(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】CD25への結合を欠いているIL−2四重変異体(qm)、及び抗EGFR GlycoMabを含む、FAP−標的28H1 IgG−IL−2イムノコンジュゲート(A)又は非標的DP47GS IgG−IL−2イムノコンジュゲート(B)が、SCIDマウスへ舌の内部に注射されたヒトの頭頸部癌細胞株FaDuで試験された。データは、DP47GS IgG−IL2 qmイムノコンジュゲートではなく、28H1 IgG−IL2 qmイムノコンジュゲートと、抗EGFR GlycoMabの組合せが、それぞれのイムノコンジュゲート又は抗EGFR GlycoMab単独に比べて、高められた生存期間の中央値の観点から優れた効果を媒介することを示している(実施例1を参照)。
【
図2】種々の濃度の抗EGFR GlycoMabの存在下における、0.57nMの(A)又は5.7nMの(B)Fap−標的28H1 IgG−IL2 qmイムノコンジュゲート又はIL−2(プロロイキン(Proleukin))を用いて、前処理した又はしていない、PBMC(E:T=10:1、4時間)による、全体的なA549腫瘍細胞の死滅(実施例2を参照)。
【
図3】CD25への結合を欠いているIL−2四重変異体(qm)を含むCEA標的CH1A1A IgG−IL−2イムノコンジュゲートと、抗EGFR GlycoMab(A)又はセツキシマブ(B)が、SCID FcγRIIIトランスジェニックマウスへ脾臓内に注射されたヒト結腸直腸癌細胞株LS174Tで試験された。データはCH1A1A IgG−IL2 qmのQMのイムノコンジュゲートと抗EGFR GlycoMabの組合せが、それぞれのイムノコンジュゲート、抗EGFR GlycoMab又はセツキシマブ単独、並びにCH1A1A IgG−IL2 qmイムノコンジュゲートとセツキシマブの組合せに比べて、高められた生存期間の中央値の観点から優れた効果を媒介することを示している(実施例3参照)。
【
図4】CD25への結合を欠いているIL−2四重変異体(qm)を含むCEA標的CH1A1A IgG−IL−2イムノコンジュゲートと、抗EGFR GlycoMab(A)又はセツキシマブ(B)が、SCID FcγRIIIトランスジェニックマウスへ静脈内注射されたヒト肺癌細胞株A549で試験された。データはCH1A1A IgG−IL2 qmのQMのイムノコンジュゲートと抗EGFR GlycoMabの組合せが、それぞれのイムノコンジュゲート又は抗EGFR GlycoMab単独、並びにCH1A1A IgG−IL2 qmイムノコンジュゲートとセツキシマブの組合せに比べて、高められた生存期間の中央値の観点から優れた効果を媒介することを示している(実施例4参照)。
【
図5】CD25への結合を欠いているIL−2四重変異体(qm)を含むCEA標的CH1A1A IgG−IL−2イムノコンジュゲートと、抗HER3 GlycoMabが、SCID FcγRIIIトランスジェニックマウスへ脾臓内に注射されたヒト結腸直腸癌細胞株LS174Tで試験された。データは、CH1A1A IgG−IL2 qmイムノコンジュゲートと、抗HER3 GlycoMabの組合せが、それぞれのイムノコンジュゲート又は抗HER3 GlycoMab単独に比べて、高められた生存期間の中央値の観点から優れた効果を媒介することを示している(実施例5を参照)。
【
図6】CD25への結合を欠いているIL−2四重変異体(qm)を含むFAP標的28H1 IgG−IL−2イムノコンジュゲートと、抗EGFR GlycoMabが、SCID FcγRIIIトランスジェニックマウスへ腎臓内に注射されたヒト腎臓癌細胞株ACHNで試験された。データは、CH1A1A IgG−IL2 qmイムノコンジュゲートと、抗EGFR GlycoMabの組合せが、抗EGFR GlycoMab単独、又はプロロイキン(登録商標)と組合せた抗EGFR GlycoMabと比べて、高められた生存期間の中央値の観点から優れた効果を媒介することを示している(実施例6を参照)。
【
図7】抗HER3 GlycoMab単独(左パネル)、CH1A1A IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲート単独(右パネル)又はCH1A1A IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの抗Her3 GlycoMabとの組合せ(右パネル)による処置による、全体的なLS174T細胞の死滅。
【
図8】抗HER3 GlycoMab単独(左パネル)、CH1A1A IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲート単独(右パネル)又はCH1A1A IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの抗Her3 GlycoMabとの組合せ(右パネル)による処置による、NK細胞上でのCD25(A)又はCD69(B)の発現。
【0022】
発明の詳細な説明
第一の態様において、本発明は、疾患の治療にそれを必要とする個体において使用される(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組み合せを提供する。
【0023】
本発明は、更に、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せを、治療的有効量、個体に投与することを含む、個体の疾患を治療する方法を提供する。
【0024】
また本発明により提供されるのは、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せを、エフェクター細胞機能を刺激するのに有効な量、個体に投与することを含む、個体のエフェクター細胞機能を刺激する方法である。
【0025】
定義
本明細書において、用語は、以下に定義されていない限り、当技術分野で一般的に使用されるように使用される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「イムノコンジュゲート」は、少なくとも一のエフェクター部分とを含む、ポリペプチド分子を意味する。所定の実施態様では、イムノコンジュゲートは、1個以下のエフェクター部分を含む。本発明による特定のイムノコンジュゲートは、一以上のペプチドリンカーにより連結される、1個のエフェクター部分と抗体から本質的になる。本発明による特定のイムノコンジュゲートは、融合タンパク質であり、すなわち、イムノコンジュゲートの構成成分がペプチド結合により連結される。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「コントロール抗体」は、エフェクター部分を含まないで存在するであろう抗体を意味する。例えば、本明細書に記載されるIgG−IL2イムノコンジュゲートをコントロール抗体と比較する場合、コントロール抗体は遊離のIgGであり、ここでIgG−IL2イムノコンジュゲートと遊離のIgG分子は共に同一抗原決定基に特異的に結合することができる。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語「抗原決定基」は「抗原」及び「エピトープ」と同義語であり、抗体が結合し、抗体−抗原複合体を形成する、ポリペプチド高分子の部位(例えば、非隣接アミノ酸の種々の領域を形成する、アミノ酸又は立体構造的配置の隣接伸長)を意味する。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上で、ウイルス感染細胞の表面上で、他の疾患細胞の表面上で、血清中に遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)中に見つけることができる。
【0029】
「特異的に結合する」とは、結合が抗原について選択的であり、不必要な又は非特異的相互作用と区別されうることを意味する。特定の抗原決定基に結合する抗体の能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(BIAcore機器で解析される)(Liljeblad,et al.,Glyco.J.17:323-329(2000))及び伝統的な結合アッセイ(Heeley,R.P.,Endocr.Res.28:217-229(2002))のいずれかによって測定することができる。
【0030】
用語「抗[抗原]抗体」及び[抗原]に結合する抗体」は、抗体が、抗原を標的とし、診断薬剤及び/又は治療的薬剤として有用であるように、十分な親和性でそれぞれの抗原に結合することができる抗体を指す。一実施態様において、抗[抗原]抗体の、無関係なタンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体の抗原への結合の約10%未満である。ある実施態様において、[抗原]へ結合する抗体は、解離定数(K
D)≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10−
8M未満、例えば、10−
8Mから10−
13M、例えば、10−
9Mから10−
13M)を有する。
【0031】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離の比率である解離定数(K
D)及び会合速度定数(ぞれぞれkoffとkon)で表すことができる。従って、同等の親和性は、速度定数の比が同じままである限り、別の速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で良く確立される方法によって測定することができる。親和性を測定するための特別な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0032】
一実施態様によると、K
Dは、CM5チップ上に固定されたリガンド(例えば、エフェクター部分受容体、Fc受容体又は標的抗原)を用いて、25℃で、BIACORE(登録商標)T100機器(GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴によって測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,GE Healthcare)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。組換えリガンドを10mMの酢酸ナトリウム、pH5.5で0.5−30μg/mlに希釈し、結合したタンパク質の応答単位(RU)がおよそ100−5000になるように10μl/分の流速で注入する。リガンドの注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学測定のために、イムノコンジュゲートの3から5倍の段階希釈(〜0.01nMから300nMの間の範囲)が、HBS−EP+(GE Healthcare、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%界面活性剤P20、25℃、pH7.4)中で約30〜50μl/分の流量で注入される。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)T100 Evaluationソフトウェアバージョン1.1.1)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(K
D)はk
off/k
on比として算出される。例えば、 Chen et al., J Mol Biol 293, 865-881 (1999)を参照。
【0033】
「低下した結合」とは、例えばFc受容体又はCD25に対する結合の低下であり、例えばSPRにより測定される場合、それぞれの相互作用の親和性の低下を指す。明確にするために、この用語はまた、親和性がゼロへの低下(又は分析法の検出限界以下)、即ち、相互作用の完全な消滅をも含む。逆に、「結合の増加」は、それぞれの相互作用に対する結合親和性の増加を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、抗体に関して「第1」及び「第2」なる用語は、1以上の各タイプの部分が存在する場合に、簡便に区別するために使用される。これらの用語の使用は、明確に述べられていないならば、イムノコンジュゲートの特定の順番又は方向を付与することを意図したものではない。
【0035】
本明細書で使用しているように、用語「エフェクター部分」なる用語は、例えば、シグナル伝達又は他の細胞経路を介して、細胞活性に影響を与えるポリペプチド、例えばタンパク質又は糖タンパク質を意味する。従って、本発明のエフェクター部分は、エフェクター部分に対する一又は複数の受容体を担持する細胞にて、反応を調節するため、細胞膜の外側からシグナルを伝達する、受容体媒介性シグナル伝達に関連している。一実施態様において、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する一又は複数の受容体を担持する細胞に、細胞傷害性反応を引き起こすことができる。他の実施態様において、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する一又は複数の受容体を担持する細胞に、増殖反応を引き起こすことができる。他の実施態様において、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する受容体を担持する細胞に、分化を引き起こすことができる。他の実施態様において、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する受容体を担持する細胞において、内在性細胞タンパク質の発現を変更する(例えば、アップレギュレート又はダウンレギュレート)ことができる。非限定的エフェクター部分には、サイトカイン類、成長因子、ホルモン、酵素、基質、及び補助因子が含まれる。エフェクター部分は種々の立体配置で抗体と結合し、イムノコンジュゲートを形成する。
【0036】
本明細書で使用しているように、用語「サイトカイン」は、生物学的又は細胞性機能又はプロセス(例えば免疫、炎症及び造血)を媒介及び/又は制御する分子を指す。本願明細書において使用する用語「サイトカイン」には、「リンホカイン」、「ケモカイン」、「モノカイン」及び「インターロイキン」が含まれる。有用なサイトカインの例には、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNF−α及びTNF−βが含まれるが、これに限定されるものではない。特定のサイトカインはIL−2及びIL−12である。本明細書で使用される場合、「サイトカイン」なる用語は、対応する野生型サイトカインのアミノ酸配列に、一又は複数のアミノ酸変異を含むサイトカイン変異体であって、例えばSauve et al., Proc Natl Acad Sci USA 88, 4636-40 (1991); Hu et al., Blood 101, 4853-4861 (2003)及び米国特許第2003/0124678号;Shanafelt et al., Nature Biotechnol 18, 1197-1202 (2000); Heaton et al., Cancer Res 53, 2597-602 (1993)及び米国特許第5229109号;米国特許第2007/0036752号;国際公開第2008/0034473号;国際公開第2009/061853号;又は上述及び以下に記載するものを含むことを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「単鎖」なる用語は、ペプチド結合により直線的に結合したアミノ酸モノマーを含有する分子を意味する。一実施態様において、エフェクター分子は単鎖エフェクター部分である。単鎖エフェクター部分の非限定的な例には、サイトカイン、増殖因子、ホルモン類、酵素、基質、補助因子が含まれる。エフェクター部分がサイトカインであり、対象とするサイトカインが天然で多量体として通常見いだされるときに、多量体のサイトカインの各サブユニットはエフェクター部分の単鎖によって逐次にコードされる。従って、有用な単鎖エフェクター部分の非限定的な例には、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNF−α及びTNF−βが含まれる。
【0038】
本明細書で使用しているように、用語「コントロールエフェクター部分」は、コンジュゲートしていないエフェクター部分を指す。例えば、本明細書に記載されるIL−2イムノコンジュゲートをコントロールエフェクター部分と比較した場合、コントロールエフェクター部分はフリーな、コンジュゲートしていないIL−2である。同様に、例えば、IL−12イムノコンジュゲートをコントロールエフェクター部分と比較した場合、コントロールエフェクター部分はフリーな、コンジュゲートしていないIL−12(例えば、p40及びp35サブユニットがジスルフィド結合(一又は複数)だけを共有するヘテロ二量体タンパク質として存在する)である。
【0039】
本明細書で使用しているように、用語「エフェクター部分受容体」は、エフェクター部分に特異的に結合が可能なポリペプチド分子を指す。例えば、IL−2がエフェクター部分であるとき、IL−2分子(例えばIL−2を含むイムノコンジュゲート)と結合するエフェクター部分受容体はIL−2受容体である。同様に、例えば、IL−12がイムノコンジュゲートのエフェクター部分であるとき、エフェクター部分受容体はIL−12受容体である。エフェクター部分が特異的に複数の受容体と結合するとき、エフェクター部分と特異的に結合するすべての受容体はそのエフェクター部分のための「エフェクター部分受容体」である。
【0040】
用語「抗体」は最も広義の意味で使用され、種々の抗体構造を含み、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の抗原−結合活性を示し、免疫グロブリンのFc領域又はFc領域に等価な領域を含む限り、それらの抗体断片を含む。
【0041】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」なる用語は、本明細書では交換可能に使用され、天然の免疫グロブリン構造に実質的に類似した構造を有する抗体を意味する。
【0042】
用語「免疫グロブリン」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)がある。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインがある。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ (IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの1つに割り当てることができ、そのうち幾つかは更にγ
1(IgG
1)、γ
2(IgG
2)、γ
3(IgG
3)、γ
4(IgG
4)、α
1(IgA
1)及びα
2(IgA
