(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの合計100質量部に対して前記炭酸カルシウム粒子が10質量部以上50質量部以下の割合で配合されている、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の組成物では、難燃性が十分に確保されているとは言い難かった。また、耐曲げ白化性にも改善の余地があった。ここで、難燃剤の添加量を増加させれば難燃性を向上させることはできる。しかし、この場合、耐曲げ白化性は改善されず、さらに耐外傷性も低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐曲げ白化性と耐外傷性とを確保しながら、優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため、特に、難燃剤である炭酸カルシウムに着目して検討した。その結果、本発明者は炭酸カルシウムの平均粒径を特定の範囲にするとともに、炭酸カルシウム粒子、シリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物をそれぞれ、ベースとなる樹脂に対して特定の割合で配合することで難燃性及び耐外傷性の改善に有効であることが判明した。しかし、炭酸カルシウム粒子、シリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物をそれぞれ、ベースとなる樹脂に対して特定の割合で配合するだけでは、難燃性樹脂組成物の対曲げ白化性に十分な改善が見られなかった。そこで、さらに本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ベースとなる樹脂にエラストマーを配合することで耐曲げ白化性が改善することが判明した。すなわち、以下の発明により上記課題を解決しうることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、炭酸カルシウム粒子(C)と、シリコーン系化合物(D)と、脂肪酸含有化合物(E)とを含み、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との合計100質量%中の前記ポリオレフィン系樹脂(A)の含有率が40質量%以上90質量%以下、前記熱可塑性エラストマー(B)の含有率が10質量%以上60質量%以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との合計100質量部に対して前記炭酸カルシウム粒子(C)が
10質量部以上80質量部以下の割合で配合され、前記シリコーン系化合物(D)が1質量部以上10質量部以下配合され、前記脂肪酸含有化合物(E)が3質量部以上20質量部以下配合されるとともに、前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との合計100質量%に対して、ポリプロピレン系化合物を60質量%以上90質量%以下含む、ことを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた耐曲げ白化性と耐外傷性とを確保しながら、優れた難燃性をも確保することができる。
【0010】
なお、本発明者は、本発明の難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる理由については以下のように推察している。
【0011】
すなわち、炭酸カルシウム粒子とシリコーン系化合物と脂肪酸含有化合物とを用いることで、燃焼時に表面バリア層が形成されることにより、樹脂組成物の難燃効果が高まるのではないかと推察している。
【0012】
また本発明者は、上記難燃性樹脂組成物において、優れた耐曲げ白化性が得られる理由については以下のように推察している。
【0013】
曲げ白化とは、樹脂組成物を屈曲させたときに樹脂が白く変色する現象であり、白化した部分は耐温水性や耐電圧特性など各種特性が低下してしまう。白化が起こる原因としては、結晶性樹脂であるポリオレフィン系樹脂の結晶部分と炭酸カルシウム粒子やシリコーン化合物などの無機材料との間の界面の状態が屈曲により変化するために起こると考えられている。ここで、熱可塑性エラストマーを添加すると非晶質であるエラストマーが樹脂の結晶部分と無機材料との間に介在するため、ポリオレフィン系樹脂の結晶部分と無機材料との間の界面の状態変化が起こりにくくなり、その結果、優れた耐曲げ白化性が得られるのではないかと本発明者は推察している
【0014】
さらに本発明者は、上記難燃性樹脂組成物において、優れた耐外傷性が得られる理由については以下のように推察している。
【0015】
すなわち、外傷は、難燃性樹脂組成物の構成する材料のうち、ポリオレフィン系樹脂とその他の材料との界面が破壊の起点となって起こると考えられている。ここで、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の配合量をそれぞれ一定量以下とすることで、界面の量を少なくすることができる。その結果、優れた耐外傷性が得られるのではないかと本発明者は推察している。
【0016】
また、上記難燃性樹脂組成物において、前記炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.7μm以上2.2μm以下であることが好ましい。平均粒径が上述の範囲にあると、平均粒径が0.7μm未満の場合と比べてより優れた難燃性が得られる。また、平均粒径が2.2μmより大きい場合と比べてより優れた耐外傷性が得られる。
【0017】
上記難燃性樹脂組成物において、前記ポリオレフィン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの合計100質量部に対して前記炭酸カルシウム粒子が10質量部以上50質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、より優れた耐外傷性が得られる。
【0018】
上記難燃性樹脂組成物において、前記熱可塑性エラストマーがオレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。この場合、他の熱可塑性エラストマーに比べて、より優れた耐曲げ白化性が得られる。
【0019】
上記難燃性樹脂組成物において、前記炭酸カルシウム粒子は例えば重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0020】
上記難燃性樹脂組成物において、前記シリコーン系化合物がシリコーンガムであることが好ましい。この場合、ブルームが起こりにくくなる。
【0021】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸含有化合物がステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。この場合、前記脂肪酸含有化合物がステアリン酸マグネシウムでない場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0022】
