特許第6290191号(P6290191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290191
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】車両制御システムおよび車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20180226BHJP
   B60T 8/175 20060101ALI20180226BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20180226BHJP
   B60W 40/064 20120101ALI20180226BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180226BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20180226BHJP
【FI】
   B60W30/02 300
   B60T8/175
   B60L15/20 Y
   B60L15/20 S
   B60W40/064
   B60W10/08
   B60W10/184
【請求項の数】25
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-515550(P2015-515550)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-521553(P2015-521553A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2013062017
(87)【国際公開番号】WO2013186208
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年2月6日
(31)【優先権主張番号】1210282.8
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ビーバー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ブリス
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2606261(JP,B2)
【文献】 特開平11−198683(JP,A)
【文献】 特開平02−305333(JP,A)
【文献】 特開平03−281469(JP,A)
【文献】 特開2008−167624(JP,A)
【文献】 特開平04−293651(JP,A)
【文献】 特開平02−275033(JP,A)
【文献】 特開平09−170916(JP,A)
【文献】 特開平04−055157(JP,A)
【文献】 特開平04−292252(JP,A)
【文献】 特開2011−229286(JP,A)
【文献】 特開2009−298277(JP,A)
【文献】 特開2006−034012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−50/08
F02D 9/00−11/10
F02D 13/00−28/00
F02D 29/00−29/06
F02D 41/00−41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上の車両の動作を制御するための制御システムであって、
ホイールスリップ値が所定値を超えないように所定のトルク値で駆動するように構成された車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を制限するように動作可能であり、
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度に少なくとも部分的に基づいて決定され、
加えられた駆動トルクの値が所定値に向かって増大するとき、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能であり、
少なくとも1つの駆動輪に加えられる現時点での駆動トルク値と駆動トルクの所定値との差が小さくなるほど、最大許容可能な増加率が小さくなるように、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能であることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
ホイールスリップ値の所定値が、車輪と路面との間の摩擦係数に少なくとも部分的に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
ホイールスリップ値の所定値が、車両が受ける表面抵抗に少なくとも部分的に基づいて決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度のみに基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
トルクの所定値が、車両速度および車輪と路面との間の摩擦係数のみに基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載の制御システム。
【請求項6】
制御システムは、複数のそれぞれ異なる運転モードのうちの1つの運転モードで動作可能であり、
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度、および任意的には制御システムが動作している運転モードに応じた1つまたはそれ以上のパラメータを参照して決定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項7】
ホイールスリップ値の所定値が、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値として実質的に定義されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項8】
ホイールスリップ値の所定値が、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値の所定の比率に実質的に相当することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項9】
所定の比率は、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの前記値より小さい値に相当することを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
所定の比率は、70%以上であるが90%未満の範囲か、または90%以上であるが100%未満の範囲であることを特徴とする請求項8または9に記載の制御システム。
【請求項11】
所定の比率は、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値より大きい値に相当することを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
【請求項12】
所定の比率は、100%より大きいが110%以下の範囲か、110%より大きいが120%以下の範囲か、または120%より大きいが130%以下の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
ホイールスリップ値を決定するともに、決定したホイールスリップ値が、車輪に加えられた現時点での駆動トルク値に対して車輪と走行路面との間の摩擦係数の現時点で記憶された値と一致するか否かを判断するように構成され、不一致が確認された場合、摩擦係数の現時点で記憶された値を更新するように構成されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項14】
制御システムの所定のトルク制限動作モードが選択された場合のみ、ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を所定値までに制限するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項15】
対応する選択信号を受信した場合のみ、所定のトルク制限動作モードを選択するように動作可能であることを特徴とする請求項14に記載の制御システム。
【請求項16】
車両の少なくとも1つの推進モータから少なくとも1つの車輪に伝わる駆動トルク値を低減して、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項17】
複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に制動力を加えて、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項18】
