(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290231
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】液体又は気体媒体用の閉止弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
F16K31/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-542236(P2015-542236)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公表番号】特表2015-535065(P2015-535065A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2013073557
(87)【国際公開番号】WO2014076051
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】202012104460.9
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504460935
【氏名又は名称】オットー・エゲルホフ・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ゾーン,ユルゲン
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−063739(JP,A)
【文献】
特開昭62−035185(JP,A)
【文献】
特開平02−125188(JP,A)
【文献】
特開2009−026673(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0251743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54
F16K 31/00−31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は気体媒体用の閉止弁であって、
前記閉止弁は:
流入用開口(21)を流出用開口(16)に接続する少なくとも1つの通路開口(14)を有する、弁ハウジング(12);
前記弁ハウジング(12)上に配設され、前記通路孔(14)を取り囲む弁座(17);
前記弁ハウジング(12)に取り付けることができる駆動装置(35);及び
前記弁閉鎖部材(31)の開閉運動に対して反作用する復元要素(33)
を有し、
前記弁座は、前記弁ハウジング(12)内の前記流入用開口(21)と前記流出用開口(16)との間に形成された調節用空間(22)内に配設された、すぐ側に隣接する弁閉鎖部材(31)によって閉鎖でき、
前記駆動装置は、前記通路孔(14)の開閉のために前記弁閉鎖部材(31)を作動させ、
前記駆動装置(35)は、前記弁閉鎖要素(31)の前記開閉運動を制御するための、形状記憶合金製の少なくとも1つのアクチュエータ(39)を有する、閉止弁において、
−前記駆動装置(35)は、シール要素(24)によって前記調節用空間(22)から離間して配設され、それにより前記アクチュエータ(39)が、前記流体又は前記気体媒体の温度から独立して作動されること;
−前記弁ハウジング(12)は、前記流入用開口(21)が設けられた、前記通路孔(14)を取り囲むスリーブ状ハウジング部分(19)を有し、前記シール要素(24)は、前記弁ハウジング(12)の前記スリーブ状ハウジング部分(19)の、前記通路孔(14)と反対側の端部上に配設されて、前記調節用空間(22)を閉鎖すること;及び
−前記シール要素(24)は、前記弁ハウジング(12)又は前記スリーブ状ハウジング部分(19)に締結できるふいご状部分(29)を有する、ふいご状要素として設計され、前記ふいご状部分(29)上に配設された、前記シール要素(24)の可動基部(28)は、前記通路孔(14)に割り当てられること;
を特徴とする、閉止弁。
【請求項2】
前記シール要素(24)は、前記基部(28)と反対側に位置する端部上に締結部分(25)を有し、
前記締結部分(25)上にはカバー(27)が配設され、これにより、前記液体又は気体媒体が流れない閉鎖された作動空間(37)が形成され、
前記駆動装置(35)は前記作動空間(37)内に配設される
ことを特徴とする、請求項1に記載の閉止弁。
【請求項3】
駆動モジュールは、前記シール要素(24)、前記カバー(27)、前記駆動装置(35)からなり、
前記モジュールは、前記弁ハウジング(12)又は前記スリーブ状ハウジング部分(19)に締結される
ことを特徴とする、請求項1に記載の閉止弁。
【請求項4】
前記カバー(27)は、前記締結部分(25)を固定することによって、前記シール要素(24)を前記スリーブ状ハウジング部分(19)上に位置決めすること;又は
