特許第6290179号(P6290179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290179金属基材上にプラチナ系金属基層をめっきするための電解質の浴を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290179
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】金属基材上にプラチナ系金属基層をめっきするための電解質の浴を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/50 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   C25D3/50 101
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-506292(P2015-506292)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公表番号】特表2015-514873(P2015-514873A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】FR2013050855
(87)【国際公開番号】WO2013156737
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】1253599
(32)【優先日】2012年4月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユゴー,ジュリエット
(72)【発明者】
【氏名】ラグランジュ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】モレ,エルベ
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−087535(JP,A)
【文献】 特開平04−333587(JP,A)
【文献】 特開平04−333589(JP,A)
【文献】 特開平10−081979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00−3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材上にプラチナ系金属下層をめっきするための電解質の浴を製造するための製造方法であって、
a)配位子およびアミン官能基を有する第1の系を提供するステップであって、前記第1の系は、少なくとも1つの化合物X−(NHを含むアミノ配位子の水溶液によって構成され、Xは(CH、CH−CH、CH−(CHによって構成された群に属し、またはNHもしくはxp−(NHを含む水溶液によって構成され、p−(PO3−、HPO2−、HPO、HPO2−およびHPOの組み合わせSO2−、HPOSO2−およびHPOの組み合わせ、CCOO)によって構成された群に属する酸基であり、n、mおよびpは0でない整数である、ステップと、
b)バッファー系を形成する第2の系を提供するステップと、
c)金属塩を提供し、プラチナの水溶液によって構成された第3の系を提供するステップと、
d)媒体に伝導特性を提供するのに適切な第4の系を提供するステップと、
e)4つの系を混合して前記電解質浴を得るステップと、を含み、
方法が、第1の溶液Bを形成する単一の溶液中に第1の系、第2の系および第4の系が一緒に集められ、ステップc)の間に、第3の系が水酸化ナトリウム(NaOH)および少なくとも1つの酸化度IVのプラチナの塩を含むプラチナの水溶液によって構成された第2の溶液Aを形成し、ステップe)の間に、
e1)第1の溶液Bを被覆し、少なくとも1時間30分間、少なくとも50℃にその温度を上昇させるサブステップと、
e2)第2の溶液Aを第1の溶液Bに添加し、第2の溶液Aを第1の溶液Bと混合してプラチナアミノ錯体を含む電解質浴を形成するサブステップと、が行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の溶液Bがxp(NHp塩を含み、x=HPOよび=2および/またはx=HPOよび=1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の系がプラチナの水溶液によって構成され、水酸化ナトリウム(NaOH)および少なくとも1つの酸化度IVのプラチナの塩を含む第2の溶液Aを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)後に、前記電解質の浴が80℃〜97℃の範囲の温度に少なくとも2時間加熱されるステップf)が行われ、