2)などのサブタイプに分割され得る。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して連結された2つのFab分子及びFc領域から本質的になる。
【0043】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線形抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、単−ドメイン抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。所定の抗体断片の総説については、 Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)を参照。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthuen, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), 頁269-315 (1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、かつインビボ半減期を増加させたFab及びF(ab’)
2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。ダイアボディは2価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号; Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003); 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディもまた Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部、又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。ある実施態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照)。抗体断片は様々な技術で作成することができ、限定されないが、本明細書に記載するように、インタクトな抗体のタンパク質分解、並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含む。
【0044】
「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全体に相補的であり、特異的に結合する領域を含む抗体の一部を指す。抗原結合ドメインは、例えば、一以上の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により与えられうる。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0045】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に類似した構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの高頻度可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 第6版, W.H. Freeman and Co., 91頁 (2007)を参照。単VH又はVLドメインは、抗原−結合特異性を付与するのに十分であり得る。
【0046】
本明細書で使用される用語「高頻度可変領域」又は「HVR」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループ(「高頻度可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、天然の四鎖抗体は6つのHVRを含む;つまり、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。HVRは、一般に高頻度可変ループ及び/又は相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を有し、後者は、抗原認識に関与し、及び/又は最も高い配列可変性をしている。VHのCDR1を除き、CDRは、一般に高頻度可変ループからのアミノ酸残基を有する。高頻度可変領域(HVR)は「相補性決定領域」(CDR)とも称され、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の一部に関連して、交換可能に使用される。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, Sequences of Proteins of Immunological Interest (1983) 及びChothia et al., J Mol Biol 196:901-917 (1987)により記載され、定義には、互いに比較した場合に、アミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体又はその変異体のCDRを意味するいずれかの定義の適用は、本明細書において定義され、使用される場合の用語の範囲内にあることを意図している。上記の引用文献の各々によって定義されるように、CDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として以下の表1に記載されている。特定のCDRを含む正確な残基番号は、CDRの配列及び大きさに応じて変わるであろう。当業者であれば、抗体の可変領域アミノ酸配列を付与する特定のCDRを含む残基を、常套的に決定できる。
【0047】
【0048】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変領域配列の番号付けシステムを定義した。当業者は、配列それ自体を超えた任意の実験データに頼ることなく、任意の可変領域配列に対してこのKabatの番号付けシステムを一義的に割り当てることができる。本明細書で用いる場合、「Kabat番号付け」とは、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)で明記されている番号付けシステムを指す。特記されない限り、抗体可変領域内の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けへの参照は、Kabat番号付けシステムに従う。
【0049】
配列表のポリペプチド配列(即ち、配列番号3、4、5、6、7、8、9など)はKabatの番号付けシステムに従って番号付けされてはいない。しかし、Kabatの番号付けを配列表の配列の番号に変換することは当業者の通常の技術の範囲内である。
【0050】
「フレームワーク」又は「FR」は、高頻度可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を意味する。可変ドメインのFRは、一般に4のFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。従って、HVRとFR配列は、一般にVH(又はVL):FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4の配列のようになるであろう。
【0051】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2に更に分割することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと称される。
用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。その用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界は、若干異なる場合があるものの、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226から又はPro230から重鎖のカルボキシル末端へ伸展するように定義されている。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しているか、又は存在していない場合がある。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0052】
「免疫グロブリンのFc領域に等価な領域」は、免疫グロブリンのFc領域の自然に生じた対立遺伝子変異体、並びに、エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞−媒介性細胞障害性)を媒介する免疫グロブリンの能力を実質的に低下させることのない、置換、付加又は欠失を生じる変更を有する変異体を含むことを意図している。例えば、一又は複数のアミノ酸が、実質的に生物学的機能を失うことなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から欠失する可能性がある。このような変異体は、活性における影響が最小になるように、当該技術で公知の一般的規則に従い、選択することができる(例えばBowie et al., Science 247, 1306-10 (1990))を参照)。
【0053】
「ヘテロ二量体化促進修飾」は、ホモ二量体を形成する同一なポリペプチドとのポリペプチドの会合を低減するか防止する、ペプチド骨格の操作又はポリペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖の翻訳後修飾である。ヘテロ二量体化促進修飾は、本明細書で使用される場合、二量体を形成することが所望される2つのポリペプチドの各々になされる別々の修飾を特に含み、その修飾は2つのポリペプチドの会合を促進するために互いに相補的である。例えば、ヘテロ二量体化促進修飾は、その会合をそれぞれ立体的又は静電気的に好ましくするために、二量体を形成することが所望されるポリペプチドの一方又は双方の構造又は電荷を改変しうる。ヘテロ二量体化は、重鎖の各々に融合された更なるイムノコンジュゲート要素(例えば、エフェクター部分)が同じではない、2つの免疫グロブリン重鎖などの、2つの非同一ポリペプチド間で生じる。本発明のイムノコンジュゲートにおいて、ヘテロ二量体化促進修飾は、重鎖においてであり、具体的には免疫グロブリン分子のFc領域においてである。幾つかの実施態様では、ヘテロ二量体化促進修飾は、アミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。特定の実施態様では、ヘテロ二量体化促進修飾は、2つの免疫グロブリン重鎖の各々において、別々のアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。
【0054】
抗体に関して使用される場合、「エフェクター機能」なる用語は、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には:C1q結合性及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体−依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原の取込、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞活性化が含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「エフェクター細胞」なる用語は、エフェクター部分の受容体、例えばサイトカイン受容体、及び/又はそれらがエフェクター部分に結合するのを介してそれらの表面上にあるFc受容体、例えばサイトカイン、及び/又は腫瘍細胞等、標的細胞の破壊に寄与する抗体のFc領域を示す、リンパ球の集団を意味する。エフェクター細胞は、例えば細胞傷害又は食作用効果を媒介可能である。エフェクター細胞は、限定されるものではないが、エフェクターT細胞、例えばCD8+細胞傷害T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、γδT細胞、NK細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、及びマクロファージ/単球が含まれる。それらの受容体発現パターンに依存して、種々のサブセットのエフェクター細胞、すなわち(a)Fc受容体ではなく、特定のエフェクター部分に対する受容体を発現し、本発明の抗体ではない、イムノコンジュゲートにより刺激される細胞(例えば、IL−2受容体を発現するT細胞);(b)特定のエフェクター部分に対する受容体ではない、Fc受容体を発現し、本発明のイムノコンジュゲートではない抗体により刺激される細胞;及び(c)Fc受容体と特定のエフェクター部分に対する受容体の双方を発現し、抗体と本発明のイムノコンジュゲートにより同時に刺激される細胞(例えば、FcγIII受容体及びIL−2受容体を発現するNK細胞)が存在する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「操作、操作された、操作する」といった用語は、自然に生じた又は組換えポリペプチド又はその断片の、ペプチド骨格の任意のマニピュレーション又は翻訳後修飾を含むと考えられる。操作には、アミノ酸配列の、グリコシル化パターンの、又は個々のアミノ酸の側鎖基のアミノ酸配列の修飾、並びにこれらのアプローチの組み合せが含まれる。特に、接頭語「グリコ−」を有する「操作する」、並びに「グリコシル化操作」なる用語には、細胞で発現する糖タンパク質のグリコシル化の改変を達成するための、オリゴ糖合成経路の遺伝的マニピュレーションを含む細胞のグリコシル化の仕組みの代謝的操作が含まれる。更にグリコシル化操作には、グリコシル化における変異及び細胞環境の影響が含まれる。一実施態様において、グリコシル化操作は、グリコシルトランスフェラーゼ活性における変更である。特定の実施態様において、操作により、グルコサミニルトランスフェラーゼ活性及び/又はフコシルトランスフェラーゼ活性の変更に至る。グリコシル化操作は、「GnTIII活性が増加した宿主細胞」(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する一又は複数のポリペプチドを、増加したレベルで発現するようにマニピュレートされている宿主細胞)、「ManII活性が増加した宿主細胞」(例えば、α−マンノシダーゼII(ManII)活性を有する一又は複数のポリペプチドを、増加したレベルで発現するようにマニピュレートされている宿主細胞)、又は「α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ活性が低減した宿主細胞」(例えば、α(1,6)フコシルトランスフェラーゼを、低減したレベルで発現するようにマニピュレートされている宿主細胞)を得るために使用することができる。
【0057】
「アミノ酸変異」なる用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸置換、欠失、挿入、及び修飾を包含することを意味する。置換、欠失、挿入及び修飾の任意の組み合せにより、最終的なコンストラクトに達することができ、但し、最終コンストラクトは、所望の特徴、例えばFc受容体への結合性の低下を有する。アミノ酸配列の欠失及び挿入には、アミノ−及び/又はカルボキシ末端の欠失及びアミノ酸の挿入が含まれる。特定のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、Fc領域の結合特性を変更する目的のために、非保存的アミノ酸置換、即ち一のアミノ酸を、異なる構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸と置換することが特に所望される。アミノ酸置換は、20の標準的アミノ酸の非天然に生じるアミノ酸又は天然に生じるアミノ酸誘導体による置換を含む(例えば4−ヒドロキシプロリン、3−メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5−ヒドロキシリジン)。アミノ酸変異は、当分野でよく知られた遺伝学的又は化学的方法を使用して生成されうる。遺伝学的方法は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成等を含みうる。化学的修飾など、遺伝子工学以外の方法によるアミノ酸の側鎖基の改変方法がまた有用でありうることが意図される。本明細書において同一のアミノ酸変異を示すために様々な名称が使用されてもよい。例えば、Fc領域の位置329のプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G
329、P329G、又はPro329Glyとして示すことができる。
【0058】
ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて得られる。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、ソースコードは米国著作権庁、Washington D.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能であり、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、特にデジタルUNIX V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN−2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは、A及びBのプログラムアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN−2によって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと一致しない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは一致しないと評価されるであろう。特に断らない限りは、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、直前のパラグラフに記載したように、ALIGN−2コンピュータプログラムを用いて得られる。
