(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290257
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】アクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/377 20060101AFI20180226BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20180226BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
C07C51/377
C07C57/04
!C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-552085(P2015-552085)
(86)(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公表番号】特表2016-503071(P2016-503071A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2014050550
(87)【国際公開番号】WO2014111363
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】102013000602.3
(32)【優先日】2013年1月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フランツ−フェリックス クッピンガー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン クラソヴスキ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マイ
(72)【発明者】
【氏名】ミン−ザエ オー
【審査官】
黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/106099(WO,A1)
【文献】
特表2005−521718(JP,A)
【文献】
特開2011−225533(JP,A)
【文献】
特表2010−501526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸を脱水することによりアクリル酸を製造する方法において、脱水するために、ヒドロキシカルボン酸を、150℃より高い温度で、3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種の金属塩および水を含有する、この温度で液状の混合物と接触させ、その際、脱水すべきヒドロキシカルボン酸として、3‐ヒドロキシプロピオン酸または乳酸を使用することを特徴とする、3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸の脱水によるアクリル酸の製造方法。
【請求項2】
前記混合物の前記温度が、160〜300℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属塩が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシカルボン酸の金属塩を製造するために、金属炭酸塩または式(I)
【化1】
[式中、xは1または2、zは1または2、かつMは金属であるが、ただしその際zが2である場合には、xは1でなければならない]
の1つまたは複数の金属塩を使用することを特徴とする、請求項1〜3までの
いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水すべきヒドロキシカルボン酸と、前記ヒドロキシカルボン酸の金属塩のベースとなっているヒドロキシカルボン酸が同じものであることを特徴とする、請求項1〜4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物は、銅抑制剤、フェノチアジン、ヒドロキノンおよびそのメチルエーテル、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1つの重合禁止剤を有することを特徴とする、請求項1〜5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物の前記重合禁止剤の合計の割合は、0.05〜2.5質量%であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物上の前記圧力は、500mbar未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水すべきヒドロキシカルボン酸と前記混合物との接触は、このヒドロキシカルボン酸を前記混合物中に導入することにより行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記脱水すべきヒドロキシカルボン酸の前記混合物中への導入は、注入口での液体の全高さに対して、混合物の表面下の少なくとも5%かつ最大で75%下方の位置にある注入口を介して行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記脱水すべきヒドロキシカルボン酸として乳酸を使用することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸の脱水による、アクリル酸の製造方法に関し、この方法は、ヒドロキシカルボン酸を、150℃より高い温度で、3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種の金属塩および水を含有する、この温度で液状の混合物と接触させることにより行われる。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、重要な中間生成物であり、とりわけその重合体の形で使用される。最もよく知られているアクリル酸の使用は、ポリアクリル酸をベースとする超吸収性ポリマーの製造である。
