(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Vが、ピロリドニル、ピペリドニル、2−カプロラクタム、3−メチル−2−カプロラクタム、3−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−カプロラクタム、3−エチル−2−ピロリドニル、4,5−ジメチル−2−ピロリドニル、イミダゾリル、N−N−ジメチルアミド、アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミド、−シアノ、N−イソプロピルアミド、アセテート、カルボキシポリエチレングリコール、N−(2−ヒドロキシプロピル)アミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド、カルボキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート、3−((3−アミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート、3−((3−(カルボキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート、N−メチルアセトアミド、−アセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、2−メチルプロピオンアミド、N,N’−ジメチル尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の眼科用デバイス。
前記コモノマーが、親水性モノマー、疎水性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、刺激応答性モノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の眼科用デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の例示的な実施形態を幾つか記載する前に、本発明は、以下に記載される構造又はプロセス工程の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な手法で実践又は実行できる。
【0017】
線状、枝分かれ、又はくし状親水性セグメントを有する末端シロキサンを有する以前に開発された非反応性親水性ポリマーを使用することによる進歩にもかかわらず、脂質及び/又はタンパク質の取り込みを低減し、かつコンタクトレンズの潤滑性及び湿潤性を高めるにあたって、分子量が増えるにつれて、特質改善の限界に達することが分かった。
図1は、分子量に関するこの限界を示す。
図1のプロット図から、分子量が増加したPVP−シロキサンコポリマーで処理したセノフィルコンAレンズについて、親水性PVPセグメントの分子量が約80kDaに達すると、脂質の取り込みが、最小レベルの約15μg/レンズに減少することが明らかである。分子量が80kDaを超える、PVP−シロキサンコポリマーで処理したレンズについて、セノフィルコンAにおける脂質の取り込みの更なる低減は、認められない。
【0018】
意外にも、架橋又は「橋を架けた」親水性セグメントを有し、別個の基材会合性セグメントを有しない、ポリマーナノゲルが、例えば、脂質及びタンパク質の更新の低減、並びに、摩擦の低下等、特質が改善したコンタクトレンズをもたらし得ることが分かった。また、架橋剤の選択及び架橋度は、所望の用途及び具体的な基材に応じ、適合し得ると考えられる。
【0019】
本明細書で使用する「会合した」とは、コポリマーが、共有結合しないで、基材中又は基材上に保持されることを意味する。会合は、絡み合い又は固着等の物理的保持、又は水素結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子相互作用、静電引力、及びこれらの影響の組み合わせを含み得る。意外にも、半架橋ブロックコポリマーと基材との会合は、持続的であり、かつ指で擦っても維持されることが分かった。基材がコンタクトレンズである時、半架橋ブロックコポリマーは、コンタクトレンズ中かつ/又はコンタクトレンズ上に所望の装用サイクルを通じて保持され、指で擦る洗浄を通して、コンタクトレンズが再使用可能なレンズである実施形態を含む。
【0020】
本明細書で使用する「会合性セグメント」とは、基材の表面、領域、又はセグメントの中又は上に保持される、又は会合するポリマーの末端セグメントの一部分を意味する。会合性セグメントは、親水性又は疎水性であり得る。
【0021】
本明細書で使用する「非反応性」とは、WSCポリマーが、反応、保存、及び使用条件下で、共有結合を形成する官能基を欠いていることを意味する。例えば、親水性ポリマーが、オートクレーブ処理前のコンタクトレンズ等の基材と接触すると、WSCポリマーのごくわずか(1重量%未満)しか、残留反応基を含有しない。残基が存在したとしても、接触条件は、フリーラジカル反応に触媒作用を及ぼすのに必要な開始剤を欠いている。よって、WSCは、基材により共有結合を形成できない。非常に少数のWSCポリマー(5重量%未満、及び1重量%未満)が、残留反応基を有してもよいが、望ましい又は機能的な量の架橋ナノゲルを基材と会合させる残留反応基があまりにも少ないことは、当業者が理解するであろう。WSCポリマーを基材と会合させ続ける圧倒的に主要な作用は、WSCポリマーの少なくとも一部の捕捉である。
【0022】
用語「架橋」は、要素、基、又は化合物のいずれかから構成され、共有結合性結合、イオン結合及び水素結合を含む一次結合による鎖の特定の炭素原子を結合する、橋、又は複数の橋により、ポリマー鎖が、1つ又は2つ以上のポリマー鎖に付着することを指す。本明細書に開示されている本発明の種々の実施形態において、架橋は、共有結合、イオン結合、水素結合等により起こり得る。共有結合性の架橋の例示的実施形態としては、モノビニルモノマー及び複数の(すなわち、2つ以上の)ビニル置換基を含有するモノマーのフリーラジカル共重合の間の、架橋のインサイチュ形成が、挙げられる。このような重合は、複数のポリマー鎖が互いに共有結合性架橋をすること、及び(モノマー転化の程度及び橋架け剤のモル量によって)巨視的ゲルの形成につながる。
【0023】
ポリマー鎖のイオン性架橋は、インサイチュ(すなわち、重合の間)で、又は重合後に起こり得る。後者のケースは、ポリマーカチオン性材料を含有する水溶液を、ポリマーアニオン性材料を含有する水溶液に加えると起こり得る。2つのイオン性ポリマーを混合すると、小さな対イオンの遊離に伴うポリマー−ポリマー錯体化がおこり、イオンで架橋したポリマー−ポリマー錯体の形成につながる。このような錯体の溶解度は、主に、正電荷及び負電荷の化学量論によって、決まる。溶液中のポリアニオン性材料とポリカチオン性材料との間の、このようなイオン性架橋の形成は、当業者によく知られている。イオン性架橋の前者のケースは、モノ−ビニルモノマーが、イオン性結合により互いに接続された2つのエチレン性不飽和モノマーから構成されたジ−ビニル橋架け剤と共重合した時に起こり得る。このような「イオン性橋架け剤」は、モノマー−モノマー錯体又はジビニル共有結合性の有機酸塩を形成する単純な酸塩基の化学により、酸性の(例えば、カルボン酸)部分を含有するエチレン性不飽和モノマーと、塩基性部分(例えば、三級アミン)を含有するエチレン性不飽和モノマーとを化合させることにより、形成し得る。
【0024】
本明細書で使用する「ナノゲル」とは、水溶液中、室温で可溶性又は無期限分散性であるサブミクロンのヒドロゲル粒子を意味する。溶液の溶解度は、水中で1重量%の架開示された発明の文脈において、水素結合による架橋は、複数のプロトン供与部分を有するポリマーが、溶液中で、複数のプロトン受容部分を有するポリマーと化合する時に起こり得る。このような実施形態において、2つのポリマーは、錯体中のプロトン供与基対プロトン受容基の比、並びに、ポリマー鎖上に存在する追加の可溶部分又は不溶部分の存在量によって、可溶性錯体又は不溶性錯体を形成することができる。
【0025】
橋ナノゲルを作製し、Whatman又はPall Membranesから入手可能なもの等、0.45ミクロンのナイロンシリンジフィルターで溶液を濾過することによって、確認できる。水溶液(2及び場合によっては5重量%)が、望ましい場合もある。可溶性の溶液は、溶液中の前記ナノゲルの少なくとも約90%、幾つかの実施形態においては、少なくとも約95%、99%を維持する。1つ又は2つ以上の実施形態において、溶液は、透明である。一実施形態において、水溶液は、少なくとも約50重量%の水又はレンズ包装用溶液であり、幾つかの実施形態において、少なくとも約70重量%、他の実施形態において、少なくとも約90重量%、他の実施形態において、少なくとも約99重量%、他の実施形態において、少なくとも約99.5重量%である。
【0026】
水溶性架橋(WSC)ポリマー又はナノゲルは、巨視的に非ゲル状態であることにより、点眼剤及び組成物を含む水溶液中で可溶性になっている。WSCポリマーは、それらが点眼剤又は組成物と会合する、又は、該点眼剤又は組成物に組み込まれる温度において、概して非ゲル状態である。コンタクトレンズ等の眼科用デバイスについて、WSCポリマーは、一旦、コンタクトレンズに組み込まれ、該コンタクトレンズと会合すると、非ゲル状である必要は無い場合もある。しかし、点眼剤について、WSCポリマーは、概して、保管中、幾つかの実施形態においては、使用中ずっと、非ゲル状のままである。少量のゲル状ポリマー(約5重量%未満)は、受容可能であり、幾つかの溶液中、ゲル状ポリマーの量が多すぎる場合、濾過等、当該技術分野において既知のプロセスによって除去できる。
【0027】
本明細書に示す水溶性架橋ポリマーの実施形態では、親水性ポリマー鎖の間、かつ該親水性ポリマー鎖に沿って、ランダムに架橋されている。架橋に使用される作用剤は、架橋剤又は橋架け剤と称する。
【0028】
本明細書で使用する「少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックス」とは、疎水性モノマー、マクロマー、及びプレポリマー等の疎水性成分に由来する反復単位を含むものである。疎水性成分は、水に溶けず、他の疎水性成分のみと、単独重合又は重合する時、例えば、湿潤溶液等の点眼剤に対する約90°よりも大きい接触角を有するものである。少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックスの例としては、PMMA、シリコーン、シリコーンヒドロゲル(被覆と未被覆の両方)から形成されたコンタクトレンズ、ステント、カテーテル等が挙げられる。疎水性モノマー、マクロマー及びプレポリマーの例は、既知であり、シリコーン基、シロキサン基、非置換アルキル基、アリール基等を含有する、モノマー、マクロマー及びプレポリマーを含む。具体的な例としては、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(800〜1000MW)(mPDMS)、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、TRIS、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等のシリコーン含有成分が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用する「安定した」とは、化合物が、湿潤剤あるいは湿潤剤とポリマー基材との組み合わせのいずれかの所望の特質に有害な影響を及ぼす、121℃、30分間の単一のオートクレーブ処理サイクルを通して、変化しないことを意味する。例えば、シロキサンセグメントとポリマーセグメントとの間のエステル結合は、幾つかの実施形態において、望ましくない。オートクレーブ処理は、乾燥した、又はホウ酸緩衝食塩水又はホスフェート緩衝食塩水等であるが、これに限定されない、眼に相溶性のある食塩水の存在下で行われ得る。
【0030】
本明細書で使用する「単分散に近い」とは、1.5以下の多分散指数(PDI)を意味し、個別一次鎖重合度、及び/又は架橋両親媒性一次鎖のクラスター内のMWを指す。幾つかの実施形態では、ポリマーは、約1.3未満、他の実施形態では、約1.05〜約1.3の範囲内の多分散を示す。個別の単分散に近い一次鎖が、重合の間、互いに統計的に架橋するため、結果として生じる水溶性架橋ポリマークラスターは、1.5を超える多分散の値を有するものであることを、当業者は理解するであろう。
【0031】
本明細書で使用する「重合度」とは、ポリマー分子又はポリマーのセグメント毎の反復単位の数を意味する。例えば、1つ又は2つ以上の実施形態において、本発明のコポリマー(架橋の前)は、約10〜約10,000(又は約50〜約5000、又は約300〜約5000、又は約500〜約2000、又は約100〜約1000、又は約100〜約500、又は約100〜約300)の範囲内の重合度を有することができる。
【0032】
本明細書で使用する「橋架け剤対一次鎖モル比」(XL:ζ−PC)とは、コポリマー調製の間に使用する橋架け剤のモル数対調製中に使用する一次鎖のモル数の比を指す。一次鎖の数は、存在する、制御ラジカル重合(CRP)剤、又は制御剤のモル量によって決定される。具体的な実施形態は、約0.005〜約10(又は約0.1〜約5、又は約0.1〜約1.5、又は約0.1〜約1.25)の範囲内の橋架け剤対一次鎖モル比を含む。例示的なCRP剤としては、限定されるものではないが、可逆的付加開裂移動(RAFT)剤、原子移動ラジカル重合(ATRP)剤、テルル化物媒介重合(TERP)剤、及び/又はニトロキシド媒介リビングラジカル重合(NMP)剤が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用する「セグメント」又は「ブロック」とは、組成物又は親水性等の同様の特質を有する反復単位を有するポリマーの一セクションを指す。
【0034】
本明細書で使用する「シリコーンセグメント」とは、−[SiO]−を指す。各−[SiO]−反復単位におけるSi原子は、アルキル又はアリール置換であってもよく、C
1〜4アルキルで置換することが好ましく、かつ一実施形態において、メチル基で置換され、ジメチルシロキサン反復単位を形成する。
【0035】
本明細書で使用する「親水性会合性セグメント」は、親水性であるが、水素又はイオン結合により基材と会合し得る。例えば、DMA、NVP又はPVP等のプロトン受容体を含むレンズに対し、親水性会合性セグメントは、プロトン供与性基を含む。本例において、好適なプロトン供与性基は、4−アクリルアミドブタン酸(ACAII)と、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、及びN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)メタクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、又はビニル安息香酸(bezoic acid)を含む。一次鎖自体が選択された基材と会合可能であるため、架橋ナノゲルが別個の会合性セグメントを含まないことは、本発明の利点である。
【0036】
本明細書で使用する「親水性」ポリマー又はモノマーとは、少なくとも約10重量%の濃度で、25℃で、水と混合される場合、透明な単相をもたらすものである。
【0037】
本明細書で使用する「錯体生成セグメント」又は「錯体生成基」としては、強い非共有結合性の相互作用を示す官能基の対、例えば、ジオール官能基又はビオチン及びアビジン結合と強力に相互に作用するアルキル又はアリールボロン酸が挙げられる。一実施形態において、錯体生成セグメントは、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、(3−アクリルアミドフェニル)ボロン酸、又は(4−アクリルアミドフェニル)ボロン酸又はN−(2−アクリルアミドエチル)−5−((3aS、4S、6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド等のモノマーを含み得る。
【0038】
本明細書で使用する「刺激応答性成分」としては、環境条件の変化に応じた物理的又は化学的変化を経るものが挙げられる。変化を誘発し得る条件としては、pH、光、塩濃度、温度、これらの組み合わせ等が挙げられる。刺激応答性成分を作製するのに使用し得るモノマーの例としては、限定されるものではないが、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニル安息香酸、又はアクリルアミドブタン酸(ACAII)等が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用する「基材」とは、シート、フィルム、チューブ、又は生体医用デバイス等の更に複雑な形態等の物品を指す。
【0040】
本明細書で使用する「生体医用デバイス」とは、哺乳動物組織又は体液の中又は上のいずれかで使用するように設計された任意の物品である。これらのデバイスの例には、カテーテル、インプラント、ステント、縫合糸、包帯、並びに眼内レンズ及びコンタクトレンズ等の眼科用デバイスが挙げられるが、これらには制限されない。
【0041】
本明細書で使用する「レンズ」なる用語とは、眼内又は眼の表面上に置かれる眼科用デバイスのことを指す。これらのデバイスは、光学矯正、美容の向上、UV防護、並びに、可視光線又はまぶしさの軽減、創傷治癒、薬又は栄養補助食品の送達等の治療的効果、診断評価若しくは監視、又はそれらの任意の組み合わせを提供することができる。レンズなる用語としては、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼内挿入物、及び光学挿入物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用する「シリコーン含有ポリマー」とは、シリコーン又はシロキサン反復単位を含有する任意のポリマーである。シリコーン含有ポリマーは、シリコーンエラストマー等のホモポリマー、又はフルオロシリコーン及びシリコーンヒドロゲル等のコポリマーであり得る。本明細書で使用するシリコーンヒドロゲルとは、シリコーン含有反復単位及び幾つかの実施形態では、少なくとも約10%、幾つかの実施形態では、少なくとも約20%の含水率を含むポリマーを指す。
【0043】
本明細書で使用する「RAFT重合」又は「RAFT」とは、可逆的付加開裂(reversible addition fragmentation)連鎖移動重合を指す。
【0044】
本明細書で使用する「反応性成分」とは、重合時、ポリマーの構造の一部になる重合反応混合物中の成分である。よって、反応性成分としては、ポリマー網目構造に共有結合するモノマー及びマクロマーが挙げられる。ポリマーの構造の一部にならない希釈剤及び加工助剤は、反応性成分ではない。
【0045】
本明細書で使用する「置換」とは、ハロゲン、エステル、アリール、アルケン、アルキン、ケトン、アルデヒド、エーテル、ヒドロキシル、アミド、アミン、及びこれらの組み合わせを含有し得るアルキル基を指す。
【0046】
本明細書で使用する「フリーラジカル源」とは、好適な化合物(単数又は複数)の熱的に誘導される均一の分裂(ペルオキシド、ペルオキシ酸エステル、又はアゾ化合物等の熱開始剤)、モノマー(例えば、スチレン)からの自然発生、酸化還元を開始するシステム、光化学を開始するシステム、又は電子ビーム、X線、若しくはガンマ線等の高エネルギー放射線等のフリーラジカルを生成する任意の好適な方法を指す。「フリーラジカル源」として作用することが知られている化学種は、当業者によって開始剤と一般に呼ばれ、本開示の目的のために、そのように称されるものである。
【0047】
本明細書で使用する「プロトン供与性セグメント」又は「プロトン供与性官能基」とは、レンズ形成、オートクレーブ処理又は保管条件下で、プロトンをプロトン受容性セグメント又は基に供与可能な官能基である。プロトン供与性官能基としては、アルコール、酸、一次アミド等が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用する「プロトン受容性セグメント」又は「プロトン受容性官能基」とは、レンズ形成、オートクレーブ処理又は保管条件下で、プロトンを受容可能な官能基である。プロトン受容性基としては、アミン、アミド、カルボニル等が挙げられる。
【0049】
一実施形態において、本発明のWSCポリマーは、末端基材会合性セグメントを含まない、安定したポリマー湿潤剤である。前記ポリマーは、医用デバイスの少なくとも一部分に対して親和性を有し、基材の性能に所望の改善を提供する、材料又はポリマーから構成される。ポリマー湿潤剤は、前もって予備処理することなく、1つの工程で基材に有益に会合することができる。
【0050】
よって、水溶性架橋ポリマーは、親水性であり、所与の医用デバイスに対して親和性を有する成分から形成される。例えば、水溶性架橋ポリマーを、プロトン供与性及びプロトン受容性官能基を含有する成分から形成し得る。1つのこのような実施形態において、WSCポリマーは、アルコールのような、よって、医用デバイス又はプロトンが受容している他の表面に対して親和性のある複数のプロトン供与性官能基を含み得る。反対に、水溶性架橋ポリマーは、アミドのような、よって、医用デバイス又はプロトン供与性である他の表面に対して親和性のある複数のプロトン受容性官能基を含有し得る。更に他の実施形態において、WSCポリマーは、カルボキシレート、スルホネート、アンモニウム塩、又はホスホニウム塩のような、よって、所与のイオン性水溶性架橋ポリマーとは反対の電荷を有する医用デバイスに対して親和性のある複数のイオン性官能基を含有し得る。他の実施形態において、WSCポリマーは、医用デバイス又は表面上の他の相補的官能基との錯体化を経ることが可能な官能基を含有する。例えば、水溶性架橋ポリマーは、複数のボロン酸官能基を含有し得、かつ複数のヒドロキシル基を含有する医用デバイス又は表面と会合し得る。代替実施形態において、ヒドロキシル基は、水溶性架橋ポリマーの中に含まれる場合があり、かつ複数のボロン酸官能基を含有する表面と会合する場合がある。幾つかの実施形態において、水溶性架橋ポリマーは、刺激応答性であり、かつ、ポリマーの形態に組み込まれると、結果として生じるポリマーを、異なる溶液条件下で、水溶性又は水不溶性にする官能基から構成される。例えば、水溶性架橋ポリマーは、32℃の水の中で相転移を経るポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)のような温度応答性ポリマーから構成し得る。したがって、32℃未満の溶液温度で、前記PNIPAMポリマーは、水溶性及び親水性であり、一方、より高い溶液温度(すなわち、32℃よりも高い)で、前記PNIPAMポリマーは、水不溶性、疎水性であり、かつ少なくとも1つの疎水性物質を含む医用デバイス又は表面と会合し得る。