次いで、前記電解質の浴を使用して、プラチナの堆積が金属基材上に電気めっきされるステップg)が行われる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
サブステップe2)に先立って、第1の溶液Bは60℃の温度に上昇される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化度IVのプラチナの塩がYPtMによって定義され、Y=NH、HまたはK、およびM=ClまたはOHである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
第2の溶液Aにおいて、前記酸化度IVのプラチナの塩が式(NHPtClのヘキサクロロ白金酸二アンモニウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸化度IVのプラチナの塩の量に対する水酸化ナトリウム(NaOH)の量のモル比が2である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
第1の系において、前記xp−(NHアミン化合物がリン酸水素二アンモニウム(NHHPOおよび/またはリン酸二水素アンモニウムNHPOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の系がリン酸二水素アンモニウムNHPOの量に対するリン酸水素二アンモニウム(NHHPOの量のモル比2であり、リン酸水素二アンモニウム(NHHPOおよびリン酸二水素アンモニウムNHPOを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材上にプラチナ系金属基層をめっきするための電解質の浴を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような金属基層は、作動中のハイレベルの機械的および熱的応力に耐える必要のある金属部品からなる基材、特に超合金からなる基材を被覆するために特に使用される。そのような熱機械的部品は、特に、航空または陸上タービンエンジン用部品を構成する場合がある。例として、前記部品は、タービンエンジン、特に、航空機のターボプロップまたはターボジェットの高圧タービンにおけるタービンのブレードまたは翼を構成する場合がある。
【0003】
特に、航空の分野でタービンエンジンからの効率を高め、また、ガスおよび未燃焼燃料の燃料消費および汚染排出を低減する調査が、燃料燃焼が化学量論条件の近くで行われることをもたらした。その状況には、燃焼室を出てタービンに行くガスの温度上昇が伴う。
【0004】
現在、超合金の使用のための限界温度は約1100℃であり、一方、燃焼室からの出口、またはタービン入口でのガスの温度は1600℃と高い場合がある。
【0005】
従って、タービンブレードおよび翼(中空ブレードおよび翼)を冷却するための技術を向上する、および/または高温に耐えるためのそれらの材料の特性を向上することによって、この温度上昇にタービン材料を適応させることが必要であった。この第2の技術は、ニッケルおよび/またはコバルト系超合金と組み合わせて使用され、超合金基材上に熱絶縁コーティングを堆積することを含めた解決策をはじめとするいくつかの解決策をもたらし、コーティングは「熱バリア」として知られており、複数の層から構成される。
【0006】
航空エンジンでの熱バリアの使用は過去30年にわたって広範囲になり、タービンへの入口でのガスの温度が上昇されることを可能にし、冷却空気の流れを低減することを可能にし、したがってエンジンの効率を向上することを可能にする。
【0007】
具体的には、絶縁コーティングは、定常作動条件下で冷却された部品へのコーティングによって温度勾配を確立する役目をし、温度勾配の全体の大きさは、厚さが約150μm〜200μmの厚みを有するコーティングに対して100℃を超える場合があり、1ケルビン当たり1.1ワット/mの伝導度(W.m−1.K−1)を示す。このように、コーティング用基材を形成する基層金属の作動温度は同じ勾配で低下され、それによって、必要な冷却空気の体積の相当な節約、および部品の寿命および具体的なタービンエンジンの消費率の両方において相当な向上を引き起こす。
【0008】