【0003】
アクリル酸の製造は、プロペンのアクロレインへの酸化および続いて行われるアクリル酸への更なる酸化を介して、古典化学的に行われる。
【0004】
比較的新しい方法では、他の原料の使用によりアクリル酸を製造することが試みられている。したがって、例えば、WO2008/061819に、環状エステルを触媒の存在下に(メタ)アクリル酸へと反応させる、(メタ)アクリル酸の製造方法((メタ)アクリル酸という名称は、メタクリル酸もアクリル酸も含むべきである)が記載されている。
【0005】
最近では、経済的かつ生態学的な考量に基づいて、他の原料、とりわけ再生可能な原料をアクリル酸またはメタクリル酸の製造に使用する多くの試みがなされてきた。
【0006】
WO2008/145737は、再生可能な原料から、とりわけ炭水化物からおよび/またはグリセリンから生物工学的に製造された、3‐ヒドロキシイソ酪酸の脱水によるメタクリル酸の製造を記載している。前記脱水は、液相中、200〜500mbarの範囲内の圧力で、200〜230℃の範囲内の温度で、かつ触媒としてアルカリ金属イオンの存在下で行われる。
【0007】
ドイツ特許出願公開第1768253号明細書は、同様に、α‐ヒドロキシイソ酪酸(HIBS)の脱水によりメタクリル酸を製造するこのような方法を記載しており、この方法は、HIBSを液相中、少なくとも160℃の温度で、α‐ヒドロキシイソ酪酸の1種の金属塩からなる脱水素触媒の存在下に反応させることを特徴としている。この場合、HIBS溶融液中で、適切な金属塩の反応によりその場で製造される、HIBSのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が特に適切である。該特許によれば、HIBSから出発して95%までのメタクリル酸収率が記載されており、その際、連続的なプロセスの供給流は、HIBSおよび約1.5質量%のHIBSアルカリ塩とからなる。
【0008】
上記の両者の文献は、アクリル酸の製造方法を記載していない。
【0009】
Procter&GambleのWO2013/155245は、気相中での乳酸のアクリル酸への脱水の場合に、触媒としてリン酸塩の混合物を使用することを記載している。
【0010】
気相中での脱水のために、反応物を、まず気相中に導入しなければならない。このことは、例えば、反応物に熱エネルギーが影響を及ぼす場合、頻繁に反応物の分解を導き、このことは、例えばコークス化によりはっきりと現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2008/061819
【特許文献2】WO2008/145737
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第1768253号
【特許文献4】WO2013/155245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の課題は、従来技術による方法の欠点を回避する、ヒドロキシカルボン酸からアクリル酸を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
意外なことに、アクリル酸を、請求項に記載のような方法で、ヒドロキシカルボン酸から製造できることが見出された。
【0014】
したがって本発明の対象は、請求項に記載され、かつ以下の説明に引き続き記載されているような、カルボン酸の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による方法は、再生可能な原料から得ることのできる乳酸を使用して、アクリル酸を製造することができるという利点を有する。
【0016】
本発明による方法の更なる利点は、存在する原料供給源に応じて、3‐ヒドロキシプロピオン酸と乳酸との間で原料を変更することができるということである。
【0017】
液相の相境界の内部もしくは相境界での不均一系気相脱水に対する更に大きな利点は、事前の、完全な有機酸の気化を省略することができることである。これらの気化の場合、蒸発温度および分解温度が相互に近接しているため、強いコークス形成を生じる。これは、非常に多くの付加的に供給される水によってのみ、最小限に抑えることができるが、この水は一方では気化し、かつ後続のステップにおいて、手間をかけて再び分離しなければならない。溶融塩を用いた直接反応の場合、この強い希釈を大幅に省略することができ、かつ濃縮された溶液で作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】実施例1における3‐HPのアクリル酸への脱水に関するクロマトグラム。
【
図3】実施例2における乳酸のアクリル酸への脱水に関するクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による物品は、本発明がこれらの例示的な実施態様に制限されることなく、以下に一例として記載されている。以下に範囲、一般式または化合物種が記載されている場合、これらは、明示的に言及している対応する範囲または化合物の群のみではなく、個々の値(範囲)または化合物を取り出すことにより得ることのできる、全ての部分範囲および化合物の部分群をも含むべきである。本明細書の範囲内で文献が引用される場合、実態の内容に関して引用されたその文献の内容は、とりわけ実態の内容に関して、本発明の開示内容に完全に含まれるものとする。百分率表示は、何も記載がなければ、質量パーセントで表示されている。以下に平均値が記載される場合、何も記載がなければ、質量平均である。以下に測定により決定されたパラメーターが記載される場合、前記測定は、何も記載がなければ、25℃の温度で101325Paの圧力で行われたものである。