車両の少なくとも1つの推進モータにより生成される駆動トルク値を低減して、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1に記載の制御システムを備えた車両用パワートレインコントローラ。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1に記載の制御システムを備えた車両。
【請求項21】
制御システムの所定のトルク制限動作モードを選択するためのドライバ操作可能セレクタを備えたことを特徴とする請求項20に記載の車両。
【請求項22】
駆動されるように構成された一対の前輪と、駆動されるように構成された一対の後輪とを備えたことを特徴とする請求項20または21に記載の車両。
【請求項23】
駆動されるように構成された1つまたはそれ以上の車輪のそれぞれが個別の推進モータを有することを特徴とする請求項20〜22のいずれか1に記載の車両。
【請求項24】
1つまたはそれ以上の推進モータのそれぞれが電気推進モータを有することを特徴とする請求項23に記載の車両。
【請求項25】
制御システムを用いて、走行路面上の車両の動作を制御する方法であって、
ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を所定値に制限する第1のステップと、
少なくとも部分的に車両速度に依存してホイールスリップ値の所定値を決定する第2のステップと、
加えられた駆動トルクの値が所定値に向かって増大するとき、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限する第3のステップとを有し、
前記第3のステップは、
少なくとも1つの駆動輪に加えられる現時点での駆動トルク値と駆動トルクの所定値との差が小さくなるほど、最大許容可能な増加率が小さくなるように、加えられた駆動トルクの増加率を制限することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力車両に関し、これに限定するものではないが、とりわけ動力車両の速度を判断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制御を維持するために駆動輪の牽引力(トラクション)が失われることを防ぎ、駆動輪の縦方向のスリップに起因する加速性能が損なわれることを防止するために、アンチスリップレギュレーション(ASR)システムとして知られたトラクションコントロールシステムが車両に搭載されている。たとえばドライバがオンロード上で過剰な加速度を入力した場合、および路面状態が負荷されたトルクに対処できないような状態にある場合に、トラクションコントロール(駆動力制御)は必要となる。
【0003】
フィードバック制御方法は、駆動輪スリップ(ホイールスリップ)がモニタされ、過剰な駆動トルクに起因して過度にスリップするようになると、エンジン出力を下げ、および/または駆動輪にブレーキ力(制動力)を加えることにより、適正な処理を行う。たとえば、トラクションコントロールシステムは、エンジンの1つまたはそれ以上のシリンダに対する点火を遅延または抑制することにより、またはスロットルを絞ることにより、あるいはターボチャージャ付き車両の場合にはブースト制御ソレノイドを作動させてブースト出力ひいてはエンジン出力を下げることにより、エンジントルクを低減するように車両のエンジン制御ユニット(ECU)に対して信号を出力する。
【0004】
トラクションコントロールシステムは、典型的には、横滑りを検出し、抑制することにより、車両の安定性を向上させるように動作可能な安定制御システム(SCS)の一部として車両に搭載されている。安定制御システムは、コーナーリング時に横滑りを検出した場合、ドライバが意図した方向に車両のハンドル操作を行うことを支援するために、個々の車輪に対してブレーキ力(制動力)を自動的に加えるように構成されている。
【0005】
改善された安定性を有する車両を提供することが好ましい。これは、たとえば電気推進モータを有する車両等の特定の用途において特に重要である。なぜなら、電気推進モータは、比較的に大きな駆動トルク値を、比較的に大きな増加率で出力することができるためである。同様に、1つまたはそれ以上の車両サブシステムを制御するための動力車両用の制御システムを提供することが知られている。米国特許第7,349,776号は、ここに参考に一体のものとして統合されるが、エンジン管理システム、トランスミッションコントローラ、ステアリングコントローラ、ブレーキコントローラ、およびサスペンションコントローラを含む複数のサブシステムコントローラを備えた車両制御システムを開示している。各サブシステムコントローラは、複数のサブシステム機能モードで動作可能である。サブシステムコントローラは車両モードコントローラに接続され、車両モードコントローラは、車両の数多くの運転モードを提供するために必要とされる機能モードを実行するようにサブシステムコントローラを制御する。各運転モードは、特定の運転状態、または一連の運転状態に対応し、各モードにおいて、各サブシステムは、こうした運転状況に最も適した機能モードに設定される。こうした運転状況は、車両が走行する可能性のある路面のタイプに関連し、車両が走行する可能性のある路面とは、スペシャルプログラムオフ(SPO:special programs off)として知られている、草地/砂利道/雪道モード、泥わだちモード、岩肌モード、砂地モード、およびハイウェイモードである可能性がある。こうした車両モードコントローラは、地形応答(TR)(RTM)システムまたはコントローラと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,349,776号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明に係る実施形態は、添付したクレームを参照すると理解することができる。
【0008】
本発明に係る態様は、車両および方法を提供する。
【0009】
路面上の車両の動作を制御するための制御システムであって、
ホイールスリップ値が所定値を超えないように所定のトルク値で駆動するように構成された車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を制限するように動作可能であり、
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度に少なくとも部分的に基づいて決定される、制御システム。
【0010】
理解されるように、ホイールスリップ値の所定値が車両速度に少なくとも部分的に基づいて決定されるので、車輪トルクの所定値が車両速度に少なくとも部分的に依存する。
【0011】
ホイールスリップ値の所定値が、車輪と路面との間の摩擦係数に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。
【0012】
任意的には、ホイールスリップ値の所定値が、車両が受ける表面抵抗に少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0013】
任意的には、ホイールスリップ値の所定値が、車両速度のみに基づいて決定される。
【0014】
さらに任意的には、トルクの所定値が、車両速度および車輪と路面との間の摩擦係数のみに基づいて決定される。
【0015】
任意的には、制御システムは、複数のそれぞれ異なる運転モードのうちの1つの運転モードで動作可能であり、
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度、および任意的には制御システムが動作している運転モードに応じた1つまたはそれ以上のパラメータを参照して決定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ホイールスリップ値の所定値を、選択された運転モードおよび車両速度のみに基づいて決定するように動作可能であってもよい。
【0017】
制御システムは、表面摩擦係数が比較的に大きく、比較的に硬くて滑らかな路面上を走行するのに適したハイウェイ運転モードで動作可能であってもよい。このシステムは、ハイウェイ運転モードにあるとき、ホイールスリップ値の所定値を車両速度のみを参照して決定するように作動可能であってもよい。他の構成も同様に有用である。
【0018】
このシステムは、草地/砂利道/雪道の運転モードにあるとき、ホイールスリップ値の所定値を車両速度および車輪と路面との間の摩擦係数に少なくとも部分的に基づいて決定するように作動可能であってもよい。他の構成も同様に有用である。
【0019】
ホイールスリップ値の所定値が、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値として実質的に定義されてもよい。
【0020】
