(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290222
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】基板をコーティングする方法及び基板を接合する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/14 20060101AFI20180226BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20180226BHJP
C23C 16/06 20060101ALI20180226BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20180226BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
C23C14/14 Z
B23K20/00 310M
C23C16/06
C23C28/02
H01L21/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-533462(P2015-533462)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2016-500750(P2016-500750A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2012069268
(87)【国際公開番号】WO2014048502
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴィンプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート レープハン
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特表平07−506773(JP,A)
【文献】
特開2010−046696(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/117478(WO,A1)
【文献】
国際公開第98/041354(WO,A1)
【文献】
特開2008−207221(JP,A)
【文献】
William W. So, et al. ,High temperature joints manufactured at low temperature,Electronic Components & Technology Conference,1998年,48th IEEE,p.284-291
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
B23K 20/00
C23C 16/06
C23C 28/02
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の拡散接合層(5)を形成する金属及び/又は半金属からなる第1の材料を第1の基板(1)の第1の表面(1o)に、前記第1の拡散接合層(5)が、前記第1の表面(1o)に対して平行な方向で1μmより小さな平均粒径(H)を有する粒表面を形成するように析出し、その際、前記第1の拡散接合層(5)と前記第1の基板(1)との間に少なくとも1つの別の中間層(5′,5″)を形成し、該別の中間層(5′,5″)は、前記第1の表面(1o)に対して平行な方向で前記粒表面の平均粒径(H)より大きな平均粒径(H′)を有し、前記第1の表面(1o)に対して直交する方向で前記粒表面の平均粒径(V)より大きな平均粒径(V′)を有し、前記第1の拡散接合層(5)及び前記別の中間層(5′,5″)の形成前に、前記第1の基板(1)の前記第1の表面(1o)をプラズマに曝す、コーティング方法によって、前記第1の拡散接合層がコーティングされた前記第1の基板(1)を、前記コーティング方法により金属及び/又は半金属からなる第2の拡散接合層がコーティングされた第2の基板(3)に、以下のステップ、すなわち:
−接合前に、前記第1の拡散接合層(5)及び前記第2の拡散接合層の表面の酸化物除去を行うステップと、
−前記第1の基板(1)の前記第1の拡散接合層(5)を前記第2の基板(3)の前記第2の拡散接合層に接触させるステップと、
−前記第1の基板(1)と前記第2の基板(3)との間の不可逆拡散接合を形成するように前記基板(1,3)を互いに押し付けるステップと、
で接合する方法。
【請求項2】
前記第1の拡散接合層(5)は、粒表面において、前記第1の表面(1o)に対して直交する方向で1μmより小さい平均粒径(V)を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の拡散接合層(5)を、前記第1の表面(1o)に対して直交する方向で1μmより小さい平均厚さ(t)で被着する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記別の中間層(5′,5″)を、電気化学的な析出プロセスにより製造する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1の拡散接合層(5)を物理的な気相析出及び/又は化学的な気相析出により製造する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