【0051】
一実施形態において、エチレン性不飽和モノマーと多官能性エチレン性不飽和モノマーとの共重合によって形成された水溶性架橋ポリマー。
【0052】
親水性一次鎖ζは、以下の式によるG、D、及びEの統計的に分布した反復単位を含む。
【化3】
【0053】
項α、β、及びγは、水溶性架橋ポリマーを含むG、D、及びEの相対モル量(モル分率に関する)を特定する。幾つかの実施形態において、αは、約0.85〜約0.999、約0.92〜約0.999、約0.95〜約0.999、及び約0.97〜約0.999に等しく、一方、αのそれぞれの範囲についてのβとγとの合計は、約0.15〜約0.001、約0.08〜約0.001、約0.05〜約0.001、及び約0.025〜約0.001と等しいであろう。開示された発明のために、一次鎖の水溶性架橋ポリマー中のDのモル分率(すなわち、β)は、Eのモル分率(すなわち、γ)と比較して、最大化するよう意図されており、よって、ζと他のζ
ι一次鎖との間の架橋の数を最大化し、すなわち、残っている未反応のR’
15部分は、非常に少ない。α、β、及びγの全てのモル分率範囲は、所与の実施形態のモノマーの仕込み(monomer feed)において採用された、モノマー及び橋架け剤の相対量に基づき、モノマー上のビニル置換基と橋架け剤上のビニル置換基との間の反応性の差は、最小、すなわち、統計的に近い組み込みが起こると想定される。一実施形態において、現在のナノゲルは、未反応R’
15基を実質的に含まない。R’
15が二重結合を含む時、このことは、FTIR又は二重結合の存在を検出可能な他の方法によって確認し得る。R
15及びR’
15は、一実施形態において、シロキサン反復単位を実質的に含まず、別の実施形態において、シリコーンを実質的に含まない。
【0054】
構造Iは、末端チオカルボニルチオ部分を含む場合もあり、一方、他の実施形態において、含まない場合もある。
【0055】
Uは、水素、ハロゲン、C
1〜C
4アルキルからなる群から選択され、C
1〜C
4アルキルは、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ(OR’’)、カルボキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ(O
2CR’’)、アルコキシ−カルボニル、アリールオキシ−カルボニル(CO
2R’’)、及びこれらの組み合わせで任意に置換されてもよい。Uは、H、又はメチルから選択し得ることが好ましい。
【0056】
Vは、R’’、−CO
2H、−CO
2R’’、−COR’’、−CN、−CONH
2、−CONHR’’、−CONR’’
2、−O
2CR’’、−OR’’、更に環式及び非環式N−ビニルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0057】
R’’は、任意に置換されたC
1〜C
18アルキル、C
2〜C
18アルケニル、アリール、ヘテロシクリル、アルカリルからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ及びカルボキシレート、スルホン酸及びスルホネート、アルコキシ−若しくはアリールオキシ−カルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロ、及びジアルキルアミノ、リン酸、ホスフェート、ホスホン酸、ホスホネートからなる群から独立して選択される。一実施形態において、R’’は、メチル、−CH
2OH、−CH
2CH
2OH、−CH
2CH
2CH
2OH、−CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−(CH
3)
2−CH
2−CO
2−、−(CH
3)
2−CH
2−SO
3H、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−PO
3−2、−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−PO
3−2、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−PO
3−2−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−PO
3−2、及びこれらの組み合わせ等からなる群から選択される。好適なV群の例としては、ピロリドニル、ピペリドニル(piperidonyl)、2−カプロラクタム、3−メチル−2−カプロラクタム、3−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−カプロラクタム、3−エチル−2−ピロリドニル、4,5−ジメチル−2−ピロリドニル、イミダゾリル、N−N−ジメチルアミド、アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミド、−シアノ、N−イソプロピルアミド、アセテート、−、カルボキシポリエチレングリコール、N−(2−ヒドロキシプロピル)アミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド、カルボキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート(DMVBAPS)、3−((3−アミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−(カルボキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(APDAPS)、N−メチルアセトアミド、−アセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、2−メチルプロピオンアミド、N,N’−ジメチル尿素等、及びこれらの混合物が、挙げられる。
【0058】
一実施形態において、Vは、−N−(CH
3)
2、ピロリドニル、−CON(CH
3)
2、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド又は−N(CH
3)COCH
3を含む。
【0059】
R
1は、フリーラジカル重合を開始可能な任意の化学的部分又はポリマーであり得る。一実施形態において、R
1は、例えば、RAFT重合条件下で認められるように、可逆的停止及び開裂を経ることが可能であり、一方、重合を開始する能力も保持する。R
1は、任意に置換されたアルキレン、任意に置換された飽和、不飽和、又は芳香族炭素環若しくは複素環、任意に置換されたアルキルチオ、任意に置換されたアルコキシ、又は任意に置換されたジアルキルアミノからなる二価基から選択される場合もある。一実施形態では、R
1は、任意に置換されたベンジル、任意に置換されたフェニル、エタノエート、任意に置換されたプロピオネート、4−シアノペンタノエート、又はイソブチレート(isobutyroate)官能基から選択される。一実施形態において、R
1は、4−シアノペンタノエート、イソブタン基、又はベンジル基を含む。他の実施形態において、R
1は、シアノメチル(cyano-methy)基又はクミル基を含み得る。別の実施形態において、R
1は、前記官能基を含み、かつ多価である。安定したコポリマーの例を、様々な好適な置換基を有する以下の式VIIIにおいて示す。
【0060】
R
18は、制御されたフリーラジカル重合(CRP)に加わることができ、かつ/又は該フリーラジカル重合を媒介することができる
官能基を含む。CRP技術は、当業者に周知であり、限定されるものではないが、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)、及びテルル化物媒介ラジカル重合(TERP)を含み得る。
【0061】
一実施形態において、以下のコポリマー構造は、RAFTによって形成し得、よって、ζクラスター内の各一次鎖の末端上にチオカルボニルチオ官能基を含有し得る。
【化4】
【0062】
上記の置換基を、任意の組み合わせにおいて組み合わせ得ることを理解すべきである。
【0063】
WSCポリマーは、概して、約10〜約10,000の範囲内の重合度を有する。幾つかの実施形態において、重合度は、少なくとも約100、又は少なくとも約300であり、あるいは他の実施形態において、少なくとも約500でさえあり得る。更なる実施形態では、水溶性架橋ポリマーは、約300〜約10,000、約300〜約5,000、約500〜約10,000、約500〜約5,000、約500〜約2000、及び約700〜約2000の範囲内の重合度を有する。重合度は、MALDI−TOF、SEC−MALLS、NMR、又はこれらの組み合わせから得られ得る。
【0064】
各ζ一次鎖は、架橋又は半架橋されている。すなわち、線状、枝分かれ、又はくし状構造のみを有する、先に開示した技術とは異なり、水溶性架橋コポリマーは、ポリマーに沿った共有結合性結合、イオン結合、又は水素結合により、ランダムに架橋されている。架橋剤は、2つ以上の反応性官能基又は会合性官能基を有し、本発明のコポリマーと互いに反応、かつ/又は会合する。架橋剤の残基を、R
15及びR
15’として、式II及びIIIに示す。架橋剤は、ビニル、アリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等のフリーラジカル反応性官能基を含む。一実施形態において架橋剤は、親水性であり、別の実施形態において、ジメチルシロキサン基を含まず、また、別の実施形態において、シリコーンを含まない。例示的な共有結合性の架橋剤は、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド;N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド;N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド;N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミド;N,N’−ペンタメチレンビス(メタ)アクリルアミド;N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド;他の全てのN,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド;限定されるものではないが、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む全てのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;限定されるものではないが、N,N’−(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジアクリルアミドN,N’−(((オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ジアクリルアミド、トリアリルシアヌレート(TAC)、1,3−ジビニルイミダゾリジン−2−オン、及び3,3’’アルキレンビス(1−ビニルピロリジン−2−オン)を含み、アルキレンが、1〜12個の炭素を有する、全てのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミドを含む。本発明のWSCポリマーは、水溶性及び非ゲル状である。
【0065】
可逆的に破壊又は開裂し得る骨格に沿った官能基を有する架橋剤も使用可能である。例えば、N,N’−シスタミンジ(メタ)アシルアミドは、橋架け剤として使用し得る。半架橋ブロックコポリマーが基材と会合した後、シスタミン中のジスルフィド結合を開裂かつ再編成して、基材マトリックス中でより緊密に絡まる相互貫入網目構造を作る。
【0066】
架橋反応混合物中のRAFT剤対架橋剤のモル比は、約0.1よりも大きく、約0.2よりも大きく、約0.3よりも大きく、約0.5よりも大きく、約0.75よりも大きく、約1よりも大きく、約2よりも大きく、約5よりも大きく、また、場合によっては約10よりも大きい。一実施形態において、架橋剤は、シリコーンを含まず、架橋反応混合物中のRAFT剤対架橋剤は、約0.1よりも大きい。架橋剤がシロキサンを含む実施形態において、架橋反応混合物中のRAFT剤対架橋剤は、約0.3よりも大きい。架橋反応混合物中の架橋剤のモル量対理論的一次鎖のモル比(「XL:ζ−PC」)は、0.01:1.0と6.0:1.0との間であり得、0.1:1.0、0.2:1.0、0.25:1.0、0.3:1.0、0.4:1.0、0.5:1.0、0.55:1.0、0.6:1.0、0.7:1.0、0.75:1.0、0.8:1.0、0.9:1.0、1.0:1.0、1.2:1.0、1.25:1.0、1.5:1.0、3.0:1.0、4.0:1.0、5.0:1.0、7.5:1.0である、又は10:1.0でさえあるXL:ζ−PCの非制限値が好ましい。幾つかの実施形態において、広範囲の温度条件及び溶液条件にわたるWSCポリマーを提供して、様々な物品及び溶液への迅速な組み込みを可能にするXL:ζ−PC価を選択することが望ましい場合もある。例えば、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)PHPMAを含む水溶性架橋ポリマーは、約1.25:1未満のXL:ζ−PCを有してポリマーの巨視的ゲル化を防ぐことが望ましい。他の実施形態において、前記例についてのXL:ζ−PCは、3:1未満である場合がある。更に他の実施形態において、前記例についてのXL:ζ−PCは、1.5:1未満である場合がある。他の実施形態において、処理した基材の脂質の取り込みの望ましい低減をもたらすXL:ζ−PCの値を選択し、XL:ζ−PCの値を増やすと脂質の取り込みレベルが減少することが望ましい場合もある。
【0067】
XL:ζ−PCに加えて、巨視的ゲル化が起こる点に影響する別の要素は、全モノマー濃度である。本発明の幾つかの実施形態において、使用される全モノマー濃度は、限定されるものではないが、1〜約80重量%、及び約10〜約50重量%、更には約20〜約50重量%を含み得る。
【0068】
当業者は、制御されたラジカル重合(CRP)システム内で形成された一次鎖の数が、制御ラジカル重合(CRP)剤又は制御剤の濃度によって決まることを理解するであろう。RAFT重合の場合、制御剤は、チオカルボニルチオ官能性制御剤であり得る。ATRPの場合、制御剤は、銅配位子錯体であり得る。本明細書に開示されている発明のために、任意のCRP剤を採用し得る。他の実施形態において、巨視的ゲル化なしでナノゲル形成が可能である限り、CRP剤が不要の場合もある。
【0069】
一実施形態において、ポリマー湿潤剤は、式IAに示すような全体構造及び一次鎖指示子のζを有する。
【化5】
式中、R
1、R
15、R’
15、G、D、E、Z、ζ、ζ
i、α、β、γ、m、及びpは、以下に定義され、
式H
2C=UVを有する少なくとも1つの親水性モノマーと、
0.1を超える連鎖移動定数を有する式IIの少なくとも1つのRAFT剤と、
【化6】
(iii)フリーラジカル源(即ち、開始剤)から生成されるフリーラジカルと、
(iv)架橋剤のH
2C=UR
15と、を接触させることによって形成し得る。
Zは、水素、塩素、フッ素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアルキルチオ、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアルコキシカルボニル、任意に置換されたアリールオキシカルボニル(−COOR’’)、カルボキシ(−COOH)、任意に置換されたアシルオキシ(−O
2CR’’)、任意に置換されたカルバモイル(−CONR’’
2)、シアノ(−CN)、ジアルキル−若しくはジアリール−ホスホナート[−P(=O)(OR’’)
2]、ジアルキル−若しくはジアリール−ホスフィナート[−P(=O)(OR’’)
2]、任意の機構によって形成されたポリマー鎖からなる群から選択され、
pは、1又は1、1〜5、3〜5、また、幾つかの実施形態において、1又は2よりも大きい整数である。p≧2の場合、R
1は、シリコン、硫黄、酸素、窒素、任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたアリール、ポリマー鎖、又はこれらの組み合わせのいずれかに由来するp価部分から選択される。pがp価であるこのような実施形態は、以下の式I及び式II、つまり式VI及び式VIIの構造類似体において開示される。
【化7】
【0070】
RAFT重合が採用された一実施形態において、RAFT剤、フリーラジカル開始剤、モノ−ビニルモノマー、及びジ−又はポリ−ビニルモノマーは、所望のモル比で化合され、かつ一般的に好まれる溶媒中で溶解する。結果として生じる溶液は、重合されて、特徴的な基材会合性セグメントを有しない、架橋されているが、非ゲル状のポリマーをもたらす。以下の式VIは、このような実施形態において使用し得るRAFTベースのCRP剤の構造を詳述している。
【化8】
【0071】
この結果、基材会合性セグメントなしの一次鎖を含有するζクラスターが形成されることは、当業者にとって明らかであろう。
【0072】
一実施形態において、親水性一次鎖ζは、既知の親水性モノマーであるUから形成し得る。親水性モノマーは、10重量%の濃度で、25℃で、水と混合される場合、透明な単相を得るものである。親水性モノマーの好適な族の例には、ビニルアミド、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレニクス(styrenics)、ビニルエーテル、ビニルカルボナート、ビニルカルバメート、ビニル尿素、及びこれらの混合物が含まれる。
【0073】
好適な親水性モノマーの例には、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ビニルイミダゾール、N−N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルアセテート、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルオキサゾリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート(DMVBAPS)、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、3−((3−(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAPDAPS)、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド,N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N,N’−ジメチル尿素等、及びこれらの混合物が含まれる。一実施形態において、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミドN−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、モノ−グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビスヒドロキシエチルアクリルアミド、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等、及びこれらの混合物を含む。幾つかの実施形態では、親水性セグメントは、メタクリル酸、アクリル酸、3−アクリルアミドプロピオン酸(ACA1)、4−アクリルアミドブタン酸、5−アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ナトリウム−2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸塩(AMPS)、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸カリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二カリウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、スルホエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPA)、3−アクリルアミド−N,N,N−トリメチルプロパン−1−塩化アンモニウム(すなわち、メチル四級化DMAPA)を含む反応性スルホン酸塩、及びこれらの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定されない、荷電モノマーを含むこともできる。親水性セグメントが少なくとも1つの荷電親水性モノマーを含む実施形態では、親水性セグメント中にコモノマーとして非荷電親水性モノマーを含むことが望ましい場合がある。別の実施形態において、荷電親水性モノマーは、[Q]セグメント全体でランダムに分布する。
【0074】
WSCポリマーは、多数の重合プロセスにより形成し得る。一実施形態において、WSCポリマーは、RAFT重合を使用して形成される。他の実施形態において、ブロックコポリマーは、ATRPを使用して形成される。一方、別の実施形態において、ブロックコポリマーは、TERPを使用して形成される。更に幾つかの実施形態において、ブロックコポリマーは、任意の既知の制御されたラジカル重合機構を使用して形成される。他の実施形態では、水溶性架橋ポリマーは、従来のフリーラジカル重合によって形成される。一実施形態において、WSCポリマーは、従来のフリーラジカル重合によって、又は重合の他の非制御機構によって形成し得る。当業者には明らかであるが、このようなルートの合成的有用性は、(制御された重合と比較して)極めて限られており、すなわち、非制御重合は、(モノマー及び橋架け剤に対して)希釈した条件下で行うべきであり、かつ通常、巨視的ゲルの形成なしで、高い転化に到達しない。加えて、巨視的ゲル化を防ぐために、大幅に低いXL:ζ−PC比を目標にすべきである。水溶性架橋ポリマーは、別個の末端基材会合性ブロックを含有しない。代わりに、水溶性架橋ポリマーは、基材に対する親和性及び所望の性能向上特質の両方を示す単一ブロックを含有するか、あるいは、その全てが基材に対する親和性及び所望の性能向上特質の両方を示す複数のブロックを含有する。水溶性架橋ポリマーは、ランダムなコポリマーを含む場合もある。このような水溶性架橋ポリマーの例示的な実施形態としては、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、モノ−グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びビスヒドロキシエチルアクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドの水溶性架橋ポリマー及びコポリマーが挙げられる。あるいは、2つの異なるポリマー又はコポリマーは、共に架橋して、本願のコポリマーを形成し得る。本願の一実施形態において、ランダムコポリマーが好ましい。別の実施形態において、水溶性架橋ポリマーは、コンタクトレンズ等の眼科用デバイスと接触する。本実施形態において、コンタクトレンズについて、洗浄用溶液及びケア溶液からのPQ−1のような保存剤等の成分の取り込みが低いことが望ましい場合もある。これらの実施形態において、ポリマーは、メタクリル酸を含むアクリル酸又は置換アクリル酸に由来する反復単位を含まない。
