特許第6290393号(P6290393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290393電気活性ポリマー、その製造方法、電極及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290393
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】電気活性ポリマー、その製造方法、電極及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/14 20060101AFI20180226BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20180226BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20180226BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20180226BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20180226BHJP
   H01G 11/54 20130101ALI20180226BHJP
【FI】
   C08F10/14
   H01M4/60
   H01M4/137
   H01M4/90 Y
   H01G11/30
   H01G11/54
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-524690(P2016-524690)
(86)(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公表番号】特表2016-531971(P2016-531971A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2013002018
(87)【国際公開番号】WO2015003725
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ホイプラー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ジグマー シューベルト
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−055301(JP,A)
【文献】 特開平01−263646(JP,A)
【文献】 特開平03−000754(JP,A)
【文献】 特開2010−150312(JP,A)
【文献】 特開平09−087326(JP,A)
【文献】 米国特許第06403239(US,B1)
【文献】 米国特許第04898915(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
H01G 11/00− 11/86
H01M 4/00− 4−98
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元活性物質としての、式I
【化1】
(式中、
Arは、式IIIa、IIIb、IIIc又はIIId
【化2】
(式中、基IIIa中の共有結合は他の共有結合に対して2位、3位又は4位にあり、
基IIIb中の共有結合は1,2−位又は2,3−位又は1,8−位にあり、
基IIIc中の共有結合は1,2−位又は2,3−位にあり、
基IIId中の共有結合は1,2−位又は3,4−位にあり、
13、R14、R15及びR16は互いに独立して水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、炭化水素カルボニル、カルボキシル、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ニトロ、ヒドロキシル、ハロゲンであり、又は2つの隣接するアルキル置換基は環系を形成し得るか又は2つの隣接するカルボニル基は窒素原子と一緒に5員又は6員のイミド環を形成し、
a、b、c及びdは互いに独立して0〜3の間の整数である)
の基であり、
Xは−CR−、−CO−から選択される二価の基であり、
〜Rは互いに独立して水素又はアルキルであり、
はメチレン基又はフェニレン基又は共有結合であり、且つ
10、R11及びR12は互いに独立して水素又はC〜Cアルキルである)
の少なくとも2つの構造単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物と組み合わせた、導電性材料を含む電極。
【請求項2】
〜Rが水素である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
が共有結合又はフェニレンであり、R10、R11及びR12が水素であるか又はR10、R11及びR12のうちの1つがメチルであり且つ他の2つが水素であり、且つXがメチレン又はカルボニルである、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
更にバインダー剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