ホイールスリップ値の所定値が、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値の所定の比率に実質的に相当するものであってもよい。
【0021】
所定の比率は、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値より小さい値に相当するものであってもよい。
【0022】
所定の比率は、70%以上であるが90%未満の範囲か、または90%以上であるが100%未満の範囲であってもよい。
【0023】
択一的には、所定の比率は、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値より大きい値に相当するものであってもよい。
【0024】
所定の比率は、100%より大きいが110%以下の範囲か、110%より大きいが120%以下の範囲か、または120%より大きいが130%以下の範囲であってもよい。
【0025】
制御システムは、加えられた駆動トルクの値が所定値(最大許容可能値)に向かって増大するとき、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能であってもよい。
【0026】
制御システムは、少なくとも1つの駆動輪に加えられる現時点での駆動トルク値と駆動トルクの所定値(最大許容可能値)との差が小さくなるほど、最大許容可能な増加率が小さくなるように、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能であってもよい。
【0027】
制御システムは、ホイールスリップ値を決定するともに、決定したホイールスリップ値が、車輪に加えられた現時点での駆動トルク値に対して車輪と走行路面との間の摩擦係数の現時点で記憶された値と一致するか否かを判断するように構成され、不一致が確認された場合、摩擦係数の現時点で記憶された値を更新するように構成されてもよい。
【0028】
制御システムは、その所定のトルク制限動作モードが選択された場合のみ、ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を所定値までに制限するように動作可能であってもよい。
【0029】
理解されるように、所定のトルク制限動作モードは、車両が動作可能なトルク制限動作モードだけであってもよい。択一的には、トルク制限動作モードは、複数のトルク制限動作モードのうちの、駆動輪に加わる駆動トルク値が所定値に制限される動作モードであってもよい。
【0030】
任意的には、制御システムは、対応する選択信号を受信した場合のみ、所定のトルク制限動作モードを選択するように動作可能である。
【0031】
選択信号は、ユーザによるトルク制限モードセレクタの起動に呼応して生成される。択一的または追加的には、トルク制限動作モードは、選択された運転モードに基づいて選択してもよい。すなわちトルク制限動作モードは、制御システムが所定の1つまたはそれ以上の運転モードで動作している場合には自動的に選択されてもよい。たとえば制御システムが草地/砂利道/雪道の運転モードで動作しているとき、トルク制限動作モードは自動的に選択されてもよい。他の構成も同様に有用である。
【0032】
制御システムは、車両の少なくとも1つの推進モータから少なくとも1つの車輪に伝わる駆動トルク値を低減して、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であってもよい。車輪に伝わる駆動トルク値は、クラッチまたは任意の他の適当な手段を用いて低減することができる。
【0033】
制御システムは、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に制動力を加えて、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であってもよい。
【0034】
制御システムは、車両の少なくとも1つの推進モータにより生成される駆動トルク値を低減して、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であってもよい。
【0035】
保護を受けようとする本発明に係る別の態様によれば、上記説明した態様に係る制御システムを備えた車両用パワートレインコントローラが提供される。
【0036】
保護を受けようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、上記説明した態様に係る制御システムを備えた車両が提供される。
【0037】
車両は、制御システムの所定のトルク制限動作モードを選択するためのドライバ操作可能セレクタを備えるものであってもよい。
【0038】
車両は、駆動されるように構成された一対の前輪と、駆動されるように構成された一対の後輪とを備えるものであってもよい。
【0039】
任意的には、駆動されるように構成された1つまたはそれ以上の車輪のそれぞれが個別の推進モータを有する。
【0040】
任意的には、1つまたはそれ以上の推進モータのそれぞれが電気推進モータを有する。
【0041】
追加的または択一的に、車両はエンジンを有してもよく、任意的には内燃エンジンを有してもよい。
【0042】
保護を受けようとする本発明に係る別の態様によれば、制御システムを用いて、走行路面上の車両の動作を制御する方法が提供され、この方法は、ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を所定値に制限するステップを有する。
【0043】
保護を受けようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、走行路面上の車両の動作を制御する制御システムが提供され、この制御システムは、制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を、最大牽引力が得られる値に制限するように動作可能である。
【0044】
保護を受けようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、走行路面上の車両の動作を制御する制御システムが提供され、この制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を、最大牽引力が得られる値より所定の比率だけ大きい値に制限するように動作可能である。
【0045】
保護を受けようとする本発明に係る1つの態様によれば、路面上の車両の動作を制御するための制御手段が提供され、この制御手段は、ホイールスリップ値が所定値を超えないように駆動される車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を制限するように動作可能である。
【0046】
ここで用いられる制御手段とは、これに限定するものではないが、たとえばマイクロプロセッサ等のコントローラを含むことを意図している。
【0047】
本発明に係る実施形態は、1つまたはそれ以上の車輪に駆動トルクを加えて、パワートレインが過剰なスリップを引き起こし、車両の安定性を低減するリスクを低減するという利点を有する。
【0048】
駆動トルクとは、車両の動作(動き)を推進させるために車輪に加えられる正味のトルクを意味し、車両の動作(動き)を抑制するために加えられるトルクを意味するものではなく、換言すると、車両の正味の正の推進トルクである(対向トルクではない)。いくつかの実施形態では、正味のトルクは、(正の)駆動トルクおよび(負の)制動トルクを負荷することにより得ることができる。
【0049】
理解されるように、所与の路面に対するいくつかのロードホイール/タイヤの仕様(乾燥したアスファルトに対する所与のタイヤの種別)において、車輪速度が実際の車両速度を超えると、ホイールスリップが有益なものでなくなる。これは、たとえば走行路面上の車輪の牽引力の増大につながらないためである。
【0050】
数多くの走行路面において、ホイールスリップが所定値を超えると、牽引力の値は小さくなる。いくつかの実施形態では、制御手段は、ホイールスリップを抑制するように構成してもよい。車両走行中の路面に対する牽引力を低減するほどホイールスリップが増大する値と同一、それより小さい値、またはそれより大きい値にホイールスリップを制限するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、後述するように、制御手段は、ホイールスリップが増大すると、牽引力が低減する値より若干大きい値にホイールスリップを制限するように構成してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、制御手段は、許容可能なスリップの所定値を超えないように1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を制限するように構成してもよい。理解されるように、ドライバが許容可能なスリップの所定値を超えないような駆動トルク値を要求した場合、パワートレインは、ドライバ要求トルク値が出力されるような駆動トルクを1つまたはそれ以上の駆動輪に加えることができるようにしてもよい。