前記シール要素(24)は、前記スリーブ状ハウジング部分(19)若しくは前記弁ハウジング(12)上の前記締結部分(25)に、堅固に結合されて接続されること
を特徴とする、請求項2に記載の閉止弁。
【請求項5】
制御ライン(42)のための供給用開口(41)が前記カバー(27)上に設けられ、
前記供給用開口は、ガスケット(43)によって閉鎖される
ことを特徴とする、請求項2に記載の閉止弁。
【請求項6】
前記駆動装置(35)は、前記アクチュエータ(39)に割り当てられる、管状、ホース状、ロッド状、ケージ状又は板状加熱要素(40)を有することを特徴とする、請求項1に記載の閉止弁。
【請求項7】
前記弁座(17)の方を向いた前記シール要素(24)の前記基部(28)は、前記弁閉鎖部材(31)を受承するか、又は前記弁閉鎖部材(31)として設計されることを特徴とする、請求項2に記載の閉止弁。
【請求項8】
前記弁閉鎖部材(31)は、ディスク状、球形、円筒形又は円錐台状となるよう設計され、プラスチックからなること;又は
前記弁閉鎖部材(31)は、加硫によってディスク状の前記ガスケット(43)として形成されること
を特徴とする、請求項7に記載の閉止弁。
【請求項9】
前記ふいご状部分(29)は前記復元要素(33)として設計されるか、又は
前記ふいご状部分(29)及び前記復元要素(33)は、互いに隣接して位置合わせされるか、若しくは互いに接続されて、1つの構成部品を形成し、また前記復元要素(33)の一部を形成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の閉止弁。
【請求項10】
前記駆動装置(35)は、形状記憶合金製の少なくとも1つの前記アクチュエータ(39)、及びテンションロッド(46)を備え、
前記アクチュエータ(39)は、前記スリーブ状ハウジング部分(19)に締結された前記カバー(27)に締結され、
前記アクチュエータ(39)は、付勢運動によって前記テンションロッド(46)を制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の閉止弁。
【請求項11】
前記復元要素(33)は前記調節用空間(22)内に配設されることを特徴とする、請求項1に記載の閉止弁。
【請求項12】
前記カバー(27)、前記少なくとも1つのアクチュエータ(39)、前記少なくとも1つのテンションロッド(46)、及び前記少なくとも1つのテンションロッド(46)に接続された制御ユニットは、組立体を形成することを特徴とする、請求項2に記載の閉止弁。
【請求項13】
前記シール要素(24)、前記カバー(27)、前記少なくとも1つのアクチュエータ(39)、前記少なくとも1つのテンションロッド(46)、及び前記少なくとも1つのテンションロッド(46)に接続された前記制御ユニットは、組立体を形成することを特徴とする、請求項2に記載の閉止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、液体又は気体媒体用の閉止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
このような液体又は気体媒体用の閉止弁は、特許文献1から公知である。この閉止弁は、流入用開口を流出用開口に接続する通路開口を有する弁ハウジングを有する。弁座はこの通路開口を取り囲み、弁ハウジング上に配設され、上記弁ハウジングは弁閉鎖部材によって作動させることができる。このために電磁駆動装置が設けられており、これは電流パルスに応じて弁閉鎖部材を開閉する。このような閉止弁は、いわゆる「デュアルポートハウジング」として設計されたコネクタブロックに導入できるものであってよい。このような切り替え弁はまた、膨張弁の一部であってもよく、いわゆる「4ポートハウジング」に導入してもよい。
【0003】
このような閉止弁は基本的に好都合なものであることが分かっている。しかしながら、駆動装置のために使用されるコイルは高い導通及び遮断パルスを有し、これらは特定の用途には望ましくない。更にこれらのコイルの材料として希土類が使用され、資源の希少性によりこれらのコイルはますます高価になってしまう。
【0004】
弁ハウジングを有する圧縮空気弁は特許文献2から公知であり、この弁では、有線又は帯状SMA要素を用いて弁の開閉運動を起動する。更に、床下暖房用サーモスタット弁が特許文献3から公知であり、この弁もまた、形状記憶合金製のアクチュエータによって駆動される。これは特許文献4に記載の弁にも当てはまる。上述の明細書全てにおいて、形状記憶合金製のアクチュエータは、調節されることになる媒体、又はこのアクチュエータによって流れを与えられる媒体内に設けられ、従って制御対象の媒体の温度がアクチュエータの形状記憶合金に直接影響する。
【0005】