請求項1に記載のオリゴマー又はポリマー化合物を、金属、半導電性無機材料又は導電性又は半導電性有機材料と組み合わせて使用する、請求項1又はに記載の電極。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの少なくとも2つの構造単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物を、酸化還元活性物質として、電気エネルギーの貯蔵手段に用いる使用。
【請求項7】
電気エネルギーの貯蔵手段が電池、レドックスフロー電池、燃料電池又はキャパシタである、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の開示
本発明は、電気活性ポリマー及びその製造方法に関する。ポリマーは、電池などの様々なエネルギー貯蔵デバイスに使用できる電極の製造に使用され得る。活性電極材料として本発明のポリマー化合物を含有するエネルギー貯蔵のための装置は、高電圧用に設計されており、高効率、高出力密度及び長い寿命を有し得る。
【0002】
ポリイミドなどの有機ポリマーは、エネルギー貯蔵装置の構成要素として知られている。
【0003】
フタルイミドポリマーは、電子部品用の包装材料として使用され得る(国際公開第2011078321号パンフレット)。
【0004】
フタルイミド単位を含むコポリマーは、太陽電池パネル(中国特許第101826599号明細書)において活物質として使用され得る。
【0005】
フタルイミド含有ポリマーは、電気化学部品(国際公開第2013009750号パンフレット、国際公開第2012161180号パンフレット、中国特許第102522528号明細書、中国特許第102383222号明細書、国際公開第2012027917号パンフレット、特開第2011060560号公報、特開第2010146839号公報、中国特許第101752539号明細書)におけるセパレータ材料として提案されている。これらの材料を電気活性要素として使用することは開示されていない。
【0006】
US−A−2010/0167129号は、フタルイミド含有ポリマーを、リチウムイオン電池において、固体電解質界面(SEI)として使用することを開示している。これらのポリマーは、熱損傷から電池を保護するために使用されている。
【0007】
ポリイミド含有ポリマーは、電極用のバインダーを含む一般的な目的のためのバインダーとして提案されている(特開第2012−129068号公報)。これらの材料を電気活性成分として使用することは開示されていない。
【0008】
ポリイミド含有ポリマーをバインダー添加剤として二次電池に用いる使用も開示されている(国際公開第2013/002369号パンフレット、特開第2012−256542号公報、特開第2012−252841号公報、日本国特許第5099394号公報、米国特許出願公開第2012/0315537号明細書、国際公開第2012/170789号パンフレット、特開第2012−238396号公報、特開第2012−209219号公報、特開第2012−204203号公報、国際公開第2012/132396号パンフレット、国際公開第2012/132059号パンフレット、国際公開第2012/132060号パンフレット、国際公開第2012/115093号パンフレット、米国特許出願公開第2012/0196184号明細書、国際公開第2012/017738号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0311871号明細書、特開第2011−216320号公報、特開第2011−187169号公報、国際公開第2011/068097号パンフレット、特開第2011−009129号公報、米国特許出願公開第2010/0330424号明細書、特開第2010−205609号公報、特開第2010−73572号公報、米国特許出願公開第2009/0246632号明細書、欧州特許第2104175号明細書、国際公開第2008/117236号パンフレット、米国特許出願公開第2008/0057396号明細書、特開第2004−247233号公報及び国際公開第1998035397号パンフレット)。電気エネルギー貯蔵のためにこれらのポリマーを使用することは開示されていない。
【0009】
フタルイミド含有二酸化ケイ素含有ハイブリッド樹脂は、二次電池における電極材料として提案されている。ポリマーは、二酸化ケイ素粒子のためのバインダー樹脂として使用されている(特開第2011−086427号公報、国際公開第2011/045907号パンフレット、特開第2011−076743号公報、特開第2009−245773号公報、特開第2009−076373号公報、米国特許出願公開第2009/0087731号明細書)用のバインダー樹脂として使用されている。
【0010】
ポリイミド含有ポリマーを活性アノード又はカソード材料として有機二次電池に用いる使用も知られている(国際公開第2012/141532号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0217577号明細書、国際公開第2012/170789号パンフレット、国際公開第2009/113585号パンフレット、国際公開第2011/071106号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0076534号明細書、特開第2011−060559号公報、特開第2008−282550号公報、国際公開第2012/147930号パンフレット、中国特許第102683744号明細書)。