【0052】
2つまたはそれ以上の車輪がパワートレインにより駆動される場合、制御手段は、各車輪の許容可能なスリップの所定値を超えることなく、かつ全体トルク(2つまたはそれ以上の車輪のそれぞれに加えられるトルク値の合計値)を出力するように、2つまたはそれ以上の車輪に対する適当なトルク配分を決定してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、制御手段は、各駆動輪により異なる許容可能なスリップの所定値の間の可能性のある差異を考慮してもよい。たとえば四輪駆動車の場合、制御手段は、加速している間、車両の後輪は前輪より大きな下方負荷を受けるという事実を考慮してもよい。こうした場合、車両が加速しているとき、前輪と比較して、所定の最大値に対応するスリップを得るために、後輪に加えられる最大駆動トルク値が異なるようにしてもよい。制御手段は、たとえば傾斜センサまたは傾斜を測定する他の手段からの信号に応答して、車両の傾斜を考慮に入れるように構成してもよい。
【0054】
好都合にも、制御手段は、ホイールスリップ値が所定値を超えないように、1つまたはそれ以上の車輪に加えられる最大駆動トルク値を決定するように構成してもよい。
【0055】
制御手段は、車輪速度および車輪と路面の間の摩擦係数のうちから選択された少なくとも一方に基づいて最大駆動トルク値を決定するように動作可能であってもよい。
【0056】
理解されるように、摩擦係数は表面摩擦係数の推定値に相当するものであってもよい。
【0057】
ホイールスリップの所定値は、車両を動かす牽引力の最大値が得られる値として実質的に定義してもよい。
【0058】
理解されるように、車両を動かす牽引力が最大となるときに、車両の最大加速度値が得られる。
【0059】
広く知られているように、所与の路面上の所与の車両車輪において、車両/車輪の縦方向加速度が停止状態から加速するように車輪に加わるトルク値が増大するとき、正味の車両/車輪の縦方向加速度値は、典型的には、少なくとも加速当初において、加えられたトルクとともに実質的に直線的に増大する。
【0060】
いくつかの実施形態では、車輪がアスファルトに当接するゴムタイヤを有する場合、ホイールスリップが所定値を超えて、縦方向加速度を与える所与の駆動力の増大を得るために必要なホイールスリップが増大すると、非線形に増大し始め、その後、車輪に加わるトルク値が継続的に増大する場合、スリップ値は最大値を超えて増大すると、車輪の縦方向加速度を与える正味の駆動力は減少し始める。
【0061】
ホイールスリップ値が過剰になることを防止して、所与の路面に対して実現可能な加速度および水平方向の安定性等の車両の性能特性が低下しないように、車輪に加わる駆動トルク値を最適化することが好ましい。
【0062】
いくつかの実施形態では、制御手段は、車輪に加わる駆動トルク値を、実現可能な最大駆動力(牽引力)が得られる値に相当する値に制限するように構成される。
【0063】
ホイールスリップの所定値は、車両を動かす最大牽引力が得られる値の所定の比率に相当するものであってもよい。
【0064】
所定の比率は、車両を動かす最大牽引力が得られる値より小さい比率に相当するものであってもよい。
【0065】
所定の比率は、70%以上であるが90%未満の範囲か、または90%以上であるが100%未満の範囲に実質的に相当するものであってもよい。
【0066】
理解されるように、その他の値またはその他の値の範囲も同様に有用である。
【0067】
有利なことに、所定の比率は、車両を動かす最大牽引力が得られる値より大きい比率に相当するものであってもよい。
【0068】
所定の比率は、100%より大きいが110%以下の範囲か、110%より大きいが120%以下の範囲か、または120%より大きいが130%以下の範囲に実質的に相当するものであってもよい。
【0069】
理解されるように、その他の値またはその他の値の範囲も同様に有用である。
【0070】
制御手段は、加えられた駆動トルクの値が最大許容可能値に向かって増大するとき、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能であってもよい。
【0071】
理解されるように、いくつかの実施形態では、駆動トルクの許容可能な最大増加率の制限は、加えられたトルクの所与の範囲内のみで実施されてもよく、加えられた駆動トルク値が、駆動トルクの許容可能な最大増加率のたとえば10%、20%、または30%以内の値に達する。他の所与の範囲も同様に有用である。
【0072】
制御手段は、少なくとも1つの駆動輪に現時点で加えられているトルク値と駆動トルクの最大許容値との間の差異が小さくなるとき、所定の許容可能な最大増加率が低減するように、駆動トルクの増加率を所定の最大値に制限するように動作可能であってもよい。
【0073】
すなわち所定の許容可能な最大増加率は、少なくとも1つの駆動輪に現時点で加えられているトルク値と駆動トルクの最大許容値との間の差に応じて変動する値であってもよく、たとえばその差に比例する値であってもよい。択一的には、所定値は固定値であってもよく、少なくとも1つの駆動輪に現時点で加えられているトルク値と駆動トルクの最大許容値との間の差が、所定値より小さくなったときに、制限が加えられる。他の構成も同様に有用である。
【0074】
制御手段は、ホイールスリップ値を決定するともに、決定したホイールスリップ値が、車輪に加えられた現時点での駆動トルク値に対して車輪と走行路面との間の摩擦係数の現時点で記憶された値と一致するか否かを判断するように構成され、制御手段は、不一致が確認された場合、摩擦係数の現時点で記憶された値を更新するように構成されてもよい。
【0075】
すなわち理解されるように、制御手段は、ホイールスリップ値の決定に呼応して(たとえば車輪速度と車両速度の測定値に応じて、または制御手段が出力するホイールスリップ値を用いて)、制御手段が利用する表面μの値、および車輪に加わるトルク値を更新してもよい。この特徴は、表面μの値が変化した場合、たとえば走行路面が乾いたアスファルトからアイス路面に変わった場合(またはその逆の場合)、所与の負荷トルクに対するホイールスリップ値の予期しない変化が生じたとき、これに応じて制御手段は表面μの値を更新することができる。
【0076】
たとえば車両がアイス路面から乾いたアスファルトへ移動した場合、制御手段は、車両が乾いたアスファルト上を走行しているときに、車輪のアイス路面に対する表面μの値を適用して予想されるホイールスリップ値を決定し、制御手段は、ホイールスリップ値が予想される値より小さいと判断すると、それに応じて表面μの値を更新してもよい。
【0077】
任意的には、制御手段は、制御手段の所定の動作モードが選択された場合にのみ、ホイールスリップ値が所定値を超えることを防止するために、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を制限するように動作可能であってもよい。
【0078】
すなわち上述の機能は、所定の動作モードが選択された場合にのみ実行される。
【0079】
制御手段は、対応する選択信号を受信した場合、所定の動作モードを選択するように動作可能であってもよい。
【0080】
所定の動作モードは、たとえば発進モードに相当するものであってもよい。
【0081】
本発明に係るさらなる態様によれば、上記態様による制御手段を備えた車両用パワートレインコントローラが提供される。
【0082】
車両用パワートレインコントローラに制御手段を組み合わせることにより、制御手段から出力される制御信号に対するパワートレインの応答速度を実質的に増大させることかできる。さもなければ、いくつかの実施形態では、制御手段は、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス等の通信チャンネルを介してパワートレインコントローラに制御信号を送信する必要があり、制御手段による通信信号の出力とパワートレインコントローラによる通信信号の入力との間で遅延が生じ得る。いくつかの実施形態では、この遅延は、パワートレインコントローラの一部として制御手段を提供することにより、実質的に解消することができる。
【0083】
保護を受けようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、上記態様による制御手段を備えた車両が提供される。
【0084】
好都合にも、この車両は、制御手段の所定の動作モードを選択するためのドライバ操作可能セレクタを備えてもよい。
【0085】
このドライバ操作可能セレクタは、たとえば上述のような発進モードであってもよい。
【0086】
