特許第6290198号(P6290198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290198
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】吸遮音材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20180226BHJP
   D04H 1/498 20120101ALI20180226BHJP
   D04H 1/4342 20120101ALI20180226BHJP
   D04H 1/488 20120101ALI20180226BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G10K11/162
   D04H1/498
   D04H1/4342
   D04H1/488
   B60R13/08
【請求項の数】32
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-518336(P2015-518336)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公表番号】特表2015-529834(P2015-529834A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】KR2013005424
(87)【国際公開番号】WO2013191474
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0066309
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】キム、クン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ウォン、ジン
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−097117(JP,A)
【文献】 特開平11−158776(JP,A)
【文献】 特開2000−314066(JP,A)
【文献】 特開2004−145180(JP,A)
【文献】 特開2005−335279(JP,A)
【文献】 特開2006−138935(JP,A)
【文献】 特開2007−169545(JP,A)
【文献】 特開2008−146001(JP,A)
【文献】 特開2008−026517(JP,A)
【文献】 特開2009−167571(JP,A)
【文献】 特開2010−085873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0225952(US,A1)
【文献】 米国特許第06583072(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00−13/00
D04H 1/00−18/04
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布と、
前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーと、
を含むことを特徴とする吸遮音材。
【請求項2】
前記耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項3】
前記耐熱繊維は、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、及びセラミック繊維から選択された1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の吸遮音材。
【請求項4】
前記耐熱繊維はアラミド繊維であることを特徴とする請求項3に記載の吸遮音材。
【請求項5】
前記不織布は、繊度1〜15デニールのアラミド繊維からなり、厚さ3〜20mmの単一層の不織布であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項6】
前記不織布は、密度100〜2000g/mであることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項7】
前記不織布は、密度200〜1200g/mであることを特徴とする請求項5に記載の吸遮音材。
【請求項8】
前記バインダーは熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の吸遮音材。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo−クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の吸遮音材。
【請求項11】
前記吸遮音材は、適用対象の立体構造形状に成形されることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項12】
前記吸遮音材は単一層または多層で構成されることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項13】
前記吸遮音材は自動車用であることを特徴とする請求項1から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材。
【請求項14】
a)耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、
b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項15】
前記b)段階の後に、前記乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階(c段階)、
をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項16】
前記耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項17】
前記耐熱繊維は、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、及びセラミック繊維から選択された1種以上であることを特徴とする請求項16に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項18】
前記耐熱繊維は、繊度1〜15デニール及び原糸の長さ20〜100mmのアラミド繊維であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項19】
前記不織布は、厚さ3〜20mmで、密度100〜2000g/mであることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項20】
前記a)段階の前に、繊度1〜15デニールのアラミドの耐熱繊維を用いてニードルパンチ工程によって厚さ3〜20mmのアラミド不織布を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項21】
前記不織布は、アップ−ダウンニードル、ダウン−アップニードル、アップ−ダウンニードルを連続して行って形成されることを特徴とする請求項20に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項22】
前記不織布は、ニードルストローク30〜350回/mで形成されることを特徴とする請求項20に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項23】
