(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290229
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】リアエンジンを有し改良された前方区画を備える自動車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20180226BHJP
B62D 3/12 20060101ALI20180226BHJP
B60T 17/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
B62D25/08 C
B62D3/12 509Z
B60T17/04
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-541124(P2015-541124)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2016-511180(P2016-511180A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】EP2013073241
(87)【国際公開番号】WO2014075986
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】1260780
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー, マシュー
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−014122(JP,U)
【文献】
特開平04−100764(JP,A)
【文献】
特開平06−219256(JP,A)
【文献】
特開平03−025063(JP,A)
【文献】
特開2011−178253(JP,A)
【文献】
特開2005−119640(JP,A)
【文献】
特開2012−136214(JP,A)
【文献】
特開2004−067010(JP,A)
【文献】
特開2007−126020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60T 17/04
B62D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方区画(14)と前方区画(18)とを備える自動車両(10)であって、
後方区画(14)は、自動車両の駆動系(16)を収容し、
前方区画(18)は、
右ハンドル車では右側に配置され、左ハンドル車では左側に配置され、少なくとも、ステアリングコラム(20)、制動アシストサーボモータ(24)、及び一次剛性ブレーキパイプ(44)を収容する、第1の区域(60)と、
第1の区域とは反対の車両側に配置され、少なくともバッテリ(22)を収容する、第2の区域(62)を備え、さらに、前方区画(18)は、
第1の区域(60)と第2の区域(62)との間に配置され、少なくとも、制動油圧ブロック(26)と二次剛性ブレーキパイプ(46)を収容する、第3の区域(64)
を備えることを特徴とする、自動車両(10)。
【請求項2】
第3の区域は、車両ステアリングラック(21)を収容し、車両ステアリングラック(21)は、第1の区域(60)及び第2の区域(62)の側へと伸びていて、右側又は左側に設置されることに応じてステアリングコラム(20)と選択的に結合する、ことを特徴とする、請求項1に記載の車両(10)。
【請求項3】
第1の区域(60)はクラッチ油圧回路(48)を収容し、第2の区域(62)はフロントガラス洗浄液用リザーバ(54)を収容することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両(10)。
【請求項4】
ステアリングラック(21)は、車両のステアリングコラム(20)と同じ側に配置されるアシストモータ(58)を担持することを特徴とする、請求項2又は3に記載の車両(10)。
【請求項5】
第3の区域(64)は、冷却用熱交換器(32)、冷却パイプ(34)、及び冷却剤容器(36)を収容することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(10)。
【請求項6】
冷却剤容器(36)は、前方区画(18)の上方中央部分に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の車両(10)。
【請求項7】
第3の区域(64)は、
ヒューズ及びリレーボックス(38)、
車両の防火壁を貫通するためのグロメット(42)及び配線ワイヤリング(40)、
を収容することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両(10)。
【請求項8】
第3の区域(64)は、車両の冷暖房システムの要素を収容し、冷暖房システムの要素は、少なくとも、
第1の空調パイプ(50)、及び
空気熱交換器に連結される第2のパイプ(52)
