(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290263
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】蓄電池の温度を調整する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20180226BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20180226BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20180226BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20180226BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20180226BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20180226BHJP
H01M 10/6572 20140101ALI20180226BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20180226BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20180226BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20180226BHJP
【FI】
H01M10/633
H02J7/00 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6571
H01M10/6572
H01M10/6563
B60L11/18 Z
!H01M10/613
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-557493(P2015-557493)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-513342(P2016-513342A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】FR2014050199
(87)【国際公開番号】WO2014125189
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】1351335
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マルシャル, カロリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルクルヴール, フィリップ
【審査官】
古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−073907(JP,A)
【文献】
特開2009−077466(JP,A)
【文献】
特開2012−016078(JP,A)
【文献】
特開2012−104458(JP,A)
【文献】
特開2011−259672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H01M 10/42−10/667
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(5)の温度(T)を充電中または放電中に調整する方法であって、前記蓄電池(5)の充電状態を測定するCS装置(16)と、前記蓄電池(5)の温度測定装置(17)とが使用され、
a)前記CS装置(16)から、前記蓄電池(5)の充電レベルに比例する充電状態(CS)の第1の値(CS70)と第2の値(CS60)を逐次取得するステップと、
b)前記温度測定装置(17)から、前記充電状態が第1の値(CS70)と第2の値(CS60)を逐次取るときの前記蓄電池(5)の温度(T)の2つの値(T60、T70)を測定するステップと、
c)ステップb)で測定した前記温度(T)の値(T60、T70)の関数として、前記充電状態(CS)が第3の値(CS50)を一旦達成するときの前記蓄電池(5)の温度(T)の値(Test)を推定するステップと、
d)ステップc)で推定した前記温度(T)の値(Test)の関数として、前記蓄電池(5)の温度(T)を制御する手段(8、9)を調整するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップa)が連続的に行われるか、規則的な時間間隔で繰り返される、請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