バインダー溶液は、バインダー1〜60重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤1〜40重量%、及び残量の溶媒からなることを特徴とする請求項14、15及び20のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項24】
前記バインダー溶液は、バインダー1〜30重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、難燃剤1〜30重量%、及び溶媒40〜95重量%からなることを特徴とする請求項23に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項25】
前記バインダーは熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項26】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項25に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項27】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo−クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上であることを特徴とする請求項26に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項28】
前記乾燥は70〜200℃温度で行い、前記乾燥された不織布には不織布100重量部に対してバインダーを1〜300重量部含むことを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項29】
前記吸遮音材は自動車用であることを特徴とする請求項14から28のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。
【請求項30】
i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、
ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように、請求項1から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材を製作及び成形する段階と、
iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、
を含むことを特徴とする騒音誘発装置の騒音低減方法。
【請求項31】
前記装置は、モータ、エンジンまたは排気系であることを特徴とする請求項30に記載の騒音誘発装置の騒音低減方法。
【請求項32】
前記隣接は、騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離を置いて設置するか、または騒音誘発装置に適用する部品として成形して適用することを特徴とする請求項30に記載の騒音誘発装置の騒音低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸遮音材及びその製造方法に関するもので、より詳細には、耐熱繊維からなる不織布にバインダーを含浸させて形成し、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れ、室温はもちろん、200℃以上の高温が維持される部位に適用可能で、かつ前記バインダーを用いて成形できる吸遮音材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業の高度発達に伴い、人間にとって不要な騒音が生じ、その騒音による被害の程度がますます増加している。そのため、多様な騒音防止対策が提案されている。このような騒音防止対策の一環として、防音、吸音または遮音機能を持つ新たな素材の吸遮音材を開発しようとする研究が盛んである。
【0003】
吸遮音材が要求される産業分野は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、芝刈り機などの電気製品分野、自動車、船舶、航空機などの輸送機器分野、または壁材、床材などの建築材料分野などが代表的である。その他にも色々な産業分野で吸遮音材の使用が要求されている。通常的に産業分野に適用される吸遮音材は、吸音性以外にも適用用途によって軽量化、難燃性、耐熱性、断熱性がさらに要求される。特に、200℃以上の高温が維持されるエンジンまたは排気系などに適用される吸遮音材は、難燃性及び耐熱性がさらに要求される。現在、耐熱性に優れた吸遮音材素材としてはアラミド繊維が注目を浴びている。
【0004】
また、吸遮音材に難燃性、撥水性などの機能性を付与するために、アラミド繊維が含まれた不織布と機能性表皮材が積層された構造の吸音材が多数開発されている。
【0005】
例えば、特許文献では、耐熱性アラミド短繊維とポリエステル熱可塑性短繊維が交絡している不織布層と、アラミド短繊維からなる湿式不織布からなる表皮材層が積層された難燃性吸音材が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、耐熱性アラミド短繊維またはアラミド短繊維とポリエステル熱可塑性短繊維を混繊した不織布層と、撥水剤で処理された表皮材層が積層された撥水性吸音材が開示されている。
【0007】
また、特許文献3では、耐熱性アラミド繊維で構成された不織布層と、耐熱性アラミド繊維を含む繊維シートからなる表皮材層が積層された耐熱性吸音材が開示されている。
【0008】
前記従来技術に開示されている吸音材は、不織布の片面に難燃性、撥水性などの機能性を付与するために表皮材層を別途に積層させた構造であり、前記不織布層と表皮材層の2つの層を一体化するための熱圧工程をさらに行わなければならない。したがって、前記一体化工程を別途に行うことによって、工程が複雑になり、煩わしいだけでなく、熱圧工程中に添加剤として含まれた難燃剤、撥水剤などが燃焼して有毒ガスを排出することもあり、また、熱圧により不織布の内部構造が変形して吸音性を低下させる要因になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2007−33310号
【特許文献2】日本公開特許第2007−39826号
【特許文献3】日本公開特許第2007−138953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の問題点を解決するために、本発明者らは吸遮音材として吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れ、かつ成形も可能な新たな吸遮音材の素材を開発するために長期間研究してきた。その結果、複雑な3次元の迷路構造による不定形の通気孔が形成された不織布の内部にバインダーが浸透して通気孔を塞ぐことなく不織布内部の3次元形状を維持したまま硬化することによって、不織布の吸音性などを始め、物性を改善する効果と共に、バインダーの硬化過程中に所望する形状に成形が可能となる効果が得られる、新たな吸遮音材を開発することで本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明は、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れたことはもちろん、耐熱繊維からなる不織布に含浸されたバインダーが硬化する過程中に所望する形状に成形が可能となる吸遮音材を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、耐熱繊維からなる不織布をバインダーに含浸、乾燥して吸遮音材を製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記吸遮音材を騒音誘発装置に適用して騒音を低減させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布と、前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれるバインダーと、を含む吸遮音材をその特徴とする。