を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両(10)。
【請求項9】
冷却用熱交換器(32)及び冷却用パイプ(34)は、前方区画(18)の前部に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の車両(10)。
【請求項10】
配線ワイヤリング(40)及び車両の防火壁(28)を貫通するためのグロメット(42)が、車両の防火壁(28)の中央部分に配置され、ヒューズ及びリレーボックス(38)はこれらの上に搭載されることを特徴とする、請求項7に記載の車両(10)。
【請求項11】
油圧制動ブロック(26)及び剛性二次ブレーキパイプ(46)は、前方区画の中央部分に配置されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、後方区画と前方区画を備える自動車両であって、後方区画は自動車両の駆動系を収容し、前方区画は、
右ハンドル車では右側に配置され左ハンドル車では左側に配置され、少なくとも、ステアリングコラム、制動アシストサーボモータ、及び一次剛性ブレーキパイプ(primary rigid brake pipes)、を収容する、第1の区域と、
第1の区域とは反対の車両側に配置され、少なくとも1つのバッテリを収容する、第2の区域と
を備える、自動車両に関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプの車両には多くの事例が知られている。
【0004】
このようなリアエンジン車両においては、前方区画は概して小さく、その区域をクラッシュさせることによる衝突の際にエネルギーの消散が可能な、衝撃吸収区域を構成する以外の目的を果たさない。
【0005】
更に、このような車両の機能的構成要素は、利用可能な区域に応じて、車両内で何ら現実的な一貫性なく分配されている。
【0006】
したがって、例えば、制動部材のような構成要素が車両フロアの下などの、特に天候及び/又は異物との衝突に晒される位置に配置された車両はよく見られるが、このことは、それら部材にとって、またより全体的には車両とその乗客とにとって、特に不利益である。
【0007】
更には、様々な要素の配置が、車両の駆動側に応じて最適化されてはいない。
【0008】
実際に、従来、右ハンドル車は、左ハンドル車の機能的要素とは全く異なる配置で、機能的要素を有する。しかしながら、すべての要素の異なる配置は、両タイプの車両の単一生産ラインでの生産を不可能にするか、追加の生産コストを大幅に増大させる。
【0009】
したがって、可能な限り多くの要素が変更されず、左又は右ハンドル車の2つのタイプの車両を有することによるこれらの追加コストを最小限に抑えることが好都合である。
【発明の概要】
【0010】
この目的のため、本発明は、最適な配置とされた多数の要素を備える、上述のタイプの車両を提示する。
【0011】
この目的のため、本発明は、上述のタイプの自動車両において、前方区画に第3の区域を設け、この第3の区域を、第1の区域と第2の区域との間に配置し、少なくとも、制動油圧ブロック及び二次剛性ブレーキパイプを収容するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の更なる特徴によれば、
第3の区域は、第1の区域と第2の区域とに伸び、左又は右に設置された車載の操舵装置に選択的に関連付けられる、車両ステアリングラックを収容し、
第1の区域はクラッチ油圧回路を収容し、第2の区域はフロントガラス洗浄液用リザーバを収容し、
ステアリングラックは、車両のステアリングコラムと同じ側に配置されたアシストモータを担持し、
第3の区域は、冷却用熱交換器、冷却パイプ、及び冷却剤容器を収容し、
冷却剤容器は、前方区画の上方中央部分に配置され、
第3の区域は、
ヒューズ及びリレーボックス、
配線ワイヤリング及び車両の防火壁を貫通するためのグロメット、を収容し、
第3の区域は、車両の冷暖房システムの要素を収容し、冷暖房システムは、少なくとも
第1の空調パイプ、
熱交換器に連結される第2のパイプを備え、
冷却用熱交換器及び冷却パイプは、前方区画の前部に配置され、
配線ワイヤリング及び車両の防火壁を貫通するためのグロメットは、車両の防火壁の中央部分に配置され、ヒューズ及びリレーボックスがそれらの上に搭載され、
油圧制動ブロック及び剛性二次ブレーキパイプは、前方区画の前部に配置される。
【0013】
後述の詳細な説明を読むことによって、本発明の更なる特徴及び利点が明らかとなり、その理解のために下記の添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明による、車両の前方区画の俯瞰図である。
【
図3】本発明による、右ハンドル車の前方区画の端面図である。
【
図4】本発明による、左ハンドル車の前方区画の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面において、同一の参照番号は、同一の要素又は類似の機能を有する要素を表す。
【0016】
図1は、従来技術による自動車両10を示す。
【0017】