制御手段は、少なくとも1つの推進モータから少なくとも1つの車輪に加わる駆動トルク値を低減することにより、ホイールスリップ値が過剰な所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能であってもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、クラッチ手段の切断またはクラッチ手段の滑り(スリップ)により、負荷トルク値を低減することができる。
【0088】
択一的にまたは追加的に、制御手段は、ホイールスリップ値が所定値を超えることを防止するために、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に制動手段を設けることにより、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加わる駆動トルク値を制限するように動作可能であってもよい。
【0089】
さらに択一的にまたは追加的に、制御手段は、ホイールスリップ値が所定値を超えることを防止するために、車両の少なくとも1つの推進モータにより生成される駆動トルク値を低減することにより、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加わる駆動トルク値を制限するように動作可能であってもよい。
【0090】
車両は、駆動されるように構成された一対の前輪と、駆動されるように構成された一対の後輪とを備えてもよい。
【0091】
任意的には、駆動されるように構成された1つまたはそれ以上の車輪のそれぞれが個別の推進モータを有する。
【0092】
任意的には、1つまたはそれ以上の推進モータのそれぞれが電気推進モータを有する
【0093】
理解されるように、電機推進モータは、比較的に大きなトルク値を出力することができるので、本発明に係る実施形態は、車両の2つ、3つ、4つまたはそれ以上の車輪に個別の電気推進モータが設けられている用途において特に適している。
【0094】
いくつかの実施形態では、制御手段により採用された車両速度が実際の車両速度に対応するか否か確認するために、車両速度チェックを実行するように構成してもよい。制御手段は、駆動されるように構成された1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルク値を低減し、その後に車輪速度を測定することにより、速度チェックを実行してもよい。いくつかの実施形態では、トルク値の低減に伴い、車輪速度が低下しなくなるまで、トルク値を低減してもよい。いくつかの実施形態では、トルク値の低減に伴う車輪速度の低下率が、所定値より小さくなるまで、トルク値を低減してもよい。他の構成も同様に有用である。この制御手法は、車両速度を検証するために利用できるものであるが、英国特許出願第1210273.7号に記載され、その内容はここに参考に一体のものとして統合される。
【0095】
保護を受けようとする本発明に係る別の態様によれば、制御手段を用いて、走行路面上の車両の動作を制御する方法が提供され、この方法は、ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を所定値に制限するステップを有する。
【0096】
保護を受けようとする本発明に係る態様によれば、走行路面上の車両の動作を制御する制御手段が提供され、この制御手段は、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を、最大牽引力が得られる値に相当する値に制限するように動作可能である。
【0097】
保護を受けようとする本発明に係るさらなる態様によれば、走行路面上の車両の動作を制御する制御手段が提供され、この制御手段は、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を、最大牽引力が得られる値より所定の比率だけ大きい値に制限するように動作可能である。
【0098】
所定の比率は、最大値の10%、20%、30%、40%、または50%のうちから選択された1つであってもよい。他の値も同様に有用である。
【0099】
この特徴は、牽引力を低下させるのに十分な値になるまでホイールスリップ値を増大させ、(いくつかの実施形態では)制御手段により採用されている現時点での表面摩擦係数が実質的に正確であるか否か、より簡便に検証できるように制御手段を構成できる、という点で有利である。上記説明したように、制御手段は、加えられた駆動トルクの関数として車輪スリップ値をモニタし、制御手段が車輪スリップと加えられた駆動トルクとの関係において不一致が存在すると判断した場合の車輪と路面との間の摩擦係数を更新することができる。いくつかの実施形態では、制御手段は、採用される現時点での摩擦係数値を点検するために、(たとえば加速度計により測定された)車両加速度等の1つまたはそれ以上のパラメータを、ホイールスリップまたは加えられた駆動トルクと関連付けてもよい。
【0100】
保護を受けようとする本発明に係る別の態様によれば、動力車両が提供され、この動力車両は、これを駆動する駆動トルクを生成する少なくとも1つの推進モータと、走行路面上の車両の動作を制御するための制御手段とを備え、この制御手段は、
1つまたはそれ以上の駆動輪の許容可能なスリップの最大値を推定し、かつ
1つまたはそれ以上の駆動輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能である。
【0101】
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明した特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
添付図面を参照しながら、単なる一例としてのみ、本発明に係る実施形態について以下説明する。
図1】本発明に係る実施形態による車両の概略図である。
図2】車両を制御する方法を示すフローチャートである。
図3】車輪に対するトルク負荷による車両加速度をもたらす有用な縦方向の力である「対路面力」に比例する「対路面トルク」をホイールスリップ(路面速度に対する車輪速度の比である)の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、本発明に係る実施形態による四輪駆動車100を示す。この車両は、4つの車輪111,112,113,114を備え、各車輪は、個々の電気推進モータ111M,112M,113M,114Mにより駆動されるように構成されている。この車両は、それぞれの電気推進モータから各車輪111,112,113,114に出力されるトルク値を制御するように構成されたコントローラ140を有する。バッテリ150は、電気推進モータ111M,112M,113M,114Mを駆動するための電力を供給する。
【0104】
コントローラ140は、アクセルペダル181の位置に呼応して、車両のドライバが要求するように車両を走行させるために、各車輪111,112,113,114に出力される駆動トルク値を決定するように動作可能である。アンチロックブレーキシステム(ABS)コントローラ161は、ドライバのブレーキペダル183の位置に呼応して車両の制動力を制御するように構成されている。
【0105】
ドライバのトルク要求に応答して、コントローラ140は、各電気推進モータ111M,112M,113M,114Mによりそれぞれの車輪に出力される駆動トルク値を制御するように構成されている。コントローラ140は、各車輪111,112,113,114に過剰なトルクが負荷されることにより生じるホイールスリップのリスクを低減するために、フィードフォワード(先行予測式)制御手法を実行するように動作可能である。理解されるように、いくつかの路面では、ドライバが要求されたトルク全量を負荷することをコントローラ140が許容するならば、ドライバは車輪スピンを引き起こすトルク値を要求する可能性がある。
【0106】
図2は、フィードフォワード制御手法を実施する車両動作中、コントローラ140が実行する一連のステップをかなり概略化して示すものである。理解されるように、これらのステップは、図示されたステップの前後または最中に、1つまたはそれ以上の他のステップととともに実行してもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、車両の走行中はいつでも、これらのステップは実行される。いくつかの実施形態では、発進制御モード、スポーツモード、および/または1つまたはそれ以上の他のモード等の特定の車両モードでのみ実行される。
【0108】
ステップS101において、コントローラ140は、アクセルペダル位置に基づいてドライバ要求トルク(Tq dd)を決定する。いくつかの実施形態では、コントローラ140は、アクセルペダル位置に加え、エンジンを有する実施形態ではエンジン速度等の1つまたはそれ以上の他のパラメータを採用して、ドライバ要求トルク(Tq dd)を決定する。いくつかの実施形態では、たとえばエンジンを有する車両の場合のエンジンコントローラ等の別のコントローラにより決定されたドライバ要求トルク(Tq dd)を、コントローラ140に供給してもよい。