【0011】
従来のポリイミドは、ポリマー骨格内にポリマー単位を含む。従来のタイプの典型的なポリイミドは、以下の式
【化1】
(式中、Arは四価の芳香族基であり、Ar’は二価の芳香族基であり、pは繰り返し単位の数、従って、ポリマー骨格の長さを示す整数である)
によって表される。
【0012】
従って、従来のポリイミドでは、活性単位はポリマー骨格中にある。所定の酸化還元電位の選択は、一般に、一種類のモノマーだけがポリイミドの製造において使用されるので困難である。更に、これらのポリイミドは製造するのが困難である。一般に、多段階合成は、芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンとの縮合から出発する必要があり、その結果、不完全に縮合したアミドカルボン酸が得られる。これは一般に処理され、その後に、ポリイミドへの最終的な縮合が行われる。最終的なポリイミドは、もはや可溶性でないことが多く、処理するのが困難である。実験は、これらのポリイミドの活性物質としての容量が、理論的に可能な容量をはるかに下回っていることを示した。
【0013】
驚くことに、新規なポリイミド基含有ポリマーが、酸化還元活性電極材料としてアノード又はカソードにおいて特に適用可能であることが見出された。
【0014】
新規なポリマーは、容易に入手可能な出発材料から製造することが容易である。本発明のポリマーの酸化還元電位は、適切な置換基を有するモノマーを選択することによって所定の値に適合させることができる。更に、本発明のポリマーは、高容量を有し且つ長寿命を示す。
【0015】
本発明の一課題は、酸化還元活性物質としてエネルギー貯蔵用途に適しており、且つ高い酸化還元容量、長寿命により従来技術の材料から区別されるポリマーを提供することである。
【0016】
本発明の別の課題は、調製が容易であり且つ容易に入手可能な出発材料から誘導されるポリマーを提供することである。
【0017】
本発明の別の課題は、容易に実施され且つ高収率のポリマーをもたらす酸化還元活性イミドポリマーの製造方法を提供することである。
【0018】
本発明は、以下の式I
【化2】
(式中、
Arは、イミド窒素原子と一緒に5員環又は6員環を形成するAr基の2つの炭素原子に結合される2つのカルボニル炭素原子を有する炭素環式芳香族基又は複素環式芳香族基であり、
Xは−CR−、−CO−、−SiR−、−P(O)R−、−P(O)(OR)−、−PR−、−P(OR)−、−S(O)−又は−S(O)−から選択される二価の基であり、
〜Rは互いに独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリール基であり、
は二価の炭化水素基又は共有結合であり、且つ
10、R11及びR12は互いに独立して水素又はC〜Cアルキルであるか又はR10及びR11又はR10及びR12は、それらが結合される炭素原子と一緒に脂環式環又は二環式脂肪族系を形成する)
の少なくとも2つの構造単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物に関する。
【0019】
本願明細書で使用される「オリゴマー」との用語は、式Iの繰り返し単位の数が2〜10の間である重合度の低い化合物を意味する。
【0020】
本願明細書で使用される「ポリマー」との用語は、式Iの繰り返し単位の数が10を上回る重合度の高い化合物を意味する。
【0021】
Arは、非置換又は置換の炭素環式芳香族炭化水素基又は非置換又は置換の複素環式芳香族基である。Arは少なくとも1つの芳香族核を有する。
【0022】
炭素環式芳香族Ar基は、1つ以上の炭素環式芳香族核、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの炭素環式芳香環を有する基である。芳香環は、縮合系を形成し得るか又はそれらは、共有結合を介して及び/又は架橋基、例えば、酸素、カルボニル、硫黄又はメチレンを介して互いに結合され得る。炭素環式芳香族基の例は、フェニレン(o−、m−又はp−フェニレン)、ナフチレン、アントラセニレン又はペリレニレンである。
【0023】
複素環式芳香族Ar基は、好ましくは、窒素、酸素若しくは硫黄又はそれらの組み合わせの群から選択される1つ又は2つの環ヘテロ原子を有する、1つ以上の複素環式芳香環を有する基である。芳香環は、縮合系を形成し得るか又はそれらは共有結合を介して及び/又は架橋基、例えば、酸素、カルボニル、硫黄又はメチレンを介して、互いに結合され得る。複素環式芳香族基の例は、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピラン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チオピラン、インドール及びビピリジンである。
【0024】
炭素環式芳香族又は複素環式芳香族Ar基は、芳香環の他に非芳香族飽和環又はエチレン性不飽和環を含有し得る。これらの環は芳香環と縮環され得るか又はそれらは共有結合を介して又は架橋基を介して芳香環に結合されるか又はそれらは芳香環と一緒に二環系又は多環系を形成する。
【0025】