複数の前記別の中間層(5′,5″)を、前記拡散接合層(5)と前記第1の基板(1)との間に析出させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1の拡散接合層(5)及び/又は前記第2の拡散接合層の被着後、2時間以内に、前記接触を実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記拡散接合は、1.5J/m2より高い接合強度を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記押し付けを0.1MPa〜10MPaの圧力で実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び/又は第2の拡散接合層(5)を、前記拡散接合が固体拡散としてなされるように形成する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記拡散接合の形成を、室温〜500℃の温度で、最大12日間実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の第1の基板に第1の拡散接合層をコーティングする方法及び請求項6記載の基板を接合する方法に関する。
【0002】
基板の永久接合又は不可逆接合時の課題は、基板の両接触面間に可及的強い、特に取り消し不能な結合、つまり高い接合力を発生させることである。このための従来技術として、様々なアプローチ及び製造方法、特に比較的高い温度での表面の溶接がある。
【0003】
すべての種類の材料、しかしながら圧倒的に金属、半金属、半導体、ポリマー及び/又はセラミックが永久接合される。永久接合の最も重要な系の1つは、金属−金属系である。とりわけ近年では、Cu−Cu系が多く見られる。3次元構造の開発は、すなわち、大抵の場合、互いに異なる機能層の接続を要求する。この接続は、ますます頻繁にいわゆるTSV(Through Silicon Vias:Si貫通電極)を介して実現される。このTSV相互の結線は、多くの場合、銅接点箇所により実施される。接合の時点で、多くの場合、高価値で高機能な構造、例えばマイクロチップが、既に基板の単数又は複数の表面に存在している。マイクロチップ内では、様々な熱膨張係数を有する様々な材料が使用されるので、接合時の温度上昇は、望ましいことではない。温度上昇は、熱膨張、ひいては熱応力及び/又はSIV(Stress Induced Voiding:ストレス誘導ボイディング)に至る場合がある。SIVは、マイクロチップのパーツ又はその周囲のパーツを破壊してしまう場合がある。
【0004】
公知の製造方法及びこれまで追求されてきたアプローチは、しばしば、再現不能であるか、又は再現可能であっても再現率の悪い、特に条件が変更された場合にはまったく応用のきかない結果に至る。特に、現在使用されている製造方法は、しばしば、反復可能な結果を保証するために、高い温度、特に400℃を超える温度を使用する。
【0005】
高い消費エネルギ等の技術的な問題や、基板上に存在する構造の起こり得る破壊は、これまで高い接合力のために必要とされてきた高い温度や、ロード及び/又はアンロードにより生じる急速かつ/又は頻繁に実施される一部において300℃を大幅に超える温度変化から結果として生じる。
【0006】
さらなる要求は、
−バック−エンド−オブ−ライン−両立性、
バック−エンド−オブ−ライン−両立性とは、処理中のプロセスの両立性と解される。つまり接合プロセスは、大抵の場合、既に構造ウエハに存在する電気的な導体とlow−k誘電体とからなるバック−エンド−オブ−ライン−構造が、処理中に悪影響を受けたり、損傷を受けたりしないように設計されねばならない。この両立性の基準には、とりわけ機械的かつ熱的な負荷容量、とりわけ熱応力及びストレス誘導ボイディング(SIV)による負荷容量である。
−フロント−エンド−オブ−ライン−両立性、
フロント−エンド−オブ−ライン−両立性とは、電気により作動する構成部材の製造中のプロセスの両立性と解される。つまり接合プロセスは、既に構造ウエハに存在するトランジスタ等の能動型の構成素子が処理中に悪影響を受けたり、損傷したりしないように設計されねばならない。この両立性の基準には、とりわけある特定の化学元素(とりわけCMOS構造の場合)の純度、機械的かつ熱的な負荷容量、とりわけ熱応力による負荷容量である。
−低汚染、
−力の供給なし又は可及的低い供給、
−可及的低い温度、特に互いに異なる熱膨張係数を有する材料の場合の可及的低い温度、
にある。
【0007】
接合力の低減は、構造ウエハの温和な処理、ひいては直接的な機械的な負荷、特に金属の導体間の絶縁層がいわゆる「low−k」の材料から製造されているときの直接的な機械的な負荷による故障確率の低下に至る。
【0008】