車両10は、後方区画14及び前方区画18を備えた、ボディ構造要素12を備える。後方区画14は自動車両の駆動系16を収容し、前方区画18は衝撃吸収区域を形成する。
【0018】
既知のように、車両10は様々な要素を収容する。
【0019】
図1で簡略化して示すように、車両10は、車両の操舵システムの要素、具体的には、車両のステアリングコラム20及びステアリングラック21を収容し、コラム20の配置は特に車両の駆動側に依存し、右ハンドル車では右側、左ハンドル車では左側である。
【0020】
図1に示した車両は、例えば、バッテリ22、制動アシストサーボモータ24、並びに、例えば車両軌道制御デバイス又はESPを内部に備える、制動アシスト油圧ブロック26を更に備える。
【0021】
図1に示すように、これら要素の配置は最適化されていない。
【0022】
具体的には、バッテリ22が、例えば、原則として車両の防火壁28の背後に位置し、制動アシストサーボモータ24及び制動油圧ブロック26が、車両のフロア30の下に位置する。
【0023】
この構成は、前記要素、特にサーボモータ24及び制動油圧ブロック26に関して、これらが路面からの水しぶきに晒されやすく、さらに、やはり路面からの異物に影響を受けやすいので、これら要素の信頼性に対して特に不利益である。
【0024】
更に、大規模な大量生産においては、右ハンドルであれ左ハンドルであれ車両10を同じ生産ラインにおいて生産できることが好都合であり、コストも削減される。
【0025】
しかしながら、現行の設計の大半では、右ハンドル又は左ハンドルの配置が、要素の配置を全体として大きく変動させるので、2つのタイプの車両に共通する組み立て作業を利用することが不可能であり、したがって異なる2つの生産ライン又は同じラインでもほぼユニットごとの手動ベースの生産が必要となる。
【0026】
本発明は、一方では、様々な要素が実質的に前方区画に集められ、他方では、右ハンドル車用であろうと左ハンドル車用であろうと、要素の差異が最小限である、最適化されたリアエンジン車両10の設計を提示することによって、この欠点に対処するものである。
【0027】
図2〜4に示すように、この設計によれば、車両10は、第1の区域60を、2本のレール19によって区切られた前方区画18において収容し、第1の区域60は、右ハンドル車では右に配置され左ハンドル車では左に配置され、且つ、少なくとも、ステアリングコラム20、制動アシストサーボモータ24、及び一次剛性ブレーキパイプ44を収容する。
【0028】
第1の区域60は、クラッチ油圧回路48も収容する。
【0029】
車両10は、車両の前記第1の区域60と反対の側に、少なくとも1つのバッテリ22を収容する第2の区域62を有する。第2の区域は、フロントガラス洗浄液用リザーバ54も収容する。
【0030】
本発明によれば、前方区画18は、第1の区域60と第2の区域62との間に配置され、車両が右ハンドル車であろうと左ハンドル車であろうと、前方区画の同じ位置に同様に設置され得る多数の要素を収容する、第3の区域64を備える。
【0031】
したがって、本発明によれば、第3の区域は、少なくとも、油圧制動ブロック26及び剛性二次ブレーキパイプ46を備える。
【0032】
図3及び4に示すように、油圧制動ブロック26及び剛性二次ブレーキパイプ46は、前方区画の中央部分に配置されるのが好ましい。
【0033】
さらに、第3の区域は、第1の区域60と第2の区域62とに伸び、且つ、
図3では右に
図4では左に設置される車載の操舵装置に、選択的に関連付けられ得る、車両ステアリングラック21を収容する。
【0034】
したがって、ステアリングラック21は、車両のステアリングコラム20と同じ側で第1の区域に配置される、アシストモータ58を担持する。
【0035】
第3の区域64はまた、冷却用熱交換器32及び冷却パイプ34、並びにこれらに関連付けられる冷却剤容器36を備える。
【0036】
図2に示すように、冷却剤容器36は、前方区画の上方中央部分に配置される。この配置により、容器は常にアクセス可能となる。
【0037】
第3の区域は電気部材も収容し、これらは、ヒューズ及びリレーボックス38、配線ワイヤリング40、並びに、車両の防火壁を貫通するためのグロメット42である。
【0038】
より詳細には、配線ワイヤリング40及び車両の防火壁28を貫通するためのグロメット42が、車両の防火壁28の中央部分に配置され、ヒューズ及びリレーボックスはこれらの上に搭載される。
【0039】
第3の区域は、空気熱交換器に連結され、且つ、少なくとも、第1の空調パイプ50及び第2のパイプ52を備える、車両の冷暖房システムの要素を収容する。
【0040】
図2に示すように、冷却用熱交換器32及び冷却用パイプ34は、前方区画18の前部に配置されるのが好ましい。
【0041】
したがって、本発明は、車両の動作に不可欠なそれらの要素を、天候から保護されている車両の前部18に集めることを可能にする。
【0042】
これにより、衝突時にも、これら要素の機械的強度の低さが、車両10の前記前部18のクラッシャブル特性を損なわない。
【0043】
このように、本発明は、小型の前方区画を備えたリアエンジン車両の好適な配置を提示する。