特許第6290192号(P6290192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290192ルミネセンス部分を含むポリマを用いた照明デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290192
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ルミネセンス部分を含むポリマを用いた照明デバイス
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20180226BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180226BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20180226BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180226BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20180226BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180226BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180226BHJP
【FI】
   F21S2/00 100
   H05B33/14 A
   H05B33/12 E
   H01L33/50
   F21S2/00 216
   F21V9/16 100
   C09K11/06 680
   F21Y115:10
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-515620(P2015-515620)
(86)(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公表番号】特表2015-530692(P2015-530692A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】IB2013054561
(87)【国際公開番号】WO2013182968
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年6月2日
(31)【優先権主張番号】61/657,310
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒクメット リファット アタ ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】バン ボメル ティエス
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0068322(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/042438(WO,A1)
【文献】 特開2010−056398(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/073871(WO,A2)
【文献】 特表2010−532910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00−19/00
F21V 1/00−15/04
H01L33/00
H01L33/48−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光源光を生成する光源及び(b)変換体を有する照明デバイスであって、前記変換体は第1のポリマのマトリクスを有しており、前記マトリクスはルミネセンス機能を持つ第2のポリマを有する離散的領域を含み、前記第2のポリマが有機染料のルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを有し、前記第1のポリマが前記芳香族ポリエステルとは化学的に異なり、前記変換体が前記光源に放射結合され、前記ルミネセンス部分の1つ以上が前記芳香族ポリエステルの骨格の一部であり、及び/又は前記ルミネセンス部分の1つ以上が前記芳香族ポリエステルの骨格に化学的に結合された、当該照明デバイス。
【請求項2】
前記ルミネセンス部分の1つ以上がペリレン基を有する、請求項1記載の照明デバイス。
【請求項3】
前記第1のポリマが、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PS(ポリスチレン)及びPC(ポリカーボネート)より成る群から選択されるポリマを有し、前記芳香族ポリエステルが、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)に基づく、請求項1又は2記載の照明デバイス。
【請求項4】
前記ルミネセンス部分を有する前記芳香族ポリエステルが、線状ポリマ、分岐ポリマ、架橋ポリマ、星形ポリマ、デンドリマ、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びターポリマより成る群から選択される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項5】
前記離散的領域が、前記変換体の体積の0.5ないし50体積%の範囲内を占める、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項6】
前記第2のポリマにおける前記ルミネセンス部分の含量が10重量%以下である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項7】
前記光源が固体光源を有し、前記ルミネセンス部分の1つ以上がペリレン基を有し、前記第1のポリマがPMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PS(ポリスチレン)及びPC(ポリカーボネート)より成る群から選択されるポリマを有し、前記芳香族ポリエステルが、PET(ポリエチレンテレフタレート)に基づく又はPEN(ポリエチレンナフタレート)に基づく、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の照明デバイス。
【請求項8】
第1のポリマのマトリクスを有し、光をルミネセンスに変換する変換体であって、前記マトリクスはルミネセンス機能を持つ第2のポリマを有する離散的領域を含み、前記第2のポリマが有機染料のルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを有し、前記ルミネセンス部分の1つ以上が前記芳香族ポリエステルの骨格の一部であり、及び/又は前記ルミネセンス部分の1つ以上が前記芳香族ポリエステルの骨格に化学的に結合され、前記第1のポリマが前記芳香族ポリエステルとは化学的に異なる、当該変換体。
【請求項9】
前記第1のポリマが、400ないし700nmの波長範囲で5%/mm未満の吸収を有するポリマである、請求項8記載の変換体。
【請求項10】
(a)有機染料のルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルであって、前記ルミネセンス部分の1つ以上が前記芳香族ポリエステルの骨格の一部であり、及び/又は前記ルミネセンス部分の1つ以上が前記芳香族ポリエステルの骨格に化学的に結合される当該芳香族ポリエステルと、前記芳香族ポリエステルとは化学的に異なる第1のポリマとを与えるステップと、(b)前記有機染料の前記ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを前記第1のポリマに交ぜるステップと得られた生成物を成形するステップとを有する、変換体を与える方法。
【請求項11】
前記ルミネセンス部分を有する前記芳香族ポリエステルが、ルミネセンス部分を有する架橋芳香族ポリエステルである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ルミネセンス部分を有する前記芳香族ポリエステルを前記第1のポリマに交ぜるステップと、得られた生成物を成形変換体に成型するステップとを有する、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記ルミネセンス部分を有する前記芳香族ポリエステル及び前記第1のポリマを成形変換体に成型するステップを有する、請求項10ないし12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源光を生成する光源及び(光源光の少なくとも一部をルミネセンスに変換する)変換体(converter)を有する照明デバイス、そのような変換体自体並びにそのような変換体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリクス中のルミネセンス材料は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許出願公開US2006055316号公報には、サブピクセル構造を有するカラールミネセンスディスプレイ及びその製造方法が記載されている。上記サブピクセル構造は、青色光を発するエレクトロルミネセンス蛍光体と、青色光の吸収の結果として少なくとも1つの他の色を発するフォトルミネセンス蛍光体とを有している。米国特許出願公開US2006055316号公報には、そのようなフォトルミネセンス蛍光体材料も記載されている。例えば、この文献は、マトリクス材料中に顔料粉末の均一な分散を与えるように顔料粉末とマトリクス材料とを混合することを有するフォトルミネセンス蛍光体材料を作製する方法について説明しており、上記顔料の材料は有機フォトルミネセンス分子の固溶体を有しており、上記マトリクス材料は、有機フォトルミネセンス分子のフォトルミネセンス効率がほぼ維持されるように顔料粉末と化学的及び物理的に相溶性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機蛍光体は、現在、リモート蛍光体の用途に考えられている。有機蛍光体に関連する問題の1つは、有機蛍光体の安定性と関連している。我々は、驚くべきことに、芳香族ポリエステルであるPET(ポリエチレンテレフタレート)及びPEN(ポリエチレンナフタレート)のようなポリマ内では、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PS(ポリスチレン)及びPC(ポリカーボネート)のような他の熱可塑性ポリマと比較して、有機蛍光体が空気中で大きく増加した安定性を示すことを見出した。