【0109】
理解されるように、いくつかの実施形態では、速度制御システムがアクティブである(動作中である)とき、むしろクルーズコントロールシステムまたはオフロード速度制御システム等の速度制御システムからの要求トルク信号が採用される。オフロード速度制御システムは、ホイールスリップが起こるにも関わらず目標速度に基づいて車両速度を制御するように動作可能であってもよい。オフロード速度制御システムは、いくつかの実施形態では、低速時の速度制御システムとも呼ばれる。オフロード速度制御システムは、たとえば30km/時〜60km/時の範囲の速度、任意的には50km/時程度の速度等、所定速度以下でのみ動作可能である。他の構成も同様に有用である。
【0110】
ステップ103において、コントローラ140は、現時点での走行路面に対して車輪が許容できる最大許容可能スリップの推定値(slip max)を決定する。各車輪と車両100が走行している路面との間の摩擦係数(「表面μ」ともいう。)の現在値を用いて、推定値を決定する。
【0111】
理解されるように、コントローラ140は、1より小さい値がより適当であると判断しない限り、その値は(乾燥したアスファルトに対応して)1であるとの推定に基づいて表面μの現時点での値を決定するように構成してもよい。コントローラ140は、たとえば車両の縦方向加速度、横方向加速度、車輪速度、および車輪に負荷される正味トルクのうちの1つまたはそれ以上の所与の値に対して、こうした路面上で予想されるものを超えるホイールスリップを検出したこと応じて、より小さい値が適当であると判断してもよい。
【0112】
図3は、表面μ(μ)および車両速度(s)の所与の値に対するホイールスリップの摩擦力の関数としての対路面トルクのグラフである。(対路面トルクとは異なり、縦方向加速度を発生させる有用なトルクである)車輪に加えられるトルク値は、図に示すようにホイールスリップとともに増大する。最大値(Tq max)に達するまで、ホイールスリップ量が増大するほど、車両のピーク駆動力に対応する有用な対路面トルク値は増大する。図から明らかなように、車輪に加えられるトルク値がさら増大すると、ホイールスリップの値は増大するが、車両に作用する駆動力は減少する。理解されるように、ホイールスリップの関数としての車輪トルクは、(たとえばタイヤと走行中の路面による)車輪と走行中の路面との間の摩擦係数、および車両速度に依存する。
【0113】
上述のようにステップS103において、コントローラ140は、現時点での表面μと車両速度に応じてトルク最大値(Tq max)に対応する値であるスリップ最大値(slip max)を決定する。いくつかの実施形態では、スリップ値(slip max)は、たとえば1つまたはそれ以上のルックアップテーブルを参照することにより決定してもよい。
【0114】
ステップS105において、コントローラ140は、ドライバ要求トルク(Tq dd)の現時点での値が過剰なホイールスリップを発生させるのに十分に大きいか否か判断する。この実施形態では、コントローラ140は、ドライバ要求トルク(Tq dd)に実質的に等しい出力値を決定する。さらにこの実施形態では、過剰なホイールスリップが、スリップ最大値(slip max)を超えるものとして定義される。したがってコントローラ140は、対路面トルク値に対応する値、トルク最大値(Tq max)を決定することができる。
【0115】
そしてコントローラ140は、ドライバの要求に応えるために加える必要があるトルク値が、各車輪に対するトルク最大値(Tq max)の現時点での値を超えるか否か判断する。いくつかの実施形態では、コントローラ140は、ルックアップテーブルを参照して、スリップ最大値(slip max)を決定した後、そのスリップ最大値(slip max)を用いるか、中間ステップとしてスリップ最大値(slip max)を決定することなく、直接的にトルク最大値(Tq max)を決定するように構成してもよい。
【0116】
理解されるように、所与の車輪に対するトルク最大値(Tq max)は、車輪に負荷される重量に依存するので、それぞれの車輪に対してトルク最大値(Tq max)が異なることがある。車両が加速している場合、車両の前輪より後輪により大きな重量が負荷される車両において、前輪に比して後輪のトルク最大値(Tq max)がより大きくなることが想定される。いくつかの実施形態では、コントローラ140は、トルク最大値(Tq max)が1つまたはそれ以上車輪に対して過剰であるか否かを判断する際、こうした状況変化を参酌するように構成されている。いくつかの実施形態では、コントローラ140は、車両が加速中である場合に後輪に負荷される重量が、車両が加速中でない場合に比して増大すると推定してもよい。コントローラ140は、追加的にまたは択一的に、車両が加速中である場合の車両の前輪に負荷される重量が車両の加速中でない場合に比して減少すると推定してもよい。
【0117】
ドライバ要求トルク(Tq dd)の現時点での値が任意の駆動輪111,112,113,114の過剰なホイールスリップを発生させるのに十分ではない場合(所与の車輪に加えられるトルク値が当該車輪のトルク最大値(Tq max)を超えない場合)、コントローラ140は、ドライバ要求トルク(Tq dd)の現時点での値を、各車輪111,112,113,114に出力して、ステップS101を続行する。
【0118】
いくつかの実施形態では、コントローラ140は、車輪111,112,113,114の中でトルクを、任意の車輪に対してトルク最大値(Tq max)を超えるリスクを低減するような最適な手法で分配するように構成してもよい。
【0119】
ステップS105において、コントローラ140が各車輪に対してドライバ要求トルク(Tq dd)の現時点での値に対応するトルクを出力したとすれば、ドライバ要求トルク(Tq dd)の現時点での値がその車輪の過剰なホイールスリップを発生させるのに十分であるとコントローラ140が判断した場合、コントローラ140は、車輪111,112,113,114に出力されるトルク値を制限して、スリップ最大値(slip max)未満のトルクが出力されるように構成される。
【0120】
ステップS109において、コントローラ140は、これにより測定された各車輪111,112,113,114の実際のスリップ値が、現時点での表面μの推定値と一致するか否か判断する。これらの値が一致する場合、コントローラ140はステップS101を続行する。
【0121】
これらの値が一致しない場合、ステップS111において、コントローラ140は、表面μの修正推定値を計算する。そしてコントローラ140はステップS101を続行する。
【0122】
いくつかの実施形態では、(車輪に加えるトルク値をトルク最大値(Tq max)に対応する値に制限することにより)各車輪のスリップ値をスリップ最大値(slip max)に制限する代わりに、コントローラ140は、スリップ値をスリップ最大値(slip max)より小さい値に制限し、またはいくつかの他の実施形態では、スリップ値をスリップ最大値(slip max)より大きい値に制限するように構成してもよい。
【0123】
コントローラ140は、スリップ値をたとえばスリップ最大値(slip max)より10%大きい値に制限するように構成してもよい。この特徴は、走行中の路面と車輪との間の実際の摩擦係数が現時点で推定された値より大きい状況が、より迅速にコントローラ140で特定される点において有用である。
【0124】
この実施形態において、コントローラ140は、ホイールスリップの現時点での値が、表面μの現時点での推定値および車両速度に対して推定される値に対応するか否か反復的にチェックするように構成されている。ホイールスリップ値がスリップ最大値(slip max)より大きい値に制限された場合、車輪に加えられたトルク値がトルク最大値(Tq max)を超えるが、ホイールスリップ値がスリップ最大値(slip max)に達していないとき、コントローラ140は、表面μの実際の値または現在の値が現時点手の推定値より大きいと判断してもよい。したがってコントローラ140は、こうした食い違い(不一致)を是正するステップを取ることができる。いくつかの実施形態では、コントローラ140は、継続的に、より大きなトルク値を車輪に加えられることができ(これはドライバ要求トルクに合致させる上で好ましい。)、対応する車輪スリップ値をチェックして、その値がスリップ最大値(slip max)に達したか否か見極めることができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、表面μの値に食い違い(不一致)があったことが確認されると、コントローラ140は、採用した表面μの値があまりにも小さいか、あまりにも大きいかに依存して、表面μの値を所定の値だけ増加(インクリメント)または減少(デクリメント)させるように構成してもよい。所定の値は、たとえば0.1、0.05、0.01、または任意の他の適当な値であってもよい。コントローラ140は、現時点での推定値があまりにも小さい(あまりにも大きい)と再び判断するまで、この修正値を採用すべき値として維持してもよい。