【0075】
水溶性架橋コポリマーの親和性が、処理中のレンズ又はデバイスの表面に適合する場合、実施形態を使用して、従来のヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料を処理し得る。適切な官能基及び体系を有する水溶性架橋コポリマーは、角膜上皮表面上で認められた結合ムチンの反応を厳密に模倣することができ、かつ、コンタクトレンズ医用デバイスの表面を修正して、その潤滑性、付着物の取り込み、及びおそらくは快適性を改善することにおいて、非常に有用であり得る。理論に束縛されるものではないが、水溶性架橋コポリマーの架橋性は、ジスルフィド架橋、水素結合、及び分子の絡み合いを通して起こるムチン−N−ムチン相互作用を厳密にまねることができる。
【0076】
重合条件
RAFT剤(必要な場合)を、少なくとも1つの親水性モノマー、フリーラジカル開始剤、及び架橋剤と接触させることから生成される所与の重合における各ζ一次鎖M
nζ−PCの数平均分子量は、以下の等式を使用して目標とし得る。
【数1】
【0077】
M
nM、M
nXL、及びMW
CTAは、(合計すると)ζ一次鎖の数平均分子量、すなわち、M
nζ−PCに等しいモノマー、橋架け剤、及びRAFT剤の分子量の個々の貢献度を表す。ψは、橋架け剤上の反応性官能基の数、[M]は、反応性モノマー濃度、[XL]は、橋架け剤濃度、Xは、分数形の転化の程度、[CTA]は、RAFT剤の濃度、また、MW
monomer、MW
XL、MW
CTAは、それぞれ、反応性モノマー、橋架け剤、RAFT剤の分子量である。
【0078】
親水性ポリマーセグメントのDP
ζ−PCの予測された重合度(DP)は、等式1、2、及び3から計算し得る。M
nζ−PC>>MW
CTAであるため、Xが、単一であり(すなわち、重合が、100%転化に達し)、かつMW
CTAが、無視されると、等式1は、等式(Eqution)4にまとめられる。
【数2】
【0079】
M
nM及びM
nXLを、そのそれぞれのモノマーの量で割ることによりDP
ζ鎖に関する等式を解くと、MW
M及びMW
XLは、
【数3】
【0080】
これらの等式は、ζ一次鎖、M
nζ−PCの数平均分子量を予測するが、RAFT重合における橋架け剤の関与、及びζ一次鎖が互いにかつ他の成長するζクラスターにランダムに架橋するという事実により形成されたζクラスターの全DP又は全体平均分子量を予測していないことは、当業者に明らかであろう。所与のζクラスターのMWは、そのζクラスター内部に認められる個々のζ一次鎖のMWよりもかなり高く、かつ所与の重合に関する平均M
nζ−PCのちょうど倍である場合もあり、又はそうでない場合もある。
【0081】
1つの目標DP
nPCは、約10〜10,000の範囲内であって、50〜1500が好ましく、50〜1000がより好ましく、また、50〜500が最も好ましい。
【0082】
水溶性架橋ポリマーを形成するための適切なRAFT剤及び架橋剤の存在下で、親水性モノマーの重合に対する重合条件は、使用される開始剤システムに基づいて選択され、連鎖成長と連鎖停止との間の所望のバランスを提供する。溶媒、開始剤、及び添加剤等の他の重合成分が、選択される場合もあり、これにより、該他の重合成分は、大きくなるラジカルに向けて低い移動定数を有し、かつ他の全ての重合成分と完全に混和できる。
【0083】
橋架け剤は、反応の始めにおいて重合溶液に添加するか、又は、反応における後の時点まで保留しておき、所望の構造又は特質を与える形で、結果として生じるナノゲル材料の体系を操作することができる。あるいは、橋架け剤上の反応基を選択することができ、これにより、大きくなるポリマー骨格への組み込みは、よりランダムでなくなり、よって、より不均一に分布した架橋密度を有するポリマーのナノゲルを形成する。橋架け剤がより「ブロック状」に組み込まれたポリマーのナノゲルが望ましい場合、大きくなる(propogating)モノ−ビニルモノマーとは異なる反応性の架橋剤を使用し得る。例えば、アクリルアミド、モノ−ビニルモノマーによるナノゲルの形成において、ジメタクリレート化架橋剤を採用し得る。CRPを利用する幾つかの実施形態について、この結果、橋架け剤が、一次ポリマー鎖の骨格に「先細り」で組み込まれることになり、すなわち、ジビニルモノマーが、各一次ポリマー鎖の一端において、他端よりも多い。あるいは、一次ポリマー鎖全体において橋架け剤のランダムな分布が望ましい実施形態について、橋架け剤を選択することができ、これにより、その反応性部位の両方が、大きくなるモノ−ビニルモノマーと同様の反応性(又は同一の官能基)を有する。幾つかの実施形態において、橋架け剤は、反応性の異なる官能基を含有し、例えば、2−(アクリロイルオキシ)エチルメタクリレート又はN−(2−アクリルアミドエチル)メタクリルアミドを採用し得る。当業者は、このような構造が、全ての反応性官能基に対して一致した反応性を含有する類似システムに、よりランダムでない形で、各一次ポリマー鎖にわたって組み込まれることも期待するであろう。
【0084】
ブロックWSCポリマーが、RAFTによって作製される実施形態では、開始システムは、反応条件下で、移動剤による開始剤又は開始ラジカルの実質的に逆の相互作用(複数の相互作用)がないように、選択される。開始剤はまた、反応媒質又はモノマー混合物中に必要な溶解度を有するべきである。開始剤は、選択された親水性モノマーに基づいて選択される。例えば、フリーラジカル反応性親水性モノマーが使用される場合、開始剤は、光開始剤、熱開始剤、酸化還元開始剤、及びガンマ開始剤等のラジカル源を提供することができる任意の開始剤であってよい。好適な光開始剤には、以下に記載される紫外線及び可視光開始剤が含まれる。熱開始剤は、重合の温度で適切な半減期を有するように選択される。これらの開始剤には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾール−N−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドジメチル(VA−044)、2,2’−アゾビスジメチルイソブチレート4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1)−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−ヒドロキシエチル)]−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン(dimethyleneisobutyramidine))ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、t−ブチルペロキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ−イソプロピルペルオキシジカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ペルオキシ2硫酸カリウム、ペルオキシ2硫酸アンモニウム、ジ−t−ブチル次亜硝酸塩、ジクミル次亜硝酸塩といった化合物のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。一実施形態では、熱開始剤は、ラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、イソプロピル過炭酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、及びこれらの組み合わせ等の緩やかに上昇した温度でフリーラジカルを生成する開始剤から選択される。
【0085】
酸化還元開始剤の例には、以下の酸化剤及び還元剤の組み合わせが含まれる。
酸化剤:カリウムペルオキシ二硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド。
【0086】
還元剤:鉄(II)、チタン(III)、チオ硫酸カリウム、硫酸水素カリウム。
【0087】
一実施形態では、開始剤は、重合の条件下で、反応媒質又はモノマー混合物中の必要な溶解度を有し、ラジカル生成のための適切な量子収量を有する光開始剤から選択される。例には、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシド、及び光酸化還元システムが含まれる。別の実施形態では、開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、及びカンファーキノンとエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせ、並びにこれらの組み合わせ等から選択される可視開始剤から選択される。他の実施形態では、開始剤は、光開始剤を含有する少なくとも1つのホスフィンオキシドを含み、他の実施形態では、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドを含む。光開始剤を使用するとき、反応混合物は、選択された光開始剤に対して活性化する波長において放射線を用いて照射される。
【0088】
重合は、バッチ、連続、又は送りモード下で、溶液、懸濁液、又は乳濁液中で行うことができる。一実施形態では、本プロセスは、連鎖移動剤を含有する反応混合物に重合剤を添加することによって行われる。他の条件を用いてもよく、当該技術分野で既知である。
【0089】
本明細書に規定のコポリマーは、溶媒沈殿及び/又は、これに続く溶媒抽出等の既知の手段によって、又は透析若しくは制限されるものではないが、タンジェント流濾過(TFF)等の関連する精製技術によって、精製することができる。
【0090】
RAFT重合を用い、かつRAFT剤を使用前に除去しない幾つかの実施形態において、RAFT重合剤は、WSCポリマーの末端で保持される。
【0091】
RAFT重合剤は、熱的に又は加水分解的に安定せず、したがって、RAFT重合剤が、ポリマー基材に組み込まれる前に、容易に分裂するか、又は置き換えることができるように、末端にあることは、本発明の実施形態の利点である。あるいは、RAFT重合剤は、ポリマー基材に組み込む間、又は使用中(RAFT及び/又はその分解物が、非毒性の非刺激性である場合)、WSCポリマー上に残留するか、あるいは、分裂することができる。一実施形態では、RAFT重合剤は、WSCポリマーを基材に、又は基材と接触させるべき溶液に組み込む前に、除去される。末端基を除去するための好適なプロセスには、米国特許第7109276号、米国特許第6794486号、米国特許第7807755号、米国特許出願公開第2007232783号、米国特許出願公開第2010137548号、米国特許第5385996号、及び米国特許第5874511号において開示されるような、アミンによる反応が含まれるが、これらに限定されない。加熱分解又はラジカル還元等、他の末端基除去技術を、幾つかの実施形態においても、採用することができる。
【0092】
一実施形態において、WSCポリマーは、上記の式Iで表した構造を有する。
【0093】
他の実施形態では、WSCポリマーは、従来のフリーラジカル反応物を使用して形成することができる。本実施形態において、ブロックコポリマーは、少なくとも1つの親水性モノマー及びアゾ系マクロ開始剤のフリーラジカル反応によって形成可能である。
【0094】
疎水性又は部分的に疎水性の基材
本明細書に開示されているWSCポリマーは、ポリシロキサン、シリコーンヒドロゲル、従来のヒドロゲル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカルボナート、ポリエチレンテレフタレート(terapthalate)、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、金属、及びその混合物及びそのコポリマー等から形成されるポリマー物品等、種々の、疎水性、部分的に疎水性、親水性、又は両親媒性基材と、非共有結合で会合し得る。水溶性架橋コポリマーに含有される官能基と所与の基材の上又は内部で認められる官能基との間に十分な親和性がある場合、会合は起こる。処理されて本発明のコポリマーと会合し得る基材の例としては、移植可能なデバイス、縫合糸、グラフト基材、涙点プラグ、カテーテル、ステント、創傷包帯、外科機器、眼科用デバイス等に使用されるポリマー及び金属が挙げられる。
【0095】
少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックスの更なる例には、関節置換等の移植可能なデバイスに使用される、高度に架橋した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられ、この例は、通常、少なくとも約400,000の分子量を有し、幾つかの実施形態では、本質的に0のメルト・インデックス(ASTM D−1238)及び8を超える比重の低減によって定義される、約1,000,000〜約10,000,000の分子量を有し、幾つかの実施形態では、約25〜30の分子量を有する。
【0096】
縫合糸及び創傷包帯を作製する際、糸として使用するのに好適な吸収性ポリマーとしては、ラクチド(乳酸d−、l−、及びメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカルボナート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカルボナートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン(vaterolactone)、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びそれらのポリマーブレンドのホモポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない、脂肪族ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
非吸収性ポリマー材料としては、ポリアミド(ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)及びポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン61)のコポリマー、及びこれらのブレンド)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、コポリマー、及びこれらのブレンド)、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ化ポリビニリデン)ポリオレフィン(例えば、アイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレン、及びこれらのブレンドを含むポリプロピレン、並びに、主にヘテロタクチックポリプロピレンとブレンドされたアイソタクチック又はシンジオタクチックポリプロピレンからなるブレンド(1985年12月10日に出願された米国特許第4,557,264号に記載され、Ethicon,Inc.に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれるような)及びポリエチレン(1985年12月10日に出願された米国特許第4,557,264号に記載され、Ethicon,Inc.に譲渡されるような)、並びにこれらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
涙点プラグの本体は、任意の好適な生体適合性ポリマーから作製することができ、これには、シリコーン、シリコーンブレンド、シリコーンコポリマー、例えば、pHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)の親水性モノマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、グリセロール等が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な生体適合性材料には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、フッ化ポリビニリデン(「PVDF」)、及びテフロン等のフッ素化ポリマー類、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、並びにエチレンビニルアルコール(「EVA」)が含まれる。
【0099】
超音波外科機器のポリマー部品は、ポリイミド、フルオラエチレンプロパン(FEPテフロン)、PTFEテフロン、シリコーンゴム、EPDMゴムから作製してもよく、これらのいずれも、テフロン又はグラファイト等の材料で充填してもよく、あるいは充填しなくてもよい。例は、米国特許出願公開第20050192610号及び米国特許第6458142号に開示されている。これらの実施形態については、WSCポリマーは、少なくとも部分的に疎水性のポリマーマトリックスを膨張させ、次いで、ポリマーマトリックスと接触させる溶媒と混合することができる。
【0100】
一実施形態では、WSCポリマーは、レンズ又は涙点プラグ等のシリコーン眼科用デバイス、シリコーンヒドロゲルレンズ等のシリコーンヒドロゲル物品を含む予備成形された物品と会合する。水溶性架橋コポリマー中の親水性基は、予備成形された物品の上の又は中の相補的基と会合する。本実施形態では、コポリマーは、基材を膨張させもする溶媒中に溶解される。ポリマー基材は、コポリマーを含む溶液と接触させる。基材が、コンタクトレンズ等のシリコーンヒドロゲル物品であるとき、好適な溶媒には、包装用溶液、保存用溶液、及び洗浄用溶液が含まれる。一例として本実施形態を使用して、シリコーンヒドロゲルレンズを、コポリマーを含む包装用溶液中に入れる。コポリマーは、溶液中の全ての成分に基づき、約0.001〜約10%、幾つかの実施形態では、約0.005〜約2%、別の実施形態では、約0.01〜約0.5重量%の量で溶液中に存在する。
【0101】
包装用溶液は、コンタクトレンズの保存のために使用される任意の水性溶液であり得る。典型的な溶液には、食塩水、他の緩衝液及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶液は、塩を含有する食塩水で、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、又は同酸の対応するカリウム塩を含むが、これらに限定されない。これらの成分は一般に化合して、酸及びその共役塩基を含む緩衝液を形成するので、酸及び塩基が加わっても、pHには比較的小さな変化しか起こらない。緩衝溶液を使用して、コンタクトレンズを洗浄又は処理することもできる。本発明の溶液をコンタクトレンズの洗浄、処理、又はケアのために使用する時、該溶液は、粘度調整剤、抗菌剤、湿潤剤、固着防止剤、保存剤、高分子凝集剤、安定剤、キレート剤、酸化防止剤、これらの組み合わせ等を含む溶液に有用な追加成分を含み得る。追加の成分の例は、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、水酸化ナトリウム、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール、n−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸等、及びこれらの組み合わせを含む。好ましくは、溶液は、ホウ酸緩衝食塩水若しくはリン酸緩衝食塩水である。
【0102】
WSCポリマーは、(補助溶媒としての水を含む又は含まない)有機溶媒を使用したレンズと、会合することもできる。一実施形態において、有機溶媒を使用して、例えば、コンタクトレンズ医用デバイスといった医用デバイスを膨潤させることと、WSCポリマーを溶解して該WSCポリマーが吸収されるようにすることの両方を行う。好適な溶媒を選択して、医用デバイスを膨潤させる、ブロックコポリマーを溶解する、又はその両方を行い得る。別の実施形態において、溶媒は、生体適合性である場合もあり、これにより製造を簡略化する。基材は、WSCポリマーの潤滑及び湿潤有効量に組み込むのに十分な条件下で、WSCポリマーと接触させる。本明細書で使用する潤滑有効量とは、(例えば、指の間でデバイスを擦ることにより)手で感じられる、又はデバイスを使用する時の、潤滑性のレベルを付与するのに必要な量である。加えて、本明細書で使用する湿潤有効量とは、既知の接触角計測技術(すなわち、液滴、気泡、又は動的接触角計測)により決定される、レンズの湿潤性のレベルを高めるのに必要な量である。一実施形態では、デバイスがソフトコンタクトレンズである場合、50ppm程度の少量のWSCポリマーは、レンズの「感触」改善及び液滴法によって測定される、低くした表面接触角を提供することが分かった。加工包装用、保存用、又は洗浄用溶液におけるWSCポリマーの量が約50ppmよりも多く、より好ましくは、該量が約100ppmよりも多いことにより、より明白に感触が改善する。それ故、本実施形態では、WSCポリマーは、約50,000ppmまで、幾つかの実施形態では約10〜5000ppm、幾つかの実施形態では約10〜約2000ppmの濃度で溶液中に含まれ得る。一実施形態において、ブロックコポリマーを含む溶液は、目に見える濁りを含まない(透明)。包装されたレンズは、レンズ中で浸透し、絡まるWSCポリマーの量を増加させるように熱処理することができる。好適な熱処理には、約20分間、約120℃の温度を含む、従来の加熱滅菌サイクルが含まれるが、これに限定されず、オートクレーブにおいて行うことができる。熱処理が使用されない場合、包装されたレンズを、別々に熱処理してもよい。別々の熱処理に好適な温度は、少なくとも約40℃、好ましくは、約50℃から溶液の沸点の間が含まれる。好適な熱処理時間としては、少なくとも約10分、幾つかの実施形態において、約10〜約30分が挙げられる。温度が高いほど、必要な処理時間が短くなることが理解されよう。
【0103】