ステップb)〜d)が、ループしたサイクルで繰り返される、請求項1または2のうちの一項に記載の調整方法。
【請求項4】
前記充電状態(CS)の前記第1、第2および第3の値(CS50、CS60、CS70)が予め決定される、請求項1〜3のうちの一項に記載の調整方法。
【請求項5】
前記充電状態(CS)の前記第1、第2および第3の値(CS50、CS60、CS70)の少なくとも1つが、充電または放電の開始時における前記蓄電池(5)の充電状態(CS)の値(CSini)の関数として決定される、請求項1〜3のうちの一項に記載の調整方法。
【請求項6】
ステップc)が、対応する温度(T)を各充電状態(CS)と関連付けるアフィン関数を用いて実行される、請求項1から5のうちの一項に記載の調整方法。
【請求項7】
ステップd)では、前記蓄電池(5)の温度(T)が目標値(Ttarg)を達成するように前記蓄電池(5)の温度(T)を制御する手段(8、9)が調整される、請求項1から6のうちの一項に記載の調整方法。
【請求項8】
前記目標値(Ttarg)が予め決定される、請求項7に記載の調整方法。
【請求項9】
前記目標値(Ttarg)が、以下のパラメータであって、外気温、前記充電状態(CS)の第1の値(CS70)、前記充電状態(CS)の第2の値(CS60)、前記充電状態(CS)の第3の値(CS50)、前記蓄電池(5)が充電中であるか放電中であるかという趣旨の情報、前記蓄電池(5)の平均放電時間、前記蓄電池(5)の平均充電時間であるパラメータのうちの1つおよび/または他の関数として決定される、請求項7に記載の調整方法。
【請求項10】
蓄電池(5)と、前記蓄電池(5)を充電するための充電器(6)と、前記蓄電池(5)により電力供給される電気モータ(3)と、前記蓄電池(5)の充電状態を測定するCS装置(16)と、前記蓄電池(5)の温度測定装置(17)と、前記蓄電池(5)の温度(T)を制御する手段(8、9)とを備える自動車(1)であって、
請求項1から9のうちの一項に記載の調整方法を実施するのに適した、前記蓄電池(5)の温度(T)を制御する手段(8、9)のための命令ユニット(10)を備えることを特徴とする自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して蓄電池に関する。
【0002】
より具体的に、本発明は、蓄電池の温度を充電中または放電中に調整する方法に関する。
【0003】
本発明は、蓄電池、前記蓄電池用の充電器、前記蓄電池により電力供給される電気モータ、前記蓄電池の充電状態を取得する手段、前記蓄電池の温度を測定する手段、および前記蓄電池の温度を制御する手段を備える自動車にも関する。
【背景技術】
【0004】
上記タイプの自動車は、文献米国特許出願公開第2011/0316486号明細書から知られている。
【0005】
このタイプの車両では、蓄電池が最適な充電性能を果たす公称温度範囲で蓄電池を充電することが一般的に目的とされる。
【0006】
この温度範囲を下回ると、電池充電プロセスは、より長く不完全となる。電池は、より低い独立容量および性能低下も示す。
【0007】
この温度範囲を上回ると、蓄電池のいかなる充電または放電も、前記電池の使用寿命に負の影響を及ぼす。
【0008】
したがって、上記文献は、電池温度が公称温度範囲内に制限されるように、温度制御手段を用いて蓄電池の充電中にのみ前記電池を加熱または冷却することの提供を含む。
【0009】
しかし、この解決策は、有効であるが、温度制御手段への電力供給に過大な電気消費を伴う。したがって、電気モータへの電流供給のために電池が放電するときに適用するのは困難である。また、この解決策は、過酷な運転条件で昇温現象が目立つ場合、運転者の挙動に対して温度制御を適応させることを可能にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0316486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術の上記欠点を是正するために、本発明は、学習、具体的にはユーザの運転プロファイルの学習の原理によって、遭遇した条件に従って温度制御手段への電力供給を適応させることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より具体的に、本発明によれば、以下のステップの提供を含む、導入部で定義したような調整方法が提案される。
a)前記蓄電池の充電レベルに比例する充電状態の連続する値を取得するステップ、
b)前記充電状態が第1の値と第2の値を連続して取るときの前記蓄電池の温度の2つの値を測定するステップ、