これらの炭素環式又は複素環式芳香族基は、非置換であるか又は1つ以上の置換基、好ましくは1つ又は2つの置換基を有する。置換基の例は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アラルキルオキシ、カルボン酸、スルホン酸、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、炭化水素−カルボニル、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、ニトリル又はハロゲン原子若しくはこれらの基又は原子からの2つ以上の組み合わせである。
【0026】
本願明細書で使用されるアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であってよい。アルキル基は、通常、1〜30個の炭素原子、好ましくは、1〜20個の炭素原子を有する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル又はエイコシルである。好ましいのは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0027】
本願明細書で使用されるアルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状であってよい。アルケニル基は、通常、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜20個の炭素原子を有する。アルケニル基は、通常、1つのエチレン性不飽和二重結合を有し、該基の残り部分は飽和している。2つ以上のエチレン性不飽和二重結合は可能であるが、あまり好ましくない。好ましくは、エチレン性不飽和二重結合は、アルケニル基のアルファ位にある。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、sec−ブテニル、ペンテニル、n−ヘキセニル、n−ヘプテニル、2−エチルヘキセニル、n−オクテニル、n−ノネニル、n−デセニル、n−ウンデセニル、n−ドデセニル、n−トリデセニル、n−テトラデセニル、n−ペンタデセニル、n−ヘキサデセニル、n−ヘプタデセニル、n−オクタデセニル、n−ノナデセニル又はエイコセニルである。好ましいのは、2個及び3個の炭素原子を有するアルケニル基であり、最も好ましいのはビニル、特にアリルである。
【0028】
本願明細書で使用されるアルキニル基は直鎖状又は分枝鎖状であってよい。アルキニル基は、通常、2〜30個の炭素原子、好ましくは、2〜20個の炭素原子を有する。アルキニル基は、通常、1個のエチレン性不飽和三重結合を有し、該基の残り部分は飽和している。2つ以上のエチレン性不飽和三重結合は可能であるが、あまり好ましくない。好ましくは、エチレン性不飽和三重結合は、アルキニル基のアルファ位にある。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、n−ヘキシニル、n−ヘプチニル、2−エチルヘキシニル、n−オクチニル、n−ノニニル、n−デシニル、n−ウンデシニル、n−ドデシニル、n−トリデシニル、n−テトラデシニル、n−ペンタデシニル、n−ヘキサデシニル、n−ヘプタデシニル、n−オクタデシニル、n−ノナデシニル又はエイコシニルである。好ましいのは2つの炭素原子を有するアルキニル基である。
【0029】
本願明細書で使用されるアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル部分を有し得る。アルコキシ基は、通常、アルキル部分に、1〜30個の炭素原子、好ましくは、1〜20個の炭素原子を有する。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−トリデシルオキシ、n−テトラデシルオキシ、n−ペンタデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ、n−オクタデシルオキシ又はエイコシルオキシである。好ましいのは、アルキル部分に1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0030】
本願明細書で使用されるシクロアルキル基は、通常、5個、6個又は7個の環炭素原子を有する環式基であり、これらは、例えば、アルキル基で置換され得るか又は2つのアルキル基はそれらが結合される環炭素原子と一緒に別の炭素環式環を形成する。シクロアルキル基の例はシクロヘキシルである。
【0031】
本願明細書で使用されるシクロアルコキシ基は、通常、5、6又は7炭素原子を有する環式基であり、その1つは酸素原子に共有結合している。シクロアルコキシ基の環炭素原子は、例えば、アルキル基で置換され得るか、又は2つのアルキル基はそれらが結合される環炭素原子と一緒に別の炭素環式環を形成し得る。シクロアルコキシ基の例はシクロヘキシルオキシである。
【0032】
本願明細書で使用されるアリール基は、基Arを説明する際に上記に定義されている。アリール基の例は、環中に6個又は10個の環炭素原子を有するもの、例えば、フェニル又はナフチルである。
【0033】
本願明細書で使用されるアリールオキシ基は式Ar−O−の基であり、その際、Arは上記に定義されている。アリールオキシ基の例は、6個又は10個の環炭素原子を環中に有するもの、例えば、フェニルオキシ又はナフチルオキシである。
【0034】
アラルキル基の例はベンジルである。この基は、例えば、アルキル基又はハロゲン原子で置換され得る。
【0035】
アラルキルオキシ基の例はベンジルオキシである。この基は、例えば、アルキル基又はハロゲン原子で置換され得る。
【0036】
