(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290232
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】発光量子ドット
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20180226BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20180226BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20180226BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/08 J
C09K11/08 Z
C09K11/88
C09K11/56
C09K11/06 660
C09K11/06 635
C09K11/06 610
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-542947(P2015-542947)
(86)(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公表番号】特表2016-501285(P2016-501285A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】KR2013010298
(87)【国際公開番号】WO2014077582
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0129767
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0136775
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502081871
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】ハム ホ−ワン
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒョン−チョル
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジョン−ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム グン−テ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン−ジュン
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−523754(JP,A)
【文献】
特開2006−070250(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/126570(WO,A1)
【文献】
JIN, T. et al. ,A quantum dot-based ratiometric pH sensor,Chemical Communications,2010, 第46巻,2408-2410頁
【文献】
HAN, J. et al.,Fluorescent indicators for intracellular pH,Chemical Reviews,2010年,2010,第110巻,2709-2728頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
H01L 31/04− 31/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/シェルの構造体とシェルの表面に付着されたリガンドを含む量子ドットであって、
前記リガンドがpH変化によって色変換される発光グループ、前記シェルと前記発光グループを連結する連結グループ、および前記連結グループと前記発光グループの間にスペーサを含み、
前記連結グループは、スルホ(sulfo)基、チオール(thiol)基、カルボキシ基、アミン基、ホスフィン(phospine)基、およびフォスファイド(phosphide)基からなる群より1種以上選択され、
前記スペーサは、置換もしくは非置換の飽和または不飽和C1−C30のアルキル基、C3−C40のシクロアルキル基、Si1−Si30のシランである、量子ドット。
【請求項2】
前記発光グループは、400以上800nm未満領域帯の光を発光することを特徴とする請求項1に記載の発光量子ドット。
【請求項3】
前記リガンドは、下記の化学式
2乃至13のうちのいずれか一つで示されることを特徴とする請求項
1に記載の発光量子ドット:
[化学式2]
【化1】
[化学式3]
【化2】
[化学式4]
【化3】
[化学式5]
【化4】
[化学式6]
【化5】
[化学式7]
【化6】
[化学式8]
【化7】
[化学式9]
【化8】
[化学式10]
【化9】
[化学式11]
【化10】
[化学式12]
【化11】
[化学式13]
【化12】