WSCポリマーを所望の基材に会合させる工程を、予備処理、共有結合性反応、又はタイ層(tie layers)なしの単一工程で行い得ることは、本発明の利点である。しかし、幾つかの実施形態において、基材/WSCポリマー構造体と、プロトン受容基を含む追加のポリマー又はナノゲルと、を接触させて、層被覆を形成することが望ましい場合もある。追加のポリマーは、線状、枝分かれ又は架橋の場合があり、かつポリマーの端部、又はポリマー全体に位置する会合基を有する場合がある。各追加のポリマーは、前の層のポリマーに含有される基と会合するか、あるいは該基に反応することができる基を含む。WSC及び第2のポリマーの、幾つかの交互の層を適用し得る。プロトン受容基を含むポリマーの例としては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、及びポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリ−2−エチル−オキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類、これらの混合物及びコポリマー(ブロック若しくはランダム、分枝状、多鎖型、くし状又は星状を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)とポリ−N−N−ジメチルアクリルアミドとのポリマー及びコポリマーを使用し得る。
【0104】
第2の溶液は、基材をWSCポリマーに接触させるための上記溶液のいずれであってもよい。その少なくとも1つの第2のポリマーは、約50,000ppmまでの濃度、約10〜5000ppmの濃度、又は約10〜約2000ppmの濃度の溶液中に存在し得る。ポリマーは、両方とも非イオン性であるため、追加の処理工程は、約6〜8、幾つかの実施形態において、約7のpHで行い得る。
【0105】
限定されるものではないが、セノフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコンA及びロトラフィルコンB、デレフィルコン(delefilcon)、バラフィルコン、コムフィルコン(comfilcon)、オスモフィルコン(osmofilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、フィルコンII、フィルコンIV等を含む多くのシリコーンヒドロゲル材料が既知であり、使用可能である。ほとんど全てのシリコーンヒドロゲルポリマーが、本明細書にて規定されるWSCポリマーを用いて処理することができ、これには、米国特許第6,637,929号、国際公開第03/022321号、国際公開第03/022322号、米国特許第5,260,000号、米国特許第5,034,461号、米国特許第6,867,245号、国際公開第2008/061992号、米国特許第5,760,100号、米国特許第7,553,880号、米国特許出願公開第20100048847号、及び米国特許出願公開第2006/0063852号において開示されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
同様のプロセスは、シリコーンヒドロゲル以外のポリマーから作製される基材において使用することができる。一次的変化は、溶媒の選択におけるものであり、WSCポリマーを可溶化し、かつ、基材を膨潤させるか、又はWSCポリマーを収縮若しくは圧縮するものとする。溶媒の混合を使用することができ、界面活性剤等の追加成分を、必要に応じて含むことができる。例えば、本物品が、シリコーンコンタクトレンズ又はシリコーン涙点プラグ等のシリコーン物品である場合、WSCポリマーは、脂肪族アルコール、水、及びこれらの混合物等の溶媒中に溶解することができる。具体的な例には、上記の濃度で、イソプロパノール、n−プロパノール等が含まれる。
【0107】
他の実施形態では、WSCポリマーは、ポリマー物品が作製される反応混合物中に含むことができる。このような実施形態では、有効量のWSCポリマーは、全レンズ成分の総重量の約0.1%〜50%の量を含み、約1%〜20%の量が更に好ましく、約2%〜15%の量が最も好ましい。例えば、本物品が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである場合、WSCポリマーは、1つ又は2つ以上のシリコーン含有成分及び1つ又は2つ以上の親水性成分を有するコンタクトレンズの反応混合物中で約20重量%までの量を含むことができる。本明細書に開示されているポリマーを作製するために使用されるシリコーン含有成分及び親水性成分は、シリコーンヒドロゲルを作製するために、従来技術中で使用される既知の成分のいずれであってもよい。これらの用語、具体的には、シリコーン含有成分及び親水性成分は、シリコーン含有成分が、親水性基を有することができ、かつ親水性成分が、シリコーン基を有することができるため、シリコーン含有成分が、多少親水性であり得、親水性成分が、幾らかのシリコーンを含むことができるという点において、相互排他的でない。
【0108】
本明細書に開示されているコポリマーの1つの利点は、WSCポリマーが、RAFTによって形成される実施形態では、分子量(MW)及び分子量分布(MWD)は、選択された物品の製造の必要条件に依存して容易に制御することができる点である。例えば、WSCポリマーが、鋳型成形したコンタクトレンズを形成するために使用されるもの等の低粘度の反応性モノマー混合物に組み込まれる一実施形態では、ブロックコポリマーのMWを、約100,000g/モルより下に維持することができる。制御された重合を使用する一実施形態において、ζ一次鎖の多分散度は、約1.3未満である。ζクラスターは、1.3よりも大きい多分散の値を有するであろう。より低いMWWSCポリマーを有することにより、PVP等の市販のポリマーと比較して、本発明の実施形態によるより高濃度のWSCポリマーの添加を可能にする。PVP等の従来のポリマーは、より高い多分散性を有し、これは、糸引きのため、加工の問題を有する傾向がある極めて粘度のあるモノマー混合物を結果的にもたらし得る。
【0109】
RAFTを使用して、本発明のWSCポリマーを作製することにより、巨視的にゲル状のポリマーを形成することなく、ナノサイズのゲルを形成することができる。これに加えて、このようなナノゲルは、同等の分子量を有する同じ線状ポリマーと比較して、かなり低められた粘性を示す。上述の通り、所与の反応性モノマー混合物配合物の粘性及び糸引きを最小化することを含む、種々のプロセス適用について、より低い粘性を有する高分子量ポリマーが望ましい場合がある。
【0110】
シリコーン含有成分は、モノマー、マクロマー、又はプレポリマー中に少なくとも1つの[−Si−O−]基を含むものである。一実施形態では、Si及び付帯するOは、シリコーン含有構成成分中に、シリコーン含有構成成分の総分子量の20重量%より大きい量で、別の実施形態では30重量%より大きい量で存在する。有用なシリコーン含有成分は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、及びスチリル官能基等の重合性官能基を含む。有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,760,100号、同第4,139,513号、同第5,998,498号、米国特許出願公開第2006/0063852号、及び米国特許第5,070,215号、並びに欧州特許第080539号に認めることができる。本明細書に引用した特許の全ては、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。これらの引例は、オレフィン性シリコーン含有成分の多くの例を開示している。
【0111】
好適なシリコーン含有成分は、以下の式の化合物を含む。
【化9】
式中、R
2は、一価反応基、一価アルキル基、又は一価アリール基から独立して選択され、前述のいずれかは、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、カルボナート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を更に含んでもよく、1〜100個のSi−Oの反復単位を含む一価シロキサン鎖は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロゲン、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を更に含んでもよく、
式中、b=0〜500であり、bが0以外のときに、bは、表示値と同等のモードを有する分配であると理解され、
少なくとも1つのR
2は、一価反応基を含み、幾つかの実施形態では、1〜3個のR
2が一価反応基を含む。
【0112】
本明細書で使用する「一価反応基」とは、フリーラジカル及び/又はカチオン重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応基の非限定例には、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、置換又は非置換のC
1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C
1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミド、C
2〜12アルケニル、C
2〜12アルケニルフェニル、C
2〜12アルケニルナフチル、C
2〜6アルケニルフェニルC
1〜6アルキル、O−ビニルカルバメート及びO−ビニルカルボナートが挙げられる。前記C1〜6アルキル上の好適な置換基には、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。カチオン反応基の非限定例としては、ビニルエーテル又はエポキシド基、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、フリーラジカル反応基は、(メタ)アクリレート、アクリロキシ、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。
【0113】
好適な一価アルキル及びアリール基には、非置換一価C
1〜C
6アルキル基が含まれ、幾つかの実施形態において、C
1〜C
4アルキル基、C
6〜C
14アリール基、例えば、置換及び非置換メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシプロピル、プロポキシプロピル、ポリエチレンオキシプロピル、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0114】
一実施形態において、R
2は、C
1〜6アルキル(メタ)アクリレート及びC
1〜6アルキル(メタ)アクリルアミドから選択され、これらは非置換であり、又はヒドロキシル、アルキレンエーテル若しくはこれらの組み合わせで置換してもよい。別の実施形態では、R
2は、プロピル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリルアミドから選択され、前記プロピルは、任意でヒドロキシル、アルキレンエーテル又はこれらの組み合わせで置換してもよい。
【0115】
一実施形態において、bが、ゼロであり、1つのR
2が、一価反応基であり、少なくとも3つのR
1が、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択され、他の一実施形態では、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。本実施形態のシリコーン成分の非限定例としては、2−メチル−、2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(「SiGMA」)、
2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルオキシプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(「TRIS」)、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、及び
3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサンが挙げられる。
【0116】
他の実施形態において、bは、2〜20、3〜15、又は幾つかの実施形態では、3〜10であり、少なくとも2つの末端R
2は、一価反応基を含み、残りのR
2は、1〜16個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択され、他の実施形態では、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基から選択される。更に別の実施形態では、bは3〜15であり、1つの末端R
2は、一価の反応基を含み、これは置換又は非置換のC
1〜6アルキル(メタ)アクリレート、置換又は非置換のC
1〜6アルキル(メタ)アクリルアミドから選択され、他の末端R
2は、1〜6個の炭素原子を有する一価アルキル基を含み、残りのR
2は、1〜3個の炭素原子を有する一価アルキル基を含む。本実施形態のシリコーン成分の非限定例には、以下の式(s1)〜(s6)の、(モノ−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピル)−プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(400〜1000MW))(「OH−mPDMS」)、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(800〜1000MW)、(「mPDMS」)、N−(2,3−ジヒドロキシプロパン)−N’−(プロピルテトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)アクリルアミド、メタクリルアミドシリコーンが挙げられる。
【化10】
【化11】
【0117】
他の実施形態において、bが、5〜400、又は10〜300であり、両方の末端R
1が、一価反応基を含み、残りのR
2が、炭素原子間のエーテル結合を有することもあり、またハロゲンを更に含むこともある、1〜18個の炭素原子を有する一価アルキル基から、独立して選択される。
【0118】
別の実施形態において、1〜4個のR
2は、以下の式のビニルカルボナート又はカルバメートを含む。
【化12】
式中、YはO−、S−又はNH−を意味し、
Rは、水素又はメチルを意味し、qは、0又は1である。
【0119】
シリコーン含有ビニルカルボナート又はビニルカルバメートモノマーは、具体的には、1,3−ビス[4−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン;3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン];3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート;3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;トリメチルシリルエチルビニルカルボナート;トリメチルシリルメチルビニルカルボナート、及び以下を含む。
【化13】
【0120】
約200を下回る弾性率を有する生体医用デバイスが所望される場合、1個のR
2のみが一価の反応基を含むものとし、残りのR
2基のうちの2個以下は、一価シロキサン基を含むものとする。
【0121】
シリコーンヒドロゲルレンズが望ましい一実施形態では、レンズは、ポリマーが作製される反応性モノマー成分の総重量に基づき、少なくとも約20重量%、幾つかの実施形態では約20〜70重量%のシリコーン含有成分を含む、反応混合物から作製される。
【0122】
別のクラスのシリコーン含有成分としては、次の式のポリウレタンマクロマーが挙げられる。
(
*D
*A
*D
*G)
a*D
*D
*E
1;
E(
*D
*G
*D
*A)
a*D
*G
*D
*E
1又は、
E(
*D
*A
*D
*G)
a*D
*A
*D
*E
1
式XII−XIV
式中、
Dは、炭素原子6〜30個を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを示し、
Gは、炭素原子1〜40個を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを示し、これは、主鎖中にエーテル、チオ又はアミン結合を含有してもよい。
*は、ウレタン又はウレイド結合を意味し、
aは、少なくとも1であり、
Aは次の式の二価重合ラジカルを意味する。
【化14】
【0123】
R
17は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル又はフルオロ置換アルキル基を独立して示し、これは炭素原子間にエーテル結合を含んでもよく、vは少なくとも1であり、nは400〜10,000の部分重量を提供し、E及びE
1のそれぞれは、次の式に表される重合性不飽和有機ラジカルを独立して示す。
【化15】
式中、R
12は水素又はメチルであり、R
13は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカル又は−CO−Y−R
11ラジカルで、Yは−O−、−S−又は−NH−であり、R
11は、C
1〜6の一価アルキルであり、幾つかの実施形態において、非置換C
1〜3アルキルであり、R
14は、1〜12個の炭素原子を有する二価ラジカルであり、Xは、−CO−又は−OCO−を意味し、Zは、−O−又は−NH−を意味し、Arは、6〜30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味し、wは、0〜6であり、xは、0又は1であり、yは、0又は1であり、zは、0又は1である。
【0124】
一実施形態において、シリコーン含有成分は、次の式で表されるポリウレタンマクロマーを含む。
【化16】
式中、R
16は、イソホロンジイソシアネートのジラジカル等の、イソシアネート基の除去後の、ジイソシアネートのジラジカルであり、aは、1〜5であり、dは、3〜4であり、cは、10〜200又は10〜100である。他の好適なシリコーン含有マクロマーは、フルオロエーテル、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、イソホロンジイソシアネート及びイソシアネートエチルメタクリレートの反応によって形成される式XVIII(式中、f+gは、10〜30の範囲内の数であり、hは、20〜30、22〜26又は25の範囲内の数である)の化合物である。
【化17】
【0125】
使用に好適な他のシリコーン含有成分には、ポリシロキサン、ポリアルキレンエーテル、ジイソシアネート、ポリフッ化炭化水素、ポリフッ化エーテル及びポリサッカライド基を含有するマクロマー等、国際公開第96/31792号に記載されているものが挙げられる。好適なシリコーン含有成分の別のクラスには、米国特許第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,244,981号、同第5,371,147号及び同第6,367,929号に開示されるようなGTPを経て作製されるシリコーン含有マクロマーが挙げられる。米国特許第5,321,108号、同第5,387,662号、及び同第5,539,016号は、末端ジフルオロ置換炭素原子に結合した水素原子を有する極性フッ化グラフト又は側基を有するポリシロキサンについて記載している。米国特許出願公開第2002/0016383号は、エーテル及びシロキサニル結合を含有する親水性のシロキサニルメタクリレート、並びにポリエーテル及びポリシロキサニル基を含有する架橋可能なモノマーを記載している。前述のポリシロキサンのいずれもまた、シリコーン含有成分として使用することができる。
【0126】
約0.83MPa(約120psi)未満の弾性率が望ましい本発明の一実施形態では、レンズの配合物で用いられるシリコーン含有成分の質量分率の大部分は、1個の重合性官能基のみ含有すべきである(「一官能性シリコーン含有成分」)。本実施形態では、酸素透過率及び弾性率の所望のバランスを保証するために、2つ以上の重合性官能基を有する(「多官能性成分」)すべての成分が、10mmol/100g反応性成分以下を占めることが好ましく、好ましくは、7mmol/100g以下の反応性成分を占める。
【0127】
別の実施形態では、反応混合物は、トリメチルシロキシ基を含むシリコーン含有成分を実質的に含まない。
【0128】
シリコーン含有成分は、全ての反応性成分を基準に、約85重量%の量まで存在してもよく、幾つかの実施形態においては約10〜約80重量%、別の実施形態においては約20〜約70重量%存在してもよい。
【0129】
親水性成分は、残りの反応性成分と化合する場合、結果として生じるレンズに対して、少なくとも約20%、及び幾つかの実施形態では、少なくとも約25%の含水率を提供することができるものを含む。好適な親水性成分は、親水性モノマー、プレポリマー、及びポリマーを含み、全反応性成分の総量に基づき、約10〜約60重量%、幾つかの実施形態では、約15〜約50重量%、他の実施形態では、約20〜約40重量%の量で存在してよい。ポリマーを作製するために使用し得る親水性モノマーは、少なくとも1つの重合可能な二重結合及び少なくとも1つの親水性官能基を有する。重合可能な二重結合の例には、アクリル、メタクリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマル酸、マレイン酸、スチリル、イソプロペニルフェニル、O−ビニルカルボナート、O−ビニルカルバメート、アリル、O−ビニルアセチル及びN−ビニルラクタム及びN−ビニルアミドの二重結合が含まれる。このような親水性モノマーは、それ自体、架橋剤として使用し得る。「アクリル型」又は「アクリル含有」モノマーは、アクリル基を含有するモノマーである
【化18】
式中、Rは、H又はCH
3であり、R
4は、H、C
1〜3非置換アルキル、又はカルボニルであり、Qは、O又はNであり、これらはまた、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、これらの混合物等のように、容易に重合することでも知られている。
【0130】
ヒドロゲルに組み込み得る親水性ビニル含有モノマーとしては、N−ビニルラクタム(例えば、N−ビニルピロリドン(NVP))、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン);N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニンN−ビニルエステル、ビニルイミダゾール、等のモノマーが挙げられ、一実施形態においてNVPが好ましい。
【0131】
