特許第6290243号(P6290243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290243
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】担体連結プロスタノイドプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20180226BHJP
   A61K 31/5585 20060101ALI20180226BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20180226BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180226BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20180226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A61K47/60
   A61K31/5585
   A61K31/5575
   A61P11/00
   A61P9/12
   A61P43/00 123
【請求項の数】22
【全頁数】101
(21)【出願番号】特願2015-546025(P2015-546025)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公表番号】特表2016-501885(P2016-501885A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013075761
(87)【国際公開番号】WO2014086961
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年11月14日
(31)【優先権主張番号】12196052.0
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510209133
【氏名又は名称】アセンディス ファーマ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100168893
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】メトロ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゼル,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】カイル,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーゲ,トーマス
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−535132(JP,A)
【文献】 特表2010−516814(JP,A)
【文献】 特開平03−220201(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/139164(WO,A1)
【文献】 HUAIZHONG PAN,JOURNAL OF DRUG TARGETING,ドイツ,HARWOOD ACADEMIC PUBLISHERS GMBH,2006年 1月 1日,V14 N6,P425-435
【文献】 PEDERSEN P J,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,NL,PERGAMON,2010年 8月 1日,V20 N15,P4456-4458
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72,
A61K31/00−31/80,
A61K47/00−47/69,
A61P1/00−43/00
CAplus (STN),
REGISTRY(STN),
MEDLINE (STN),
EMBASE (STN),
BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化1】
[式中、
各PG0は、独立に、PG0のヒドロキシル基又はカルボキシル基によってL0に結合している、トレプロスチニル以外のプロスタノイド部分であり、
各L0は、独立に、PG0がヒドロキシル基によってL0に結合している場合は、-(C=O)-又は-O-(C=O)-であり、PG0がカルボキシル基によってL0に結合している場合は、-O-であり、
yは、1から64までの範囲の整数であり、
各X0は、独立に(X0B)m1-(X0A)m2であり、
m1及びm2は、1であり、
各X0Aは、独立にT0であり、
各X0Bは、独立に、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜7シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル若しくは8員から11員のヘテロビシクリルによって1回以上中断されていてもよく、且つ/又は以下の1個以上の二価の基によって中断されていてもよい、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルであり:
【化2】
[式中、
点線は、結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]
X0Bは、同じ又は異なる1個以上のR1で置換されていてもよく、
R1は、ハロゲン、C1〜6アルキル、CN、C(O)R2、C(O)OR2、オキソ(=O)、OR2、C(O)R2、C(O)N(R2R2a)、S(O)2N(R2R2a)、S(O)N(R2R2a)、S(O)2R2、S(O)R2、N(R2)S(O)2N(R2aR2b)、SR2、N(R2R2a)、NO2、OC(O)R2、N(R2)C(O)R2a、N(R2)SO2R2a、N(R2)S(O)R2a、N(R2)C(O)N(R2aR2b)、N(R2)C(O)OR2a、OC(O)N(R2R2a)、又はT0であり、
R2、R2a、R2bは、独立に、H、T0、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR3で置換されていてもよく、
R3は、ハロゲン、CN、C(O)R4、C(O)OR4、OR4、C(O)R4、C(O)N(R4R4a)、S(O)2N(R4R4a)、S(O)N(R4R4a)、S(O)2R4、S(O)R4、N(R4)S(O)2N(R4aR4b)、SR4、N(R4R4a)、NO2、OC(O)R4、N(R4)C(O)R4a、N(R4)SO2R4a、N(R4)S(O)R4a、N(R4)C(O)N(R4aR4b)、N(R4)C(O)OR4a、又はOC(O)N(R4R4a)であり、
R4、R4a、R4bは、独立に、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のハロゲンで置換されていてもよく、
T0は、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルであり、T0は、同じ又は異なる1個以上のR5で置換されていてもよく、
R5は、ハロゲン、CN、COOR6、OR6、C(O)R6、C(O)N(R6R6a)、S(O)2N(R6R6a)、S(O)N(R6R6a)、S(O)2R6、S(O)R6、N(R6)S(O)2N(R6aR6b)、SR6、N(R6R6a)、NO2、OC(O)R6、N(R6)C(O)R6a、N(R6)S(O)2R6a、N(R6)S(O)R6a、N(R6)C(O)OR6a、N(R6)C(O)N(R6aR6b)、OC(O)N(R6R6a)、オキソ(=O)(環は、少なくとも部分的に飽和である)、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR7で置換されていてもよく、
R6、R6a、R6bは、独立に、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR8で置換されていてもよく、
R7及びR8は、独立に、ハロゲン、CN、C(O)R9、C(O)OR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、NO2、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)SO2R9a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、N(R9)C(O)OR9a、又はOC(O)N(R9R9a)であり、
R9、R9a、R9bは、独立に、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のハロゲンで置換されていてもよく、
Z1は、共有結合しているポリマー、好ましくは薬学的に許容されるポリマー、又は共有結合しているC10〜24脂肪酸を含む担体であり、
体は部分X0に対して共有結合している]
若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Z1が、共有結合しているポリマー、好ましくは薬学的に許容されるポリマーを含む担体である、請求項1に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項3】
Z1が、共有結合しているC10〜24脂肪酸を含む担体である、請求項1に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項4】
各部分-L0-PG0が、式(i-a)、(i-b)、(i-c)、(i-d)、(i-e)、(ii-a)、(ii-b)、(ii-c)、(ii-d)、(ii-e)、(iii-a)、(iii-b)、(iii-c)、(iii-d)、(iii-e)、(iv-a)、(iv-b)、(iv-c)、(iv-d)、(iv-e)、(v-a)、(v-b)、(v-c)、(v-d)、(v-e)、(vi-a)、(vi-b)、(vi-c)、(vi-d)又は(vi-e)から独立に選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化3】
[式中、点線は結合点を示す]。
【請求項5】
各部分-L0-PG0が、(i-a)、(i-c)、(ii-a)、(ii-c)、(iii-a)、(iii-c)、(iv-a)、(iv-c)、(v-a)、(v-c)、(vi-a)又は(vi-c)から独立に選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項6】
各部分-L0-PG0が、式(i-a)又は(i-c)、好ましくは式(i-c)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項7】
yが2、4、6、8、10、12、14、16、20、24、32又は48であり、好ましくは、yが2、4、6、8、10又は16であり、より好ましくは、yが2、4、6又は8であり、より一層好ましくはyが4である、請求項1から6のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項8】
X0Aが、フェニル、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルであり、これらは1個以上のR5で置換されていてもよく、R5は、ハロゲン、CN、COOH、OH、C(O)H、C(O)NH2、S(O)2NH2、S(O)NH2、S(O)2H、S(O)H、NHS(O)2NH2、SH、NH2、NO2、OC(O)H、NHC(O)H、NHS(O)2H、NHS(O)H、NHC(O)OH、NHC(O)NH2、OC(O)NH2、オキソ(=O)(環は、少なくとも部分的に飽和されている)、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項9】
X0Aが構造(Iab)であり:
【化4】
好ましくはX0Aは構造(Iac)である:
【化5】
[式中、点線は結合点を示す]
請求項1から8のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項10】
X0Bが、1個以上の以下の二価の基によって1回以上中断されていてもよい、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルであり:
【化6】
[式中、
点線は、結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]
X0Bは、同じ又は異なる1個以上のR1で置換されていてもよく、R1は、ハロゲン、C1〜6アルキル、CN、C(O)H、C(O)OH、OH、C(O)H、C(O)NH2、S(O)2NH2、S(O)NH2、S(O)2H、S(O)H、NHS(O)2NH2、SH、NH2、NO2、OC(O)H、NHC(O)H、NHSO2H、NHS(O)H、NHC(O)NH2、NHC(O)OH、OC(O)NH2、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜7シクロアルキル、3員から7員ヘテロシクリル、又は8員から11員ヘテロビシクリルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項11】
X0Bが、1個以上の以下の二価の基によって1回以上中断されていてもよい、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化7】
[式中、点線は結合点を示す]。
【請求項12】
X0Bが式(Ibd)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化8】
[式中、
アステリスクで印をつけた点線はZ1に対する結合を示し、印のない点線はX0Aに対する結合を示す]。
【請求項13】
担体Z1が、アミド連結によって部分X0に共有結合している、請求項1から12のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項14】
担体Z1が式(A-iv)の構造を有する、請求項1、2、又は4から13のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化9】
[式中、
Bは分枝コアであり、
各Aは、独立に、PEGベースのポリマー鎖であり、
qは、3から64までの整数である]。
【請求項15】
q及びyが同じ値である、請求項14に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ。
【請求項16】
担体Z1が式(A-iva)の構造を有する、請求項1、2、又は4から15のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化10】
[式中、
点線はX0に対する結合点を示し、
tは、80から160までの範囲の整数であり、
wは、2から6までの範囲の整数である]。
【請求項17】
担体連結プロスタノイドプロドラッグが式(III)の構造を有する、請求項1、2、又は4から16のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【化11】
[式中、
Z1は以下の構造を有し、
【化12】
[式中、
点線はP1に対する結合点を示し、
tは、80から160までの範囲の整数であり、
wは、2又は3である]
各部分P1は以下の構造を有する
【化13】
[式中、点線はZ1に対する結合点を示す]]。
【請求項18】
1種以上の請求項1から17のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ又は薬学的に許容されるその塩を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と任意で一緒に含む医薬組成物。
【請求項19】
薬物として用いるための、請求項1から17のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
プロスタノイドによって処置、コントロール、遅延又は予防することができる疾患を処置、コントロール、遅延又は予防する方法において使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
疾患が肺高血圧症である、請求項20の使用のための、請求項1から17のいずれか一項に記載の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
プロドラッグ、薬学的に許容されるその塩、又は医薬組成物が、吸入、局所、経腸、非経口、関節内、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳室内又は胸骨内投与によって投与される、請求項19か21のいずれか一項に記載の使用のための担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体連結プロスタノイドプロドラッグ、薬学的に許容されるその塩、及びこれらを含む医薬組成物に関する。本発明は、特に肺動脈高血圧症を処置、コントロール、遅延又は予防するための薬物としてのその使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
肺動脈高血圧症(PAH)は、肺動脈、肺静脈又は肺毛細管における血圧の上昇であり、息切れ、めまい、失神及び他の症状をもたらし、これらの症状は全て労作によって悪化する。PAHは、運動耐性の顕著な低下及び心不全を伴う重篤な疾患であり得る。PAHは、発病率が1年あたり約2〜300万件、有病率が100万人あたり約15人である希少疾患である。PAHが非処置である患者の生存期間の中央値は、診断時から2〜3年の範囲であり、死因は通常、右室不全である。
【0003】
肺動脈高血圧症は、肺に接続されている血管及び肺内の血管の血管収縮又は狭窄を伴う。時が経つにつれて、線維化が血管の罹患を引き起こして血管は硬く且つ厚くなり、このため肺内の血圧はさらに上昇し、血流が損なわれる。さらに、心臓の作業負荷の増大は右心室の肥大を引き起こし、これが最終的に右室不全を引き起こす。肺を通る血流が減少すると、心臓の左側に流れ込む血液が減少し、そのため、酸素供給が、特に身体活動の間、必要とされるレベルを下回る。
【0004】
数々の薬剤がPAHの処置に導入されており、その中でもプロスタノイド、特にプロスタサイクリン及びプロスタグランジンが最も有効であると一般に考えられている。プロスタサイクリンの一つに、合成プロスタサイクリンであり、Flolan(登録商標)(Glaxo Smith Kline)として販売されているエポプロステノールがある。エポプロステノールは、患者に連続注入によって投与され、半永久的な中心静脈カテーテルを必要とするが、中心静脈カテーテルは敗血症及び血栓症を引き起こすことがある。Flolan(登録商標)は不安定であり、そのため投与の間は氷上に維持しなければならない。Flolan(登録商標)の半減期はわずか3分から5分であるため、注入は昼夜連続的でなければならず、いかなる中断も致死的となり得る。このようにFlolan(登録商標)でのPAHの処置は、患者にとって非常に大きな重荷である。
【0005】
別のプロスタサイクリンである、イロプロスト(イロメジン)は、Ventavis(登録商標)(Bayer)として販売されており、商品名TYVASO(登録商標)(United Therapeutics)として販売されている吸入形態のトレプロスチニルが2009年7月にFDAによって認可されるまで、米国及び欧州における使用を認可された唯一の吸入形態のプロスタサイクリンであった。
【0006】
プロスタサイクリン及びプロスタグランジンの両方とも、プロスタノイドのサブクラスである。PAHの処置に最も一般的に用いられているプロスタサイクリンは、トレプロスチニル、ベラプロスト、シカプロスト、エポプロステノール、イロプロスト及びイソカルバサイクリンであり、PAHの処置に最も一般的に用いられているプロスタグランジンは、アルプロスタジルである。
【0007】
プロスタグランジン及びプロスタサイクリンは全て共通して半減期が短い。したがって、1種以上のこれらの化合物でPAHを処置するには、高い適用頻度が必要とされる。このため、治療有効レベルの維持は、患者にとって不便であるだけでなく、技術的にも困難となる。
【0008】
国際出願WO2013/024052A1は、デポーから長期間にわたってトレプロスチニルを放出する、トレプロスチニルのプロドラッグをすでに教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、トレプロスチニル以外のプロスタノイドでより効果的であり且つ/又はより快適な処置を患者に提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、式(I)の担体連結プロスタノイドプロドラッグ:
【0011】
【化1】
[式中、
各PG0は、独立に、PG0のヒドロキシル基又はカルボキシル基によってL0に結合している、トレプロスチニル以外のプロスタノイド部分であり、
各L0は、独立に、PG0がヒドロキシル基によってL0に結合している場合は、-(C=O)-又は-O-(C=O)-であり、PG0がカルボキシル基によってL0に結合している場合は、-O-であり、
yは、1から64までの範囲の整数であり、
各X0は、独立に(X0B)m1-(X0A)m2であり、
m1及びm2は、独立に0又は1であり、
各X0Aは、独立にT0であり、
各X0Bは、独立に、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜7シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル若しくは8員から11員のヘテロビシクリルによって1回以上任意選択により中断されており、且つ/又は以下の1個以上の二価の基によって任意選択により中断されている、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルであり:
【化2】
[式中、
点線は、結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]
X0Bは、同じ又は異なる1個以上のR1で任意選択により置換されており、
R1は、ハロゲン、C1〜6アルキル、CN、C(O)R2、C(O)OR2、オキソ(=O)、OR2、C(O)R2、C(O)N(R2R2a)、S(O)2N(R2R2a)、S(O)N(R2R2a)、S(O)2R2、S(O)R2、N(R2)S(O)2N(R2aR2b)、SR2、N(R2R2a)、NO2、OC(O)R2、N(R2)C(O)R2a、N(R2)SO2R2a、N(R2)S(O)R2a、N(R2)C(O)N(R2aR2b)、N(R2)C(O)OR2a、OC(O)N(R2R2a)、又はT0であり、
R2、R2a、R2bは、独立に、H、T0、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR3で任意選択により置換されており、
R3は、ハロゲン、CN、C(O)R4、C(O)OR4、OR4、C(O)R4、C(O)N(R4R4a)、S(O)2N(R4R4a)、S(O)N(R4R4a)、S(O)2R4、S(O)R4、N(R4)S(O)2N(R4aR4b)、SR4、N(R4R4a)、NO2、OC(O)R4、N(R4)C(O)R4a、N(R4)SO2R4a、N(R4)S(O)R4a、N(R4)C(O)N(R4aR4b)、N(R4)C(O)OR4a、又はOC(O)N(R4R4a)であり、
R4、R4a、R4bは、独立に、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のハロゲンで任意選択により置換されており、
T0は、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルであり、T0は、同じ又は異なる1個以上のR5で任意選択により置換されており、
R5は、ハロゲン、CN、COOR6、OR6、C(O)R6、C(O)N(R6R6a)、S(O)2N(R6R6a)、S(O)N(R6R6a)、S(O)2R6、S(O)R6、N(R6)S(O)2N(R6aR6b)、SR6、N(R6R6a)、NO2、OC(O)R6、N(R6)C(O)R6a、N(R6)S(O)2R6a、N(R6)S(O)R6a、N(R6)C(O)OR6a、N(R6)C(O)N(R6aR6b)、OC(O)N(R6R6a)、オキソ(=O)(環は、少なくとも部分的に飽和である)、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR7で任意選択により置換されており、
R6、R6a、R6bは、独立に、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR8で任意選択により置換されており、
R7及びR8は、独立に、ハロゲン、CN、C(O)R9、C(O)OR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、NO2、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)SO2R9a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、N(R9)C(O)OR9a、又はOC(O)N(R9R9a)であり、
R9、R9a、R9bは、独立に、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルであり、前記C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、及びC2〜6アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のハロゲンで任意選択により置換されており、