【0126】
この実施形態では、コントローラ140は、車両のパワートレインにより車輪に加えられるトルク値がスリップ最大値(slip max)未満の値に応じたトルク値に相当すると推定するように構成される。その他の構成も同様に有用である。
【0127】
理解されるように、本発明に係る実施形態は、車両100が過剰なホイールスリップの問題を被るリスクを低減するためにフィードフォワード制御手法を実行する。上述のように、たとえば急加速操作を行っているとき、または表面μの値が小さい路面を走行しているとき、過剰なホイールスリップが生じることがある。こうした制御手法を実行する車両は、休止状態からの加速時、ホイールスリップを実質的に低減することができ、改善された性能特性を備える。
【0128】
また本発明に係る実施形態は、上述のように、路面応答モード等のさまざまな運転操作モードで動作可能な車両に実施するのに適している。車両のコントローラ140または他のコントローラのような車両コントローラは、既知の地形応答(TR)(RTM)システムまたはコントローラを具現化するように構成してもよい。このときコントローラ140は、選択された運転操作モードに依存して、車両システム、またはパワートレインコントローラ、ABSコントローラ161、サスペンションシステムコントローラ(具備する場合)、および/または他の車両サブシステム等のサブシステムうちの1つまたはそれ以上のものの設定値を制御してもよい。
【0129】
運転操作モードは、運転モードセレクタスイッチまたは他のコントローラを用いて選択してもよい。運転操作モードは、地形モード、地形応答モード、または制御モードとして参照してもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、少なくとも4つの運転操作モード、すなわち比較的に硬く、滑らかな走行路面であって、走行路面と車両の車輪との間の表面摩擦係数が比較的に大きい走行路面上の走行に適した「ハイウェイ」運転モード、砂地地形上の走行に適した「砂地」運転モード、草地、砂利道、または雪道上の走行に適した「草地/砂利道/雪道」運転モード、岩石表面上の徐行走行に適した「岩肌および砂地」運転モード、および泥わだち地形上の走行に適した「泥わだち」運転モードが提供されてもよい。追加的にまたは択一的に、他の運転モードが提供されてもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、自動運転モード選択状態で車両を動作させることができ、このとき車両は、現在走行中の地形に対して最も適当な運転モードを自動的に選択するように構成される。車両は、その動作と状態に関連する広範でさまざまなパラメータを検出するためのセンサ(図示せず)を備えていてもよい。それらは、乗員拘束システムの一部または車両本体の動作を示すデータを必要とする任意の他のサブシステムの形態を有するシステムであってもよく、たとえばジャイロおよび/または加速度計を含む慣性システムであってもよい。センサからの信号を用いて、車両が走行している地形の状態の特徴を示す運転状況指標(地形指標)を提供または計算してもよい。
【0132】
これらのセンサは、これに限定するものではないが、連続的なセンサ信号をVCU10へ出力してもよく、図1を参照して上記説明した車両速度センサ、周囲温度センサ、大気圧センサ、タイヤ圧センサ、車輪サスペンションセンサ(wheel articulation sensors)、車両のヨーイング角、ローリング角、ならびにピッチング角、およびこれらの変化率を検出するジャイロセンサ、車両速度センサ、縦方向加速度センサ、エンジントルクセンサ、ステアリング角度センサ、ステアリングホイール速度センサ、勾配センサ(勾配推定装置)、安定制御システム(SCS)の一部を構成する横方向加速度センサ、ブレーキペダル位置センサ、ブレーキ圧センサ、アクセルペダル位置センサ、縦・横・垂直モーションセンサ、水検出センサ、および車両浸水支援システムの一部を構成する浸水検出センサを含む。
【0133】
コントローラ140は、ステアリングコントローラからの信号を受信してもよい。ステアリングコントローラは、電動アシストステアリングユニット(ePASユニット)の形態を有していてもよい。ステアリングコントローラは、車両のステアリング可能な車輪111,112に加えられるステアリング力を示す信号をコントローラ140に出力するように構成してもよい。このステアリング力は、ユーザがステアリングホイール171に加える力と、ePASユニットにより形成されるステアリング力とを組み合わせた力に相当する。
【0134】
コントローラ140は、さまざまなセンサ入力信号を評価して、車両のサブシステムに対する複数の異なる運転モードのそれぞれが適当である確度を決定してもよい。
【0135】
ユーザが車両の運転モードを自動運転モード選択状態に選択した場合、コントローラ140は、複数の制御モードのうち最も適当なものを選択し、選択されたモードに基づいてサブシステムを自動的に制御するように構成してもよい。この態様は、同時係属している英国特許出願第1111288.5号、第1211910.3号、および第1202427.9号にさらに詳細に記載され、その開示内容は、ここに参考として一体のものとして統合される。
【0136】
コントローラ140は、ホイールスリップ値が所定値を超えないように駆動される車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えることができる駆動トルクの最大許容可能値を決定するように動作可能であり、所定値は、少なくとも車両速度と、車両100が運転される運転モードに少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0137】
たとえばいくつかの実施形態では、車両がハイウェイ運転で最適なモードで運転されている場合(すなわち比較的に滑らかな路面であって、車両の車輪111,112,113,114との表面摩擦係数が比較的に大きい路面上を走行するのに最適なモードで運転されている場合)、駆動トルクの最大許容可能値は車両速度に応じてより高い値となる傾向がある(最大許容可能値は速度とともに増大する傾向がある。)。
【0138】
対照的に、いくつかの実施形態では、車両が草地/砂利道/雪道上を走行する上で最適なモードで運転されている場合(すなわち比較的に滑らかな路面であって、車両の車輪111,112,113,114との表面摩擦係数が比較的に小さい路面上を走行するのに最適なモードで運転されている場合)、駆動トルクの最大許容可能値は、ハイウェイ運転モードでの運転に採用される最大許容可能値より小さくなる(いくつかの択一例では、より高くなる)ように設定される。同様に、駆動トルクの最大許容可能値は速度とともに増大する傾向がある。
【0139】
いくつかの実施形態では、駆動トルクの最大許容可能値は、1つまたはそれ以上複数の車両パラメータ、および運転モードに採用される特定パラメータに基づいて計算してもよい。たとえば車両がハイウェイ運転モードで運転されている場合、駆動トルクの最大許容可能値は、車両速度のみに依存して決定してもよい。対照的に、車両が草地/砂利道/雪道の運転モードで運転されている場合、駆動トルクの最大許容可能値は、車両速度と、走行路面と車両の車輪との間の表面摩擦係数の現時点での値とに基づいて決定してもよい。コントローラ140は、リアルタイムで更新された表面摩擦係数の現時点での値が出力される。リアルタイムの更新値は、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスまたは任意の他の適当な手段を介して出力される。
【0140】
理解されるように、ハイウェイ運転中に動作させる場合、コントローラ140は、表面摩擦係数の値が実質的に1である、または1に近いと仮定してもよい。同様に、追加的または択一的に、1つまたはそれ以上の他のモードに対して、実質的に固定された表面摩擦係数の値を採用してもよい。
【0141】
この実施形態では、コントローラ140は、スリップの最大許容可能値が表面摩擦係数とともに低減させるように構成してもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、コントローラ140は、車両が受ける表面抵抗の値を示すパラメータに依存して所定のスリップ値を計算するように構成してもよい。理解されるように、草地、砂利道、雪道、または砂道等の所定の比較的に柔らかい地形における表面摩擦抵抗は、アスファルト等の比較的に硬く、滑らかな路面から受ける表面抵抗より大きい。コントローラ140は、表面抵抗が増大するにつれて、ホイールスリップの最大許容可能値が増大するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、最大許容可能値は表面抵抗とともに増大してもよい。いくつかの実施形態では、ホイールスリップの最大許容可能値は、砂地モードでの走行において、草地/砂利道/雪道モードに比較して、より大きくてもよい。