酸化イットリウムで安定化されたジルコニア系セラミック、つまり、酸化イットリウムを4%〜12%の範囲(特に、6%〜8%の範囲)のモル含有量を有するイットリウム安定化ジルコニアの層を含む熱バリアの使用を行使することが知られており、それは基材を構成する超合金とは異なる膨張係数を示し、熱伝導率がかなり低い。
【0009】
使用されるコーティングの中で、酸化イットリウムで部分的に安定化されたジルコニア系セラミック、例えば、Zr0.920.081.96の層のかなり広範囲の使用について言及されている場合がある。
【0010】
このセラミック層を固定するために、基材の膨張係数に理想的に近い膨張係数を有する金属基層が、部品の基材とセラミック層との間に一般的に介挿される。このように、金属基層は、第1に、セラミックの層および基材形成超合金の熱膨張率の差による応力を低減する役目を果たす。
【0011】
基層は、また、部品の基材とセラミック層との間の接着をもたらし、基層と部品の基材との間の接着は相互拡散によって起こり、基層とセラミック層との間の接着は、機械的固定および基層の傾向によって起こり、セラミック/基層界面において高温で薄い酸化層を成長させ、酸化層はセラミックとの化学的接触をもたらすことが理解される。
【0012】
さらに、金属基層は部品の超合金に腐食および酸化現象に対する保護をもたらす(セラミック層は酸素に対して透過性がある)。
【0013】
具体的には、プラチナ、クロム、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはそれらの金属の混合物から選択された金属を含むニッケルアルミナイド、および/またはジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)およびイットリウム(Y)から選択された反応性元素によって構成された基層を使用することが知られている。
【0014】
例として、プラチナがβ−NiAl金属化合物のニッケル格子に挿入された(Ni、Pt)Al型のコーティングが使用されている。
【0015】
熱バリアを調製する場合、プラチナは2つの機能を行う:それは層から基材へのアルミニウムの相互拡散を防ぐために、拡散バリアの機能を果たす。さらに、プラチナアルミナイドは、高温での耐腐食性および保護層の接着性を向上させる。しかし、プラチナアルミナイドコーティングは、1100℃で速く分解し、コーティングおよび基材の元素の相互拡散に関連する相変態が存在する。
【0016】
そのような状況下では、金属基層は次のステップを含む方法を使用してプラチナ修飾ニッケルアルミナイドNiPtAlによって構成される場合がある:化学洗浄およびサンドブラスティングによって部品の表面を調製すること;部品にプラチナ(Pt)のコーティングを電解めっきすること;Ptを部品に拡散させるために生成物を任意に熱処理すること;化学蒸着法(CVD)または物理気相蒸着法(PVD)を使用してアルミニウム(Al)を堆積すること;生成物を任意に熱処理してPtおよびAlを部品に拡散させること;このように形成された金属基層の表面を調製すること;および電子線物理気相蒸着法(EB−PVD)を使用してセラミックコーティングを堆積すること。
【0017】
このように、プラチナは、気相アルミめっきの熱化学処理前に電解堆積される。
【0018】
電気めっきは、陽極(酸化反応が起こる電極)から堆積(めっき)が起こる(他の還元反応が同時に起こる場合がある)陰極に電流を流すことによって、溶液中に最初に存在する金属錯体を伝導部(陰極)上で還元する役目をすることが思い出されるべきである。
【0019】
様々な組成の溶液がプラチナめっき用に市販されている。そのような溶液のpHは塩基性、酸性、または中性である場合がある。
【0020】
プラチナ抽出の終わりに得られる化合物は、ヘキサクロロ白金酸アンモニウム(IV):(NHPtClまたはヘキサクロロ白金酸カリウム(IV):KPtClである。プラチナめっき浴中に存在するプラチナの主な化合物はそれらの化合物の形質転換に由来する。
【0021】
金属に相当する酸化度0を無視して、2つの他の酸化度:+IIおよび+IVがあり、錯体種に相当する。溶液中での金属陽イオンを備えた錯体を形成するのに適切な溶液中での配位子の性質に応じて、錯体の安定性および反応性は変化する。
【0022】
プラチナめっき用の電解質浴の多数の調合が既に提案されており、それらは水溶液中に様々な化学種を含み、浴にその特性を提供する。
【0023】