上記化学式において、コア/シェル構造体に結合する部分はスルホ基の−O−部分、またはカルボキシル基であり、Alkyl、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の飽和または不飽和C
1−C
30のアルキルを意味する。
【請求項4】
前記量子ドットの粒径は、5乃至30nmであることを特徴とする請求項1に記載の発光量子ドット。
【請求項5】
前記量子ドットは、白色光を発光することを特徴とする請求項1に記載の発光量子ドット。
【請求項6】
前記コア/シェル構造体と発光グループの発光強度比は、その差が30%以内であることを特徴とする請求項1に記載の発光量子ドット。
【請求項7】
コア/シェルの構造体が分散された溶液にpH変化によって色変換される発光グループを含むリガンドを加えた後、攪拌する段階を含むことを特徴とする請求項1記載の発光量子ドットの製造方法。
【請求項8】
前記攪拌は、常温乃至100℃の温度で0.1乃至100時間行われることを特徴とする請求項7に記載の発光量子ドットの製造方法。
【請求項9】
発光素子において、
発光物質として請求項1記載の発光量子ドットを含むことを特徴とする発光素子。
【請求項10】
発光素子の製造方法において、
請求項1記載の発光量子ドットで発光層を形成する段階を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の発光量子ドットで発光層を形成する前、酸および塩基バッファー溶液を添加して発光波長および色純度を調節する段階を含む請求項10に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光量子ドットに関するものであって、特に量子ドットをキャッピング(capping)するリガンドがpH変化によって色変換される発光物質を含有し、水溶液上で分散性および安定性に優れると共に、発光素子に適用時、色純度および発光特性に優れた発光量子ドットおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(Quantum Dot)はナノサイズの半導体物質であって、量子制限(quantum confinement)効果を示し、このような量子ドットは励起源(excitation source)から光を受けてエネルギー励起状態に至ると、自主的に該当するエネルギーバンドギャップ(bandgap)によるエネルギーを放出するようになる。また、量子ドットの大きさを調節して該当バンドギャップを調節すれば電気的、光学的特性を調節することができるので、量子ドットの大きさ調節のみで発光波長を調節することができ、優れた色純度および高い発光効率などの特性を示すことができるため、発光素子または光電変換素子など多様な素子に応用することができる。
従来研究された発光素子としての量子ドットは、水溶液上で分散性および安定性が落ち、色純度および発光特性が落ちるため、発光素子として用いることに困難があり、一つの色領域帯の波長のみを発光し量子ドットのみでは白色光を発光するのが不可能であり、白色光を実現するために別途のフィルター層を備えて発光する光の波長を変えなければならない困難があった。しかし、今まで多くの必要性にもかかわらず、量子ドット自体で白色光を発光する量子ドットについては報告されていないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のような問題点を解決するために、本発明は、自体のみでも白色発光が可能であり、水溶液上で分散性および安定性に優れると共に、発光素子に適用時、色純度および発光特性に優れた発光量子ドット、その製造方法およびこれを含む発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために本発明は、
コア/シェルの構造体とシェルの表面に付着されたリガンドを含む量子ドットであって、
前記リガンドがpH変化によって色変換される発光グループを含む量子ドットを提供する。
【0005】
また、本発明は、コア/シェルの構造体が分散された溶液にpH変化によって色変換される発光グループを含むリガンドを加えた後、攪拌する段階を含むことを特徴とする発光量子ドットの製造方法を提供する。
【0006】
また、本発明は、発光素子において、発光物質として前記発光量子ドットを含むことを特徴とする発光素子を提供する。
【0007】
また、本発明は、発光素子の製造方法において、前記発光量子ドットで発光層を形成する段階を含むことを特徴とする発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明による発光量子ドットは、水溶液上で分散性および安定性に優れると共に別途のフィルター層を備えなくても自体のみで白色光を発光することができるため、発光素子に適用時、構造の単純化が可能であり、色純度および発光特性に優れるため、従来の発光素子に比べて優れた色純度、高安定性および高い発光効率を有するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の発光グループのpHによる色変化を示したものである。
【
図2】本発明の発光グループのpHによるPLスペクトルを示したものである。