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを有し、前記絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物で構成される絶縁電線である。
【0023】
なお、本発明において、「平均粒径」とは、複数個の炭酸カルシウム粒子をSEMで観察したときの2次元画像の面積Sをそれぞれ求め、これらの面積Sをそれぞれ円の面積に等しいと考え、これらの面積から下記式:
R=2×(S/π)
1/2
に基づいてそれぞれ算出したRの平均値を言うものとする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、優れた耐曲げ白化性と耐外傷性とを確保しながら、優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0027】
[絶縁電線]
図1は、本発明に係る絶縁電線の一実施形態を示す部分側面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、絶縁電線10は、内部導体1と、内部導体1を被覆する絶縁層2とを備えている。
【0028】
ここで、絶縁層2は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、炭酸カルシウム粒子(C)と、シリコーン系化合物(D)と、脂肪酸含有化合物(E)とを含み、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との合計100質量%中の前記ポリオレフィン系樹脂(A)の含有率が40質量%以上90質量%以下、前記熱可塑性エラストマー(B)の含有率が10質量%以上60質量%以下であり、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との合計100質量部に対して前記炭酸カルシウム粒子(C)が10質量部以上80質量部以下の割合で配合され、前記シリコーン系化合物(D)が1質量部以上10質量部以下配合され、前記脂肪酸含有化合物(E)が3質量部以上20質量部以下配合されるとともに、前記炭酸カルシウム粒子の平均粒径が2.2μm以下である。
【0029】
上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁層2は、優れた耐曲げ白化性と耐外傷性を確保しながら、優れた難燃性をも確保することができる。
【0030】
[絶縁電線の製造方法]
次に、上述した絶縁電線10の製造方法について説明する。
【0031】
(内部導体)
まず内部導体1を準備する。内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0032】
(難燃性樹脂組成物)
次に、難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ポリオレフィン系樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、炭酸カルシウム粒子(C)と、シリコーン系化合物(D)と、脂肪酸含有化合物(E)とを含んでいる。
【0033】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン‐エチルアクリレート共重合体、エチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリプロピレン系化合物、などが挙げられる。これらの中でもポリプロピレン系化合物を少なくとも含むことが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物はより優れた耐外傷性及び難燃性を確保できる。なお、ポリプロピレン系化合物としては、ホモポリプロピレン等のポリプロピレン単独の重合体や、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレンにコモノマー成分を含む共重合体などが挙げられる。
【0034】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン‐プロピレンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム等が挙げられる。また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、水素添加スチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体、スチレン‐イソプレン‐スチレン共重合体、スチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐エチレン・プロピレン‐スチレン共重合体、スチレン‐エチレン・ブチレン‐スチレン共重合体等が挙げられる。この場合、優れた耐曲げ白化性を確保することができる。
【0035】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、ポリオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマーとの合計100質量%中のポリオレフィン系樹脂の含有率が40質量%以上90質量%以下、熱可塑性エラストマーの含有率が10質量%以上60質量%以下である。ポリオレフィン系樹脂の含有率が40質量%未満であると、ポリオレフィン系樹脂の含有率が40質量%以上である場合に比べて、難燃性樹脂組成物は十分な耐外傷性を有することができない。一方ポリオレフィン系樹脂の含有率が90質量%を超えるとポリオレフィン系樹脂の含有率が90質量%以下である場合と比べて、難燃性樹脂組成物は十分な耐曲げ白化性を有することができない。また、熱可塑性エラストマーの含有率が10質量%未満であると熱可塑性エラストマーの含有率が10質量%以上である場合に比べて難燃性樹脂組成物は十分な耐曲げ白化性を有することができない。一方、熱可塑性エラストマーの含有率が60質量%を超えると、熱可塑性エラストマーの含有率が60質量%以下である場合に比べて、難燃性樹脂組成物は十分な耐外傷性を有することができない。
【0036】
(炭酸カルシウム粒子)
炭酸カルシウム粒子は、重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムが好ましい。中でも、入手が容易で且つ低価格であることから、重質炭酸カルシウムがより好ましい
【0037】
炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、2.2μm以下である。炭酸カルシウム粒子の平均粒径が2.2μmより大きい場合、難燃性樹脂組成物は十分な耐外傷性を確保できない。炭酸カルシウム粒子の平均粒径は1.7μm以下であることがより好ましい。また、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、0.7μm以上であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物はより優れた難燃性を確保できる。