形状記憶合金を有する微小弁用の駆動装置が特許文献5によって提供されており、この駆動装置では、弁閉鎖部材と通路孔との間に膜が固定されている。この膜は、弁閉鎖部材内のガスケットとして作用し、弁閉鎖部材は閉鎖位置において通路開口の弁座を封止するよう配設されている。これは、弁が開閉中に膜を作動させなければならず、微小弁の閉鎖を達成するためには弁が膜を弁座内へと押圧しなければならないという欠点を有する。このためには大きな力が必要となる一方で、特に攻撃的な媒体を使用する場合には、打傷によってガスケットの摩耗が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第102004049790B4号
【特許文献2】独国特許第102005060217B4号
【特許文献3】独国特許第19610065A1号
【特許文献4】米国特許第3835659号
【特許文献5】独国実用新案第202010010747U号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の閉止弁の従来存在する機能を維持でき、かつ希土類の使用並びに高い導通及び遮断パルスを回避できる、閉止弁を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴部分によって本発明に従って解決される。更なる有利な実施形態及び発展形態は、更なる請求項に明記される。
【0009】
駆動装置を有する閉止弁の実施形態によって、運動駆動装置の代替案が提案され、この駆動装置は、復元要素と反作用する形状記憶合金製の少なくとも1つのアクチュエータを用いた弁閉鎖部材の開閉運動の起動のため、及び弁ハウジングの流入用開口と通路孔との間又は通路孔と流出用開口との間に位置する調節用空間に対する、シール要素によるこの駆動装置の分離のためのものであり、上記運動駆動装置は、磁気コイルを有する駆動装置を必要としない。本発明によるこのような構成はまた、この構成に関する重量の削減も伴うことができる。更に、形状記憶合金製アクチュエータを用いた駆動装置の制御によって、低い導通電流及び遮断電流が発生し、ここで応答及び切り替え時間は保持できる。駆動装置と共に、弁閉鎖部材が設けられたシール要素を使用することにより、このシール要素が駆動装置に対して気体又は液体媒体を遮蔽することで、形状記憶合金製の上記アクチュエータを、液体又は気体媒体の圧力及び/又は温度及び/又は種類といった条件から独立して作動させることができ、弁閉鎖部材の従来の弁座構成が弁座内に保持されるという更なる利点が得られる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、弁ハウジングはスリーブ状ハウジング部分を有し、これは通路孔を取り囲み、通路孔の反対側に位置する端部においてシール要素を受承し、調節用空間を閉鎖する。調節用空間は、一方では通路孔を有する弁ハウジングによって、また他方では、液体又は気体媒体を通路孔へと案内する少なくとも1つの流入用開口を有する、調節用空間上に配設されたスリーブ状ハウジング部分によって、制限される。スリーブ状ハウジング部分の、弁ハウジングに対向する端部は、シール要素によって閉鎖されており、即ちこれらの間に位置する調節用空間を密封できる。この構成は更に、液体又は気体媒体が環境中へと漏れ出ることができないという利点を有する。
【0011】
シール要素は好ましくは、弁ハウジング、特にスリーブ状ハウジング部分に締結されたふいご状要素として設計され、その可動基部は通路孔に割り当てられている。よってシール要素は、弁閉鎖部材の一部としても同時に使用できる。駆動装置はまた、弁閉鎖部材を制御するために、ふいご状要素内で上記基部まで少なくとも部分的に延伸してもよい。このようにして、小型で空間効率のよい構成を作製できる。
【0012】
有利には、ふいご状要素として設計されたこのシール要素は、駆動装置が配設される閉鎖された作動空間を形成するように、基部に対向する端部にカバーを受承する。このカバーは好ましくは、シール要素の締結部分に接触し、これによってふいご状要素の内部とカバーの内部とが上記閉鎖された作動空間を形成する。このようにして、作動空間内に配設された駆動装置を、環境的影響等の外部からの影響から保護できる。この作動空間には、制御対象の媒体が存在しない。
【0013】
有利には、シール要素及びカバー、並びに好ましくは作動空間内に配設された駆動装置は、弁ハウジング上又は弁ハウジングのスリーブ状ハウジング部分上に簡単に組み付けることができる駆動モジュールを形成する。これにより容易に交換を行うこともできるようになる。各切り替えタスクに適合された複数の作動モジュールを更に設けてよく、使用してよく、及び/又は交換してよい。
【0014】
閉止弁の更に好ましい実施形態では、シール要素の締結部分を固定することにより、カバーをスリーブ状ハウジング部分に締結できる。これにより調節用空間及び作動空間の簡単な封止構成が実現可能となり、従って媒体に対して密閉性の分離も提供される。
【0015】