【
図3】本発明の一実施形態による量子ドットがpH調節を通じて白色発光が実現されるのを示したものである。
【
図4】本発明の一実施形態による量子ドットがB−O系の白色発光が可能であるのを示したものである。
【
図5】本発明の一実施形態による量子ドットが青緑色波長に移動しながら標準光源に近い色純度の白色発光が可能であるのを示したものである。
【
図6】本発明の一実施形態による量子ドットがR−G−B系の白色発光が可能であるのを示したものである。
【
図7】本発明の一実施形態によるコア/シェルの構造体の合成方法である。
【
図8】本発明の一実施形態による発光素子の製造方法である。
【
図9】本発明の一実施形態による発光素子のELスペクトルを示す。
【
図10】本発明の実施形態による発光素子の電流密度−電圧−輝度(I−V−L)特性をKeithley−236ソース−測定ユニットで測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の発光量子ドットは、
コア/シェルの構造体とシェルの表面に付着されたリガンドを含む量子ドットであって、
前記リガンドがpH変化によって色変換される発光グループを含むことを特徴とする。
前記リガンドは、発光グループ、およびシェルと発光グループを連結する連結グループを含み、必要によって連結グループと発光グループの間にスペーサを含むことができる。
下記構造式1は、本発明の一実施形態による発光量子ドットの模式図を示したものである。
[構造式1]
【化1】
上記構造式1において、Aは発光グループを示し、Lはスペーサ、Xは連結グループを示す。
【0011】
本発明の発光量子ドットにおいて、コア/シェル構造体は公知のコア/シェル構造体を用いることができ、一例として大韓民国公開特許公報第2010−35466号に記載されたコア/シェル構造体を用いることもできる。より具体的に、コア/シェル構造体は、a)2族、12族、13族および14族から選択された第1元素と、16族から選択された第2元素;b)13族から選択された第1元素、および15族から選択された第2元素;およびc)14族元素;からなる群より選択された一つの物質、あるいはこれらがコア/シェルの構造体を形成したものが例として挙げられ、その例としては、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CaO、CaS、CaSe、CaTe、SrO、SrS、SrSe、SrTe、BaO、BaS、BaSe、BaTE、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、Al
2O
3、Al
2S
3、Al
2Se
3、Al
2Te
3、Ga
2O
3、Ga
2S
3、Ga
2Se
3、Ga
2Te
3、In
2O
3、In
2S
3、In
2Se
3、In
2Te
3、SiO
2、GeO
2、SnO
2、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbO
2、PbS、PbSe、PbTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BP、Si、Geからなる群より1種以上選択されるものであり、これらがコア/シェル形態の構造体を形成したものを使用することができる。
【0012】
前記コア/シェルの構造体の平均直径は、任意に調節可能であり、1−12nmであるものを使用することができる。好ましくは、500以上800nm以下領域帯の光を発光するコア/シェルの構造体は5−12nmの直径、400以上500nm未満領域帯の光を発光するコア/シェルの構造体は1−3nmの直径を有するようにすることができる。
【0013】
また、本発明の発光量子ドットにおいて、前記発光グループはpH変化によって色変換される発光グループを適用することができる。
【0014】
前記発光グループは、pH変化によって色変換される公知の発光グループを使用することができる。
【0015】
また、本発明の発光量子ドットにおいて、前記連結グループはシェルに付着されながら発光グループまたはスペーサに連結される連結基であれば特に限定されず、一例としてスルホ(sulfo)基、チオール(thiol)基、カルボキシ基、アミン基、ホスフィン(phosphine)基、およびフォスファイド(phosphide)基からなる群より1種以上選択される基を使用することができる。好ましくは、前記連結基はスルホ(sulfo)基である。
【0016】
また、本発明の発光量子ドットでは前記発光グループと連結グループの間にスペーサをさらに含むことができる。前記スペーサは、コア/シェル構造体に付着される発光グループの個数を増加させ、発光量子ドットの製造時に発光物質を含むリガンドの溶媒に対する分散を容易にすることができる。具体的に、前記スペーサは置換もしくは非置換の飽和または不飽和C
1−C
30のアルキル基、C
3−C
40のシクロアルキル基、Si
1−Si
30のシランを用いることができるが、これに限定されるのではない。
【0017】