Z1は、共有結合しているポリマー、好ましくは薬学的に許容されるポリマー、又は共有結合しているC10〜24脂肪酸を含む担体であり、
m1、m2の少なくとも一つが1であれば、担体は部分X0に対して共有結合しており、m1、m2=0の場合、担体はL0に対して共有結合している]
若しくは薬学的に許容されるその塩で実現される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
驚くべきことに、このような担体連結しているプロスタノイドプロドラッグは、上記に言及した欠点を少なくとも部分的に克服する、より持続性の剤形のプロスタノイドを得るのに用いることができることが見出された。
【0013】
トレプロスチニルをベースにするある種の構造は、先行技術文献であるWO2013/024052に開示されている。トレプロスチニルは以下の構造を有する:
【0014】
【化3】
本発明の範囲内で、以下の通りの意味を有する語を用いる。
【0015】
本明細書で用いられる「プロスタノイド」の語は、プロスタグランジン及びプロスタサイクリンを意味する。好ましいプロスタノイドは、ベラプロスト、シカプロスト、エポプロステノール、イロプロスト、イソカルバサイクリン及びアルプロスタジルである。
【0016】
本明細書で用いられる「ベラプロスト」の語は、以下の一般構造を有し:
【0017】
【化4】
これには立体中心が6個ある。好ましくは、ベラプロストの語は以下の立体化学を有し:
【0018】
【化5】
しかし、他の立体化学及び異性体の混合物も、薬学上活性であり、PAHの処置に用いられ、ベラプロストの語にやはり含まれる。これは特に、314d及び315d異性体、並びに314d及び315d異性体の混合物に当てはまり、これらの構造は、例えば、Journal of Chromatography A、633巻、1〜2号、1993年2月24日、97〜103頁に示されている。
【0019】
本明細書で用いられる「シカプロスト」の語は以下の構造を有する:
【0020】
【化6】
【0021】
本明細書で用いられる「エポプロステノール」の語は以下の構造を有する:
【0022】
【化7】
【0023】
本明細書で用いられる「イロプロスト」の語は以下の構造を有する:
【0024】
【化8】
【0025】
本明細書で用いられる「イソカルバサイクリン」の語は以下の構造を有する:
【0026】
【化9】
【0027】
本明細書で用いられる「アルプロスタジル」の語は以下の構造を有する:
【0028】
【化10】
【0029】
「薬物」及び「生物学的に活性な部分」の語は、それだけには限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、植物、動物及びヒトを含めた生物学的な有機体のあらゆる身体的及び生化学的な性質に影響を及ぼし得るあらゆる物質を意味する。
【0030】
本明細書で用いられる「部分」又は「結合型」の語は、対応する試薬に比べて1個以上の原子(複数可)がない、分子の一部分を意味する。例えば、式「H-X-H」の試薬が別の試薬と反応し、反応生成物の一部となる場合、反応生成物の対応する部分は、
【0031】
【化11】
の構造を有し、各
【0032】
【化12】
は、別の部分に対する結合を示す。したがって、プロドラッグに含まれる生物学的に活性な部分は、前記プロドラッグから薬物として放出され、すなわち、本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグは、1つ以上のプロスタノイド部分(複数可)を含み、これらはプロドラッグから、プロスタノイド薬物又はその遊離型のプロスタノイドとして放出される。
【0033】
プロスタノイドなどの薬物の「遊離型」は、担体連結しているプロドラッグから放出された後などの、非修飾の、薬理学的に活性な形態の薬物を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「プロドラッグ」の語は、生体内変化を受けた後、その薬理学的効果を表す化合物を意味する。したがって、プロドラッグは、親分子における望ましくない性質を変更又は排除するように可逆的に用いられる特殊化された非毒性の保護基に接続している、生物学的に活性な部分とみることができる。これには、薬物における所望の性質の増強、及び不要な性質の抑制も含まれる。
【0035】
本明細書で用いられる「担体連結プロドラッグ」の語は、改善された物理化学的性質又は薬物動態学的性質を生成し、通常、加水分解性の切断によってin vivoで容易に除去され得る可逆性の担体基を有する、生物学的に活性な部分の一時的な連結を含むプロドラッグを意味する。このような担体連結したプロドラッグはしたがって、少なくとも生物学的に活性な部分を含み、この部分は、可逆性のプロドラッグリンカーによって担体基に結合している。前記可逆性のプロドラッグリンカーは、一端で可逆性の連結によって生物学的に活性な部分に結合しており、別の一端で永久的な連結によって担体に結合している。
【0036】
可逆性のプロドラッグリンカーと生物学的に活性な部分との間の可逆性の連結は、非酵素的な加水分解で分解可能である、すなわち、生理学的条件下(pH7.4、37℃の水性バッファー)で1時間から3か月などの範囲の半減期で切断可能である。一方、安定な又は永久的な連結は、典型的に、非切断性の永久的な結合であり、これらは生理学的条件下(pH7.4、37℃の水性バッファー)で半減期が少なくとも6か月であることを意味する。
【0037】
本明細書で用いられる「ポリマー」の語は、合成起源若しくは生物学的起源、又は両方の組合せであってよい、直鎖状、環状、分枝、架橋若しくはデンドリマー式、又はこれらの組合せにおける化学結合によって接続されている反復性の構造単位、すなわちモノマーを含む分子を意味する。ポリマーは、例えば、官能基又は他の部分も含むことができることが理解される。好ましくは、ポリマーは、少なくとも0.5kDaの分子量、例えば、少なくとも1kDaの分子量、少なくとも2kDaの分子量、少なくとも3kDaの分子量、又は少なくとも5kDaの分子量を有する。好ましくは、ポリマーは、最大限200kDaの分子量、例えば、最大限160kDaの分子量、最大限120kDaの分子量、最大限100kDaの分子量を有する。
【0038】
本明細書で用いられる「ポリマー性の」の語は、1個以上のポリマー(複数可)を含む試薬又は部分を意味する。
【0039】
当業者であれば、全てのポリマーが同じ分子量であるわけではなく、むしろ分子量分布を表すことが理解される。したがって、本明細書で用いられる、分子量範囲、分子量、ポリマーにおけるモノマーの数の範囲、及びポリマーにおけるモノマーの数は、数平均分子量及びモノマーの数平均を意味する。本明細書で用いられる「数平均分子量」の語は、個々のポリマーの分子量の通常の算術平均を意味する。
【0040】
本明細書で用いられる、部分又は試薬に関する「PEGベース」の語は、前記部分又は試薬が、少なくとも20%(w/w)のエチレングリコール単位(-CH2CH2O-)、好ましくは少なくとも50%(w/w)のエチレングリコール単位、より好ましくは少なくとも80%(w/w)のエチレングリコール単位を含み、エチレングリコール単位は、ブロック状に、交互に配列されていてよく、又は部分若しくは試薬内にランダムに分布していてもよく、前記部分若しくは試薬の全てのエチレングリコール単位が1ブロックに存在するのが好ましく、PEGベースの部分若しくは試薬の残部の重量パーセント値は、以下の置換基及び連結から特に選択される他の部分である:
・C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、C2〜50アルキニル、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、8員から11員のヘテロビシクリル、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル及びテトラリニル、並びに
・以下からなる群から選択される連結
【0041】
【化13】
[式中、点線は、部分又は試薬の残部に対する結合点を示し、
R1及びR1aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]。
【0042】
好ましい一実施形態において、残部の重量パーセント値は、少なくとも部分的にプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)である。さらなる好ましい一実施形態において、プロピレングリコールは、ブロック状に、交互に配列されていてよく、又は部分若しくは試薬内にランダムに分布していてもよく、好ましくは、前記部分若しくは試薬のプロピレングリコール単位が全て1ブロックに存在する。さらに好ましい一実施形態において、エチレングリコール及びプロピレングリコールは、ブロック状に配列されて、ポロキサマーなどを形成する。
【0043】
本明細書で用いられる「ポロキサマー」の語は、ポリ(エチレングリコール)の2本の親水性の鎖が隣接するポリ(プロピレングリコール)の中央の疎水性の鎖からなる非イオン性トリブロック共重合体を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる「ヒドロゲル」の語は、ホモポリマー又は共重合体から構成される親水性又は両親媒性の高分子網目を意味し、これは、共有結合性の化学的な架橋結合の存在のため、不溶性である。架橋結合により網目構造及び物理的整合性がもたらされる。ヒドロゲルは、水と熱力学的な適合性を表し、このため水性媒体中で膨潤する。
【0045】
「終端」の語は、炭素原子及び/又はヘテロ原子の直鎖状又は分枝状の鎖の最後の炭素原子又はヘテロ原子を意味し、すなわち、「終端」は、正確に1個の他の炭素又はヘテロ原子に接続している炭素又はヘテロ原子を意味する。
【0046】
「終端の/終端に」又は「終端に連結している」は、部分が、別の部分の終端又は終端(複数)に接続していることを意味する。
【0047】
「医薬組成物」又は「組成物」は、1種以上の薬物又はプロドラッグ、及び任意選択により1種以上の賦形剤を含む組成物、並びに、直接又は間接的に、あらゆる2種以上の賦形剤及び/又は薬物又はプロドラッグの組合せ、複合体形成、又は凝集に起因し、或いは1種以上の賦形剤及び/又は薬物及び/又はプロドラッグの解離に起因し、或いは1種以上の賦形剤及び/又は薬物及び/又はプロドラッグの他のタイプの反応又は相互作用に起因する、あらゆる生成物を意味する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の担体連結しているプロスタノイドプロドラッグ、及び薬学的に許容される賦形剤を混合することによって得ることができるあらゆる組成物を包含する。
【0048】
「賦形剤」の語は、それと一緒に担体連結プロスタノイドプロドラッグが投与される、希釈剤、補助剤、又はビヒクルを意味する。このような製薬上の賦形剤は、石油、動物、植物、又は合成起源のものを含めた、水及び油などの無菌の液体であってよく、それだけには限定されないが、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などを含む。医薬組成物を経口投与する場合は、水が好ましい賦形剤である。医薬組成物を静脈内投与する場合は、食塩水及びデキストロース水溶液が好ましい賦形剤である。食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセロール溶液が、注射用溶液に対する液体の賦形剤として用いられるのが好ましい。適切な製薬上の賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、マンニトール、トレハロース、ゼラチン、バクガ、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。所望により、組成物はまた、微量の、湿潤剤、又は乳化剤、pH緩衝剤など(例えば、酢酸、コハク酸、トリス、炭酸、リン酸、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)を含むことができ、又は洗剤、例えば、Tween、ポロキサマー、ポロキサミン、CHAPS、Igepal、又はアミノ酸、例えばグリシン、リジン、若しくはヒスチジンを含むことができる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなど、伝統的な結合剤及び賦形剤と一緒に、坐剤として調合することができる。経口製剤は、医薬品グレードの、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の賦形剤を含むことができる。適切な製薬上の賦形剤の例は、E. W. Martinによる「Remington's Phamaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するために、治療有効量のプロスタノイド(複数可)を、少なくとも一つの本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグの形態において、好ましくは精製された形態において、適切な量の賦形剤と一緒に含む。製剤は、投与様式に適合していなければならない。
【0049】
「薬学的に許容される」の語は、動物において、好ましくはヒトにおいて用いるために、EMEA(欧州)及び/又はFDA(米国)などの監督機関、並びに/或いはあらゆる他の国家監督機関によって認可されることを意味する。
【0050】
「乾燥組成物」は、本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む医薬組成物が、容器中、乾燥形態において提供されることを意味する。乾燥に適する方法は、噴霧乾燥及び凍結乾燥(フリーズドライ)である。担体連結しているプロスタノイドプロドラッグのこのような乾燥組成物は、最大10%、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満(カールフィッシャーにしたがって決定して)の残留水分含量を有する。好ましい乾燥方法は凍結乾燥である。「凍結乾燥組成物」は、担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む医薬組成物を最初に凍結し、引き続き減圧によって水分減少にかけることを意味する。この用語は、組成物を最終の容器中に充填する前に製造過程において生じ得るさらなる乾燥ステップを除外するものではない。
【0051】
「凍結乾燥」(フリーズドライ)は、組成物を凍結し、次いで周囲の圧力を低下させ、任意選択により熱を加えて組成物中の水分を凍結させて固相から気体に直接昇華させることを特徴とする、脱水プロセスである。典型的に、昇華した水は、脱昇華(desublimation)によって収集される。
【0052】
本明細書で用いられる「官能基」の語は、他の官能基と反応することができる一群の原子を意味する。官能基には、それだけには限定されないが、以下の基が含まれる:カルボン酸(-(C=O)OH)、一級又は二級アミン(-NH2、-NH-)、マレイミド、チオール(-SH)、スルホン酸(-(O=S=O)OH)、カーボネート、カルバメート(-O(C=O)N<)、ヒドロキシ(-OH)、アルデヒド(-(C=O)H)、ケトン(-(C=O)-)、ヒドラジン(>N-N<)、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸(-O(P=O)OHOH)、ホスホン酸(-O(P=O)OHH)、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、オキシラン及びアジリジン。
【0053】
官能基が別の官能基と反応する場合、得られる化学構造を「連結」と呼ぶ。例えば、アミン官能基のカルボキシル官能基との反応により、アミド連結がもたらされる。
【0054】
本明細書で用いられる「C1〜6アルキル」の語は、単独で又は組み合わせて、1個から6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝のアルキル基を意味する。分子の末端に存在する場合は、直鎖状及び分枝のC1〜6アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル及び3,3-ジメチルプロピルがある。分子の2つの部分がC1〜6アルキル基によって連結されている場合、このようなC1〜6アルキル基に対する例には、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、及び-C(CH3)2-がある。「C1〜10アルキル」、「C1〜25アルキル」及び「C1〜50アルキル」の語がしたがって用いられ、それぞれ炭素原子を1個から10個、1個から25個、及び1個から50個有する直鎖状又は分枝のアルキル基を意味する。C1〜6アルキル、C1〜10アルキル、C1〜25アルキル又はC1〜50アルキルの1個以上の水素原子(複数可)は、本明細書に示す置換基によって置き換えられていてもよい。
【0055】
本明細書で用いられる「C2〜6アルケニル」の語は、単独で又は組み合わせて、2個から6個の炭素原子を有する少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む、直鎖状又は分枝の炭化水素部分を意味する。分子の末端に存在する場合は、例として、-CH=CH2、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2、-CH=CHCH2-CH3、及び-CH=CH-CH=CH2がある。分子の2つの部分がC2〜6アルケニル基によって連結されている場合、このようなC2〜6アルケニルに対する例は、-CH=CH-である。「C2〜10アルケニル」、「C2〜25アルケニル」及び「C2〜50アルケニル」の語がしたがって用いられ、それぞれ炭素原子を2個から10個、2個から25個、及び2個から50個有する、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む直鎖状又は分枝の炭化水素部分を意味する。C2〜6アルケニル基、C2〜10アルケニル基、C2〜25アルケニル基及びC2〜50アルケニル基の各水素原子は、本明細書に示す置換基によって置き換えられていてもよい。任意選択により、1個以上の三重結合(複数可)が生じてもよい。
【0056】
本明細書で用いられる「C2〜6アルキニル」の語は、単独で又は組み合わせて、2個から6個の炭素原子を有する、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む、直鎖状又は分枝の炭化水素残基を意味する。分子の末端に存在する場合、例として、-C≡CH、-CH2-C≡CH、CH2-CH2-C≡CH、及びCH2-C≡C-CH3がある。分子の2つの部分がアルキニル基によって連結されている場合、例には-C≡C-がある。「C2〜10アルキニル」、「C2〜25アルキニル」、及び「C2〜50アルキニル」の語がしたがって用いられ、それぞれ炭素原子を2個から10個、2個から25個、及び2個から50個有する、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む直鎖状又は分枝の炭化水素残基を意味する。C2〜6アルキニル基、C2〜10アルキニル基、C2〜25アルキニル基、又はC2〜50アルキニル基の各水素原子は、本明細書に示す置換基によって置き換えられていてもよい。任意選択により、1個以上の二重結合(複数可)が生じてもよい。
【0057】
本明細書で用いられる「C3〜7シクロアルキル」の語は、3個から7個の炭素原子を有する環状アルキル鎖を意味し、飽和又は少なくとも部分的に不飽和であってよく、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。シクロアルキル炭素の各水素原子(複数可)は、本明細書に示す置換基によって置き換えられていてもよい。「C3〜7シクロアルキル」の語はまた、ノルボナン(ノルボナニル)又はノルボネン(ノルボネニル)など、架橋されている二環も含む。「C3〜10シクロアルキル」の語がしたがって用いられ、3個から10個の炭素原子を有する環状のアルキル鎖を意味し、これらは飽和でも又は少なくとも部分的に不飽和でもよい。
【0058】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。ハロゲンがフルオロ又はクロロであるのが一般的に好ましい。
【0059】
「3員から7員のヘテロシクリル」又は「3員から7員の複素環」は、最大数の二重結合までを含むことができる3個、4個、5個、6個、又は7個の環原子を有する環を意味し(完全飽和、部分的飽和、又は不飽和である芳香環又は非芳香環)、少なくとも1個の環原子から4個の環原子までが、イオウ(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素、及び窒素(=N(O)-を含む)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置換されており、環は炭素原子又は窒素原子によって分子の残部に連結している(非置換の3員から7員のヘテロシクリル)。完全を目的として、本発明のいくつかの実施形態において、3員から7員のヘテロシクリルはさらなる必要要件を満たさなければならないことが指摘される。3員から7員のヘテロシクリルに対する例には、アゼチジン、オキセタン、チエタン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ジアゼパン、アゼピン、又はホモピペラジンがある。任意選択により、3員から7員のヘテロシクリルの1個以上の水素原子(複数可)は、置換基によって置き換えられていてよい。
【0060】
「8員から11員のヘテロビシクリル」又は「8員から11員のヘテロビシクル」は、8個から11個の環原子を有する2個の環の複素環系を意味し、少なくとも1個の環原子が両方の環によって共有されており、最大数の二重結合までを含むことができ(完全飽和、部分的飽和、又は非飽和である芳香環又は非芳香環)、少なくとも1個の環原子から6個の環原子までは、イオウ(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素、及び窒素(=N(O)-を含む)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられており、環は炭素原子又は窒素原子によって分子の残部に連結している(非置換の8員から11員のヘテロビシクリル)。8員から11員のヘテロビシクリルに対する例には、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、デカヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンズアゼピン、プリン、又はプテリジンがある。8員から11員のヘテロビシクルの語はまた、1、4-ジオキサ-8-アザスピロ[4,5]デカンなどのスピロ構造の2環、又は8-アザ-ビシクロ[3,2,1]オクタンなどの架橋されている複素環を含む。
【0061】
本明細書で用いられる「C10〜24脂肪酸」の語は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24個の炭素原子を有する、直鎖状又は分枝の、好ましくは直鎖状の炭素鎖を有するカルボン酸を意味し、これらは飽和でも又は部分的に若しくは完全に不飽和でもよい。
【0062】
「中断されている」の語は、原子又は一群の原子が、本明細書に示すように、部分又は試薬の内部又はそれぞれの末端に挿入されていることを意味する。例えば、部分XがY1基及びY2基によって中断されている場合、中断されている部分は以下の例示の構造の一つを有することができる:
(a)Y1-X-Y2
(b)Y1-Y2-X、
(c)X-Y1-Y2
(d)X01-Y1-X02-Y2-X03[式中、X01、X02、X03は一緒になってXである]、及び
(e)X01-Y1-Y2-X02[式中、X01及びX02は一緒になってXである]。
【0063】
上記の例におけるXがC20アルキルである場合、(d)の場合におけるX01、X02及びX03の炭素原子の和、又は(e)の場合におけるX01及びX02の炭素原子の和は20である。Y1及びY2が相互に隣り合わないのが好ましい。例(b)、(c)及び(e)において、Y1及びY2は相互に隣接する。したがって、例(a)及び(d)は、Y1基及びY2基によって中断されている部分Xに好ましい構造である。
【0064】
本明細書で用いられる「以下の二価の基の1個以上によって中断されている」の語は、部分が、好ましくは1個から20個の前記二価の基によって、より好ましくは1個から15個の前記二価の基によって、より一層好ましくは1個から10個の前記二価の基によって、最も好ましくは1個から5個の前記二価の基によって中断されていることを意味し、この場合、二価の基は同じでも、又は異なっていてもよい。
【0065】
