【課題を解決するための手段】
【0010】
これら目的を解決するために、1000℃を超える固相線温度を有する複数の金属熱交換平板を備える、取り外し不能に接合された平板熱交換器を生産する方法が提供される。これら平板は、互いに隣り合って設けられ、第1の媒体のための第1の平板空間及び第2の媒体のための第2の平板空間を有する平板パッケージを形成し、第1及び第2の平板空間は平板パッケージ中に交互に設けられている。熱交換平板それぞれは、熱伝導領域と、この熱伝導領域の周りに延びる曲げ端部を備える端部領域と、を備える。平板の第1の表面は凸形状を形成し、平板の第2の表面は凹形状を形成し、熱伝導領域は、隆起部と、窪み部と、を備える波型部を備える。これら平板の波型部と
、曲げ
端部と、は平板をプレス加工することによって提供される。本方法は、第1の平板の第1の凸面の少なくとも一部上に、
融点降下組成物を適用するステップであって、
融点降下組成物が、・第1の平板の溶融温度を低下させるための少なくとも25重量%のリン及び珪素を備える
融点降下成分、及び・任意に、第1の表面上への
融点降下組成物の適用を容易化するためのバインダ成分を備える、ステップと、第2の平板の第2の凹面を、平板を平板パッケージの中に積み重ねることによって、第1の凸面上の
融点降下組成物に接触させるステップと、第1及び第2の平板を、1000℃を超える温度に加熱するステップであって、それによって第1の平板の表面層が溶融し、
融点降下成分とともに、第1の平板と、第2の平板と、の間の接触点で第2の平板と接触している溶融金属層を形成するように、第1の平板の前記第1の凸面を溶融させる、ステップと、平板パッケージ中の平板間の接触点で接合部が得られ
、曲げ
端部が平板パッケージ中の平板の曲げ端部間に緊密な適合度を形成するように、溶融金属層を凝固させるステップと、を備える。
【0011】
平板の金属は、例えば鉄ベース、ニッケルベース、及びコバルトベースの金属合金の形態を有することができ、これはそれらが通常、1000℃以上の固相線温度を有するからである。平板は、1000℃以上の固相線温度を有さない純アルミニウム又はアルミニウムベースの合金から作成しない方が良い場合がある。平板の中の金属、又は平板それ自体でさえ、「母材金属」又は「母材」として参照される場合がある。この明細書では、「鉄ベースの」合金は、合金中の全ての元素の中の最も大きな重量パーセント(wt%)を鉄が有する合金である。対応する状況もまた、ニッケルベース、コバルトベース、クロムベース、及びアルミニウムベースの合金に対して適用される。
【0012】
示したように、
融点降下組成物は少なくとも1つの成分を備え、この成分は
融点降下成分である。任意には、
融点降下組成物はバインダ成分を備える。少なくとも第1の平板の融点を降下させるのに貢献する
融点降下組成物の全ての物質又は一部は、
融点降下成分の一部と考えられる。少なくとも第1の平板の融点を降下させるのには関与しないが、代わりに、例えばペースト、塗料又はスラリーを形成するような、
融点降下組成物を「結合させる」
融点降下組成物の部分は、バインダ成分の一部と考えられる。勿論、
融点降下成分は、少量のフィラー金属のような他の成分を含むことができる。しかし、溶融抑制成分の少なくとも25重量%はリン及び珪素を備えるので、そのようなフィラー金属が
融点降下成分の75重量%以上に相当する場合はない。フィラー金属が
融点降下組成物に含まれる場合、それは常に
融点降下成分の一部である。
【0013】
この明細書において、「リン及び珪素」は、
融点降下成分におけるリンと珪素の合計を重量%の計算値として意味する。ここで重量%(wt%)は、質量分率に100をかけることによって決定される。知られているように、成分における物質の質量分率は、その物質の質量濃度(成分におけるその物質の密度)の成分の密度に対する比率である。したがって、例えば、少なくとも25重量%のリン及び珪素は、リンと珪素との合計の重量が100gの
融点降下成分の試料中に少なくとも25g存在することを意味する。明らかに、
バインダ成分が
融点降下組成物の中に備えられている場合には、
融点降下組成物の中のリン及び珪素の重量%は25重量%未満とすることができる。しかし、少なくとも25重量%のリン及び珪素は、
融点降下成分の中に常に存在し、示されたように、含まれてもよいフィラー金属をも含む、すなわち、フィラー金属は常に
