(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290208
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】機能表面を有する医療製品を製造するための可塑性調剤の多成分接合系
(51)【国際特許分類】
A61F 2/30 20060101AFI20180226BHJP
C04B 35/111 20060101ALI20180226BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20180226BHJP
C04B 35/587 20060101ALI20180226BHJP
C04B 35/486 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
A61F2/30
C04B35/111
A61F2/28
C04B35/587
C04B35/486
【請求項の数】10
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-524739(P2015-524739)
(86)(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公表番号】特表2015-526170(P2015-526170A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013065810
(87)【国際公開番号】WO2014019954
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月21日
(31)【優先権主張番号】102012213348.8
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マインハート クンツ
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−278874(JP,A)
【文献】
特開平01−085644(JP,A)
【文献】
特開昭59−095041(JP,A)
【文献】
特開平11−178913(JP,A)
【文献】
特開平09−299472(JP,A)
【文献】
特表2009−533181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30
A61F 2/28
C04B 35/111
C04B 35/486
C04B 35/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体および少なくとも1つの機能表面を有するインプラントを製造する方法において、
a)ベース材料として、セラミック粉末混合物を準備する工程、
b)前記セラミック粉末混合物に可塑性結合剤系を混合し、前記基体のための第1の原料を形成する工程、
c1)前記の第1の原料を分割し、分割した第1の原料の一方と添加剤とを混合して、前記機能表面のための第2の原料を形成させる工程、または工程c1)に代えて、
c2)セラミック粉末混合物、可塑性結合剤系および添加剤から、前記機能表面のための第2の原料を製造する工程、
d)前記の第1の原料および第2の原料から射出成形および/または押出により、1つの作業工程で前記基体および前記少なくとも1つの機能表面を有するインプラントのグリーン体を形成する工程、
e)前記グリーン体を脱バインダする工程、
f)脱バインダされたグリーン体を焼結させて、少なくとも1つの機能表面を有する、完成したインプラントとする工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記機能表面は、骨親和性表面であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記セラミック粉末混合物は、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウムおよび/または複合材料を含み、および/またはこれらの物質に変換可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記基体と前記機能表面の材料を同じベース材料から製造することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基体および前記機能表面の材料は、硬化後に前記基体と前記機能表面の材料との接着結合を可能にする可塑性結合剤系を含み、かつ、前記可塑性結合剤系は、有機結合剤系であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の原料に使用する添加剤は、成形後に除去することができる添加剤であり、それによって機能表面の規定された多孔度が調節されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記添加剤は、粒子状であり、かつポリエチレン、ポリスチレン、黒鉛および有機炭素化合物からなる群から選択される1種以上の物質を含むことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程d)において、前記基体および/または前記機能表面を、高圧射出成形、低圧射出成形、二成分射出成形、または二成分押出によって形成させることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)における成形を、80℃〜170℃の温度で熱により活性化することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の原料および第2の原料は、同じ条件下で焼結されることができ、そのうえ、基体と機能表面との固い接合が生じる焼結の動力学を示すことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能表面を有する医療製品を製造する方法に関する。殊に、本発明は、骨親和性表面を有するセラミックインプラントを製造しうる方法ならびに当該方法で製造された医療製品に関する。
【0002】