【0015】
また、本発明では、a)耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、を含む吸遮音材の製造方法をその特徴とする。
【0016】
また、本発明では、i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように前記吸遮音材を製作及び成形する段階と、iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、を含む騒音誘発装置の騒音低減方法をその特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸遮音材は、耐熱繊維からなる不織布にバインダーが含浸されているため、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れると共に前記バインダーによって吸遮音材の立体的形状を実現することができる。
【0018】
また、本発明の吸遮音材は、従来の積層構造の吸音材で問題になった、不織布と表皮材を一体化するための熱圧工程を行わなくても良い。
【0019】
また、本発明の吸遮音材は、バインダー溶液中に機能性添加剤をさらに含んで製造した場合、吸遮音材に機能性を付与するための表皮材を積層しなくても良いという工程上の有利な効果が得られる。
【0020】
また、本発明の吸遮音材は、吸音性以外にも難燃性、耐熱性、及び遮熱性も同時に優れるため、200℃以上の高温が維持される騒音装置に適用しても吸遮音材が変形または変成することがない。
【0021】
また、本発明の吸遮音材は、バインダーとして熱硬化性樹脂を用いた場合、熱硬化性樹脂の硬化過程中に所望する形状に成形可能である。具体的に、吸遮音材を製造する高温成形過程では熱硬化性樹脂の硬化と共に成形を行うようになり、工程の単純化効果が得られる。
【0022】
また、本発明の吸遮音材を構成する不織布として耐熱繊維を用いるため、バインダーとして熱硬化性樹脂を用いても熱硬化過程中に生じる反応熱による不織布の熱変形がない。
【0023】
したがって、本発明の吸遮音材は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、芝刈り機などの電気製品分野、自動車、船舶、航空機などの輸送機器分野、または壁材、床材などの建築材料分野などを始め、防音、吸音または遮音が要求される分野における吸遮音材として効果的である。本発明の吸遮音材は200℃以上の高温が維持される騒音誘発装置に吸遮音材として効果的である。特に、本発明の吸遮音材を自動車分野に適用する場合、自動車のエンジン及び排気系などのような騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離を置いて設置するか、または騒音誘発装置に適用する部品として成形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】バインダーに含浸される前後の不織布に対する電子顕微鏡写真(×300)である。(A)はバインダーに含浸される前の不織布写真、(B)は不織布100重量部を基準としてバインダーが20重量部含浸された不織布の写真、(C)は不織布100重量部を基準としてバインダーが50重量部含浸された不織布の写真である。
図2】吸遮音材を部品として成形して自動車の騒音誘発装置に適用した例を示す概略図である。(A)は自動車エンジンに適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車のエンジンの一部に装着した例を示す写真である。
図3】吸遮音材を自動車の騒音誘発装置から一定の距離を置いて設置して適用した例を示す概略図である。(A)は自動車の車体下部に適用する吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車の車体下部に付着した例を示す写真である。
図4】不織布の密度による吸遮音材の吸音性能を比較したグラフである。
図5】アルミニウム遮熱板と本発明の吸遮音材の遮熱性能を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、吸遮音材及びその製造方法に関するものである。本発明の吸遮音材は、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れ、耐熱繊維不織布と同一層に位置するバインダーを用いて所望する立体的形状に成形可能であるという点にその優秀性がある。
【0026】
本発明の一様態によれば、本発明は、耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布と、前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーと、を含む吸遮音材をその特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい実施例によれば、前記耐熱繊維は限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上である。
【0028】
また、本発明の好ましい実施例によれば、前記耐熱繊維はアラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、及びセラミック繊維から選択された1種以上である。
【0029】
また、本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記耐熱繊維はアラミド繊維である。
【0030】
また、本発明の好ましい実施例によれば、前記不織布は繊度1〜15デニールのアラミド繊維からなり、厚さ3〜20mmの単一層の不織布である。
【0031】
また、本発明の好ましい実施例によれば、前記不織布の密度は100〜2000g/mである。
【0032】
また、本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記不織布の密度は200〜1200g/mである。
【0033】
また、本発明の好ましい実施例によれば、前記バインダーは熱硬化性樹脂である。
【0034】
また、本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記熱硬化性樹脂は不織布の内部構造内に3次元網状構造を形成できるエポキシ樹脂である。
【0035】
また、本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記エポキシ樹脂はビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo−クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上のエポキシ樹脂である。
【0036】
本発明による吸遮音材の構造を図1に基づいて具体的に説明する。
【0037】