シール要素は、締結部分を用いて弁ハウジング又はスリーブ状ハウジング部分に堅固に結合することによって接続できるものであってもよい。従って調節用空間も、媒体に対して密閉性となるように封止され、駆動装置は少なくとも部分的にシール要素に挿入できる。
【0016】
制御ライン用の少なくとも1つの接続用開口を、作動空間を封止するカバー上に設ける。この駆動装置及び閉止弁の更なる境界面は必要なく、即ち制御ラインの供給を容易に封止でき、作動空間の遮蔽は気候条件とは独立して提供される。
【0017】
弁ハウジング及びその上に配設されたスリーブ状ハウジング部分、並びに好ましくはその上に配設されたカバーは、円筒形となるように設計され、少なくとも部分的にコネクタブロックに挿入できるものであってよい。このような設計により、閉止弁は設置ユニット又は設置カートリッジとして形成され、これは対応するコネクタブロック又は接続ハウジングに挿入できる。コネクタブロックは、従来技術において公知であるようなデュアルポート又は4ポートハウジングとして設計してよい。
【0018】
駆動装置は、管状、ホース状、ロッド状、ケージ状又は板状加熱要素を備え、これはアクチュエータに割り当てられている。このようにして、形状記憶合金からなるアクチュエータの制御を簡潔な様式で提供できる。
【0019】
本発明の更なる好ましい実施形態では、シール要素は形状記憶合金製のアクチュエータとして設計される。2つの構成部品を単一の構成部品に一体化したこのような構成は、構成部品を削減できるという利点を有する。
【0020】
シール要素は、弁座の方を向いたその基部の外側に、弁閉鎖部材を有する。これにより、構造的に簡潔で空間を節約できる構成が可能となる。
【0021】
このような弁閉鎖部材は好ましくはディスク状となるよう設計でき、プラスチックからなるものとすることができる。これによってガスケットを簡単に作製できる。
【0022】
弁閉鎖部材は好ましくは、シール要素の基部の外側上に加硫プラスチックディスクとして形成される。
【0023】
本発明並びに本発明の更なる有利な実施形態及び発展形態について、図示した実施例を利用して以下により詳細に説明及び例示する。以下の説明及び図面に見られる特徴は、本発明に従って個別に、又は多数をいずれの組み合わせで適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明による第1の実施形態の閉止弁の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の閉止弁の代替実施形態の概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の閉止弁の代替実施形態の概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の閉止弁の代替実施形態の概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の閉止弁の更なる代替実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による閉止弁11の第1の実施形態の概略断面図を
図1に示す。この閉止弁11はいわゆるNO弁(Normally Open valve:正常時開放弁)として設計され、その機能は以下に例示する。
【0026】
閉止弁11は、流出用開口16に流れ込む通路孔14を有する弁ハウジング12を備える。弁座17は通路孔14の反対側の端部に配設され、これは例えばクレーター状の膨隆部として形成できる。スリーブ状ハウジング部分19を弁ハウジング12上に更に設ける。これは弁ハウジング12と一体として配設できる。あるいはこれを、ねじ接続等の解放可能な接続、又は堅固に結合する接続によって、弁ハウジング12に取り付けてもよい。このスリーブ状ハウジング部分19は少なくとも1つの流入用開口21を有し、これを通して液体又は気体媒体が調節用空間22へと案内される。この調節用空間22は、その片側をシール要素24によって、そしてもう一方の側を弁ハウジング12によって、及びこれらの間に位置するスリーブ状ハウジング部分19によって制限される。
【0027】
シール要素24は例えばふいご状となるように形成され、スリーブ状ハウジング部分19に接触する締結部分25を有する。これは、スリーブ状ハウジング部分19に対して堅固に結合する様式で接続でき、又はカバー27によってクランプ留めすることによってスリーブ状ハウジング部分19に締結できる。シール要素24は例えば、ステンレス鋼、真鍮、銅等からなってよい。
【0028】
シール要素24は締結部分25と反対側に基部28を有し、上記基部は、円筒形ふいご状部分29によって締結部分25から離間している。弁閉鎖部材31は基部28の外側に配設され、上記部材はシール要素24によって閉鎖位置へと移動させることができ、これにより弁閉鎖部材31は弁座17上に当接して通路孔14を閉鎖する。弁閉鎖部材31の開放位置を表す、閉止弁11の開始位置では、弁閉鎖部材31は通路孔14の弁座17からある距離を有して配設され、これにより、媒体が流入用開口21を介して調節用空間22へと流入でき、ここから通路孔14を通って流出用開口16へと至る。