【0059】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含める。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、継代の数に関係なく、それに由来する初代形質転換細胞及び子孫が含まれる。子孫は、親細胞と、核酸含有物において完全に同一ではなく、変異を含む場合もある。元来の形質転換細胞において、スクリーニング又は選択された場合に、同様の機能又は生物活性を有する変異子孫がここに含まれる。宿主細胞は、本発明で使用されるイムノコンジュゲート及び抗体を生成するために使用可能な、任意のタイプの細胞システムである。一実施態様において、宿主細胞は、修飾されたオリゴ糖による抗体の産生を可能にするように操作されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、α−マンノシダーゼII(ManII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように更に操作されている。宿主細胞は、培養細胞、例えば、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOの骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞などの哺乳類培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、わずかな例を挙げると、しかしまた、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織の中に含まれる細胞も含む。
【0060】
本明細書において使用される場合、「GnTIII活性を有するポリペプチド」とは、N−結合型オリゴ糖のトリマンノシルコアのβ結合型マンノシドへのβ1−4結合でのN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒できるポリペプチドを指す。これは、用量依存性を伴うか又は伴わない特定の生物学的アッセイで測定した場合に、生化学と分子生物学の国際連合命名委員会(NC−IUBMB)に従って、β−1,4−マンノシル−糖タンパク質の4−β−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.144)としても知られているβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に、必ずしも同一ではないが、類似した酵素活性を示す融合ポリペプチドを含む。用量依存性が存在する場合、それは、GnTIIIのものと同一である必要はなく、むしろGnTIIIに比べた場合、付与された活性における用量依存性に実質的に類似している(すなわち、候補のポリペプチドは、GnTIIIに比べて、より大きい活性を示すか又は最高で約25倍以下の活性、好ましくは最高で約10倍以下の活性、及びより最も好ましくは最高で約3倍以下の活性を示し得る)。特定の実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種性ゴルジ常駐性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメイン及びGnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼII又はGnTIの局在化ドメインであり、最も具体的にはマンノシダーゼIIの局在化ドメインである。あるいは、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、及びα1,6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群から選択される。このような融合ポリペプチドを生成する方法、及び増加したエフェクター機能を有する抗体を生成するためのそれらの使用は、その全内容が出典明示によりここに援用される、国際公開第2004/065540号、米国仮特許出願第60/495,142号及び米国特許出願公開第2004/0241817号に開示されている。
【0061】
本明細書において用いられる場合、用語「ゴルジ局在化ドメイン」は、ゴルジ複合体内の位置にポリペプチドを固定するために関与するゴルジ常在性ポリペプチドのアミノ酸配列を指す。一般的に、局在化ドメインは酵素のアミノ末端「尾部」を含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「ManII活性を有するポリペプチド」は、N結合型オリゴ糖の分岐したGlcNAcMan
5GlcNAc
2マンノース中間体における末端1,3−及び1,6−結合α−D−マンノース残基の加水分解を触媒することができるポリペプチドを指す。これは、生化学と分子生物学の国際連合の命名委員会(NC−IUBMB)による、マンノシルオリゴ糖1,3−1,6−α−マンノシダーゼII(EC3.2.1.114)としても知られる、ゴルジα−マンノシダーゼIIの活性に必ずしも同一ではないが類似の酵素活性を示すポリペプチドを含む。
【0063】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域による結合後に、エフェクター機能を遂行させるために受容体を持つ細胞を刺激するシグナル伝達イベントを誘発させるFc受容体である。活性化Fc受容体はFcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)を含む。
【0064】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による抗体被覆標的細胞の溶解をもたらす免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその断片が、N末端にあるタンパク質部分を一般に介してFc領域に特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される場合、用語「増加した/低下したADCC」は、標的細胞を取り囲む培地中で、上に定義されたADCCのメカニズムによって、所定の時間内に、抗体の所定の濃度で溶解される標的細胞の数の減少、及び/又はADCCのメカニズムによって、所定の時間内に、所定の数の標的細胞の溶解を達成するために必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中の抗体の濃度の増加のいずれかとして定義される。ADCCの増加/低下は、同じ標準的な産生、精製、製剤、及び保存の方法(当業者に周知である)を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生されるが、操作されていない、同じ抗体によって媒介されるADCCに相対するものである。例えば、本明細書に記載の方法によりグリコシル化のパターンを改変されるように(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、GnTIII、又は他のグリコシルトランスフェラーゼを発現させるために)操作された宿主細胞により産生される抗体により媒介されるADCCの増加は、同じタイプの非操作型宿主細胞により産生される同じ抗体により媒介されるADCCに相対するものである。
【0065】
「増加した/低下した抗体依存性細胞−媒介性細胞傷害(ADCC)を有する抗体」は、当業者に周知の任意の適した方法により測定される、増加したADCCを有する抗体を意味する。承認されているインビトロADCCアッセイは以下の通りである:
1)このアッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)このアッセイは、エフェクター細胞として、ランダムに選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単球細胞(PBMC)を使用する;
3)このアッセイは以下のプロトコールに従って使用される。
i)PBMCを、標準的な密度遠心分離手順を使用して単離し、RPMI細胞培養培地中、5×10
6細胞/mlで懸濁する;
ii)標的細胞を、標準的な培養方法によって増殖させ、90%よりも高い生存度を有する指数増殖期から収集し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの
51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、そして10
5細胞/mlの密度で細胞培養培地中に再懸濁する;
iii)100マイクロリットルの上記の最終的な標的細胞懸濁物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を、細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階希釈し、得られる抗体溶液の50マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に加えて、上記の全体の濃度範囲を網羅する種々な抗体濃度を3通りで試験する;
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルは、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルの2%(V/V)非イオン性界面活性剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の水溶液を受容する;
vi)自発性放出(SR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルに、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を受容する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを、50×gで1分間遠心分離し、そして1時間4℃でインキュベートする;
viii)50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記の要点i)を各ウェルに加えて25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、そしてプレートをインキュベーター中、5%CO
2大気、37℃下に4時間配置する;
ix)各ウェルからの無細胞上清を収集し、実験的に放出された放射能(ER)をガンマカウンターを使用して定量する;
x)特異的溶解のパーセンテージを、計算式(ER−MR)/(MR−SR)×100に従って各抗体について計算し、ここで、ERは抗体濃度について定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、MRはMRコントロール(上記の要点vを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、そしてSRはSRコントロール(上記の要点viを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)である;
4)「増加した/低下したADCC」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増加/低下、及び/又は上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の低下/増加のいずれかとして定義される。ADCCの増加/低下は、同じ標準的な産生、精製、製剤、及び保存の方法(当業者に公知である)を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生されるが、操作されていない、同じ抗体によって媒介され、上のアッセイにより測定される、ADCCに相対するものである。
【0066】
本明細書で使用される場合、「組合せ」(及び「組合せる又は「組合せた」等のその文法的変形」)は、本発明の抗体とイムノコンジュゲートの組合せを含み、ここで抗体とイムノコンジュゲートは、同一又は異なった容器、同一又は異なった薬学的製剤にあり、一緒又は別々に投与され、任意の順序で連続して又は同時に投与され、同一又は異なった経路で投与されるが、但し、抗体とイムノコンジュゲートは、体内の生物学的効果を同時に働きかける、すなわちエフェクター細胞を同時に刺激することができるようにされる。例えば、本発明の抗体とイムノコンジュゲートを「組合せる」とは、特定の薬学的製剤において、まずイムノコンジュゲートを投与し、続いて、他の薬学的組成物において抗体を投与する、又はその逆を意味する。
【0067】
薬剤の「有効量」は、それが投与される細胞又は組織に生理学的変化をもたらすのに必要な量を意味する。
【0068】
薬剤、例えば薬学的組成物の「治療的有効量」は、所望する治療的又は予防的結果を達成するのに必要な期間、用量で有効な量を意味する。治療的に有効な量の薬剤は例えば、疾患の有害作用を除去、低下、遅延、最小化又は防止させる。いくつかの活性成分の組合せの治療的有効量は、各活性成分の治療的有効量であってよい。あるいは、治療に起因する副作用を低減するために、いくつかの活性成分の組合せの治療的有効量は、付加的又は超付加的な、もしくは相乗効果を生じるのに有効であり、組合せて治療的に有効であるが、それらが単独で使用された場合、活性成分の一つ又はいくつかの治療量以下であってもよい、個々の活性成分の量である。
【0069】
「個体」又は「被検体」は、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。特に、個体又は被検体はヒトである。
【0070】
用語「薬学的組成物」は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する被検体にとって許容できない毒性である他の成分を含まない調製物を指す。
【0071】
「薬学的に許容される担体」は、被検体に非毒性であり、有効成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含む。
本明細書で用いられるように、「治療」(及び「治療する(treat)」又は「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体における疾患の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程においてのいずれかで実行できる。治療の望ましい効果は、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。幾つかの実施態様において、本発明の組合せは、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0072】
用語「パッケージ挿入物」は、効能、用法、用量、投与、併用療法、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0073】
イムノコンジュゲート
本発明で有用なイムノコンジュゲートは、少なくとも一つのエフェクター部分と少なくとも一つの抗原−結合部分を有するポリペプチド分子である。
【0074】
イムノコンジュゲートは、抗原−結合部分にエフェクター部分を化学的にコンジュゲートすることにより、又は融合タンパク質として、抗原−結合部分とエフェクター部分を発現させることにより調製することができる(例えばNakamura and Kubo, Cancer 80, 2650-2655 (1997); 及び Becker et al., Proc Natl Acad Sci USA 93, 7826-7831 (1996)を参照)。本発明で使用するために、融合タンパク質として発現したイムノコンジュゲートが、一般に好ましい。従って、ある実施態様において、エフェクター部分は、抗原−結合部分とアミノ−又はカルボキシ−末端ペプチド結合を共有している(すなわち、イムノコンジュゲートは融合タンパク質である)。このようなイムノコンジュゲートにおいて、エフェクター部分は免疫グロブリン重鎖又は軽鎖に融合していてもよい。本発明において特に有用なものは、完全長IgGクラス抗体、特に、完全長IgG
1サブクラス抗体を含む、イムノコンジュゲートである。
【0075】
一実施態様において、エフェクター分子は単鎖エフェクター部分である。一実施態様において、エフェクター部分はサイトカインである。イムノコンジュゲートの抗体及びエフェクター部分は、上述及び以下に詳細に述べるものを含む。イムノコンジュゲートの抗体は、様々な標的分子に対するものであることができる(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍ストローマにおいて発現したタンパク質分子常の抗原決定基)。抗体の限定されない例が、本明細書において記載される。本明細書に開示される特に有用なイムノコンジュゲートは、特に、同じ抗原決定基を標的にし、同じエフェクター部分を保有する、異なる構成のイムノコンジュゲートと比較して典型的には、以下の特性:作用の高い特異性、低下した毒性、良好な生産可能性及び/又は改善された安定性の一又は複数を示す。本発明に使用のための特定のイムノコンジュゲートは、その全体内容が参照により本明細書に援用される、PCT出願番号WO2012/146628に更に記述される。
【0076】
イムノコンジュゲートのフォーマット
PCT出願番号WO2012/146628に記載されるイムノコンジュゲートは、1個以下のエフェクター部分を含む。従って、特定の実施態様において、本発明において使用のためのイムノコンジュゲートは、1個以下のエフェクター部分を含む。特定の実施態様において、エフェクター部分は、単鎖エフェクター部分である。本発明にかかるイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、完全長IgGクラス抗体、より具体的には、完全長IgG
1サブクラス抗体である。一実施態様において、抗体はヒトである。他の実施態様では、抗体はヒト、ヒト化、又はキメラである。一実施態様において、抗体は、ヒトFc領域、より具体的にはヒトIgGのFc領域、最も具体的にはヒトIgG
1のFc領域を含む。本発明に有用な抗体は、配列番号124に記載される、ヒトIgガンマ−1重鎖定常領域を含み得る(すなわち、抗体はヒトIgG
1サブクラスである)。
【0077】
一実施態様において、エフェクター部分は、アミノ又はカルボキシ末端のペプチド結合を抗体と共有する。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、一以上のペプチドリンカーにより連結された、エフェクター部分と抗体、特にIgGクラス抗体、より具体的にはIgG
1サブクラス抗体である。特定の実施態様において、エフェクター部分は、そのアミノ末端のアミノ酸で、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端のアミノ酸に、任意でリンカーペプチドを介して融合している。
【0078】
所定の実施態様において、特にイムノコンジュゲートが単一エフェクター部分のみを含む場合、抗体は、そのFc領域に、2つの非同一免疫グロブリン重鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾を含む。ヒトIgGのFc領域の2つのポリペプチド鎖間の最も広範なタンパク質−タンパク質相互作用の部位は、Fc領域のCH3ドメインにある。従って、一実施態様では、前記修飾は、Fc領域のCH3ドメインにある。特定の実施態様において、前記修飾は、免疫グロブリン重鎖の一方にノブ修飾を、免疫グロブリン重鎖の他の一方にホール修飾を含む、ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)修飾である。ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば米国特許第5,731,168号;米国特許第7,695,936号; Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)及びCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載される。一般に、本方法は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二