【0004】
幾つかの用途では、そのようなリモート蛍光体要素の射出成形部品を用いることが望ましい。しかしながら、芳香族ポリエステルに関連する問題の1つは、PET層又はPEN層のような芳香族ポリエステル層の厚さが射出成形でよく用いられる数mmのオーダーである場合にかなり大きくなるスペクトルの青色部分の残りの吸収(rest absorbance)であるように思われる。これは、部品の効率の低下を招いてしまう。
【0005】
この問題を解決するために、我々は、染料がポリエステル相に配され、他の相が光、特に目に見えない光の吸収を(実質的に)示さないポリマよりなる非相溶性ポリマ混合物の使用を提案する。第1のポリマは、特に、芳香族ポリエステルではない(及び、それによって、芳香族ポリエステルと非相溶性である)。
【0006】
しかしながら、多くのルミネセンス染料分子は、この目的のために用いられ得る大部分のポリマに溶解可能であり、従って、処理中、ポリエステルを離れ、短い寿命を示す他の相に入ると思われる。これは、現れる寿命が他の相により決定され、芳香族ポリエステル層の相により決定されないので望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の第1の観点は、好ましくは上述した欠点の1つ以上を更に少なくとも部分的に取り除く代替の照明デバイス及び/又は代替の変換体を提供することである。更に、本発明の一観点は、そのような(透過性の)変換体、特に長い寿命を有する変換体を製造する代替の方法を提供することにある。
【0008】
従って、我々は、混合物の処理中にルミネセンス分子がポリエステル相内にとどまるようにルミネセンス染料分子がポリエステルに共有結合される芳香族ポリエステルとPMMAのような他のポリマとの非相溶性混合物の使用を提案する。このやり方では、射出成形可能な系が優れた寿命及び高い効率で生成され得る。
【0009】
従って、第1の観点では、本発明は、(a)光源光を生成する光源と、(b)(光源光の少なくとも一部をルミネセンス(光)に変換する)変換体(「変換体」)とを有し、上記変換体が第1のポリマのマトリクスを有し、このマトリクスはルミネセンス機能を持つ第2のポリマを有する離散的領域を含み、上記第2のポリマが(上記光源光の少なくとも一部を上記ルミネセンス(光)に変換する機能を備えた)ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを有するとともに、上記第1のポリマは芳香族ポリエステルとは化学的に異なる照明デバイス(「デバイス」)を提供する。上記変換体は、(ルミネセンス部分によって光源光の少なくとも一部をルミネセンス(光)に変換するために、)光源に放射結合されている(radiationally coupled)。従って、この変換体は、「光変換体」とも示され得る。
【0010】
更に他の観点では、本発明は、変換体が、第1のポリママトリクスを有し、上記マトリクスがルミネセンス機能を持つ第2のポリマを有する離散的領域を含み、上記第2のポリマがルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを有し、上記第1のポリマは芳香族ポリエステルとは化学的に異なっている(光をルミネセンスに変換する)そのような(光)変換体自体を提供する。
【0011】
更に他の観点では、本発明は、(a)ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステル及び上記芳香族ポリエステルとは化学的に異なる第1のポリマを与えるステップと、(b)第1のポリマ内にルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを埋め込むステップと、オプションで、得られた生成物を成形するステップとを有する変換体を与える方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、押出及び/又は射出成形によってのように例えば変換体内に比較的容易に成型又は成形され得る材料が製造されるようであり、これは、例えば平坦な変換体プレート又は湾曲品のような成形品を与える。このタイプの材料中の有機染料は比較的安定であるようでもある。複数のポリマが試されたが、芳香族ポリエステルタイプのポリマが全ての試されたポリマのうちで最も安定であるように思われた。例えば、ポリイミド系はかなり低い安定性を与える。更に、有機染料が芳香族ポリエステルに共有結合するという事実のために、変換体は、主マトリクス、すなわち、第1のポリマの低い光吸収と離散的領域の有機染料の安定性とを兼ね備えている。更に、第1のポリマのマトリクスは、例えば(ルミネセンス材料の)寿命の改善の観点で有益である障壁、例えば、酸素障壁として機能もする。
【0013】
上記照明デバイスは、光源を有している。この光源は、変換体に光源光を与えるために照明デバイスにおいて用いられ、変換体に少なくとも部分的に埋め込まれていてもよい。例えば、自己支持形の変換体は、1つ以上の光源を少なくとも部分的にそれぞれ受け入れるために、1つ以上の圧痕又はくぼみを有している。更に他の実施形態では、上記光源及び変換体は、変換体の縁部に光源光を与えるように構成されている。光源は、変換体と接していてもよいが、変換体からゼロではない距離で配されていてもよい(「リモート光源」)。従って、一実施形態では、光源は変換体から離れて配されている。幾つかの実施形態では、光源と波長変換部材との距離は、かなり小さく、所謂周辺蛍光体モード(vicinity phosphor mode)である。しかしながら、そのような実施形態では、波長変換部材は依然として光源に接していない。LEDダイのような光源と変換体の1つ以上との最短距離は、0mmよりも大きく、特に、0.2mm以上のような0.1mm以上であり、幾つかの実施形態では、10ないし100mmのような10mm以上でさえもあり得る。
【0014】
上記光源は、任意の光源であり得るが、特に、実質的に紫及び/又は青色を発することが可能な光源である。従って、一実施形態では、上記光源は、青色を発する発光デバイスを有している。前の実施形態と組み合わせられ得る更に他の実施形態では、光源は、紫色を発する発光デバイスを有している。従って、光源という用語は、特に、LED(発光ダイオード)と関連している。好ましくは、光源は、動作中に少なくとも400ないし480nm、特に420ないし460nmの範囲から選択される波長の光を発する光源である。この光は、光変換素子により部分的に用いられ得る(以下を参照されたい。)。
【0015】
特定の実施形態では、上記光源は、(LED又はレーザダイオードのような)固体LED光源を有している。「光源」という用語は、2ないし20の(固体)LED光源のような複数の光源にも関連がある。一実施形態では、(一次元又は二次元の)光源のアレイが変換体に光を当てるために適用される。他の実施形態では、光源は、有機LED(OLED)を有している。オプションで、光源は、青色光(及びオプションで紫色光)を生成するように構成されており(以下も参照されたい。)、青色光及び/又はオプションの紫色光の一部は励起光としてルミネセンス材料の1つ以上により用いられ、少なくとも部分的にルミネセンスに変換される。異なるタイプの光源の組み合わせが適用され得る。
【0016】
「放射結合される」という用語は、特に、光源及び変換体が、光源により発せられる放射の少なくとも一部が変換体(特に、ルミネセンス部分)により受け取られる(及びルミネセンス部分によりルミネセンスに少なくとも部分的に変換される)ように互いに関連していることを意味する。
【0017】
本明細書における白色光という用語は、当業者には既知である。これは、特に、約2000から20000K、とりわけ、2700ないし20000K、一般照明に関してはとりわけ約2700K及び6500Kの範囲、バックライティングの目的に関してはとりわけ約7000K及び20000Kの範囲の相関色温度(CCT)を持ち、特に、BBL(黒体軌跡)から約15SDCM(等色標準偏差)以内、特に、BBLから約10SDCM以内、更に特には、BBLから約5SDCM以内の光に関連している。
【0018】
一実施形態では、上記光源、例えば、直接蛍光体変換型LED(例えば10000Kを得るように薄い蛍光体の層を有する青色発光ダイオード)は、約5000から20000Kの間の相関色温度(CCT)を持つ光源光も与える。従って、特定の実施形態では、上記光源は、5000ないし20000Kの範囲内、更に特には、8000ないし20000Kのような6000ないし20000Kの範囲内の相関色温度の光源光を与えるように構成される。相対的に高い色温度の利点は、光源光に相対的に高い青色成分が存在し得ることである。この青色成分は、ルミネセンス材料により部分的に吸収され、ルミネセンス材料光に変化される。オプションで、独立した(固体LEDのような)青色光源が光源に含まれ得る。