カルボン酸アミド基の例は、カルボン酸アミド、カルボン酸N−(C1〜4−アルキル)−アミド又はカルボン酸N,N−(C1〜4−アルキル)−ジアミドである。
【0037】
スルホン酸アミド基の例は、スルホン酸アミド、スルホン酸N−(C1〜4−アルキル)−アミド又はスルホン酸N,N−(C1〜4−アルキル)−ジアミドである。
【0038】
ヒドロキシアルキル基の例は、2−ヒドロキシエチル、2−又は3−ヒドロキシプロピルである。これらの基は、例えば、アルキル基又はハロゲン原子で置換され得る。
【0039】
炭化水素カルボニル基の例は、アルキルカルボニル又はアリールカルボニル、好ましくは(C1〜4−アルキルカルボニルである。これらの基は、例えば、アルキル基又はハロゲン原子で置換され得る。
【0040】
カルボン酸エステル基の例は、カルボン酸C〜C−アルキルエステル、好ましくは、カルボン酸メチルエステルである。
【0041】
スルホン酸エステル基の例は、スルホン酸C〜C−アルキルエステル、好ましくは、スルホン酸メチルエステルである。
【0042】
本願明細書で使用されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。好ましいのは塩素及び臭素であり、特に好ましいのは塩素である。
【0043】
好ましいのはオリゴマー又はポリマー化合物であり、その際、Arは、共有結合を介して又は二価の架橋基を介して結合された又は互いに縮合した1個〜6個の芳香環を有する炭素環式芳香族基であり、その芳香族基は非置換であるか又は1つ以上のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、炭化水素カルボニル、カルボキシル、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ニトロ、ヒドロキシル、ハロゲンで置換されるか、又は2つの隣接するアルキル置換基は環系を形成し得るか又は2つの隣接するカルボニル基は窒素原子と一緒に5員又は6員のイミド環を形成する。
【0044】
非常に好ましいのは、5員のイミド基が式IIaの基であり、6員のイミド基が式IIbの基であり、CAr原子が炭素環式芳香環の一部又は複素環式芳香環の一部を形成するC原子である、オリゴマー又はポリマー化合物である。
【化3】
【0045】
最も好ましいのは、Arがフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン又は少なくとも4つの炭素環式芳香環を含む縮合した芳香族系であり、そのAr基が非置換であるか又はアルキル、アルコキシ、炭化水素、カルボキシル、カルボン酸エステル、ニトロ及び/又はハロゲンから選択された1〜4個の基によって置換されているか、又は2つの隣接するカルボニル基が、式Iのイミド環の他に、窒素原子と一緒に1つ以上のイミド環を形成する、オリゴマー又はポリマー化合物である。
【0046】
非常に最も好ましいのは、Arが式IIIa、IIIb、IIIc、IIId又はIIIe
【化4】
(式中、基IIIa中の共有結合は他の共有結合に対して2位、3位又は4位にあり、
基IIIb中の共有結合は1,2−位又は2,3−位又は1,8−位にあり、
基IIIc中の共有結合は1,2−位又は2,3−位にあり、
基IIId中の共有結合は1,2−位又は3,4−位にあり、
Arにおいてそれぞれ2つの環炭素原子と一緒になったイミド基は5員環又は6員環を形成し、
13、R14、R15及びR16は互いに独立して水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、炭化水素カルボニル、カルボキシル、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ニトロ、ヒドロキシル、ハロゲンであり、又は2つの隣接するアルキル置換基は環系を形成し得るか又は2つの隣接するカルボニル基は窒素原子と一緒に5員のイミド環又は6員のイミド環を形成し、
a、b、c及びdは互いに独立して0〜3の間、好ましくは0〜2の間の整数であり、
nは1〜10の間、好ましくは1〜5の間の整数であり、
Arは、四価の炭素環式芳香族基又四価の複素環式芳香族基であり、その際、Ar基の2つの環炭素原子にイミド基の2つのカルボニル炭素原子が結合されてイミド−窒素原子と一緒に5員環又は6員環を形成し、
Arは、二価の炭素環式芳香族基又は二価の複素環式芳香族基であり、その際、
Ar及びAr基は、互いに独立して非置換であるか又はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、炭化水素カルボニル、カルボキシル、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ニトロ、ヒドロキシル及び/又はハロゲンのうち1つ以上で置換されている)
の基である、オリゴマー又はポリマー化合物である。
【0047】
他の好ましいオリゴマー又はポリマー化合物は、Xが二価の−CR−基又は−CO−基であり且つR〜Rが互いに独立して水素又はアルキル、好ましくは水素であるものである。
【0048】
更に他の好ましいオリゴマー又はポリマー化合物は、Rが共有結合、メチレン基又はフェニレン基であり、且つR10、R11及びR12が互いに独立して水素又はC〜Cアルキルであるものである。
【0049】