「置換されている」の語は、分子又は部分の1個以上の-H原子(複数可)が、「置換基」と呼ばれる異なる原子、又は一群の原子によって置き換えられていることを意味する。適切な置換基は、ハロゲン、CN、COOR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、NO2、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)S(O)2R9a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)OR9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、OC(O)N(R9R9a)、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、又はC2〜50アルキニルからなる群から選択され、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、及びC2〜50アルキニルは、同じ又は異なる1個以上のR10で任意選択により置換されており、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、及びC2〜50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-、及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される1個以上の基(複数可)によって任意選択により中断されており、
式中、
R9、R9a、R9bは、独立に、H、T、及びC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、又はC2〜50アルキニルからなる群から選択され、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、及びC2〜50アルキニルは、同じ又は異なる、1個以上のR10で任意選択により置換されており、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、及びC2〜50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-、及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される1個以上の基(複数可)によって任意選択により中断されており、
Tは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、4員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルからなる群から選択され、Tは、同じ又は異なる、1個以上のR10で任意選択により置換されており、
R10は、ハロゲン、CN、オキソ(=O)、COOR12、OR12、C(O)R12、C(O)N(R12R12a)、S(O)2N(R12R12a)、S(O)N(R12R12a)、S(O)2R12、S(O)R12、N(R12)S(O)2N(R12aR12b)、SR12、N(R12R12a)、NO2、OC(O)R12、N(R12)C(O)R12a、N(R12)S(O)2R12a、N(R12)S(O)R12a、N(R12)C(O)OR12a、N(R12)C(O)N(R12aR12b)、OC(O)N(R12R12a)、又はC1〜6アルキルであり、C1〜6アルキルは、同じ又は異なる1個以上のハロゲンで任意選択により置換されており、
R11、R11a、R12、R12a、R12bは、独立に、H、又はC1〜6アルキルからなる群から選択され、C1〜6アルキルは、同じ又は異なる1個以上のハロゲンで任意選択により置換されている。
【0066】
一実施形態において、R9、R9a、R9bは、相互に独立にHであってよい。
【0067】
一実施形態において、R10はC1〜6アルキルである。
【0068】
一実施形態において、Tはフェニルである。
【0069】
好ましくは、分子の最大6個の-H原子は置換基によって独立に置き換えられており、例えば、5個の-H原子は置換基によって独立に置き換えられており、4個の-H原子は置換基によって独立に置き換えられており、3個の-H原子は置換基によって独立に置き換えられており、2個の-H原子は置換基によって独立に置き換えられており、又は1個の-H原子は置換基によって独立に置き換えられている。
【0070】
一般的に、一つの部分の別の部分に対する連結を示すのに用いる「点線」の語は、立体化学を示すのに用いる点線の結合と異なる。当業者であれば、これら二つの間を区別することができる。
【0071】
「水溶性の担体」における「水溶性」の語は、室温で水に可溶性である担体である。典型的には、水溶性の担体の溶液は、濾過後、同溶液によって透過される光線の、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%を透過する。重量ベースで、水溶性の担体又はその部分は、好ましくは少なくとも約35(重量)%水に可溶であり、より好ましくは少なくとも約50(重量)%水に可溶であり、より一層好ましくは約70(重量)%水に可溶であり、より一層好ましくは約85(重量)%水に可溶である。しかし、水溶性の担体又はその部分が、約95(重量)%水に可溶であり、又は完全に水に可溶であるのが最も好ましい。
【0072】
一般的に、「含む」又は「含んでいる」の語は、「からなる」又は「からなっている」も包含する。
【0073】
本発明による担体連結しているプロスタノイドプロドラッグは、プロスタノイドの生物学的に活性な部分を含み、プロスタノイドの生物学的に活性な部分は、好ましくは、結合型の、ベラプロスト、シカプロスト、エポプロステノール、イロプロスト、イソカルバサイクリン、及び/又はアルプロスタジルからなる群から選択される。これらのプロスタノイド自体は、純粋な形態で又は薬学的に許容されるその塩としてのいずれかで、当業者には知られている薬物である。
【0074】
本明細書で用いられる、単一の担体連結プロスタノイドプロドラッグの投与量はmgにおいて示し、医薬組成物中の担体連結プロスタノイドプロドラッグの濃度はmg/mLにおいて示す。プロスタノイドは、担体連結プロスタノイドプロドラッグの形態で投与するため、濃度は、プロドラッグからの遊離のプロスタノイド薬物の量的な放出に基づくものである。当技術分野においてよく知られている方法によって、プロスタノイド濃度における著しい増大が観察されず、放出されたプロスタノイドの合計量が決定されるまで、組成物のアリコートをプロスタノイド放出性の条件(37℃のpH7.4水性バッファー、又は高いpHでの加速的条件)にさらす。
【0075】
本発明において、担体連結しているプロスタノイドプロドラッグ、又は薬学的に許容されるその塩は、遊離型又は薬学的に許容されるその塩としてプロスタノイド薬物を含まないが、結合型のプロスタノイド薬物を含む。プロスタノイドは、その官能基の1つによって、例えば、ヒドロキシル又はカルボキシルによって、式(I)の部分L0に結合している。これは、本発明による担体連結しているプロスタノイドプロドラッグは、生物学的に活性な部分としてプロスタノイドを含むことを意味する。それを必要とする患者に投与した場合に担体連結プロスタノイドプロドラッグからプロスタノイド部分が切断されることにより、プロスタノイドは遊離型において、又は薬学的に許容されるその塩としてのいずれかで放出される。換言すれば、担体連結プロスタノイドプロドラッグは、1個以上の部分PG0を含み、この部分PG0は各々部分L0で置換されており、部分L0は今度はX0に共有結合し(式(I)のm1/m2の少なくとも1つが1であるならば)、X0は担体Z1に共有結合している。
【0076】
好ましくは、各部分PG0は独立に、結合型の、アルプロスタジル、エポプロスチニル、イロプロスト、ベラプロスト、イソカルバサイクリン又はシカプロストである。部分PG0が全て同じ構造であるのが好ましい。PG0が、結合型の、ベラプロスト、エポプロスチニル又はイロプロストであるのがより好ましく、PG0が、結合型のベラプロスト又はエポプロスチニルであるのがより一層好ましく、PG0が結合型のベラプロストであるのが最も好ましい。
【0077】
式(I)における部分L0が全て同じ構造であるのが好ましい。式(I)のL0が-(C=O)-であるのがより一層好ましい。
【0078】
好ましくは、各部分-L0-PG0は独立に、式(i-a)、(i-b)、(i-c)、(i-d)、(i-e)、(ii-a)、(ii-b)、(ii-c)、(ii-d)、(ii-e)、(iii-a)、(iii-b)、(iii-c)、(iii-d)、(iii-e)、(iv-a)、(iv-b)、(iv-c)、(iv-d)、(iv-e)、(v-a)、(v-b)、(v-c)、(v-d)、(v-e)、(vi-a)、(vi-b)、(vi-c)、(vi-d)又は(vi-e)から選択される:
【0079】
【化14】
[式中、点線は結合点を示す]。
【0080】
好ましくは、各部分-L0-PG0は独立に、式(i-a)、(i-c)、(ii-a)、(ii-c)、(iii-a)、(iii-c)、(iv-a)、(iv-c)、(v-a)、(v-c)、(vi-a)又は(vi-c)から選択される。各部分-L0-PG0が独立に、式(i-a)又は(i-c)から選択されるのがより好ましく、各部分-L0-PG0が式(i-c)であるのが最も好ましい。
【0081】
一実施形態において、yは、2、4、6、8、10、12、14、16、20、24、32又は48である。yが2、4、6、8、10又は16であるのが好ましく、yが2、4、6又は8であるのがより好ましく、yが4であるのが最も好ましい。
【0082】
好ましい一実施形態において、m1及びm2は両方とも1である。
【0083】
好ましくは、部分X0Aは全て同じである。好ましくは、X0Aは、フェニル、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルであり、これらは任意選択により1個以上のR5で置換されており、R5は、ハロゲン、CN、COOH、OH、C(O)H、C(O)NH2、S(O)2NH2、S(O)NH2、S(O)2H、S(O)H、NHS(O)2NH2、SH、NH2、NO2、OC(O)H、NHC(O)H、NHS(O)2H、NHS(O)H、NHC(O)OH、NHC(O)NH2、OC(O)NH2、オキソ(=O)(環は少なくとも部分的に飽和されている)、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルから選択される。
【0084】
より好ましくは、X0Aは構造(Ia)である:
【0085】
【化15】
[式中、
点線は結合点を示し、
Ra1は、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルから選択され、
Ra2は、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルから選択され、
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、及び8員から11員のヘテロビシクリルから選択され、Aは任意選択により置換されている]。
【0086】
式(Ia)のRa1及びRa2の少なくとも1個がHであるのが好ましく、Ra1及びRa2の両方ともHであるのが最も好ましい。
【0087】
Aが、C3〜10シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、及び8員から11員のヘテロビシクリルから選択されるのが好ましく、AがC3〜10シクロアルキルであるのが最も好ましい。
【0088】
X0Aが構造(Iaa)であるのがより一層好ましい:
【0089】
【化16】
[式中、
点線は結合点を示し、
Ra1は、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルから選択され、
Ra2は、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、又はC2〜6アルキニルから選択される]
【0090】
式(Ia)又は(Iaa)のRa1及びRa2の少なくとも1個がHであるのがより好ましく、R1a及びRa2の両方ともHであるのがより一層好ましい。
【0091】
X0Aが構造(Iab)であるのがより一層好ましい:
【0092】
【化17】
[式中、点線は結合点を示す]。
【0093】
X0Aが構造(Iac)であるのが最も好ましい:
【0094】
【化18】
[式中、点線は結合点を示す]。
【0095】
好ましくは、式(I)の部分X0Bは全て同じである。
【0096】
好ましくは、X0Bは、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、又はC2〜50アルキニルであり、これらは任意選択により、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜7シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルによって1回以上中断されており、且つ/又はこれらは任意選択により、以下の二価の基の1個以上によって中断されており:
【0097】
【化19】
[式中、
点線は結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]
X0Bは、任意選択により、同じ又は異なる1個以上のR1で置換されており、
R1は、ハロゲン、C1〜6アルキル、CN、C(O)H、C(O)OH、OH、C(O)H、C(O)NH2、S(O)2NH2、S(O)NH2、S(O)2H、S(O)H、NHS(O)2NH2、SH、NH2、NO2、OC(O)H、NHC(O)H、NHSO2H、NHS(O)H、NHC(O)NH2、NHC(O)OH、OC(O)NH2、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜7シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルである。
【0098】
X0Bが、0、1、2、3又は4個の部分R1で置換されているのが好ましく、X0Bが、0、1又は2個の部分R1で置換されているのがより好ましく、X0Bが0又は1個の部分R1で置換されているのが最も好ましく、X0Bが非置換である、すなわち0個の部分R1で置換されているのが最も好ましい。
【0099】
より好ましくは、X0Bは、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、又はC2〜50アルキニルであり、これらは任意選択により、以下の二価の基の1個以上によって1回以上中断されており:
【0100】
【化20】
[式中、
点線は結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]
X0Bは、任意選択により、同じ又は異なる1個以上のR1で置換されており、
R1は、ハロゲン、C1〜6アルキル、CN、C(O)H、C(O)OH、OH、C(O)H、C(O)NH2、S(O)2NH2、S(O)NH2、S(O)2H、S(O)H、NHS(O)2NH2、SH、NH2、NO2、OC(O)H、NHC(O)H、NHSO2H、NHS(O)H、NHC(O)NH2、NHC(O)OH、OC(O)NH2、フェニル、ナフチル、アズレニル、インデニル、インダニル、C3〜7シクロアルキル、3員から7員のヘテロシクリル、又は8員から11員のヘテロビシクリルである。
【0101】
X0Bが、1、2、3、4、5、6、7又は8個の上記に列挙した二価の基によって中断されているのが好ましく、X0Bが、2、3、4、5又は6個の上記に列挙した二価の基によって中断されているのがより好ましく、X0Bが、3又は4個の上記に列挙した二価の基によって中断されているのが最も好ましく、X0Bが、3個の上記に列挙した二価の基によって中断されているのが最も好ましい。
【0102】
より一層好ましくは、X0Bは、直鎖状又は分枝のC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル、又はC2〜50アルキニルであり、これらは、以下の二価の基の1個以上によって任意選択により1回以上中断されている:
【0103】
【化21】
[式中、点線は結合点を示す]。
【0104】
より一層好ましくは、X0Bは式(Iba)である:
【0105】
【化22】
[式中、
アステリスクで印をつけた点線はZ1に対する結合を示し、印のない点線はX0Aに対する結合を示し、
X0Cは、直鎖状又は分枝のC1〜25アルキル、C2〜25アルケニル、又はC2〜25アルキニルであり、これらは、以下の二価の基の1個以上によって任意選択により1回以上中断されている
【0106】
【化23】
[式中、
点線は結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]]。
【0107】
R0及びR0aが両方ともHであるのが好ましい。
【0108】
より一層好ましくは、X0Cは、直鎖状又は分枝のC1〜25アルキル、C2〜25アルケニル、又はC2〜25アルキニルであり、これらは以下の二価の基の1個以上によって任意選択により1回以上中断されている:
【0109】
【化24】
[式中、点線は結合点を示す]
【0110】
より一層好ましくは、X0Bは、式(Ica)又は(Icb)である:
【0111】
【化25】
[式中、
アステリスクで印をつけた点線はZ1に対する結合を示し、印のない点線はX0Aに対する結合を示し、
y1は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり、
X1は、C1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、又はC2〜10アルキニルであり、これらは、以下の二価の基の1個以上によって任意選択により中断されている:
【0112】
【化26】
[式中、
点線は結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]]。
【0113】
式(Ica)及び(Icb)のy1が4、5、6、7又は8であるのが好ましく、y1が5、6又は7であるのがより好ましく、y1が6であるのが最も好ましい。
【0114】
より一層好ましくは、X0Bは式(Ibc)である:
【0115】
【化27】
[式中、
アステリスクで印をつけた点線はZ1に対する結合を示し、印のない点線はX0Aに対する結合を示し、
y1は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり、
y2は、1、2、3、4又は5である]。
【0116】
式(Ibc)のy1が4、5、6、7又は8であるのが好ましく、y1が5、6又は7であるのがより好ましく、y1が6であるのが最も好ましい。
【0117】
式(Ibc)のy2が2又は3であるのが好ましく、y2が2であるのが最も好ましい。
【0118】
最も好ましくは、X0Bは式(Ibd)である:
【0119】
【化28】
[式中、
アステリスクで印をつけた点線はZ1に対する結合を示し、印のない点線はX0Aに対する結合を示す]。
【0120】
好ましくは、担体Z1は、アミド連結によって部分X0に共有結合している。
【0121】
好ましくは、式(I)の部分-X0-L0-PG0は、式(IIa)又は(IIb)の構造を有する:
【0122】
【化29】
[式中、
点線は、Z1に対する結合点を示し、
X1は、C1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、又はC2〜10アルキニルであり、これらは、以下の二価の基の1個以上によって任意選択により中断されている:
【0123】
【化30】
[式中、
点線は結合点を示し、
R0及びR0aは、相互に独立に、H及びC1〜6アルキルから選択される]]。
【0124】
式(IIa)及び(IIb)のy1が4、5、6、7又は8であるのが好ましく、y1が5、6又は7であるのがより好ましく、y1が6であるのが最も好ましい。
【0125】
好ましくは、式(I)の部分-X0-L0-PG0は、式(IIaa)又は(IIba)の構造を有する:
【0126】
【化31】
【0127】
【化32】
[式中、点線は、Z1に対する結合点を示す]。
【0128】
最も好ましくは、式(I)の部分-X0-L0-PG0は、式(IIbaa)又は(IIbab)の構造を有する:
【0129】
【化33】
【0130】
【化34】
[式中、点線は、Z1に対する結合点を示す]。
【0131】
一実施形態において、式(I)の担体Z1は、共有結合しているC10〜24脂肪酸を含む。
【0132】
別の一実施形態において、式(I)のZ1は、共有結合しているポリマー、好ましくは薬学的に許容されるポリマーを含む。
【0133】
Z1の分子量が、0.5から160kDaであるのが好ましく、1から120kDaであるのがより好ましく、5から100kDaであるのがより一層好ましく、10から80kDaであるのがより一層好ましく、10から70kDaであるのがより一層好ましく、20から60kDaであるのが最も好ましい。
【0134】
Z1は、好ましくは、2-メタクリロイル-オキシエチルホスホイルコリン、ヒドロゲル、PEGベースのヒドロゲル、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキルオキシ)ポリマー、ポリ(アミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(アスパルトアミド)、ポリ(酪酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カルボネート)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチルホスフェート)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルオキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシメトアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメトアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルオキサゾリン)、ポリ(イミノカルボネート)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(メタアクリルアミド)、ポリ(メタアクリレート)、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、シリコーン、セルロース、カルボメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キチン、キトサン、デキストラン、デキストリン、ゼラチン、ヒアルロン酸及び誘導体、マンナン、ペクチン、ラムノガラクツロナン、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及び他の炭水化物ベースのポリマー、キシラン、及びこれらの共重合体から選択されるポリマーを含む。
【0135】
好ましくは、Z1は、ポリ(オキサゾリン)-、ヒアルロン酸-、又はPEG-ベースのポリマーを含む。最も好ましくは、Z1はPEG-ベースのポリマーを含む。
【0136】
一実施形態において、Z1は、当技術分野において知られているヒドロゲル(ポリマーに対する1オプションとして)である。適切なヒドロゲルは、WO-A2006/003014、WO-A2011/012715、及び未公開の国際特許出願PCT/EP2013/070962に記載されている。担体Z1がヒドロゲルである場合、担体が、本明細書に参照として組み入れられるWO-A 2011/012715において開示されているPEGベースのヒドロゲルであるのが好ましい。
【0137】
好ましくは、担体Z1は、水溶性の担体である。
【0138】
一実施形態において、担体Z1は、式(A-i)又は(A-ii)の構造を有する:
【0139】
【化35】
[式中、
点線は、結合点、すなわち式(I)のX0に対する結合点を示し、
各n1、n2及びn3は、独立に、5から500までの範囲の整数であり、
mは、2から32までの範囲の整数である]
【0140】
式(A-i)及び(A-ii)におけるmが2から14までの範囲の整数であるのが好ましく、mが6であるのがより好ましい。
【0141】
式(A-i)及び(A-ii)における各n1、n2及びn3が独立に10から250までの範囲であるのが好ましく、50から150までであるのがより好ましい。n1、n2及びn3が同じであるのが好ましい。
【0142】
「点線は結合点、すなわち式(I)のX0に対する結合点を示す」の語は、X0Bに対する結合、m1=0である場合はX0Aに対する結合、m1及びm2の両方とも0である場合はL0に対する結合、並びにプロドラッグが式(Ica)、(Icb)、(IIa)及び(IIb)である場合はX1に対する結合を含むことが理解される。
【0143】
代替の一実施形態において、Z1は、式(A-iii)の構造を有する:
【0144】
【化36】
[式中、
点線は、結合点、すなわち式(I)のX0に対する結合点を示し、
各n1、n2、及びn3は、独立に、5から500までの範囲の整数であり、
mは、2から32までの範囲の整数である]。
【0145】
好ましくは、式(A-iii)におけるmは、2から6までの範囲の整数であり、より好ましくは、mは2である。
【0146】
好ましくは、式(A-iii)における各n1、n2、及びn3は、独立に、10から250までの、より好ましくは、50から150までの範囲である。好ましくは、n1、n2、及びn3は同じである。
【0147】
別の好ましい一実施形態において、Z1は、その全文が参照によって本明細書に援用されるWO2013/024048A1に開示されている担体である。したがって、好ましい一実施形態において、Z1は式(B-i)の構造を有する:
Hyp1mx-POLx-Hyp2(B-i)
[式中、
POLxは、0.5kDaから160kDaまでの範囲の分子量を有するポリマー部分であり、
Hyp1及びHyp2は、独立に、超分枝部分であり、
mxは、0又は1である]。
【0148】
式(B-i)のポリマー部分POLxは、0.5kDaから160kDaまでの、好ましくは、2kDaから80kDaまでの、より好ましくは、5kDaから40kDaまでの分子量を有する。
【0149】