本発明の発光量子ドットにおいて、前記リガンドはpH変化によって色変換される発光グループを含むところ、具体的な一例として、前記リガンドは下記の化学式1乃至13で示されるもののうちの一つであってもよい。
[化学式1]
【化2】
[化学式2]
【化3】
[化学式3]
【化4】
[化学式4]
【化5】
[化学式5]
【化6】
[化学式6]
【化7】
[化学式7]
【化8】
[化学式8]
【化9】
[化学式9]
【化10】
[化学式10]
【化11】
[化学式11]
【化12】
[化学式12]
【化13】
[化学式13]
【化14】
【0018】
上記化学式において、コア/シェル構造体に結合する部分は、スルホ基の−O−部分、またはカルボキシル基であり、Alkyl、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の飽和または不飽和C
1−C
30のアルキルを意味する。
【0019】
本発明において、末端にpHの変化によって色変換される発光グループを含む全体発光量子ドットの大きさは任意に調節可能であり、好ましくは5乃至30nm、さらに好ましくは10乃至20nmであることが良い。また、本発明において、コア/シェル構造体と発光グループの発光強度は任意に調節可能であり、好ましくは、本発明でコア/シェル構造体と発光グループが補色関係にある時、コア/シェル構造体と発光グループの発光強度比はその差が30%以内であるのが好ましい。例えば、400以上500nm未満領域帯の発光強度が1である時、500以上800nm以下領域帯の発光強度は0.7乃至1.3であるのが好ましく、500以上800nm以下領域帯の発光強度が1である時、400以上500nm未満領域帯の発光強度は0.7−1.3であるのが良い。
【0020】
図1は前記化学式1のリガンドを用いた本発明の発光グループの色変化を示したものであり、
図2は前記化学式1のリガンドのPLスペクトルを示したものである。
【0021】
図1および
図2に示されるように、pHの変化によって発光グループの発光色が変化し、低いpHでは青(Blue)領域の色を発光し、高いpHでは緑(Green)領域の色を発光する。
【0022】
また、
図3は前記化学式1または2のリガンドを使用した量子ドットがpH調節を通じて白色発光が実現されるのを示したものである。
【0023】
図3に示されるように、本発明の量子ドットは、バッファー溶液を通じてpHを調節することによって高純度の白色発光が可能である。
【0024】
また、本発明による量子ドットは、コア/シェル構造体の色とpHの変化によって色変換される発光グループを調節することによって、
図4乃至6に示されているように、B−O系の白色発光(
図4)、青緑色波長に移動しながら標準光源に近い色純度の白色発光(
図5)およびR−G−B系の白色発光(
図6)も可能である。
【0025】
本発明による発光量子ドットは、コア/シェルの構造体が分散された溶液にpHの変化によって色変換される発光グループを含むリガンドを加えた後、攪拌する段階を含んで製造することができる。前記でコア/シェルの構造体の製造は公知の方法を用いることができるのはもちろんであり、具体的に
図7に記載された合成方法によることも可能である。
【0026】
また、発光グループを含むリガンドの製造は、発光グループに連結グループを結合させるか、またはスペーサを発光グループと連結グループの間に含ませてリガンドを製造することができ、具体的な一例として下記反応式1および2の過程を経て製造することができる。
[反応式1]
【化15】
[反応式2]
[反応式3]
【0027】
また、コア/シェルの構造体に発光グループを含むリガンドを付着する方法において、前記攪拌は常温乃至100℃の温度で0.1乃至100時間行われてもよい。
【0028】
また、本発明は、前記発光量子ドットを用いた発光素子(QLED)およびその製造方法を提供する。本発明において、前記発光素子は本発明による前記発光量子ドットを使用して形成した発光層を除いては、他の公知技術を適用することができるのはもちろんである。
【0029】
一例として、発光素子は、一実施形態によれば、基板−陰極−本発明による発光量子ドットで形成した発光層−陽極が順次に形成されるように構成することができ、前記陰極と発光層の間に電子輸送層をさらに形成することができ、発光層と陽極の間に正孔輸送層をさらに形成することもできる。また、必要によって電子輸送層と発光層の間に正孔抑制層をさらに含むこともでき、各層の間にバッファー層を形成することもできる。
【0030】
本発明において、発光量子ドットを用いた発光素子(QLED)は通常の製作方法によって形成可能であり、前記発光層を含むそれぞれの有機膜の厚さは30乃至100nmになるように製造することができる。
【0031】
本発明によって発光量子ドットを用いて発光層として使用する場合、例えば前記有機電界発光素子では各層の間にバッファー層を形成することができるところ、このようなバッファー層の素材としては通常使用される物質を使用することができ、例えば、 銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリアセチレン(polyacetylene)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリフェニレンビニレン(polyphenylene vinylene)、またはこれらの誘導体を使用することができるが、これに限定されない。