【0019】
「紫色光」又は「紫色発光」という用語は、特に、約400ないし440nmの範囲内の波長を有する光に関連している。「青色光」又は「青色発光」という用語は、特に、約440ないし490nm(幾らかの紫及びシアンの色相を含む。)の範囲内の波長を有する光に関連している。「緑色光」又は「緑色発光」という用語は、特に、約490ないし560nmの範囲内の波長を有する光に関連している。「黄色光」又は「黄色発光」という用語は、特に、約560ないし590nmの範囲内の波長を有する光に関連している。「橙色光」又は「橙色発光」という用語は、特に、約590ないし620nmの範囲内の波長を有する光に関連している。「赤色光」又は「赤色発光」という用語は、特に、約620ないし750nm、とりわけ、620ないし650nmの範囲内の波長を有する光に関連している。「可視」、「可視光」又は「可視発光」という用語は、約380ないし750nmの範囲内の波長を有する光を指している。「IR」(赤外線)という用語は、特に、約750ないし3000nmに関連し、とりわけ、約750ないし1100nmの範囲内に関連している。
【0020】
上記照明デバイスは、更に、上記の変換体を有している。特に、上記変換体は光源に放射結合されている。「放射結合される」という用語は、特に、光源により発せられる放射の少なくとも一部がルミネセンス材料により受け取られる(及びルミネセンスに少なくとも部分的に変換される)ように光源及びルミネセンス材料が互いに関連していることを意味する。一般に、上記変換体は、透過モードで適用されるように、すなわち、光源の光が変換体の上流部を照らし、下流部においてルミネセンス部分からのルミネセンスが得られるように構成される。しかしながら、一実施形態では、変換体は、反射モードで適用されるようにも構成され得る。前者の実施形態では、変換体は出口窓又は出口窓の一部であり、後者の実施形態では、変換体は、例えば、光収集チャンバの壁の一部である。
【0021】
上記「上流」及び「下流」という用語は、光生成手段(ここでは、特に光源)からの光の伝播に対するアイテム又は特徴部の配置に関連しており、光生成手段からの光ビーム内の第1の位置に対して、光生成手段により近い光ビーム内の第2の位置は「上流」であり、光生成手段からより遠い光ビーム内の第3の位置は「下流」である。
【0022】
当業者には明らかであるように、変換体は、複数の(光)変換体を有していてもよい。従って、一実施形態では、「変換体」という用語は、複数の変換体のことも指す。これらの1つ以上は透過モードで構成され得る及び/又はこれらの1つ以上は反射モードで構成され得る。一実施形態では、2つ以上の(光)変換体が互いに下流に配されている。従って、一実施形態では、(光)変換体という用語は、多量の光変換体のことも指す。
【0023】
特に、可視光を生成するように構成された光源を適用する場合、可視範囲において高い光透過率を有する(ほぼ光を吸収しない)第1のポリマを伴う変換体が適用され得る。第1のポリマは、高度に透過可能でなければならない。ルミネセンス分子の存在のために、変換体は光の吸収を示す。しかしながら、ルミネセンス材料の吸収度についての補正後(変換体に関して測定された吸収度からルミネセンス分子からの吸収度の寄与を差し引いた後)、(2mmの厚さを有する変換体の場合、)可視範囲における変換体の吸収は0ないし4%の範囲内である。
【0024】
本明細書における「透過可能である(transmissive)」という用語は、特に、2mmの厚さの場合、可視波長範囲から選択される波長を持つ光について0ないし4%の範囲内の光の吸収を有する第1のポリマのことを指している。ここで、「可視光」という用語は、特に、400ないし700nmの範囲から選択される波長を持つ光に関連がある。透過は、垂直放射の下で第1の強度を持つ特定の波長の光を導波路に与え、当該材料を通って透過した後測定される当該波長における光の強度を特定の波長で当該材料に与えられる光の第1の強度に関連付けることにより決定される(E-208 and E-406 of the CRC Handbook of Chemistry and Physics, 69th edition, 1088-1989も参照されたい。)。変換体プレートは、ルミネセンス材料の存在のために着色され得ることに注意されたい(以下も参照されたい。)。特に、第1のポリマの透過率は、そのようなポリマよりなるプレートを仮定すると、400ないし700nmの全波長にわたって96%以上の平均透過値を有する。一実施形態では、この全波長範囲において最も低い透過率は75%よりも低くない。
【0025】
上記変換体は、層又は自己支持形の本体部のような任意の形状であり得る。変換体は、平坦であってもよいし、湾曲していてもよいし、成形されていてもよいし、円形状、六角形状、球状、管状、立方体状等であってもよい。自己支持形の本体部は、剛性であってもよいし、フレキシブルであってもよい。変換体の厚さは、一般に、0.1ないし10mmの範囲内である。長さ及び/又は幅(若しくは径)は、例えば、0.02ないし5mのような0.01ないし5mの範囲内であり、例えば0.1ないし50mmの範囲内である。
【0026】
「マトリクス」という用語は、本明細書では、第1のポリマのマトリクスのような離散的領域についてのマトリクスである他の材料を受け入れる層、本体部又は成形品等を示すために用いられる。上記変換体は、例えば透過可能な支持部にコーティングされた層であってもよいが、一般に、成形された(フレキシブルな)本体部である。上記変換体は、自己支持形であってもよく、例えば、プレート又は(フレキシブルな)構成要素(entity)である。
【0027】
上記第1のポリマのマトリクスは、原理的には、可視光に関して透過可能である又は透過可能にされ得る任意のポリマであり、特に、PC(ポリカーボネート)、ポリアクリル酸メチル(PMA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(プレキシガラス又はペースペクス)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、COC(シクロオレフィン共重合体)及びポリスチレンより成る群から選択される1つ以上にポリマを有するマトリクスであり得る。更に他の実施形態では、第1のポリマは、特に、ポリウレタン、ポリアルカン、ポリアクリレート及び(ポリジメチルシロキサン(PDMS)のような)シロキサンの1つ以上を有している。これは、特に、フレキシブルな用途に適切である。従って、一実施形態では、第1のポリマは、フレキシブルなマトリクスを与えるように構成される。このやり方では、変換体はフレキシブルユニットである。特に、第1のポリマは、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PS(ポリスチレン)及びPC(ポリカーボネート)より成る群から選択されるポリマを有しており、好ましくは、本質的にそれより成っている。
【0028】
他の実施形態では、変換体又は照明デバイスの第1のポリマは、可視領域(400ないし700nm)においてほぼ光の吸収を示さない(1mmの厚さのサンプルの場合、4%未満)非常に透明な材料である。第2のポリマは、特にルミネセンス部分が長い寿命を有する低い酸素透過率を有している。特性値は、PVDC−ポリ塩化ビニリデン(0.8cm/m・day・bar)、PVDF−ポリフッ化ビニリデン(0.8cm/m・day・bar)、EVOH−エチレンビニルアルコール(0.5cm/m・day・bar)、PBT−ポリブチレンテレフタレート(5cm/m・day・bar)、PEN−ポリエチルナフタレート(8cm/m・day・bar)、PAN−ポリアクリロニトリル(9cm/m・day・bar)、PA6−ナイロン6(10cm/m・day・bar)又はPET−ポリエチレンテレフタレート(20cm/m・day・bar)である。
【0029】
上記離散的領域は、任意の形状を有し得る。この形状は、変換体が製造されるやり方にも依存する。一実施形態では、上記変換体は、第2のポリマが2つの第1のポリマの間に挟まれる層状の変換体である。更に他の実施形態では、第2のポリマは第1のポリマにより成型され(以下も参照されたい。)、更に他の実施形態では、第1のポリマのマトリクスがその中に混合された第2のポリマを含んで作製され、その後、得られた生成物が成形された変換体の本体部に成型される。
【0030】
上記離散的領域は、100nmないし5mmの範囲内の(長さ、幅、高さ、径のような)寸法を有している。粒子は、球状、立方体状、星型、円柱状、ランダムな形状等のような任意の所望の形状を有している。しかしながら、第2のポリマは第1のポリマ内にネットワークを形成もする。変換体は、異なる形状の離散的領域を有していてもよい。
【0031】
上記離散的領域は、第1のポリマのマトリクスと区別することが可能であるので、「離散的」として示される。離散的領域と第1のポリマのマトリクスとの境界は観察され、第1のポリマのマトリクスと粒子との化学組成の違いは評価され得る。上記離散的領域からルミネセンスを観察し、上記マトリクスからルミネセンスを実質的に観察しないことも可能である。有利なことに、ルミネセンス部分は、芳香族ポリエステルに結合されているので、離散的領域にとどまる。特定の実施形態では、離散的領域は、透過可能な変換体の体積の1ないし20体積%、1ないし5体積%のような0.5ないし50体積%の範囲内を占める。
【0032】