使用し得る追加の親水性モノマーには、アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルアセテート、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルオキサゾリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート(DMVBAPS)、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、3−((3−(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(APDAPS),メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAPDAPS)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N,N’−ジメチル尿素等、及びこれらの混合物が含まれる。一実施形態において、好適な親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、モノ−グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビスヒドロキシエチルアクリルアミド、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等、及びこれらの混合物を含む。
【0132】
幾つかの実施形態では、親水性モノマーは、また、メタクリル酸、アクリル酸、3−アクリルアミドプロピオン酸(ACA1)、4−アクリルアミドブタン酸、5−アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、ナトリウム−2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸塩(AMPS)、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸カリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二ナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコン酸二カリウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、スルホエチルメタクリレートを含む反応性スルホン酸塩、及びこれら市販の可視光開始剤系にはの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない、荷電モノマーを含むこともできる。
【0133】
用いることができる他の親水モノマーは、重合性二重結合を含有する官能基で置換された末端ヒドロキシル基を1つ又は2つ以上有するポリオキシエチレンポリオールを含む。例としては、重合性二重結合を含有する官能基で置換された末端ヒドロキシル基を1つ又は2つ以上有するポリエチレングリコールが含まれる。例としては、イソシアネートエチルメタクリレート(「IEM」)、メタクリル酸無水物、塩化メタクリロイル、塩化ビニルベンゾイル等のエンドキャッピング基1モル当量以上と反応した、カルバメート又はエステル基等の結合部分によってポリエチレンポリオールに結合した1つ又は2つ以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを生成する、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0134】
更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている親水性ビニルカルボナートモノマー又はビニルカルバメートモノマー、及び米国特許第4,190,277号に開示されている親水性オキサゾロンモノマーである。他の好適な親水性モノマーは、当業者に明らかである。
【0135】
一実施形態では、本明細書に開示されているポリマーに組み込んでもよい親水性モノマーには、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニルメタクリルアミド、HEMA、及びポリエチレングリコールモノメタクリレート等の親水性モノマーが含まれる。
【0136】
他の実施形態では、親水性モノマーには、DMA、NVP、HEMA、及びこれらの混合物が含まれる。
【0137】
コンタクトレンズ等の基材を形成するのに使用する反応混合物は、親水性成分として、1つ又は2つ以上のポリマー湿潤剤を含む場合もある。ポリマー湿潤剤は、本明細書に開示されている1つ又は2つ以上の水溶性架橋ポリマー、先に開示された湿潤剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。本明細書で使用するとき、反応混合物において使用されるこのようなポリマー湿潤剤とは、約5,000ダルトン以上の重量平均分子量を有する物質を指し、前記物質は、シリコーンヒドロゲル配合物に取り込まれた際に、硬化されたシリコーンヒドロゲルの湿潤性を上げる。一実施形態では、これらのポリマー湿潤剤の重量平均分子量は、約30,000ダルトンを超え、別の実施形態では、約150,000〜約2,000,000ダルトンであり、更に別の実施形態では、約300,000〜約1,800,000ダルトンであり、更に別の実施形態では、約500,000〜約1,500,000ダルトンである。
【0138】
あるいは、ポリマー湿潤剤の分子量は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,N−Vinyl Amide Polymers,Second edition,Vol 17,pgs.198〜257,John Wiley & Sons Inc.に述べられるような動粘性の測定値に基づいたK値によっても表わすことができる。このように表現される時、約46よりも大きく、一実施形態において約46〜約150のK値を有する親水性モノマー。反応混合物中のポリマー湿潤剤の好適な量には、約1〜約20重量パーセント、幾つかの実施形態では、約5〜約20パーセント、別の実施形態では、約6〜約17パーセントが含まれ、全ては、全反応性成分の合計に基づく。
【0139】
ポリマー湿潤剤の例としては、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタム、及びDMAと、HEMA等のより低分子量のヒドロキシル官能性モノマーとを共重合させた後に、結果として生じるコポリマーのヒドロキシル基と、イソシアネートエチルメタクリレート若しくはメタクリロイルクロリド等のラジカル重合性基を含有する材料とを反応させることによって官能化されたDMA等の官能化ポリアミド、官能化ポリラクトン、官能化ポリイミド、官能化ポリラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。メタクリル酸グリシジルを有するDMA又はN−ビニルピロリドンから作られるポリマー湿潤剤も使用してもよい。メタクリル酸グリシジル環を開いて、混合系の他の親水性プレポリマーと共に使用し得るジオールを与えて、反応混合物中の成分の相溶性を高めることができる。一実施形態では、ポリマー湿潤剤は、その骨格中に、環状アミド又は環状イミド等であるが、これらに限定されない少なくとも1つの環状部分を含有する。ポリマー湿潤剤としては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、及びポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリ−2−エチル−オキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類、これらの混合物及びコポリマー(ブロック若しくはランダム、分枝状、多鎖型、くし状又は星状を含む)が挙げられるが、これらに限定されず、一実施形態では、ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。PVPのグラフトコポリマー等のコポリマーも使用し得る。
【0140】
反応混合物中で使用されるポリマー湿潤剤は、また、湿潤性を改善し、かつ医用デバイスに対する生体内湿潤性を特に改善する。あらゆる理論に束縛されることなく、ポリマー湿潤剤は、水性の環境内で、水に結合した水素を受容する水素結合受容体であり、このようにして、事実上、より親水性となると考えられる。水が無いことにより、ポリマー湿潤剤は、反応混合物に容易に組み込まれる。特化したポリマー湿潤剤は別として、前記ポリマーが配合物に添加されるとき、ポリマーが、(a)反応混合物から実質的に相分離せず、(b)結果として生じる硬化したポリマー網目構造に湿潤性を付与する、という条件で、いかなるポリマーも有用であることが期待される。幾つかの実施形態では、ポリマー湿潤剤が反応温度で希釈剤中に可溶性であることが好ましい。
【0141】
また、相溶化剤を使用してもよい。幾つかの実施形態では、相溶化成分は、任意の官能化されたシリコーン含有モノマー、マクロマー、又はプレポリマーであり得、これは、重合される、かつ/又は最終物品に形成される場合、選択された親水性成分と相溶性がある。国際公開第03/022321号に開示される相溶性試験を用いて、好適な相溶化剤を選択することができる。幾つかの実施形態では、ヒドロキシル基も含むシリコーンモノマー、プレポリマー、又はマクロマーが、反応混合物中に含まれる。例には、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、モノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端の、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサン(MW 1100)、ヒドロキシル官能化シリコーン含有GTPマクロマー、ポリジメチルシロキサンを含むヒドロキシル官能化マクロマー、及びこれらの組み合わせ等が含まれる。別の実施形態において、ポリマーの湿潤性を、相溶化成分として使用してもよい。
【0142】
ヒドロキシル含有成分は、コンタクトレンズ等の基材の形成の間、架橋剤として作用する場合もある。
【0143】
コンタクトレンズ等の基材を作製することに関し、架橋モノマーとも称される1つ又は2つ以上の架橋剤を、例えばエチレングリコールジメタクリレート(「EGDMA」)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(この場合、ポリエチレングリコールは、例えば約5000までの分子量を有することが好ましい)、並びに2個以上の末端メタクリレート部分を含有する上記のエンドキャップ化ポリオキシエチレンポリオール等の他のポリ(メタ)アクリレートエステルのような反応混合物に添加することが、一般に必要である。架橋剤は、通常の量、例えば、反応性成分の100グラム当たり約0.000415〜約0.0156モルで反応混合物において用いられる。あるいは、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有モノマーが、架橋剤として作用する場合、反応混合物への架橋剤の追加は任意である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応混合物への追加架橋剤の添加を必要としない親水モノマーの例としては、2つ以上の末端メタクリレート部分を含有する上記ポリオキシエチレンポリオールが挙げられる。
【0144】
架橋剤として作用でき、存在する場合に反応混合物への架橋モノマーの追加を必要としないシリコーン含有モノマーの例としては、α,ω−ビスメタクリルオキシプロピル(bismethacryloypropyl)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0145】
反応混合物は、紫外線吸収剤、フォトクロミック化合物、薬学的及び栄養補助化合物、抗菌化合物、反応性着色剤、色素、共重合性及び非重合性染料、離型剤、並びにこれらの組み合わせ等であるが、これらに限定されない、添加成分を含有することができる。
【0146】
一般に、反応性成分は、希釈剤中で混合して、反応混合物を形成する。好適な希釈剤は、当該技術分野で周知である。シリコーンヒドロゲルについては、好適な希釈剤は、国際公開第03/022321号、米国特許第6,020,445号において開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
シリコーンヒドロゲル反応混合物用の好適な希釈剤の種類には、2〜20個の炭素を有するアルコール、一級アミン由来の10〜20個の炭素原子を有するアミド、及び8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸が含まれる。幾つかの実施形態では、一級及び三級アルコールが好ましい。好ましい種類は、炭素5〜20個を有するアルコール及び炭素原子10〜20個を有するカルボン酸を含む。
【0148】
使用することができる具体的な希釈剤には、1−エトキシ−2−プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、3−メチル−3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、2−エチル−1−ブタノール、(3−アセトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1−tert−ブトキシ−2−プロパノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、tert−ブトキシエタノール、2−オクチル−1−ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、及びこれらの混合物等が含まれる。
【0149】
好ましい希釈剤には、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−ドデカノール、1−デカノール、1−オクタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−ペンタノール、t−アミルアルコール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、エタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクチル−1−ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、及びこれらの混合物等が含まれる。
【0150】
更に好ましい希釈剤には、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−ドデカノール、1−デカノール、1−オクタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、1−ドデカノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、t−アミルアルコール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクチル−1−ドデカノール、及びこれらの混合物等が含まれる。
【0151】
非シリコーン含有反応混合物のための好適な希釈剤には、グリセリン、エチレングリコール、エタノール、メタノール、エチルアセテート、塩化メチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、二価アルコールのホウ酸エステルが含まれるが、これに限定されない、米国特許第4,018,853号、米国特許第4,680,336号、及び米国特許第5,039,459号において開示されるような、低分子量PVP、及びこれらの組み合わせ等が含まれる。
【0152】
希釈剤の混合物を、使用してもよい。希釈剤は、反応混合物中の全成分の合計の、約55重量%までの量を使用してもよい。更に好ましくは、反応混合物中の全成分の合計の約45重量%未満の量、更に好ましくは、約15〜約40重量%の量を使用する。
【0153】
重合開始剤は、コンタクトレンズ等の基材を形成するのに使用する反応混合物に含まれることが好ましい。重合開始剤は、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリル等の、中程度の高温でフリーラジカルを発生させる化合物、及び、芳香族アルファ−ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、酸化アシルホスフィン、酸化ビスアシルホスフィン、三級アミン+ジケトン、これらの混合物等の光開始剤系を含む。光開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、及びカンファーキノンとエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。市販の可視光開始剤系には、Irgacure 819、Irgacure 1700、Irgacure 1800、Irgacure 819、Irgacure 1850(いずれもCiba Specialty Chemicalsより)及びLucirin TPO開始剤(BASFより販売)が含まれる。市販の紫外光開始剤としては、Darocur 1173及びDarocur 2959(Ciba Specialty Chemicals)が挙げられる。使用することができるこれら及び他の光開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello & K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998に開示されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。この開始剤は、反応混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー100重量部に対し、約0.1〜約2重量部の量を反応混合物中で用いる。反応混合物の重合は、使用される重合開始剤に応じて、熱又は可視光若しくは紫外光、又は他の手段を適宜選択して開始することができる。あるいは、例えば、電子線を使用することにより、光開始剤を使用することなく反応を開始させることもできる。しかし、光開始剤を使用するとき、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))等の酸化ビスアシルホスフィン、又は1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせであり、重合開始の好ましい方法は、可視光である。最も好ましいのは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))である。
【0154】
反応混合物中に存在するシリコーン含有モノマーの好ましい範囲は、反応混合物中の反応性成分の約5〜95重量パーセント、更に好ましくは約30〜85重量パーセント、最も好ましくは約45〜75重量パーセントである。存在する親水性モノマーの好ましい範囲は、反応混合物中の反応性成分の約5〜80重量パーセント、更に好ましくは約10〜60重量パーセント、最も好ましくは約20〜50重量パーセントである。存在する希釈剤の好ましい範囲は、全反応混合物(反応性及び非反応性成分を含む)中の約2〜70重量パーセント、更に好ましくは約5〜50重量パーセント、最も好ましくは約15〜40重量パーセントである。
【0155】
反応混合物は、振とう又は撹拌等の当業者に既知のいずれかの方法で形成することができ、既知の方法によるポリマー物品又はデバイスの形成に使用できる。
【0156】
例えば、生体医用デバイスは、反応性成分及び希釈剤を重合開始剤と混合し、適切な条件下で硬化させて、その後、木摺打ち、切断等によって適切な形状に形成することができる生成物を形成することによって作製することができる。別法として、反応混合物は、型に入れた後に硬化させ、適切な物品とすることができる。
【0157】
コンタクトレンズの生産における反応混合物の加工には、スピンキャスティング及び静鋳造(static casting)を含めた様々なプロセスが既知である。スピンキャスト法については米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示されており、静鋳造法については米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。コンタクトレンズを生産するための好ましい方法は、シリコーンヒドロゲルの成形によるものであり、この成形は経済的であり、水和したレンズの最終形状を正確に制御することを可能にする。この方法の場合、最終の所望のシリコーンヒドロゲル、すなわち、水膨潤ポリマー、の形状を有する型に反応混合物を入れ、モノマーが重合する条件に当該反応混合物を供し、それによって、ポリマー/希釈剤混合物を所望の最終製品の形状にする。次いで、本ポリマー/希釈剤混合物を、溶媒で処理して、希釈剤を除去し、最終的には、それを水で置き換え、元の成形したポリマー/希釈剤物品の寸法及び形状と全く同様の最終寸法及び形状を有するシリコーンヒドロゲルを生成する。本方法は、コンタクトレンズを形成するために使用することができ、米国特許第4,495,313号、第4,680,336号、第4,889,664号、及び第5,039,459号において更に記載され、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
生体医用デバイス、特に眼科用レンズは、これらを特に有用にする、釣り合いのとれた特質を有する。このような特質としては、透明性、含水率、酸素透過性、及び接触角が挙げられる。本発明の実施形態による少なくとも1つのWSCポリマーの組み込みは、大変望ましい湿潤性/接触角を有する物品に、溶液、及びリポカリン、脂質及びムチンの取り込みレベルの低減が証明するようなバイオメトリクス性能の向上を提供する。WSCポリマーを取り込むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約60°未満、幾つかの実施形態では、約40°未満の接触角を示し、接触角を40%、幾つかの実施形態では、50%以上低減する。脂質の取り込みを、50%以上低くすることができ、約12μg、10μg、又は5μg以下さえも有するシリコーンヒドロゲルレンズを生成する場合もある。一実施形態では、生体医用デバイスは、含水率が約17%を超える、好ましくは、約20%を超える、更に好ましくは、約25%を超えるコンタクトレンズである。
【0159】
シリコーン含有レンズの好適な酸素透過性は、好ましくは約40バーラー(barrer)を超え、より好ましくは約60バーラーを超える。
【0160】