【0143】
上述のように、本発明の実施形態は、オフロードおよびオンロード(すなわちハイウェイ)の地形状況における運転する際、実質的に改善された性能特性が得られるという利点を有する。本発明に係るいくつかの実施形態によれば、さまざまなタイプの地形において静止状態から加速するときに車両が受けるホイールスリップを、既知の車両が同様の地形から受けるホイールスリップに比して実質的に低減することができる。
【0144】
本発明に係る実施形態は、以下の番号が付与された段落を参照して理解することができる。
【0145】
段落1:路面上の車両の動作を制御するための制御システムであって、
ホイールスリップ値が所定値を超えないように所定のトルク値で駆動するように構成された車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を制限するように動作可能であり、
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度に少なくとも部分的に基づいて決定される、制御システム。
【0146】
段落2:ホイールスリップ値の所定値が、車輪と路面との間の摩擦係数に少なくとも部分的に基づいて決定される、段落1に記載の制御システム。
【0147】
段落3:ホイールスリップ値の所定値が、車両が受ける表面抵抗に少なくとも部分的に基づいて決定される、段落1に記載の制御システム。
【0148】
段落4:ホイールスリップ値の所定値が、車両速度のみに基づいて決定される、段落1に記載の制御システム。
【0149】
段落5:トルクの所定値が、車両速度および車輪と路面との間の摩擦係数のみに基づいて決定される、段落2に記載の制御システム。
【0150】
段落6:制御システムは、複数のそれぞれ異なる運転モードのうちの1つの運転モードで動作可能であり、
ホイールスリップ値の所定値が、車両速度、および任意的には制御システムが動作している運転モードに応じた1つまたはそれ以上のパラメータを参照して決定される、段落1に記載の制御システム。
【0151】
段落7:ホイールスリップ値の所定値が、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値として実質的に定義される、段落1に記載の制御システム。
【0152】
段落8:ホイールスリップ値の所定値が、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値の所定の比率に実質的に相当する、段落1に記載の制御システム。
【0153】
段落9:所定の比率は、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの前記値より小さい値に相当する、段落8に記載の制御システム。
【0154】
段落10:所定の比率は、70%以上であるが90%未満の範囲か、または90%以上であるが100%未満の範囲である、段落8に記載の制御システム。
【0155】
段落11:所定の比率は、車両を駆動させる牽引力の最大値が得られるときの値より大きい値に相当する、段落8に記載の制御システム。
【0156】
段落12:所定の比率は、100%より大きいが110%以下の範囲か、110%より大きいが120%以下の範囲か、または120%より大きいが130%以下の範囲である、段落11に記載の制御システム。
【0157】
段落13:加えられた駆動トルクの値が所定値に向かって増大するとき、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能である、段落1に記載の制御システム。
【0158】
段落14:少なくとも1つの駆動輪に加えられる現時点での駆動トルク値と駆動トルクの所定値との差が小さくなるほど、最大許容可能な増加率が小さくなるように、加えられた駆動トルクの増加率を所定の最大値までに制限するように動作可能である、段落13に記載の制御システム。
【0159】
段落15:ホイールスリップ値を決定するともに、決定したホイールスリップ値が、車輪に加えられた現時点での駆動トルク値に対して車輪と走行路面との間の摩擦係数の現時点で記憶された値と一致するか否かを判断するように構成され、不一致が確認された場合、摩擦係数の現時点で記憶された値を更新するように構成された、段落1に記載の制御システム。
【0160】
段落16:制御システムの所定のトルク制限動作モードが選択された場合のみ、ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えられる駆動トルク値を所定値までに制限するように動作可能である、段落1に記載の制御システム。
【0161】
段落17:対応する選択信号を受信した場合のみ、所定のトルク制限動作モードを選択するように動作可能である、段落16に記載の制御システム。
【0162】
段落18:車両の少なくとも1つの推進モータから少なくとも1つの車輪に伝わる駆動トルク値を低減して、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能である、段落1に記載の制御システム。
【0163】
段落19:複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に制動力を加えて、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能である、段落1に記載の制御システム。
【0164】
段落20:車両の少なくとも1つの推進モータにより生成される駆動トルク値を低減して、ホイールスリップ値が少なくとも部分的に所定値を超えないように、複数の駆動輪のうちの少なくとも1つの車輪に加えられるトルク値を制限するように動作可能である、段落1に記載の制御システム。
【0165】
段落21:段落1に記載の制御システムを備えた車両用パワートレインコントローラ。
【0166】
段落22:段落1に記載の制御システムを備えた車両。
【0167】
段落23:制御システムの所定のトルク制限動作モードを選択するためのドライバ操作可能セレクタを備えた、段落22に記載の車両。
【0168】
段落24:駆動されるように構成された一対の前輪と、駆動されるように構成された一対の後輪とを備えた、段落22に記載の車両。
【0169】
段落25:駆動されるように構成された1つまたはそれ以上の車輪のそれぞれが個別の推進モータを有する、段落22に記載の車両。
【0170】
段落26:1つまたはそれ以上の推進モータのそれぞれが電気推進モータを有する、段落25に記載の車両。
【0171】
段落27:制御システムを用いて、走行路面上の車両の動作を制御する方法であって、
ホイールスリップ値が所定値を超えないように、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を所定値に制限するステップと、
少なくとも部分的に車両速度に依存してホイールスリップ値の所定値を決定するステップとを有する、方法。
【0172】
段落28:走行路面上の車両の動作を制御する方法であって、
制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を、最大牽引力が得られる値に制限するように動作可能である、方法。
【0173】
段落29:走行路面上の車両の動作を制御する制御システムであって、
車両の1つまたはそれ以上の駆動輪に加わる駆動トルク値を、最大牽引力が得られる値より所定の比率だけ大きい値に制限するように動作可能である、制御システム。
【0174】
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、「備える(comprise)」および「含む(contain)」の用語、およびこれらの用語から派生した「備えた(comprising)」および「備え(comprises)」の用語は、「これらに限定することなく有する」という意味であり、その他の部分、付随物、成分、整数、またはステップを排除することを意図したものではない。
【0175】
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、単数形は、文脈上要求されるものでなければ、複数形のものを含む。特に、不定冠詞を用いた場合には、文脈上要求されるものでなければ、単数形のみならず、複数形のものを含むものと理解すべきである。
【0176】
本発明に係る特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明した特徴物、整数、特性、成分、化学成分、または化学塩基は、矛盾するものでなければ、任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であるものと理解すべきである。
図1
図2
図3