【0020】
3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸の脱水による本発明によるアクリル酸の製造方法は、脱水のためヒドロカルボン酸を150℃より高い温度で、3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種の金属塩および水を含有する、この温度で液状の混合物と接触させることにより優れている。水の割合は、水とヒドロキシカルボン酸の金属塩との合計に対して、有利には0.5〜95質量%、好ましくは1〜80質量%、かつ特に好ましくは2〜25質量%である。
【0021】
前記混合物は、3個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸および水の溶液に、相応する金属塩、有利には金属炭酸塩または以下の式(I)
【化1】
[式中、xは1または2、zは1または2、かつMは金属であり、有利にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、好ましくはNa、BaまたはKであるが、ただしその際zが2である場合には、xは1でなければならない]
の1つまたは複数の金属塩を配合することにより生成される。添加された金属塩の量により、混合物中にまだ遊離酸が存在しているかどうかを調整することができる。有利には、ヒドロキシカルボン酸の金属塩と遊離のヒドロキシカルボン酸とのモル比が、100対1〜1対100であるような量で、混合物の金属塩を添加する。金属塩として金属炭酸塩が使用される場合、ヒドロキシカルボン酸の金属塩対遊離のヒドロキシカルボン酸のモル比は、好ましくは10対1〜2対1かつ特に好ましくは5対1〜3対1である。金属塩として式(I)の金属塩が使用される場合、ヒドロキシカルボン酸の金属塩と遊離のヒドロキシカルボン酸とのモル比は、好ましくは1対50〜1対10、かつ特に好ましくは1対40〜1対20である。
【0022】
有利には、温度、とりわけ、ヒドロキシカルボン酸として3‐ヒドロキシプロピオン酸を使用する場合には、好ましくは混合物の温度は160〜350℃、170〜300℃、かつ特に好ましくは180〜200℃未満である。
【0023】
本発明による方法は、可能な限り完全な混合を達成するために、有利には撹拌下で行われるか、または同様の作用をする手段の使用下で行われる。
【0024】
金属塩は、有利には、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。金属塩が金属炭酸塩である場合、金属塩は、好ましくは、アルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩、かつ全く特に好ましくは、カリウム塩である。金属塩が式(I)の金属塩である場合には、これは、好ましくは、KH
2PO
4、K
2HPO
4、Na
2HPO
4またはBaHPO
4、または1つまたは複数の、有利には、前述した塩の2つの混合物、特に好ましくはKH
2PO
4、K
2HPO
4またはNa
2HPO
4とBaHPO
4との混合物から選択される。式(I)の金属塩の混合物が使用される場合、有利には、塩が等モル比で存在する、金属塩のそのような混合物が使用される。式(I)の塩を、例えばWO2013/155245A2に記載されているように製造することができるか、または該文献に記載された情報源に関連することができる。
【0025】
使用される、脱水すべきヒドロキシカルボン酸および金属塩のベースとなっているヒドロキシカルボン酸は、有利には同じである。原料として異なるヒドロキシカルボン酸を連続的に使用するべき場合、混合物を同様に交換することが好ましい。
【0026】
前記混合物は、有利には、少なくとも1つの重合抑制剤(アクリル酸および/または使用されるヒドロキシカルボン酸の重合を阻止する化合物)、好ましくはフェノチアジンまたはヒドロキノンまたはそのメチルエーテル、またはこれらの混合物、特に好ましくはヒドロキノンおよび/またはそのメチルエーテル、全く特に好ましくはヒドロキノンおよびp‐メトキシフェノールから選択される重合抑制剤を有する。付加的に、または前述の重合抑制剤の代わりに、銅抑制剤、例えば銅カルバミン酸塩、または銅粉末をもまた添加することができる。液体混合物の重合禁止剤の合計の割合は、有利には0.05〜2.5質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0027】
本発明による方法は、大気圧または減圧で行うことができる。有利には、前記方法は減圧で行われる。前記液体混合物上の圧力は、500mbar未満が好ましく、好ましくは200mbar未満、かつ特に好ましくは50〜100mbarである。
【0028】
脱水すべきヒドロキシカルボン酸と前期混合物との接触は、脱水すべきヒドロキシカルボン酸が混合物上または混合物中へ導入されるように行うことができる。有利には、脱水すべきヒドロキシカルボン酸が混合物中へ導入される。好ましくは、液体混合物中への脱水すべきヒドロキシカルボン酸の導入は、注入口での液体の全高さに対して、混合物の表面の少なくとも5%かつ最大で75%、有利には、10〜30%下方の位置にある注入口を介して行われる。
【0029】
3個の炭素原子を有する、脱水すべきヒドロキシカルボン酸として、有利には3‐ヒドロキシプロピオン酸または乳酸、好ましくは乳酸が使用される。
【0030】
本発明による方法は、当業者に公知の全ての装置内で行うことができ、装置内では、流体を所望の反応温度に加熱することができ、その際有利には、反応成分を所望の温度条件下で液体の形態で維持するために、装置に充分な圧力をかけることができる。
【0031】
脱水すべきヒドロキシカルボン酸を、純物質としてまたは組成物の形で前記混合物と接触させることができる。有利には、脱水すべきヒドロキシカルボン酸を、組成物として使用する。有利には、この組成物は、脱水すべきヒドロキシカルボン酸に加えて水を含有する。組成物中の水の含有量は、脱水すべきヒドロキシカルボン酸および水からの合計に対して、有利には10〜55質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0032】