幾つかの実施形態では、本発明の物品は上記の酸素透過性、含水率、及び接触角の組み合わせを有する。上記の範囲のすべての組み合わせは、本発明の範囲内に含まれるものとみなす。
【0161】
以下の非限定例は、本発明を更に説明している。
【0162】
レンズの湿潤性は、液滴法を使用して判定し、室温で、KRUSS DSA−100 TM機器を使用し、精査溶液として脱イオン水を使用して測定し得る。試験すべきレンズ(3〜5/試料)を、脱イオン水中ですすぎ、包装用溶液からキャリーオーバーを取り除いた。それぞれの試験レンズを包装用溶液で湿らせておいた糸くずの出ない吸い取り紙上に置いた。レンズの両面をこの紙と接触させて、レンズを乾燥させることなく、表面の水を取り除いた。適切な平坦化を確保するために、レンズは、コンタクトレンズのプラスチック製の型上の凸面上に「皿部を下(bowl side down)」に置いた。そのプラスチック製の型及びレンズは、適切な中央への注射器の整合及び注射器が割り当てられた液体に対応することができるように、液滴器具の容器内に置いた。3〜4マイクロリットルの脱イオン水の液滴は、その液滴がレンズから離れて垂れるように、DSA 100−Drop Shape Analysisソフトウェアを使用して注射器の先端上に形成された。その液滴は、その針を下に移動することによって、レンズの表面上に円滑に放出された。その針は、液滴を分注した後、直ちに回収された。その液滴は、5〜10秒間レンズ上で平衡を保たれ、液滴画像とレンズの表面との間で測定された接触角に基づいて、接触角が計算された。
【0163】
含水率は、次のように測定することができる。試験すべきレンズを24時間包装用溶液中に静置した。先端がスポンジ状のスワブを使用して、3枚の試験レンズのそれぞれを包装用溶液から取り出し、包装用溶液で湿らせておいた吸い取り紙上に置いた。レンズの両面をこの紙と接触させた。ピンセットを使用して試験レンズを秤量皿に置き、秤量した。更に2個の試料セットを準備し、前述のように秤量した。秤量皿を3回秤量し、その平均値が湿潤重量である。
【0164】
乾燥重量は、60℃で30分間予熱した真空オーブンに試料皿を置いて測定した。少なくとも0.001MPa(0.4インチHg)の真空が達成されるまで減圧した。真空バルブ及びポンプをオフにし、レンズを4時間乾燥した。パージ弁を開け、オーブンを大気圧に戻した。秤量皿を取り出し、秤量した。含量率は、次のように計算した。
湿潤重量=皿とレンズの合計湿潤重量−秤量皿の重量
乾燥重量=皿とレンズの合計乾燥重量−秤量皿の重量
【数4】
【0165】
試料の含水率の平均値および標準偏差が計算され報告されている。
【0166】
酸素透過性(Dk)は、ISO 18369−4:2006において一般に説明されているポーラログラフィー法によって決定してよいが、以下の変更を加える。測定は、2.1%酸素含有環境で実施する。この環境は、被験チャンバーを配備し、適切な比、例えば窒素1800mL/分と空気200mL/分、に設定した窒素及び空気注入によって作り出す。調整されたpO2を使用して、t/Dkを計算する。ホウ酸緩衝食塩水を使用した。MMAレンズを適用する代わりに、純粋加湿窒素環境を使って暗電流を測定した。レンズは、測定前に拭き取らなかった。厚さが様々なレンズを使用するのではなく、厚さが一様である計測エリア内の4枚のレンズを積み重ねた。厚さの値が大きく異なる4個のサンプルのL/Dkを測定し、厚さに対して図示する。回帰直線勾配(regressed slope)の逆数がサンプルの予備的Dkである。サンプルの予備的Dkが、90バーラー未満である場合、(1+(5.88(cmでCT)))のエッジ補正を予備的L/Dk値に適用する。サンプルの予備的Dkが、90バーラーよりも大きい場合、(1+(3.56(cmでCT)))のエッジ補正を予備的L/Dk値に適用する。4つのサンプルのエッジ補正したL/Dkを厚さに対して図示する。回帰直線勾配の逆数がサンプルのDkである。フラットセンサーの代わりにカーブセンサーを使用した。結果として生じるDK値をバーラーで報告する。
【0167】
リポカリンの取り込みは、次の溶液及び方法を使用して測定した。リポカリン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート食塩水緩衝液(Sigma,D8662)に、2mg/mLの濃度で可溶化させた牛乳(Sigma,L3908)からのBラクトグロブリン(リポカリン)を含んでいた。
【0168】
各実施例について、3枚のレンズがリポカリン溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてのPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼの上で包装用溶液を除去するために拭い、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのリポカリン溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸した。対照レンズは、リポカリンの代わりに、浸漬液としてPBSを使用して準備した。リポカリン溶液中に浸したレンズを含むプレート及びPBS中に浸した対照レンズを含むプレートは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に乗せ、100rpmで72時間撹拌し、35℃で処理した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLの量のPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸すことにより、3〜5回すすいだ。レンズを紙タオルの上で拭い、過剰のPBS溶液を除去し、各ウェルが1mLのPBS溶液を含む、減菌した24個のウェルプレートに移動した。
【0169】
リポカリンの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定可能であり(標準前処理はキットに記載されている)、リポカリン溶液に浸したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算する。光学密度は、562nmの光学密度が読み取れる、SynergyII Microのプレートリーダを使用して測定した。
【0170】
ムチンの取り込みは、次の溶液及び方法を使用して測定した。ムチン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート食塩水緩衝液(Sigma,D8662)に、2mg/mLの濃度で可溶化させたウシの顎下腺(Sigma,M3895−type 1−S)からのムチンを含んでいた。
【0171】
各実施例について、3枚のレンズがムチン溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼの上で包装用溶液を除去するために拭き取り、減菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのムチン溶液を含む、減菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸した。対照レンズは、リポカリンの代わりに、浸漬液としてPBSを使用して準備した。
【0172】
ムチン溶液中に浸したレンズを含むプレート及びPBS中に浸した対照レンズを含むプレートは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に乗せ、100rpmで72時間撹拌し、35℃で処理した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLの量のPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸すことにより、3〜5回すすいだ。レンズを紙タオルの上で拭い、過剰のPBS溶液を除去し、各ウェルが1mLのPBS溶液を含む、減菌した24個のウェルプレートに移動した。
【0173】
ムチンの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定可能であり(標準前処理はキットに記載されている)、ムチン溶液に浸したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算される。光学密度は、562nmの光学密度が読み取れる、SynergyII Microのプレートリーダにより測定した。
【0174】
細胞生存率は、再構成された角膜上皮組織構成物を使用してインビトロで評価し得る。その組織構成物は、再構成された全層角膜上皮(Skinethicsからの角膜上皮組織)であり、完全に層を成す上皮構成物を形成するように、ポリカルボナートインサート上の気液界面で、インビトロで成長させた。
【0175】
レンズの評価のために、レンズのパンチ生検(0.5cm
2)を、組織上に局所に適用し、続いて、37℃、5% CO
2で、24時間処理した。レンズの生検を除去し、その組織をPBSで洗浄した。次いで、細胞生存率をMTT比色分析アッセイ(Mosman,T.Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival:application to proliferation and cytotoxicity assays.J.Immunol.Methods,65;55〜63(1983))を使用して測定した。組織は、MTTの存在下、37℃、5% CO
2で3時間処理し、続いて、イソプロピルアルコール中で組織を抽出した。次いで、イソプロピルアルコール抽出物の吸光度は、マイクロプレートリーダーを使用して、550nmで測定した。結果は、PBS対照の割合(PBSで処理された組織対レンズ処理組織)として表した。
【0176】
溶液の評価のために、30μgの溶液を、その組織上に局所に適用した。残りの細胞生存率は、レンズに対して記載される通りであった。各評価は、三重に行われた。
【0177】
脂質の取り込みは次のように測定した。
標準曲線は、調査中の各レンズの種類について設定された。標識コレステロール(NBD([7−ニトロベンζ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル]、CH−NBD;Avanti,Alabaster,AL)で標識化されたコレステロール)は、35℃で、メタノール中の1mg/mLの脂質の原液中に可溶化された。アリコートは、0〜100micg/mLの濃度範囲内、pH 7.4で、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で標準曲線を作るように、本原液から得られた。
【0178】
各濃度で、1ミリリットルの標準を、24ウェル細胞培養プレートのウェル内に置いた。各タイプの10個のレンズを、別の24ウェルプレートに置き、1mLの20micg/mLの濃度のCH−NBD中の標準曲線試料と同時に浸した。別のレンズのセット(5個のレンズ)を、脂質の入っていないPBS中に浸して、レンズ自体が生成するあらゆる自己蛍光を補正した。全ての濃度は、pH 7.4で、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に作製した。標準曲線プレート、試験プレート(CH−NBD中に浸したレンズを含む)、及び対照プレート(PBS中に浸したレンズを含む)は全て、アルミホイルで覆い、暗さを維持し、35℃で撹拌しながら、24時間処理した。24時間後、標準曲線プレート、試験プレート、及び対照プレートをインキュベーターから取り出した。標準曲線プレートは、マイクロプレート蛍光リーダ(Synergy HT)上で直ちに読み取った。
【0179】
試験プレート及び対照プレートからのレンズは、それぞれの別々のレンズを浸すことにより約100mLのPBSを含む3つの連続したバイアル瓶中で3〜5回すすいで、結合した脂質のみが、脂質のキャリーオーバーなしで測定することができるようにした。次いで、レンズは、各ウェル中に1mLのPBSを含む、未使用の24ウェルプレート中に置き、蛍光リーダ上で読み取った。試験試料を読み取った後、PBSを除去し、前述の通り、1mLの未使用のCH−NBDの溶液を、同一の濃度でレンズ上に置き、次の期間まで振動させながら、35℃でインキュベーター中に戻した。この手順を、レンズ上で脂質が完全に飽和されるまで、15日間繰り返した。飽和で得られた脂質量のみが報告された。
【0180】
リゾチームの取り込みは、以下のように測定し得る。リゾチームの取り込み試験に使用されたリゾチーム溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート食塩水緩衝液に、2mg/mLの濃度で可溶化させたニワトリの卵白(Sigma,L7651)からのリゾチームを含んでいた。
【0181】
リポカリン溶液は、1.37g/Lの重炭酸ナトリウム及び0.1g/LのD−ブドウ糖を補ったホスフェート食塩水緩衝液に、2mg/mLの濃度で可溶化させた牛乳(Sigma,L3908)からのBラクトグロブリン(リポカリン)を含んでいた。
【0182】
各実施例について、3枚のレンズが、それぞれのタンパク質溶液を使用して試験され、3枚が対照溶液としてのPBSを使用して試験された。試験レンズを、滅菌ガーゼの上で包装用溶液を除去するために拭い、滅菌鉗子を使用して、各ウェルが2mLのリゾチーム溶液を含む、滅菌した24個のウェルの細胞培養プレート(ウェル1つ当たり1枚のレンズ)へ、無菌状態で移動した。各レンズを溶液中に完全に浸した。対照として、コンタクトレンズを含まない1つのウェルに、2mLのリゾチーム溶液を入れた。
【0183】
レンズを含むプレート及びタンパク質溶液のみを含む対照用プレート及びPBS中のレンズは、蒸発と脱水を防ぐためパラフィルムで覆い、軌道振とう器に乗せ、100rpmで72時間撹拌し、35℃で処理した。72時間の処理期間の後、レンズを約200mLの量のPBSを含む3個の別々のバイアル瓶に浸すことにより、3〜5回すすいだ。レンズを紙タオルの上で拭い、過剰なPBS溶液を除去し、滅菌した円錐形のチューブに移した(チューブ1つ当たり1枚のレンズ)。各チューブは、各レンズの組成から予想されるリゾチーム取り込み量の推定を基に決められる量のPBSを含んでいた。試験される各チューブのリゾチーム濃度は、製造業者が述べているアルブミン標準範囲内(0.05マイクログラム〜30マイクログラム)であることが必要である。レンズ当たり100μg未満のリゾチームレベルを取り込むことが分かっている試料は、5倍に希釈した。レンズ(エタフィルコンAレンズ等)当たり500μgを超えるリゾチームレベルを取り込むことが分かっているサンプルは、20倍に希釈した。
【0184】
エタフィルコン以外の全ての試料に対して、1mLのアリコートのPBSを使用した。エタフィルコンAレンズに対しては、20mLを使用した。各対照レンズについては、ウェルプレートがリゾチーム又はリポカリン溶液のいずれかの代わりにPBSを含むこと以外は、同じように処理した。
【0185】
リゾチーム及びリポカリンの取り込みは、オンレンズ・ビシンコニン酸法により、QP−BCAキット(Sigma,QP−BCA)を使用し、製造業者の説明する手順により測定し(標準前処理はキットに記載されている)、リゾチーム溶液に浸したレンズについて測定した光学密度から、PBSに浸したレンズについて測定した光学密度(バックグラウンド)を減じて計算した。
【0186】
光学密度は、562nmの光学密度が読み取れる、SynergyII Microのプレートリーダにより測定し得る。
【0187】
以下の略語は、調製物及び実施例を通して使用され、以下の意味を有する。
ACA1 3−アクリルアミドプロピオン酸;
ACA2 5−アクリルアミドペンタン酸;
AIBN 2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(Sigma−Aldrich)
4−BBB 4−(ブロモメチル)ベンゾイルブロミド(Sigma−Aldrich);
DMA N,N−ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
Irgacure−819ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty Chemicals);
【0189】
ホウ酸緩衝剤は、以下の成分を含有する点眼剤である。
【0191】
調製物1 RAFT重合によるポリ(N−(2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(PHPMA)ナノゲルの合成
HPMAは、熱いアセトニトリル中で溶解され、濾過され、沈殿した。CTA、4−シアノ−4−(エチルトリチオカルボナート)ペンタン酸(ETP)をPoly Sciencesから入手して、そのまま使用した。MBMA、VA−044、及びDulbeccoのPhosphate Buffered Salineの、表、1に列挙した量を、そのまま使用した。
【0193】
重合溶液は、HPMA、CTA、MBMA、及び緩衝剤を、500mLの丸底三つ口フラスコに加えて、調製した。フラスコは、機械撹拌器に接続し、空気に触れないようにして、窒素は、モノマー混合物により泡立てた。加熱マントルをフラスコの下に置き、50℃まで温めた。VA−044は、20mLバイアル瓶中で秤量し、8gのDPBS中で溶解させて、開始剤溶液を形成した。N
2雰囲気中で30分間、N
2により、該開始剤溶液からO
2をパージした。1時間の撹拌と加熱後、モノマー混合物は、完全に溶解され、脱気された。その後、注射器により、開始剤溶液をモノマー混合物に加えた。
【0194】
撹拌を継続しながら、50℃のN
2雰囲気下で、180分間、重合溶液を硬化させた。温度を監視して、54℃を超えないように確認した。必要な場合、加熱マントルを取り除いて、熱を下げた。
【0195】
硬化後、結果として生じる固体重合材料を、強く撹拌されているアセトンに滴下添加して、生成物を沈殿させた。1600mLのアセトンを満たした2Lのフラスコを使用した。沈殿したポリマーを、減圧下で数時間乾燥させた。該沈殿したポリマーを、タンジェント流濾過により、更に精製した。SEC−MALLSによりMW及びMWDについてポリマーを分析した。
【0196】
調製物2 RAFT重合によるポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(PDMA)ナノゲルの合成
材料:真空蒸留によって、DMAを更に精製した。CTA、S−ベンジル−S’−へキシル−トリチオカルボナート(HBTTC)を、調製物4により調製した。MBA、及びAIBNの、表2に示す量を、そのまま使用した。
【0198】
125gのDMA及び1−プロパノールを、500mLの三つ口フラスコ中で秤量した。次に、HBTTC及びMBAを加えて、機械撹拌器で撹拌しつつ、溶液をN
2で1時間パージして、O
2を除去した。AIBN(CTA対開始剤の比=20)を秤量してバイアル瓶に入れ、5gの1−プロパノール中で溶解させた。次に、該溶液を、N
2雰囲気中で1時間、N
2によりパージして、該溶液からO
2を除去した。
【0199】
溶液を60℃まで加熱して、開始剤溶液をモノマー溶液に注入した。重合の間中、反応混合物の温度を監視した。絶対に70℃を超えないようにした。必要な場合、フラスコを冷却するために、水槽を使用した。全反応時間は、210分であった。反応混合物を空気に暴露して、該反応混合物を通して空気を泡立たせることによって、反応混合物を急冷した。
【0200】
硬化の後、ポリマーを、強く撹拌されているジエチルエーテルに滴下添加して、生成物を沈殿させた。1600mLのエーテルを含有する2Lのフラスコを使用した。沈殿したポリマーを、減圧下で数時間乾燥させた。該沈殿したポリマーを、ヘキサンによるソックスレー抽出法で、6日間、更に精製した。SEC−MALLSによりMW及びMWDについてポリマーを分析した。
【0201】
調製物3.線状PHPMAホモポリマーの合成
HPMA及びV−501を、そのまま使用した。
【0202】
650gのHPMA及び4875gの脱イオン水を、スパージ管、頭上式の撹拌器、及び温度プローブを備えた12Lのフラスコに加えた。結果として生じる溶液にN
2を注入して、溶液温度が65℃に達することを可能にしつつ、該溶液を250rpmで2時間撹拌した。
【0203】
一旦、反応が65℃に達すると、0.85gのV−501を加え、溶液温度を70℃に上げて、その温度で24時間維持した。熱を除去して、反応を40℃まで冷却することを可能にした。
【0204】
結果として生じるポリマー溶液を600mLの部分に分けて、各部分を2Lのアセトンから沈殿させた。単離した固体ポリマーを濾過し、フード内で一晩乾燥した後、粉砕し、24〜48時間にわたって乾燥した。ポリマーがまだ濡れていたので、(5つの部分の)2Lのアセトンを含むワーリングブレンダーの中に置き、2分間混ぜ合わせて、更に水を除去した。固体の砕いたポリマーを再び単離して、50〜55度Cで24〜48時間、乾燥した。次に、ポリマーを、4500gのメタノール中で溶解させ、ワーリングブレンダー中のアセトンから(部分毎に)沈殿させた。高せん断沈殿の結果、細粉が生じ、該細粉は、濾過により容易に単離され、48時間にわたって、恒量まで乾燥された。最終ポリマー収率は、84.9%であった。SEC−MALLSによりMW及びMWDについてポリマーを分析した。
【0205】
調製物4.S−へキシル−S’ベンジル−トリチオカルボナート(HBTTC)の合成
ケロシン中のナトリウム(Sigma Aldrich)を少量ずつ20mLのメタノールに窒素下でゆっくり加えて、ナトリウムメトキシドを形成した。結果として生じる溶液を、1−ヘキサンチオール(Sigma Aldrich)を含むフラスコに数個のアリコートで加えた。二硫化炭素(Sigma Aldrich)を注射器により滴下添加した。溶液は、直ちに黄色に変化した。溶液を15分間反応させた。次いで、臭化ベンジル(Sigma Aldrich)を注射器により滴下添加した。沈殿物が直ちに形成された。反応を2時間進行させた。最終的にフラスコの底に黄色油が形成された。メタノールをロータリーエバポレーターで蒸発させ(roto-vapped off)、脱イオン水及びヘキサンを用いて生成物をナトリウム塩から分離した。水性層はおよそ50mLであり、50mLのヘキサンを用いて3回抽出した。ヘキサンは、化合され、Na
2SO
4上で乾燥され、回転蒸発により還元乾燥された。
1H NMR(300MHz、CDCl
3):δ(ppm)0.875〜1.125(t、3H)、1.25〜1.63(m、6H)、1.63〜1.95(m、2H)、3.25〜3.63(t、2H)、4.63−4.8(s、2H)、7.25〜7.5(m、5H)。
【実施例】
【0206】
実施例1〜2、並びに比較例1及び2