【0032】
前記正孔輸送層の素材としては通常使用される物質を使用することができ、例えばポリトリフェニルアミン(polytriphenylamine)を使用することができるが、これに限定されない。
【0033】
前記電子輸送層の素材としては通常使用される物質を使用することができ、例えばポリオキサジアゾール(polyoxadiazole)を使用することができるが、これに限定されない。
【0034】
前記正孔抑制層の素材としては通常使用される物質を使用することができ、例えばLiF、BaF
2またはMgF
2などを使用することができるが、これに限定されない。
【0035】
より具体的に、本発明の発光素子は
図8に記載された方法によって製造することもできる。
【0036】
前記のように製造された本発明による発光素子は、安定性が高く、従来の発光素子に比べて優れた色純度、および高い発光効率を有するようになる。
【0037】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0038】
[合成例1]
3,6,8−トリブロモピレン−1−オル
アルゴンまたは窒素雰囲気下で、250ml丸底フラスコに、ピレン−1−オル7.2g、ブロミン17.49g、ニトロベンゼン200mlを入れ、還流しながら14時間加熱攪拌した。反応後、室温まで冷却させて析出した結晶をろ過分離した。これをトルエンで再結晶して、11gの結晶を収得した。
【化16】
【0039】
[合成例2]
3,6,8−トリ(2−ブロモエチル)ピレン−1−オル
3,6,8−トリブロモピレン−1−オル10gを無水ジエチルエーテル(anhydrous diethyl ether)300mlに溶かした。ここで、0℃でn−BuLi(2M)50mlを徐々に入れた。0℃で1時間維持後、1.10−ジブロモエチル14gを入れ、30分後、4時間還流攪拌した。反応がそれ以上行われないと、常温に冷却後、蒸留水80mlを入れた。有機層を集め、水層をエチルエーテル40mlで3回抽出した。無水硫酸マグネシウムで水分除去後、ヘキサン(hexane)を移動相にしてカラム分離し3,6,8−トリ(2−ブロモエチル)ピレン−1−オル5.5gを得た。
【化17】
【0040】
[合成例3]
8−(ヒドロキシピレン−1,3,6−トリイル)トリエタンスルホニックアッシド
3,6,8−トリ(2−ブロモエチル)ピレン−1−オル5.3gと過量の亜硫酸ナトリウム(sodium sulfite)を蒸留水30mlに溶かし、16時間還流攪拌した。この混合物を常温に冷却させてジエチルエーテルと蒸留水に抽出し、8−(ヒドロキシピレン−1,3,6−トリイル)トリエタンスルホニックアッシド4.1gを得た。
【化18】
【0041】
[合成例4]
CdSe/ZnS合成(量子ドット合成)
CdSe量子ドットの合成のために、酸化カドミウム0.4mmol、亜鉛酢酸塩4mmol、オレイン酸17.6mmolを3口フラスコ(three−neck flask)に入れ、Arガス雰囲気で150℃の温度で加熱してOA−Cd錯体(OA−Cd complex)とOA−Znアセテート錯体(OA−Zn acetate complex)を製造した。そして、ここに1−オクタデキン20mlが添加され、その混合物はArガス雰囲気下で300℃の温度で加熱した。その後、Se溶液(Se solution)が反応容器内部に急速に注入された。Se溶液(Se solution)はn−トリオクチルホスフィン(n−trioctyl phosphine)3mlにSe粉末0.4mmol、硫黄粉末4mmolを混合して製造した。 Se溶液(Se solution)が注入された後、量子ドットの結晶成長のために300℃で10分間反応させた後、常温に急速に冷却させた。その後、過量のメタノールを添加し、遠心分離過程を経た後、オレンジ量子ドットを製造した。
【0042】
実施例1
前記合成例4で製造した量子ドットでCdSe/ZnS溶液(0.2ml、5mg/ml in hexane)を製造し、化学式1で示される発光物質(0.5ml、3mM in DMSO)を添加し、30分間常温で攪拌した。反応フラスコにメタノールを十分に加えて固体化させた後、遠心分離して白色量子ドットを製造した。
【0043】
実施例2
前記合成例4で製造した量子ドットでCdSe/ZnS溶液(0.2ml、5mg/ml in hexane)を製造し、化学式1で示される発光物質(0.5ml、3mM in DMSO)を添加し、0.2重量%NaOHバッファー溶液を0.05ml添加後、30分間常温で攪拌した。反応フラスコにメタノールを十分に加えて固体化させた後、遠心分離して白色量子ドットを製造した。
【0044】
実施例3
前記合成例4で製造した量子ドットでCdSe/ZnS溶液(0.2ml、5mg/ml in hexane)を製造し、化学式1で示される発光物質(0.5ml、3mM in DMSO)を添加し、0.2重量%NaOHバッファー溶液を0.2ml添加後、30分間常温で攪拌した。反応フラスコにメタノールを十分に加えて固体化させた後、遠心分離して白色量子ドットを製造した。