【0029】
弁閉鎖部材31は好ましくは、特に加硫ポリマーからなる、ディスク状又は板状ガスケットとして設計される。あるいは、円錐形、円筒形又は球形の弁閉鎖部材31をシール要素24の基部28上に配設して受承させてよい。
【0030】
弁ハウジング12とシール要素24の基部28との間の調節用空間22内に復元要素33を配設し、上記復元要素は、弁閉鎖部材31の閉鎖位置への付勢運動のために、駆動装置35と反作用する。この復元要素33は、圧縮ばねとして設計できる。あるいはこの復元要素33を、シール要素24の円筒形ふいご状部分29内に配設することもでき、このシール要素24は有利には引張ばねとして設計され、例えば基部26とカバー27との間に作用する。更に、ふいご状部分29は復元要素33として設計できる。ふいご状部分29及び復元要素33は、互いに隣接して位置合わせしてもよく、又は互いに接続して1つの構成部品を形成してもよい。
【0031】
カバー27及びシール要素24は、内部に位置する作動空間37を取り囲み、その中には駆動装置35が配設される。この作動空間37はまた、水分又はその他の有害な材料が一切侵入できないように封止されるよう設計できる。
【0032】
駆動装置35は形状記憶合金製のアクチュエータ39を備える。このアクチュエータは好ましくはばね要素、特に圧縮ばね要素として形成される。加熱要素40がこのアクチュエータ39に割り当てられ、上記加熱要素は、例えばロッド状又は管状となるように設計できる。あるいはこの加熱要素は、ケージ状又は板状となるよう、例えばPTC素子の形状に設計することもできる。加熱素子40は更に、アクチュエータ39に直接塗布されるホットラッカーとして設計できる。アクチュエータ39は有利には、シール要素24の基部28の内部からカバー27の内部へと延伸する。加熱要素40は、アクチュエータ39内及び/又はアクチュエータ39の外側に位置決めしてよい。制御ライン42のための供給用開口41をカバー27上に設け、上記制御ラインはスパウト等のガスケット43を用いて、媒体に対して密閉性となるようにカバー27内に挿入される。この加熱要素40はこれらの制御ライン42によって、閉止弁11がアクチュエータ39の長さを調整することによって開閉されるように制御される。あるいは、ハウジングを有する制御ユニットを供給用開口に割り当ててもよく、上記ハウジングは好ましくは上記供給用開口を封止する。
【0033】
好ましくは、発生する最高の環境温度より高い温度範囲で動作して、マルテンサイト構造がオーステナイト構造に変換される、形状記憶合金製のアクチュエータを選択する。例えば好ましくは、110℃超の温度範囲においてCuAlBe合金等を使用できる。
【0034】
更に詳細には図示されない開始位置では、弁閉鎖部材31は弁座17に対して間隙を有して配設される。復元要素33は閉止弁11を開放位置に保持し、即ち閉止弁11は開放状態(正常時開放状態)である。制御ライン42を介して制御信号が発生するとすぐに、アクチュエータ39が加熱され、アクチュエータ39による作動力が復元要素33の反作用力より大きくなり、これにより弁閉鎖部材31は弁座17上に当接して通路孔14を閉鎖する。制御信号が遮断されるとすぐに、復元要素33の復元力がアクチュエータ39による作動力より大きくなるため、弁閉鎖部材31がその開始位置に戻る。
【0035】
ある代替実施形態によると、シール要素24を形状記憶合金から製造でき、これにより追加のアクチュエータ39を不要とすることができ、シール要素24が同時にアクチュエータ39も形成する。
【0036】
図1に対する閉止弁11のある代替実施形態を
図2に示す。この閉止弁11はNC弁(Normally Closed valve:正常時閉鎖弁)として設計され、即ちこの閉止弁11は開始状態では閉鎖されており、弁閉鎖部材31は弁座17を閉鎖する。制御ライン42を介して制御信号が発せられるとすぐに、アクチュエータ39が起動され、これによって弁閉鎖部材31が弁座17から引き出される。この機能のために、以下に説明するような、
図1に記載する閉止弁11の実施形態のある異なる構成が提供される。
【0037】
アクチュエータ39はシール要素24の締結部分25に接触し、上記アクチュエータはカバー27に向かう方向に、作動力を印加する。アクチュエータ39は締結部分25の反対側に位置する保持要素45に接触し、この保持要素には加熱要素40が締結される。アクチュエータ39によって、この保持要素45の作動空間37内の位置を変化させることができる。加熱要素40はテンションロッド46を介してシール要素24の基部28に接続され、これにより、カバー27に向かう方向におけるアクチュエータ39の付勢運動中に、保持要素45がカバー27の基部の方向に押圧され、同時に弁閉鎖部材31がテンションロッド46を介して弁座17から引き出される。同時に、片側がシール要素24の基部28に、そしてもう片側がシール要素24の締結部分25に接触する復元要素33が共に圧迫される。復元要素33は、制御信号が加熱要素に印加されるとすぐに閉止弁11を閉鎖する圧縮ばね又は閉鎖ばねとして設計される。更に、同一の実施形態が