セノフィルコンAレンズをその包装から取り出し、3mLのBBPS(比較例1)、調製物1〜2中で形成された5000ppmのWSCポリマーを含有する3mLのBBPS(それぞれ実施例1及び実施例2)、又は調製物3の3mLのBBPSと線状ポリマー(比較例2)を含有するガラスバイアルに移した。レンズに蓋をして、クリンプシールをした後に、124℃で30分間殺菌した。ポリマーのそれぞれで処理したレンズについて、及び未処理のセノフィルコンAレンズについて(比較例1)、以下のバイオメトリクスデータを得た。結果を以下の表4に示す。
【0207】
【表5】
【0208】
本発明のWSCポリマーは、比較例1の未処理対照レンズ、及び比較例2の線状PDMAポリマーで処理したレンズの両方と比較して、脂質の取り込みの激減をもたらす。本発明のレンズにおけるムチン及びリポカリンの取り込みも、対照及び線状PDMAポリマーと比較して、低減された。
【0209】
本明細書全体を参照すると、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ又は2つ以上の実施形態」又は「実施形態」とは、実施形態に関係して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性は、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所に見られる「1つ又は2つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、「実施形態では」などの語句は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は2つ以上の実施形態で、任意の好適な形で組み合わせることができる。
【0210】
本発明について本明細書において特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途を説明するものに過ぎないことが理解されよう。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に様々な修正及び変更を実施できることが当業者に明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に含まれる修正物及び変更物を包含することが意図される。
【0211】
〔実施の態様〕
(1) コンタクトレンズを、脂質の取り込みを低減させる量の少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーを含む溶液に、前記コポリマーを前記コンタクトレンズに会合させるのに好適な接触条件下で、接触させることを含むプロセスであって、前記架橋コポリマーは、それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有している、複数の架橋一次ポリマー鎖を含み、前記架橋コポリマーは、ポリマー骨格に直接結合したカルボン酸基を含む反復単位を含まない、プロセス。
(2) 前記コンタクトレンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む、実施態様1に記載のプロセス。
(3) 前記水溶性架橋コポリマーが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次ポリマー鎖のモル比を有する、実施態様1又は2に記載のプロセス。
(4) 前記脂質の取り込みを低減させる量が、少なくとも約10ppmである、実施態様1〜3のいずれかに記載のプロセス。
(5) 前記脂質の取り込みを低減させる量が、約10ppm〜約10,000ppmの範囲内である、実施態様1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【0212】
(6) 前記レンズによる脂質の取り込みが、約10μg/レンズ以下である、実施態様1〜5のいずれかに記載のプロセス。
(7) 前記一次ポリマー鎖が、親水性ポリマー及びコポリマー、プロトン供与性ポリマー及びコポリマー、プロトン受容性ポリマー及びコポリマー、イオン性ポリマー及びコポリマー、錯体生成ポリマー及びコポリマー、刺激応答性ポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1〜6のいずれかに記載のプロセス。
(8) 前記プロトン供与性ポリマー及びコポリマーが、1つ又は2つ以上のアルコールを含む、実施態様7に記載のプロセス。
(9) 前記プロトン受容性ポリマー及びコポリマーが、1つ又は2つ以上のアミドを含む、実施態様7又は8に記載のプロセス。
(10) 前記イオン性ポリマー及びコポリマーが、カルボキシレート、スルホネート、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施態様7〜9のいずれかに記載のプロセス。
【0213】
(11) 前記錯体生成ポリマー及びコポリマーが、1つ又は2つ以上のボロン酸官能基及び/又はヒドロキシル官能基を含む、実施態様7〜10のいずれかに記載のプロセス。
(12) 前記刺激応答性ポリマー及びコポリマーが、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、電解質応答性ポリマー、光応答性ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様7〜11のいずれかに記載のプロセス。
(13) 前記温度応答性ポリマーが、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、実施態様12に記載のプロセス。
(14) 前記コポリマーが、親水性及びプロトン供与性の両方である、実施態様7〜13のいずれかに記載のプロセス。
(15) 前記コポリマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びN−ヒドロキシプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーの重合に由来する反復単位を含む、実施態様14に記載のプロセス。
【0214】
(16) 前記コポリマーが、ビニルアミド、ビニルラクトン、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから形成される、実施態様1〜15のいずれかに記載のプロセス。
(17) 前記一次ポリマー鎖が、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤によって架橋される、実施態様1〜16のいずれかに記載のプロセス。
(18) 前記コポリマーが、置換又は非置換のアクリル酸に由来する反復単位を含まない、実施態様1〜17のいずれかに記載のプロセス。
(19) 1つ又は2つ以上の架橋コポリマーを含む親水性ナノゲル材料を含む組成物であって、前記コポリマーが、約10〜約10,000の範囲内の重合度を有する1つ又は2つ以上の一次ポリマー鎖を含み、かつ前記親水性ナノゲル材料が、(a)表面と会合し、かつ(b)末端基材会合性セグメントを含まない、組成物。
(20) 前記一次ポリマー鎖が、約50〜約5,000の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様19に記載の組成物。
【0215】
(21) 前記一次ポリマー鎖が、約100〜約1000の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様19又は20に記載の組成物。
(22) 前記一次ポリマー鎖が、約100〜約500の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様19〜21のいずれかに記載の組成物。
(23) 前記一次ポリマー鎖が、約100〜約300の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様19〜22のいずれかに記載の組成物。
(24) 前記親水性ナノゲルが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次ポリマー鎖のモル比を有する、実施態様19〜23のいずれかに記載の組成物。
(25) 前記一次ポリマー鎖が、約1.5未満の多分散指数(PDI)を有する前記親水性ナノゲルの他の一次ポリマー鎖に架橋される、実施態様19〜24のいずれかに記載の組成物。
【0216】
(26) 前記一次ポリマー鎖が、共有結合、イオン結合、水素結合、又はこれらの組み合わせによって架橋される、実施態様24に記載の組成物。
(27) 前記一次ポリマー鎖が、親水性ポリマー及びコポリマー、プロトン供与性ポリマー及びコポリマー、プロトン受容性ポリマー及びコポリマー、イオン性ポリマー及びコポリマー、錯体生成ポリマー及びコポリマー、刺激応答性ポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様19〜26のいずれかに記載の組成物。
(28) 前記一次ポリマー鎖が、ビニルアミド、ビニルラクトン、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから形成される、実施態様19〜27のいずれかに記載の組成物。
(29) 前記一次ポリマー鎖が、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤によって架橋される、実施態様19〜28のいずれかに記載の組成物。
(30) 前記表面が、前記親水性ナノゲル材料で前記表面が処理された後に約50°以下の接触角を備えるシリコーンヒドロゲルである、実施態様19〜29のいずれかに記載の組成物。
【0217】
(31) プロセスであって、
(a)少なくとも1つの親水性成分と、それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有している複数の一次ポリマー鎖を含む少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーと、を含む、反応混合物を形成することと、
(b)前記反応混合物を硬化させて、コンタクトレンズを形成することと、
を含む、プロセス。
(32) 前記反応混合物が、少なくとも1つのシリコーン含有成分を更に含む、実施態様31に記載のプロセス。
(33) 前記反応混合物が、約0.1〜約50重量%の前記コポリマーを含む、実施態様31又は32に記載のプロセス。
(34) 前記反応混合物が、約1〜約20重量%の前記コポリマーを含む、実施態様31〜33のいずれかに記載のプロセス。
(35) 前記反応混合物が、約2〜約15重量%の前記コポリマーを含む、実施態様31〜34のいずれかに記載のプロセス。
【0218】
(36) シリコーン含有ポリマーと、
それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有する、複数の一次ポリマー鎖を含む、少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーと、を含む、眼科用デバイスであって、前記コポリマーが、前記眼科用デバイスの少なくとも1つの表面と会合し、かつ、前記眼科用デバイスの脂質の取り込みを、前記シリコーン含有ポリマーと比較して、少なくとも約20%低減させる、眼科用デバイス。
(37) 前記脂質の取り込みが、約12μg/レンズ未満である、実施態様36に記載の眼科用デバイス。
(38) 前記脂質の取り込みが、約10μg/レンズ以下である、実施態様36又は37に記載の眼科用デバイス。
(39) 前記コポリマーが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次ポリマー鎖のモル比を有する、実施態様36〜38のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(40) 前記一次ポリマー鎖が、約50〜約5,000の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様36〜39のいずれかに記載の眼科用デバイス。
【0219】
(41) 前記一次ポリマー鎖が、約100〜約1000の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様36〜40のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(42) それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有する複数の一次ポリマー鎖を含む少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーを含む点眼剤であって、前記コポリマーが、前記点眼剤に浸したコンタクトレンズ内の脂質の取り込みを抑制するのに有効な量で存在し、かつ前記点眼剤が、透明である、点眼剤。
(43) 前記コポリマーが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次鎖のモル比を有する、実施態様42に記載の点眼剤。
(44) 前記少なくとも1つのコポリマーが、約0.005〜約2重量%の範囲内の量で存在する、実施態様42又は43に記載の点眼剤。
(45) 前記少なくとも1つのコポリマーが、約0.01〜約0.5重量%の範囲内の量で存在する、実施態様42〜44のいずれかに記載の点眼剤。
【0220】
(46) 前記一次ポリマー鎖のそれぞれが、約50〜約1,000の範囲内の重合度を有する、実施態様42〜45のいずれかに記載の点眼剤。
(47) 前記一次ポリマー鎖のそれぞれが、約100〜約500の範囲内の重合度を有する、実施態様42〜46のいずれかに記載の点眼剤。
(48) 次の式が表す一次鎖ζを有する水溶性架橋ポリマーを含む組成物であって、
【化19】
式中、R
1は、任意に置換されたアルキレン、任意に置換された飽和、不飽和、又は芳香族炭素環若しくは複素環、任意に置換されたアルキルチオ、任意に置換されたアルコキシ、又は任意に置換されたジアルキルアミノからなる群から選択される二価基であり、
Uは、水素、ハロゲン、C
1〜C
4アルキルからなる群から独立して選択され、前記C
1〜C
4アルキルは、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ(OR’’)、カルボキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ(O
2CR’’)、アルコキシ−カルボニル、アリールオキシ−カルボニル(CO
2R’’)、及びこれらの組み合わせで任意に置換されてもよく、
Vは、R’’、−CO
2R’’、−COR’’、−CN、−CONH
2、−CONHR’’、−CONR’’
2、−O
2CR’’、−OR’’、環式及び非環式N−ビニルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
R
’’は、任意に置換されたC
1〜C
18アルキル、C
2〜C
18アルケニル、アリール、ヘテロシクリル、アルカリルからなる群から独立して選択され、ここで、該置換基は、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシレート、スルホン酸、及びスルホネート、アルコキシ−若しくはアリールオキシ−カルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロ、ジアルキルアミノ、リン酸、ホスフェート、ホスホン酸、ホスホネート、及びこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
R
15’及びR
15は、親水性フリーラジカル反応性架橋剤の残基であり、
R
18は、制御ラジカル重合剤であり、
ζ
ιは、別の一次鎖であり、モル分率であり、αは、約0.85〜約0.999と等しく、βは、0ではなく、βとγとを合わせたモル分率は、約0.15〜約0.001である、組成物。
(49) 次の式が表す一次鎖ζを有する水溶性架橋ポリマーを含む組成物であって、
【化20】
R
1、U、V、R
15、R
15’、α、β、γ及びmが、実施態様48に定義の通りである、組成物。
(50) R
1が、任意に置換されたベンジル、任意に置換されたフェニル、エタノエート(ethanoate)、任意に置換されたプロピオネート、4−シアノペンタノエート、又はイソブチレート(isobutyroate)官能基からなる群から選択される、実施態様48又は49に記載の組成物。
【0221】
(51) R
1が、4−シアノペンタノエート、イソブタン(isobutanoic)基、又はベンジル基からなる群から選択される、実施態様48〜50のいずれかに記載の組成物。
(52) R
1が、シアノメチル基又はクミル基からなる群から選択される、実施態様48〜51のいずれかに記載の組成物。
(53) R
1が、多価である、実施態様48〜52のいずれかに記載の組成物。
(54) Uが、H又はメチルから選択される、実施態様48〜53のいずれかに記載の組成物。
(55) R’’が、メチル、−CH
2OH、−CH
2CH
2OH、−CH
2CH
2CH
2OH、−CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−(CH
3)
2−CH
2−CO
2−、−(CH
3)
2−CH
2−SO
3H、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−CO
2−、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−SO
3−、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−PO
3−2、−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2CH
2−PO
3−2、−CH
2CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−PO
3−2−CH
2CH
2−
+N(CH
3)
2−CH
2CH
2−PO
3−2、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様48〜54のいずれかに記載の組成物。
【0222】
(56) Vが、ピロリドニル、ピペリドニル、2−カプロラクタム、3−メチル−2−カプロラクタム、3−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−カプロラクタム、3−エチル−2−ピロリドニル、4,5−ジメチル−2−ピロリドニル、イミダゾリル、N−N−ジメチルアミド、アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミド、−シアノ、N−イソプロピルアミド、アセテート、カルボキシポリエチレングリコール、N−(2−ヒドロキシプロピル)アミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド、カルボキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート3−((3−アミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート3−((3−(カルボキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネートN−メチルアセトアミド、−アセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、2−メチルプロピオンアミド、N,N’−ジメチル尿素等、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様54に記載の組成物。
(57) Vが、−N−(CH
3)
2、ピロリドニル、−CON(CH
3)
2、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド、又は−N(CH
3)COCH
3からなる群から選択される、実施態様54又は56に記載の組成物。
(58) R
15及びR
15’架橋剤が、ジメチルシロキサン基を含まない、実施態様48〜57のいずれかに記載の組成物。
(59) R
15及びR
15’が、アルキレンが1〜12個の炭素を有する、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、トリアリルシアヌレート、1,3−ジビニルイミダゾリジン−2−オン、及び3,3’’アルキレンビス(1−ビニルピロリジン−2−オン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの架橋剤の重合残基である、実施態様48〜58のいずれかに記載の組成物。
(60) R
15及びR
15’が、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ペンタメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジアクリルアミドN,N’−(((オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ジアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、1,3−ジビニルイミダゾリジン−2−オン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの架橋剤の重合残基である、実施態様48〜59のいずれかに記載の組成物。
【0223】
(61) R
18が、RAFT、TERP、NMP、又はATRP制御剤である、実施態様48〜60のいずれかに記載の組成物。
(62) αが、約0.92〜約0.999であり、かつ前記βとγとを合わせたモル分率が、約0.08〜約0.001である、実施態様48〜61のいずれかに記載の組成物。
(63) αが、約0.95〜約0.999であり、かつ前記βとγとを合わせたモル分率が、約0.05〜約0.001である、実施態様48〜62のいずれかに記載の組成物。
(64) αが、約0.97〜約0.999であり、かつ前記βとγとを合わせたモル分率が、約0.025〜約0.001である、実施態様48〜63のいずれかに記載の組成物。
(65) 前記水溶性架橋ポリマーが、約25〜約5,000の範囲内の重合度を有する、実施態様48〜64のいずれかに記載の組成物。
【0224】
(66) 前記水溶性架橋ポリマーが、約100〜約1000の範囲内の重合度を有する、実施態様48〜65のいずれかに記載の組成物。
(67) 前記水溶性架橋ポリマーが、約100〜約500の範囲内の重合度を有する、実施態様48〜66のいずれかに記載の組成物。
(68) 前記水溶性架橋ポリマーが、約100〜約300の範囲内の重合度を有する、実施態様48〜67のいずれかに記載の組成物。