式(B-i)のPOLxは、例えば、ポリペプチド、2-メタクリロイル-オキシエチルホスホイルコリン、水溶性のヒドロゲル、水溶性PEGベースのヒドロゲル、水溶性ヒアルロン酸ベースのヒドロゲル、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキルオキシ)ポリマー、ポリ(アミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(アスパルトアミド)、ポリ(酪酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カルボネート)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチルホスフェート)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルオキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシメトアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメトアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルオキサゾリン)、ポリ(イミノカルボネート)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(メタアクリルアミド)、ポリ(メタアクリレート)、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、シリコーン、セルロース、カルボメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キチン、キトサン、デキストラン、デキストリン、ゼラチン、ヒアルロン酸及び誘導体、官能基化されているヒアルロン酸、マンナン、ペクチン、ラムノガラクツロナン、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及び他の炭水化物ベースのポリマー、キシラン、及びこれらの共重合体からなるポリマーの群から選択することができる。
【0150】
式(B-i)のポリマー部分POLxは、直鎖状又は分枝状のポリマーを含むことができる。好ましくは、式(B-i)のPOLxは、直鎖状ポリマーを含み、特に直鎖状ポリマーからなる。
【0151】
好ましい一実施形態において、式(B-i)のPOLxは、PEGベースのポリマー、又はポリ(オキサゾリン)ベースのポリマー、より好ましくは、直鎖状のPEGベースのポリマーを含み、特にこれらからなる。より一層好ましくは、式(B-i)のPOLxは、PEGベースの直鎖状ポリマーからなる。
【0152】
式(B-i)におけるmxが0である場合、式(B-i)のPOLxは、式X1-(OCH2CH2)p-O-(CH2)n-X2-の構造を含み、好ましくはこの構造からなり、式中、nは、2、3、又は4から選択され、pは5から2000までの範囲の整数であり、好ましくは、pは10から1000までの範囲の整数であり、より好ましくは、pは100から1000までの範囲の整数であり、X2は、式(B-i)のPOLxとHyp2とを共有結合的に連結する官能基であり、X1は、H、CH3、及びC2H5から選択される。
【0153】
式(B-i)におけるmxが1である場合、式(B-i)のPOLxは、式X3-(CH2)n1-(OCH2CH2)p-O-(CH2)n2-X2-の構造を含み、好ましくはこの構造からなり、式中、n1及びn2は、独立に、2、3、及び4から選択され、pは5から2000までの範囲の整数であり、好ましくは、pは10から1000までの範囲の整数であり、より好ましくは、pは100から1000の範囲の整数であり、X2及びX3は、式(B-i)のPOLxをHyp1及びHyp2に対して共有結合的に連結する官能基である。
【0154】
好ましい一実施形態において、式(B-i)におけるmxは0である。
【0155】
別の好ましい一実施形態において、式(B-i)のPOLxはポリペプチド(又はタンパク質)であり、特に、以下に記載する通り、非免疫原性のポリペプチドである。
【0156】
好ましくは、式(B-i)のポリマー部分POLxは、少なくとも約100個のアミノ酸残基を含み、特に、少なくとも約100個のアミノ酸残基からなるポリペプチドである。好ましい一実施形態において、アラニン、セリン、及び/又はプロリン残基から選択されるアミノ酸が存在し、特に、主に存在し、このポリペプチド部分が、生理学的条件でランダムコイル構造を有するのが好ましい。このような式(B-i)のポリペプチド部分POLxが、例えば、凍結乾燥又は乾燥した組成物中に存在する場合、ランダムコイルを一過性又は一時的に形成し得ないことが理解される。
【0157】
式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、アミノ酸残基最大約1000個、好ましくは、アミノ酸残基最大約900個、より好ましくは、アミノ酸残基最大約800個、より一層好ましくは、アミノ酸残基最大約700個、特に好ましくは、アミノ酸残基最大約600個からなるアミノ酸配列を有するランダムコイル構造を有することができる。このように、ランダムコイル構造を形成するアミノ酸配列は、アミノ酸残基最大約500個、又はアミノ酸残基最大約450個からなっていてよい。
【0158】
本明細書において、ランダムコイル構造を形成するアミノ酸配列は、アミノ酸残基最大約1200、及び最高約1500個からなっていてよい。したがって、ランダムコイル構造を形成するアミノ酸配列は、アミノ酸残基約100個から約1500個からなっていてよい。
【0159】
特定の実施形態において、ランダムコイル構造を形成する前記アミノ酸配列は、本明細書において特徴づける通り、約100個から1000個のアミノ酸残基からなり、すなわち、以下に規定する通り、主な、又は独特な残基としてアラニン、セリン、及び/又はプロリンを含む。
【0160】
好ましい一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、アミノ酸残基であるアラニン、セリン、及びプロリンの1、2、又は3種から主になり、プロリン残基は、好ましくは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxの約4%から約40%を表す。アラニン及びセリン残基は、式(B-i)のポリペプチド部分POLxの残部の少なくとも60%から96%を含む。しかし、本明細書以下に詳述する通り、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、アラニン、セリン、及びプロリンとは異なるさらなるアミノ酸も、すなわち、微量成分として含むことができる。
【0161】
本明細書で用いられる「微量成分」の語は、最大10%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大10個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、好ましくは、最大8%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大8個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、より好ましくは、最大6%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大6個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、より一層好ましくは、最大5%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大5個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、さらに特に好ましくは、特に好ましくは、最大4%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大4個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、最大3%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大3個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、さらにより特に好ましくは、最大2%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大2個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、最も好ましくは、最大1%(すなわち、100個のアミノ酸の最大1個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよい。アラニン、セリン、及びプロリンと異なる前記アミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、Val、セレノシステイン、セレノメチオニン、及びヒドロキシプロリンを含む、天然の、又はタンパク質を構成する(proteigenic)アミノ酸の群から選択することができる、アラニン、セリン、及びプロリンと異なるからなる群から選択することができる。微量成分は、天然に存在しないアミノ酸から選択することもできる。
【0162】
「少なくとも約100/150/200/250/300/300/350個(など)のアミノ酸残基」の語は、簡潔な数のアミノ酸残基に限定されないが、さらなる10%から20%を含み、又は10%から20%少ない残基を含むアミノ酸の一続きも含む。例えば、「少なくとも約100個のアミノ酸残基」はまた、本発明の要点から逸脱することなく、80個から100個、及び約100個から120個のアミノ酸残基を含むことができる。
【0163】
一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、複数のポリマーカセットを含み、前記ポリマーカセットは、Ala、Ser、及びProから選択されるアミノ酸1、2、又は3種からなり、6個を超えない連続のアミノ酸残基が同一であり、前記プロリン残基は、式(B-i)の前記ポリペプチド部分POLxのアミノ酸の4%を超え40%未満を構成する。
【0164】
式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、複数の、特に、2、3、4、5若しくはそれを超える同一のポリマーカセット、又は複数の同一ではないポリマーカセットを含むことができる。Ala、Ser、及びPro残基からなる群から選択されポリマーカセットの非限定的な例を、本明細書以下に提供し、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、及び配列番号:14、又はこれら配列のペプチドフラグメント若しくは多量体を参照されたい。ポリマーカセットは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個又はそれを超えるアミノ酸残基からなっていてよく、各ポリマーカセットは、Ala、Ser、及びPro残基(複数可)を含む。
【0165】
一実施形態において、本発明によるポリマーカセットは、100個を超えるアミノ酸残基を含まない。好ましくは、本明細書に規定するポリマーカセットは、約4%を超える、好ましくは約5%を超える、より一層好ましくは約6%を超える、特に好ましくは約8%を超える、より特に好ましくは約10%を超える、より一層特に好ましくは約15%を超える、最も好ましくは約20%を超えるプロリン残基を含む。本明細書に規定するようなポリマーカセットは、好ましくは、約40%未満、又は約35%未満のプロリン残基を含む。
【0166】
好ましい一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、式(b-a)を含み、特に式(b-a)からなり:
Serx[AlaySerz]n(b-a)
この式は本明細書で規定するプロリン残基をさらに含み、式中、
xは、独立に、0から6の整数から選択され、
各yは、独立に、1から6までの範囲の整数から選択され、
各zは、独立に、1から6までの範囲の整数から選択され、
nは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxが、少なくとも約100個のアミノ酸残基、特に少なくとも約100個から約3000個までのアミノ酸残基、好ましくは約2000個まで、より好ましくは約1000個までのアミノ酸残基からなるような整数である。
【0167】
別の好ましい一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、5個を超えない同一の連続のアミノ酸残基を、より好ましくは4個を超えない同一の連続のアミノ酸残基を、最も好ましくは3個を超えない同一の連続のアミノ酸残基を含む。
【0168】
本明細書の上記にすでに示した通り、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、一実施形態においてプロリン残基を含み、前記プロリン残基は、約4%を超える、好ましくは約5%を超える、より一層好ましくは約6%を超える、特に好ましくは約8%を超える、より特に好ましくは約10%を超える、より一層特に好ましくは約15%を超える、最も好ましくは約20%を超える、式(B-i)のPOLxのアミノ酸を構成する。
【0169】
別の好ましい一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxを構成するアミノ酸の、約4%を超え約50%未満の、好ましくは約10%を超え約50%未満の、最も好ましくは約20%を超え約50%未満のアラニン残基を含む。
【0170】
さらに好ましい一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxを構成するアミノ酸の、約4%を超え約50%未満の、好ましくは約10%を超え約50%未満の、最も好ましくは約20%を超え約50%未満のセリン残基を含む。
【0171】
好ましくは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxを構成するアミノ酸の、約35%のプロリン残基、約50%のアラニン残基、及び約15%のセリン残基を含む。或いは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxを構成するアミノ酸の、約35%のプロリン残基、約15%のアラニン残基、及び約50%のセリン残基を含むことができる。
【0172】
好ましくは、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、以下のアラニン-セリンポリマーカセットを1個以上含む:
配列番号1
AAAASSASSASSSSSAAASA
配列番号2
AASAAASSAAASAAAASASS
配列番号3
ASASASASASASSAASAASA
配列番号4
SAASSSASSSSAASSASAAA
配列番号5
SSSSAASAASAAAAASSSAS
配列番号6
SSASSSAASSSASSSSASAA
配列番号7
SASASASASASAASSASSAS
配列番号8
ASSAAASAAAASSAASASSS
【0173】
これらアラニン-セリンポリマーカセットの多量体は、本明細書上記に規定した通り、得られるアミノ酸配列がプロリン残基をさらに含む場合、ランダムコイル構造を形成することができる。
【0174】
好ましい一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、以下のポリマーカセットを1個以上含む:
配列番号9
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA
配列番号10
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS
配列番号11
APSSPSPSAPSSPSPASPSS
配列番号15
SAPSSPSPSAPSSPSPASPS
【0175】
配列番号:15は、本明細書に提供する円形に形を変えた形態の配列番号:11に相当し、最後のセリンが除去され、別のセリンが出発のアミノ酸として追加されている。その結果、この修飾された配列の多量体は、非修飾の配列の多量体として、最初及び最後の残基を除いて、本質的に同じ内部反復単位を所有する。したがって、配列番号:15は、式(B-i)のポリペプチド部分POLxに対するさらなるポリマーカセットの一例とみなすことができる。当業者には、他のポリマーカセット、及び本明細書に提供するアミノ酸ポリマーの(より短い)ペプチドフラグメント又は円形に形を変えたバージョンを、式(B-i)のポリペプチド部分POLxに対するポリマーカセットとして用いることができることが明らかである。
【0176】
さらに、ランダムコイル構造を形成するまたさらなる、例示のアミノ酸ポリマーは、以下の配列からなる群から選択することができるアミノ酸配列を含むことができる:
配列番号12
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA
配列番号13
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA
配列番号14
ASAAAPAAASAAASAPSAAA
【0177】
それゆえ、式(B-i)のポリペプチド部分POLxに好ましいポリマーカセットは、以下の配列:
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号9)、
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号10)、
APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号11)、
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号12)、
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号13)、及び
ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号14)、
又はこれらの配列の全体若しくは部位として、これらの配列の円形に形を変えたバージョン若しくは多量体(複数可)から選択される。
【0178】
繰り返すと、これら配列及び本明細書の上記に提供した配列の、ペプチドフラグメント(複数可)、又は多量体(複数可)、又は円形に形を変えたバージョンも、本発明の状況において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxに対するポリマーカセットとして用いることができる。当業者であれば、容易に、生理学的条件下でランダムコイル構造を形成し、且つ本明細書に規定するアラニン、セリン、及びプロリンから主に構成されるさらなるアミノ酸ポリマーカセットを産生する立場にある。このような、式(B-i)のポリペプチド部分POLxに用いるアミノ酸ポリマーカセットを形成するランダムコイル構造の他のさらなる例は、とりわけ、上記に示した特定のポリマーカセットの組合せ及び/又はペプチドフラグメント又は円形に形を変えたバージョンを含むことができる。
【0179】
したがって、例示のポリマーカセットは、さらなるポリマーカセットを形成するために新たに組み合わせることができる個々のペプチドフラグメントも提供することができる。
【0180】
上記にしたがい、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、本明細書上記に開示した配列番号:9、10、11、12、13、若しくは14を有するアミノ酸配列のいずれか一つからなる配列の多量体を含むことができ、又は配列番号:9、10、11、12、13、及び14の二つ以上のアミノ酸配列からなる配列の多量体を含むことができる。さらに、これら例示の配列のペプチドフラグメント又は円形に形を変えたバージョンを、式(B-i)のポリペプチド部分POLxのさらなるポリマーカセットを構築するのに用いることができる。
【0181】
別の一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、配列番号:9、10、11、12、13、14、及び15からなる群から選択されるアミノ酸配列の(円形の)変形、又はこれらの(円形に)形を変えた配列の多量体(複数可)からなる配列の多量体を含むことができる。
【0182】
さらに別の一実施形態において、式(B-i)のポリペプチド部分POLxは、配列番号:9、10、11、12、13、14、15からなる群から選択されるアミノ酸配列のペプチドフラグメント/部位、又はこれら例示のポリマーカセットの多量体(複数可)からなる多量体を含むことができる。
【0183】
式(B-i)のポリペプチド部分POLxの産生に用いられる、これら配列のペプチドフラグメントは、前記配列番号:9、10、11、12、13、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列の連続のアミノ酸の、少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、より一層好ましくは少なくとも6個、なお一層好ましくは少なくとも8個、特に好ましくは少なくとも10個、より特に好ましくは少なくとも12個、より一層特に好ましくは少なくとも14個、好ましくは少なくとも6個、なお一層好ましくは少なくとも8個、特に好ましくは少なくとも10個、より特に好ましくは12個、より一層特に好ましくは少なくとも14個、より一層特に好ましくは少なくとも16個、最も好ましくは少なくとも18個からなっていてよい。
【0184】
例えば、アラニン、セリン、及びプロリンの全体の分布及び量に対して上記に特定した規則が尊重される限り、本発明のポリマーカセットの個々のペプチドフラグメントを組み合わせてさらなる個々のポリマーカセットにしてもよい。繰り返すと、これらのポリマーカセットは、さらなるアミノ酸残基を含むこともできるが、最小成分又は微量成分として、すなわち、個々のポリマーカセットの最大10%、好ましくは最大2%だけ含むことができる。ポリマーカセットを含む式(B-i)の部分POLxは、本発明の一実施形態において、少なくとも約100個のアミノ酸残基からなる。個々のポリマーカセットを、より長いランダムコイル形成性のアミノ酸ポリマーを形成するために、組み合わせることができ、式(B-i)のポリペプチド部分POLxの最大の長さはアミノ酸約3000個である。
【0185】
好ましくは、式(B-i)のPOLxは、式(B-i)のHyp1及びHyp2に共有結合的に、特に、永久的な連結によって、より好ましくは、永久的なアミド連結によって連結している。
【0186】
本発明の担体連結トレプロスチニルプロドラッグにおいて、式(B-i)のHyp1及びHyp2の官能基は、式(I)のプロドラッグの残部に接続している。
【0187】
式(B-i)の超分枝部分Hyp1及びHyp2は、各々独立に、結合型のグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、ヒアルロナン、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、トリジアミノ酪酸、テトラジアミノ酪酸、ペンタジアミノ酪酸、ヘキサジアミノ酪酸、ヘプタジアミノ酪酸、オクタジアミノ酪酸、ノナジアミノ酪酸、デカジアミノ酪酸、ウンデカジアミノ酪酸、ドデカジアミノ酪酸、トリデカジアミノ酪酸、テトラデカジアミノ酪酸、ペンタデカジアミノ酪酸、ヘキサデカジアミノ酪酸、ヘプタデカジアミノ酪酸、オクタデカジアミノ酪酸、ノナデカジアミノ酪酸、ジ(グルタミン酸)、トリ(グルタミン酸)、テトラ(グルタミン酸)、ペンタ(グルタミン酸)、ヘキサ(グルタミン酸)、ヘプタ(グルタミン酸)、オクタ(グルタミン酸)、ノナ(グルタミン酸)、デカ(グルタミン酸)、ウンデカ(グルタミン酸)、ドデカ(グルタミン酸)、トリデカ(グルタミン酸)、テトラデカ(グルタミン酸)、ペンタデカ(グルタミン酸)、ヘキサデカ(グルタミン酸)、ヘプタデカ(グルタミン酸)、オクタデカ(グルタミン酸)、ノナデカ(グルタミン酸)、ジ(アスパラギン酸)、トリ(アスパラギン酸)、テトラ(アスパラギン酸)、ペンタ(アスパラギン酸)、ヘキサ(アスパラギン酸)、ヘプタ(アスパラギン酸)、オクタ(アスパラギン酸)、ノナ(アスパラギン酸)、デカ(アスパラギン酸)、ウンデカ(アスパラギン酸)、ドデカ(アスパラギン酸)、トリデカ(アスパラギン酸)、テトラデカ(アスパラギン酸)、ペンタデカ(アスパラギン酸)、ヘキサデカ(アスパラギン酸)、ヘプタデカ(アスパラギン酸)、オクタデカ(アスパラギン酸)、ノナデカ(アスパラギン酸)、ポリエチレンイミン、及び低分子量のPEIを含み、特にこれらからなる群から選択される。
【0188】