上記第1のポリマのマトリクスは、第2のポリマを有する離散的領域を有するだけではなく、他の成分を有していてもよい。オプションで、ルミネセンス機能を持つ第2のポリマに加えて(従って、離散的領域により構成されるルミネセンス材料に加えて)、マトリクスは他のルミネセンス材料も含んでいる。一実施形態では、他のルミネセンス材料は、ランタニドをベースとするルミネセンス材料、遷移金属をベースとするルミネセンス材料及び量子ドット材料より成る群から選択される無機ルミネセンス材料を有している。従って、例えば、固体照明から、低圧若しくは高圧ランプから又はプラズマアプリケーションから知られている無機ルミネセンス材料が適用される。例えば適用され得る無機ルミネセンス材料は、YAG:Ce3+のような三価のセリウムがドープされたガーネット系、SrGa:Eu2+のような二価のEuがドープされたチオガリウム酸塩及びSrS:Eu2+のような硫化物であり、これらは全て当該技術分野においてよく知られている(例えば、米国特許US7,115,217号公報及び米国特許US6,850,002号公報を参照されたい。)。また、量子ドット(QD)も適用され得る。他の実施形態では、上記変換体は、例えば、変換体からの光の取り出しを促進するために、Al含有粒子及び/又はTiO含有粒子等の粒子のような構造を更に含んでいる。しかしながら、特定の実施形態では、離散的領域は、本質的に第2のポリマより成っている。ルミネセンス材料及び反射性材料のような添加物の組み合わせも適用され得る。
【0033】
上記第2のポリマは、上記のように芳香族ポリエステルを有している。芳香族ポリエステル分子に有機染料を組み込むことにより、ルミネセンス機能が得られる。「組み込む」という用語は、有機染料と芳香族ポリエステルとの1つ以上の共有結合のことを指す。従って、一実施形態では、ルミネセンス部分の1つ以上が芳香族ポリエステルの骨格の一部である。代替又は追加として、一実施形態では、ルミネセンス部分の1つ以上(官能基)は、芳香族ポリエステルの骨格に化学的に結合されている。
【0034】
特に、上記芳香族ポリエステルは、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)に基づくものである。これは、特に、芳香族ポリエステルがPET又はPENの骨格を有しているが、骨格に及び/又は官能基として(骨格に化学的に結合された)ルミネセンス部分も含んでいることを意味している。ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマの一例は、例えば、PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)である。従って、第1のポリマは、とりわけ、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)に基づくものではない。
【0035】
上記芳香族ポリエステルは、好ましくは、熱可塑性ポリマであり、オプションで、架橋可能な基を更に有している。また、第1のポリマも、好ましくは、熱可塑性ポリマである。オプションで、第1のポリマも架橋可能な基を更に有している。
【0036】
上記「ルミネセンス部分」という用語は、ルミネセンス種がポリマ骨格又はポリマ鎖に組み込まれ得ることを示すために用いられ、ポリマ骨格又はポリマ鎖に対して側基又は官能基として存在していてもよい。勿論、特定の実施形態では、芳香族ポリエステル鎖は、骨格内部のルミネセンス部分及び骨格に結合されたルミネセンス部分の両方を有している。「ルミネセンス部分」という用語は、複数のルミネセンス部分にも関連している。一実施形態では、ルミネセンス部分を有する芳香族エステルは、線状ポリマ、(多)分岐ポリマ、架橋ポリマ、星形ポリマ、デンドリマ、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びターポリマより成る群から選択されている。
【0037】
一実施形態では、第2のポリマにおけるルミネセンス部分の含量は、第2のポリマの総重量に対して0.2ないし5重量%等の1重量%以下、0.1ないし10重量%のような10重量%以下である。
【0038】
有機ルミネセンス材料又は有機染料は、現在、白色光を得るために例えば緑ないし赤色発光ルミネセンス材料をポンピングするために青色発光ダイオードが用いられるリモートルミネセンス材料の用途に考えられている。有機ルミネセンス材料は、無機ルミネセンス材料と比較して幾つかの利点を有している。ルミネセンススペクトルの位置及び帯域幅は、高い効率を得るために可視範囲のどこにでも存在するように容易に設計され得る。有機ルミネセンス材料は、また、非常に少ない光の散乱しか示さず、より高い量子効率を示し、これは系の効率を改善する。更に、有機性及び持続性のために、有機ルミネセンス材料は無機LEDルミネセンス材料よりも数桁安価であり、大面積のアプリケーションに用いられ得る。有機ルミネセンス材料は、本明細書においては有機染料としても示されている。
【0039】
そのような有機ルミネセンス材料又は染料のほぼ無制限の取り合わせが存在する。関連のある例は、(BASF社、ルードヴィヒスハーフェン、ドイツからルモゲンの商標名の下で知られている染料:ルモゲンF240オレンジ、ルモゲンF300レッド、ルモゲンF305レッド、ルモゲンF083イエロー、ルモゲンF170イエロー、ルモゲンF850グリーンのような)ぺリレン、Neelikon Food Dyes & Chemical Ltd.社、ムンバイ、インドからのイエロー172及びクマリン(例えば、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン153、ベーシックイエロー51)、ナフタルイミド(例えば、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116)、フルオロール7GA、ピリジン(例えば、ピリジン1)、(ピロメテン546、ピロメテン567のような)ピロメテン、ウラニン、ローダミン(例えば、ローダミン101、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、スルホローダミン101、スルホローダミン640、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2)、シアニン(例えば、フタロシアニン、DCM)、スチルベン(例えば、Bis−MBS、DPS)のような多くの業者から入手可能な染料である。酸性染料、塩基性染料、直接染料及び分散染料のような幾つかの他の染料が、使用目的のために十分に高い蛍光量子収率を示す限り用いられ得る。従って、上記ルミネセンス部分の1つ以上はペリレン基を有していてもよく、更に特には、ルミネセンス部分の1つ以上は、本質的にペリレン基から成っている。とりわけ、1つ以上の上記ルミネセンス部分は、青及び/又は紫色光により励起されると赤色ルミネセンスを生成するように構成されている。
【0040】
適用され得る特に興味深い有機材料は、例えば、緑色ルミネセンスについてはBASF社のルモゲン83、黄色ルミネセンスについてはBASF社のルモゲンF170、橙色ルミネセンスについてはBASF社のルモゲンF240、赤色ルミネセンスについてはBASF社のルモゲンF300又はF305等と同様のペリレン構造体を有しているが、ルモゲンFレッド305又はルモゲンFブルー650も有している。従って、第2のポリマは、例えば1つ以上のペリレン誘導体を有していてもよい。オプションで、上記染料は数時間のような長い減衰時間を有するリン光性の染料を有しており、これは、(十分な)昼光が存在しない中で照明するために適用され得る。
【0041】
しかしながら、そのような染料自体は、光化学的に安定ではなく、劣化する。染料自体の光化学的安定性は、当該染料を芳香族ポリエステル内にもたらすことにより改善され得る。しかしながら、そのような芳香族ポリエステルは、残りの吸収を示し、従って、この残りの吸収が系の効率の低下を招くので、厚い層として用いられることができない。PPMA又はPCのようなポリマを使用することがより望ましい。しかしながら、そのようなマトリクスでは、ルミネセンス染料の光化学的安定性が比較的低いようである。従って、本発明は、これらの問題の解決策を提供する。
【0042】
光源の光のタイプ(上記を参照されたい。)に依存して、ルミネセンス部分は、例えば緑色発光材料と赤色発光材料との組み合わせ又は黄色発光材料と赤色発光材料との組み合わせ等を有している。(主として)紫色光を生成する光源が適用される場合、青、緑及び赤色を発するルミネセンス部分の組み合わせ又は青、黄及び赤色を発するルミネセンス部分の組み合わせ等が適用される。一実施形態では、上記照明デバイスは、光源光及び変換体の組み合わせに基づいて白色光を生成するように構成されている。光源光は、(紫色光の場合には)実質的に変換され、(青色光の場合には)照明デバイス光に寄与する。
【0043】
上記のように、第1のポリマは透明性が高い。更に、特に、第1のポリマは芳香族ポリエステルとは化学的に異なる。従って、第1のポリマは、特に、PEN又はPETに基づいていない。一般に、第1のポリマの化学組成は、第2のポリマの組成とは実質的に異なっている。更に、一般に、第1のポリマのマトリクスの化学組成は、(ルミネセンス部分と全く関係なく)離散的領域とは異なっている。従って、一実施形態では、第1のポリマは第1のポリマを有し、第2のポリマは第2のポリマを有し、第1及び第2のポリマは実質的に異なっている。一般に、PETに基づいていない又はPENに基づいていないいかなるポリマもが、PET及びPENそれぞれと非相溶性である。従って、特に、第1のポリマは、PENに基づいておらず、PETに基づいていない。
【0044】