今日の接合方法は、とりわけ高い圧力及び温度に設計されている。とりわけ高い温度の回避は、後々の半導体用途の溶接にとって重要である。それというのも、互いに異なる熱膨張係数を有する互いに異なる材料が、加熱工程及び/又は冷却工程時に看過できない熱応力を発生させてしまうからである。さらに、温度上昇時のドーピング元素の拡散は、一層問題となる。ドーピング元素は、ドーピング工程後、所定の空間領域を離れるべきではない。さもなければ、回路の物理的特性は、根本的に変化してしまう。このことは、よくて構成部材の悪化、最悪の場合、しかも最も可能性の高いことに、構成部材の機能不全に至ってしまう。とりわけメモリは、熱プロセス中の誘電体の劣化、これに由来する記憶時間の短縮により極めて敏感である。その一方で、メモリは、容量拡大及び性能向上のためにますます3次元技術が使用される。
【0009】
それゆえ本発明の課題は、2つの基板間の永久接合を、可及的高い接合力を有すると同時に、可及的低い温度及び/又は平均的なプロセス時間で温和に形成する方法を提供することである。
【0010】
この課題は、請求項1及び請求項6に記載の特徴により解決される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に記載されている。本発明の範囲内には、明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載の特徴のうちの少なくとも2つの特徴からなるすべての組み合わせが含まれる。数値範囲の記載に関して、明示の数値範囲に含まれる値も限界値として開示されたものとし、任意の組み合わせで特許請求可能である。
【0011】
本発明の基本思想は、基板の少なくとも1つに、可及的細かい粒、ひいては可及的大きな粒界表面を有する微細構造をもつ材料からなる拡散接合層を形成あるいは被着することである。本発明において、とりわけ、接合したい基板表面に対して法線方向に延びる粒界が好ましい。このことは、本発明において、拡散接合層の層厚さの適当な調節により達成される。層厚さは、粒の粒度にとっての制限基準である。両基板は、互いに前接合されてもよいが、必ずしも前接合されている必要はない。前接合の形成なしの単純な接触も可能である。「反応」という概念は、本発明において固体拡散と解すべきである。第1及び/又は第2の基板における拡散接合層の形成/被着前及び/又は後、大抵の場合、特に洗浄工程により、基板のクリーニングが実施される。このクリーニングは、大抵の場合、接合されない箇所を結果として伴う表面上のパーティクルが存在しないことを保証する。理想的には、析出及び/又は接合の本発明におけるすべてのステップが、閉鎖された、好ましくは不活性ガスで満たされた、さらに好ましくは排気された系内で実施される。その結果、コーティング後のクリーニングステップが省略可能である。
【0012】
本発明の核心は、拡散接合層を少なくとも第1の基板と第2の基板との間の接触面において、接触面又は基板の表面に対して平行に1μmより小さな平均粒径Hをもって形成することである。
【0013】
こうして得られた小さな平均粒径を有する拡散接合層により、基板間の接触面において直接、より急速な拡散を引き起こし、ひいては永久接合を第一に低温で可能とし、さらに強化し、かつ接合速度を高める技術的な可能性が提供される。以下で変形とは、表面及び/又はバルクの、拡散に基づく変化と解すべきである。
【0014】
拡散接合層のための本発明における材料として、周期表のすべての元素、とりわけ金属、半金属、ランタノイド及びアクチノイドが考えられる。
【0015】
しかし、本発明は、特に好ましくはCu−Cu接合にも使用される。
【0016】
基板として半導体の以下の混合形態:
−III−V:GaP、GaAs、InP、InSb、InAs、GaSb、GaN、AlN、InN、Al
xGa
1−xAs、In
xGa
1−xN;
−IV−IV:SiC、SiGe;
−III−VI:InAlP;
−非線形光学系:LiNbO
3、LiTaO
3、KDP(KH
2PO
4);
−ソーラーセル:CdS、CdSe、CdTe、CuInSe
2、CuInGaSe
2、CuInS
2、CuInGaS
2;
−導電性酸化物:In
2−xSnxO
3−y;
が考えられる。
【0017】
本発明において、拡散接合層の被着後、時間的に可及的直近に、特に2時間以内、好ましくは30分以内、さらに好ましくは10分以内、理想的には5分以内に、基板の接触が実施されると、特に好ましい。この措置により、場合によっては起こり得る望ましくない反応、例えば金属拡散接合層又は基板の表面の酸化が、最小化される。
【0018】
本来の接合工程前の酸化物除去も可能である。酸化物除去は、例えば湿式化学式に実施可能であるか、又は適当な還元ガスにより実施可能である。原則、あらゆる公知の化学的及び/又は物理的な酸化物還元法が使用可能である。
【0019】
本発明において、接触面の接触前の金属拡散接合層及び/又は基板の表面のこのような反応を抑制する手段、特に基板の表面の不動態化により、好ましくはN