好ましい一実施形態において、式(B-i)の超分枝部分Hyp1及びHyp2は、各々独立に、結合型のジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、トリジアミノ酪酸、テトラジアミノ酪酸、ペンタジアミノ酪酸、ヘキサジアミノ酪酸、ヘプタジアミノ酪酸、オクタジアミノ酪酸、ノナジアミノ酪酸、デカジアミノ酪酸、ウンデカジアミノ酪酸、ドデカジアミノ酪酸、トリデカジアミノ酪酸、テトラデカジアミノ酪酸、ペンタデカジアミノ酪酸、ヘキサデカジアミノ酪酸、ヘプタデカジアミノ酪酸、オクタデカジアミノ酪酸、ノナデカジアミノ酪酸、ジ(グルタミン酸)、トリ(グルタミン酸)、テトラ(グルタミン酸)、ペンタ(グルタミン酸)、ヘキサ(グルタミン酸)、ヘプタ(グルタミン酸)、オクタ(グルタミン酸)、ノナ(グルタミン酸)、デカ(グルタミン酸)、ウンデカ(グルタミン酸)、ドデカ(グルタミン酸)、トリデカ(グルタミン酸)、テトラデカ(グルタミン酸)、ペンタデカ(グルタミン酸)、ヘキサデカ(グルタミン酸)、ヘプタデカ(グルタミン酸)、オクタデカ(グルタミン酸)、ノナデカ(グルタミン酸)、ジ(アスパラギン酸)、トリ(アスパラギン酸)、テトラ(アスパラギン酸)、ペンタ(アスパラギン酸)、ヘキサ(アスパラギン酸)、ヘプタ(アスパラギン酸)、オクタ(アスパラギン酸)、ノナ(アスパラギン酸)、デカ(アスパラギン酸)、ウンデカ(アスパラギン酸)、ドデカ(アスパラギン酸)、トリデカ(アスパラギン酸)、テトラデカ(アスパラギン酸)、ペンタデカ(アスパラギン酸)、ヘキサデカ(アスパラギン酸)、ヘプタデカ(アスパラギン酸)、オクタデカ(アスパラギン酸)、ノナデカ(アスパラギン酸)、ポリエチレンイミン、及び低分子量のPEIを含み、特にこれらからなる群から選択される。
【0189】
より好ましくは、式(B-i)の超分枝部部分Hyp1及びHyp2は、独立に、結合型の、トリリジン、テトラリジン、ペンタリジン、ヘキサリジン、ヘプタリジン、オクタリジン、ノナリジン、デカリジン、ウンデカリジン、ドデカリジン、トリデカリジン、テトラデカリジン、ペンタデカリジン、ヘキサデカリジン、及びヘプタデカリジンを含み、より好ましくはこれらからなる群から選択され、より一層好ましくは、Hyp1及びHyp2は、独立に、結合型の、トリリジン、ヘプタリジン、又はペンタデカリジンを含み、好ましくはこれらからなる。
【0190】
より好ましくは、式(B-i)のHyp1及びHyp2は、独立に、いずれか一つの以下の構造から選択される:
【0191】
【化37】
[式中、
アステリスクで印をつけた点線は式(B-i)のPOLxに対する結合を示し、印のない点線は、式(I)の残部に対する結合をそれぞれ示し、
qxは、0から15までの、好ましくは3から7の整数であり、より一層好ましくは6である]。
【0192】
好ましくは、式(B-i)のHyp1及びHyp2は各々ヘプタリシニル基であり、特に式(B-i)のHyp1及びHyp2は各々、上記式(b-ii)の構造を有する。
【0193】
好ましくは、式(B-i)のHyp1及びHyp2は、同じ構造を有する。
【0194】
式(B-i)のHyp1及びHyp2の官能基は、式(B-i)のHyp1及びHyp2の、式(I)のプロドラッグの残部に対する直接連結のための結合点として働く。残りの官能基は、相互に独立に、適切なキャッピング試薬でキャッピングされていてよく、又は少なくとも一つの標的化部分に、特に永久的な連結によって、接続されていてよい。
【0195】
したがって、本発明の水溶性の担体に連結しているプロドラッグにおいて、式(B-i)の超連結部分Hyp1及びHyp2は、式(B-i)のPOLxに接続しており、式(B-i)のHyp1及びHyp2の官能基は、式(I)のプロドラッグの残部に対して、永久的な連結、標的化部分、及び/又はキャッピング基に対して接続している。
【0196】
好ましい一実施形態において、式(B-i)の超分枝部分であるHyp1及びHyp2の官能基は全て、式(I)のプロドラッグの残部に対して接続している。
【0197】
好ましくは、式(B-i)の超分枝部分Hyp1及びHyp2は、独立に、0.1kDaから4kDaまでの、より好ましくは0.4kDaから2kDaまでの範囲の分子量を有する。好ましくは、式(B-i)の超分枝部分Hyp1及びHyp2は、各々相互に独立に、少なくとも3個の分枝を有し、最大限63個の分枝を有する。式(B-i)の超分枝部分Hyp1及びHyp2が、各々相互に独立に、少なくとも7個の分枝及び最大限31個の分枝を有するのが好ましい。
【0198】
好ましくは、式(B-i)の超分枝部分Hyp1及びHyp2は、各々独立に、超分枝のポリペプチドである。好ましくは、このような超分枝のポリペプチドは、結合型のリジンを含む。好ましくは、式(B-i)の各超分枝部分Hyp1及びHyp2は、独立に、0.1kDaから4kDaまでの、特に0.4kDaから2kDaの範囲までの分子量を有する。
【0199】
好ましくは、mxは0であり、式(B-i)のPOL-Hyp2-は、以下の構造から選択される:
【0200】
【化38】
[式中、
点線は、式(I)のプロドラッグの残部に対する結合を示し、
pxは、5から2000までの、好ましくは10から1000までの、特に100から1000までの整数であり、
qxは、0から15までの、好ましくは3から7までの整数であり、より好ましくはqxは6である]。
【0201】
別の好ましい一実施形態において、Z1は、その全文が参照によって本明細書に援用されるWO2103/024047A1に開示されている担体である。したがって、好ましい一実施形態において、Z1は、式(C-i)の構造を有する:
【0202】
【化39】
[式中、
Bは分枝コアであり、
各Aは、独立に、ポリ(エチレングリコール)ベースのポリマー鎖であり、
各Hypyは、独立に、分枝部分であり、
nは、3から32までの整数である]。
【0203】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の分枝コアBは、以下から選択される部分を含み、好ましくは以下から選択される部分からなる:
ヒドロキシル基を少なくとも2個含む多価アルコール(好ましくはさらなるアミノ基又はカルボン酸基、より好ましくはさらなるカルボン酸基である、官能基をさらに含むのが好ましい)、
好ましくは、Bは、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、及びヒアルロナン、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ズルシトール、イジトール、より好ましくはグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、及びヒアルロナンから選択される
或いはアミン基を少なくとも2個含むポリアミン(好ましくはさらなるヒドロキシル基又はカルボン酸基、より好ましくはカルボン酸基である、官能基をさらに含むのが好ましい)、
好ましくは、オルニチン、ジオルニチン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、ジアミノ酪酸、ジ(ジアミノ酪酸)、トリ(ジアミノ酪酸)、テトラ(ジアミノ酪酸)、ペンタ(ジアミノ酪酸)、ヘキサ(ジアミノ酪酸)、ヘプタ(ジアミノ酪酸)、オクタ(ジアミノ酪酸)、ノナ(ジアミノ酪酸)、デカ(ジアミノ酪酸)、ウンデカ(ジアミノ酪酸)、ドデカ(ジアミノ酪酸)、トリデカ(ジアミノ酪酸)、テトラデカ(ジアミノ酪酸)、ペンタデカ(ジアミノ酪酸)、ヘキサデカ(ジアミノ酪酸)、ヘプタデカ(ジアミノ酪酸)、オクタデカ(ジアミノ酪酸)、ノナデカ(ジアミノ酪酸)、リシン、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシン、オリゴリシン、ポリエチレンイミン、及びポリビニルアミンから選択される
[多価アルコール又はポリアミンは結合型である]。
【0204】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の分枝コアBは、ペンタエリスリトールを含み、好ましくはペンタエリスリトールからなる。
【0205】
好ましくは、式(C-i)の分枝コアBに接続しているポリ(エチレングリコール)ベースのポリマー鎖Aは直鎖状のPEG鎖からなり、PEG鎖の一終端は式(C-i)のBに接続し、他の終端は式(C-i)のHypyに接続している。式(C-i)のPEGベースの鎖Aは、分枝状PEG鎖の場合は任意選択により終結していてよく、且つ/又は分枝状若しくは直鎖状PEG鎖の場合は、アルキル基若しくはアリール基によって任意選択により中断されていてよく、ヘテロ原子及び/若しくは官能基で任意選択により置き換えられていてよい。
【0206】
式(C-i)の分枝コアBから延長する式(C-i)の各下部構造A-Hypyは、相互に独立に、同じ又は異なる下部構造A-Hypyであってよい。好ましい一実施形態において、式(C-i)の下部構造A-Hypyは全て同じである。
【0207】
式(C-i)の各A及び各Hypyは、独立に、他の部分A及びHypyから選択することができる。好ましくは、式(C-i)のBに接続している下部構造A-Hypyは同一の構造を有する。
【0208】
好ましくは、式(C-i)のPEGベースのポリマー鎖Aは、永久的な連結によってBに接続している。
【0209】
式(C-i)のnは、3から32までの整数である。好ましくは、nは、3から16までの整数であり、より好ましくは、nは4から8までの整数であり、最も好ましくはnは4である。
【0210】
好ましい一実施形態において、式(C-i)のnは4であり、mは2である。
【0211】
一実施形態において、式(C-i)のPEGベースのポリマー鎖Aは、直鎖状又は分枝状のPEGベースのポリマー鎖から選択される。好ましくは、Aは直鎖状のPEGベースのポリマー鎖である。
【0212】
好ましくは、式(C-i)の各Aは、独立に、式:
-X3-(CH2)n1-(OCH2CH2)p-O-(CH2)n2-X2-
から選択され、
式中、
n1及びn2は、独立に、1、2、3、及び4から、好ましくは、1、2、及び3から選択され、
pは、5から2000までの範囲の整数であり、好ましくは、pは10から1000までの範囲の整数であり、より好ましくは、pは100から1000までの範囲の整数であり、
X3及びX2は、独立に、それぞれB又はHypyに共有結合している官能基である。
好ましくは、式(C-i)の部分Aと部分Hypyとの間の連結は永久的な連結であり、より好ましくは、アミン基、アミド基、カーバメート基、チオエーテル基、エーテル基から選択される基を含み、特にこれらから選択される基からなる連結基を含む永久的な連結であり、最も好ましくは、式(C-i)の部分Aと部分Hypyとの間の永久的な連結はアミド連結である。
【0213】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の下部構造
【0214】
【化40】
は、例えば、米国、Jen Kem Technology (2011年3月8日にhttp://jenkemusa.net/pegproducts2.aspxからのダウンロードによってアクセスした)の製品リストに詳述されているものなどの、多分枝PEG誘導体(例えば、4-アーム-PEG誘導体、特にペンタエリスリトールコアを含む4-アーム-PEG誘導体、ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEG誘導体、及びトリペンタエリスリトールコアを含む8-アーム-PEG誘導体)である。最も好ましいのは、以下から選択される部分を含み、特に以下から選択される部分からなる、各々結合型の、式(C-i)の下部構造
【0215】
【化41】
である:
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGアミン:
【0216】
【化42】
[nは400から2000までの範囲である]、
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGカルボキシル:
【0217】
【化43】
[nは400から2000までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGアミン:
【0218】
【化44】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0219】
【化45】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0220】
【化46】
[nは400から2000までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0221】
【化47】
[nは400から2000までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0222】
【化48】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0223】
【化49】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0224】
【化50】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
並びに、ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0225】
【化51】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]。
各々結合型の、以下の式の下部構造
【0226】
【化52】
も好ましい。
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGアミン:
【0227】
【化53】
[nは400から2000までの範囲である]、
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGカルボキシル:
【0228】
【化54】
[nは400から2000までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGアミン:
【0229】
【化55】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0230】
【化56】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0231】
【化57】
[nは400から2000までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0232】
【化58】
[nは400から2000までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0233】
【化59】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0234】
【化60】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0235】
【化61】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
並びに、ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0236】
【化62】
[nは400から2000までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]。
【0237】
以下から選択される部分を含み、特に以下から選択される部分からなる、各々結合型の、式(C-i)の下部構造
【0238】
【化63】
も好ましい:
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGアミン:
【0239】
【化64】
[nは20から500までの範囲である]、
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGカルボキシル:
【0240】
【化65】
[nは20から500までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGアミン:
【0241】
【化66】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0242】
【化67】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0243】
【化68】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0244】
【化69】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0245】
【化70】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0246】
【化71】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0247】
【化72】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
並びに、ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0248】
【化73】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]。
【0249】
各々結合型の、以下の式の下部構造
【0250】
【化74】
も好ましい:
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGアミン:
【0251】
【化75】
[nは20から500までの範囲である]、
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGカルボキシル:
【0252】
【化76】
[nは20から500までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGアミン:
【0253】
【化77】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0254】
【化78】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0255】
【化79】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0256】
【化80】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0257】
【化81】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0258】
【化82】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0259】
【化83】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
並びに、ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0260】
【化84】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]。
【0261】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の下部構造B-(-A)nの分子量は、1kDaから80kDaまでの、より好ましくは1kDaから40kDaまでの、より一層好ましくは10kDaから40kDaまでの範囲である。末端のアミン基又はカルボキシル基はそれぞれ、式(C-i)の部分Hypyに対するコンジュゲーションに用いられることが理解される。
【0262】
式(C-i)の部分Hypyの官能基は、式(I)のプロドラッグの残部に接続している。
【0263】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の部分Hypyは、式(I)のプロドラッグの残部に、アミド基、カーバメート基、エステル基、エーテル基、アミン基、チオエーテル基から選択される官能基によって接続している。式(C-i)の部分Hypyが、式(I)のプロドラッグの残部に、アミド基、チオエーテル基、及び/又はエーテル基によって接続しているのが好ましく、アミド基によって接続しているのがより一層好ましい。
【0264】
任意選択により、式(I)のプロドラッグの残部に接続していない、式(C-i)の部分Hypyの官能基は、適切なキャッピング試薬でキャッピングされていてもよく、且つ/又は任意選択により、少なくとも1個の標的化部分に、特に永久的な連結によって接続していてもよい。したがって、式(C-i)の部分Hypyは、式(I)のプロドラッグの残部に、キャッピング部分に、及び/又は標的化部分に接続していてもよい。好ましくは、式(C-i)の部分Hypyの官能基は全て、式(I)のプロドラッグの残部に接続しており、キャッピング部分及び/又は標的化部分に接続していない。標的化部分が存在する場合は、式(C-i)の部分Hypyに、直接的又はスペーサー部分によって間接的にコンジュゲートしていてよい。
【0265】
適切なキャッピング部分の例には、直鎖状、分枝状、又は環状のC1〜8アルキル基がある。
【0266】
式(C-i)の分枝部分Hypyは、以下から選択される結合型の部分を含み、好ましくは以下から選択される結合型の部分からなる:
ヒドロキシル基を少なくとも2個含む結合型の多価アルコール(好ましくはさらなるヒドロキシル基又はカルボン酸基、より好ましくはさらなるヒドロキシル基である、官能基をさらに含むことが好ましい)、
好ましくは、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、及びヒアルロナン、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ズルシトール、イジトール、より好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、及びヒアルロナンから選択される
或いはアミン基を少なくとも2個含む結合型のポリアミン(好ましくはさらなるアミン基又はカルボン酸基、より好ましくはカルボン酸基である、官能基をさらに含むのが好ましい)、
好ましくは、オルニチン、ジオルニチン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、ジアミノ酪酸、ジ(ジアミノ酪酸)、トリ(ジアミノ酪酸)、テトラ(ジアミノ酪酸)、ペンタ(ジアミノ酪酸)、ヘキサ(ジアミノ酪酸)、ヘプタ(ジアミノ酪酸)、オクタ(ジアミノ酪酸)、ノナ(ジアミノ酪酸)、デカ(ジアミノ酪酸)、ウンデカ(ジアミノ酪酸)、ドデカ(ジアミノ酪酸)、トリデカ(ジアミノ酪酸)、テトラデカ(ジアミノ酪酸)、ペンタデカ(ジアミノ酪酸)、ヘキサデカ(ジアミノ酪酸)、ヘプタデカ(ジアミノ酪酸)、オクタデカ(ジアミノ酪酸)、ノナデカ(ジアミノ酪酸)、リシン、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシン、オリゴリシン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、トリジアミノ酪酸、テトラジアミノ酪酸、ペンタジアミノ酪酸、ヘキサジアミノ酪酸、ヘプタジアミノ酪酸、オクタジアミノ酪酸、ノナジアミノ酪酸、デカジアミノ酪酸、ウンデカジアミノ酪酸、ドデカジアミノ酪酸、トリデカジアミノ酪酸、テトラデカジアミノ酪酸、ペンタデカジアミノ酪酸、ヘキサデカジアミノ酪酸、ヘプタデカジアミノ酪酸、オクタデカジアミノ酪酸、ノナデカジアミノ酪酸、から選択される、
或いは、カルボキシレート基を少なくとも2個含む結合型のポリカルボキシレート(好ましくはさらなるアミノ基又はカルボン酸基、より好ましくはカルボン酸基である、官能基をさらに含むのが好ましい)、
好ましくは、ジ(グルタミン酸)、トリ(グルタミン酸)、テトラ(グルタミン酸)、ペンタ(グルタミン酸)、ヘキサ(グルタミン酸)、ヘプタ(グルタミン酸)、オクタ(グルタミン酸)、ノナ(グルタミン酸)、デカ(グルタミン酸)、ウンデカ(グルタミン酸)、ドデカ(グルタミン酸)、トリデカ(グルタミン酸)、テトラデカ(グルタミン酸)、ペンタデカ(グルタミン酸)、ヘキサデカ(グルタミン酸)、ヘプタデカ(グルタミン酸)、オクタデカ(グルタミン酸)、ノナデカ(グルタミン酸)、ジ(アスパラギン酸)、トリ(アスパラギン酸)、テトラ(アスパラギン酸)、ペンタ(アスパラギン酸)、ヘキサ(アスパラギン酸)、ヘプタ(アスパラギン酸)、オクタ(アスパラギン酸)、ノナ(アスパラギン酸)、デカ(アスパラギン酸)、ウンデカ(アスパラギン酸)、ドデカ(アスパラギン酸)、トリデカ(アスパラギン酸)、テトラデカ(アスパラギン酸)、ペンタデカ(アスパラギン酸)、ヘキサデカ(アスパラギン酸)、ヘプタデカ(アスパラギン酸)、オクタデカ(アスパラギン酸)、ノナデカ(アスパラギン酸)、ポリエチレンイミン、及びポリビニルアミンから選択される。
【0267】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の部分Hypyは、結合型の、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、トリジアミノ酪酸、テトラジアミノ酪酸、ペンタジアミノ酪酸、ヘキサジアミノ酪酸、ヘプタジアミノ酪酸、オクタジアミノ酪酸、ノナジアミノ酪酸、デカジアミノ酪酸、ウンデカジアミノ酪酸、ドデカジアミノ酪酸、トリデカジアミノ酪酸、テトラデカジアミノ酪酸、ペンタデカジアミノ酪酸、ヘキサデカジアミノ酪酸、ヘプタデカジアミノ酪酸、オクタデカジアミノ酪酸、ノナデカジアミノ酪酸、ジ(グルタミン酸)、トリ(グルタミン酸)、テトラ(グルタミン酸)、ペンタ(グルタミン酸)、ヘキサ(グルタミン酸)、ヘプタ(グルタミン酸)、オクタ(グルタミン酸)、ノナ(グルタミン酸)、デカ(グルタミン酸)、ウンデカ(グルタミン酸)、ドデカ(グルタミン酸)、トリデカ(グルタミン酸)、テトラデカ(グルタミン酸)、ペンタデカ(グルタミン酸)、ヘキサデカ(グルタミン酸)、ヘプタデカ(グルタミン酸)、オクタデカ(グルタミン酸)、ノナデカ(グルタミン酸)、ジ(アスパラギン酸)、トリ(アスパラギン酸)、テトラ(アスパラギン酸)、ペンタ(アスパラギン酸)、ヘキサ(アスパラギン酸)、ヘプタ(アスパラギン酸)、オクタ(アスパラギン酸)、ノナ(アスパラギン酸)、デカ(アスパラギン酸)、ウンデカ(アスパラギン酸)、ドデカ(アスパラギン酸)、トリデカ(アスパラギン酸)、テトラデカ(アスパラギン酸)、ペンタデカ(アスパラギン酸)、ヘキサデカ(アスパラギン酸)、ヘプタデカ(アスパラギン酸)、オクタデカ(アスパラギン酸)、ノナデカ(アスパラギン酸)、ポリエチレンイミン、及び低分子量のPEIを含み、特に、これらからなる群から選択される。
