特許第6290258号(P6290258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290258非当接側腹部を有する切削インサートを備えた切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290258
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】非当接側腹部を有する切削インサートを備えた切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20180226BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20180226BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B23B27/16 Z
   B23B27/14 C
   B23B27/04
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-552197(P2015-552197)
(86)(22)【出願日】2013年12月23日
(65)【公表番号】特表2016-502940(P2016-502940A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】IL2013051056
(87)【国際公開番号】WO2014111915
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】13/742,796
(32)【優先日】2013年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−203379(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058543(WO,A1)
【文献】 特開昭63−139602(JP,A)
【文献】 特開昭57−138503(JP,A)
【文献】 実開平04−112706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 − 29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具(100)であって、
反対側にある第1および第2側表面(108、110)と、前方方向(D)から後方方向(D)へ延びる縦方向主軸(M)および横方向ポケット軸(S)を有するインサートポケット(104)とを含む工具ホルダ(102)と、
方向の第1軸(I)および横方向の第2軸(L)を有する切削インサート(112)であって、2つの端部表面(114)およびそれらの間の周囲表面(116)を含み、前記第1軸(I)に沿って配置された、2つの反対側にある切削部分(118)およびそれらの間のクランプ部分(120)を有する切削インサート(112)と、を含み、
前記インサートポケット(104)が、
前記第2側表面(110)と結合され、前記ポケット軸(S)の前方に配置され、前方当接表面(126)を有する前方クランプ部分(124)と、
記第1側表面(108)と結合され、前記ポケット軸(S)の後方に配置され、第1および第2後方当接表面(130、132)を有する後方クランプ部分(128)と、を含み、
前記切削インサートの周囲表面(116)の2つの反対側にある側腹部(134)が、対応する切削部分(118)に沿って、および部分的に前記クランプ部分(120)に沿って反対方向に延在し、第1および第2クランプ表面(138、140)が各側腹部(134)に隣接して配置され、
前記切削工具(100)の組立位置において、一方の側腹部(134)に隣接する前記第1および第2クランプ表面(138、140)が、それぞれ前記第1および第2後方当接表面(130、132)に当接し、他方の側腹部(134)に隣接する前記第1クランプ表面(138)が、前記前方当接表面(126)に当接し、前記側腹部(134)はどちらも前記工具ホルダ(102)に当接せず
前記ポケット軸(S)に沿った前記切削工具(100)の上面視において、前記切削インサート(112)の前記側腹部(134)の各々が、前記工具ホルダ(102)の前記第1および第2側表面(108、110)のうちのそれぞれの1つと面一である、切削工具(100)。
【請求項2】
前記切削インサート(112)が前記第2軸(L)の周りで180°の回転対称を有し、各切削部分(118)が切れ刃(122)を有する、請求項1に記載の切削工具(100)。
【請求項3】
前記組立位置において、前記前方クランプ部分(124)のそばの前記側腹部(134)に隣接する前記第2クランプ表面(140)が前記工具ホルダ(102当接しない、請求項1または2に記載の切削工具(100)。