c)ステップb)で測定した温度の値の関数として、前記充電状態が第3の値を一旦達成するときの前記蓄電池の温度の値を推定するステップ、および、
d)ステップc)で推定した温度の値の関数として、前記蓄電池の温度を制御する手段に命令するステップ。
【0013】
これにより、本発明を用いて、充電状態がその第1の値と第2の値の間で変化するときに蓄電池の温度変動を測定して、その温度変動から、充電状態の第2の値と第3の値の間での変化に関連する蓋然的な電池の温度変動を推論するとともに制御手段の最適な調整を行い、それにより前記制御手段の電力消費を低減することが可能となる。
【0014】
本発明は、蓄電池の温度をその公称範囲内に維持することを確実にする、より信頼できる手段も提供する。
【0015】
本発明による調整方法のさらに有利な特徴は、限定のために提供される訳ではないが、以下の通りである。
−前記ステップa)が連続的に行われるか、規則的な限られた時間間隔で繰り返される、
−ステップb)〜d)が、ループしたサイクルで繰り返される、
−充電状態の前記第1、第2および第3の値が予め決定される、
−充電状態の前記第1、第2および第3の値の少なくとも1つが、充電または放電の開始時の蓄電池の充電状態の値の関数として決定される、
−ステップc)が、対応する温度を各充電状態と関連付けるアフィン関数を用いて実行される、
−ステップd)では、蓄電池の温度が目標値に到達するように前記制御手段が調整される、
−前記目標値が予め決定される、または、
−前記目標値が、以下のパラメータであって、外気温、前記充電状態の第1、第2または第3の値、蓄電池が充電中であるか放電中であるかという趣旨の情報、前記蓄電池の平均放電時間、および前記蓄電池の平均充電時間であるパラメータのうちの一および/または他の関数として決定される。
【0016】
本発明は、上で定義したような調整方法を使用するのに適した、前記制御手段用の命令ユニットも備える、導入部で定義したような自動車も提案する。
【0017】
以下の説明は、限定のためではなく例示のために提供される添付図面と併せて、本発明の本質、および本発明を実行できる手段を明らかにしている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による自動車の図式表現を示している。
【
図2】
図1に表す自動車の蓄電池の温度変化を前記電池の放電中の前記蓄電池の充電ステージの関数として図示するグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車1の高度に図式化された表現を示しており、自動車は、2つの駆動輪2および2つの非駆動輪18を備えている。
【0020】
表現される車両は電気車両である。一変形として、ハイブリッド車両も考慮されうる。
【0021】
したがって、
図1に表される自動車1は、2つの駆動輪2を回転推進するための電気モータ3を備えている。
【0022】
自動車1は、インバータ4を介して前記電気モータ3に電流を供給するための蓄電池5も備える。従来、前記インバータ4は、蓄電池5の直流出力を三相電流に変換するように設計されている。
【0023】
自動車1は、電源ソケット7を備え付けた充電器6も備えており、ユーザは、外部電力システムに接続された電気プラグの挿入のために電源ソケット7を利用できる。前記充電器6は、蓄電池5の最適な充電を確実にするために、外部電力システムにより送られる電力を調整するように設計される。
【0024】
自動車1は、蓄電池5の温度Tを制御する手段8、9も備える。
【0025】
図1に表すように、前記制御手段は、具体的に蓄電池5を加熱する手段8および冷却する手段9を備える。前記加熱手段8および冷却手段9は、別体でもよく(例えば、電気抵抗と電気ファンの形で構成される)、組み合わされてもよい(例えば、ペルチェセルの形で構成される)。
【0026】
いずれにしても、前記加熱手段8および冷却手段9は、作動するためのエネルギーを必要とする。このエネルギーは、(特に、蓄電池が電気モータへの電力の供給のために放電しているときに)エネルギーの最適経済化により自動車1の作動用独立容量を向上させる手段がもたらされるように、直接的か間接的かにかかわらず蓄電池5から調達される。このことも、本発明の目的である。
【0027】
このために、自動車1は、前記蓄電池5の温度Tを測定する手段17を備えるとともに、蓄電池5の充電状態CSを取得する手段16を備える。
【0028】
従来、測定手段17は、蓄電池5の内部に設置された温度プローブの形で構成されうる。
【0029】
取得手段16は、蓄電池の充電レベルを決定するように設計される。取得手段16に記録される充電状態は、パーセンテージで表現される。
【0030】