【0268】
より好ましくは、式(C-i)の部分Hypyは、結合型の、トリリジン、テトラリジン、ペンタリジン、ヘキサリジン、ヘプタリジン、オクタリジン、ノナリジン、デカリジン、ウンデカリジン、ドデカリジン、トリデカリジン、テトラデカリジン、ペンタデカリジン、ヘキサデカリジン、及びヘプタデカリジンを含み、より好ましくはこれらからなる群から選択され、より一層好ましくは、式(C-i)の部分Hypyは、結合型の、トリリジン、ヘプタリジン、又はペンタデカリジンを含み、好ましくはこれらからなる。
【0269】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の部分Hypyは、0.1kDaから4kDaまでの、より好ましくは0.2kDaから2kDaまでの範囲の分子量を有する。
【0270】
さらなる好ましい一実施形態において、式(C-i)の分枝の部分Hypyは各々、少なくとも1個の分枝を有し、最大限63個の分枝を有する。より好ましくは、式(C-i)の分枝の部分Hypyは各々、少なくとも1個の分枝を有し、最大限31個の分枝を有する。
【0271】
好ましい一実施形態において、式(C-i)のZ1は、四級炭素、特に、分枝コア部分Bの四級炭素を含み、式(C-i)のBは結合型のペンタエリスリトールである。好ましくは、式(C-i)の各Aは、独立に、永久的な共有結合によって、分枝コア部分ペンタエリスリトールの-CH2-O-部分によってペンタエリスリトールの四級炭素に対して末端が結合しているPEGベースのポリマー鎖であり、PEGベースのポリマー鎖の遠位終端は式(C-i)の分枝部分Hypyに共有結合しており、式(C-i)の各分枝部分Hypyは、式(I)のプロドラッグの残部に対してコンジュゲートしている。
【0272】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の分枝部分Hypyは、少なくとも2個のアミン基を含む分枝ポリアミンを含み、好ましくはこれからなる。好ましくは、少なくとも2個のアミン基を含む分枝ポリアミンは、結合型のリジン残基を1個以上含む。好ましくは、式(C-i)の各分枝部分Hypyは、0.1kDaから4kDaまでの、特に0.2から2kDaまでの範囲の分子量を有する。好ましい一実施形態において、n=4である、式(C-i)の部分
【0273】
【化85】
は、同じ又は異なる分枝部分Hypyからなり、各部分Hypyは独立に選択することができる。好ましい一実施形態において、式(C-i)の部分Hypyは全て同じである。
【0274】
好ましい一実施形態において、式(C-i)の部分Hypyは、1個から32個の結合型のリジン、好ましくは、1個、3個、7個、又は15個の結合型のリジン、より好ましくは、1個、3個、又は7個の結合型のリジンを含み、特にこれらからなる。最も好ましくは、式(C-i)のHypyは、ヘプタリシニルを含み、特にヘプタリシニルからなる。
【0275】
nが好ましくは4である、式(C-i)の部分
【0276】
【化86】
は、1kDaから160kDaまでの、より好ましくは1kDaから80kDaまでの、より一層好ましくは10kDaから40kDaまでの範囲の分子量を有するのが好ましい。
【0277】
式(C-i)の好ましい部分
【0278】
【化87】
は、構造(C-i)から(C-iii)から選択される:
【0279】
【化88】
[式中、
点線は、式(I)のプロドラッグの残部に対する結合を示し、
pは、5から2000までの、好ましくは10から1000までの、より好ましくは10から500までの、最も好ましくは100から1000までの整数であり、
qは、1又は2である]。
【0280】
好ましい一実施形態において、式(C-i)のBはペンタエリスリトールである。
【0281】
別の好ましい一実施形態において、Z1は、その全文が参照によって本明細書に援用されるWO2013/024049A1に開示されている担体である。したがって、好ましい一実施形態において、式(I)のZ1は、少なくとも100個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含み、特にこれからなる、タンパク質の担体である。
【0282】
このようなタンパク質の担体Z1が、ランダムコイル立体配置であるのがより一層好ましい。
【0283】
別の好ましい一実施形態において、このようなタンパク質の担体Z1は、アラニン、セリン及びプロリン残基を含み、特にこれらからなる。
【0284】
好ましい実施形態において、このようなタンパク質の担体Z1は、少なくとも100個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含み、特にこれからなり、
アミノ酸残基少なくとも100個のアミノ酸配列は、ランダムコイル構造であり、
アミノ酸残基少なくとも100個のアミノ酸配列は、アラニン、セリン、及びプロリン残基を含む。
【0285】
好ましくは、式(I)のタンパク質担体Z1のタンパク質担体は、アミノ酸残基少なくとも約100個のアミノ酸配列から構成され、アミノ酸残基少なくとも100個は、生理学的条件でランダムコイル構造を有するアラニン、セリン、及びプロリン残基からなる。式(I)のタンパク質担体Z1は、例えば、凍結乾燥又は乾燥した組成物中に存在する場合、一過性又は一時的にランダムコイルを形成し得ないことが理解される。
【0286】
一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、アミノ酸残基最大約3000個、好ましくはアミノ酸残基最大約1500個、より好ましくはアミノ酸残基最大約900個、より一層好ましくはアミノ酸残基最大約700個、特に好ましくはアミノ酸残基最大約600個のアミノ酸配列を有するランダムコイル構造を有する。このように、ランダムコイル構造を形成するアミノ酸配列は、アミノ酸残基最大約500個、又はアミノ酸残基最大約450個の長さである。
【0287】
したがって、式(I)のタンパク質担体Z1、特に式(I)のタンパク質担体Z1のランダムコイル構造を形成するアミノ酸配列は、アミノ酸残基約100個から約3000個の長さである。
【0288】
特定の実施形態において、アミノ酸残基約100個から1000個のランダムコイル構造を形成する前記アミノ酸配列は本明細書において特徴づけられる通りであり、すなわち、以下に規定する通り主な、又は独特の残基として、アラニン、セリン、及びプロリンを含む。
【0289】
式(I)のタンパク質担体部分Z1は、アラニン、セリン、及びプロリンの三つのアミノ酸残基から主になり、三つのアミノ酸は全て、式(I)のタンパク質担体部分Z1中に存在し、プロリン残基は、好ましくは、式(I)のタンパク質担体Z1の約4%から約40%を表す。アラニン残基及びセリン残基は、好ましくは、式(I)のタンパク質担体Z1の、残りの少なくとも60%から96%を含む。しかし、本明細書下記に詳述する通り、式(I)の前記タンパク質担体Z1は、アラニン、セリン、及びプロリンとは異なるさらなるアミノ酸も、すなわち、微量成分として含むことができる。
【0290】
本明細書で用いられる「微量成分」の語は、式(I)のタンパク質担体Z1をコードする、最大10%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大10個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、好ましくは、最大8%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大8個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、より好ましくは、最大6%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大6個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、より一層好ましくは、最大5%(すなわち、100個のアミノ酸うちの最大5個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、特に好ましくは、最大4%(すなわち、100個のアミノ酸うちの最大4個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、より特に好ましくは、最大3%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大3個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、さらにより特に好ましくは、最大2%(すなわち、100個のアミノ酸の最大2個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよく、最も好ましくは、最大1%(すなわち、100個のアミノ酸のうち最大1個)が、アラニン、セリン、及びプロリンと異なっていてよい。アラニン、セリン、及びプロリンと異なる前記アミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる、天然の、又はタンパク質を構成するアミノ酸の群から選択することができる。微量成分は、例えば、ヒドロキシプロリン、若しくはセレノメチオニンなど、天然に存在しないアミノ酸、又は他の修飾されている天然のアミノ酸から選択することもできる。
【0291】
「少なくとも約100/150/200/250/300/300/350個(など)のアミノ酸残基」の語は、簡潔な数のアミノ酸残基に限定されないが、さらなる10%から20%を含み、又は10%から20%少ない残基を含むアミノ酸の一続きも含む。例えば、「少なくとも約100個のアミノ酸残基」はまた、80個から100個、及び約100個から120個のアミノ酸残基を含むことができる。
【0292】
一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、複数のポリマーカセットを含み、前記ポリマーカセットはAla、Ser、及び/又はProからなり、ポリマーカセットの、好ましくは式(I)のタンパク質担体Z1の6個を超えない連続のアミノ酸残基は同一であり、前記プロリン残基は、式(I)の前記タンパク質担体Z1のアミノ酸の4%を超え、40%未満を構成する。
【0293】
一実施形態において、式(I)のタンパク質担体部分Z1は、複数のアミノ酸反復を含み、好ましくは複数のアミノ酸反復からなり、
前記反復は、Ala、Ser、及びPro残基からなり、
式(I)の担体部分Z1の6個を超えない連続のアミノ酸残基は同一である。
【0294】
好ましい一実施形態において、前記プロリン残基は、式(I)のタンパク質担体部分Z1のアミノ酸の4%を超え、40%未満を構成する。
【0295】
さらに好ましい一実施形態において、式(I)のタンパク質担体部分Z1は、ランダムコイル構造を形成するアミノ酸残基約100個から3000個のアミノ酸配列を含み、特にこれらのアミノ酸配列からなる。
【0296】
式(I)のタンパク質担体Z1は、複数の同一のポリマーカセット、又は複数の非同一のポリマーカセットを含むことができる。Ala、Ser、及び/又はPro残基からなるポリマーカセットの非限定的な例を本明細書以下に提供し、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、及び配列番号:14、又はこれら配列のペプチドフラグメント若しくは多量体を参照されたい。ポリマーカセットは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個又はそれを超えるアミノ酸残基からなっていてよく、各ポリマーカセットは、Ala、Ser、及び/又はPro残基(複数可)、好ましくはAla、Ser、及びPro残基(複数可)を含む。
【0297】
一実施形態において、ポリマーカセットは、100個を超えるアミノ酸残基を含まない。好ましくは、本明細書に規定するポリマーカセットは、約4%を超える、好ましくは約5%を超える、より一層好ましくは約6%を超える、特に好ましくは約8%を超える、より特に好ましくは約10%を超える、より一層特に好ましくは約15%を超える、最も好ましくは約20%を超えるプロリン残基を含む。本明細書に規定するこのようなポリマーカセットは、好ましくは、約40%未満、又は約35%未満のプロリン残基を含む。
【0298】
一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は式(d-i)であり:
Serx[AlaySerz]v(d-i)
この式は、本明細書に規定するプロリン残基をさらに含み、
xは、独立に、0から6の整数から選択され、
各yは、独立に、1から6までの範囲の整数から選択され、
各zは、独立に、1から6までの範囲の整数から選択され、
vは、式(I)のタンパク質担体Z1が少なくとも約100個のアミノ酸残基、特に少なくとも約100個から約3000個までのアミノ酸残基、好ましくは約2000個まで、より好ましくは約1000個までのアミノ酸残基からなるようなあらゆる整数である。
【0299】
一実施形態において、全ての式(d-i)のy、及び式(d-i)のvAlaySerz単量体部分の式(b)のzは同一である。別の一実施形態において、式(d-i)のy、及び式(d-i)のvAlaySerz単量体部分の式(d-i)のzは異なる。
【0300】
好ましい実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、5個を超えない同一の連続のアミノ酸残基、より好ましくは、4個を超えない同一の連続のアミノ酸残基、最も好ましくは3個を超えない同一の連続のアミノ酸残基を含む。
【0301】
本明細書上記にすでに指摘した通り、式(I)のタンパク質担体Z1はプロリン残基を含み、前記プロリン残基は、式(I)のタンパク質担体Z1を構成するアミノ酸の、約4%を超えて、好ましくは約5%超、より一層好ましくは約6%超、特に好ましくは約8%超、より特に好ましくは約10%超、より一層特に好ましくは約15%超、最も好ましくは約20%超を構成する。残基は、式(d-i)のあらゆる位置に導入することができる。好ましくは、プロリン残基は、式(d-i)のvAlaySery単量体の1個以上に存在してよく、同じ又は異なる位置に存在してよい。
【0302】
別の好ましい一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、式(I)のタンパク質担体Z1を構成するアミノ酸の、約4%を超え約50%未満の、好ましくは約10%を超え約50%未満の、最も好ましくは約20%を超え約50%未満のアラニン残基を含む。
【0303】
さらに好ましい一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、式(I)のタンパク質担体Z1を構成するアミノ酸の、約4%を超え約50%未満の、好ましくは、約10%を超え約50%未満の、最も好ましくは約20%を超え約50%未満のセリン残基を含む。
【0304】
したがって、式(I)のタンパク質担体Z1は、式(I)のタンパク質担体Z1を構成するアミノ酸の、約35%のプロリン残基、約50%のアラニン残基、及び約15%のセリン残基を含む。或いは、式(I)のタンパク質担体Z1は、式(I)のタンパク質担体Z1を構成するアミノ酸の、約35%のプロリン残基、約15%のアラニン残基、及び約50%のセリン残基を含むことができる。
【0305】
好ましくは、式(I)のタンパク質担体Z1は、式(I)のタンパク質担体Z1が、本明細書に記載するプロリン残基をさらに含む場合、以下のアラニン-セリンポリマーカセットを1個以上含む:
配列番号1
AAAASSASSASSSSSAAASA
配列番号2
AASAAASSAAASAAAASASS
配列番号3
ASASASASASASSAASAASA
配列番号4
SAASSSASSSSAASSASAAA
配列番号5
SSSSAASAASAAAAASSSAS
配列番号6
SSASSSAASSSASSSSASAA
配列番号7
SASASASASASAASSASSAS
配列番号8
ASSAAASAAAASSAASASSS
但し、式(I)のタンパク質担体Z1は上記の通りプロリン残基を更に含む。
【0306】
これらアラニン-セリンポリマーカセットの多量体は、得られるアミノ酸配列が本明細書上記に規定した通りプロリン残基をさらに含む場合、ランダムコイル構造を形成することができる。
【0307】
好ましい一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、以下のポリマーカセットを1個以上含み、好ましくはこれらからなる:
配列番号9
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA
配列番号10
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS
配列番号11
APSSPSPSAPSSPSPASPSS
配列番号15
SAPSSPSPSAPSSPSPASPS
【0308】
配列番号:15は、本明細書に提供する円形に形を変えた形態の配列番号:11に相当し、最後のセリンが除去され、別のセリンが出発のアミノ酸として追加されている。その結果、この修飾された配列の多量体は、非修飾の配列の多量体として、最初及び最終の残基を除いて、本質的に同じ内部反復単位を所有する。したがって、配列番号:15は、式(I)のタンパク質担体Z1に対するさらなるポリマーカセットの一例とみなすことができる。当業者には、他のポリマーカセット、及び本明細書に提供するアミノ酸ポリマーの(より短い)ペプチドフラグメント又は円形に形を変えたバージョンを、式(I)のタンパク質担体Z1に対するポリマーカセットとして用いることができることが明らかである。
【0309】
それでも、ランダムコイル構造を形成する、なおさらなる例示的なアミノ酸ポリマーは、以下からなる群から選択することができるアミノ酸配列を含むことができる:
配列番号:12
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA、
配列番号:13
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA、及び
配列番号:14
ASAAAPAAASAAASAPSAAA。
【0310】
したがって、式(I)のZ1に対する好ましいポリマーカセットは、以下の配列:
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号9)、
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号10)、
APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号11)、
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号12)、
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号13)、及び
ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号14)、
又はこれら配列の全体又は部位として、これら配列の円形に形を変えたバージョン又は多量体(複数可)から選択される。
【0311】
一実施形態において、式(I)のタンパク質担体部分Z1は、
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号9)、
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号10)、
APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号11)、
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号12)、
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号13)、及び
ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号14)、
及びこれら配列の全体又は部位として、これら配列の円形に形を変えたバージョン又は多量体(複数可)からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含む。
【0312】
繰り返すと、これら配列及び本明細書に上記した配列の、ペプチドフラグメント(複数可)、又は多量体(複数可)、又は円形に形を変えたバージョンも、式(I)のタンパク質担体Z1に対するポリマーカセットとして用いることができる。
【0313】
したがって、例示のポリマーカセットは、さらなるポリマーカセットを形成するために新たに組み合わせることができる個々のペプチドフラグメントも提供することができる。
【0314】
上記にしたがい、式(I)のタンパク質担体Z1は、本明細書上記に開示した配列番号:9、10、11、12、13、又は14を有するアミノ酸配列のいずれか一つからなる多量体を含むことができ、又は配列番号:9、10、11、12、13、又は14の二つを以上のアミノ酸配列からなる多量体を含むことができる。さらに、これら例示の配列のペプチドフラグメント又は円形に形を変えたバージョンを、式(I)のタンパク質担体Z1のさらなるポリマーカセットを構築するのに用いることができることが想定される。
【0315】
別の一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、配列番号:9、10、11、12、13、14、15からなる群から選択される(円形に)形を変えたアミノ酸配列、及びこれら(円形に)形を変えた配列の多量体(複数可)を含み、好ましくはこれらからなる多量体を含むことができる。
【0316】
さらに別の一実施形態において、式(I)のタンパク質担体Z1は、配列番号:9、10、12、13、14、15からなる群から選択されるアミノ酸配列のペプチドフラグメント/部位、及びこれら例示のポリマーカセットの多量体(複数可)からなる多量体を含み、好ましくはこれらからなっていてよい。
【0317】
式(I)のタンパク質担体Z1の産生に用いるこれらの配列のペプチドフラグメントは、前記配列番号:9、10、11、12、13、及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列の、少なくとも3個の、好ましくは少なくとも4個の、より好ましくは少なくとも5個の、より一層好ましくは少なくとも6個の、なお一層好ましくは少なくとも8個の、特に好ましくは少なくとも10個の、より特に好ましくは少なくとも12個の、より一層特に好ましくは少なくとも14個の、好ましくは少なくとも6個の、なお一層好ましくは少なくとも8個の、特に好ましくは少なくとも10個の、より特に好ましくは少なくとも12個の、より一層特に好ましくは少なくとも14個の、さらにより特に好ましくは少なくとも16個の、最も好ましくは少なくとも18個の連続のアミノ酸からなっていてよい。
【0318】
例えば、アラニン、セリン、及びプロリンの全体の分布及び量に対して上記に特定した規則が尊重される限り、ポリマーカセットの個々のペプチドフラグメントを組み合わせてさらなる個々のポリマーカセットにしてもよい。繰り返すと、これらのポリマーカセットはさらなるアミノ酸残基を含むこともできるが、最小成分又は微量成分として、すなわち、個々のポリマーカセットの最大10%、好ましくは最大2%だけ含むことができる。前記個々のポリマーカセットは、少なくとも約100個のアミノ酸残基からなる。個々のポリマーカセットは、より長いランダムコイル形成性のアミノ酸ポリマーを形成するために、組み合わせることができ、式(I)、(II)、(IIaa)、(IIab)、(IIac)、(IIad)、(IIb)、又は(IIba)のタンパク質担体Z1の最大の長さはアミノ酸約3000個である。(II)、(IIaa)、(IIab)、(IIac)、(IIad)、(IIb)、又は(IIba)のタンパク質担体Z1の好ましい微量成分はリジンである。
【0319】
別の一実施形態において、担体Z1は式(A-iv)の構造を有する:
【0320】
【化89】
[式中、
Bは、分枝コアであり、
各Aは、独立に、PEGベースのポリマー鎖であり、
qは、3から64までの整数である]。
【0321】
式(A-iv)のq及び式(I)のyが同じ値であるのが好ましい。
【0322】
qが、2、4、6、8、10、12、14、16、20、24、32又は48であるのが好ましい。qが、2、4、6、8、10又は16であるのがより好ましく、qが、2、4、6又は8であるのがより一層好ましく、qが4であるのが最も好ましい。
【0323】
好ましい一実施形態において、式(A-iv)の分枝コアBは、以下から選択される部分を含み、好ましくは以下から選択される部分からなる:
ヒドロキシル基を少なくとも2個含む多価アルコール(好ましくはさらなるアミノ基又はカルボン酸基、より好ましくはカルボン酸基である、官能基をさらに含むことが好ましい)、