【請求項4】
各第1クランプ表面(138)が、それぞれの前記第2クランプ表面(140)に対して傾けられ、前記第2軸(L)に向かって集束するクランプコーナ(136)を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項5】
前記第1および第2後方当接表面(130、132)が互いに傾けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項6】
前記第1および第2後方当接表面(130、132)が互に垂直である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項7】
前記切削インサート(112)の前記クランプ部分(120)が、前記端部表面(114)の一方に配置されたインサート当接表面(142)を有し、
前記工具ホルダ(102)が、前記第1および第2側表面(108、110)の間に延在し且つ上面(T)を画定する上表面(144)を有し、
前記インサートポケット(104)が、前記上表面(144)と平行であり且つポケット高さ(H)だけ前記上表面(144)から離間されるポケット当接表面(146)を有し、
前記インサート当接表面(142)が前記ポケット当接表面(146)当接する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項8】
前記上面(T)が前記第1および第2側表面(108、110)と垂直である、請求項7に記載の切削工具(100)。
【請求項9】
前記第1および第2後方当接表面(130、132)ならびに前記前方当接表面(126)が、前記上面(T)に対して垂直に延在する、請求項7に記載の切削工具(100)。
【請求項10】
ポケットねじ穴(150)が前記ポケット軸(S)に沿って前記インサートポケット(104)を貫通し、
前記インサートねじ穴(152)が前記第2軸(L)に沿って前記切削インサート(112)の前記クランプ部分(120)を貫通する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項11】
クランプねじ(148)が前記インサートねじ穴(152)を貫通し前記ポケットねじ穴(150)と係合し、前記切削インサート(112)を前記インサートポケット(104)に締結する、請求項10に記載の切削工具(100)。
【請求項12】
前記第2後方当接表面(132)が前記第1後方当接表面(130)と垂直である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項13】
前記切削インサート(112)の各側腹部(134)が側面(P)を画定し、前記側面(P)が互いに平行であり、インサート幅(W)だけ離間される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項14】
前記前方当接表面(126)が前記第2側表面(110)と平行に延在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項15】
前記第1後方当接表面(130)が前記第1側表面(108)と平行に延在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【請求項16】
前記工具ホルダ(102)が、前記第1および第2側表面(108、110)の間に延在し前記上表面(144)の反対側にある底表面(154)であって、底面(B)を画定する底表面(154)を有する、請求項に記載の切削工具(100)。
【請求項17】
前記底面(B)が前記上面(T)と平行である、請求項16に記載の切削工具(100)。
【請求項18】
前記第1および第2後方当接表面(130、132)が非当接ホルダ表面(131)によって互いに離間され、
前記第1および第2クランプ表面(138、140)が非クランプインサート表面(139)によって互いに離間される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の切削工具(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、切削インサートと、適合するインサートポケットとを有する切削工具に関し、詳細には、スイス型(Swiss type)切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
切削工具は、切削インサートを保持するためのポケットが形成された工具ホルダを有する。ポケットは、切削インサートが当接するための複数の壁と、切削インサートをインサートポケットに締結し得るねじを受け入れるためのねじ穴とを有し得る。例えば、スイス型自動機械では、切削工具は、矩形状のバーから一般的に作製される工具シャンクを有する。