前記充電状態CSは、蓄電池の充電レベルがその最高値であるときに100%に等しいと考慮される。充電レベルは、蓄電池5が電力を電気モータ3に供給すると低下する。充電レベルは、蓄電池5が充電器6により電力供給されるときに上昇する。
【0031】
自動車1は、その各種デバイスを制御するために、プロセッサ(CPU)11、ランダムアクセスメモリ(RAM)12、リードオンリーメモリ(ROM)13、および各種の入力インターフェース15および出力インターフェース14からなるコンピュータ10を備える。
【0032】
コンピュータ10は、その入力インターフェース15を用いて、測定手段17および取得手段16から生じる入力信号を受領可能である。これにより、コンピュータ10は、蓄電池5の温度Tおよび充電状態CSを取得するように設計される。
【0033】
コンピュータ10は、そのリードオンリーメモリ13にインストールされたソフトウェアを用いて、自動車1の各サービス条件のために加熱手段8および冷却手段9の制御指令を計算するように設計される。
【0034】
最後に、コンピュータ10は、蓄電池5の温度の最適な調整を確実にするために、その出力インターフェース14を用いて、これらの制御指令を加熱手段8および冷却手段9に伝達可能である。
【0035】
本発明の特に有利な特徴によれば、コンピュータ10は、以下の構成ステップを含む、蓄電池5の温度Tを調整する方法を使用するように設計される。
a)充電状態CSの連続する値CS
60、CS
70を取得するステップ、
b)充電ステージが第1の値CS
70を達成するときに対応する第1の値T
70および充電状態が第2の値CS
60を達成するときに対応する第2の値T
60である、蓄電池5の2つの温度値Tを測定するステップ、
c)ステップb)で測定した値T
60、T
70の関数として、充電状態CSが第3の値CS
50を一旦達成するときの蓄電池5の温度Tの値T
estを推定するステップ、および、
d)ステップc)で推定した値T
estの関数として、加熱手段8および冷却手段9に命令するステップ。
【0036】
本説明の残りの部分では、
図2を参照してステップa)〜d)のそれぞれをより詳しく説明する。
【0037】
図2では、実線は、蓄電池5が電気モータ3に電力供給し、結果として放電しているときの蓄電池5の温度Tの変化を充電状態CSの関数として表している。
【0038】
充電状態CSの連続する値を取得するためのステップa)は、取得手段16を用いて、好ましくは連続的に実行される。
【0039】
もちろん、関係する時間間隔が限定される場合には、このステップを規則的な間隔で実行することができる。この時間間隔は、好ましくは5分に等しいか、それ未満である。
【0040】
図2に表す例によれば、自動車の始動時の充電状態CSの値CS
iniは凡そ75%であることが観察される。充電状態CSの値は、次いで50%まで徐々に低下する。
【0041】
この図からは、蓄電池5が放電すると温度Tが上昇することも観察される。
【0042】
ステップb)は、充電ステージCSが第1の値CS
70を達成するときに蓄電池5の温度Tの第1の値T
70を測定し、次いで、充電ステージCSが第2の値CS
60を達成するときに蓄電池5の温度Tの第2の値T
60を測定することを伴う。
【0043】
図2に表す例では、蓄電池5の温度Tが測定される充電ステージCSの値CS
60およびCS
70は、予め決定される。
【0044】
この場合、値CS
60およびCS
70は、10%の倍数(10%、20%等)に等しくなるように選ばれる。これにより、温度Tの第1の値T
70は、70%に等しい充電状態の値CS
70について測定され、温度Tの第2の値T
60は、60%に等しい充電状態CSの値CS
60について測定される。
【0045】
一変形として、充電ステージCSのこれらの値CS
60およびCS
70を別様に決定してもよい。
【0046】
一例として、これらの値を放電開始時(電気モータの始動時)の蓄電池の充電状態の値(CS
ini)の関数として決定してもよい。この場合、考慮する例では、第1の温度値は、充電状態の値が75%に等しいときに測定され、第2の温度値は、充電状態の値が65%に等しいときに測定される。
【0047】
さらなる変形として、蓄電池の温度をより高い頻度で(例えば、放電の5%の増分毎に)測定してもよい。しかし、この頻度は、測定される2つの温度値の差が蓄電池の熱慣性を表すほどに高過ぎてはならない。
【0048】
ステップc)は、ステップb)で測定した温度Tの値T
60、T
70の関数として、充電状態CSが第3の値CS
50を一旦達成するときの蓄電池5の温度Tの値T
estを推定することを伴う予測ステップである。
【0049】
ここで再び、この第3の値CS
50は予め決定される。この値は、第2の値CS