量体形成を妨げるように、突起が空洞内に配置することができるように、第一のポリペプチドの界面での突起(「ノブ」)及び第二ポリペプチドの界面における対応する空洞(「穴」)を導入することを含む。突起は、第一のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置換することによって構築される。突起と同一又はより小さい大きさの相補的な空洞が、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置換することによって第二ポリペプチドの界面に作成される。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を改変することにより、例えば部位特異的突然変異誘発により、又はペプチド合成により作製することができる。特定の実施態様において、ノブ修飾は、2つの免疫グロブリン重鎖の一方にアミノ酸置換T366Wを含み、そしてホール修飾は、2つの免疫グロブリン重鎖の他の一方にアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む(
KabatのEU番号づけ)。更なる特定の実施態様において、ノブ修飾を含む免疫グロブリン重鎖は、アミノ酸置換S354Cを更に含み、ホール修飾を含む免疫グロブリン重鎖は、アミノ酸置換Y349Cを更に含む。これらの2つのシステイン残基の導入は、更に二量体を安定化させる、2つの重鎖間のジスルフィド架橋の形成をもたらす(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
【0079】
特定の実施態様において、エフェクター部分は、ノブ修飾を含む免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端のアミノ酸に連結している。
【0080】
代わりの実施態様において、2つの非同一ポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾は、PCT出願公開WO2009/089004に記載されるように、静電的ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般に、この方法は、ホモ二量体形成は静電的に不利になるが、ヘテロ二量体は静電的に有利になるように、2つのポリペプチド鎖の界面で、荷電したアミノ酸残基による一又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。
【0081】
Fc領域は、その標的組織における良好な蓄積及び好ましい組織−血液分配比率に寄与する長い血清半減期を含む、好ましい薬物動態学的特性をイムノコンジュゲートに付与する。しかし、同時期に、好適な抗原保有細胞に対するよりもむしろFc受容体を発現する細胞に対するイムノコンジュゲートの所望されない標的化を導く。更に、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化はサイトカイン放出につながる可能性があり、イムノコンジュゲートのエフェクター部分と長い半減期とが組み合わさって、サイトカイン受容体の過剰な活性化及び全身投与の際に重篤な副作用をもたらす。これに伴い、従来のIgG−IL−2イムノコンジュゲートは注入反応に関連することが説明されている(例えばKing et al., J Clin Oncol 22, 4463-4473 (2004))。
【0082】
従って、イムノコンジュゲートに含まれる抗体は、対応する非操作抗体と比較して、低下したエフェクター機能を有するように操作される。特定の実施態様において、低下したエフェクター機能は、活性化Fc受容体への結合の低下である。一つのそうした実施態様において、抗体は、そのFc領域に、活性化Fc受容体に対するイムノコンジュゲートの結合親和性を減少させる一以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、同一の一以上のアミノ酸置換が2つの免疫グロブリン重鎖の各々に存在する。一実施態様において、前記アミノ酸置換は、活性化Fc受容体に対する結合親和性を、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍減少させる。Fc受容体に対するイムノコンジュゲートの結合親和性を減少させる複数のアミノ酸変異が存在する実施態様において、これらのアミノ酸変異は、活性化Fc受容体に対するイムノコンジュゲートの結合親和性を少なくとも10倍、少なくとも20倍、又は更に少なくとも50倍減少させ得る。一実施態様において、操作された抗体を含むイムノコンジュゲートは、非操作抗体を含んでなるイムノコンジュゲートと比較した場合、活性化Fc受容体に対する結合親和性の20%未満、具体的には10%未満、より具体的には5%未満を示す。特定の実施態様において、活性化Fc受容体は、Fcγ受容体であり、より具体的にはFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRI
Ia受容体である。好ましくは、これらの受容体の各々に対する結合が減少する。幾つかの実施態様において、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性もまた減少する。一実施態様において、新生児Fc受容体(FcRn)への結合親和性は低下しない。FcRnへの実質的に類似な結合、すなわち、前記受容体への免疫グロブリンの結合親和性の保存は、抗体(又は前記Fcドメインを含んでなるイムノコンジュゲート)が、FcRnに対し、非操作型形態の抗体(又は前記非操作型形態の抗体を含んでなるイムノコンジュゲート)の約70%より大きな結合親和性を呈する場合に達成される。抗体又は前記抗体を含むイムノコンジュゲートは、その親和性の約80%を越える、又は更に約90%を越える親和性を示す場合がある。一実施態様では、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。一実施態様において、抗体、特にヒト完全長IgG
1サブクラス抗体は、免疫グロブリン重鎖の位置P329でアミノ酸置換を含む(Kabatの
EU番号づけ)。より特異的な実施態様では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである。一実施態様では、抗体は、免疫グロブリン重鎖のS228、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置に更なるアミノ酸置換を含む。より特異的な実施態様では、更なるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施態様において、抗体は、免疫グロブリン重鎖の位置P329、L234及びL235でアミノ酸置換を含む(Kabatの
EU番号づけ)。更に特定の実施態様では、抗体は、免疫グロブリン重鎖においてアミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(LALA P329G)を含む。参照によってその全体が援用される、PCT出願番号WO2012/130831に記載されるように、アミノ酸置換のこの組合せは、ヒトIgG分子のFcγ受容体結合をほとんど特に効率的に消失させ、従って、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を含む、エフェクター機能を低下させる。国際公開第2012/130831号はまた、このような変異体抗体を調製する方法、及びFc受容体結合又はエフェクター機能などその特性を決定するための方法を記載する。
【0083】
変異体抗体は、当技術分野で知られている遺伝子的又は化学的方法を用いて、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードするDNA配列、PCR、遺伝子合成等の部位特異的変異誘発を含むことができる。正しいヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって検証することができる。
【0084】
Fc受容体への結合は、例えば、BIAcore装置(GE Healthcare)など標準的な計測機器を使用してELISAによって又は表面プラズモン共鳴(SPR)によって容易に決定することができ、そのようなFc受容体は、組換え発現によって得ることができる。適切なこのような結合アッセイが本明細書に記載されている。代わりに、抗体又は、Fc受容体に対する抗体を含むイムノコンジュゲートの結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するNK細胞などを使用して評価することができる。
【0085】
幾つかの実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、非操作抗体と比較して、低下したエフェクター機能を有するように、とりわけADCCを低下されるように操作される。
【0086】
抗体又は抗体を含むイムノコンジュゲートのエフェクター機能は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するのに適したアッセイが本明細書に記載されている。対象とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号:Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985); U.S. Patent No. 5,821,337; Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記述されている。あるいは、非放射性アッセイ法(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI
TM非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)を用いることができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes et al., Proc Natl Acad Sci USA 95, 652-656 (1998)に開示される動物モデルにおいてインビボで評価することができる。
【0087】
幾つかの実施態様において、補体成分に対する、具体的にはC1qに対する抗体の結合が改変される。従って、抗体が、低下したエフェクター機能を有するように操作される幾つかの実施態様において、前記低下したエフェクター機能は低下したCDCを含む。イムノコンジュゲートがC1qに結合することができそれ故にCDC活性を有するかを決定するためにC1q結合アッセイを実施することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J Immunol Methods 202, 163 (1996); Cragg et al., Blood 101, 1045-1052 (2003);及び Cragg and Glennie, Blood 103, 2738-2743 (2004))。
【0088】
幾つかの実施態様において、イムノコンジュゲートは、エフェクター部分と抗体との間に位置する一以上のタンパク質分解性切断部位を含む。イムノコンジュゲートの構成要素は、直接又は様々なリンカー、特に、一以上のアミノ酸を含み、典型的には、本明細書に記載されているか、又は当技術分野で知られている約2〜20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーによって連結されていてもよい。適切な非免疫原性ペプチドリンカーは、例えば、(G
4S)n、(SG
4)n又はG
4(SG
4)nペプチドリンカーを含み、nは一般に、1と10の間、典型的には2と4の数である。
【0089】
イムノコンジュゲートの抗体
本発明のイムノコンジュゲートは、一般に、特定の抗原決定基に結合し、かつ標的部位、例えば抗原決定基を担う特定のタイプの腫瘍細胞又は腫瘍間質に結合する実体(例えば、エフェクター部分)を指向することができる免疫グロブリン分子である。イムノコンジュゲートは、例えば、腫瘍細胞の表面、ウイルス感染細胞の表面、他の疾患細胞の表面、血清中に遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)中に見出される抗原決定基に結合可能である。腫瘍抗原の非限定的例には、MAGE、MART−1/メラン−A、gp100、ジペプチジルペプチターゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ−結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP−1及びCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異性抗原(PSA)及びその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、及びPSA−3、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、T−細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、MAGE−腫瘍抗原ファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、GAGE−腫瘍抗原ファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、及びγ−カテニン、p120ctn、gp100 Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ウイルス生成物、例えばヒト乳頭腫ウイルスタンパク質、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBV−コード化核内抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1及びCT−7、及びc−erbB−2が含まれる。ウイルス性抗原の非限定例は、インフルエンザウイルス血球凝集素、エプスタイン・バーウイルスLMP−1、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、HIV gp160、及びHIV gp120を含む。ECM抗原の非限定例は、シンデカン、ヘパラナーゼ、インテグリン、オステオポンチン、リンク、カドヘリン、ラミニン、ラミニンタイプEGF、レクチン、フィブロネクチン、ノッチ、テネイシン、及びマトリキシン(matrixin)を含む。本発明のイムノコンジュゲートは、次の特異的な非限定的例の細胞表面抗原:FAP、Her2、EGFR、IGF−1R、CD2(T−細胞表面抗原)、CD3(TCRと結合したヘテロマルチマー)、CD22(B−細胞受容体)、CD23(低親和性のIgE受容体)、CD25(IL−2受容体α鎖)、CD30(サイトカイン受容体)、CD33(骨髄細胞表面抗原)、CD40(腫瘍壊死因子受容体)、IL−6R(IL6受容体)、CD20、MCSP、c−Met、CUBドメイン含有タンパク質−1(CDCP1)、及びPDGFβR(β血小板由来成長因子受容体)に結合可能である。
【0090】
ある実施態様において、抗体は、腫瘍細胞上又は腫瘍細胞環境内に存在する抗原に対するものである。特定の実施態様において、抗体は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシン−CのA1ドメイン(TNC A1)、テネイシン−CのA2ドメイン(TNC A2)、フィブロネクチンのエクストラドメインB(EDB)、癌胎児抗原(CEA)及びメラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)の群から選択される抗原に対するものである。
【0091】
抗体は、抗原決定基に特異的に結合することを保持し、かつFc領域を含む抗体又はその断片の任意のタイプとすることができる。一実施態様において、抗体は、完全長抗体である。特に好ましい抗体は、IgGクラス、具体的にはIgG
1サブクラスの免疫グロブリンである。
【0092】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンのA1及び/又はA4ドメイン(TNC−A1又はTNC−A4又はTNC−A1/A4)に特異的である抗体をを含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号8又は配列番号9の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号6又は配列番号7の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。更に特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号8又は配列番号9の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号6又は配列番号7の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。
【0093】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンのA2ドメイン(TNC−A2)に特異的である抗体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号5、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83及び配列番号85の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号3、配列番号4;配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82及び配列番号84の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。より特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号5、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83及び配列番号85の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号3、配列番号4;配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82及び配列番号84の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。