図1は、バインダーに含浸される前後の不織布内部の3次元形状を確認するための電子顕微鏡写真である。
【0038】
図1の(A)は、バインダーに含浸される前の不織布の内部構造を示す電子顕微鏡写真で、耐熱繊維の原糸が交絡して不定形の通気孔が形成されていることが分かる。図1の(B)と(C)は、前記不織布にバインダーを含浸させた後の電子顕微鏡写真で、耐熱繊維の原糸に全体的にバインダーが微細に分布して付着していることが分かり、バインダーの含量が増加すると、原糸の表面にはさらに多量のバインダーが含まれていることを確認することができる。
【0039】
不織布は、その製造方法により異なるが、繊維が3次元的に無秩序に配列されている。したがって、不織布内部の気孔構造は、それぞれ独立している毛細管チューブの束が形成されるというより、規則または不規則な繊維の配列によって3次元的に連結された非常に複雑な迷路構造(labyrinth system)を形成する。すなわち、本発明で不織布は、耐熱繊維を含む原糸が粗く交差することによって、不規則に通気孔(micro cavity)が形成されている。
【0040】
前記不織布をバインダーに含浸すると、耐熱繊維を含む不織布の原糸の表面にはバインダーが微細に、かつ全体的に均一に分布して付着することで、含浸前の不織布に比べて、さらに微細な大きさの通気孔を形成する。不織布の内部構造中にさらに微細な通気孔が形成されるということは、騒音の共鳴性が増加することを意味し、それによって吸遮音性が向上することを意味する。この際、各バインダーがそれぞれの3次元網状構造を形成して硬化する場合、不織布内部でより多い微細通気孔が形成されるため、吸遮音性はさらに向上される。
【0041】
したがって、本発明の吸遮音材は、不織布にバインダーが均一に浸透して不織布本来の3次元形状を維持し、バインダーの追加的な硬化によって微細通気孔(Micro ventilator)がさらに多く形成されるため、騒音の伝播によって不織布内でさらに多く、多様な騒音の共鳴を形成することで、騒音の消滅効果が増加し、騒音の消滅効率性が極大化されて吸音性能が非常に改善される。
【0042】
前記図1の電子顕微鏡写真に示すように、本発明の吸遮音材は、不織布を構成する耐熱繊維の原糸の表面にバインダーが均一に分散、分布されている。
【0043】
このような内部構造を有する本発明による吸遮音材については、各構成成分を中心に具体的に説明すれば下記の通りである。
【0044】
本発明では不織布を構成する主な繊維として耐熱繊維を用いる。
【0045】
耐熱繊維は、高温及び超高熱条件で耐えられる耐久性に優れた素材であれば何れもよい。具体的に耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であるものを用いる。好ましくは、前記耐熱繊維として限界酸素指数(LOI)が25〜80%で、耐熱温度が150〜3000℃であるものを用いる。さらに好ましくは、前記耐熱繊維として限界酸素指数(LOI)が25〜70%で、耐熱温度が200〜1000℃であるものを用いる。また、耐熱繊維は繊度が1〜15デニール、好ましくは1〜6デニールで、原糸の長さは20〜100mm、さらに好ましくは40〜80mmであるものを用いることが良い。
【0046】
前記耐熱繊維は、当分野で通常的に呼ばれる「スーパー繊維」を用いることができる。スーパー繊維は、具体的にアラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、セラミック繊維などから選択された1種以上を含むことができる。
【0047】
本発明では耐熱繊維として好ましくはアラミド繊維を使用する。具体的に、本発明では耐熱繊維としてメタ−アラミド、パラ−アラミドまたはこれらを混合して使用することができる。本発明で不織布の原糸として用いるアラミド繊維は、繊度1〜15デニール、好ましくは1〜6デニールである。原糸の長さは20〜100mm、好ましくは40〜80mmであることが良いが、原糸の長さが短すぎるとニードルパンチ時の原糸の交絡が難しくなって不織布の結束力が弱くなり、原糸の長さが長すぎると不織布の結束力は向上するが、カーディング(carding)時の原糸の移送が円滑でないという問題がある。
【0048】
アラミド繊維は、ベンゼン環のような芳香族環がアミド群によって結合された構造を形成する芳香族ポリアミド繊維である。脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン)と区別するために、芳香族ポリアミド繊維を「アラミド(Aramide)」という。アラミド繊維は、芳香族ポリアミド紡糸(Polyamide spinning)により製造し、芳香族環に結合されるアミドの結合位置によってメタ−アラミド(m−Aramid)、パラ−アラミド(p−Aramid)に分けられる。
【化1】
【化2】
【0049】
前記一般式(1)で表されるメタ−アラミド(m−Aramid)は、塩化イソフタロイル(Isophthaloyl chloride)とメタ−フェニレンジアミン(m−phenylene diamine)をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒に溶かして乾式紡糸により製造される。メタ−アラミドは、屈曲性高分子構造によって破断伸度が22〜40%で比較的高く、染色が可能なものであるため、繊維化する場合に効果的である。このようなメタ−アラミドは、ノーメックス(NomexTM、DuPont社)、コーネックス(ConexTM、Teijin社)という商品名で市販されている。
【0050】
前記一般式(2)で表されるパラ−アラミド(p−Aramid)は、塩化テレフタロイル(Terephthaloyl chloride)とパラ−フェニレンジアミン(p−phenylene diamine)をN−メチルピロリドン(NMP)溶媒に溶かして湿式紡糸により製造される。パラ−アラミドは、線形高配向の分子構造によって高強度の特性を持つが、メタ−アラミドに比べて3〜7倍程度高いため、補強材や保護材などとして用いられる。また、パラ−アラミドは、耐化学性が強く、熱収縮が低く、形態安定性に優れ、切断強度が高く、耐炎性(Flame resistant)と自己消火性(Self extinguish)を有する。このようなパラ−アラミドは、ケブラー(KevlarTM、DuPont糸)、トワロン(TwaronTM、Teijin糸)、テクノーラ(TechnoraTM、Teijin糸)という商品名で市販されている。
【0051】
前記アラミドは、フィラメント(Filament)、ステープル(staple)、糸(yarn)などの製品として提供されており、強度補強素材(変圧器、モータなど)、絶縁素材(絶縁ペーパー、絶縁テープなど)、耐熱性繊維(消防服、防火手袋など)、高温用フィルタなどに用いられている。
【0052】
本発明の吸遮音材を構成する不織布は、実質的には耐熱繊維を原糸として使用することを特徴としているが、不織布の原価低減、軽量化、機能性の付与などのために耐熱繊維の原糸に他の繊維をさらに含んで製造した不織布も本発明の範囲に属する。具体的に、本発明の不織布は、耐熱繊維を原糸として製造したものであるが、耐熱繊維だけで出来た不織布に限定されることはない。本発明の不織布に含まれた耐熱繊維の原糸の含量を限定すれば、不織布の重さを基準として耐熱繊維が30〜100重量%、さらに好ましくは60〜100重量%である。
【0053】
また、本発明の吸遮音材は、前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーを含む。したがって、本発明は、前記バインダーとして不織布内部の3次元形状を維持できる素材のバインダーであれば何れもよい。前記「不織布内部の3次元形状を維持する形態」とは、不織布にバインダーが含浸されると、バインダーが不織布繊維の原糸の表面に全体的に均一に分布された状態で付着され、不定形の通気孔構造を維持またはさらに形成することで、不織布本来の3次元内部形状を維持することを意味する。