構造用セラミック部品、殊にインプラント、人工機能補完装具または類似物には、今日では、しばしば、機能的被覆、例えば骨親和性または防腐性の被覆または層が備えられている。機能表面により、体内への前記部品の結び付きは改善されるべきである。殊に、ここでは、しばしば、前記部品のより迅速な、かつ、より持続性のある成長が考えられており、このことは、例えば多孔質の被覆または表面によって達成されうる。前記部品の表面上に存在する細孔は、骨成分の成長を可能にしかつ促進させることができ、その結果、身体への固有の結び付きによって、インプラントのより安全な保持が可能になる。また、他方では、しばしば、体内でのインプラントの使用の際に、たびごとに避けることのできない、炎症性の過程が抑制されなければならない。
関節代用品として使用される部品は、原則的に、骨と結合する機能層を必要とする。
【0003】
当該インプラント、殊にさらにセラミック製のインプラントは、技術水準から公知である。前記インプラントは、一般に複数の作業工程において製造され、その際に中実であって、支えとなる基体上には、機能性表面または多孔性表面が、なんらかの方法で、例えば被覆によって施される。この製造法は、比較的時間的ロスがありかつ煩雑である。それというのも、基体を形成するためのさまざまな方法および引き続く表面処理が必要とされるからである。
【0004】
したがって、本発明の課題は、インプラント、例えば人工機能補完装具の製造を、コア材料および表面機能材料で簡易化する方法を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1記載の方法によって解決され、この方法の好ましい態様は、従属請求項に規定されている。
【0006】
それに応じて、機能表面を有するインプラントを製造する本発明による方法であって、基体および前記機能表面を1つの作業工程で製造する、前記方法が設けられる。
【0007】
好ましいさらなる態様によれば、本発明は、1つの作業工程で製造される、中実であって、負荷の支えとなる範囲を有しかつ多孔性の、骨親和性境界層または骨親和性表面を有するセラミック部品を含む。
【0008】
製造すべき高性能セラミックのためには、個々の添加剤の均一化ならびに粉末凝集塊の分散を技術水準により実現させる、相応する粉末混合物が
準備される。例えば、ここでは、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウムか、そうでなければ、複合材料、例えばZTAおよび/または記載された物質の混合物がこれに該当する。さらに、例えば任意に一定の雰囲気下での焼結によって、記載された物質に変換されうる反応体が使用されてよい。前記粉末混合物には、可塑性結合剤系が混合され、こうして成形材料(原料)が形成され、この成形材料を用いると、高圧射出成形または低圧射出成形による成形が可能になるか、そうでなければ押出による成形が可能になる。
【0009】
前記原料の一部分には、非可塑性の粒子状添加剤(プレースホルダー)が混合されてよく、この粒子状添加剤は、成形後に、例えば引き続く焼結過程の際に、可能な限り残留物を含まないように元通りに除去され、かつその際に細孔が残される。添加剤として、例えばポリエチレン、ポリスチレンまたは類似の有機炭素化合物か、そうでなければ黒鉛が混合されうる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記プレースホルダーは、骨内での成長挙動に特に好ましい細孔が焼結後に体内に残留する程度に、原料中に導入される。
【0010】
少なくとも1つの機能表面を有するインプラントを製造する、特に好ましい方法は、次の工程:
a)セラミック粉末混合物を
準備する工程、
b)前記セラミック粉末混合物に可塑性結合剤系を混合する工程、その際に、前記可塑性結合剤系は、引き続く成形法に適合され、かつ可塑性結合剤系とのセラミック粉末混合物は、第1の原料を形成し、
c1)前記の第1の原料を分け、この原料の一部分と添加剤とを混合して第2の原料を形成させる工程、または
c2)前記工程a)およびb)の後に、第2の原料を製造する工程、
d)基体と骨親和性表面とを前記の第1の原料および第2の原料から形成させる成形法を実施する工程、
e)前記グリーン体を脱バインダする工程、
f)先の工程で形成されかつ脱バインダされた、インプラントのブラウン体を焼結させて、機能表面、殊に骨親和性表面を有する、完成したインプラントとする工程
を含む。
【0011】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、第1の原料および第2の原料は、プレースホルダー/添加剤を用いてもプレースホルダー/添加剤を用いなくても、次のやり方で製造されかつ加工されうる:
・ プレースホルダーを有する複数の前記原料とプレースホルダーなしの複数の前記原料は、射出成形および/または押出により、そのつど、別々に成形に使用されうる。
・ 前記成形過程の際に、複数の前記原料は、制御された条件下で互いに結合されうる。その際に、選択された有機結合剤系は、可塑性素材の接着結合を可能にする。前記成形過程は、典型的には、80℃〜170℃の温度での熱活性化過程である。
・ 複数の前記原料は、これらの複数の前記原料が同じ条件下で焼結されることができ、そのうえ、中実原料とプレースホルダーを含む原料との接合が焼結の際に保持されたままである類似の焼結の動力学を示し、その際に焼結によって固体同士の接合が生じる程度に調節されている。
・ 前記の2つの原料は、二成分射出成形または二成分押出によって加工されかつその際に所望の形にもたらされる。本発明によれば、多成分成形により、後で中実であって、負荷の支えとなる前記部品の範囲は、中実原料で充填され、かつ前記の多孔性の骨親和性の範囲は、添加剤/プレースホルダーを含む原料で充填される。それによって、前記の2つの方法の境の範囲内で、任意の成形体は、製造可能であり、この成形体を用いて、多孔性の骨親和性表面を有する中実固体の目的は、実際に任意に実現されうる。用途に応じて、例えば脊髄インプラント用スペーサーの場合には、前記の多孔性の範囲は、前記部品のより大きな範囲または貫通した通路を占めうる。
・ 熱活性化による成形後に、冷却した後に、セラミック粉末、有機可塑化剤およびプレースホルダーを含有する、比較的固い“グリーン体”が生じる。次に、前記可塑化剤は、例えば蒸発によって、または酸洗浄によって、除去される。
・ 脱バインダされたグリーン体(ブラウン体)は、焼結され、その際に、本発明によれば、所望の中実
範囲および多孔性範囲が生じる。前記プレースホルダーは、焼き取られる。中実セラミックと多孔性セラミックの移行範囲が焼結過程によって完成される。