【0094】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的である抗体を含む。具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67及び配列番号69からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66及び配列番号68からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67及び配列番号69からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66及び配列番号68からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号12の重鎖可変領域配列、及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号17の重鎖可変領域配列、及び配列番号16の軽鎖可変領域配列を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号47の重鎖可変領域配列、及び配列番号46の軽鎖可変領域配列を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号63の重鎖可変領域配列、及び配列番号62の軽鎖可変領域配列を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号67の重鎖可変領域配列、及び配列番号66の軽鎖可変領域配列を含む。別の特定の実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、配列番号125に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、配列番号126に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号129に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の特定の実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、配列番号127に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、配列番号128に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号129に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の特定の実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、配列番号130に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、配列番号131に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号132に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。
【0095】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)に特異的である抗体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号86又は配列番号122の何れかの配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号87又は配列番号123の何れかの配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。更に特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号86又は配列番号122の何れかの配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号87又は配列番号123の何れかの配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。より特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号86の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号87の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号86の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号87の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域配列を含む。
【0096】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、癌胎児抗原(CEA)に特異的である抗体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号114の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号115の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持しているその変異体を含む。より特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗体は、配列番号114の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号115の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。別の特定の実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、配列番号136に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、配列番号137に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体、及び配列番号138に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列、又は機能性を保持しているその変異体を含む。
【0097】
本発明によるイムノコンジュゲートは、配列番号3〜87、108〜132及び136〜138に記載された配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%,又は100%同一である配列を、その機能性断片又は変異体を含み、含むものを含む。本発明によるイムノコンジュゲートはまた、保存的アミノ酸置換を有する配列番号3〜127の配列を含む抗体も包含する。配列番号126、128、131、134及び137の配列において、本明細書に記載される変異体IL−2の配列の配列(配列番号2を参照)は、ヒトIL−2の配列(配列番号1を参照)により置換され得ることが理解される。
【0098】
イムノコンジュゲートのエフェクター部分
本発明における使用のためのエフェクター部分は、一般に、例えばシグナル伝達経路を介して細胞活性に影響を与えるポリペプチドである。従って、本発明において有用なイムノコンジュゲートのエフェクター部分は、細胞内応答を調節する細胞膜の外側からシグナルを伝達する受容体媒介性シグナル伝達と関連することができる。例えば、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、サイトカインとすることができる。特定の実施態様において、エフェクター部分は、本明細書で記載されたような、単鎖エフェクター部分である。一実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートのエフェクター部分、典型的には単鎖エフェクター部分は:IL−2、GM−CSF、IFN−α、及びIL−12からなる群から選択されるサイトカインである。一実施態様において、エフェクター部分はIL−2である。他の実施態様において、イムノコンジュゲートの単鎖エフェクター部分は:IL−8、MIP−1α、MIP−1β、及びTGM−βからなる群から選択されるサイトカインである。
【0099】
一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIL−2である。特定の実施態様において、IL−2エフェクター部分は:活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTC)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞における増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞NK細胞によるサイトカイン分泌、及びNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞傷害からなる群から選択される、一又は複数の細胞反応を誘発させることができる。ある実施態様において、IL−2エフェクター部分は、変異していないIL−2エフェクター部分と比較して、IL−2受容体のα−サブユニットに対する変異IL−2エフェクター部分の親和性は減少させ又は無効になっているが、中程度の親和性のあるIL−2受容体(IL−2受容体のβ−及びγ−サブユニットからなる)に対する、変異IL−2エフェクター部分の親和性は保存されている、少なくとも一つのアミノ酸変異を有するIL−2エフェクター部分である。一実施態様において、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。特定の実施態様において、変異IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2(配列番号1)の残基42、45及び72に対応する位置から選択される1、2又は3の位置(複数)に、1、2又は3のアミノ酸置換を有する。更に特定の実施態様において、変異IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2の残基42、45及び72に対応する位置で、3のアミノ酸置換を有する。また更に特定の実施態様において、変異IL−2エフェクター部分は、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72Gを有するヒトIL−2である。一実施態様において、変異IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2の3位に対応する位置に、アミノ酸変異を付加的に有し、IL−2のO−グリコシル化部位が除去されている。特に、前記付加的なアミノ酸変異は、スレオニン配列がアラニン残基で置き換えられたアミノ酸置換である。アミノ酸置換T3A、F42A、Y45A及びL72Gを有する四重変異(QM)IL−2の配列を、配列番号2に示す。適切な変異IL−2分子は、PCT出願番号WO2012/107417に詳細に記載されている。
【0100】
イムノコンジュゲートにおけるエフェクター部分として有用な変異型サイトカイン分子は、当技術分野で公知の遺伝的又は化学的方法を用いて、欠失、置換、挿入又は修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードするDNA配列、PCR、遺伝子合成等の部位特異的変異誘発を含むことができる。正確なヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって検証することができる。これに関し、天然IL−2のヌクレオチド配列は、Taniguchiら (Nature 302, 305-10 (1983))に記載されており、ヒトIL−2をコードする核酸は、例えばAmerican Type Culture Collection (Rockville MD)などの公の受託者から入手することができる。ヒトIL−2の例示的な配列は、配列番号1に示されている。置換又は挿入は、天然ならびに非天然のアミノ酸残基を含むことができる。アミノ酸修飾は、グリコシル化部位の付加又は除去又は炭水化物連結など化学修飾の周知の方法を含む。
【0101】
一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はGM−CSFである。特定の実施態様において、GM−CSFのエフェクター部分は、顆粒球、単球又は樹状細胞において増殖及び/又は分化を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIFN−αである。特定の実施態様において、IFN−αのエフェクター部分は、ウイルス感染細胞におけるウイルス複製の阻害、及び主要組織適合性複合体I(MHC I)の発現の上方制御からなる群から選択される細胞応答の一以上を誘発することができる。別の特定の実施態様では、IFN−αのエフェクター部分は、腫瘍細胞において増殖を阻害することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIL−12である。特定の実施態様において、IL−12のエフェクター部分は、NK細胞における増殖、NK細胞における分化、T細胞における増殖、及びT細胞分化からなる群から選択される細胞応答の一つ以上を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIL−8である。特定の実施態様において、IL−8のエフェクター部分は、好中球において走化性を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はMIP−1αである。特定の実施態様において、MIP−1αのエフェクター部分は、単球及びTリンパ球細胞において走化性を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はMIP−1βである。特定の実施態様において、MIP−1βのエフェクター部分は、単球及びTリンパ球細胞において走化性を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はTGF−βである。特定の実施態様において、TGF−βのエフェクター部分は、単球における走化性、マクロファージにおける走化性、活性化マクロファージにおけるIL−1発現の上方制御、及び活性化B細胞におけるIgA発現の上方制御からなる群から選択される細胞応答の一以上を誘発することができる。
【0102】
イムノコンジュゲートと組合せのための抗体
本発明によれば、イムノコンジュゲートと組合せのための抗体は、増加したエフェクター機能を有するように操作される。イムノコンジュゲートと組合せのための本発明における有用な抗体は、特定の抗原決定基、例えば特定の腫瘍細胞抗原に結合し、Fc領域を含む抗体又は抗体断片を含む。ある実施態様において、抗体は、腫瘍細胞に存在する抗原に対するものである。本発明で有用な抗体の特定の標的抗原は、限定されるものではないが、細胞表面受容体、例えば上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、インスリン様成長因子受容体(IGFR)、及び血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、癌胎児抗原(CEA)、ジペプチジルペプチターゼIV(CD26、DPPIV)、FAP、HER2/neu、HER−3、E−カドヘリン、CD20、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、c−Met、CUBドメイン含有タンパク質−1(CDCP1)、及び扁平上皮癌抗原(SCCA)等を含む、腫瘍細胞の表面で発現する抗原を含む。
【0103】
特定の実施態様において、抗体は、CD20、上皮増殖因子受容体(EGFR)、HER2、HER3、インスリン様成長因子受容体(IGF−1R)、癌胎児抗原(CEA)、c−Met、CUBドメイン含有タンパク質−1(CDCP1)、及びメラノーマ関連コンドロイチンスルファートプロテオグリカン(MCSP)の群から選択される抗原に対するものである。一実施態様において、抗体、多重特異性抗体は、CD20、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、HER2、HER3、インスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)、癌胎児抗原(CEA)、c−Met、CUBドメイン含有タンパク質−1(CDCP1)、及びメラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)の群から選択される、2又はそれ以上の抗原に対するものである。
【0104】
本発明で有用な特定の抗CD20抗体は、マウスB−Ly1抗体の結合特異性を有する、ヒト化された、IgGクラスII型の抗CD20抗体である(Poppema and Visser, Biotest Bulletin 3, 131-139 (1987))。特に有用であるのは、
a)重鎖可変ドメインに、配列番号88のCDR1、配列番号89のCDR2、及び配列番号90のCDR3、及び
b)軽鎖可変ドメインに、配列番号91のCDR1、配列番号92のCDR2、及び配列番号93のCDR3;
を有する、ヒト化された、IgGクラスII型の抗CD20抗体である。
【0105】
特に、前記抗体の重鎖可変領域フレームワーク領域(FR)FR1、FR2、及びFR3は、VH1 10ヒト生殖系配列によりコードされるヒトFR配列であり、前記抗体の重鎖可変領域FR4は、JH4ヒト生殖系配列によりコードされるヒトFR配列であり、前記抗体の軽鎖可変領域FR、FR1、FR2、及びFR3は、VK 2 40ヒト生殖系配列によりコードされるヒトFR配列であり、前記抗体の軽鎖可変領域FR4は、JK4ヒト生殖系配列によりコードされるヒトFR配列である。
【0106】
特に本発明で有用な特定の抗CD20抗体は、配列番号94の重鎖可変ドメイン、及び配列番号95の軽鎖可変ドメインを含む。
【0107】
そのような抗CD20抗体は、その全体が出典明示によりここに援用される国際公開第2005/044859号に記載されている。
【0108】
本発明で有用な特定の抗EGFR抗体は、ラットICR62抗体の結合特異性を有する、ヒト化された、IgGクラスの抗体である(Modjtahedi et al., Br J Cancer 67, 247-253 (1993))。特に有用であるのは、
a)重鎖可変ドメインに、配列番号96のCDR1、配列番号97のCDR2、及び配列番号98のCDR3、及び