波長変換分子の安定性及び寿命は、波長変換分子を芳香族ポリエステルマトリクスに組み込むことによって改善され得る(参照することにより本明細書に組み込まれることとされる国際特許出願公開WO2012042438号公報も参照されたい。)。しかしながら、波長変換部分をポリマ材料に共有結合させることは、寿命を更に一層改善するようである。従って、波長変換部分の移動性の低下及びそれにより例えば凝集によるクエンチングのような波長変換分子の光化学的劣化の低減もが回避される。本願発明者等は、驚くべきことに、芳香族ポリエステルのような半結晶性ポリマは、結晶化後にかなり低い酸素透過性を有するので、この目的のために特に有用であることを見出した。
【0045】
本発明の概念は、ルミネセンス分子が良好な光化学的安定性を有する射出成形のような技術により生成され得る光変換体、特に、かなり厚い(1mmよりも厚い)フォームファクタ及び更に高い透過性を有する光変換体を生成する能力にある。芳香族ポリエステルと高度に透過可能な第1のポリマとの非相溶性混合物の作製は、かなり厚い(1mmよりも厚い)形に混合物を処理することを可能にし、芳香族ポリエステルマトリクスが良好な光化学的安定性を受け持つ。これは、良好な安定性を有する高度に透過可能な光変換体をもたらす。ルミネセンス分子をポリエステルに共有結合させることは、特に有利であり、ルミネセンス分子を高度に透過可能な第1のポリマと非相溶的にする。このやり方では、ルミネセンス分子は芳香族ポリエステル内にとどまり、安定性がより悪い他のポリマに入り込まない。
【0046】
本発明の実施形態では、透過可能なポリマは、高い透過性を示すポリマである。400ないし700nmの波長範囲で5%/mm(mmのポリマの厚さ当たり)未満、より好ましくは2%/mm未満、特に1%/mm未満の平均吸収率が好ましい。従って、一実施形態では、第1のポリマは、400ないし700nmの波長範囲で5%/mm未満、より好ましくは2%/mm未満、最も好ましくは1%/mm未満の吸収率を有するポリマである。第1のポリマの透過率及び吸収率は、第1のポリマ自体に関連しており、変換体の透過率には関連しないことに注意されたい。特に、(第1のポリマの)最大吸収率は、400ないし700nmの波長範囲全体にわたって20%/mm未満であり、更に特には10%/mm未満である。透過率(T)及び吸収率(A)は、A=1−To/Tiとして関連があり、ここで、Tiは(第1のポリマ又は変換体のような)アイテムに衝突する可視光の強度であり、Toは上記アイテムの他の側において抜ける光の強度である。
【0047】
本発明の実施形態では、上記ポリマ材料は、有利なことに、ポリエステルを有している。本発明の実施形態では、波長変換部分はペリレンから得られる。
【0048】
本発明の実施形態では、ポリマ骨格を有する上記ポリマ材料は、波長変換部分を有するランダムポリエステル共重合体を有しており、ランダムポリエステル共重合体は、以下の一般式n、n、n、nの少なくとも2つの異なる繰り返しユニットを有している。

ここで、上記繰り返しユニットはポリマ骨格の長さに沿ってランダムに分布し、AAは芳香族部分の以下の第1の群、すなわち、

から選択される。BBは、以下、すなわち、−(CH−、−(CH−又は

から選択され、CC及びDDは、以下の一般式I、II又はIII、すなわち、

の1つを有する波長変換部分である。ここで、Gは、直鎖若しくは分岐アルキル基、酸素含有アルキル基C2n+1(nは1から44までの整数であり、m<n/2)、Y又は結合基であり、A及びCのそれぞれは、独立して、水素、イソプロピル、t−ブチル、フッ素、メトキシ基又は非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)であり、B、J及びQのそれぞれは、独立して、水素、イソプロピル、t−ブチル、フッ素、メトキシ基、非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)又は結合基であり、G、G、G及びGのそれぞれは、独立して、水素、フッ素、メトキシ基、非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)、X又は結合基であり、D及びMのそれぞれは、独立して、水素、フッ素、メトキシ基又は非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)であり、E、I及びLのそれぞれは、独立して、水素、フッ素、メトキシ基、非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)又は結合基であり、T、T′、R、R′のそれぞれは、独立して、水素、イソプロピル、t−ブチル、フッ素、アルキルオキシ、アリールオキシ、シアノCOOCOR又は非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)であって、Rはアリール、飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)又は結合基であり、各波長変換部分は、G、G、G、G、G、E、I、L、B、J、Q、T、T′、R、R′の位置のいずれか2つに2つの結合基を有しており、上記結合基は、ランダム共重合体骨格のエステル及び/又はアルコール機能性部への波長変換部分の共有結合を与える。
【0049】
これにより、上記波長変換部分は、ランダム共重合体骨格に組み込まれる。
【0050】
ランダムポリエステル共重合体中の波長変換部分の含量は、一般式n及びnの繰り返しユニットの総量に対して波長変換部分を有する繰り返しユニット、すなわち、一般式n及びnの繰り返しユニットの量を制御することにより所望の通りに適合され得る。典型的には、ランダム共重合体骨格において、一般式n及びnの繰り返しユニットの総数は、一般式n及びnの繰り返しユニットの総数よりも大きく、これらの両方が波長変換部分を有している。
【0051】
本発明の実施形態では、ランダムポリエステル共重合体は、(上記に与えられているような)繰り返しユニットn、n及びnの混合物を有しており、繰り返しユニットは、ポリマ骨格の長さに沿ってランダムに分布されており、ポリマ骨格において、式n及びnの繰り返しユニットの総数は、式nの繰り返しユニットの総数よりも大きい。
【0052】
本発明の実施形態では、ランダムポリエステル共重合体は、(上記に与えられているような)繰り返しユニットn、n及びnの混合物を有しており、繰り返しユニットは、ポリマ骨格の長さに沿ってランダムに分布されており、ポリマ骨格において、式nの繰り返しユニットの総数は、式n及びnの繰り返しユニットの総数よりも大きい。
【0053】
本発明の実施形態では、ランダムポリエステル共重合体は、(上記に与えられているような)一般式n、n、n、nの少なくとも2つの異なる繰り返しユニットの繰り返しユニットを有しており、AAは、以下の、すなわち、

の芳香族部分である。
【0054】
本発明の実施形態では、ポリマ骨格を有する上記ポリマ材料は、波長変換部分を有するランダムポリオレフィン共重合体を有しており、ランダムポリオレフィン共重合体は、以下の一般式m及びmの少なくとも2つの異なる繰り返しユニットを有している。

ここで、Xは、独立して、水素、フッ素、塩素、メチル基又はエチル基であり、Xは、独立して、水素、メチル基、水酸化物、酢酸塩、ニトリル、C又はCO2n+1(nは1から16までの整数)であり、Xは、以下の一般式I、II又はIII、すなわち、

の1つを有する波長変換部分である。ここで、Gは、直鎖若しくは分岐アルキル基、酸素含有アルキル基C2n+1(nは1から44までの整数であり、m<n/2)、Y又は結合基であり、A及びCのそれぞれは、独立して、水素、イソプロピル、t−ブチル、フッ素、メトキシ基又は非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)であり、B、J及びQのそれぞれは、独立して、水素、イソプロピル、t−ブチル、フッ素、メトキシ基、非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)又は結合基であり、G、G、G及びGのそれぞれは、独立して、水素、フッ素、メトキシ基、非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)、X又は結合基であり、D及びMのそれぞれは、独立して、水素、フッ素、メトキシ基又は非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)であり、E、I及びLのそれぞれは、独立して、水素、フッ素、メトキシ基、非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)又は結合基であり、T、T′、R、R′のそれぞれは、独立して、水素、イソプロピル、t−ブチル、フッ素、アルキルオキシ、アリールオキシ、シアノCOOCOR又は非置換飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)であって、Rはアリール、飽和アルキルC2n+1(nは1から16までの整数)又は結合基であり、上記繰り返しユニットは、ランダム共重合体の長さにわたってランダムに分布されており、ポリマ骨格において、式mの繰り返しユニットの数は式mの繰り返しユニットの数よりも大きく、各波長変換部分は、G、G、G、G、G、E、I、L、B、J、Q、T、T′、R、R′の位置のいずれか1つに1つの結合基を有しており、上記結合基は、−CH−、−O−又は−CO−の少なくとも1つを有し、それにより、ポリオレフィンのポリマ骨格に波長変換部分の共有結合を与える。
【0055】
それによって、上記波長変換部分は、ポリマ骨格に側鎖として結合される。
【0056】
ランダムポリオレフィン共重合体中の波長変換部分の含量は、一般式mの繰り返しユニットの総量に対して波長変換部分を有する繰り返しユニット、すなわち、一般式mの繰り返しユニットの量を制御することにより所望の通りに適合され得る。
【0057】