【0054】
一般的に、バインダーは、2つの素材間の接着または接合のために用いられる材料を称するが、本発明でのバインダーは耐熱繊維からなる不織布に含浸された材料を称する。
【0055】
このように不織布に含浸されるバインダーとして様々な素材が適用される。先ず、バインダー素材として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を考慮することができる。
【0056】
熱可塑性樹脂に代表されるポリアミド系樹脂は、耐熱繊維に代表されるアラミド繊維と同様に結晶性極性基を持っている。そのため、熱可塑性耐熱繊維からなる不織布に熱可塑性バインダーが含浸されると、これらの互いに類似した結晶性極性基によって面接触が行われ、これら接触部には固い境界層が形成されて不織布の通気孔を部分的に塞ぐようになる。すなわち、耐熱繊維からなる不織布に含浸されるバインダーに熱可塑性樹脂を使用すると、不織布の通気孔が部分的に詰まって吸音性能が低減される。一方、通気孔が詰まると、通常的に遮音性能が向上すると予測されるが、遮断された騒音は不織布内部で消滅することではなく、他の経路で音が伝えられるため、熱可塑性バインダーの含浸による遮音性能の向上も期待することができない。また、無機系耐熱繊維からなる不織布に熱可塑性バインダーを含浸させる場合、これらの間の接着力が弱いため、別途の接着性添加剤を使用しなければならない。
【0057】
反面、熱硬化性バインダーは、熱可塑性耐熱繊維と比較すると、全く異なる物理化学的特性を有する異質素材である。そのため、熱可塑性耐熱繊維からなる不織布に熱硬化性バインダーが含浸されると、これらの異質特性のため、線接触による境界層が形成され、不織布の通気孔が開かれたまま存在する。すなわち、耐熱繊維からなる不織布に含浸されるバインダーとして熱硬化性樹脂を使用すると、不織布内部の3次元形状の維持が可能となる。したがって、本発明では前記バインダーとして好ましくは熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0058】
また、熱硬化性樹脂は、光、熱または硬化剤によって硬化する特性と、高温条件でもその形状が変形しない特性を持っている。したがって、本発明は、耐熱繊維と熱硬化性バインダーを特定条件で構成することで、成形後に高温条件でも成形された形状をずっと維持できる効果が得られる。よって、不織布に含浸されるバインダーに熱硬化性樹脂を使用すると、樹脂の硬化過程中に所望する形態に成形できるだけでなく、高温条件でも成形された形状を維持するというさらなる効果を期待することもできる。
【0059】
以上、説明した通り、耐熱繊維からなる不織布に含浸させるバインダーとして熱硬化性樹脂を使用すると、不織布内部の3次元形状を維持する効果以外に、バインダー樹脂の硬化反応中に所望する形状への成形が可能となるという効果も期待することができる。
【0060】
前記バインダーとして、さらに好ましくはエポキシ樹脂を使用することができる。エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂の1種類で、硬化時に3次元的網状構造を有する高分子物質として硬化する特性がある。したがって、エポキシ樹脂は、不織布の内部構造内に浸透して硬化する時、それぞれの網状構造の形成によるまた他の通気孔を形成するため、不織布内部でより多い微細通気孔が形成され、吸音性能がより向上できるようになる。
【0061】
また、前記硬化反応が硬化剤の存在下で行われると、より発達した3次元網状構造を形成できるため、吸音効果はより向上される。具体的には、エポキシ樹脂内のエポキシ群またはヒドロキシ群と硬化剤内のアミン群、カルボン酸群などの官能基が互いに反応して共有結合により架橋を形成して3次元的網状高分子を形成することになる。この際、硬化剤は、硬化反応を促進させる触媒として作用するだけでなく、反応に直接関与してエポキシ樹脂の分子内に連結される。したがって、硬化剤の選択により、通気孔の大きさ及び物性を調節することができる。
【0062】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂などから選択された1種以上を使用することができる。前記エポキシ樹脂としてエポキシ当量が70〜400範囲のものを使用することがさらに好ましい。その理由は、エポキシ当量が足りないと、3次元網状構造を形成するための分子間の結合力が低いか、耐熱繊維の接着力が低くなって吸遮音材の物性を低下させる要因になり得る。反面、エポキシ当量が高すぎると、極端に高密度の網状構造を形成して吸音性が低下することがある。
【0063】
また、本発明では、バインダーに熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化剤をバインダー溶液に共に含んで使用してもよい。前記硬化剤は、バインダーに結合された官能基としてエポキシ群またはヒドロキシ群と反応しやすい官能基を有する化合物を使用することが良い。このような硬化剤は、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、ウレア、アミド、イミダゾールなどが挙げられる。前記硬化剤を具体的に例示すると、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF、MEA)、ジアミノシクロヘキサン(DACH)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(NMA)、ジシアンジアミド(Dicy)、2−エチル−4−メチル−イミダゾールなどから選択された1種以上が挙げられる。さらに好ましくは硬化剤として脂肪族アミン系またはアミド系が挙げられ、これらは比較的架橋性に優れ、耐薬品性、耐候性も非常に高い。最も好ましくは架橋性、難燃性、耐熱性、貯蔵安定性、加工性をなどを考慮してジシアンジアミド(Dicy)が挙げられる。ジシアンジアミド(Dicy)は、融点が200℃以上で高く、エポキシ樹脂に配合された後にも貯蔵安定性に優れるため、硬化及び成形するまで十分な作業時間を確保することができる。
【0064】
また、本発明では、バインダーに用いられる熱硬化性樹脂の硬化を促進させる触媒を使用してもよい。前記触媒は、ウレア、ジメチルウレア、第4級DBUのテトラフェニルホウ酸塩、第4級臭化ホスホニウムなどから選択された1種以上が挙げられる。前記触媒は、バインダーが含まれている溶液に共に含んで使用してもよい。
【0065】
また、本発明では、吸遮音材に機能性を付与するために、様々な添加剤、例えば、難燃剤、耐熱向上剤、撥水剤などを使用することができる。前記添加剤は、バインダー溶液に含んで使用するため、吸遮音材に機能性を付与するための別途の表皮材を積層しなくても良い。
【0066】
前記難燃剤は、メラミン類、リン酸塩、金属ヒドロキシドなどが挙げられる。前記難燃剤は、具体的にメラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン、ホスファゲン、ポリリン酸アンモニウムなどから選択された1種以上が挙げられる。さらに好ましくは、難燃剤としてメラミン類を使用し、これによって難燃性と耐熱性を同時に向上させる効果が得られる。
【0067】
前記耐熱向上剤は、アルミナ、シリカ、タルク、クレー、ガラス粉末、ガラス繊維、金属粉末などが挙げられる。
【0068】
前記撥水剤は、フルオロ系などから選択された1種以上が挙げられる。
【0069】