【0003】
インサートポケットが形成された切削工具、およびスイス型切削工具は、例えば、スイス特許第664102号、スイス特許第686935号、特開平11−156605号、欧州特許第0213076号、欧州特許第1657012号、米国特許第4462725号、米国特許第4890961号、米国特許第5649579号、米国特許第5816753号、米国特許第6155754号、米国特許第6579043号、米国特許第6960049号、米国特許第7001115号、米国特許出願公開第2010/0104390号、および特開2007−203379号に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
適合するインサートポケット内に切削インサートが保持される切削工具であって、インサートホルダが切削インサートをインサート中心軸の両側で確実に保持し、インサートが非当接側腹部を有する切削工具を提供することが本出願の主題の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本出願の主題によれば、切削工具であって、
反対側にある第1および第2の側表面と、前方方向から後方方向へ延びる縦方向主軸および横方向ポケット軸を有するインサートポケットとを含む工具ホルダ、および
縦方向の第1軸および横方向の第2軸を有する切削インサートであって、2つの端部表面およびそれらの間に延在する周囲表面を含み、第1軸に沿って配置された、2つの反対側にある切削部分およびそれらの間のクランプ部分を有する切削インサート
を含み、
インサートポケットが、
第2側表面と結合され、ポケット軸の前方に配置され、前方当接表面を有する前方クランプ部分、および
第1側表面と結合され、ポケット軸の後方に配置され、第1および第2の後方当接表面を有する後方クランプ部分
を含み、
切削インサートの周囲表面上の、2つの反対側にある側腹部が、切削部分に沿って、および部分的にクランプ部分に沿って反対方向に延在し、第1および第2のクランプ表面が各側腹部に隣接して配置され、
切削工具の組立位置において、一方の側腹部に隣接する第1および第2のクランプ表面が、それぞれ第1および第2の後方当接表面に当接し、他方の側腹部に隣接する第1クランプ表面が、前方当接表面に当接し、側腹部はどちらも工具ホルダに当接しない、
切削工具が提供される。
【0006】
本出願の主題の実施形態によれば、ポケットねじ穴がポケット軸に沿ってインサートポケットを貫通し、インサートねじ穴が第2軸に沿って切削インサートのクランプ部分を貫通する。
【0007】
本出願の主題の別の実施形態によれば、クランプねじがインサートねじ穴を貫通し、ポケットねじ穴と係合し、切削インサートをインサートポケットに締結する。
【0008】
本出願の主題のさらなる実施形態によれば、ポケット軸に沿った切削工具の上面図において、切削インサートの側腹部の少なくとも一方が、工具ホルダの側表面のうちのそれぞれの1つと面一である。
【0009】
本出願の主題によれば、縦方向の第1軸および横方向の第2軸を有し、第2軸の周りで180°の回転対称を有する切削インサートであって、
2つの端部表面およびそれらの間の周囲表面、
縦方向の第1軸に沿って配置された、2つの反対側にある切削部分およびそれらの間のクランプ部分、
横方向の第2軸に沿って切削インサートのクランプ部分を貫通するインサートねじ穴
を含み、
周囲表面が、
対応する切削部分に沿って、および部分的にクランプ部分に沿って反対方向に延在する2つの反対側にある側腹部であって、各側腹部がインサート側面を画定し、2つの反対側にある側腹部のインサート側面が、それらの間でインサート幅を画定する2つの側腹部を含み、
各側腹部が、それに隣接して、対応する切削部分と反対の側に、第1および第2のクランプ表面を有し、
横方向の第2軸に沿った切削インサートの上面図において、第1および第2のクランプ表面が、
隣接するインサート側面から窪められ、
互いに傾けられ、横方向の第2軸に向かって集束し、
非クランプインサート表面によって互いに離間される
切削インサートが同じく提供される。
【0010】
図面の簡単な説明
本発明をより深く理解するため、および実際に本発明をどのように実行することができるかを示すため、次に添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】組立位置にある、開示される技術の実施形態による切削工具の斜視図である。
図2】分解位置にある、図1の切削工具の斜視図である。
図3】組立位置にある、図1の切削工具の別の斜視図である。
図4】分解位置にある、図3の切削工具の斜視図である。