非常に好ましいオリゴマー又はポリマー化合物の別の基は、Rが共有結合又はフェニレンであり、R10、R11及びR12が水素であるか又はR10、R11及びR12のうちの1つがメチルであり、他の2つが水素であり且つXがメチレン又はカルボニルであるか、又はRが共有結合又はメチレンであり、R10、R11及びR12が水素であるか又はR10、R11及びR12のうちの1つがメチルであり、他の2つが水素であり且つXが−Si(CH−、−P(O)(CH)−、−P(O)(OCH)−、−P(CH)−、−P(OCH)−、−S(O)−又は−S(O)−であるものである。
【0050】
Ar基中の置換基のパターンに応じて、オリゴマー又はポリマー化合物は、−1〜−2V vs.Fc/Fcの範囲の1つ以上の電子を含み得る可逆的な酸化還元反応を示す。
【0051】
本発明の好ましいオリゴマー又はポリマー化合物は、1分子内に異なるAr基の混合物及び/又は1分子当たりに異なるAr基を有することによって互いに異なるポリマー鎖の混合物を含有する。
【0052】
例えば、オリゴマー又はポリマー化合物は、非置換のAr基、例えば、非置換のフェニレン基及び/又は非置換のナフチレン基を含み、これらの他に置換されたAr基、例えば、ハロゲン置換フェニレン基及び/又はハロゲン置換ナフチレン基を1分子内に含み得る。
【0053】
あるいは、ポリマー混合物は、例えば、ポリマーのうち1つの基において、非置換のAr基、例えば、非置換のフェニレン基及び/又は非置換のナフチレン基から誘導され、また、例えば、ポリマーの別の基において、置換されたAr基、例えば、ハロゲン置換フェニレン基及び/又はハロゲン置換ナフチレン基から誘導されたものが使用され得る。
【0054】
本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、通常、1250〜12500000g/モルの間、好ましくは2500〜15000g/モルの間の分子量平均(数平均)を有する。分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
【0055】
一般に、本発明のオリゴマー又はポリマー化合物中の式Iの繰り返し単位の数は5〜50,000の間、好ましくは10〜50の間である。
【0056】
本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、様々なオリゴマー又はポリマー種から誘導され得る。オリゴマー又はポリマー骨格は、最も広い態様において、イミド単位を有する選択されたペンダント基によって同様に置換されるエチレン性不飽和モノマーから誘導される。オリゴマー又はポリマー主鎖は、ペンダント基置換ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリノルボルネン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、又は2つ以上の種の混合物であってよい。
【0057】
本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、それらが1種類のモノマーから誘導されることを意味するホモポリマーであるか、又はそれらが2種以上のモノマーから誘導されることを意味するコポリマーであってよい。2種以上のモノマーが使用される場合、本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、モノマーから誘導される繰り返し単位を統計的分布で、はモノマーから誘導される繰り返し単位をオリゴマー又はポリマー化合物中に存在するブロックとして、含有し得る。
【0058】
本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、直鎖状ポリマーであるか又は例えば、重合の間に少量の二官能性又は高官能性モノマーを使用することによって架橋されてよい。
【0059】
本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、標準的な装置を使用し且つ容易に利用可能な出発物質を使用する単純なプロセスによって製造され得る。
【0060】
本発明は、上記に定義された式Iの少なくとも2つの構造単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物の製造方法であって、以下の工程:
i)式IVの化合物と式Vの化合物とを、
【化5】
塩基及び式(PCANe−の化合物の存在下で反応させて、式VI
【化6】
(式中、
Ar、R、R10、R11、R12及びXは上記に定義された意味を有する)
のモノマー化合物を得る工程であって、
Halがハロゲン原子であり、
PCが[NR17181920、[PR17181920及び[SbR17181920の群から選択されるカチオンであり、その際、R17、R18、R19及びR20が互いに独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
ANe−がe価のアニオンであり、且つ
eが1又は2の整数である、前記工程、並びに
ii)式VIのモノマー及び任意にそれと共重合可能な他のモノマーを、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合又は金属有機重合の条件に供して、上記に定義された式Iの繰り返し単位を含むポリマーを得る工程
を含む、前記製造方法にも関する。
【0061】