【0039】
また、炭酸カルシウム粒子は50質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、炭酸カルシウム粒子の配合割合が50質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物はより優れた耐外傷性と耐白化性を確保できる。
【0040】
(シリコーン系化合物)
シリコーン系化合物は、難燃助剤として機能するものであり、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、ビニル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。中でも、ジメチルポリシロキサンが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物はより優れた難燃性を確保できる。
【0041】
また、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンパウダー、シリコーンガム、シリコーンオイル又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、ブルームが起こりにくくなる。
【0042】
シリコーン系化合物は、ポリオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の割合で配合される。シリコーン系化合物の配合割合が1質量部未満である場合、難燃性樹脂組成物は十分な難燃性を確保できない。また、シリコーン系化合物の配合割合が10質量部より大きい場合、難燃性樹脂組成物は十分な耐外傷性を確保できない。シリコーン系化合物の配合割合は好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
【0043】
シリコーン系化合物は、炭酸カルシウム粒子の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中に含まれる各炭酸カルシウム粒子の表面全体がシリコーン系化合物で被覆されていることが好ましい。この場合、炭酸カルシウム粒子をベースとなる樹脂中に容易に分散させることができるため、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0044】
炭酸カルシウムの表面にシリコーン系化合物を付着させる方法としては、例えば炭酸カルシウム粒子にシリコーン系化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕する方法が挙げられる。
【0045】
(脂肪酸含有化合物)
脂肪酸含有化合物は、難燃助剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を含有するものを言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0046】
脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。この場合、ステアリン酸マグネシウム以外の脂肪酸金属塩を用いる場合に比べてより優れた難燃性が得られる。
【0047】
脂肪酸含有化合物は、上述したようにポリオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対して3質量部以上20質量部以下の割合で配合される。脂肪酸含有化合物の配合割合が3質量部未満である場合、難燃性樹脂組成物は十分な難燃性を確保できない。また、脂肪酸含有化合物の配合割合が20質量部より大きい場合、難燃性樹脂組成物は十分な耐外傷性を確保できない。脂肪酸含有化合物の配合割合はより好ましくは5質量部以上10質量部以下である。
【0048】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤、カーボンブラックなどの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0049】
上記難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、炭酸カルシウム、シリコーン系化合物、脂肪酸含有化合物等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン系化合物の分散性を向上させる観点からは、ベースとなる樹脂の一部とシリコーン系化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、炭酸カルシウム粒子及び脂肪酸含有化合物等と混練してもよい。
【0050】
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆し絶縁層2を形成する。こうして絶縁電線10が得られる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では絶縁電線10は、内部導体1と内部導体1を被覆し、上記難燃性樹脂組成物で構成された絶縁層2を備えているが、絶縁層2をさらに被覆するシース層を備えていても良い。この時、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、シース層のみが上記難燃性樹脂組成物で構成されていてもよい。また、同軸ケーブルのように絶縁層2とシース層との間に外部導体をさらに有していてもよい。
【0052】
また上記実施形態では、本発明の難燃性樹脂組成物がケーブルの絶縁層を構成する材料として用いられているが、本発明の難燃性樹脂組成物は、チューブ、テープ、包装材、建材などにも使用することが可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12)
ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、炭酸カルシウム粒子、シリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物を、表1〜5に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1〜5において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜5において、「ポリオレフィン系樹脂」の欄の配合量と「熱可塑性エラストマー」の欄の配合量との合計が100質量部となっていない。これは、シリコーン系化合物を含むシリコーンMB中にポリオレフィン系樹脂が含まれており、「ポリオレフィン系樹脂」と「熱可塑性エラストマー」の欄の配合量とシリコーンMB中のポリオレフィン系樹脂の配合量とを合計すれば100質量部となる。
【0055】