図5図1の切削工具の上面図である。
図6図1の切削工具の底面図である。
図7図1の切削工具の側面図である。
図8図1の切削工具の別の側面図である。
図9図1の切削工具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を単純および明確にするために、図面に示される要素は必ずしも一定の縮尺比で描かれていないことは認識されよう。例えば、一部の要素の寸法は、明確にするために他の要素に対して誇張されている場合があり、またはいくつかの物理的構成要素が1つの機能的ブロックまたは要素の中に含まれている場合がある。さらに、適切と考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために参照番号はいくつかの図面を通して繰り返される場合がある。
【0013】
発明の詳細な説明
以下の記載中、本発明の様々な態様が記載される。説明を目的として、特定の構成および詳細が、本発明の完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、本明細書に提示された特定の詳細なしに本発明を実行できることも当業者には明白である。さらに、本発明を曖昧にしないように、周知の特徴は省略または簡略化される場合がある。
【0014】
図1〜9を参照する。それらは、本発明による切削工具100を様々な見た目および位置で示している。切削工具100は工具ホルダ102および切削インサート112を含む。工具ホルダ102は、その前端部106にインサートポケット104が形成されている。インサートポケット104は、前方方向Dから後方方向Dへ延びる縦方向主軸Mと、横方向ポケット軸Sとを有する。工具ホルダ102は、縦方向に延在する反対側の第1および第2側表面108、110と、それらの間に延在する上表面および底表面144、154とを有する。インサートポケット104は上表面144に開口する。上表面144は上面Tを画定する。上面Tは側表面108、110に対して実質的に垂直である。底表面154は上表面144の反対側にあり、底面Bを画定する。いくつかの実施形態では、底面Bは上面Tと平行であり得る(例えば、ポケット軸Sに対して垂直に取られた図7および8の側面図に示されるように)。
【0015】
インサートポケット104は前方クランプ部分124および後方クランプ部分128を有する。前方クランプ部分124は、第2側表面110と結合され、ポケット軸Sの前方に配置され、後方クランプ部分128は、第1側表面108と結合され、ポケット軸Sの後方に配置される。前方クランプ部分124は、縦方向に延在する前方当接表面126を有する。後方クランプ部分128は、第1および第2の後方当接表面130、132を有し、それらは互いに傾けられ、ポケット軸Sに向かって集束する。第1および第2の後方当接表面130、132は、非当接ホルダ表面131によって互いに離間されてもよい。非当接ホルダ表面131は、上面図で見るとき凸状であってもよい。さらに、ねじ切りされたポケットねじ穴150が、ポケット軸Sに沿ってインサートポケット104を貫通する。インサートポケット104はまた、ポケット当接表面146を有する。ポケット当接表面146は工具ホルダ102の上表面144と平行であってもよく、また上表面144からポケット高さHだけ離間されてもよい(図7)。
【0016】
第1および第2の後方当接表面130、132および前方当接表面126は、上面Tに対して実質的に垂直に延在してもよい。第2の後方当接表面132は、例えば図5の上面図で示されるように、第1後方当接表面130に対して実質的に垂直であってもよい。さらに図5に示されるように、前方当接表面126は第2側表面110と実質的に平行に延在してもよい。同様に、第1後方当接表面130は第1側表面108と実質的に平行に延在してもよい。加えて、前方当接表面126は第1後方当接表面130と実質的に平行に延在してもよい。
【0017】
切削インサート112はS字形であり、縦方向第1軸Iおよび横方向第2軸Lを有する。切削インサート112は割出し可能であってもよく、第2軸Lの周りで180°の回転対称を示す。切削インサート112は、2つの端部表面114と、それらの間に延在する周囲表面116とを有する。2つの反対側の切削部分118は切削インサート112に沿って形成され、中央クランプ部分120はそれらの間に位置付けられ、第1軸Iに沿って配置される。各切削部分118は切れ刃122を有する。さらに、インサートねじ穴152が第2軸Lに沿ってクランプ部分120を貫通する。切削インサート112のクランプ部分120は、端部表面114の一方に配置されたインサート当接表面142を有する。
【0018】