本発明の実施形態では、ランダムポリオレフィン共重合体は、(上記に与えられているような)一般式m及びmの少なくとも2つの異なる繰り返しユニットを有しており、Xは、独立して、水素、塩素、メチル基であり、Xは、独立して、C、CO2n+1(nは1から16までの整数)又はニトリルであり、Xは、結合基がランダムポリオレフィン共重合体のポリマ骨格への波長変換部分の共有結合のために−CO−を有する波長変換部分である。
【0058】
本発明の一実施形態では、波長変換部分は、G、B、J又はQの位置の1つに1つの結合基を有する(上記に示されているような)一般式I又はIIの1つを有している。
【0059】
本発明の実施形態では、上記ポリマ材料は、(上記に与えられているような)一般式n、n、n及びnから又はm及びmから選択される第1の繰り返しユニットを有するとともに、一般式n、n、n及びnから又はm及びmから選択される第2の繰り返しユニットを有するランダムポリエステル又はランダムポリオレフィン共重合体を有しており、一般式n、n又はmの第1の繰り返しユニットは(上記に与えられているような)一般式I、II又はIIIの1つの第1の波長変換部分を有し、一般式n、n又はmの第2の繰り返しユニットは一般式I、II又はIIIの1つの第2の波長変換部分を有しており、第1及び第2の波長変換部分は異なっている。
【0060】
異なる光学特性を有する1つよりも多くのタイプの波長変換分子を用いることにより、変換される光のスペクトル組成が所望の通りにより都合よく適合され得る。
【0061】
本発明の実施形態では、ポリマ材料における波長変換部分の含量は、好ましくは、0.1重量%以下のような10重量%以下、例えば、1重量%以下である。上述したように、ポリマ材料における波長変換部分の望ましい含量は、一般式n、n及びmそれぞれの波長変換部分を含まない繰り返しユニットの総数に対して波長変換部分を含む繰り返しユニット、すなわち、一般式n、n及びmそれぞれの繰り返しユニットの総数を適合させることにより達成される。
【0062】
更に、「ランダムに分布する」という表現により、この出願の中では、ランダム共重合体を与えるランダム共重合に関して考えられるような統計的分布に従って分布していると理解されるべきである。
【0063】
上記のように、本発明は、(a)ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステル及び上記芳香族ポリエステルとは化学的に異なる第1のポリマを与えるステップと、(b)上記ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを上記第1のポリマに交ぜる(blend)ステップと、オプションで、得られた生成物を成形するステップとを有する変換体を与える方法も提供する。一実施形態では、上記ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルは、ルミネセンス部分を有する架橋芳香族ポリエステルである。そのような実施形態では、芳香族ポリエステルは、粒子(架橋ポリマ粒子)としても与えられ得る。
【0064】
成形は、種々のやり方で行われ得る。一実施形態では、射出成形のような成形が適用される。一実施形態では、上記方法は、ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを第1のポリマに交ぜるステップと、得られた生成物を成形変換体に成型するステップとを有している。更に他の実施形態では、上記方法は、ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステル及び第1のポリマを成形変換体に成型するステップを有している。
【0065】
このやり方では、光をルミネセンスに変換する変換体であって、第1のポリマのマトリクスを有し、上記マトリクスはルミネセンス機能を持つ第2のポリマを有する離散的領域を含み、上記第2のポリマがルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルを有し、上記第1のポリマが上記芳香族ポリエステルとは化学的に異なる当該変換体が得られる。
【0066】
「実質的に全ての放射」又は「実質的に構成される」のような本明細書における「実質的に」という用語は、当業者には理解されるであろう。「実質的に」という用語は、「全部」、「完全に」、「全て」等を伴う具体例も含んでいる。従って、実施形態では、形容詞的な実質的には取り除かれ得る。適用可能である場合、「実質的に」という用語は、95%以上のような90%以上、特に99%以上、更に特には100%を含む99.5%以上にも関係がある。「有する」という用語は、「有する」という用語が「から成る」を意味する形態も含んでいる。
【0067】
更に、詳細な説明及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等は、類似の構成要素を区別するために用いられており、必ずしも連続する順序又は発生順を説明するために用いられるものではない。そのように用いられている用語は適切な状況下において置き換え可能であり、本明細書で説明される本発明の実施形態は、本明細書中に説明されている又は示されている順序ではない他の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0068】
本明細書におけるデバイスは、とりわけ動作中について説明されている。当業者には明らかであるように、本発明は、動作の方法又は動作中のデバイスに限定されるものではない。
【0069】
上述した実施形態は本発明を限定するものではなく説明しており、当業者であれば添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多数の代替の実施形態を考案することができることに注意されたい。特許請求の範囲では、括弧内に配されたいかなる参照符号もが特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。動詞「有する」及びその活用の使用は、特許請求の範囲において述べられている構成要素又はステップ以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。構成要素の前に付された冠詞「a」又は「an」は、複数のそのような構成要素の存在を排除するものではない。本発明は、幾つかの別個の構成要素を有するハードウェア及び好適にプログラムされたコンピュータにより実現され得る。幾つかの手段を列挙しているデバイスの請求項では、これらの手段の幾つかがハードウェアの全く同一のアイテムにより具現化され得る。或る方策が互いに異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に用いられないことを示してはいない。
【0070】
本発明は、更に、詳細な説明において説明される及び/又は添付の図面に示される特徴的なフィーチャの1つ以上を有するデバイスに当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明の実施形態が、添付の模式図を参照して単に例としてこれから説明される。各図において、対応する参照符号は対応する部分を示している。
【0072】
図1a】本発明に係る基本の実施形態を模式的に示している。
図1b】本発明に係る基本の実施形態を模式的に示している。
図1c】本発明に係る基本の実施形態を模式的に示している。
図2a】変換体及び光源の特定の構成を模式的に示している。
図2b】変換体及び光源の特定の構成を模式的に示している。
図2c】変換体及び光源の特定の構成を模式的に示している。
図2d】変換体及び光源の特定の構成を模式的に示している。
図3a】この概念の範囲内の変形例及びオプションを模式的に示している。
図3b】この概念の範囲内の変形例及びオプションを模式的に示している。
図3c】この概念の範囲内の変形例及びオプションを模式的に示している。
図4a】ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルの実施形態を模式的に示している。
図4b】ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルの実施形態を模式的に示している。
図4c】ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルの実施形態を模式的に示している。
図4d】ルミネセンス部分を有する芳香族ポリエステルの実施形態を模式的に示している。
図5a】変換体を製造する方法の実施形態を模式的に示している。
図5b】変換体を製造する方法の実施形態を模式的に示している。
図6】ルミネセンス部分を有するポリマ材料を生成する実施形態を模式的に示している。
【0073】
図面は、必ずしも正確な縮尺ではない。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1aは、光源光110を生成する固体LED又はレーザダイオードのような光源100を有する照明デバイス1を模式的に示している。光源光110は、例えば、紫又は青色光であり、特に青色光である。光源100は、実質的に同じ波長分布を有するか又は(紫及び青色光のように)異なる波長分布を有する光源光110を生成する複数の光源であってもよい(以下の例も参照されたい。)。特に、青色光及び/又は緑、黄、橙及び赤色光の1つ以上のような可視光が生成される。
【0075】
照明デバイス1は、更に、変換体200を有している。変換体200は、光源100の下流に配されている。この変換体200は、特別に構成されている。例えば、青色光は、少なくとも部分的に緑、黄、橙及び赤色光の1つ以上に変換される。参照符号11で示されている白色性の照明デバイス光を生成し、光源光110が青色性であると、変換体200は、光源光110の一部を変換するが、光源光110の一部が変換体200を通って透過することを可能にする。照明デバイス光11は、変換体200の下流側に現れる(すなわち、前面から出てくる。)。従って、ここでは、変換体200は、(光源100が青色光を生成するように構成されていると仮定すると、少なくとも青色光については)透過性である。