その他にも当分野で通常的に使われている添加剤を目的に合わせて選択して使用することができる。
【0070】
本発明の他の様態によれば、本発明は、a)耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、を含む吸遮音材の製造方法をその特徴とする。
【0071】
本発明による吸遮音材の製造方法を各段階別に具体的に説明すると下記の通りである。
【0072】
前記a)段階は、耐熱繊維からなる不織布をバインダー溶液に含浸させる段階である。
【0073】
本発明では、前記不織布をバインダーに含浸させて吸音及び遮音特性を改善することはもちろん、所望する形状の吸遮音材として成形することができる。前記不織布を含浸させるバインダー溶液はバインダー樹脂以外にも硬化剤、触媒、通常の添加剤と溶媒を含む。
【0074】
バインダー溶液に含まれるバインダー、硬化剤、触媒、通常の添加剤は、上述した通りである。また、バインダー溶液の製造時に用いられる溶媒は、ケトン系、カーボネイト系、アセテート系、セロソルブ系などから選択された1種以上が挙げられる。前記溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジメチルカーボネイト(DMC)、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどから選択された1種以上が挙げられる。
【0075】
具体的に本発明で用いられるバインダー溶液は、好ましくはバインダー1〜60重量%と残量の溶媒を含む。本発明で用いられるバインダー溶液にさらに硬化剤と触媒を始め、その他の添加剤を含んで使用してもよい。この場合、バインダー溶液は、バインダー1〜60重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤1〜40重量%、及び残量の溶媒を含む。さらに好ましくは、バインダー溶液は、バインダー1〜30重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤として難燃剤1〜30重量%、及び溶媒40〜95重量%を含む。
【0076】
本発明のバインダー溶液は、その濃度の調節により、不織布に対する含浸程度を調節できるが、固形分の含量を基準として1〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%の濃度で製造して使用することが良い。バインダー溶液の濃度が薄すぎると、不織布に含浸されるバインダーの含量が低くて本発明が目的とする効果を得ることができなく、濃すぎると、不織布が固く硬化して吸遮音材としての機能を発揮することができない。また、バインダー溶液に含まれる硬化剤の含量が低すぎると、バインダーの完全な硬化を期待できなく、所望する成形体に成形できないだけでなく、吸遮音材の機械的強度を改善する効果が不十分になり、高すぎると、吸遮音材が固く硬化して貯蔵安定性などが劣化することがある。また、触媒の含量が低すぎると、反応を促進させる程度が弱く、高すぎると、貯蔵安定性などが劣化することがある。また、添加剤は、難燃剤、耐熱向上剤、撥水剤などを始め、当分野で通常的に用いられる添加剤から選択された1種以上が挙げられる。これら添加剤は、添加の目的によって適切に調節して使用され、その含量範囲が未満であれば添加効果が弱く、前記範囲を超えて使用することは経済性が落ち、かえって他の副作用を招くようになる。
【0077】
前記b)段階は前記含浸された不織布を乾燥させる段階である。
【0078】
本発明での乾燥は、バインダー溶液に含浸させた不織布を取り出して溶媒を除去する過程である。この際、適切な温度及び加圧を与えてもよい。加温する場合、70〜200℃温度、好ましくは100〜150℃を維持することが良い。本発明での乾燥は、不織布内のバインダーの含量を調節する過程であって、吸遮音材の物性を調節することができる。乾燥後の不織布内に含まれたバインダーの含量は、吸遮音材内部の通気孔の大きさ、形状、分布度を調節する重要な因子で、これによって吸遮音材の吸音特性及び機械的特性が調節される。本発明では前記乾燥過程で、不織布に含まれたバインダーの最終含量が不織布100重量部を基準として1〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部の範囲に調節することができる。
【0079】
一方、本発明は、前記b)段階の後に、乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階(c段階)をさらに含む吸遮音材の製造方法を含む。前記c)段階を含む吸遮音材の製造方法は、具体的に、a)耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、c)前記乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階と、を含む。
【0080】
前記c)段階は、乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階である。前記高温成形過程は、熱硬化性バインダーの硬化反応も考慮した過程であって、その成形温度は150〜300℃温度、さらに好ましくは170〜230℃温度を維持するようにする。
【0081】
一方、本発明は、前記a)段階の前に、耐熱繊維を用いてニードルパンチ工程で不織布を形成する段階(a−1段階)をさらに含む吸遮音材の製造方法をその特徴とする。例えば、前記a−1段階では、繊度が1〜15デニールのアラミドの耐熱繊維を用いてニードルパンチ工程で厚さ3〜20mmのアラミド不織布を形成する。
【0082】
前記a−1)段階を含む本発明による吸遮音材の製造方法は、例えば、a−1)繊度1〜15デニールのアラミドの耐熱繊維を用いてニードルパンチ工程で厚さ3〜20mmのアラミド不織布を形成する段階と、a)前記耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、を含む。
【0083】
また、前記a−1)段階を含む本発明による吸遮音材の製造方法は、例えば、a−1)繊度1〜15デニールのアラミドの耐熱繊維を用いてニードルパンチ工程で厚さ3〜20mmのアラミド不織布を形成する段階と、a)前記耐熱繊維の含量が30〜100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、c)前記乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階と、を含む。
【0084】
前記a−1)不織布を形成する段階は、耐熱繊維を用いたニードルパンチ(Needle Punching)工程を含む。不織布の厚さ及び密度変化により吸音性は変われるが、不織布の厚さ及び密度が大きいほど吸音性は増加すると予測される。
【0085】
本発明では、吸遮音材が適用される産業分野などを考慮すると、不織布の厚さは3〜20mmであることが好ましい。その理由は、不織布厚さが3mm未満であれば吸遮音材の耐久性と成形性を満足しにくく、厚さが20mmを超えると布地の製作及び加工時の生産性が低下し、原価が増加するという問題がある。また、不織布の重量は、性能と原価を両方とも考慮して、密度100〜2000g/m、好ましくは200〜1200g/m、さらに好ましくは300〜800g/mのものであることが良い。
【0086】