b)軽鎖可変ドメインに、配列番号99のCDR1、配列番号100のCDR2、及び配列番号101のCDR3;
を含む、ヒト化された、IgGクラスの抗EGFR抗体である。
【0109】
本発明で有用なより特定の抗EGFR抗体は、配列番号102の重鎖可変ドメイン、及び配列番号103の軽鎖可変ドメインを含む。
【0110】
そのような抗EGFR抗体は、それぞれその全体が出典明示によりここに援用される、国際公開第2006/082515号及び国際公開第2008/017963号に記載されている。
【0111】
本発明で有用な他の適切なヒト化されたIgGクラスの抗EGFR抗体は、セツキシマブ/IMC−C225(アービタックス(登録商標)、Goldstein et al., Clin Cancer Res 1, 1311-1318 (1995)に記載)、パニツムナブ/ABX−EGF(Vectibix(登録商標)、Yang et al., Cancer Res 59, 1236-1243 (1999)、Yang et al., Critical Reviews in Oncology/Hematology 38, 17-23 (2001)に記載)、ニモツズマブ/h−R3(TheraCim(登録商標)、Mateo et al., Immunotechnology 3, 71-81 (1997); Crombet-Ramos et al., Int J Cancer 101, 567-575 (2002)、Boland & Bebb, Expert Opin Biol Ther 9, 1199-1206 (2009)に記載)、マツズマブ/EMD72000(Bier et al., Cancer Immunol Immunother 46, 167-173 (1998)、Kim, Curr Opin Mol Ther 6, 96-103 (2004))に記載)、及びザルツムマブ/2F8(Bleeker et al., J Immunol 173, 4699-4707 (2004)、Lammerts van Bueren, PNAS 105, 6109-6114 (2008)に記載)を含む。
【0112】
本発明で有用な特定の抗IGF−1R抗体は、その全内容が出典明示によりここに援用される、国際公開第2005/005635号及び国際公開第2008/077546号に記載されており、インスリン様成長因子−1受容体(IGF−1R)への、インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びインスリン様成長因子−2(IGF−2)の結合を阻害する。
【0113】
本発明で有用な抗IGF−1R抗体は、好ましくはモノクローナル抗体、更にキメラ抗体(ヒト定常ドメイン)、ヒト化抗体、特に好ましくは全長ヒト抗体である。本発明で有用な特定の抗IGF−1R抗体は、抗体18に競合して、ヒトIGF−1Rに結合する、すなわち、それらは、国際公開第2005/005635号に記載されているように、抗体18と、IGF−1Rの同じエピトープに結合する。特定の抗IGF−1R抗体は、IGF−1Rへの親和性が10−
8M(K
D)未満、特に約10−
9〜10−
13Mであることにより更に特徴付けられ、好ましくはインスリン受容体へのインスリン結合性の検出可能な濃度依存性阻害を示さない。
【0114】
本発明で有用な特定の抗IGF−1R抗体は、次の配列:
a)配列番号104又は106のCDR、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む抗体重鎖;
b)配列番号145又は147のCDR、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む抗体軽鎖;
を有する、補体決定領域(CDR)を含む。
【0115】
特に、本発明で有用な抗IGF−1R抗体は、配列番号104の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と配列番号105の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列、又は配列番号106の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と配列番号107の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を有する。
【0116】
本発明で有用な特定の抗IGF−1R抗体は、それぞれ、寄託番号DSM ACC 2587及びDSM ACC 2594にて、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ), Germanyに寄託されている、ハイブリドーマ細胞株<IGF−1R>HUMAB−クローン18及び<IGF−1R>HUMAB−クローン22から得ることができる。
【0117】
本発明で有用な他の適切な抗IGF−1R抗体は、例えば、全長ヒトIgG
1 mAbシクツムマブ(cixutumumab)/IMC−A12(Burtrum et al., Cancer Res 63, 8912-21 (2003); Rowinsky et al., Clin Cancer Res 13, 5549s-5555s (2007)に記載)、全長ヒトIgG
1 mAb AMG−479(Beltran et al., Mol Cancer Ther 8, 1095-1105 (2009); Tolcher et al., J Clin Oncol 27, 5800-7 (2009)に記載)、ヒト化IgG
1 mAb MK−0646/h7C10(Goetsch et al., Int J Cancer 113, 316-28 (2005); Broussas et al., Int J Cancer 124, 2281-93 (2009); Hidalgo et al., J Clin Oncol 26, abstract 3520 (2008); Atzori et al., J Clin Oncol 26, アブストラクト3519 (2008)に記載)、ヒト化IgG
1 mAb AVE1642(Descamps et al., Br J Cancer 100, 366-9 (2009); Tolcher et al., J Clin Oncol 26, abstract 3582 (2008); Moreau et al., Blood 110, abstract 1166 (2007); Maloney et al., Cancer Res 63, 5073-83 (2003)に記載)、全長ヒトIgG
2 mAbフィギツムマブ/CP−751、871(Cohen et al., Clin Cancer Res 11, 2063-73 (2005); Haluska et al., Clin Cancer Res 13, 5834-40 (2007); Lacy et al., J Clin Oncol 26, 3196-203 (2008); Gualberto & Karp, Clin Lung Cancer 10, 273-80 (2009)、全長ヒトIgG
1 mAb SCH−717454(国際公開第2008/076257号又はKolb et al., Pediatr Blood Cancer 50, 1190-7 (2008)に記載)、2.13.2.mAb(米国特許第7037498号(国際公開第2002/053596号)に記載)、又は全長ヒトIgG
4 mAb BIIB022である。
【0118】
本発明で有用な特定の抗CEA抗体は、マウスPR1A3抗体の結合特異性を有する、ヒト化された、IgGクラスの抗体である(Richman and Bodmer, Int J Cancer 39, 317-328 (1987))。特に有用であるのは、
a)重鎖可変ドメインに、配列番号108のCDR1、配列番号109のCDR2、及び配列番号110のCDR3、及び
b)軽鎖可変ドメインに、配列番号111のCDR1、配列番号112のCDR2、及び配列番号113のCDR3;
を含む、ヒト化された、IgGクラスの抗CEA抗体である。
【0119】
本発明において有用である、より特定の抗CEA抗体は、配列番号114の重鎖可変ドメイン、及び配列番号115の軽鎖可変ドメインを含む。
【0120】
そのような抗CEA抗体は、その全体が出典明示によりここに援用されるPCT公開番号WO2011/023787に記載されている。
【0121】
本発明で有用な特定の抗HER3抗体は、ヒト化された、IgGクラスの抗体、例えば、Mab 205.10.1、Mab 205.10.2、及びMab 205.10.3、特にMab 205.10.2で、PCT公開番号WO2011/076683に記載されているものである。特に有用であるのは、
a)重鎖可変ドメインに、配列番号139のCDR1、配列番号140のCDR2、及び配列番号141のCDR3、及び
b)軽鎖可変ドメインに、配列番号143のCDR1、配列番号144のCDR2、及び配列番号145のCDR3;
を含む、ヒト化された、IgGクラスの抗HER3抗体である。
【0122】
本発明において有用である、より特定の抗HER3抗体は、配列番号142の重鎖可変ドメイン、及び配列番号146の軽鎖可変ドメインを含む。
【0123】
本発明で有用な特定の抗CDCP1−抗体は、PCT公開番号WO2011/023389に記載されているような、CUB4抗体(寄託番号DSM ACC 2551(DSMZ)から誘導される、ヒト化されたIgGクラスの抗体である。
【0124】
本発明で使用可能な例示的な抗MCSP抗体は、例えば欧州特許出願番号EP11178393.2号に記載されている。特に有用であるのは、
a)重鎖可変ドメインに、配列番号116のCDR1、配列番号117のCDR2、及び配列番号118のCDR3、及び
b)軽鎖可変ドメインに、配列番号119のCDR1、配列番号120のCDR2、及び配列番号121のCDR3;
を含む、ヒト化された、IgGクラスの抗MCSP抗体である。
【0125】
本発明において有用である、より特定の抗MCSP抗体は、配列番号122の重鎖可変ドメイン、及び配列番号123の軽鎖可変ドメインを含む。
【0126】
一実施態様において、抗体は、IgGクラスの完全長抗体である。特定の実施態様において、抗体はIgG
1抗体である。一実施態様において、抗体は、ヒトFc領域、より具体的にはヒトIgGのFc領域、最も具体的にはヒトIgG
1のFc領域を含む。上述される、抗IGF−1R、抗EGFR及び抗CD20抗体など、本発明に有用な抗体は、配列番号124に記載される、ヒトIgガンマ−1重鎖定常領域を含み得る(すなわち、抗体はヒトIgG
1サブクラスである)。
【0127】
本発明で有用な抗体は、対応する非操作抗体と比較して、増加したエフェクター機能を有するように操作されている。一実施態様において、増加したエフェクター機能を有するように操作された抗体は、対応する非操作抗体と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、又は少なくとも100倍増加したエフェクター機能を有する。増加したエフェクター機能には、限定されるものではないが、一又は複数の次の特徴:増加したFc受容体結合性、増加したC1q結合性及び補体依存性細胞傷害(CDC)、増加した抗体−依存性細胞−媒介性細胞傷害(ADCC)、増加した抗体−依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)、増加したサイトカイン分泌性、抗原提示細胞による増加した免疫複合体−媒介性抗原の取込、増加したNK細胞への結合性、増加したマクロファージへの結合性、増加した単球への結合性、増加した多形核細胞への結合性、増加した直接的シグナル伝達誘発性アポトーシス、増加した標的結合抗体の架橋性、増加した樹状細胞の成熟、又は増加したT細胞プライミングが含まれる。
【0128】
一実施態様において、増加したエフェクター機能は、増加したFc受容体結合性、増加したCDC、増加したADCC、増加したADCP、及び増加したサイトカイン分泌性の群から選択される、一又は複数のものである。一実施態様において、増加したエフェクター機能は、増加した活性化Fc受容体への結合である。このような実施態様において、活性化Fc受容体への結合親和性は、対応する非操作抗体の結合親和性と比較して、少なくとも2倍、特に少なくとも10倍に増加している。特定の実施態様において、活性化Fc受容体は、FcγRIIIa、FcγRI、及びFcRγIIaの群から選択される。一実施態様において、活性化Fc受容体はFcγRIIIa、特にヒトFcγRIIIaである。他の実施態様において、増加したエフェクター機能は増加したADCCである。このような実施態様において、ADCCは、対応する非操作抗体により媒介されるADCCと比較して、少なくとも10倍、特に少なくとも100倍に増加している。他の実施態様において、増加したエフェクター機能は、活性化Fc受容体への結合性、及び増加したADCCである。
【0129】
増加したエフェクター機能は、当業者に周知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するのに適したアッセイが本明細書に記載されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号:Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号; Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記述されている。あるいは、非放射性アッセイ法(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI
TM非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)を用いることができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes et al., Proc Natl Acad Sci USA 95, 652-656 (1998)に開示される動物モデルにおいてインビボで評価することができる。Fc受容体への結合は、例えば、BIAcore装置(GEヘルスケア)など標準的な計測機器を使用してELISAによって又は表面プラズモン共鳴(SPR)によって容易に決定することができ、そのようなFc受容体は、組換え発現によって得ることができる。特定の実施態様によれば、活性化Fc受容体への結合親和性は、25℃でBIACORE(登録商標)T100装置(GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴によって測定される。代わりに、Fc受容体に対する抗体の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するNK細胞などを使用して評価することができる。抗体がC1qに結合することができそれ故にCDC活性を有するかを決定するためにC1q結合アッセイを実施することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J Immunol Methods 202, 163 (1996); Cragg et al., Blood 101, 1045-1052 (2003);及び Cragg and Glennie, Blood 103, 2738-2743 (2004))。
【0130】
増加したエフェクター機能は、例えば、Fc領域の糖鎖操作から、又は抗体のFc領域のアミノ酸の変異の導入から生じ得る。一実施態様において、抗体は、そのFc領域において一以上のアミノ酸変異の導入によって操作される。特定の実施態様において、アミノ酸の変異とはアミノ酸置換である。さらなる特定の実施態様において、アミノ酸置換は、Fc領域の298、333、及び/又は334位に存在する(残基のEU番号付け)。更に適切なアミノ酸変異は、例えばShields et al., J Biol Chem 9(2), 6591-6604 (2001);米国特許第6737056号;国際公開第2004/063351号及び国際公開第2004/099249号に記載されている。変異Fc領域は、当該技術でよく知られている遺伝的又は化学的方法を使用し、アミノ酸を欠失、置換、挿入又は修飾することにより調製することができる。遺伝的方法は、コードするDNA配列、PCR、遺伝子合成等の部位特異的変異誘発を含むことができる。正確なヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって検証することができる。
【0131】
別の実施態様において、抗体は、Fc領域におけるグリコシル化の修飾により操作される。特定の実施態様において、抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように操作される。抗体のFc領域において非フコシル化オリゴ糖の割合が増加することで、抗体のエフェクター機能、特にADCCが増加する。
【0132】
更に特定の実施態様において、抗体のFc領域におけるN結合オリゴ糖の、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは約70%が、非フコシル化型である。非フコシル化オリゴ糖はハイブリッド又は複合型であってよい。
【0133】
他の特定の実施態様において、抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における二分岐オリゴ糖の割合が増加するように操作されている。更に特定の実施態様において、抗体のFc領域におけるN結合オリゴ糖の、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%が二分岐である。二分岐オリゴ糖はハイブリッド又は複合型であってよい。
【0134】
さらなる他の特定の実施態様において、抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における二分岐の非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作されている。更に特定の実施態様において、抗体のFc領域におけるN結合オリゴ糖の、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約25%、少なくとも約35%、又は少なくとも約50%が、二分岐の非フコシル化である。二分岐の非フコシル化オリゴ糖はハイブリッド又は複合型であってよい。
【0135】
Fcドメイン中のオリゴ糖構造は、当該分野で周知の方法によって、例えばUmana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999)又はFerrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006)で説明したように、MALDI TOF質量分析法により分析することができる。非フコシル化オリゴ糖のパーセンテージは、Asn297に結合した全てのオリゴ糖に対する、フコース酸基を欠くオリゴ糖の量であり(例えば、複合した、ハイブリッドの高マンノース構造)、MALDI TOF MSにより、N−グルコシダーゼF処理されたサンプルにおいて同定される。Asn297は、Fc領域においてほぼ297位に位置するアスパラギン残基を意味する(Fc領域残基のEU番号付け)が;抗体中の小さな配列変化のために、Asn297は、297位のほぼ±3アミノ酸の上流又は下流、すなわち294〜300位に位置していてもよい。二分岐、又は二分岐の非フコシル化オリゴ糖のパーセンテージは、同様に決定される。