図1にも適用される。
【0038】
したがって、
図1、2による閉止弁11のこれらの実施形態は、片側に閉鎖された調節用空間22、もう片側に閉鎖された作動空間37を有し、これらは媒体に対して密閉性の様式で互いに分離されており、これにより、不利な影響を有する漏れが発生しなくなる。
【0039】
閉止弁11は、更に詳細には図示されないコネクタブロックに、ねじ接続によって取り付けることができるものであってもよい。あるいはプラグ接続又はその他の着脱可能な接続を設けてもよい。コネクタブロックは、膨張弁のハウジング等の「デュアルポートハウジング」又は「4ポートハウジング」として設計できる。更に、弁座が配設された通路孔を、交換可能なインサートとして弁ハウジングに設けることができ、これにより用途に応じて異なるサイズ及び/又は異なる輪郭の通路孔を使用できる。
【0040】
図1に対する閉止弁11のある代替実施形態を
図3に示す。この実施形態では、駆動装置35は
図1とは異なるものとして図示されている。
図3による駆動装置35もまた形状記憶合金製のアクチュエータ39を備えているが、これは例えば湾曲したロッド、ワイヤ若しくはばね要素、又はカバー27、特にカバー27の側壁に締結されたシェル要素として設計される。このアクチュエータ39はテンションロッド46の一端に接触するか又は近接し、上記テンションロッド46はシール要素24の基部28の内側まで延伸する。アクチュエータ39を制御するために制御ライン42が設けられ、上記制御ラインはガスケット43を介して供給を受け、制御要素によって制御される。閉止弁11を閉鎖するためにアクチュエータ39がエネルギ供給され、これによって生成された熱によりアクチュエータ39が短くなり、通路孔14の方向のテンションロッド46の付勢運動が生成され、弁閉鎖部材31が弁座17に当接するように案内される。
【0041】
制御ライン42が取り付けられた、又は制御ライン42を取り付けるための接点を有する、アクチュエータ39及びテンションロッド46は、
図3によるNO弁11及び
図4によるNC弁の両方に使用できる組立体として提供できる。
【0042】
図4に示すNC弁11の代替実施形態では、弁閉鎖部材31又はシール要素24の制御は、
図2に示したアクチュエータ39及びテンションロッド46によって行われる。ここでは、カバー27によって閉鎖された作動空間37内におけるアクチュエータ39の湾曲の方向のみが異なる。アクチュエータ39にエネルギが供給されると、テンションロッド46の上方への運動が開始され、これによって弁閉鎖部材31は弁座17から引き出される。
【0043】
アクチュエータ39とテンションロッド46との間の接続は、プラグ接続又は枢動式接続等によって設けることができ、これによってこの組立体は、アクチュエータ39の簡単な位置決め、又はテンションロッド46に対するアクチュエータ39の配置によって、
図3によるNO弁11及び
図4によるNC弁11の両方に使用できるものとなる。
【0044】
更に、カバー27、アクチュエータ39及びテンションロッド46、並びに場合によってはテンションロッド46に接続された制御ユニットが、組立体を形成できる。例えばカバー27は、アクチュエータ39を導入するためのレシーバを有することができ、これらのレシーバは同時に、接続ライン42とアクチュエータ39との間の接触を形成する。よってこれらレシーバは、
図3による構成及び
図4による構成の両方にアクチュエータ39を受承できるように設けられる。更に、シール要素24をカバー27に取り付けてもよく、組立体として設計してよい。
【0045】
図2に対する閉止弁11の更なる代替実施形態を
図5に示す。これは、上述のような閉止弁11を更に簡略化したものを表す。形状記憶合金製のアクチュエータ39の端部はそれぞれ、一方がシール要素24の基部28に、もう一方がカバー27の基部に締結されている。アクチュエータ39にエネルギ供給することによって、弁閉鎖部材31の開放運動を生成できる。更に、複数のワイヤ状アクチュエータ39を並列に配設してよい。1つ又は複数のワイヤ状アクチュエータは、1回又は複数回偏向させてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、復元要素33は好ましくは調節用空間22内に設けられる。あるいは復元要素33を作動空間37内へと移動させることもでき、これにより上記復元要素33が、調節される媒体と接触しなくなる。