(69) 前記水溶性架橋ポリマーが、基材会合性ブロックを含まない、実施態様48〜68のいずれかに記載の組成物。
(70) 前記一次鎖ζ
ιが、約1.5未満のPDIを有する、実施態様48〜69に記載の組成物。
【0225】
(71) Vの少なくとも約20%が、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドに由来する、実施態様48〜70のいずれかに記載の組成物。
(72) Vが、コモノマーに由来する反復単位を含む、実施態様48〜71のいずれかに記載の組成物。
(73) Vが、アニオン性基を実質的に含まない、実施態様48又は49のいずれかに記載の組成物。
(74) Vが、アニオン性基を含まない、実施態様48又は49のいずれかに記載の組成物。
(75) 前記コモノマーが、親水性モノマー、疎水性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、刺激応答性モノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様72〜74のいずれかに記載の組成物。
【0226】
(76) 前記コモノマーが、アニオン性モノマー、双性イオン性モノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様72〜75のいずれかに記載の組成物。
(77) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、反応基を含まない、実施態様1〜35のいずれかに記載のプロセス。
(78) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、反応基を含まない、実施態様20〜30のいずれかに記載の組成物。
(79) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、末端会合性セグメントを含まない、実施態様37〜41のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(80) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、末端会合性セグメントを含まない、実施態様42〜47のいずれかに記載の点眼剤。
(A1) コンタクトレンズを、脂質の取り込みを低減させる量の少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーを含む溶液に、前記コポリマーを前記コンタクトレンズに会合させるのに好適な接触条件下で、接触させることを含むプロセスであって、前記架橋コポリマーは、それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有している、複数の架橋一次ポリマー鎖を含み、前記架橋コポリマーは、ポリマー骨格に直接結合したカルボン酸基を含む反復単位を含まない、プロセス。
(A2) 前記コンタクトレンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む、実施態様A1に記載のプロセス。
(A3) 前記水溶性架橋コポリマーが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次ポリマー鎖のモル比を有する、実施態様A1又はA2に記載のプロセス。
(A4) 前記脂質の取り込みを低減させる量が、少なくとも約10ppm、又は約10ppm〜約10,000ppmである、実施態様A1〜A3のいずれかに記載のプロセス。
(A5) 前記レンズによる脂質の取り込みが、約10μg/レンズ以下である、実施態様A1〜A4のいずれかに記載のプロセス。
(A6) 前記一次ポリマー鎖が、親水性ポリマー及びコポリマー、プロトン供与性ポリマー及びコポリマー、プロトン受容性ポリマー及びコポリマー、イオン性ポリマー及びコポリマー、錯体生成ポリマー及びコポリマー、刺激応答性ポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様A1〜A5のいずれかに記載のプロセス。
(A7) 前記プロトン供与性ポリマー及びコポリマーが、1つ又は2つ以上のアルコールを含むか、又は、
前記プロトン受容性ポリマー及びコポリマーが、1つ又は2つ以上のアミドを含むか、又は、
前記イオン性ポリマー及びコポリマーが、カルボキシレート、スルホネート、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩のうちの1つ又は2つ以上を含むか、又は、
前記錯体生成ポリマー及びコポリマーが、1つ又は2つ以上のボロン酸官能基及び/又はヒドロキシル官能基を含むか、又は、
前記刺激応答性ポリマー及びコポリマーが、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、電解質応答性ポリマー、光応答性ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様A6に記載のプロセス。
(A8) 前記温度応答性ポリマーが、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、実施態様A7に記載のプロセス。
(A9) 前記コポリマーが、親水性及びプロトン供与性の両方である、実施態様A7又はA8に記載のプロセス。
(A10) 前記コポリマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びN−ヒドロキシプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーの重合に由来する反復単位を含む、実施態様A9に記載のプロセス。
(A11) 前記コポリマーが、ビニルアミド、ビニルラクトン、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから形成される、実施態様A1〜A10のいずれかに記載のプロセス。
(A12) 前記一次ポリマー鎖が、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤によって架橋される、実施態様A1〜A11のいずれかに記載のプロセス。
(A13) 前記コポリマーが、置換又は非置換のアクリル酸に由来する反復単位を含まない、実施態様A1〜A12のいずれかに記載のプロセス。
(A14) 1つ又は2つ以上の架橋コポリマーを含む親水性ナノゲル材料を含む組成物であって、前記コポリマーが、約10〜約10,000の範囲内の重合度を有する1つ又は2つ以上の一次ポリマー鎖を含み、かつ前記親水性ナノゲル材料が、(a)表面と会合し、かつ(b)末端基材会合性セグメントを含まない、組成物。
(A15) 前記一次ポリマー鎖が、約50〜約5,000、約100〜約1000、約100〜約500、又は約100〜約300の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様A14に記載の組成物。
(A16) 前記親水性ナノゲルが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次ポリマー鎖のモル比を有する、実施態様A15に記載の組成物。
(A17) 前記一次ポリマー鎖が、約1.5未満の多分散指数(PDI)を有する前記親水性ナノゲルの他の一次ポリマー鎖に架橋される、実施態様A15又はA16に記載の組成物。
(A18) 前記一次ポリマー鎖が、共有結合、イオン結合、水素結合、又はこれらの組み合わせによって架橋される、実施態様A16に記載の組成物。
(A19) 前記一次ポリマー鎖が、親水性ポリマー及びコポリマー、プロトン供与性ポリマー及びコポリマー、プロトン受容性ポリマー及びコポリマー、イオン性ポリマー及びコポリマー、錯体生成ポリマー及びコポリマー、刺激応答性ポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様A15〜A18のいずれかに記載の組成物。
(A20) 前記一次ポリマー鎖が、ビニルアミド、ビニルラクトン、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから形成される、実施態様A15〜A19のいずれかに記載の組成物。
(A21) 前記一次ポリマー鎖が、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤によって架橋される、実施態様A15〜A20のいずれかに記載の組成物。
(A22) 前記表面が、前記親水性ナノゲル材料で前記表面が処理された後に約50°以下の接触角を備えるシリコーンヒドロゲルである、実施態様A15〜A21のいずれかに記載の組成物。
(A23) プロセスであって、
(a)少なくとも1つの親水性成分と、それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有している複数の一次ポリマー鎖を含む少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーと、を含む、反応混合物を形成することと、
(b)前記反応混合物を硬化させて、コンタクトレンズを形成することと、
を含む、プロセス。
(A24) 前記反応混合物が、少なくとも1つのシリコーン含有成分を更に含む、実施態様A23に記載のプロセス。
(A25) 前記反応混合物が、約0.1〜約50重量%、1〜約20重量%、又は約2〜約15重量%の前記コポリマーを含む、実施態様A23又はA24に記載のプロセス。
(A26) シリコーン含有ポリマーと、
それぞれが約10〜約10,000の範囲内の重合度を有する、複数の一次ポリマー鎖を含む、少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーと、を含む、眼科用デバイスであって、前記コポリマーが、前記眼科用デバイスの少なくとも1つの表面と会合し、かつ、前記眼科用デバイスの脂質の取り込みを、前記シリコーン含有ポリマーと比較して、少なくとも約20%低減させる、眼科用デバイス。
(A27) 前記脂質の取り込みが、約12μg/レンズ未満、又は約10μg/レンズ以下である、実施態様A26に記載の眼科用デバイス。
(A28) 前記コポリマーが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次ポリマー鎖のモル比を有する、実施態様A26又はA27に記載の眼科用デバイス。
(A29) 前記一次ポリマー鎖が、約50〜約5,000、又は約100〜約1000の範囲内の重合度を独立して有する、実施態様A26〜A28のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(A30) それぞれが約10〜約10,000、約50〜約1,000、又は約100〜約500の範囲内の重合度を有する複数の一次ポリマー鎖を含む少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーを含む点眼剤であって、前記コポリマーが、前記点眼剤に浸したコンタクトレンズ内の脂質の取り込みを抑制するのに有効な量で存在し、かつ前記点眼剤が、透明である、点眼剤。
(A31) 前記コポリマーが、約0.01〜約3の範囲内の、橋架け剤対一次鎖のモル比を有する、実施態様A30に記載の点眼剤。
(A32) 前記少なくとも1つのコポリマーが、約0.005〜約2重量%、又は約0.01〜約0.5重量%の範囲内の量で存在する、実施態様A30又はA31に記載の点眼剤。
(A33) 次の式が表す一次鎖ζを有する水溶性架橋ポリマーを含む組成物であって、
【化21】
式中、R1は、任意に置換されたアルキレン、任意に置換された飽和、不飽和、又は芳香族炭素環若しくは複素環、任意に置換されたアルキルチオ、任意に置換されたアルコキシ、又は任意に置換されたジアルキルアミノからなる群から選択される二価基であり、
Uは、水素、ハロゲン、C1〜C4アルキルからなる群から独立して選択され、前記C1〜C4アルキルは、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ(OR’’)、カルボキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ(O2CR’’)、アルコキシ−カルボニル、アリールオキシ−カルボニル(CO2R’’)、及びこれらの組み合わせで任意に置換されてもよく、
Vは、R’’、−CO2R’’、−COR’’、−CN、−CONH2、−CONHR’’、−CONR’’2、−O2CR’’、−OR’’、環式及び非環式N−ビニルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
R’’は、任意に置換されたC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、アリール、ヘテロシクリル、アルカリルからなる群から独立して選択され、ここで、該置換基は、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシレート、スルホン酸、及びスルホネート、アルコキシ−若しくはアリールオキシ−カルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロ、ジアルキルアミノ、リン酸、ホスフェート、ホスホン酸、ホスホネート、及びこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
R15’及びR15は、親水性フリーラジカル反応性架橋剤の残基であり、
R18は、制御ラジカル重合剤であり、
ζιは、別の一次鎖であり、モル分率であり、αは、約0.85〜約0.999と等しく、βは、0ではなく、βとγとを合わせたモル分率は、約0.15〜約0.001である、組成物。
(A34) 次の式が表す一次鎖ζを有する水溶性架橋ポリマーを含む組成物であって、
【化22】
R1、U、V、R15、R15’、α、β、γ及びmが、実施態様A33に定義の通りである、組成物。
(A35) R1が、任意に置換されたベンジル、任意に置換されたフェニル、エタノエート(ethanoate)、任意に置換されたプロピオネート、4−シアノペンタノエート、又はイソブチレート(isobutyroate)官能基からなる群から選択される、実施態様A33又はA34に記載の組成物。
(A36) R1が、4−シアノペンタノエート、イソブタン(isobutanoic)基、又はベンジル基からなる群から選択されるか、又は、シアノメチル基又はクミル基からなる群から選択されるか、又は、多価である、実施態様A33又はA34に記載の組成物。
(A37) Uが、H又はメチルから選択される、実施態様A33〜A36のいずれかに記載の組成物。
(A38) R’’が、メチル、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH2CH2CH2OH、−CH2−CO2−、−CH2CH2−CO2−、−CH2CH2CH2−CO2−、−CH2CH2CH2CH2−CO2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−CO2−、−CH2−SO3−、−CH2CH2−SO3−、−CH2CH2CH2−SO3−、−CH2CH2CH2CH2−SO3−、−CH2CH2CH2CH2CH2−SO3−、−(CH3)2−CH2−CO2−、−(CH3)2−CH2−SO3H、−CH2CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2−CO2−、−CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2−CO2−、−CH2CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2CH2−SO3−、−CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2CH2−SO3−、−CH2CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2CH2−PO3−2、−CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2CH2−PO3−2、−CH2CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2−PO3−2−CH2CH2−+N(CH3)2−CH2CH2−PO3−2、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様A33〜A36のいずれかに記載の組成物。
(A39) Vが、ピロリドニル、ピペリドニル、2−カプロラクタム、3−メチル−2−カプロラクタム、3−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−ピペリドニル、4−メチル−2−カプロラクタム、3−エチル−2−ピロリドニル、4,5−ジメチル−2−ピロリドニル、イミダゾリル、N−N−ジメチルアミド、アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミド、−シアノ、N−イソプロピルアミド、アセテート、カルボキシポリエチレングリコール、N−(2−ヒドロキシプロピル)アミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド、カルボキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート3−((3−アミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート3−((3−(カルボキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネートN−メチルアセトアミド、−アセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、2−メチルプロピオンアミド、N,N’−ジメチル尿素等、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様A37に記載の組成物。
(A40) Vが、−N−(CH3)2、ピロリドニル、−CON(CH3)2、N−(2−ヒドロキシエチル)アミド、又は−N(CH3)COCH3からなる群から選択される、実施態様A37又はA39に記載の組成物。
(A41) R15及びR15’架橋剤が、ジメチルシロキサン基を含まない、実施態様A33〜A40のいずれかに記載の組成物。
(A42) R15及びR15’が、アルキレンが1〜12個の炭素を有する、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、トリアリルシアヌレート、1,3−ジビニルイミダゾリジン−2−オン、及び3,3’’アルキレンビス(1−ビニルピロリジン−2−オン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの架橋剤の重合残基である、実施態様A33〜A41のいずれかに記載の組成物。
(A43) R15及びR15’が、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ペンタメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジアクリルアミドN,N’−(((オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ジアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、1,3−ジビニルイミダゾリジン−2−オン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの架橋剤の重合残基である、実施態様A33〜A42のいずれかに記載の組成物。
(A44) R18が、RAFT、TERP、NMP、又はATRP制御剤である、実施態様A33〜A43のいずれかに記載の組成物。
(A45) αが、約0.92〜約0.999、約0.95〜約0.999、又は約0.97〜約0.999であり、かつ前記βとγとを合わせたモル分率が、約0.08〜約0.001、約0.05〜約0.001、又は約0.025〜約0.001である、実施態様A33〜A44のいずれかに記載の組成物。
(A46) 前記水溶性架橋ポリマーが、約25〜約5,000、約100〜約1000、約100〜約500、又は約100〜約300の範囲内の重合度を有する、実施態様A33〜A44のいずれかに記載の組成物。
(A47) 前記水溶性架橋ポリマーが、基材会合性ブロックを含まない、実施態様A33〜A46のいずれかに記載の組成物。
(A48) 前記一次鎖ζιが、約1.5未満のPDIを有する、実施態様A33〜A47のいずれかに記載の組成物。
(A49) Vの少なくとも約20%が、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドに由来する、実施態様A33〜A48のいずれかに記載の組成物。
(A50) Vが、コモノマーに由来する反復単位を含む、実施態様A33〜A49のいずれかに記載の組成物。
(A51) Vが、アニオン性基を含まない、実施態様A33に記載の組成物。
(A52) 前記コモノマーが、親水性モノマー、疎水性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、刺激応答性モノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様A50又はA51に記載の組成物。
(A53) 前記コモノマーが、アニオン性モノマー、双性イオン性モノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様A50〜A52のいずれかに記載の組成物。
(A54) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、反応基を含まない、実施態様A1〜A13のいずれかに記載のプロセス。
(A55) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、反応基を含まない、実施態様A14〜A22のいずれかに記載の組成物。
(A56) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、末端会合性セグメントを含まない、実施態様A26〜A29のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(A57) 前記少なくとも1つの水溶性架橋コポリマーが、末端会合性セグメントを含まない、実施態様A30〜A32のいずれかに記載の点眼剤。