【0076】
変換体200は、離散的領域210を含む第1のポリマ301のマトリクス201を有している。実際には、離散的領域210は第1のポリマ301のマトリクス201に混ざっている。
【0077】
離散的領域210は、芳香族ポリエステルのポリマ骨格に付いている部分であるルミネセンス部分212を有する第2のポリマ211を有している。ルミネセンス部分212は、光源光110の少なくとも一部を吸収する変換体であり、ルミネセンス材料光を生成する。変換体200から抜ける光11は、少なくともルミネセンス部分212により生成される光を有するが、オプションで、光源光110も有している。例えば、光源光110は青色光であり、ルミネセンス材料光は黄及び赤色光である。これらが合わさって、照明デバイス光11としての白色光が生成される。
【0078】
デバイス1におけるルミネセンス部分212は、(フレキシブルな)構成の背面でLEDにより照らされる。例えば、LEDの完全なアレイが用いられ得る(以下も参照されたい。)。変換体200は、背面232及び前面231と、一般的には縁部233とを有している。変換体200は、背面232から前面231に向かう方向に照らされる。オプション及び/又は追加で、変換体200は、光源100により縁部面233において照らされる。
【0079】
上記変換体の厚さは、背面232と前面231との距離である。上記のように、この厚さは、例えば、0.1ないし10mmの範囲内である。ここでは、光源は、0.1ないし100mmの距離のような変換体からゼロではない距離にある。しかしながら、オプションで、上記光源は変換体と物理的に接している(以下も参照されたい。)。
【0080】
図1bは、変換体200をより詳細に模式的に示している。離散的領域210は、第1のポリマ301のマトリクス201に混ざっている。粒子210自体は、芳香族ポリエステル(第2のポリマ211)のポリマ骨格に付いている部分であるルミネセンス部分212を伴う第2のポリマ211を有している。ここでは、例として粒子状のルミネセンス材料が示されているが、ルミネセンス部分212は、例えば、有機染料を有する場合、第2のポリマ211内に分子的にも分散し得る。上述したように、一実施形態では、第1のポリマ301のマトリクス201のマトリクスも、(ルミネセンス部分212を有する第2のポリマ211に加えて)無機ルミネセンス材料のようなルミネセンス材料(図示せず)を有している。
【0081】
図1cは、本発明の一実施形態に係るLEDを使用した発光デバイスを示している。この実施形態の発光デバイスは、レトロフィットランプ6107として与えられる。レトロフィットランプという表現は、当業者にはよく知られており、LEDを有していなかった旧式のランプの外観を持つLEDを使用したランプのことを指す。ランプ6107は、ねじ込み口金(Edison screw cap)又は差し込み口金(bayonet cap)のような従来型の口金6108を備えた基部6108を有している。更に、ランプ6107は、空洞部6104を囲むバルブ形状の光出口部材109を有している。光源100としての複数のLEDが、空洞部6104内の基部6108上に設けられている。波長変換要素は、光出口部材109の内部、すなわち、光出口部材の空洞部6104に面している側に設けられている。
【0082】
上記波長変換素子、すなわち、変換体200は、光出口部材上にコーティング部として与えられ得る。波長変換部材は、光出口部材から自立し、任意の好適な形状を有するフィルム又はシートのような自己支持形の層であってもよいと考えられる。代替として、波長変換部材は、LEDと光出口部材とから或る距離でLEDを覆うフード部材として形成されてもよい。
【0083】
空洞部6104内の雰囲気は、空気であってもよいし、或る組成を有するように制御されていてもよい。例えば、空洞部6104は、窒素又は希ガス、例えばアルゴンのような不活性ガスで満たされている。本発明の実施形態では、空洞部6104内の酸素濃度は、密閉された空洞部の全体積で或る低いレベル、例えば、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.6%以下及び好ましくは0.1%以下に維持され得る。
【0084】
本発明に係る波長変換素子の実施形態では、ポリマ材料はポリエステルを有しており、波長変換部分はペリレンから得られる(以下も参照されたい。)。図1cは、レトロフィット照明デバイスを模式的に示している。レトロフィット照明デバイス1における変換体200の使用も、本発明の一部である。アプリケーションが、特に、レトロフィットバルブ、LEDTLチューブ(TLED)を含んでいるか、又は、そのような材料が、青色LEDにより照らされる壁部の塗料(paint)として用いられる。
【0085】
図2aないし図2dは、変換体及び光源の特定の構成を模式的に示している。図2aは、変換体200が接触位置にある光源100、特に、LEDにより照らされる実施形態を示している。
【0086】
図2bは、光源100が変換体200内に少なくとも部分的に一体化された実施形態を模式的に示している。この目的のために、変換体200は、例えば背面232に、空洞部を有している。
【0087】
図2cでは、変換体200は、変換体200の縁部233に存在する、所謂エッジライト(edge-lit)構成である1つ以上の光源100、特に、LED又はレーザダイオードにより照らされる。そのような構成を用いることにより、非常に薄い(フレキシブルな)照明デバイスが作り出される。これは、特に興味深いことである。光源100は、変換体200と接するように示されているが、必ずしもそのようなやり方で構成されない(例として、図2dも参照されたい。)。この構成では、光は、両側から変換体を照らすことができる透過性の導波路(図示せず)にも結合され得る。この構成では、変換体は、導波路と光学的に接する必要がない。
【0088】
図2dでは、変換体200は、非接触位置にある1つ以上の光源100、特に、LED又はレーザダイオードにより照らされる。そのような構成は、フレキシブル照明器具システムのおいて望ましい。しかしながら、そのような構成は、変換体がフレキシブルではないシステムにおいても適用され得る。(LEDのダイのような)光源と変換体との距離は、上記の通りである。
【0089】
全てに関して、本明細書において説明される照明デバイス1は、変換体200が、反射層又はミラー、波長選択層又はミラー等のような1つ以上の光学層又は光学部品を有していてもよいことが当てはまる。明確にするために、そのような層又は部品は図示されていない。
【0090】
更に、特定の実施形態では、青色発光LEDが用いられる。他の実施形態では、異なる波長で発するLEDも用いられ得る。
【0091】
図示されていないが、前面231の側に、背面232からの或る方向にルミネセンス材料光及びオプションで光源光110を反射するように構成された反射体又は反射体層が設けられ、照明デバイス光11が照明デバイス1の背面232から放射する構成も本発明に含まれている。
【0092】
図1cないし図2d及び図3cは、変換体がどのように光源に放射結合され得るかを模式的に示している。
【0093】
上記のように、変換体200は第1のポリマ201のマトリクス201を有し、マトリクス201は、ルミネセンス機能を持つ第2のポリマ211を有する離散的領域210を含んでおり、第2のポリマ211は、ルミネセンス部分212を有する芳香族ポリエステルを有しており、第1のポリマは芳香族ポリエステルとは化学的に異なるものである。従って、芳香族ポリエステルと、混合物の処理中、ルミネセンス分子がポリエステル相内にとどまるようにルミネセンス染料分子がポリエステルに共有結合されるPMMA、PS又はPCのような他のポリマとの非相溶性混合物の使用が、特に提唱される。相1は異なるやり方で相2に分散され得る。例えば、図3aの説明に加えて、図3bに示されているように、相1は芳香族ポリエステルドメインのネットワークを形成する。このやり方では、射出成形可能な系が優れた寿命及び高い効率で生成され得る。
【0094】
第1の実施形態では、我々は、第1のポリマ及び第2のポリマの非相溶性混合物とルミネセンス染料とを有するルミネセンス要素を提案する。ここで、ルミネセンス染料分子は第2のポリマに共有結合されており、第2のポリマはポリエステのような低い酸素透過性を有するポリマであり、第1のポリマはポリエステルではない。
【0095】