しかし、多数の欠点が残る。特に、提案された電解質の浴は、特に、それらを再生するために使用される化学薬品のコストのために、相当コストがかかる。さらに、再生の可能性が制限され、安定してなく、浴の経年劣化で低下する技術的特性を示すので、短い寿命を有する浴につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、金属基材上にプラチナをめっきするための電解質浴を提供することであり、電解質浴は、特に部品の形状にかかわらず同一または実用上同一のめっきパラメーターおよび条件において向上された技術的性能、適用された電流密度にかかわらず同一または実用上同一の堆積速度、仕様に準拠する堆積品質、および向上された寿命を示す。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的のために、本発明によれば、電解質の浴を製造する方法は、次のステップを含むことを特徴とする:
a)配位子およびアミン官能基を有する第1の系を提供することで、前記第1の系は、少なくとも1つの化合物X−(NHを含むアミノ配位子の水溶液によって構成され、Xは(CH、CH−CH、CH−(CHによって構成された群に属し、またはNHもしくはxp−(NHを含む水溶液によって構成され、xは(PO3−、HPO2−、HPO、HPO2−およびHPO、SO2−、HSO、HSOおよびSO、CHCOO、CHCOOHおよびCHCOO)、またはHSOもしくはCHCOOHによって構成された群に属する酸基であり、n、mおよびpは0でない整数である;
b)バッファー系を形成する第2の系を提供すること;
c)金属塩を提供し、プラチナの水溶液によって構成された第3の系を提供すること;
d)媒体に伝導特性を提供するのに適切な第4の系を提供すること;
e)4つの系を混合して前記電解質浴を得ること;を含む。
【0026】
このように、アミノ配位子とプラチナ系金属塩との間の結合に起因する錯体の使用が優先されることが理解されることができる。特に、炭素鎖なしで1つのみのアミン基:NH(アンモニア)またはxNH塩またはアンモニウム塩基X−NH)を有する配位子が選択され、Xは主反応に関与しない不活性分子として、あるいは調合反応で相互に作用する分子として選択される。
【0027】
好ましくは、第3の系の金属塩は酸化度IVのプラチナの塩類から選択される。
【0028】
この溶液は、また、酸化度IVのプラチナの塩類を使用することを可能にするさらなる利点を示し、酸化度IIのプラチナの塩類よりはるかに安定している。
【0029】
全体として、本発明の溶液によって、向上された寿命を示し、長い期間満足で安定したままのめっき特性を備えた電解質浴を提供することを可能にする。
【0030】
また、本発明によれば、第1の系、第2の系および第4の系は、第1の溶液Bを形成する単一の溶液中に一緒に集められる。
【0031】
有利には、第1の溶液Bはxp−(NH塩を含み、x=HPOよび=2、および/またはx=HPOよび=1である。
【0032】
好ましくは、第1の系は、水酸化ナトリウム(NaOH)および少なくとも1つの酸化度IVのプラチナの塩を含むプラチナの水溶液によって構成された溶液Aを形成する。
【0033】
そのような状況下で、好ましくは、酸化度IVのプラチナの塩の量に対する水酸化ナトリウム(NaOH)の量のモル比は2である。
【0034】
また、本発明によれば、ステップc)の間に、第3の系は水酸化ナトリウム(NaOH)および少なくとも1つの酸化度IVのプラチナの塩を含むプラチナの水溶液によって構成された第2の溶液Aを形成し、ステップe)の間に次のサブステップが行われる:
e1)第1の溶液Bを被覆し、少なくとも1時間30分間、少なくとも50℃にその温度を上昇すること;
e2)第2の溶液Aを第1の溶液Bと混合してプラチナアミノ錯体を含む電解質浴を形成する。
【0035】
好ましい実施では、ステップe)後に、ステップf)が行われ、その間に前記電解質の浴が80℃〜97℃の範囲の温度に少なくとも2時間加熱され、
次いで、ステップg)が行われ、その間に前記電解質の浴を使用して、プラチナの堆積が金属基材上に電気めっきされる。
【0036】
さらに、本発明では、サブステップe2)の間に、第2の溶液Aが第1の溶液Bに添加される。
【0037】
そのような状況下で、有利には、サブステップe2に先立って、第1の溶液Bが60℃の温度に上昇される。
【0038】
好ましくは、前記酸化度IVのプラチナの塩はYPtMによって定義され、Y=NH、HまたはK、およびM=ClまたはOHである。
【0039】
有利には、第2の溶液Aにおいて、前記酸化度IVのプラチナの塩は式(NHPtClのヘキサクロロ白金酸二アンモニウムである。