好ましくは、Bは、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、ショ糖、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、及びヒアルロナン、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ズルシトール、イジトールから選択され、より好ましくは、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサグリセリン、ショ糖、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコール、デキストラン、及びヒアルロナンから選択される
或いはアミン基を少なくとも2個含むポリアミン(好ましくはさらなるヒドロキシル基又はカルボン酸基、より好ましくはカルボン酸基である、官能基をさらに含むことが好ましい)、
好ましくは、オルニチン、ジオルニチン、トリオルニチン、テトラオルニチン、ペンタオルニチン、ヘキサオルニチン、ヘプタオルニチン、オクタオルニチン、ノナオルニチン、デカオルニチン、ウンデカオルニチン、ドデカオルニチン、トリデカオルニチン、テトラデカオルニチン、ペンタデカオルニチン、ヘキサデカオルニチン、ヘプタデカオルニチン、オクタデカオルニチン、ノナデカオルニチン、ジアミノ酪酸、ジ(ジアミノ酪酸)、トリ(ジアミノ酪酸)、テトラ(ジアミノ酪酸)、ペンタ(ジアミノ酪酸)、ヘキサ(ジアミノ酪酸)、ヘプタ(ジアミノ酪酸)、オクタ(ジアミノ酪酸)、ノナ(ジアミノ酪酸)、デカ(ジアミノ酪酸)、ウンデカ(ジアミノ酪酸)、ドデカ(ジアミノ酪酸)、トリデカ(ジアミノ酪酸)、テトラデカ(ジアミノ酪酸)、ペンタデカ(ジアミノ酪酸)、ヘキサデカ(ジアミノ酪酸)、ヘプタデカ(ジアミノ酪酸)、オクタデカ(ジアミノ酪酸)、ノナデカ(ジアミノ酪酸)、リシン、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシン、オリゴリシン、ポリエチレンイミン、及びポリビニルアミンから選択される
[多価アルコール又はポリアミンは結合型である]。
【0324】
好ましい一実施形態において、式(A-iv)の分枝コアBは、ペンタエリスリトールを含む。
【0325】
好ましくは、式(A-iv)の分枝コアBに接続しているポリ(エチレングリコール)ベースのポリマー鎖Aは直鎖状のPEG鎖からなり、PEG鎖の一終端はBに接続し、他の終端は、式(I)のX0に対して接続している。
【0326】
式(A-iv)のPEGベースの鎖Aは、分枝PEG鎖の場合は、任意選択により終結していてよく、且つ/又は分枝若しくは直鎖状PEG鎖の場合は、アルキル基若しくはアリール基によって任意選択により中断されていてよく、ヘテロ原子及び/又は官能基で任意選択により置き換えられていてよいことが理解される。
【0327】
好ましくは、式(A-iv)の担体Z1は、例えば、米国、Jen Kem Technology、USAの製品リストに詳述されているもの(例えば、4-アーム-PEG誘導体、特にペンタエリスリトールコアを含む4-アーム-PEG誘導体、ヘキサグリセリンコアを含む8-アーム-PEG誘導体、及びトリペンタエリスリトールコアを含む8-アーム-PEG誘導体)などの多分岐PEG誘導体である。より好ましいのは、以下から選択される部分を含み、特に以下から選択される部分からなる、式(A-iv)の下部構造
【0328】
【化90】
であり:
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGアミン:
【0329】
【化91】
[nは20から500までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGアミン:
【0330】
【化92】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0331】
【化93】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0332】
【化94】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0333】
【化95】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGアミン:
【0334】
【化96】
[nは20から500までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGアミン:
【0335】
【化97】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGアミン:
【0336】
【化98】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0337】
【化99】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGアミン:
【0338】
【化100】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む]、
式中、点線は、式(I)のX0に対する結合点を示す。
【0339】
担体連結しているプロスタノイドプロドラッグが式(I)、(Ica)又は(Icb)のものである場合、式(A-iv)のより好ましい下部構造:
【0340】
【化101】
は、以下から選択される部分を含み:
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGカルボキシル:
【0341】
【化102】
[nは20から500までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0342】
【化103】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0343】
【化104】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0344】
【化105】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0345】
【化106】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールである]、
ペンタエリスリトールコアを含む4-アームPEGカルボキシル:
【0346】
【化107】
[nは20から500までの範囲である]、
ヘキサグリセリンコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0347】
【化108】
[nは20から500までの範囲であり、R=ヘキサグリセリンコア構造である]、
トリペンタエリスリトールコアを含む8-アームPEGカルボキシル:
【0348】
【化109】
[nは20から500までの範囲であり、R=トリペンタエリスリトールコア構造である]、
ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0349】
【化110】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む]、
並びに、ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む6-アームPEGカルボキシル:
【0350】
【化111】
[nは20から500までの範囲であり、R=ソルビトール又はジペンタエリスリトールコアを含む]
式中、点線は、式(I)のX0に対する結合点を示す。
【0351】
好ましい一実施形態において、式(A-iv)の担体の分子量は1kDaから80kDaまでの、より好ましくは1kDaから40kDaまでの、より一層好ましくは10kDaから40kDaまでの範囲である。
【0352】
より好ましくは、担体Z1は、式(A-iva)の構造を有する:
【0353】
【化112】
[式中、
点線は、X0に対する結合点を示し、
tは、80から160までの範囲の整数であり、
wは、2から6までの範囲の整数である]
【0354】
式(A-iva)のwが2又は3であるのが好ましい。
【0355】
最も好ましくは、担体連結プロスタノイドプロドラッグは式(III)の構造を有する:
【0356】
【化113】
[式中、
Z1は、構造
【0357】
【化114】
を有し、
[式中、
点線は、P1に対する結合点を示し、
tは、80から160までの範囲の整数であり、
wは、2又は3である]
各部分P1は、以下の構造を有する:
【0358】
【化115】
[式中、点線はZ1に対する結合点を示す]]。
【0359】
別の一実施形態において、本発明は、任意選択による1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、本発明の1個以上の担体連結プロスタノイドプロドラッグ(複数可)又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。
【0360】
好ましくは、医薬組成物は、担体連結プロスタノイドプロドラッグが血漿非依存的にプロスタノイドを放出することを特徴とする。好ましくは、担体連結プロスタノイドプロドラッグが、酵素非依存的にプロスタノイドを放出する。
【0361】
「血漿非依存性」の語は、pH7.4のバッファー中及びpH7.4の80%緩衝血漿中で独立に37℃で測定した、担体連結プロスタノイドプロドラッグからのプロスタノイドの放出速度論が、50%を超えず、好ましくは40%を超えず、より好ましくは30%を超えず、より一層好ましくは20%を超えず、最も好ましくは10%を超えずに変化することを意味する。pH7.4及び37℃の80%緩衝血漿中で測定した、担体連結プロスタノイドプロドラッグからのプロスタノイドの放出速度論は、pH7.4及び37℃のバッファー中の測定値に比べて増大又は低減し得ることが理解される。好ましくは、担体連結プロスタノイドプロドラッグからのプロスタノイドの放出速度論は、pH7.4及び37℃のバッファーに比べて、pH7.4及び37℃の80%緩衝血漿中で低減しない。
【0362】
「酵素非依存性」の語は、担体連結プロスタノイドプロドラッグからのプロスタノイドの放出に酵素の存在が必要とされないことを意味する。
【0363】
医薬組成物を、以下の段落においてさらに記載する。
【0364】
本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む医薬組成物は、液体組成物として、又は乾燥組成物として提供することができる。適切な乾燥方法は、例えば、噴霧乾燥及び凍結乾燥(フリーズドライ)である。好ましい乾燥方法は凍結乾燥である。
【0365】
本発明の一実施形態において、担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む液体又は乾燥の医薬組成物は単回投与量として提供され、これは医薬組成物を供給する容器が1回分の医薬を含むことを意味する。
【0366】
或いは、担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む液体又は乾燥の医薬組成物は複数投与量の組成物であり、これは医薬組成物を供給する容器が1回分以上の医薬を含む、すなわち、複数投与量の組成物が少なくとも2投与量を含むことを意味する。このような担体連結プロスタノイドプロドラッグの複数投与量の組成物は、これを必要とする異なる患者に用いることができ、又は1人の患者に用いることができ、この場合残りの投与量は、第1の投与量の適用後、必要とされるまで貯蔵される。
【0367】
好ましくは、担体連結プロスタノイドプロドラッグは、1回の適用において少なくとも12時間、治療有効量のプロスタノイドを提供するように、組成物において十分に投薬される。より好ましくは、担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む医薬組成物の1回の適用で、少なくとも1日、例えば、2日、3日、4日、5日、6日又は7日、例えば、2週間、3週間又は4週間、十分である。
【0368】
一実施形態において、本発明は、
(i)本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグが、1回の適用において少なくとも12時間、治療有効量のプロスタノイドを提供するのに十分なように医薬組成物に添加され、且つ/又は
(ii)単一投与量の医薬組成物が、約2mgから約6mgの、好ましくは約4mgのプロスタノイドを含む、
医薬組成物に関する。
【0369】
好ましい一実施形態において、本発明の液体の医薬組成物の単一投与量の体積は、約0.1mlから約10ml、好ましくは約0.5mlから約5ml、より一層好ましくは約0,5mlから約2ml、特に約1mlである。
【0370】
本発明による「約」は、実験上の誤差範囲、特に±5%、又は±10%を意味するものと理解される。
【0371】
医薬組成物の賦形剤は、緩衝剤、等張性調節剤、保存剤、安定化剤、抗吸着剤、酸化保護剤、粘稠化剤/粘稠性増強剤、又は他の補助剤に分類することができる。ある場合には、これらの成分には、二重又は三重の機能があり得る。本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグの医薬組成物は、以下の群から選択される1種以上の賦形剤を含む:
(i)緩衝剤:pHを所望の範囲に維持するための生理学的に許容されるバッファー、例えば、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ヒスチジンナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウム、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、ピルビン酸塩。Mg(OH)2又はZnCO3などの酸中和物(antacid)も用いることができる。緩衝能も、pH安定性に最も感受性である条件に適合するように調節することができる
(ii)等張性調節剤:注射蓄積(depot)時の浸透圧差による細胞の損傷に起因し得る痛みを最小にするため。例としてグリセリン及び塩化ナトリウムがある。効果的な濃度は、血清に対して285〜315mOsmol/kgである想定される浸透圧を浸透圧計によって用いて決定することができる
(iii)保存剤及び/又は抗微生物剤:マルチドーズの非経口調製物には、注射時に患者が感染する危険性を最小にするのに十分な濃度の保存料を添加する必要があり、相当する調節性の必要要件が確立されている。典型的な保存剤には、m-クレゾール、フェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロソール(thimerosol)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、クロロクレゾール、及び塩化ベンザルコニウムが含まれる
(iv)安定化剤:安定化剤は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリンなどのアミノ酸、グルコース、ショ糖、トレハロースなどの糖、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどのポリオール、リン酸カリウム、硫酸ナトリウムなどの塩、EDTA、ヘキサホスフェートなどのキレート剤、二価の金属イオン(亜鉛、カルシウムなど)などのリガンド、他の塩、又はフェノール誘導体などの有機分子であってよい。さらに、オリゴマー又はポリマー、例えば、シクロデキストリン、デキストラン、デンドリマー、PEG、又はPVP、又はプロタミン、又はHASを用いることができる
(v)抗吸着剤:組成物若しくは組成物の容器の内側表面を競合的にコーティングし、又は組成物若しくは組成物の容器の内側表面に対して競合的に吸着させるのに、主にイオン性若しくは非イオン性の界面活性剤、又は他のタンパク質若しくは可溶性ポリマーが用いられる。適切な界面活性剤には、例えば、アルキルサルフェート、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、及びラウリル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸塩、例えば、ラウレス硫酸ナトリウム、及びミレス硫酸ナトリウム、スルホネート、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホネート、ホスフェート、例えば、アルキルアリールエーテルホスフェート、及びアルキルエーテルホスフェート、カルボキシレート、例えば、脂肪酸塩(石鹸)、又はステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ペルフルオロノナノエート、ペルフルオロオクタノエート、オクタニジンジヒドロクロリド(octenidine dihydrochloride)、四級アンモニウム陽イオン、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシ化牛脂アミン(polyethoxylated tallow amine)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、5-ブロモ-5-ニトル(nitor)-1,3-ジオキサン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド、双性イオン、例えば、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-l-プロパンスルホネート、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(cocamidopropyl hydroxysultaine)、アミノ酸、イミノ酸、コカミドプロピルベタイン、レシチン、脂肪アルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、例えば、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルエーテル配糖体、例えば、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、例えば、TritonX-100、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、例えば、ノノキシノール-9、グリセロールアルキルエステル、例えば、グリセリルラウレート、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、例えば、ポリソルベート、ソルビタンアルキルエステル、コカミドMEA及びコカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロック共重合体、例えば、ポロキサマー(Pluronic F-68)、PEGドデシルエーテル(Brij35)、ポリソルベート20及び80があり、他の抗吸収剤には、デキストラン、ポリエチレングリコール、PEG-ポリヒスチジン、BSA、及びHAS、及びゼラチンがある。賦形剤の選択される濃度及びタイプは、避けるべき効果に依存するが、典型的に、界面活性剤の単層がCMC値をちょうど超えた界面で形成される
(vi)溶解(Lyo-)及び/又は凍結保護剤:フリーズドライ又は噴霧乾燥の間、賦形剤は、水素結合の破壊及び水分の除去によってもたらされる不安定化効果に対抗し得る。この目的で糖及びポリオールを用いることができるが、界面活性剤、アミノ酸、非水性溶媒、及び他のペプチドに、相当する前向きの効果も観察されている。トレハロースは、水分が誘発する凝集(moisture-induced aggregation)を低減するのに特に効率的であり、タンパク質の疎水性基が水に暴露されることによって潜在的にもたらされる熱安定性も改善する。マンニトール及びショ糖も、単一の溶解/凍結保護剤として、又は相互に組み合わせてのいずれかで用いることができ、マンニトール:ショ糖の比率が高いほど凍結乾燥したケークの物理的安定性が増強されることが知られている。マンニトールも、トレハロースと組み合わせることができる。トレハロースもソルビトールと組み合わせることができ、又はソルビトールを単一の保護剤として用いることができる。デンプン又はデンプン誘導体も用いることができる。
(vii)酸化保護剤:抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、エクトイン、メチオニン、グルタチオン、モノチオグリセロール、モリン、ポリエチレンイミン(PEI)、没食子酸プロピル、ビタミンE、キレート化剤、例えば、クエン酸、EDTA、ヘキサホスフェート、チオグリコール酸
(viii)展着剤又は拡散剤:それだけには限定されないが、結合組織の細胞内空間に見いだされるヒアルロン酸、多糖など、組織実質内空間(intrastitial space)における細胞外マトリックスの構成成分の加水分解によって結合組織の透過性を修飾する。それだけには限定されないがヒアルロニダーゼなどの展着剤は、細胞外マトリックスの粘性を一時的に下げ、注射された薬物の拡散を促進する。
(ix)他の補助剤、例えば、湿潤剤、粘稠化剤、抗生物質、ヒアルロニダーゼ。塩酸及び水酸化ナトリウムなどの酸及び塩基は、製造の間にpHを調節するのに必要な補助剤である。
【0372】
本発明の別の一態様において、医薬組成物は容器中にある。液体組成物又は乾燥組成物に適する容器は、例えば、シリンジ、バイアル、栓及び封の付いたバイアル、アンプル、及びカートリッジである。特に、本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む液体組成物又は乾燥組成物は、シリンジにおいて提供される。担体連結プロスタノイドプロドラッグを含む医薬組成物が乾燥医薬組成物である場合、容器が二重チャンバー(dual-chamber)シリンジであるのが好ましい。このような実施形態において、前記乾燥組成物は、二重チャンバーシリンジの第1のチャンバーにおいて提供され、再構成溶液は二重チャンバーシリンジの第2のチャンバーにおいて提供される。
【0373】
担体連結プロスタノイドプロドラッグの乾燥組成物を、それを必要とする患者に適用する前に、乾燥組成物を再構成する。再構成は、バイアル、シリンジ、二重チャンバーシリンジ、アンプル、及びカートリッジなど、担体連結プロスタノイドプロドラッグの乾燥組成物が提供される容器において起こり得る。再構成は、予め規定された量の再構成溶液を乾燥組成物に加えることによって行われる。再構成溶液は、無菌の液体、例えば、水又はバッファーであり、これらは保存剤及び/又は抗微生物剤など(例えば、ベンジルアルコール及びクレゾール)のさらなる添加剤を含むことができる。再構成溶液が滅菌水であるのが好ましい。乾燥組成物が再構成される場合、これを「再構成された医薬組成物」又は「再構成された組成物」と呼ぶ。
【0374】
本発明の別の一態様は、薬物として使用するための、担体連結プロスタノイドプロドラッグ、又は薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物である。
【0375】
本発明の別の一態様は、プロスタノイドによって処置、コントロール、遅延又は予防することができる疾患を処置、コントロール、遅延又は予防する方法において用いるための、担体連結プロスタノイドプロドラッグ、又は薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物である。
【0376】
好ましくは、疾患は、肺高血圧症、虚血疾患(例えば、末梢動脈疾患を含む末梢血管疾患、レイノー病及びレイノー症候群を含むレイノー現象、全身性強皮症を含む強皮症、心筋虚血、虚血性発作、腎不全)、指潰瘍(digital ulcer)を含む虚血性潰瘍、心不全(うっ血性心不全を含む)、門脈肺高血圧(portopulmonary hypertension)、間質性肺疾患、特発性肺線維症、抗凝血を必要とする状態(例えば、MI後、心臓手術後)、血栓性微小血管症、体外循環、網膜中心静脈閉塞症、アテローム性動脈硬化、炎症性疾患(例えば、COPD、乾癬)、高血圧(例えば、子癇前症)、生殖及び分娩、癌又は細胞増殖が非制御である他の状態、細胞/組織の保存、並びにプロスタサイクリン処置が有益な役割を有すると思われる他の新たに出現した治療分野、好ましくは肺動脈高血圧症から選択される。
【0377】
最も好ましくは、担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物を、肺動脈高血圧症を処置、コントロール、遅延又は予防する方法において用いる。
【0378】
さらに別の一態様は、上記に言及した疾患及び好ましい疾患など、プロスタノイドによって処置、コントロール、遅延又は予防することができる疾患を処置、コントロール、遅延又は予防するための薬物の調製における、担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物の使用である。
【0379】
本発明の別の一態様は、上記に言及した疾患及び好ましい疾患など、プロスタノイドによって処置、コントロール、遅延又は予防することができる1つ以上の疾患の処置を必要とする哺乳動物患者、好ましくはヒトにおける処置、コントロール、遅延又は予防の方法であって、前記患者に治療有効量の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0380】
別の一態様において、薬物として用いるための、又は処置、コントロール、遅延若しくは予防の方法における、プロドラッグ、薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物は、吸入、局所、経腸、非経口、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳室内又は胸骨内投与によって投与する。投与が、皮下、筋肉内又は静脈内の注射又は注入によるのが好ましく、皮下注射又は注入によるのが最も好ましい。
【0381】