【0136】
一実施態様において、抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域にてグリコシル化が修飾され、一又は複数のグリコシルトランスフェラーゼに活性が変化した宿主細胞で抗体が生成されるように操作されている。グリコシルトランスフェラーゼには、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)、β(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(GnTII)、及びα(1,6)−フコシルトランスフェラーゼが含まれる。特定の実施態様において、抗体は、増加したβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する宿主細胞に抗体を生成させることにより、非操作抗体と比較して、Fc領域に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように操作される。更に特定の実施態様において、宿主細胞は、付加的に、増加したα−マンノシダーゼII(ManII)活性を有する。本発明に有用な抗体を操作するために使用可能な糖鎖工学法は、その全内容が出典明示によりここに援用される、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999); Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006);国際公開第99/54342号(米国特許第6602684号;欧州特許出願公開第1071700号);国際公開第2004/065540号(米国特許第2004/0241817号;欧州特許出願公開第1587921号)、国際公開第03/011878号(米国特許第2003/0175884号)に更に詳細に記載されている。この方法を使用して糖鎖操作された抗体は、本明細書ではGlycoMabと称する。
一般に、ここで論議される細胞株を含む、任意の種類の培養された細胞株は、変化したグリコシル化パターンを有する抗TNC A2抗体を生成するための細胞株の作製に使用することができる。特定の細胞株には、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、又はハイブリドーマ細胞、及び他の哺乳動物細胞が含まれる。特定の実施態様において、宿主細胞は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、α−マンノシダーゼII(ManII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように更に操作されている。特定の実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種性ゴルジ常駐性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメイン及びGnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に、前記ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIのゴルジ局在化ドメインである。このような融合ポリペプチドを生成し、増加したエフェクター機能を有する抗体を産生するためにそれらを使用するための方法はFerrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006)及び国際公開第2004/065540号に開示され、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0137】
本発明で有用な抗体のコード化配列、及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのコード化配列を有し、生物学的に活性な遺伝子生成物を発現する宿主細胞は、例えばDNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーション;「マーカー」遺伝子機能の存在又は不在;宿主細胞における、それぞれのmRNA転写の発現により測定される場合の転写レベルの評価;又はイムノアッセイ又はその生物活性により測定される場合の、遺伝子生成物の検出で、当該技術でよく知られている方法により同定可能である。GnTIII又はMan II活性は、例えば、GnTIII又はManIIの生合成産物に結合するレクチンを用いることによって検出することができる。そのようなレクチンの例は二分するGlcNAcを含むオリゴ糖に優先的に結合するE
4−PHAレクチンである。GnTIII又はManII活性を有するポリペプチドの生合成産物(すなわち、特定のオリゴ糖構造)はまた、前記ポリペプチドを発現する細胞により生産される糖タンパク質から遊離されたオリゴ糖の質量分析によって検出することができる。あるいは、GnTIII又はManII活性を有するポリペプチドを用いて操作された細胞により生成された抗体で媒介される、増加したエフェクター機能、例えば増加したFc受容体結合性を測定する機能アッセイを使用してもよい。
【0138】
他の実施態様において、抗体は、低下したα(1,6)−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する宿主細胞に抗体を生成させることにより、非操作抗体と比較して、Fc領域に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように操作される。低下したα(1,6)−フコシルトランスフェラーゼを有する宿主細胞は、α(1,6)−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊又は不活性化された、例えばノックアウトされた細胞であってよい(Yamane-Ohnuki et al., Biotech Bioeng 87, 614 (2004); Kanda et al., Biotechnol Bioeng, 94(4), 680-688 (2006); Niwa et al., J Immunol Methods 306, 151-160 (2006)を参照)。
【0139】
脱フコシル化(defucosylated)抗体を生成可能な細胞株の他の例には、タンパク質フコシル化におけるLec13 CHO細胞欠失(Ripka et al., Arch Biochem Biophys 249, 533-545 (1986);米国特許第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)が含まれる。本発明で有用な抗体は、例えば、抗体生成に使用される宿主細胞における、GDP−フコーストランスポータータンパク質の活性を減少させ又は無効にすることにより、欧州特許出願公開第1176195A1号、国際公開第03/084570号、国際公開第03/085119号、及び米国特許第2003/0115614号、同2004/093621号、同2004/110282号、同2004/110704号、同2004/132140号、米国特許第6946292号(Kyowa)に開示されている技術に従い、Fc領域におけるフコース残基を低減させるように糖鎖操作することができる。
【0140】
本発明で有用な糖鎖操作された抗体は、修飾された糖タンパク質を生成する発現システムにても生成可能であり、例えば国際公開第03/056914号(GlycoFi, Inc.)又は国際公開第2004/057002号及び国際公開第2004/024927号(Greenovation)に教示されている。
【0141】
組換え方法
本発明で有用な抗体及びイムノコンジュゲートを生成する方法は、当該技術でよく知られており、例えば国際公開第2012/146628号、国際公開第2005/044859号、国際公開第2006/082515号、国際公開第2008/017963号、国際公開第2005/005635号、国際公開第2008/077546号、国際公開第2011/023787号、国際公開第2011/076683号、国際公開第2011/023389号、及び国際公開第2006/100582号に開示されている。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を生成するための確立された方法も、例えば、Harlow and Lane, "Antibodies, a laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に記載されている。
【0142】
天然に生じない抗体又はその断片は、固相ペプチド合成を使用して構築することができ、組換え的に生成することもでき(例えば、米国特許第4,816,567号に記載)、又は可変重鎖及び可変軽鎖を有するコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることにより(例えば、米国特許第5969108号、McCafferty)得ることができる。本発明で有用なイムノコンジュゲート及び抗体を組換え生成するために、該イムノコンジュゲート又は抗体をコードする一又は複数のポリヌクレオチド(複数)を単離し、宿主細胞において更にクリーニングし及び/又は発現させるために、一又は複数のベクターに挿入する。このようなポリヌクレオチドは、一般的な手順を使用して容易に単離され配列決定されうる。当業者によく知られてる方法を使用し、適切な転写/翻訳コントロールシグナルと共に、抗体又はイムノコンジュゲートのコード化配列を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ組換え/遺伝的組換えを含む。例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989); 及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y (1989)に記載される技術を参照。
【0143】
本発明で有用なイムノコンジュゲートは、全イムノコンジュゲートをコードする単一のポリヌクレオチドから、又は共発現される複数(例えば、2又はそれ以上)のポリヌクレオチドから発現され得る。共発現するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して結合し、機能性イムノコンジュゲートを形成している。例えば、抗体の軽鎖部分は、抗体の重鎖部分とエフェクター部分を含むイムノコンジュゲートの一部からの、別々のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。共発現されたとき、重鎖ポリペプチドが軽鎖ポリペプチドと会合し、抗体を形成する。
【0144】
組換えタンパク質の複製及び発現の補助に好適な宿主細胞は当分野でよく知られている。このような細胞は、適切である場合、特定の発現ベクターを用いて形質移入又は形質導入されてよく、多量のベクター含有細胞は、例えば臨床用途に、十分な量のタンパク質を得るために、大規模発酵槽に播種して増殖させることができる。好適な宿主細胞は、原核生物微生物、例えば大腸菌、又は様々な真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などを含む。例えば、組換えタンパク質は、特にグリコシル化が必要でない場合、細菌中に生成させてもよい。発現後、タンパク質は可溶化フラクションにおいて、細菌細胞ペーストから単離され、更に精製することもできる。原核生物に加え、真核微生物、例えば糸状菌又は酵母は、グリコシル化経路が「ヒト化」されている真菌及び酵母株を含む、タンパク質−コード化ベクターに対する適切なクローニング又は発現宿主であり、部分的又は全長ヒトグリコシル化パターンを有するタンパク質の生成をもたらす。Gerngross, Nat Biotech 22, 1409-1414 (2004)、及びLi et al., Nat Biotech 24, 210-215 (2006)を参照。(グリコシル化)タンパク質の発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)から派生している。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定され、これらは特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と組合せて使用することができる。植物細胞培養を宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物における抗体産生に関するPLANTIBODIES
TM技術を記載)を参照。脊椎動物細胞もまた宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞の他の例は、SV40により形質転換したサル腎臓CV1系(COS−7);ヒト胎児腎臓(HEK)系(例えば、Graham et al., J Gen Virol 36, 59 (1977))に記載されているような293又は293T細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, Biol Reprod 23, 243-251 (1980)に記載されているようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad Sci 383, 44-68 (1982)に記載)、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、dhfr−CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al., Proc Natl Acad Sci USA 77, 4216 (1980));及び骨髄腫細胞株、例えばYO、NS0、P3X63及びSp2/0が含まれる。タンパク質生成に適したある種の哺乳動物宿主細胞の概説について、例えばYazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, 248巻 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), 頁255-268 (2003)を参照。宿主細胞は、培養細胞、例えば、哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞、また、トランスジェニック生物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞を含む。一実施態様において、宿主細胞は真核細胞、特に哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞、又はリンパ球系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0145】
抗体及びイムノコンジュゲートがヒト使用を意図している場合、抗体又は抗原結合部分のキメラ形態が使用されてよく、ここで抗体定常領域はヒトからのものである。ヒト化又は完全ヒト形態の抗体がまた、当分野でよく知られている方法に従って調製されうる(例えばWinterの米国特許第5,565,332号を参照)。ヒト化は、様々な方法によって達成することができ、限定されなが、(a)非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRを、重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体の機能を維持するために重要であるもの)の保持を伴うか又は伴わない、ヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域の上に移植する、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa−CDR;抗体−抗原相互作用に重要な残基)のみを移植ヒトフレームワーク領域及び定常領域上に移植する、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によってヒト様部分(section)で「覆い隠す」。ヒト化抗体及びそれらの製造方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)に総説され、更に、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989);米国特許第5,5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号; Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol. 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun. 31(3):169-217 (1994); Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005) (SDR(a−CDR)グラフティングを記述); Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェシング」を記述); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記述);及びOsbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) 及びKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチを記述)に記載されている。ヒト抗体及びヒト可変領域は、当技術分野で公知の様々な技術を用いて生産することができる。ヒト抗体は一般的にvan Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) 及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に記載されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって作製されたヒトモノクローナル抗体の一部を形成することができ、それに由来することができる(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 頁51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を持つ又はインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することにより調製することができる(例えば、Lonberg, Nat Biotech 23, 1117-1125 (2005)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変領域配列を単離することによって生成することができる(例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178, 1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001); 及びMcCafferty et al., Nature 348, 552-554; Clackson et al., Nature 352, 624-628 (1991))。ファージは典型的には、抗体断片を短鎖Fv(scFv)断片として又はFab断片としてディスプレイする。