前記アラミド不織布は、カーディング(Carding)により形成された30〜100g/mのウェブを2〜12重に積層して第1アップ−ダウンプレニードル(Up−down preneedling)、第2ダウン−アップニードル(Down−up needling)、第3アップ−ダウンニードル(Up−down needling)の連続工程により、必要な厚さの調節、必要な結束力の確保、及び必要な物性の実現のための物理的交絡を形成する。この際、ニードル(needle)は、ワーキングブレード(working blade)が0.5〜3mmで、ニードルの長さ(クランクの外側(crank outside)からポイントまでの距離)が70〜120mmのかかり(Barb)タイプのニードルを使用する。ニードルストロークは30〜350回/mであることが好ましい。
【0087】
さらに好ましくは、不織布用原糸の繊度が1.5〜8.0デニール、パイル形成層の厚さが6〜13mm、ニードルのストローク数が120〜250回/m、不織布の密度が300〜800g/mであることが好ましい。
【0088】
上述したような製造方法により製造された吸遮音材の内部構造は電子顕微鏡で確認することができる。電子顕微鏡写真から分かるように、本発明の吸遮音材内部には1〜100μmの大きさを有する通気孔が分布しているが、これら通気孔は0.1〜500μm間隔で規則的または不規則的に分布している。
【0089】
本発明のまた他の様態によれば、本発明は、i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように前記吸遮音材を製作及び成形する段階と、iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、を含む騒音誘発装置の騒音低減方法を特徴とする。
【0090】
前記装置は、モータ、エンジン、排気系などを始め、騒音を誘発する装置を意味し、本発明の装置が前記モータ、エンジン、排気系に限定されることはない。前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように製作して使用することができる。本発明の吸遮音材は、バインダーの硬化過程中に成形可能であるという長所があるため、装置の立体構造と一部または全部が一致するように吸遮音材を成形製作して使用することができる。
【0091】
前記「隣接(adjacent)」とは、騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離を置いて設置するか、または騒音誘発装置に適用される部品として成形して適用することを意味する。また、本発明での隣接は、騒音誘発装置に結合された部材(例えば、他の吸遮音材)にさらに装着することも含む。
【0092】
図2及び図3には本発明の吸遮音材を自動車の騒音誘発装置に適用した代表例を概略的に示した。
【0093】
図2は、吸遮音材を部品として成形して自動車の騒音誘発装置に適用した例を示す概略図であって、(A)は自動車エンジンに適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車のエンジン一部に装着した例を示す写真である。
【0094】
また、図3は、吸遮音材を自動車の騒音誘発装置に設置して適用した例を示す概略図であって、(A)は自動車の車体下部に適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車の車体下部に付着した例を示す写真である。
【0095】
以上、説明したように、本発明の吸遮音材は、不織布の内部に3次元形状が維持されるようにバインダーが含浸されたもので、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れ、室温はもちろん、200℃以上の高温が維持される騒音装置に直接適用しても成形体の変形がほぼなく、本来の吸遮音効能が得られる。
【0096】
以下、本発明を次の実施例に基づいて、より詳細に説明するが、本発明が次の実施例によって限定されることはない。
【0097】
[実施例]吸遮音材の製造
実施例1.エポキシ樹脂に含浸されたアラミド不織布からなる吸遮音材の製造
限界酸素指数(LOI)40%、耐熱温度300℃、繊度2デニール、長さ51mmのメタ−アラミド短繊維に空気を吹き込んだ(Air Blowing)後、カーディングを用いて30g/mのウェブを形成した。形成されたウェブを水平ラッパーを用いて5m/minの生産速度でコンベアベルト上に10重オーバーラップ積層して積層ウェブを形成した。積層ウェブは、ニードルのストローク数が150回/mとなる条件でアップ−ダウンニードル、ダウン−アップニードル及びアップ−ダウンニードルを連続して行って密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造した。
【0098】
製造された不織布をバインダー溶液に1−dip 1−nip(Pick−up300%)の条件で含浸した。この際、バインダー溶液は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル8重量%、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー2重量%、ジシアンジアミド0.2重量%、ジメチルウレア0.02重量%、メラミンシアヌレート10重量%、ジメチルカーボネイト79.78重量%の組成を有する。
【0099】
含浸された不織布をバインダー溶液から取り出して150℃で乾燥し、乾燥された不織布100重量部を基準としてバインダーの含量が50重量部となるようにした。
【0100】
そして、乾燥された不織布を200℃で2分間硬化(Curing)して所望する形状に成形した。
【0101】
比較例1.アラミド不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1と同じニードルパンチ工程で密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造した。
【0102】
比較例2.エポキシ樹脂でコーティングされたアラミド不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1と同じニードルパンチ工程で密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造した。そして、不織布の表面にエポキシ樹脂のコーティング量が不織布100重量部を基準としてバインダーの含量が50重量部となるようにコーティングして150℃で乾燥して成形した。
【0103】
不織布の表面へのコーティング溶液は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル8重量%、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー2重量%、ジシアンジアミド0.2重量%、ジメチルウレア0.02重量%、メラミンシアヌレート10重量%、ジメチルカーボネイト79.78重量%の組成を有する。
【0104】
比較例3.熱可塑性樹脂に含浸されたアラミド不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1と同じニードルパンチ工程で密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造し、バインダー溶液に含浸、乾燥及び成形した。
【0105】
バインダー溶液は、ポリエチレン樹脂10重量%、メラミンシアヌレート(Melaminecyanurate)10重量%、ジメチルカーボネイト(DMC)80重量%の 組成を有する熱可塑性樹脂溶液を製造して使用した。
【0106】
比較例4.エポキシ樹脂に含浸されたPET不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1と同じニードルパンチ工程で密度300g/m及び厚さ6mmのポリエチレンテレフタルレート(PET)不織布を製造し、バインダー溶液に含浸、乾燥及び成形した。