図3cは、変換体200が添加物510を更に有する実施形態を模式的に示している。そのような添加物は粒子である。そのような添加物は分散されている。添加物510は、反射性の粒子であってもよいが、代替又は追加として、他のルミネセンス材料も有し得る。例えば適用され得る無機材料は、YAG:Ce3+のような三価のセリウムがドープされたガーネット系、SrGa:Eu2+のような二価のEuがドープされたチオガリウム酸塩及びSrS:Eu2+のような硫化物であり、これらは全て当該技術分野においてよく知られている(例えば、米国特許US7,115,217号公報及び米国特許US6,850,002号公報を参照されたい。)。また、量子ドット(QD)も適用され得る。他の実施形態では、上記変換体は、例えば、変換体からの光の取り出しを促進するために、Al含有粒子及び/又はTiO含有粒子等の粒子のような構造を更に含んでいる。従って、オプションで、上記マトリクスは、散乱要素、例えば、Al又はTiOの粒子を有している。波長変換材料に適した無機蛍光体の例は、セリウムがドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce又はCeがドープされたYAGとも呼ばれ、YAl12:Ce3+、)又はルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG、LuAl12)、α−SiAlON:Eu2+(黄)及びMSi:Eu2+(赤)を含んでいるが、これらに限定されない。上記Mは、カルシウムCa、Sr、Baから選択される少なくとも1つの元素である。典型的には青色発光光源と組み合わせて本発明の実施形態において用いられ得る無機蛍光体の他の例は、YAG:Ceである。更に、上記アルミニウムの一部は、ガドリニウム(Gd)又はガリウム(Ga)と置換されていてもよく、より多量のGdは、黄色の放射の赤色へのシフトをもたらす。他の好適な材料は、赤色範囲において光を発するSrSi:Eu2+のような(Sr1−x−yBaCa2zSi5aAl8a:Eu2+(0≦a<5、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z≦1及び(x+y)≦1)を含んでいる。本発明の実施形態では、上記波長変換材料は、量子ドットを有していてもよい。量子ドットは、一般にわずか数ナノメートルの幅又は径を有する半導体材料の小さい結晶である。入射光により励起されると、量子ドットは結晶のサイズ及び材料により決定される色の光を発する。従って、ドットのサイズを適合させることにより特定の色の光が生成され得る。可視範囲において発光する最も知られている量子ドットは、硫化カドミウム(CdS)及び硫化亜鉛(ZnS)のようなシェルを有するセレン化カドミウム(CdSe)に基づくものである。リン化インジウム(InP)、硫化銅インジウム(CuInS)及び/又は硫化銀インジウム(AgInS)のようなカドミウムが含まれていない量子ドットも用いられ得る。量子ドットは、非常に狭い発光帯を示し、従って、飽和色を示す。更に、発光色は、量子ドットのサイズを適合させることにより容易に変更され得る。適切な波長変換特性を有すると仮定すると、当該技術分野において知られている任意のタイプの量子ドットが本発明において用いられ得る。しかしながら、環境の安全性及び環境問題の理由のために、カドミウムが含まれていない量子ドット又は少なくとも非常に低いカドミウム含有量を有する量子ドットを用いることが好ましい。
【0096】
図4aに示されているように、上記ルミネセンス染料分子は、ポリエステル高分子のポリマ主鎖に共有結合されている。ポリマ鎖又は骨格は、参照符号80で示されている。
【0097】
他の実施形態では、我々は、図4bに示されているように、ルミネセンス染料分子が、ポリエステルのような低い酸素透過率を有するポリマの側鎖に共有結合されていることを提案する。参照符号81は、ここでは少なくともルミネセンス部分212を含む官能基を示している。
【0098】
他の実施形態では、我々は、図4cに示されているように、ルミネセンス染料分子が、架橋結合された第2のポリマの主鎖に共有結合されていることを提案する。参照符号83は、架橋結合を示している。同じアイディアが図4bに模式的に示されているポリマに当てはまる。従って、他の実施形態では、我々は、図4dに示されているように、ルミネセンス染料分子が、架橋結合された第2のポリマの側鎖に共有結合されていることを提案する。
【0099】
ここでも、上記ポリマは、三次元ネットワークを形成するように架橋結合され得る反応基を有する熱可塑性の材料である。
【0100】
本明細書において上述されたポリマの構成の組み合わせも同様に用いられ得ることは言うまでもない。
【0101】
他の実施形態では、我々は、第2のポリマ、第1のポリマ及び第3のポリマと、ルミネセンス染料との非相溶性混合物を有し、ルミネセンス染料分子が第2のポリマに共有結合され、第2のポリマがポリエステルであって、第1及び第3のポリマがポリエステルではないルミネセンス要素を提案する。更に他の実施形態では、我々は、第2のポリマ、第1のポリマ及び第3のポリマと、ルミネセンス染料との非相溶性混合物を有し、ルミネセンス染料分子が第2のポリマ及び第1のポリマに共有結合され、第2のポリマ及び第1のポリマがポリエステルであって、第3のポリマがポリエステルではないルミネセンス要素を提案する。
【0102】
更に他の実施形態では、我々は、第2のポリマ、第1のポリマ及び第3のポリマと、ルミネセンス染料との非相溶性混合物を有し、ルミネセンス染料分子が第2のポリマに共有結合され、第2のポリマ及び第1のポリマがポリエステルであって、第3のポリマがポリエステルではないルミネセンス要素を提案する。好ましい実施形態では、第2のポリマはポリエステルであり、PET及びPENポリマである。他の実施形態では、第1のポリマは、ポリエステルではなく、PMMA、PS及びPCのような他の熱可塑性ポリマである。
【0103】
本明細書において提案された光変換要素、すなわち、変換体200は、提案された混合物を有する粒状体(granulate)の射出成形により製造されることが可能であり、図5aを参照されたい。しかしながら、種々の材料の粒状体の混合物の射出成形によっても製造されることが可能であり、これは図5bを参照されたい。参照符号5211は第2のポリマ211の粒子を指し、参照符号5301は第1のポリマ301の粒子を指している。
【実施例】
【0104】
図6に示されているように、重合可能な染料単量体J、グリコール及びジメチルテレフタレートの混合物の重縮合により、n及びmが整数であるランダム共重合体が調製された。
【0105】
化合物Hは、Dotcheva, Dobrinka; Klapper, Markus; Muellen, Klaus, Macromolecular Chemistry and Physics (1994), 195(6), 1905-11に従って調製された。
【0106】
N,N′−ビス−(4−(3−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4,9,10−テトラカルボジイミドJ:1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4,9,10−テトラカルボキシ−3,4,9,10−ビス無水物H(600mg、0.79mmol)、酢酸亜鉛二水和物(351.2mg、1.60mmol)及びアニリンB(1.6g、6.8mmol)がイミダゾール(10g)を用いて混合された。反応混合物が、窒素下において150℃で24時間攪拌された。室温に冷却後、酸性pHが得られるまで、この混合物に1NHCl水溶液が加えられた。結果として得られた混合物は、DCM(4x)を用いて抽出された。混合DCM溶液は、NaSOを用いて乾燥された。溶媒を蒸発させた後、粗生成物が、DCM→CM/MeOH=40/1で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製され、暗紫色の固体としてペリレンビスイミドJ(220mg、収率23%)を与えた。
【0107】
コポリエステルK:2.9gのJ、101gのジメチルテレフタレート、50gのエチレングリコール、0.08gの酢酸カルシウム無水物及び0.015gの三酸化アンチモンの混合物が、重合反応器内において窒素の流れの下、200℃で3時間加熱された。その後、真空が適用され、反応が4時間続けられ、温度は280℃まで着実に上昇し、過剰のエチレングリコールが蒸留されて取り除かれた。冷却後、赤色の固体が得られた。
【0108】
このポリマ材料の押出成形により作製されるフィルム(フィルム3)が形成された。青色光の透過率が90%であるように層の厚さが設定された。
【0109】
上述したやり方と同じやり方であるが化合物Jを排除して、PETが作製された。このポリマが、(上記染料Jの時点で)対応する量の構造的に非常に類似した非共重合性染料F−305(BASF、ルードヴィヒスハーフェン)と混合され、フィルム4が共重合体から作製されたフィルム3と等しい光学的特性を有するように上述したやり方と同じやり方でフィルム(フィルム4)が作製された。
【0110】
寿命をテストするために、両方のフィルムが、60℃において4.1/W/cmで青色光により照らされた。寿命は、10%のルミネセンス強度の低下として見積もられる。共重合体から作製されたフィルム3は、PET及びF−305の(非共重合)混合物から作製されたフィルム4よりも3倍長い寿命を示した。
【0111】
当業者は、本発明が上述した好ましい実施形態に決して限定されないことを理解する。それどころか、多くの修正例及び変形例が添付の特許請求の範囲の範囲内において可能である。例えば、各波長変換部分は、G、G、G、G、G、E、I、L、B、J、Q、T、T′、R、R′の位置の任意の1つに2つ以上の結合基を有していてもよく、それにより、所謂ポリマネットワークを生じさせるポリマ骨格間の架橋を達成する。
【0112】
射出成形により、顆粒(粒子)の形態のルミネセンス部分を有する上記ポリマがPMMAと混合された。混合物が、発光顕微鏡検査を用いて調べられた。PMMA領域から生じるルミネセンスは存在せず、コポリエステル領域は大いに発光性であることが観察された。比較のために、ポリエステル分子に共有結合されていない(上記と非常に類似した構造を有する)発光部分を含む上記のようなポリエステル化合物が生成された。続いて、このルミネセンス部分を含むポリエステル化合物が、PMMAと混合された。その後、混合物が発光顕微鏡検査を用いて調べられた。ルミネセンス分子は、ポリエステル内だけではなく、PMMA領域にも移動したことが観察された。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3C
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6