また、前記組成物は、金属塩、好ましくは混合物の製造に使用された金属塩と同一の金属塩を含有することができる。組成物中の金属塩の割合は、前記組成物に対して、有利には0.01〜1質量%、好ましくは0.2〜0.5質量%である。
【0033】
さらに、前記組成物は、重合禁止剤、有利には好ましいとして上記に記載された重合禁止剤を含有することができる。組成物中の重合禁止剤の割合は、前記組成物に対して、有利には0.05〜2.5質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0034】
本発明を、
図1〜
図3を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、このような実施形態に限定されるべきではない。
【0035】
図1は、実施例1にて使用された試験構成を概略的に示している。1つの栓および1つの羽根型撹拌機を装備している、加熱可能な丸底フラスコR内には、2本のガラス管が通じている。左側のガラス管G1は、ガラス管が丸底フラスコ内にある液体混合物中に突出するような長さに構成され、かつ丸底フラスコ内の物質の供給のために使用される。右側のガラス管G2は、これより短く、かつ気体室内に達しているのみである。右側のガラス管G2は、真空ポンプVと結合されている。真空ポンプと丸底フラスコの間には、右側のガラス管を介して丸底フラスコを離れ、回収される得る凝縮物質からサンプルを分溜する冷トラップKがある。
【0036】
図2および
図3は、実施例1および2からの検査される試料のクロマトグラムを示している。
【0037】
以下に記載の実施例において、本発明を例示的に記載するが、本発明の適用範囲は全明細書および全請求項によって定まるものであり、実施例に挙げられる実施形態に限定されるべきではない。
【実施例】
【0038】
実施例1:3‐ヒドロキシプロピオン酸(3‐HP)のアクリル酸への脱水
図1に示すように、実験装置の500mL丸底フラスコ内へ、水中60質量%溶液として3‐HPを1mol、K
2CO
3を0.4mol、ヒドロキノンを2gおよびp‐メトキシフェノール(MEHQ)を2g装入した。この混合物を撹拌しながら、加熱マントルを用いて、1時間以内に180℃に加熱し、その際留去された水を除去した。この箇所で5cmの高さを有していた液体混合物中へ約1cm突出したガラス管G1を介して、ヒドロキノンを0.1質量%、MEHQを0.1質量%および加えて水中22質量%溶液として3‐HPを99.8%含有する組成物の約120g/hを、HPLCポンプを用いて導入した。全試験時間中、真空ポンプを用いてガラス管G2を介して約95mbarの減圧を適用した。G2を介して取り出されたガス状物質を、ガラス冷却器(下降集中コンデンサー(absteigender Intensivkuehler))を介して液化させ、かつ分別して回収した。残りの蒸気状の低沸点物を、冷トラップ内で凝縮した。収容された画分をHPLCを用いて分析した。Nucleogel Sugar 810 H型(MACHEREY−NAGEL)のカラム1つを有する島津製作所のProminence型の機器を使用した。溶離液として、H
2SO
4溶液を5mM使用した(0.7mL/分)。分析が示すように、全ての蒸留液並びに冷トラップ内で凝縮された蒸気は、少量の未反応の3‐HP並びに水に加えて、主として遊離のアクリル酸を含有していた(
図2)。
【0039】
実施例2:乳酸のアクリル酸への脱水
実施例1を繰り返したが、但し、3‐HP溶液の代わりに乳酸の60質量%水溶液を使用した点が異なっていた。蒸留液とアクリル酸のクロマトグラムを比較することにより、この実験に関して、アクリル酸への反応を確認することができた(
図3)。
【0040】
HPLC分析から明らかなように、本発明による方法で3‐HPからも乳酸からもアクリル酸を製造することができた。
【0041】
実施例3:乳酸のアクリル酸への脱水
図1に示すように、加熱設備を備えた実験装置の500mL丸底フラスコ内へ、水中90質量%溶液として乳酸を1mol、乳酸に対して塩を2mol%、ヒドロキノンを2gおよびp‐メトキシフェノール(MEHQ)を2g装入した。この混合物を撹拌しながら、加熱マントルを用いて、1時間以内に180℃に加熱し、その際留去された水を除去した。この箇所で5cmの高さを有していた液体混合物中へ約1cm突出したガラス管G1を介して、組成物に対してヒドロキノンを0.1質量%、MEHQを0.1質量%および加えて水中45質量%溶液として乳酸を99.8%含有する、組成物約120g/hを、HPLCポンプを用いて導入した。塔底温度を、反応の間に約300℃に調整した。全試験時間中、真空ポンプを用いてガラス管G2を介して100mbarより大きく、かつ1bar未満の減圧を適用した。G2を介して取り出されたガス状物質を、ガラス冷却器(下降集中コンデンサー)を介して液化させ、かつ分別して回収した。残りの蒸気状の低沸点物を、冷トラップ内で凝縮した。収容された画分をHPLCを用いて分析した。Nucleogel Sugar 810 H型(MACHEREY−NAGEL)のカラム1つを有する島津製作所のProminence型の機器を使用した。溶離液として、H
2SO
4溶液を5mM使用した(0.7mL/分)。この結果を表1に示す。
【0042】
使用された塩を、WO2013/155245A2に記載されているように製造したか、またはそこに記載されている出典もしくは同等の出典における入手可能な最高純度に関係づけた。
【0043】
表1:実施例3における実験の結果
【表1】
【0044】
実験3d〜3fでは、塩の混合物を1:1のモル比で使用した。
【0045】
実施例3a〜3fによる実験は、液相で乳酸の脱水が可能であることを示す。