上記ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、炭酸カルシウム粒子、シリコーン系化合物、及び脂肪酸含有化合物としては、具体的には下記のものを用いた。なお、比較例として炭酸カルシウム粒子の代わりに金属水酸化物を難燃剤として添加した難燃性樹脂組成物も作成した。
【0056】
(A)ポリオレフィン系樹脂
(A−1)ホモポリプロピレン
プライムポリプロ E−111G(商品名、プライムポリマー社製)
(A−2)ブロックポリプロピレン
プライムポリプロ E−150GK(商品名、プライムポリマー社製)
(A−3)ランダムポリプロピレン
プライムポリプロ B221WA(商品名、プライムポリマー社製)
(A−4)ポリエチレン
ハイゼックス 5305E(商品名、プライムポリマー社製)
(A−5)エチレン‐エチルアクリレート共重合体
レクスパールEEA A1150(商品名、日本ポリエチレン社製、)
【0057】
(B)熱可塑性エラストマー
(B−1)スチレン系熱可塑性エラストマー
ダイナロン 1320P(商品名、JSR社製)
(B−2)スチレン系熱可塑性エラストマー
セプトン 4033(商品名、クラレ社製)
(B−3)オレフィン系熱可塑性エラストマー
タフマー XM5070(商品名、クラレ社製)
【0058】
(C)炭酸カルシウム粒子
(C−1)炭酸カルシウム粒子(平均粒径0.7μm)
ソフトン3200(商品名、白石カルシウム社製)
(C−2)炭酸カルシウム粒子(平均粒径1.7μm)
NCC−P(商品名、日東粉化社製)
(C−3)炭酸カルシウム粒子(平均粒径2.2μm)
ソフトン1000(商品名、白石カルシウム社製)
(C−4)炭酸カルシウム粒子(平均粒径3.6μm)
BF300(商品名、白石カルシウム社製)
【0059】
(D)シリコーン系化合物
シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)
X‐22‐2101(商品名、信越化学社製)
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PPとを含有
【0060】
(E)脂肪酸含有化合物
ステアリン酸マグネシウム
エフコケムMGS(商品名、ADEKA社製)
【0061】
(F)金属水酸化物
水酸化マグネシウム
マグシーズN−6(商品名、神島化学社製)
【0062】
次いで、上記のようにして得られた難燃性樹脂組成物を単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数1本/直径0.5mm)上に、厚さ0.25mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を得た。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0063】
上記のようにして得られた実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線について、以下のようにして難燃性、耐外傷性及び耐曲げ白化性の評価を行った。
【0064】
<難燃性>
(45度傾斜燃焼試験)
実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線についての難燃性の評価は、45度傾斜燃焼試験(ISO 6722)に基づいて以下の手順で行った。すなわち、先ず絶縁電線を600mm切り出してサンプルとし、このサンプルを水平面に対して45°の角度に傾けた状態で固定した。次に、サンプルの下端に所定の大きさのバーナーの炎を15秒間接炎した。ただし、接炎の途中で絶縁電線の導体が露出した場合は、その時点でバーナーの炎をサンプルから離して接炎を終了した。そして、接炎終了後からサンプルが自己消火するまでの時間を測定した。上記45度傾斜燃焼試験の結果を表1〜5に示す。表1〜5においては、接炎終了後から70秒以内に自己消火し、かつサンプルの上部が50mm以上残ったものを合格とし、表1〜5の「難燃性」の欄に「○」と表記した。また、接炎終了後から70秒以内に自己消火しなかったもの、又はサンプルの上部が50mm以上残らなかったものは不合格として、表1〜5の「難燃性」の欄に「×」と表記した。
【0065】
<耐外傷性>
実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線についての耐外傷性の評価は、スクレープ試験(JASO D618:2008)に基づいて以下の手順で行った。すなわち、実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線を長さ1mに切り出し、φ0.45mmのニードルを、荷重7Nで絶縁電線の表面に押し当てながら、絶縁電線の表面上を往復摩耗させ、ニードルが絶縁電線内の導体に接触するまでのニードルの往復回数を測定した。そして、絶縁電線をニードルに対して移動させた後、その長手方向を中心軸として90°回転させ、そのときニードルに対向する箇所でも上記と同様に往復回数を測定した。この操作を12回繰り返して行い、それぞれの絶縁電線について、往復回数の最小値を「スクレープ回数」とした。実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線についてのスクレープ回数(回)を表1〜5に示す。上記スクレープ試験においては、スクレープ回数が50回以上である場合を合格とし、50回未満である場合を不合格とした。
【0066】
<耐曲げ白化性>
実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線についての耐曲げ白化性の評価は、巻き付け試験(JASOD618:2008)に基づいて以下の手順で行った。
図3の試験装置の概略図を参照しながら詳細を説明する。すなわち、実施例1〜17、参考例1及び比較例1〜12の絶縁電線を長さ1mに切り出し、マンドレル20に5周巻き付け、ケーブル両端にそれぞれ2.5kgの錘30を固定し、荷重を掛けた。この状態で、ケーブルのマンドレルに巻き付けられたた部分を目視で確認した。巻き付け試験の結果を表1〜5に示す。ケーブルが白く変色していない場合、表1〜5の「耐曲げ白化性」の欄に「○」と標記した。また、ケーブルが白く変色している場合、表1〜5の「耐曲げ白化性」の欄に「×」と標記した。なお、巻き付け試験には直径R=1mmとR=3mmの2種類のマンドレルを用意し、どちらかでも「○」の場合を合格、2種類とも「×」になった場合を不合格とした。
【0067】
表1〜5に示す結果より、実施例1〜17の絶縁電線は、難燃性、耐外傷性及び耐曲げ白化性について合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜12の絶縁電線は、難燃性、耐外傷性及び耐曲げ白化性のいずれかについて合格基準に達していなかった。
【0068】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた耐曲げ白化性と耐外傷性とを確保しながら、優れた難燃性をも確保することができることが確認された。