくなっても脱落しにくい吊り天井構造にすることができる。
【0099】
また、野縁受け部14と野縁部15との交差部の接合強度を上げて、天井の脱落防止効果を高めることもできる。例えば、ブレース21,22などの斜め部材が配置されていない吊り天井であっても、耐震補強金具3を接合金具として交差部に取り付けることによって、風揺れや鉛直荷重の継続作用等に伴う脱落を防ぐことができるようになる。
【符号の説明】
【0100】
1 吊り天井構造(吊り天井の耐震補強構造)
11 床スラブ(建物の構造体)
14 野縁受け部
15 野縁部
151 リップ部
17A 交差部
21 ブレース(野縁受け方向の斜め部材)
22 ブレース(野縁方向の斜め部材)
3 耐震補強金具
31 ビス材(一体化手段)
4 第1金具
41 折曲げ部
42 切欠き部
43 ビス材(接合手段)
5 第2金具
51 リップ部側板部(板部)
52 止め板部(板部)
53 引掛け部
54 ボルト部
55 座金部
56 制限リブ部
6 補強クリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10