【0040】
有利には、第1の系では、前記xp−(NHアミン化合物はリン酸水素二アンモニウム(NHHPOおよび/またはリン酸二水素アンモニウムNHPOを含む。
【0041】
好ましい調合では、第1の系は、リン酸二水素アンモニウムNHPOの量とリン酸水素二アンモニウム(NHHPOの量とのモル比2でリン酸水素二アンモニウム(NHHPOおよびリン酸二水素アンモニウムNHPOを含む。
【0042】
次の条件の1つ、または他の、またはいくつかが採用されることも好ましい:
ステップa)で提供された第1の溶液Bが約30℃の温度を示す水で得られる;
ステップc)で提供された第2の溶液Aが約45℃の温度を示す水で得られる;
ステップb)の間に、第1の溶液Bの温度が少なくとも3時間30分間、少なくとも50℃に上昇される;
ステップd)の間に、前記電解質の浴が少なくとも3時間少なくとも80℃の温度に上昇される(例えば、85℃、3時間)。
【0043】
本発明は、また、上記製造方法によって得られた電解質の浴からプラチナ系金属基層を製造する方法を提供し、方法は、次のステップからなることを特徴とする:
f)金属基材、特に超合金からなる基材を提供すること;
g)前記電解質の浴を加熱すること;
h)前記電解質の浴を使用して、前記金属基材上にプラチナの堆積を電気めっきすること。
【0044】
本発明は、また、金属基材上にプラチナ系金属基層を作製するための電解質の浴を製造するための1セットの溶液を提供し、セットは次のものを含むことを特徴とする:
少なくとも1つの化合物X−(NHを含むアミノ配位子の水溶液によって構成された第1の溶液Bであり、Xは(CH、CH−CH、CH−(CHによって構成された群に属し、またはNHもしくはxp−(NHを含む水溶液によって構成され、xは(PO3−、HPO2−、HPO、HPO2−およびHPO、SO2−、HSO、HSOおよびSO、CHCOO、CHCOOHおよびCHCOO)、またはHSOもしくはCHCOOHによって構成された群に属する酸基、n、mおよびpは0でない整数である;および
水酸化ナトリウム(NaOH)および少なくとも1つの酸化度IVのプラチナの塩を含むプラチナの水溶液によって構成された第2の溶液A。
【0045】
好ましくは、第2の溶液Aでは、前記酸化度IVのプラチナの塩がYPtMによって定義され、Y=NH、HまたはK、およびM=ClまたはOHである。
【0046】
有利には、前記酸化度IVのプラチナの塩は式(NHPtClのヘキサクロロ白金酸二アンモニウムである。
【0047】
好ましくは、酸化度IVのプラチナの塩の量に対する水酸化ナトリウム(NaOH)の量のモル比は2である。
【0048】
好ましい実施では、第1の溶液Bでは、前記xp−(NHアミン化合物はリン酸水素二アンモニウム(NHHPOおよび/またはリン酸二水素アンモニウムNHPOを含む。
【0049】
好ましい変形では、第1の溶液Bは、リン酸二水素アンモニウムNHPOの量とリン酸水素二アンモニウム(NHHPOの量とのモル比2でリン酸水素二アンモニウム(NHHPOおよびリン酸二水素アンモニウムNHPOを含む。
【0050】
最後に、本発明は、本発明の製造方法に起因する電解質の浴も提供する。超合金基材上にプラチナ系金属基層を作製するための電解質のそのような浴は、Pt−NHまたはPt−NH結合の波長を有するプラチナのアミノ錯体および緩衝液を含むことを特徴とする。
【0051】
本発明の他の利点および特性が、例によってなされた次の説明を読むこと、および添付図面を参考して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1B】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1C】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1D】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1E】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1F】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1G】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1H】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図1I】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図2A】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