2、フォーミングガス又は不活性の雰囲気の供給により、又は真空下で、又は非晶質化により、反応を抑制する手段が設けられていてもよい。この関連で、フォーミングガスを含む、特に主としてフォーミングガスからなるプラズマによる処理が、特に好適であることが判っている。フォーミングガスとして、ここでは、水素を少なくとも2%、好ましくは4%、理想的には10%又は15%を含むガスと解すべきである。混合物の残りの成分は、不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンからなっている。不活性の雰囲気又は真空の雰囲気を有する系は、好ましくはあるプロセスチャンバから次のプロセスチャンバへの基板の移動が基板ハンドリング系によりなされる系として実現される。基板ハンドリング系は、基板の移動を完全に、管理された調節可能な雰囲気、特に真空の雰囲気内で実施可能である。この種の系は、当業者に公知である。
【0020】
拡散接合層は、以下に挙げる単数又は複数の方法、すなわち:
−CVD、特にPECVD、LPCVD、MOCVD又はALD;
−PVD、特にスパッタ又は蒸着;
−エピタキシ、特にMBE、ALE;
−電気化学的な析出プロセス;
−無電流の析出プロセス;
により被着される。
【0021】
本発明は、互いに接触させられた2つのコーティングされた基板の表面を、最上位の層である拡散接合層の微細構造特性を利用することによって、より良好に溶接するという課題を解決する。これにより本発明は、化学的かつ/又は物理的なプロセスによる薄い層の適当な析出により、最上位の析出された層の微細構造を、その粒界面が可及的大きくなるように調節する手法及び方法に関する。粒界は、好ましくは基板表面に対して法線方向に延びている。
【0022】
本発明における小さな粒度により、大幅に増大した粒界表面、ひいては相応に大きな拡散経路が生じる。このことは、接合時の両材料層の溶接を促進する。つまり、本発明の思想は、粒界表面の増大により、粒界に沿って拡散する原子の流れを高めることにある。
【0023】
本発明の別の好ましい態様において、永久接合の形成を、室温〜400℃、特に室温〜300℃、好ましくは室温〜200℃、さらに好ましくは室温〜100℃の温度で、特に最大12日間、好ましくは最大1日間、さらに好ましくは最大1時間、最も好ましくは最大15分間実施する。
【0024】
本態様において、不可逆接合が、1.5J/m
2より高い、特に2J/m
2より高い、好ましくは2.5J/m
2より高い接合強度を有すると、特に好ましい。接合強度は、例えば「マスザラテスト(Maszaratest)」により求めることができる。
【0025】
接合強度は、特に好ましくは、両基板が、本発明における極めて小さな粒度、ひいては極めて大きな粒界表面を有する拡散接合層を有することにより向上可能である。これにより、接合工程を相応に促進する両方向での高められた拡散流が可能となる。
【0026】
機能層の被着/形成前に、基板の表面のプラズマ活性化、特に10〜600kHzの活性化周波数及び/又は0.075〜0.2ワット/cm
2の出力密度及び/又は0.1〜0.6mbarの圧力の供給によるプラズマ活性化が実施されると、付加的な効果、例えば接触面の平滑化が引き起こされる。圧力の供給とは、ここでは、プラズマ活性化中の作業雰囲気の圧力を意味している。
【0027】
0.1MPa〜10MPaの圧力での基板の押し付けが実施されると、最適な結果が達成可能である。圧力は、好ましくは0.1〜10MPa、さらに好ましくは0.1〜1MPa、最も好ましくは0.1〜0.3MPaである。圧力は、凹凸が大きければ大きいほど、かつ層が薄ければ薄いほど、大きく選択されねばならない。
【0028】
好ましくは、本発明の一態様において、拡散接合層の形成/被着は真空中で実施される。これにより、望ましくない材料又は化合物による拡散接合層の汚染は回避可能である。
【0029】
拡散接合層が好ましくは0.1nm〜2500nm、さらに好ましくは0.1nm〜150nm、さらに好ましくは0.1nm〜10nm、最も好ましくは0.1nm〜5nmの平均厚さRで形成されると、方法の進行にとって特に効果的である。
【0030】
本発明のその他の利点、特徴及び詳細は、好ましい実施の形態の以下の説明及び図面から看取可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明において層系がコーティングされた2つの基板の断面図である。
【
図4】基板に被着された拡散接合層を示す図である。
【
図5】1つの中間層と1つの拡散接合層とを有する、基板に被着された層系を示す図である。
【
図6】2つの中間層と1つの拡散接合層とを有する、基板に被着された層系を示す図である。
【0032】
図中、同一又は機能同一の特徴には、同一の符号を付した。図面は、正確な縮尺で図示したものではない。特に中間層及び拡散接合層は、微細構造をよりわかりやすく示すべく、何倍も大きく図示してある。
【0033】
本発明は、2つのコーティングされた基板1,3を2つの層系2,4を介して互いに接合する方法に関する。この場合、層系2,4は、互いに異なる物理的かつ/又は化学的な特性及び微細構造を有する互いに異なるタイプの任意の多数の層5,5′,5″(中間層5′,5″及び拡散接合層5)から構成されていてよい。本発明において、それぞれ最上位の層(層系2,4間の接触面)は、拡散接合層5、つまり粒度が本発明により制限されている層である。
【0034】
第1の基板1の第1の表面に被着されている拡散接合層5は、第1の拡散接合層といい、第2の基板3の第2の表面3oに被着されている拡散接合層5は、第2の拡散接合層という。