融点降下組成物の一部として理解される。
【0014】
「リン」は
融点降下成分の中の全てのリンを含み、それは、リン元素だけでなく、リン化合物中のリンをも含む。対応して、「珪素」は
融点降下成分の中の全ての珪素を含み、それは、珪素元素だけでなく、珪素化合物中の珪素をも含む。したがって、
融点降下成分の中のリン及び珪素の両方が、様々なリン化合物及び珪素化合物においてリン及び珪素によって示されている。
【0015】
明らかに、
融点降下組成物は、既存のろう付け物質とは非常に異なっており、これは、既存のろう付け物質がリン及び珪素のような
融点降下物質に対するより多くの充填金属を有しているからである。一般的に、ろう付け物質は、18重量%未満のリン及び珪素を有する。
【0016】
本方法は、フィラー金属を削減するか、又は除くことができること、及び異なる材料からなる金属平板に適用することができることで有利である。勿論、
融点降下組成物は、第2の金属平板にも同様に適用することができる。
【0017】
リンは、リン元素並びに、少なくとも以下の化合物:マンガンリン化物、鉄リン化物、及びニッケルリン化物、のいずれかから選択されたリン化合物のリンに由来する場合がある。珪素は、珪素元素並びに、少なくとも以下の化合物:珪素炭化物、シリコンボライド、及びフェロシリコン、のいずれかから選択された珪素化合物の珪素に由来する場合がある。
【0018】
融点降下成分は、少なくとも25重量%、少なくとも35重量%、及び少なくとも55重量%のリン及び珪素を備えることができる。これは、いずれかのフィラー金属が存在する場合には、それは75重量%未満、65重量%未満、それぞれ45重量%未満の量で存在するということを意味する。
【0019】
リンは、溶融抑制化合物のリン及び珪素含有量の少なくとも10重量%を構成することができる。これは、
融点降下成分が少なくとも25重量%のリン及び珪素を備えるときには、
融点降下成分は少なくとも2.5重量%のリンを備えることを意味する。珪素は、溶融抑制化合物のリン及び珪素含有量の少なくとも55重量%を構成することができる。
【0020】
融点降下成分は、50重量%未満の金属元素、又は10重量%未満の金属元素を備えることができる。そのような金属元素は、上述の「金属フィラー」に対応する。ろう付け成分は少なくとも60重量%の金属元素を備えるので、そのような少量の金属元素又は金属フィラーは、
融点降下組成物を例えば既知のろう付け成分から完全に差別化する。ここで、「金属元素」は、例えば周期表のdブロックの元素であるすべての遷移金属を含み、これらは周期表のグループ3〜12を含む。これは、例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、及びモリブデン(Mo)は「金属元素」であることを意味する。「金属元素」ではない元素は、希ガス、ハロゲン、及び以下の元素:ボロン(B)、炭素(C)、珪素(Si)、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、及びテルル(Tu)である。例えば、リンがマンガンリン化物化合物に由来する場合には、この化合物のマンガン部分は金属元素であり、一実施形態においては50重量%未満でなければならず、また別の実施形態では10重量%未満でなければならない金属元素に含まれるということに注意されたい。
【0021】
平板は0.3〜0.6mmの厚みを有することができ、したがって
融点降下組成物を適用するステップは、第1の平板21の第1の凸面16上にmm
2当たり平均0.02〜1.00mgのリン及び珪素を適用するステップを備える
ことができる。第1の平板の表面上にmm
2当たり平均0.02〜1.00mgのリン及び珪素を適用するステップは、例えば第2の平板から第1の平板へ移転されるリン及び珪素の、例えば第2の平板を介した間接的な適用を含む。したがって、ここで参照されるリン及び珪素は、第1の平板21の表面層の溶融に依然として貢献する限り、第1の金属平板上に直接、適用される必要はない。
【0022】
第1の平板は0.6〜1.0mmの厚みを有することができ、したがって
融点降下組成物を適用するステップは、第1の平板の表面上にmm
2当たり平均0.02〜1.00mgのリン及び珪素を適用するステップを備える
ことができる。前と同様に、この適用は第2の平板を介した間接的な「適用」をも含む。
【0023】