図2B】本発明の製造方法を使用して製造された電解浴の特性および挙動を示す様々なプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
電解浴は、化学蒸着法(CVD)または熱スパッタ法の技術と比較して、特に環境保護的で経済的である技術を使用してプラチナを堆積する(つまり、電気めっきする)ことを可能にする(短時間で行われ、大気圧下で行われ、それによって排気装置を回避する)。
【0054】
さらに、このメッキ方法は、穴を有する部品の用途に適合し、電流線(the line of current)の形状は、穴内、特に小さなサイズの冷却穴内で起こるいかなる著しい堆積をも防ぎ、結果、穴は閉塞されない。
【0055】
そのような方法の使用が危険薬品の行使および有毒廃棄物の生成を回避することも観察される。
【0056】
実施例1
この実施例では、浴が、2つの別個の溶液AおよびBとして構成された4つの成分から調合され、2つの溶液AおよびBは、溶液AおよびBをともに混合する前に、成分を各溶液中で反応させるために別々に加熱、撹拌される。
【0057】
その後、2つの溶液AおよびBの混合物が加熱、撹拌される。一旦、A+B混合物を加熱する時間が経過したならば、プラチナ電気めっき浴が電気めっきを行う際に使える状態にある。
【0058】
特に、溶液Aは、他の成分の中でプラチナ塩類を含み、溶液Bは、他の成分の中で配位子を含む溶液である(配位子は1つ以上の金属物質、一般的に、金属物質と溶液に可溶である構造を形成し錯体として知られた1つ以上の配位子との関連性で、陽イオンとの結合を可能にする化学的機能を持つイオンまたは分子的化学物質であることが思い出されるべきである)。
【0059】
1リットル当たりのプラチナ8グラム(g)で電解浴1リットルを製造するために、手順は以下のとおりである:
・溶液Bの調製:30℃で蒸留水300ミリリットル(mL)(<500オーム(Ω))中に、化学式(NHHPOを有するリン酸水素二アンモニウム44.0g(つまり、0.33モル)、および化学式NHPOを有するリン酸二水素アンモニウム75.0g(つまり、0.65モル)をセットする。リン酸二水素アンモニウムの量dとリン酸水素二アンモニウムの量とのモル比は2である。一旦塩類が溶解したなら、溶液を覆い、4時間(h)30分(min)間で50℃に上昇する。
・溶液Aの調製:45℃で蒸留水300mL中に、化学物質としてのNaOHである水酸化ナトリウム5g(つまり、0.080モル)および式(NHPtClのプラチナ塩類のヘキサクロロ白金酸二アンモニウム18.3g(つまり、0.040モル)をセットする。水酸化ナトリウムの量とヘキサクロロ白金酸二アンモニウム塩の量とのモル比は2である。プラチナ塩類を溶液A中に溶解させる。
・一旦溶液Bの準備ができて、熱ければ、溶液Aを調製し、60℃に上昇した後、溶液Bに添加する。
・終了するために、(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、三リン酸ナトリウムなどの塩基性溶液を添加することによって予め6.3に調整されたpHの)A+B混合物を、3時間、85℃に上昇する。溶液は、すべて加熱ステップの間、覆われるべきである。
【0060】
より一般的に、化学式(NHHPOのリン酸水素二アンモニウムおよび化学式NHPOのリン酸二水素アンモニウムを含むこの溶液Bで、溶液A+Bの混合物のpHは、6〜10の範囲、より好ましくは6〜7の範囲に設定されるべきである。
【0061】
この調合の文脈で、プラチナ電気めっきを行うために、最良の作動状態を確認するために、9つの浴での実験計画が、以下の表1に規定されるように、溶液B、次いで、A+B混合物を加熱するための異なる温度および時間を使用して行われ、テスト2は、上記規定された手順に対応する:
【0062】
【表1】
【0063】
各調合された浴について、テストピースが異なる電流でプラチナでめっきされた。各テストピースはめっき前後に秤量された。
【0064】
このように、重量増加に基づいて、次のように決定することが可能であった:
・各電流での堆積速度(1平方デシメートル(g/h/dm)当たりの1時間当たりのグラムで);
・浴の平坦域;
・平坦域の初めの電流;
・平坦域の平均堆積速度;
・平坦域の標準偏差;および