60よりも10%小さくなるように選ばれる。
【0050】
一変形として、この第3の値を別様に、具体的には放電開始時の蓄電池の充電状態の値(CS
ini)の関数として決定してもよい。
【0051】
この場合、温度Tの推定値T
estの計算は、対応する温度Tを各充電状態CSと関連付けるアフィン関数の適用により行われる。
【0052】
この方法は、蓄電池5の温度Tが、70%〜60%の充電の場合も60%〜50%の充電の場合も同じように変化するという想定に基づくことが理解される。
【0053】
よって、値T
estは、次の計算T
est=2.T
60−T
70により得られる。
【0054】
最終ステップd)は、蓄電池5の温度Tが、前記電池の公称温度範囲(すなわち、蓄電池5がその最適性能を果たす温度範囲)により早く到達するように、ステップc)で推定した値T
estの関数として加熱手段8および冷却手段9に命令することを伴う。
【0055】
このステップは、充電状態CSがその第3の値CS
50を一旦達成すると蓄電池5の温度Tが目標値T
targを達成するように行われる。
【0056】
図2に表す例では、この目標値T
targは、蓄電池5の公称温度範囲内となるように予め決定される。
【0057】
蓄電池5の温度Tを前記目標値T
targに到達させるために、(T
targがT
estよりも高い場合に)加熱手段8に送られる電力ΔPまたは(T
targがT
estよりも低い場合に)冷却手段9に送られる電力ΔPは、次式を用いて計算される。
ここで、aは、蓄電池5のタイプに依存する係数である。
【0058】
実際には、
図2に示すように、このステップd)は、具体的には、電力ΔPを計算する際の近似の結果として、温度Tの目標値T
targの厳密な達成に同意しない。
【0059】
したがって、ステップb)〜d)は、蓄電池5の温度Tが目標値T
targに可能な限り近い一致を達成するように、この場合には蓄電池5での10%の放電増分毎に、ループしたサイクルで繰り返される。
【0060】
上記したように、
図2は、蓄電池5の放電サイクルを表している。
【0061】
充電サイクル(その間に充電状態CSが上昇する)では、蓄電池5の温度Tが目標値T
targに可能な限り近い一致を達成するように、ステップa)〜d)が同様に適用される。
【0062】
本発明は、いかなる意味でも、記述および表現した実施形態の形に限定されず、当業者は、それらの選択のいかなる変形をも組み込むことが可能である。
【0063】
具体的には、目標値を予め決定せず、反対に、各種パラメータの関数として決定することが提供されてもよい。
【0064】
例えば、外気温、電池の条件(例えば、その内部抵抗の変化の関数として)、電池により果たされる充電または放電の容量の条件の関数として目標値を決定することの提供が含まれてもよい。具体的には、温度Tがこの目標値を一旦達成すると温度の自然上昇を考慮するために、より高い外気温を考慮するほど、より低い目標値を選択してもよい。
【0065】
充電状態の第1、第2および第3の値のうちの1つまたは他の関数として目標値を決定するようになっていてもよい。具体的には、(温度Tがこの目標値を一旦達成すると)電池が昇温し続ける残りの放電時間を考慮するために、より高い充電状態を考慮するほど、より低い目標値を選択してもよい。
【0066】
蓄電池が充電中であるか放電中であるかという趣旨の通知の関数として目標値を決定するようになっていてもよい。具体的には、放電よりも充電に関連して昇温がより大きくなることを考慮するために、蓄電池が充電中である場合に目標値をより低く選んでもよい。
【0067】
蓄電池の平均の充電または放電時間の関数として目標値を決定するようになっていてもよい。実際には、ユーザが車両を短期間充電状態にしがちである場合、この短い充電期間では蓄電池の公称温度範囲に十分に早く到達することが可能でないという想定に基づいて、加熱または冷却のために送られる電力を削減するようになっていてもよい。
【0068】
本発明の実施形態のさらなる変形によれば、蓄電池の温度が目標温度をより早く達成するように、予め決定された初期電力を車両の始動時に加熱または冷却のために送るようになっていてもよい。これにより、
図2に表す例では、モータ始動時に温度値Tを測定し、次いでこの値の関数として、加熱または冷却のための初期電力を充電状態が60%に到達する時間まで送るようになっていてもよい。その後(60%〜50%)に送られる電力は、次いで上記方法に従って適宜に適応される。
【0069】
本発明の実施形態のさらなる変形によれば、ステップb)で、より多くの温度値、例えば3つの値を記録し、次いでステップc)で、これらの3つの値に依存する非アフィン補間関数を用いて温度値を推定するようになっていてもよい。