【0035】
基板1,3の表面1o,3oの、表面に対して投影(平面図)される平均粒径Hは、好ましくは1μmより小さい、さらに好ましくは100nmより小さい、さらに好ましくは10nmより小さい、さらに好ましくは5nmより小さい、最も好ましくは1nmより小さい。
【0036】
平均粒径Hあるいは基板表面に対して直交して測定される平均粒径Vは、好ましくは1μmより小さい、さらに好ましくは100nmより小さい、さらに好ましくは10nmより小さい、さらに好ましくは5nmより小さい、最も好ましくは1nmより小さい。
【0037】
投影される粒径Hと粒径Vとは、必ずしも同じである必要はない。しかし、層厚さtが極めて薄いとき、粒径Hと粒径Vとは、恐らく同じオーダを有している。この場合、粒径Vあるいは層厚さtは、粒径を制限する。理由は、粒の拡大を妨げる表面エネルギにある。
図2に示した実施の形態において、鉛直方向の粒径Vは、本実施の形態では唯一の拡散接合層5からなる層系2の層厚さtにより制限されて設定されている。したがって層系2の層厚さtは、粒径Vに等しい。
【0038】
図4に示した実施の形態では、拡散接合層5が、可及的大きな粒界面を有して、直接第1の基板1に析出される。
【0039】
図5に示した本発明の別の実施の形態では、拡散接合層5が、可及的大きな粒界面を有して(それゆえ多数の粒界を有して)、任意の別の中間層5′に析出される。この中間層5′は、拡散接合層5と同じ材料、場合によっては粒度分布の異なる同じ材料であってもよい。接触面(拡散接合層5の表面)における微細構造は、特に専ら、析出プロセスにより左右される。特に中間層5′は、電気化学的な析出プロセス(ECD)又はPVDプロセスにより製造されているのに対し、拡散接合層5は、PVD及び/又はCVDプロセスにより製造される。
【0040】
中間層5′は、
図3に示すように、表面1oあるいは3oに対して平行により大きな平均粒径H′を有し、表面1oあるいは3oに対して横方向により大きな平均粒径V′を有している。本実施の形態では、中間層5′の層厚さt′が平均粒径Vより大きい、特に2倍、好ましくは3倍、さらに好ましくは5倍、さらに好ましくは10倍、さらに好ましくは100倍、最も好ましくは1000倍大きいと有利である。
【0041】
図6に示した本発明の別の実施の形態では、別の中間層5″が、拡散接合層5と中間層5′との間に析出される。この場合、中間層5″は、拡散接合層5と中間層5′との間で起こり得る相互拡散を回避するという本発明における役割を担っている。その結果、拡散接合層5の微細構造は、本来の接合工程まで維持される。
【0042】
それぞれの層系2,4を介した両基板1,3の続いての接合工程によって、本発明では、少なくとも1つの拡散接合層の大きな粒界面(ひいては高い粒界数)により、層系2から層系4への及び反対に層系4から層系2への原子のより効率的な拡散が実施される。
【0043】
本発明において、拡散接合層5は、接触面を形成する層である。この理由は、拡散接合層5が極めて多数の粒界7を有していることにある。それゆえ、平均拡散流は、好ましくは鉛直方向(表面1o,3oに対して横方向)でこの粒界7に沿ってなされる。
【0044】
単一種の自己拡散は、自由表面に沿った自己拡散の方が粒界に沿った自己拡散よりも大きいが、粒界に沿った自己拡散は、バルク内の自己拡散よりも大きい。それゆえ、好ましくは、本発明における多数の粒界により、粒界を介した両層系2,4の原子の「相互拡散」が実施される。
【0045】
両層系2,4の接合は、好ましくは可及的低い温度で実施される。金属の接合は、好ましくは1.0より低い同相温度、しかし室温を上回り、かつ300℃の温度を下回る同相温度で実施される。
【0046】
本発明における層系は、特に:
−Si基板/薄い拡散障壁/厚い(ECD)Cu層/薄い拡散障壁(例えばTi,Ta,...)/薄い(PVD)Cu層;
−Si基板/薄い拡散障壁/厚い(ECD)Cu層/薄い(PVD)Cu層;
−Si基板/薄い拡散障壁/薄い(PVD)Cu層;
−Si基板/薄い拡散障壁/Cu層/薄いSi層;
−Si基板/薄い拡散障壁/Cu層/遷移金属(Ti,Ta,W,...)の薄い層;
−Si基板/薄い拡散障壁/Cu層/貴金属(Au,Pd,...)の薄い層;
−上述の層系の任意の組み合わせ;
である。
【0047】
接合工程は、本発明により上述の層系のうちのいずれか1つの層系の、上述の層系のいずれか1つの別の層系との接合により実施可能である。類似の考察は、明細書に明示しないものの、同じ発明思想に基づくその他のあらゆる層系にも成立する。
【0048】
本発明に係る(拡散接合層5と比較して)比較的大きな粒度を有する中間層5′,5″を製造する好ましい方法は、電気化学的な析出(ECD)である。
【0049】
本発明に係る比較的小さな粒度を有する拡散接合層5を製造する好ましい方法は、すべてのPVD及び/又はCVD法である。
【符号の説明】
【0050】
1 第1の基板
1o 表面
2 層系
3 第2の基板
3o 表面
4 層系
4o,4o′ 表面
5 拡散接合層
5′,5″ 中間層
6 粒
7 粒界
t,t′ 層厚さ
H,H′ (平均)粒径
V,V′ (平均)粒径