切削インサート112の周囲表面116は、2つの反対側にある側腹部134を有し、各側腹部134はインサート側面Pを画定し、第2軸Lの両側に配置される。インサート側面Pは互いに平行であり、インサート幅Wだけ離間される(図5)。従って、側腹部134によって画定されるインサート幅は、縦方向第1軸Iと横方向第2軸Lとによって画定される仮想面に対して垂直な方向に延在する。2つの反対側にある側腹部134は、それらの関連する切削部分118に沿って、切れ刃122から、部分的にクランプ部分120に沿って反対方向に延在する。第2軸Lに沿って取られた切削インサート112の端面図において(図5参照)、側腹部134は、切れ刃122から、前方方向Dおよび後方方向Dのうちの正反対の方向に縦方向に延在する。窪められたクランプコーナ136が、各側腹部134の後ろに、すなわち各切れ刃122から離れる方向に配置される。各クランプコーナ136は、(各側腹部134に隣接して配置された)第1および第2のクランプ表面138、140を有し、それらは互いに傾けられ、第2軸Lに向かって集束する。第1および第2クランプ表面138、140は、非クランプインサート表面139だけ互いに離間されてもよい。非クランプインサート表面139は凹状であってもよく(すなわち上面図において)、周囲表面116上で、第2インサート軸L(この周りで切削インサート112は180°の回転対称を有する)に最も近い接近地点を形成する。
【0019】
切削工具100は組立位置(例えば図1および3)と分解位置(例えば図2および4)の間で移動可能である。分解位置において、切削インサート112は、工具ホルダ102から分離される。組立位置において、切削インサート112は、例えばクランプねじ148によって、インサートポケット104内に保持される。クランプねじ148はポケット軸Sに沿ってインサートねじ穴152を通って延在し、ポケットねじ穴150とねじ係合し、切削インサート112をインサートポケット104に締結する。ポケット軸Sは、切削インサート112を後方に締め付ける状態で保持するために、インサートの第2軸Lのわずか後方に、すなわち主軸Mに沿って延びてもよい。
【0020】
組立位置において、クランプコーナ136のうちの一方の(すなわち側腹部134のうちの一方に隣接し且つインサート側面Pから窪められている)第1および第2のクランプ表面138、140は、それぞれ第1および第2の後方当接表面130、132と当接する。クランプコーナ136の他方の(すなわち他方の側腹部134に隣接する)第1クランプ表面138は、前方クランプ部分124の前方当接表面126と当接する。インサート当接表面142はポケット当接表面146と当接する。特に、組立位置において、切削インサート112の側腹部134はどちらも工具ホルダ102と当接しない、従って両側腹部134は非当接側腹部134であると見なされる。
【0021】
第2クランプ表面140の両方は、第1クランプ表面138の間に縦方向に配置される。これは、切削インサート112の保持においてさらなる安定性を提供し、このとき、2つの第1クランプ表面138はインサートポケット104に対して当接され、傾けられた第2クランプ表面140はそれらの間に縦方向に配置される。
【0022】
前方クランプ部分124に近いクランプコーナ136の第2クランプ表面140は、前方クランプ部分124と接触しない(図7)。このようにして、切削インサート112は、第2軸Lの周りで、インサートポケット104に対して3つの箇所、すなわち、前方当接表面126、および第1および第2の後方当接表面138、140において、クランプされる。このことについては、切削インサート112の側腹部134の両方は、工具ホルダ102と当接しないままであってもよい。切削インサート112とインサートポケット104の間に別の当接箇所を得ることは必要とされないためである。
【0023】
切削インサート112の当接箇所は、その切れ刃122から離間される。従って、クランプまたは切削作業のせいで当接箇所に適用されるあらゆる力または圧力は、切れ刃122に影響を及ぼさない。切れ刃122は、切削インサート112のクランプで発生する力に曝されず、そのような力のせいで破損する傾向が弱まり、それにより切削インサート112の寿命を延長する。さらに、切れ刃122の一方が切削作業中に損傷した場合(例えばクラックの発生または破断)、切削インサート112をインサートポケット104内でなおも割り出してクランプすることができ、そして他方の切れ刃122を切削作業においてさらに使用することができる。
【0024】
組立位置において、前方クランプ部分124に近い切削部分118は、工具ホルダ102の前方に延在する。これは例えば、図6に示されるようなポケット軸Sに沿って取られた、組み立てられた切削工具100の底面図において明らかである。さらに、切削インサート112の第1軸Iは、工具ホルダ102の主軸Mと一致してもよい。これは例えば、図5の上面図および(主軸Mに沿って取られた)図9の正面図において明らかである。