【0146】
ある実施態様において、本発明で有用な抗体は、例えば、その全内容が出典明示によりここに援用される、米国特許第2004/0132066号に開示されている方法に従い、高められた結合親和性を有するように操作されている。特定の抗原決定基に結合する本発明において有用な抗体の能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(BIAcoreT100システムで解析される)(Liljeblad, et al., Glyco J 17, 323-329 (2000)))及び伝統的な結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))のいずれかによって測定することができる。
【0147】
本明細書で記載のように調製される抗体及びイムノコンジュゲートは、当分野で知られている技術、例えば高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等によって精製されうる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には正味荷電、疎水性、親水性等の要因に依存し、当業者に明瞭であろう。
【0148】
薬学的組成物
別の態様において、本発明は、薬学的に許容可能な担体中に、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体を含む薬学的組成物を提供する。これらの薬学的組成物は、例えば以下に記載する任意の治療方法に使用することができる。
【0149】
本明細書で記載されたように、増加したエフェクター機能を有する抗体とイムノコンジュゲートの薬学的組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に、一又は複数の任意の薬学的に許容可能な担体と、所望の純度を有する抗体とこのようなイムノコンジュゲートを混合することによって調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences 18th edition, Mack Printing Company (1990))。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量及び濃度でレシピエントに毒性でなく、そしてこれには、限定しないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。本明細書における例示的な薬学的に許容可能な担体には、更に、間質薬剤分散剤、例えば可溶性の中性−活性化ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)が含まれる。rHuPH20を含む、ある例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ又は複数の追加のグルコサミノグリカンと組み合わされる。
【0150】
例示的な凍結乾燥製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性製剤は、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
【0151】
本明細書において、薬学的組成物は、治療される特定の兆候に必要な付加的な活性成分、特に互いに悪影響を与えない相補活性を有するものを、更に含有してよい。例えば、治療すべき疾患が癌である場合、1つ又は複数の抗癌剤、例えば、化学療法剤は、腫瘍細胞の増殖の阻害剤、又は腫瘍細胞のアポトーシスの活性化剤などを更に提供するのが望まれ得る。このような活性成分は、意図した目的のために有効な量で組み合わされ適切に存在する。
【0152】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合法によって、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル)により、コロイド薬物送達系で(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロ・エマルジョンで調製されたマイクロカプセルに封入されてもよい。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 18th edition, Mack Printing Company (1990)に開示されている。
【0153】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。
【0154】
インビボ投与に使用される組成物は、一般に滅菌されてる。滅菌は、例えば滅菌濾過膜を介して濾過することにより、容易に達成される。
【0155】
治療の方法
本明細書において提供される、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せが、治療方法において使用され得る。
【0156】
一態様において、医薬として使用のための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せが提供される。更なる態様において、疾患の治療において使用のための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せが提供される。ある実施態様において、治療の方法において使用のための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せが提供される。ある実施態様において、本発明は、組合せの治療的有効量を、個体に投与することを含む、疾患に罹患している個体を治療する方法に使用するための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組み合せを提供する。このような一実施態様において、本方法は、以下に記載するような、少なくとも一つの付加的な治療的有効量を、個体に投与することを更に含む。更なる実施態様において、本発明は、エフェクター細胞機能の刺激に使用するための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せを提供する。ある実施態様において、本発明は、エフェクター細胞機能を刺激するために、有効量の組合せを個体に投与することを含む、個体のエフェクター細胞機能を刺激する方法に使用するための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組み合せを提供する。上述した任意の実施態様の「個体」は、哺乳動物、特にヒトである。上述した任意の実施態様の「疾患」は、エフェクター細胞機能の刺激により治療可能な疾患である。ある実施態様において、疾患は細胞増殖性疾患、特に癌である。
【0157】
更なる態様において、本発明は、医薬の製造又は調製における、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の使用を提供する。一実施態様において、医薬は疾患を治療するためのものである。さらなる実施態様において、医薬は、治療的有効量の医薬を、疾患に罹患している個体に投与することを含む、疾患を治療する方法において使用するためのものである。このような一実施態様において、本方法は、以下に記載するような、少なくとも一つの付加的な治療的有効量を、個体に投与することを更に含む。さらなる実施態様において、医薬は、エフェクター細胞機能を刺激するためのものである。さらなる実施態様において、医薬は、エフェクター細胞機能を刺激するために、医薬的有効量、個体に投与することを含む、個体のエフェクター細胞機能を刺激する方法に使用されるものである。上述した任意の実施態様の「個体」は、哺乳動物、特にヒトである。上述した任意の実施態様の「疾患」は、エフェクター細胞機能の刺激により治療可能な疾患である。ある実施態様において、疾患は細胞増殖性疾患、特に癌である。
【0158】
更なる態様において、本発明は疾患を治療する方法を提供する。一実施態様において、本方法は、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せを、治療的有効量、このような疾患に罹患している個体に投与することを含む。このような一実施態様において、本方法は、以下に記載するような、少なくとも1つの付加的な治療剤を治療的有効量、個体に投与することを更に含む。上述した任意の実施態様の「個体」は、哺乳動物、特にヒトである。上述した任意の実施態様の「疾患」は、エフェクター細胞機能の刺激により治療可能な疾患である。ある実施態様において、疾患は細胞増殖性疾患、特に癌である。
【0159】
更なる態様において、本発明は、個体におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法を提供する。一実施態様において、本方法は、エフェクター細胞機能を刺激するために、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せを有効量、個体に投与することを含む。一実施態様において、「個体」は哺乳動物、特にヒトである。
【0160】
更なる態様において、本発明は、例えば上述した治療方法のいずれかに使用するための、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せの何れかを含む、薬学的組成物を提供する。一実施態様において、薬学的組成物は、本明細書に提供される、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体の組合せ、及び薬学的に許容可能な担体を含有する。他の実施態様において、薬学的組成物は、例えば以下に記載するような、少なくとも1つの付加的な治療剤と、ここで提供される任意の組合せを含有する。
【0161】
上述した任意の実施態様によれば、疾患は、エフェクター細胞機能を刺激することにより治療可能な疾患である。本発明の組合せは、疾患の治療に有用であり、宿主の免疫系の刺激により、特に細胞免疫反応を高めることが所望される病状において有効である。これらには、宿主免疫反応は不十分又は欠失している病状も含まれる。本発明の組合せを投与可能な病状は、細胞免疫反応が特定の免疫に対して重要なメカニズムである、腫瘍又は肝炎を含む。本発明の組合せを使用可能な特定の病状には、癌、特に腎細胞癌又はメラノーマ;特にHIV−ポジティブの患者における免疫不全、免疫抑制された患者、慢性感染症が含まれる。ある実施態様において、疾患は細胞増殖性疾患である。特定の実施態様において、疾患は癌、特に肺癌、結腸直腸癌、腎癌、前立腺癌、乳癌、頭部及び頸部の癌、卵巣癌、脳癌、リンパ腫、白血病、皮膚癌からなる群から選択される癌である。
【0162】
本発明の組合せは、治療において、単独で、又は他の薬剤と共に使用することができる。例えば、本発明の組合せは、少なくとも一つの付加的な治療剤と同時投与されてよい。ある実施態様において、付加的な治療剤は抗癌剤、例えば化学療法剤、腫瘍細胞増殖のインヒビター、又は腫瘍細胞アポトーシスのアクチベーターである。
【0163】
ここで提供される併用療法は、抗体とイムノコンジュゲートを一緒に投与すること(2又はそれ以上の治療剤が、同じ又は別々の処方剤に含有されている場合)、又は抗体の投与が、イムノコンジュゲート、付加的な治療剤、及び/又はアジュバントの投与の前、同時、及び/又は後に生じるケースでは別々に投与することを含む。また、本発明の組合せは、放射線療法と併用することもできる。
【0164】
本発明の組合せ(及び任意の付加的な治療剤)は、非経口、肺内、及び経鼻による投与、局所的治療が所望されている場合は、病巣内投与が可能である。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。抗体及びイムノコンジュゲートは、同じ又は違う経路で投与されてよい。投与は、短期間又は慢性的であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば注射、特に静脈又は皮下注射とすることができる。限定されるものではないが、種々の時点での単一又は複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む、種々の投与スケジュールが、ここで考慮される。
【0165】
本発明の組合せは、良好な医療行為に矛盾しない方式で、処方、服用、及び投与されるであろう。ここで考慮される要因は、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、患者個体の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医者に公知の他の要因が含まれる。組合せが、必要ではないが、場合によっては当該問題の疾患を予防又は治療するのに現在使用されている一又は複数の薬剤と共に処方されてもよい。このような他の薬剤の有効量は、製剤に存在する抗体及びイムノコンジュゲートの量、疾患又は治療の種類、及び上述にて論議した他の要因に依存する。これらは一般的には本明細書に記載されるのと同じ用量及び投与経路において、又は、本明細書に記載された用量の1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の用量及び任意の経路により使用される。
【0166】
疾患の予防又は治療のために、(場合によっては、一又は複数の他の付加的な治療剤との併用で使用される場合)抗体及びイムノコンジュゲートの適切な投薬量は、治療される疾患のタイプ、抗体及びイムノコンジュゲートのタイプ、疾患の重篤度及び経過、組合せが予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、事前治療、患者の臨床病歴及び抗体及び/又はイムノコンジュゲートに対する応答性、及び担当医師の裁量に依存する。抗体及びイムノコンジュゲートは一度に又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。
【0167】
疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、抗体の約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1mg/kgから10mg/kg)が患者への投与のための初期候補用量となり得る。1つの典型的な一日当たり用量は上記した要因に応じて約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日間以上に渡る反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで持続するであろう。1つの例示される抗体用量は約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲である。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの1つ以上の用量(又はこれらの何れかの組合せ)を患者に投与してよい。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が約2から約20、例えば抗体の約6投与量を受けるように)投与してよい。初期の高負荷用量の後、1つ以上の低用量を投与してよい。例示的投与レジメンは、抗体の約4mg/kgの初期負荷投与量の後、約2mg/kgの毎週の維持用量を投与することを含む。投与に関して、同じ考慮が、本発明の組合せに使用されるイムノコンジュゲートにも適用される。しかしながら、他の投与レジメンも有益であり得る。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0168】
製造品
本発明の他の態様では、上述の疾患の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、一又は複数の容器、及び容器上又はそれに付随したラベル又はパッケージ挿入物を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成されてもよい。容器は、組成物自体、又は病状の治療、予防及び/又は診断に有効な他の組成物と組合せて収容され、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は、本発明の組合せに使用される抗体である。他の活性剤は、本発明の組合せに使用されるイムノコンジュゲートであり、抗体と同じ組成物及び容器に存在していてよく、又は異なる組成物及び容器において提供されてもよい。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が選択した症状の治療のために使用されることを示している。
【0169】
一態様において、本発明は、(a)低下したエフェクター機能を有するように操作された第一抗体と、エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート、及び(b)増加したエフェクター機能を有するように操作された第二抗体を、同じ又は別々の容器に収容し、及び任意で、(c)疾患を治療するための方法として、併用治療の使用を指示する印刷された使用説明書を含むパッケージ挿入物を更に含む、疾患を治療することを意図したキットを提供する。更に、キットは、(a)増加したエフェクター機能を有するように操作された抗体を含有する組成物を収容する第1の容器;(b)少なくとも一つの抗原結合部分とエフェクター部分を含むイムノコンジュゲートを含有する組成物を収容する第2の容器;及び場合によっては(c)更に細胞傷害剤又は他の治療剤を含有する組成物を収容する第3の容器を具備していてよい。本発明のこの実施態様のキットは、組成物が、特定の病状を治療するのに使用可能であることを示したパッケージ挿入物を更に含んでいてよい。代替的に、又は付加的に、キットは、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を収容する第3(又は第4)の容器を更に具備していてもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を更に含んでもよい。