【0045】
実施例4
前記合成例4で製造した量子ドットでCdSe/ZnS溶液(0.2ml、5mg/ml in hexane)を製造し、前記合成例3で製造した発光物質(0.5ml、3mM in DMSO)を添加し、30分間常温で攪拌した。反応フラスコにメタノールを十分に加えて固体化させた後、遠心分離して白色量子ドットを製造した。
【0046】
実施例5
前記合成例4で製造した量子ドットでCdSe/ZnS溶液(0.2ml、5mg/ml in hexane)を製造し、前記合成例3で製造した発光物質(0.5ml、3mM in DMSO)を添加し、0.2重量%NaOHバッファー溶液を0.1ml添加後、30分間常温で攪拌した。反応フラスコにメタノールを十分に加えて固体化させた後、遠心分離して白色量子ドットを製造した。
【0047】
実施例6白色量子ドットを用いた素子の製造
インジウムティンオキサイド(ITO)が1500Å厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄し乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた後、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、ITO基板上部に正孔注入層としてPEDOT:PSS/IPA9:1重量比率で4000rpm30秒間スピンコーティングして製膜した。その次に、PVKをクロロベンゼンに溶解して1重量%溶液に調製し、3000rpm60秒間スピンコーティングして正孔伝達層を製膜した。その次に、実施例1で合成した白色量子ドットを2000rpm30秒間スピンコーティングして発光層を製膜した。陰極としてAlを100nmで製膜し、この素子をグローブボックスで密封することによって量子ドット発光素子を製作した。色座標(0.31 0.35)の白色(cool−white)発光を確認することができた。
図9は前記実施例6によって製造された発光素子のELスペクトルを示す。
【0048】
また、量子ドット発光素子の電流密度−電圧−輝度(I−V−L)特性をケースレー(Keithley)−236ソース−測定ユニットで測定した(
図10)。この素子の場合、輝度3400cd/m
2、輝度率1.2cd/Aおよび駆動電圧2Vを示し、色座標(0.34 0.36)の白色発光を確認することができた。
【0049】
実施例7乃至8白色量子ドットを用いた素子の製造
前記実施例6で実施例1で製造した量子ドットの代わりに実施例2乃至3で製造した量子ドットを用いて発光素子を製造したことを除いては、前記実施例6と対等の方法で発光素子を製造した。この素子の場合、色座標(0.35 0.39)および(0.36、0.42)の白色(warm−white)発光を確認することができ、pH調節による色純度変化を確認することができた。
【0050】
実施例9白色量子ドットを用いた素子の製造
インジウムティンオキサイド(ITO)が1500Å厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄し乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた後、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、ITO基板上部に正孔注入層としてPEDOT:PSS/IPA9:1重量比率で4000rpm30秒間スピンコーティングして製膜した。その次に、PVKをクロロベンゼンに溶解して1重量%溶液に調製し、3000rpm60秒間スピンコーティングして正孔伝達層を製膜した。その次に、実施例4で合成した白色量子ドットを2000rpm30秒間スピンコーティングして発光層を製膜した。陰極としてAlを100nmで製膜し、この素子をグローブボックスで密封することによって量子ドット発光素子を製作した。色座標(0.36 0.37)の白色(warm−white)発光を確認することができた。
【0051】
また、量子ドット発光素子の電流密度−電圧−輝度(I−V−L)特性をケースレー(Keithley)−236ソース−測定ユニットで測定した(
図10)。この素子の場合、6Vで輝度2100cd/m
2を示し、白色発光を確認することができた。
【0052】
実施例10白色量子ドットを用いた素子の製造
前記実施例9で実施例4で製造した量子ドットの代わりに実施例5で製造した量子ドットを用いて発光素子を製造したことを除いては、前記実施例8と対等の方法で発光素子を製造した。この素子の場合も白色発光を確認することができ、pH調節による色純度変化を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による発光量子ドットは、水溶液上で分散性および安定性に優れると共に別途のフィルター層を備えなくても自体のみで白色光を発光することができるため、発光素子に適用時、構造を単純化することができ、色純度および発光特性に優れるため、従来の発光素子に比べて優れた色純度、高安定性および高い発光効率を有するようにすることができる。