したがって、本発明の別の一態様は、吸入、局所、経腸、非経口、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳室内又は胸骨内投与によって投与する、処置、コントロール、遅延又は予防のための薬物の調製における、プロドラッグ、薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物の使用である。投与が、皮下、筋肉内又は静脈内の注射又は注入によるのが好ましく、皮下注射又は注入によるのが最も好ましい。
【0382】
したがって、本発明の別の一態様は、上記に言及した疾患及び好ましい疾患など、プロスタノイドによって処置、コントロール、遅延又は予防することができる1つ以上の疾患の処置を必要とする哺乳動物患者、好ましくはヒトにおける処置、コントロール、遅延又は予防の方法であって、前記患者に治療有効量の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物を投与することを含み、治療有効量の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は本発明の医薬組成物を、吸入、局所、経腸、非経口、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳室内又は胸骨内投与によって投与する方法である。投与が、皮下、筋肉内又は静脈内の注射又は注入によるのが好ましく、皮下注射又は注入によるのが最も好ましい。
【0383】
本発明の好ましい一態様は、それを必要とする対象に、有効量の本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグ又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、肺高血圧症を処置する方法である。好ましくは、本発明のこのような担体連結プロスタノイドプロドラッグにおいて、部分PG0はベラプロスト部分であり、すなわち、式(i-c)のものである。
【0384】
本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグ又は薬学的に許容されるその塩を含む乾燥医薬組成物を投与する好ましい方法は、吸入による。
【0385】
別の一実施形態において、本発明の第1の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物を、第1の投与方法によって投与し、本発明の第2の担体連結プロスタノイドプロドラッグを、同時に又は連続的にのいずれかで、第2の投与方法によって投与する。前記第1及び第2の投与方法は、吸入、局所、経腸、非経口、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳室内又は胸骨内投与のあらゆる組合せであってよい。
【0386】
別の一実施形態において、本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグを、1つ以上のさらなる薬物(複数可)と一緒に投与する。1つ以上のさらなる薬物(複数可)が、プロスタサイクリン若しくはプロスタグランジンなどの心血管薬剤、NO活性のメディエーター、カルシウムチャネルブロッカー、ホスホジエステラーゼ阻害薬、利尿薬、内皮アンタゴニスト、又は抗血小板薬を含む群から選択されるのが好ましい。1つ以上のさらなる薬物(複数可)及び本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグを、混合薬として投与するのが好ましい。
【0387】
別の一実施形態において、本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグ若しくは薬学的に許容されるその塩、又は医薬組成物を、吸入のプロスタノイドと組み合わせて投与する。
【0388】
本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグが1種以上の酸性基又は塩基性の基を含む場合、本発明は、これらの相当する薬学的に許容される塩、特にこれらの製薬上利用可能な塩も含む。このように、酸性基を含む本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグを、本発明にしたがって、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩として、又はアンモニウム塩として用いることができる。このような塩のより正確な例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はアンモニア若しくは有機アミンとの塩、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、又はアミノ酸との塩が含まれる。1個以上の塩基性基、すなわち、プロトン化することができる基を含む本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグが存在することができ、本発明にしたがって無機酸又は有機酸とのこれらの付加塩の形態で用いることができる。適切な酸の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、及び当業者には知られている他の酸が含まれる。本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグが分子中に酸性基及び塩基性基を同時に含む場合、本発明は、記載した塩の形態に加えて、分子内塩又はベタイン(双性イオン)も含む。それぞれの塩は、当業者には知られている通例の方法によって、例えば、これらを溶媒若しくは分散剤中で有機若しくは無機の酸若しくは塩基と接触させることによって、又は他の塩との陰イオン交換若しくは陽イオン交換によって得ることができる。本発明は、生理学的適合性が低いため、医薬品において用いるのに直接適さないが、例えば、化学反応に対する中間物質として、又は薬学的に許容される塩を調製するために用いることができる、プロドラッグの塩も全て含む。
【0389】
本発明の別の一目的は、本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグ又は薬学的に許容されるその塩を合成するための方法である。本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグ又はこのようなプロドラッグの前駆体は、知られている方法によって、又は以下に記載する反応順序にしたがって調製することができる。本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグ又はその前駆体の合成において用いられる出発材料は、知られており、若しくは市販されており、又は知られている方法、若しくは以下に記載する通り調製することができる。
【0390】
前駆体を含めた、本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグを合成するための反応は全て、それ自体、当業者にはよく知られており、有機化学の標準的な文献に記載されている手順にしたがって、又は類似して、標準の条件下で行うことができる。個々の場合の事情に応じて、担体連結プロスタノイドプロドラッグ又はその前駆体の合成の間の副反応を避けるために、保護基を導入することによって官能基を一時的にブロックし、合成の後の段階でこれらを脱保護し、又は前駆体の基の形態の官能基を導入し、これを後の反応ステップにおいて所望の官能基に変換するのが必要であり、又は有利であり得る。個々の場合において適切である、このような合成の戦略、並びに保護基、及び前駆体の基は、当業者には知られている。所望により、担体連結しているプロスタノイドプロドラッグ、又はその前駆体を、慣例的な精製手順によって、例えば、再結晶又はクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0391】
一実施形態において、本発明による担体連結プロスタノイドプロドラッグ又は薬学的に許容されるその塩は、プロスタノイドPのカルボン酸をプロスタノイド部分試薬P-Yに変換するステップ(Yは脱離基である)、引き続き試薬P-Yをヒドロキシル基含有の可逆性のプロドラッグリンカー試薬X0-OHと反応させるステップ、このようにカルボキシルエステル連結を形成することによってプロスタノイド部分-可逆性のプロドラッグリンカーコンジュゲートPG0-X0を産生するステップを含む方法によって調製することができる。後で、PG0-X0を担体部分Z1に結合させて、本発明によるカルボン酸基を含む生物学的に活性な部分の担体連結プロスタノイドプロドラッグを得ることができる。或いは、担体部分Z1は、すでにX0-OHに結合していてもよい。或いは、部分PG0-X0を、Z1の反応性官能基と反応させてもよい。或いは、部分Z1-X0を含む試薬を、優先的に活性化させた生物学的に活性な酸P-Yと引き続き反応させるために調製してもよい。Pはプロスタノイドであることが理解される。
【0392】
調製のためのさらなる方法は以下のステップを含むことができる:
- プロスタノイドPG0-OHをリンカーHOOC-X0'と反応させてPG0-L0-X0'を形成させるステップ、及び
- PG0-L0-X0'を担体X0''yZ1とさらに反応させて、式(I)のプロドラッグを形成させるステップ(式中、X0'及びX0''が反応してX0を生じる)。
【0393】
本発明の担体連結プロスタノイドプロドラッグの合成に関与しないプロスタノイドの官能基は、当業者には知られている適切な保護基で保護され得ることが理解される。
【0394】
適切な脱離基は当業者には知られている。Pに結合している場合、Yは、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、2-チオオキソ-チアゾリジニル、又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルであるのが好ましい。
【0395】
適切な保護基は、カルボン酸基を保護するための2,4-ジメトキシベンジルオキシ基、及びチオール基を保護するためのトリチルであってよい。
【0396】
[実施例]
材料、方法、及び分析:
化学薬品及び製剤原料:
【0397】
ベラプロストはLung LLCから入手した。Cis-シクロヘキサンジカルボン酸無水物はAlfa Aesar GmbH & Co KG、Karlsruhe、ドイツから購入した。6-(S-トリチルスルファニル)ヘキサンアミンは、WO-A 2009/133137にしたがって合成した。この作業で用いたPEGは、ベルギー、GrobbendonkのNOF Europe N.V.から得た。他の化学薬品は全て、Sigma Aldrich GmbH、Taufkirchen、ドイツ、Roth、Karlsruhe、ドイツ、又はNova Biochem、Darmstadt、ドイツから購入した。分析用RP-HPLC用の水及びアセトニトリルはBiosolve B. V.から、TFAはThermo scientificから購入した。分取HPLC用の水及びアセトニトリルはそれぞれ、Roth又はJ. T. Bakerから購入した。Wistar系ラットの血漿はInnovative Researchから入手した。
【0398】
生成物の精製
順相の精製を、Biotage「Isolera four」精製系Biotage AB、スウェーデン上で行った。Biotage KP-Silシリカカートリッジを固定相として用い、n-ヘプタンと酢酸エチルとの勾配を適用した。254nm及び280nmに生成物が検出され、収集された。
【0399】
分取RP-HPLCには、Waters 600コントローラー、及びWaters XBridge(商標)BEH300 Prep C185μm、150×10mm、流速6ml/分、又はWaters XBridge(商標)BEH300 Prep C18 10μm、150×30mm、流速40ml/分を装着した、2487紫外可視吸光検出器(Dual Absorbance Detector)を用いた。溶離液A(0.05v/v% TFA又は0.01v/v% HClを含む水)及び溶離液B(0.05v/v% TFA又は0.01v/v% HClを含むアセトニトリル)の勾配を用いた。
【0400】
LC/MS分析
分析用RP-HPLC/ESI-MSを、Acquity PDA検出器及びZQ 4000 ESI装置を装着した、Waters Acquity UPLC(流速:0.25mL/分、溶媒A:UP-H2O+0.04%TFA、溶媒B:UP-アセトニトリル+0.05%TFA)上で行った。以下の固定相を用いた:Waters ACQUITY UPLC BEH300 C18 RPカラム(2.1×50 mm、300Å、1.7μm)、Thermo Scientific Hypersil GOLD PFP (2.1×50mm、粒子サイズ1.9μm)、Phenomenex Kinetex XB C-18 100 A (2.1×100mm、粒子サイズ1.7μm)。
【0401】
UPLC-MS/MSを、Waters Acquity C18カラム(2.1×100mm、粒子サイズ1.7μm)を装着し、Agilent QQQ 6460(Software Masshunter)に接続したAgilent 1290 UPLC上で行った。
【0402】
[実施例1]
Dmob保護したベラプロスト1bの合成
N,O-ビス(トリメチルシリル)-アセトアミド(0.6mL、2.45mmol、10.7eq)を、室温で、ベラプロストカリウム塩(100mg、0.229mmol、1eq)のTHF溶液(0.63mL)に加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。TLC分析(シリカ、溶離液n-ヘプタン/酢酸エチル1:2v/v))により、完全に変換したことを確認した。次いで、反応混合物を酢酸エチル(10mL)で希釈し、NaHCO3の飽和水溶液で2回(各10mL)、食塩水(7mL)で1回洗浄した。有機相を、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。次いで、得られた粗製1a(およそ200mg)を、ジクロロメタン(2.5mL)に溶解した。2,4-ジメチルベンジルアルコール(65mg、0.389mmol、1.7eq)、DMAP(25mg、0.206mmol、0.9eq)、及びEDC.HCl(66mg、0.343mmol、1.5eq)を連続的に加え、わずかに混濁した混合物を室温で14時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(15mL)で希釈し、0.1M HCl/食塩水(6:1v/v、15mL)、0.1M HCl(10mL)、及び食塩水(10mL)で洗浄した。クエン酸のメタノール溶液(4:96w/w、7mL)を有機相に加え、得られた混合物をr.t.で12分間撹拌した。TLC分析(シリカ、溶離液n-ヘプタン/酢酸エチル1:2(v/v))により、ヒドロキシル基の完全な脱保護を確認した。溶液を、5%NaCl水溶液(10及び7mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製生成物を、自動化フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
収率:105mg(0.191 mmol、84%)。
【0403】
【化116】
【0404】
[実施例2]
【0405】
【化117】
ベラプロストリンカーチオール3の合成
カルボン酸(1R,2S)-2(30.4mg、57.41μmol、1.5eq、WO2013/024052A1を参照されたい)、EDC.HCl (25.7mg、133.96μmol、3.5eq)、及びDMAP(16.4mg、133.96μmol、3.5eq)を、dmob-ベラプロスト1b(21mg、38.27μmol、1.0eq)に加え、CH2Cl2(0.3mL)に溶解した。反応混合物をr.t.で20時間撹拌した。酢酸エチル(10mL)を加えた後、溶液を0.1M HCl(3×5mL)で洗浄した。次いで、水相を酢酸エチル(2×5mL)で戻し抽出し、有機相を合わせ、食塩水(1×7 mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮した。粗製生成物をHFIP(3mL)に溶解し、次いで、TFA(75μL)及びTES(75μL)を連続的に加えた。この手順の間、反応混合物の色は、深紅色から緑色から無色に変化した。反応混合物をr.t.で40分間撹拌し、反応をUPLCによってモニタリングすることで、生成物の形成が明らかになった。さらなるHFIP(7mL)を加え、反応混合物をヘプタン(6×20mL)で抽出した。HFIP相をジクロロメタン(20mL)で希釈し、水(3×20mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮して乾燥させた。粗製材料を7:3 MeCN/H2O 2mLに溶解し、分取RP HPLCによって精製した。3を含む画分をプールし、凍結乾燥させた。凍結乾燥させたHPLC溶液により、非結晶性無色固体のチオール3を得た。
収率:2.7mg(4.04μmol、11%)。
【0406】
[実施例3]
ベラプロストリンカーチオール5及び6の合成
カルボン酸(1S,2R)-4(23.2mg、43.74μmol、1.5eq、参照WO2013/024052A1において詳述されるエナンチオマー分離から単離したもの)、EDC.HCl(19.6mg、102.06μmol、3.5eq)、及びDMAP (12.5mg、102.06μmol、3.5eq)を、dmob-ベラプロスト1b(16mg、29.16μmol、1.0eq)に加え、CH2Cl2(0.225mL)に溶解した。反応混合物をr.t.で15時間撹拌した。酢酸エチル(10mL)を加えた後、溶液を0.1M HCl(3×5mL)で洗浄した。次いで、水相を、酢酸エチル(2×5mL)で戻し抽出し、有機相を合わせ、食塩水(1×7mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮した。粗製混合物をHFIP(2.5mL)に溶解し、次いでギ酸(125μL)及びTES(62.5μL)を連続的に加えた。この手順の間、反応混合物の色は深紅色から緑色から無色に変化した。次いで、反応混合物をr.t.で80分間撹拌し、反応をUPLCによってモニタリングすることにより、生成物の形成が明らかになった。HFIP溶液をジクロロメタン(15mL)で希釈し、水(3×15mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮して乾燥させた。粗製材料を7:3 MeCN/H2O 2mLに溶解し、分取RP HPLCによって精製した。画分を含む生成物をプールし、凍結乾燥させた。凍結乾燥させたHPLC溶液により、非結晶性無色固体のチオール5及び6を得た。
【0407】
収率:5に対して7.0mg(10.48μmol、36%)。
6に対して3.8mg(5.69μmol、20%)。
【0408】
【化118】
【0409】
[実施例4]
ベラプロストリンカーチオール3、5及び6と5kDa PEGマレイミド7とのPEG化反応
【0410】
【化119】
保存溶液の調製:凍結乾燥させた化合物(2.3mg、3.44μmol、1.5eq)を9:1 MeCN/H2O(0.7mL)に溶解することにより、ベラプロストリンカーチオール3、5、6からチオール保存溶液を調製した。PEG 5kDaマレイミド7(12.3mg、2.29μmol、1.0eq、Sunbright ME 050MA、NOF Corporation)を1:1 MeCN/H2O (1mL)に溶解することによってPEG保存溶液を調製した。
【0411】
反応手順:各リンカーチオールに対して、r.t.でチオール保存溶液を撹拌しながらPEG保存溶液に加えた。リン酸バッファーpH7.5を加えることにより反応を開始させ、pH試験紙によって示されるpH約6.5とした。澄明な溶液をr.t.で1時間撹拌した。0.01% conc. HCl (v/v)を含む1mL H2Oを加えることによって反応をクエンチした。反応混合物を希釈したものを、分取RP HPLCによって精製した。純粋な生成物画分をプールし、凍結乾燥させて、非結晶性無色固体の、対応するPEGコンジュゲートを得た。
収率:8.4mg(8)、11.5mg(9)、11mg(10)
【0412】
[実施例5]
pH7.40、37℃、in vitroの、コンジュゲート8、9、10からのベラプロストの放出速度論の決定
TransCon PEGベラプロストコンジュゲート8、9、及び10(各々約3〜4mg)を、加水分解バッファー(60mMホスフェート、3mM EDTA、+0.01% Tween-20、pH7.40)1mLに溶解し、0.22μm滅菌フィルターを通して濾過した。澄明な溶液100μLを加水分解バッファー900μLで希釈し、ペンタフルオロフェノール(PFP)の水溶液(20mg/mL)1μLでスパイクし(注入誤差を埋め合わせるための内部標準(IS))、pH値7.40をpH電極によってチェックし、試料を37℃でインキュベートした。所与の時間点に、溶液を激しく混合し、遠心分離し、試料(20μL)を抜き取り、UPLCによって分析した。
【0413】
次いで、ベラプロスト放出の100%値を決定するために、インキュベートした溶液のアリコートの完全な加水分解を行った。各インキュベートした溶液50μL及び0.5M NaOH 25μLをr.t.で30分間激しく撹拌し、次いで酢酸25μLを加え、得られた溶液を短時間混合した。UPLCによって分析した後、ベラプロスト/ISの面積比を算出した。各時間点の分析後、ベラプロスト/ISの比を算出し、放出されたベラプロストのパーセント値を、完全な加水分解後の同じ比と比べることにより算出した。
【0414】
次いで、放出されたベラプロストのパーセント値を、インキュベート時間に対してプロットした。Prism(登録商標)ソフトウエア(バージョン5.02)を用いて、非線形の回帰分析を行い、以下の等式に示す通り、pH7.40、37℃でのベラプロストの放出を算出した:
y=y0+(プラトー-y0)・(1-e-kx)
y=放出されたベラプロストの%、y0=曲線の起点、プラトー=100、k=TransCon PEGベラプロストからのベラプロストの放出に対する速度定数、x=インキュベート時間。
放出の半減期の測定値は、1.7日(8)、3.1日(9)、及び5.3日(10)であった。
【0415】
[実施例6]
ラット血漿中でのコンジュゲート8、9、10からのベラプロストの放出速度論の決定
ラット血漿におけるTransCon PEGベラプロスト314dのインキュベート
ラット血漿(Wistar系ラットからのLiヘパリン血漿)1.2mLを、インキュベートバッファー(1000mM HEPES、3mM EDTA、pH7.4)150μL、及び合成したTransCon PEGベラプロストコンジュゲート(c=加水分解バッファー中約0.1〜0.25mg/mL)150μLと混合した。混合物のpHが7.4であることをpH電極によって確認し、インキュベートの時間経過にわたって別々の反応チューブ中でモニタリングした。混合物を、Eppendorfサーモミキサー中37℃でインキュベートした。
【0416】
所与の時間点に、試料100μLを引き出し、液体窒素中で直ちに凍結させた。引き続き、さらなる処理加工まで試料を-80℃のフリーザーで貯蔵した。t0値を決定するためにインキュベートの前に、及び塩基性加水分解後のベラプロストの合計含量を定量するために、100μLのアリコートを3つ各調製物から引き出した(2回反復)。
【0417】
血漿試料中の放出されたベラプロストの相対的定量
血漿及びバッファーの試料(100μL)を全て、0〜5℃の氷上で解凍した。内部標準として、トレプロスチニルの保存溶液(c=メタノール/水中2.97μg/mL、20μL)を各血漿試料に加えた。ボルテックスにかけ、短時間(1〜2秒)遠心分離した後、試料を全てOstroウエルプレート中に移し、ギ酸1体積%を含むアセトニトリルを氷冷したもの3体積当量(volume equivalent)を速やかに加えることにより沈殿させた。試料を、ピペットの手操作で3回吸い込んで吐き出すことによって混合した。ろ過には、Ostroプレートを引き続き陽圧のプロセッサ上に配置し、約2分間、気体流(Ar)を18〜20psiに設定した。ろ液を、2mL 96-深型ウエルプレート中に収集した。引き続き、ウエルを、ギ酸を1体積%含む氷冷したアセトニトリル100μLで2回すすいだ(気体流:18〜20psi、2×2分)。溶出液を全て(650〜900μL)、エッペンドルフチューブ中に移し、希釈溶媒(10mMギ酸アンモニウム、pH4.0/アセトニトリル7:3[v/v])300〜550μLで満たして最終体積を約1200μLとした。最後に、試料溶液をボルテックスにかけることによって十分に混合し、試料のアリコート150μLをUPLC-MS/MS分析用にUPLCバイアル中に調製した。
【0418】
全体的な加水分解用の試料を0.5M LiOH溶液(50μL)でさらにスパイクした後、沈殿させた。これらのバイアルを注意深く閉じ、室温で60分間、400rpm水平方向に振盪した。1M HCl(25μL)を加えた後、これを上記に記載したのと同じ方法で沈殿させた。
【0419】
UPLC-MS/MS分析を、Agilent 6460 QQQ質量分析計上で行った。全ての試料において、ベラプロストシグナルの積分の測定値を内部標準に対して較正した。全ての時間点に対して、放出されたベラプロストのベラプロスト全体(全体的な加水分解によって決定した)に対する比を算出した。これらのデータから、放出半減期は、8では2.1±0.14日、9では9.7±0.93日、10では5.4±0.78日であると算出された。
【0420】
【表1】
【配列表】
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