第1の平板は1.0mmを超える厚みを有することができ、したがって
融点降下組成物の適用は、第1の平板の表面上へのmm
2当たり平均0.02〜5.0mgのリン及び珪素の適用を備える
ことができる。
【0024】
融点降下組成物を適用するステップは、平板をプレス加工する前に行われ
てもよい。
融点降下組成物の適用は、代替的に平板のプレス加工の後に行われ
てもよい。
【0025】
融点降下組成物を適用するステップは、
平板を積み重ねて平板パッケージを形成した後に、融点降下組成物を含有する懸濁液を、平板パッケージを通じて流すことによっ
て行われることもさらに可能である。
【0026】
融点降下組成物を適用するステップは、スクリーン印刷によって、又は平板に切断されるコイル上にスパッタリングすることによって行うことができる。
【0027】
第1の表面は、前記第1の表面部分上の前記接触点によって画定された面積よりも大きな面積を有し、それによって溶融金属層の金属が、接合部を形成可能であるときに、接触点へ流れる。そのような流れは、典型的には毛細管現象によって引き起こされる。
【0028】
表面の面積は、接触点によって画定された面積より少なくとも3倍大きい。表面の面積は、接触点によって画定された面積より少なくとも10、20、又は30倍大きいように、さらに大きくさえ(又は接触点を相対的に小さく)することができる。表面の面積は、溶融した金属が流れて接合部を形成する表面の面積を参照する。
【0029】
表面の面積は、接合部の断面積より少なくとも3倍又は少なくとも10倍大きくすることができる。表面の面積は、接触点によって画定される面積より少なくとも6倍又は10倍大きくなるように、より大きく(又は接合部の断面積を相対的に小さく)することができる。接合部の断面積は、接触点がその最小の大きさ(断面積)で配置されている表面に平行な平面に亘って接合部が有する断面積として規定することができる。
【0030】
平板は、
i)>50重量%Fe、<13重量%Cr、<1重量%Ni、及び<3重量%Mn;
ii)>90重量%Fe;
iii)>65重量%Fe及び>13重量%Cr;
iv)>50重量%Fe、>15.5重量%Cr、>6重量%Ni;
v)>50重量%Fe、>15.5重量%Cr、1〜10重量%Mo及び>8重量%Ni
vi)>97重量%Ni;
vii)>10重量%Cr、>60重量%Ni;
viii)>15重量%Cr、>10重量%Mo、及び>50重量%Ni;
ix)>70重量%Co;
x)>80重量%Cu;及び
x
i)>10重量%Fe、0.1〜30重量%Mo、0.1〜30重量%Ni、及び>50重量%Co、
のいずれかを備えることができる。
【0031】
上述は、第1の平板、及び第2の平板も同様に、非常に多くの異なる合金からなることができることを意味する。明らかに、上述の例は工業において一般的であるように、他の金属又は元素とのバランスがとられている。
【0032】
また別の特徴によれば、1000℃を超える固相線温度を有する複数の金属熱交換器平板を備える平板熱交換器が提供される。平板は、互いに隣り合って設けられ、第1の媒体のための第1の平板空間及び第2の媒体のための第2の平板空間を有する平板パッケージを形成し、第1及び第2の平板空間は平板パッケージ中に交互に設けられている。熱交換平板それぞれは、熱伝導領域と、この熱伝導領域の周りに延びる曲げ端部を備える端部領域と、を備える。平板の第1の表面は凸形状を形成し、平板の第2の表面は、凹形状を形成し、熱伝導領域は、隆起部と、窪み部とからなる波型部を備える。そのような平板の波型部と、曲げ端部とは、平板をプレス加工することによって提供される。平板熱交換器は、上述の方法によって、又はその実施形態のいずれかによって生産される。
【0033】
本発明のまた別の特徴によれば、平板熱交換器は接合部によって第2の平板と接合される第1の平板を備え、平板は1000℃を超える固相線温度を有し、接合部は、少なくとも50重量%の金属元素を備え、これら金属元素は、接合部を取り囲む領域(A1)から引き込まれているとともに、第1の平板及び第2の平板のいずれかの一部であった、平板熱交換器が提供される。
【0034】
本方法の様々な目的、特徴、観点及び利点、製品、及び
融点降下組成物が、以下の詳細な説明から、並びに図面から明らかとなる。
【0035】
本発明の実施形態が、例示の方法によって、添付の図面を参照して以下に記載される。