【0107】
前記比較例4のPET不織布は、エポキシ硬化過程で発生する反応熱によってPET不織布が熱変形しはじめ、乾燥及び熱成形過程で完全に熱変形されてしまい、所望する形態に成形することができなかった。
【0108】
[実験例]
<吸遮音材の物性評価方法>
吸遮音材の物性は下記の方法で測定して比較した。
1.耐熱性の評価
吸遮音材の耐熱性を評価するために耐熱オーブンで260℃温度条件で300時間老化させ、標準状態(温度23±2℃、相対湿度50±5%)で1時間以上その状態を維持した後、外観及び引張強度を測定した。この際、外観では、収縮及び変形の有無、表面が剥けた部分があるか否か、下毛、亀裂の有無を肉眼で確認して判別した。引張試験は、ダンベル状1号試験片を任意に5枚取って標準状態で引張速度200mm/分条件で行った。
【0109】
2.熱サイクルの評価
吸遮音材の耐久性は熱サイクル試験法によって評価した。下記の条件を1サイクルにして5サイクルを実施して耐久性を判断した。
1)1サイクル条件
室温→高温(150℃×3時間)→室温→低温(−30℃×3時間)→室温→耐湿(50℃×95%RH)
2)耐久性の評価基準
熱サイクルを試験した後、外観の変化があるか否かを確認した。例えば、表面損傷、膨張、破砕、変色程度を確認し、前記外観の変化がない場合は「異常なし」と表記した。
【0110】
3.難燃性の評価
吸遮音材の難燃性はISO 3795燃焼性試験方法で測定した。
【0111】
4.不燃性の評価
吸遮音材の不燃性はUL94垂直難燃性試験方法で測定した。
【0112】
5.吸音性の評価
吸遮音材の吸音性はISO 354方法で測定した。
【0113】
6.通気量の評価
1)評価方法
フレーザー(FRAZIER)型試験器を用いて試験片を装着し、垂直通過して流れる空気の量を測定した。空気が試験片を通過する面積は5cmで、この時に加えられる圧力は125パスカル(Pa)に調整した。
【0114】
実験例1.耐熱繊維の種類による吸遮音材の特性比較
本実験例1では、耐熱繊維の原糸で製造された吸遮音材の物性を比較した。具体的には、前記実施例1と同じニードルパンチ工程で密度300g/m及び厚さ6mmの不織布を製造し、バインダー溶液に含浸、乾燥及び成形して吸遮音材を製造した。ただし、不織布の製造時に繊度2デニール、長さ51mmの下記表1に示す原糸を用いた。
【0115】
前記吸遮音材の物性評価方法によって、それぞれの吸遮音材の物性を測定した。下記表1と表2には耐熱繊維の種類別に製造された各吸遮音材について物性を測定した結果を示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
前記表1と表2の結果によれば、本発明で提案したように、限界酸素指数25%以上、耐熱温度150℃以上の耐熱繊維を用いて製造された吸遮音材は、耐熱性、耐久性、難燃性、不燃性及び吸音性を全て満足させることが分かる。それによって、本発明の吸遮音材を構成する不織布の素材に、スーパー繊維と知られている通常の耐熱繊維が全て適用可能であることを確認できた。
【0119】
実験例2.不織布の密度による吸遮音材の特性比較
本実験例2では前記実施例1と同じ方法で吸遮音材を製造するが、不織布の密度が異なるものを使用し、製造された吸遮音材の吸音性能は図4に示す。
【0120】
図4に示すように、密度が300g/mの不織布に比較して600g/mに増加した不織布を用いた時、吸遮音材の吸音性能がさらに優れるようになることを確認できた。
【0121】
実験例3.吸遮音材物性の評価
本実験例3では、吸遮音材を製造することに当たって、耐熱繊維からなる不織布に適用される熱硬化性バインダーの適用方式による吸遮音材の特性を比較した。
【0122】
具体的には、吸遮音材の製造時、不織布に適用される熱硬化性バインダーに含浸法(実施例1)を適用する場合と、コーティング法(比較例2)を適用する場合に製造された吸遮音材の吸音率を比較した。下記表3には不織布からなる吸遮音材(比較例1)、熱硬化性バインダーを表面コーティングした不織布からなる吸遮音材(比較例2)、及び熱硬化性バインダーを含浸させた不織布からなる吸遮音材(実施例1)の吸音率をそれぞれ測定した結果を示す。
【0123】
【表3】
【0124】
前記表3の結果によれば、熱硬化性バインダーが含浸されていない不織布を吸遮音材として使用している比較例1に比して、本発明による実施例1の吸遮音材は、前周波数領域帯で優れた吸音効果を示している。反面、熱硬化性バインダーが表面にコーティングされた不織布を吸遮音材として使用している比較例2は、吸遮音材が400〜5000Hz周波数領域帯では不織布(比較例1)に比較して吸音率がより低かった。
【0125】
実験例4.吸遮音材の遮熱性能の評価
本実験例4では、前記実施例1(熱硬化性樹脂に含浸されたアラミド不織布)、比較例1(アラミド不織布)、及び比較例3(熱可塑性樹脂に含浸されたアラミド不織布)で製造されたそれぞれの吸遮音材について遮熱性能を評価した。具体的には、25mm厚さの吸遮音材をそれぞれ設置し、吸遮音材の片面に1000℃の熱を5分間加えた後、吸遮音材の反対側面で温度を測定した。
【0126】
その結果、吸遮音材の反対側面で測定した温度が、実施例1の吸遮音材は250℃、比較例1の吸遮音材は350℃であった。それによって、本発明の吸遮音材は、熱硬化性樹脂が含浸されることで、遮熱性能も向上したことが分かる。反面、比較例3の吸遮音材は、熱可塑性樹脂が含浸された吸遮音材であって、1000℃の熱を加えるとすぐに熱可塑性樹脂が溶けてしまって吸遮音材の形態が変形された。
【0127】
以上の実験によれば、本発明の吸遮音材は、遮熱、断熱特性が非常に優れたことが分かる。
【0128】
実験例5.既存のアルミニウム遮熱板との遮熱性能の比較評価
本実験例5では、前記実施例1の吸遮音材と既存のアルミニウム遮熱板との遮熱性能を比較した。具体的には、準備した吸遮音材と遮熱板の片面に同じ熱を加えて熱源方向の温度が250℃となるようにした。次に、加熱時間帯別に吸遮音材の反対側面で温度を測定した。その結果は図5に示す。
【0129】
図5に示すように、本発明による吸遮音材は、アルミニウム遮熱板に比べて熱遮断温度が11℃以上低くてさらに優れたことが分かる。
【0130】
実験例6.バインダーの含量による吸遮音材の特性比較
前記実施例1の方法で吸遮音材を製造するが、エポキシ樹脂溶液に含浸されたアラミド不織布を乾燥して最終的に含まれるバインダーの含量を調整した。この際、バインダーの含量は、乾燥された不織布100重量部を基準として吸遮音材に含まれるバインダーの重量部で示す。
【0131】
下記表4と表5には、バインダーの含量を異なるようにして製造された吸遮音材に関する機械的物性と吸音率を比較した結果を示す。
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
前記表4と表5の結果によれば、バインダーが含浸されていない不織布に比較して、不織布にバインダーが含浸されることで、吸音率が向上したことが分かる。また、バインダーの含量により、製造された吸遮音材の吸音率が調節される可能性があることを確認できた。
【0135】
実験例7.バインダーの種類による吸遮音材の特性比較
前記実施例1の方法でアラミド不織布100重量部を基準としてバインダーが50重量部含浸された吸遮音材を製造するが、前記バインダーとして下記表6に示す樹脂を使用した。
【0136】
下記表6には、バインダーの種類を異なるようにして製造された吸遮音材に関する機械的物性と吸音率を比較した結果を示す。
【0137】
【表6】
図1(A)】
図1(B)】
図1(C)】
図2
図3
図4
図5