【0025】
組み立てられた切削工具100をポケット軸Sに沿った上面図で見るとき(図5参照)、切削インサート112の側腹部134の少なくとも一方は、工具ホルダ102の側表面108、110のうちのそれぞれの一方と面一である。これは、本発明を、空間が制限された状態で、または複数のシャンクが互いに近接して配置された状態(これにより同じく切削工具100への接近が制限され得る)で、機械中で使用するとき、必要とされ得る。本出願の図面において、および特に図5の上面図において、側腹部134の両方は、工具ホルダ102の側表面108、110の両方と面一である。しかしながら、側腹部134の一方だけが、側表面108、110のうちのそれぞれの一方と面一であってもよい。
【0026】
切削インサート112をインサートポケット104内に保持するために、または切削インサート112をそこから取り外すために、クランプねじ148はそれぞれポケットねじ穴150に締結される、またはそこから緩められる。しかしながら、本発明の実施形態によれば、クランプねじ148は、切削インサート112をインサートポケット104に取り付けるために、またはそこから取り外すために、ポケットねじ穴150から完全に引き抜かなくてもよい。代わりに、クランプねじ148を部分的に解放する一方、クランプねじ148をある特定の範囲までポケットねじ穴150とねじ係合した状態に維持することが必要であり得る(図2および4)。そのような実施形態では、インサートねじ穴152は、切削インサート112が特定の向きにおいてクランプねじ148の頭部を通り越すことを可能にするように設計される。これは、例えばインサートねじ穴152が第2軸Lに沿って可変断面を有するとき、達成可能であり、それによりインサートねじ穴152が、例えば第1軸Iの周りで切削インサート112を回転させるとき、クランプねじ148の頭部を通り越すことが可能になる。さらに、側腹部134はどちらも工具ホルダ102と当接しないので、切削インサート112を第1軸Iの周りで回転させることが可能である。側腹部134のどちらかが工具ホルダ102に対して当接されていたなら、側腹部134は切削インサート112の第1軸I周りのそのような回転を妨害したであろうし、従って締付ねじの頭部を越えるそのようなインサート取外しの使用を阻むであろう。
【0027】
添付図面に示される切削工具100はスイス型切削工具であり、工具ホルダ102は、縦方向主軸Mに沿って取られた図9の正面図に示されるように、矩形の横方向断面を有する。しかしながら、本発明は、スイス型自動機械(例えば旋盤)に使用される種類の切削工具に限定されず、切削インサートをインサートポケットに固定すべきである多くの種類の切削工具に適用可能であることを理解すべきである。例えば切削工具100は、工具ホルダ102が非矩形断面を有する一方で本発明による切削インサートおよびインサートポケットの特徴を採用する異なる種類の切削工具であってもよい。
【0028】
切削インサート112の当接箇所はその周囲表面116上にあるがインサート当接表面142を除くことは認識されよう。従って、インサート端部表面114上に、および対応してポケット当接表面146上に、突出部および凹部など、当接構造もクランプ構造も形成する必要はない。換言すると、切削インサート112のクランプ部分120の高さ(すなわち、端部表面114間の横方向距離)は、実質的に一定である。このようにして、切削インサート112の製造は、例えば切削インサート112が超硬合金(例えば炭化タングステン)を圧縮成形し、続いて焼結することによって形成されるとき、簡略化される。例えば切削インサート112の製造は、切削インサート112がその中でプレス成形される金型を単純化することによって、より簡単にされる。
【0029】
切削インサート112の側腹部134は当接もクランプもしないので側腹部134に隣接する工具ホルダ102に当接構造もクランプ表面も形成する必要はないことをさらに認識すべきである。これにより、インサート幅Wを工具ホルダ102の幅と、すなわち側表面108、110の間の距離と実質的に等しくすることが可能になる。側腹部134のどちらかが工具ホルダ102に対して当接されている場合、それはインサート幅Wが工具ホルダ102の幅より小さいことを意味し得る。
【0030】
1つまたは複数の特定実施形態を参照して本発明を記載してきたが、本記載は総じて例であることが意図され、示される実施形態に本発明を制限していると解釈すべきでない。本明細書に特に示されないが本発明の範囲内にある様々な修正を当業者は思い付く可能性があることが認識される。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9