【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示の技術のように、担体として使用する中空糸は、本来、家庭用浄水器等における水に含まれる不純物除去のために使用されるものであり、排水処理としての使用例が少ないことから、原材料費が高いという問題がある。
【0012】
また、中空糸への微生物の吸着固定化を促進するために、アルコール類、糖類、及び有機酸塩のうち少なくとも1つからなる有機物と無機塩類と含有させた懸濁液を生成し、そのイオン強度を調整する必要がある等、排水処理前段階での準備に多くの工数が必要となる。
【0013】
更に、中空糸はコンパクトである反面、機械的強度が小さいため、排水処理装置の運転中、又はメンテナンス中に破断しやすく、定期的な取替えが必要となる。
【0014】
以上のように、特許文献1に開示のバイオリアクター素子では、短期間での微生物の吸着固定化を可能としたものの、原材料コストや、準備工程等に多くの工数を必要とし、実用化が低いものとなっていた。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、排水処理槽の内部に担体を固定化して使用する固定床型のバイオリアクター素子であり、省スペース、かつ低コストでありながら微生物を効率的に吸着固定化することができる水処理能力の高いバイオリアクター素子、及びバイオリアクター素子を用いた排水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明のバイオリアクター素子は、多孔質素材からなる糸状体が網目を形成するように配置された第1の網状体と、繊維系素材からなる糸状体が網目を形成し、前記第1の網状体の表裏面にそれぞれ隣接して、該第1の網状体を挟むように積層配置された第2の網状体とを備えている。
【0017】
ここで、第1の網状体が多孔質素材から構成されていることにより、表面積を大きくすることができるため、大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0018】
また、第1の網状体が網目を形成するように構成されていることにより、例えば、大量の微生物を含む汚水で満たされた排水処理槽内にバイオリアクター素子を設置した場合に、網目の目開き部分を通じて汚水の対流を促進することができる。従って、汚水が滞ることが無く、バイオリアクター素子全体において均一に微生物を吸着固定化することができる。
【0019】
また、第2の網状体が繊維系素材から構成されていることにより、親水性が高いため、微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0020】
また、第2の網状体が網目を形成するように構成されていることにより、前記した通り、微生物を含む汚水で満たされた排水処理槽内にバイオリアクター素子を設置した場合に、網目の目開き部分を通じて汚水が対流するため、バイオリアクター素子全体において均一に微生物を吸着固定化することができる。
【0021】
また、第2の網状体が、第1の網状体の表裏面にそれぞれ隣接して、第1の網状体を挟むように積層配置されていることにより、汚水に含まれる微生物は、先ず第1の網状体の表面(裏面)に隣接する第2の網状体に吸着固定化する。この時、汚水はポンプ、ブロア、攪拌機等によって排水処理槽内で対流しているため、第2の網状体に吸着固定化した微生物の一部は剥がれ落ちるが、剥がれ落ちた微生物は、内側層である第1の網状体に吸着固定化する。
【0022】
更に、第1の網状体に吸着固定化した微生物の一部が剥がれ落ちても、第1の網状体の裏面(表面)に隣接する第2の網状体に吸着固定化する。このように、少なくとも三段階で微生物のバイオリアクター素子への吸着固定化を行うことができるため、大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0023】
また、多孔質素材からなる第1の網状体が、繊維系素材からなる第2の網状体に挟まれるように積層配置されていることにより、繊維系素材に比して親水性が低い多孔質素材を、親水性の高い繊維系素材である第2の網状体で保護することができ、微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0024】
また、第2の網状体が、第1の網状体の表裏面の全体を被覆する場合には、親水性の高い第2の網状体で第1の網状体の全体を被覆するため、大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0025】
また、第1の網状体の外周縁と、第2の網状体が重なる部分を接合する周縁接合部を有する場合には、第1の網状体と第2の網状体を積層状態で一体化することができるため、排水処理槽内への設置が容易なものとなる。更に、例えば、内側層である第1の網状体から剥がれ落ちた微生物は、第1の網状体と第2の網状体の間で保持することが可能となる。
【0026】