・平坦域にわたって得られた最小速度と最高速度との比率。
【0065】
以下の3つの表2−1〜2−3は、実験の終わりに最良の結果をもたらすことが分かる3つの浴で得られた結果を提供する。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
さらに、テスト2の浴は次の利点を備える:
これは、最も大きな繰り返し性の程度が観察された浴であり、参考浴と比較して、平均堆積速度は新しい浴については大きく(図1A)、作動中十分に高いままであった(図1A)。テスト2の浴は、平均速度および製造1、2の分散についての曲線が重ねて置かれることができ、製造の極端な再現性の程度を明らかに示すので、繰り返し可能である。対照的に、テスト7の浴についての製造曲線1、2およびテスト4の浴についてはもっと違いが明確であり、したがって、テスト4の浴は最も繰り返し可能ではなく、したがって、浴4は好ましくない理由が分かる。
【0070】
さらに、テスト2の浴は、平坦域の良好な分散を示し(図1B)、「平坦域」の存在が、適用された電流および処理される部品の形状にかかわらず、同一である堆積速度を得ることに相当することが思い出される。各製造においては、2つの平坦域が実施された。1つの平坦域は、適用された電流密度に応じた重量増加を調査した。工場内の製造では、分散は浴中で行われた電解の増加する量とともに減少する。これは、行われた電解の増加する回数とともに、浴がますます分散される参考浴に当てはまらない。
【0071】
同様に、テスト2の浴は、時間とともにプラチナのわずかな損失を示し(図1C)、浴の平均有効性(図2A)および堆積速度(図2B)は、3つの連続再生後に実用上同一であることが分かる。プラチナの損失に関して、我々は、主として、容器の底のプラチナの固体の沈殿物の形態で、参考浴でのプラチナの多くの損失を発見した。さらに、参考浴を参照して、浴を使用して行われた電解の回数がより多ければ、容器の底の沈殿物を形成する傾向はより大きい。対照的に、本発明の浴については、プラチナ損失はより小さく、とりわけ、時間にわたって一定であることが観察される(電解の回数の増加で一定)。さらに、テスト2の浴は、プラチナの最も小さな損失を示す浴であり、このように、テスト2の浴は経済的な視点から最も有益である。
【0072】
全体として、図1D図1Fおよび図1G図1Iの曲線から分かるように、テスト4および7の浴は、テスト2のものに非常に類似する結果をもたらす。
【0073】
さらに、図2Aおよび図2Bから分かるように、テスト2の電解質の浴は、堆積速度に関して長時間安定である結果をもたらし、これは、浴が数回再生された後継続し、堆積速度は、第1および第3の再生間で実用上不変である。
【0074】
浴を再生するために、プラチナ塩類はそのプラチナ含有量を上昇するように浴に添加される。一旦プラチナ塩類が添加されたなら、浴は、塩類が浴に十分溶解されるように、12時間〜24時間、65℃で撹拌されながら放置される。
【0075】
実施例2
電解質の浴の製造は、次のポイントとは別に実施例1の手順と類似する。
【0076】
溶液Bは、化学式NHHSOの硫酸水素アンモニウム43.5g、化学式(NHSOの硫酸ジアンモニウム76g、および水を含む。それは、4時間30分間、50℃に上昇された。
【0077】
溶液A+Bの混合物のpHは1〜5の範囲に設定された。
【0078】
実施例3
電解質の浴の製造は、次のポイントとは別に実施例1の方策と類似する。
【0079】
溶液Bは、化学式CHCOONHの酢酸アンモニウム102.4gおよび化学式CHCOOHの酢酸39.6gを含む。
【0080】
溶液は4時間30分間、50℃に上昇された。
【0081】
溶液A+Bの混合物のpHは、1〜5の範囲に設定された。
【0082】
本発明では、配位子は、直鎖または分岐炭素鎖に3〜20の炭素原子を有する脂肪族ポリアミンから選択されることが好ましい。
【0083】
有利には、配位子は、1,3−ジアミノプロパンおよび1,2−ジアミノプロパンなどのジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサンなどの1級ポリアミン;N,N’ジメチル−1,3−プロパン−ジアミンなどの2級ポリアミン;N,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミンなどの3級ポリアミンから選択される。それは、配位子にジアミノプロパンを選択することが好ましい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B