また、第2の網状体の外周辺部に沿った第1の方向において所定の間隔で、第2の網状体と第1の網状体を積層方向に接合する第1方向接合部と、第2の網状体の外周辺部に沿って第1の方向に略直交する第2の方向において所定の間隔で、第1の網状体と第2の網状体を積層方向に接合する第2方向接合部とを有する場合には、第1の網状体と第2の網状体を強固に接合することができるため、繰り返し使用による劣化を防止することができる。
【0027】
更に、第1方向接合部と第2方向接合部により区切られた小区画室が形成されるため、内側層に位置する第1の網状体から剥がれ落ちた微生物は、各小区画室で保持することが可能となる。
【0028】
また、多孔質素材が樹脂系素材に竹炭を含有する場合には、竹炭は製造コストが比較的安価であり樹脂系素材との相性も良いため、第1の網状体を容易に製作することができる。また、竹炭は多孔質素材の中でも比表面積が大きく、吸着能力も高いため、大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0029】
また、竹炭が第1の網状体100重量%に対して3〜5重量%含有する場合には、第1の網状体の強度と吸着能力を両立させることができる。即ち、竹炭が第1の網状体100重量%に対して3重量%よりも少ない場合は、吸着固定化する微生物の量が少なくバイオリアクター素子の水処理能力が劣り、一方、竹炭が第1の網状体100重量%に対して5重量%を超えると、第1の網状体の強度が弱くなり、使用に際して破損し易くなる。
【0030】
また、第1の網状体が樹脂系素材としてポリエチレンを採用する場合には、製造コストが安価で大量生産が可能であるとともに、耐水、及び耐薬品性に優れるため、排水処理槽内での繰り返し使用による劣化を防止することができる。
【0031】
また、第2の網状体が繊維系素材であるポリエステルから構成されている場合には、製造コストが安価で大量生産が可能であるとともに、親水性が高いため微生物の吸着固定化を迅速に行うことができる。更に、耐水、及び耐薬品性に優れるため、排水処理槽内での繰り返し使用による劣化を防止することができる。
【0032】
上記の目的を達成するために、本発明のバイオリアクター素子は、多孔質素材と、繊維系素材からなる糸状体が網目を形成し、前記多孔質素材の全体を被覆する網状体と、を備える。
【0033】
ここで、バイオリアクター素子が多孔質素材を有することにより、表面積を大きくすることができるため、大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0034】
また、網状体が繊維系素材から構成されていることにより、親水性が高いため、微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0035】
また、網状体が網目を形成するように構成されていることにより、微生物を含む汚水で満たされた排水処理槽内にバイオリアクター素子を設置した場合に、網目の目開き部分を通じて汚水が対流するため、バイオリアクター素子全体において均一に微生物を吸着固定化することができる。
【0036】
また、網状体が、多孔質素材の全体を被覆することにより、汚水に含まれる微生物は、先ず、多孔質素材を覆う網状体に吸着固定化する。この時、汚水はポンプ、ブロア、攪拌機等によって排水処理槽内で対流しているため、網状体に吸着固定化した微生物の一部は剥がれ落ちるが、剥がれ落ちた微生物は、網状体の内部にある多孔質素材に吸着固定化する。
【0037】
更に、多孔質素材に吸着固定化した微生物の一部が剥がれ落ちても、多孔質素材の全体は、網状体により被覆されているため、多孔質素材から剥がれ落ちた微生物の一部は、再度網状態に吸着固定化する。このように、少なくとも二段階で微生物のバイオリアクター素子への吸着固定化を行うことができるため、大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0038】
上記の目的を達成するために、本発明のバイオリアクター素子を用いた排水の処理方法は、多孔質素材からなる糸状体が網目を形成するように配置された第1の網状体と、繊維系素材からなる糸状体が網目を形成し、前記第1の網状体の表裏面にそれぞれ隣接して、該第1の網状体を挟むように積層配置された第2の網状体から構成されたバイオリアクター素子に微生物を吸着固定化する工程と、微生物が吸着固定化した前記バイオリアクター素子を排水処理槽内に配置し、所定の排水処理を行う工程とを備えている。
【0039】
ここで、多孔質素材からなる第1の網状体の表裏面に隣接して、繊維系素材からなる第2の網状体を積層配置したバイオリアクター素子に微生物を吸着固定化する工程を有することにより、排水の生物処理において必要となる大量の微生物の吸着固定化を迅速に行うことができるとともに、排水処理も迅速に行うことができる。
【0040】
また、微生物が吸着固定化したバイオリアクター素子を排水処理槽内部に配置して、所定の排水処理を行う工程を有することにより、微生物による反応を利用して、排水を浄化することができる。