式VIのモノマーは、式IVの置換又は非置換のイミド及び式Vのハロゲン化合物、例えば、エチレン性不飽和重合性基を有するアルキルハロゲン化物又は酸ハロゲン化物、塩基及び式(PCANの化合物を含有する無溶媒反応系で合成することができる。
【0062】
式IVのイミドは、芳香族系に共有結合される5員又は6員のイミド環を有する化合物である。式IVのイミドの例は、フタル酸イミド、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸イミド、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸イミド、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸イミド、アントラセン−1,2−ジカルボン酸イミド、アントラセン−2,3−ジカルボン酸イミド、アントラセン−1,9−ジカルボン酸イミド、ペリレン−3,4−ジカルボン酸イミド並びにピロメリット酸及びジアミノベンゼンから、又はペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸及びジアミノベンゼンから、又はビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸及びジアミノベンゼンから、又はベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸から及びジアミノベンゼンから又は対応する、ジアミノベンゼンの代わりに又はそれに加えて4,4’−ジアミノビフェニル及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタンを使用するオリゴマーから誘導される1〜10個の繰り返し単位を有する、オリゴマーイミド並びにこれらのイミドの対応するモノフルオロ置換及びジフルオロ置換誘導体である。
【0063】
式Vのハロゲン化合物は、好ましくは臭化物のもの又は最も好ましくは塩化物である。
【0064】
基Xの性質に応じて、式Vの化合物は、
− エチレン性不飽和アルキレンハロゲン化物、好ましくは塩化ビニル又は塩化アリル;又は
− エチレン性不飽和シクロアルキレンハロゲン化物、好ましくは5−(クロロメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン又は5,6−ビス(クロロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;又は
− エチレン性不飽和ハロゲン化ベンジル、最も好ましくは、塩化ビニルベンジル;又は− エチレン性不飽和カルボン酸のハロゲン化物、好ましくはエチレン性不飽和カルボン酸の塩化物、最も好ましくはアクリル酸の塩化物、メタクリル酸の塩化物又はノルボルネンカルボン酸の塩化物;又は
− エチレン性不飽和基を有するシリルハロゲン化物、好ましくはジメチル−ビニル−シリルクロリド又はジメチル−アリル−シリルクロリド;又は
− ハロゲンホスフィンR1112C=CR10−R−PRHal、好ましくはビニルホスフィンハライド又はアリルホスフィンハライド、最も好ましくはビニルホスフィンクロリド又はアリルホスフィンクロリド;又は
− ハロゲンホスフィンオキシドR1112C=CR10−R−P(O)RHal、好ましくはビニルホスフィンオキシハライド又はアリルホスフィンオキシハライド、最も好ましくはビニルホスフィンオキシクロリド又はアリルホスフィンオキシクロリド;又は
− 亜ホスフィン酸ハロゲンR1112C=CR10−R−P(OR)Hal、好ましくはビニル亜ホスフィン酸ハライド又はアリル亜ホスフィン酸ハライド、最も好ましくはビニル亜ホスフィン酸クロリド又はアリル亜ホスフィン酸クロリド;又は
− ホスフィン酸ハロゲン化物R1112C=CR10−R−P(O)(OR)Hal、好ましくはビニルホスフィン酸ハライド又はアリルホスフィン酸ハライド、最も好ましくはビニルホスフィン酸クロリド又はアリルホスフィン酸クロリド;又は
− スルフィン酸ハロゲン化物R1112C=CR10−R−S(O)Hal、好ましくはビニルスルフィン酸ハライド又はアリルスルフィン酸ハライド、最も好ましくはビニルスルフィン酸クロリド又はアリルスルフィン酸クロリド;又は
− スルホン酸ハロゲン化物R1112C=CR10−R−S(O)Hal、好ましくはビニルスルホン酸ハライド又はアリルスルホン酸ハライド、最も好ましくはビニルスルホン酸クロリド又はアリルスルホン酸クロリド
であってよい。
【0065】
これらの式において、基R、R、R、R、R10、R11及びR12は、上記に定義された意味を有し且つHalはハロゲン原子である。
【0066】
式IV及びVの化合物は、容易に利用可能であり且つ有機化学の標準的な合成技術を用いて製造され得る。これらの化合物の一部は市販されている。
【0067】
塩基として任意の化合物が使用されてよく、これは反応条件下で式IVのイミドの窒素水素と反応して対応するイミド塩を形成することが可能である。従って、イミド基−NH−は−N−K基に変換され、塩基KAnは対応する水素化合物HAnに変換され、その際、Kは塩基のカチオンであり且つAnは塩基のアニオンである。塩基の例は、無機炭酸塩、無機水酸化物、無機炭酸水素塩、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び水酸化物、最も好ましくはナトリウム及びカリウムの炭酸塩、炭酸水素塩及び水酸化物である。
【0068】
式(PCANe−の化合物は、通常、相間移動反応において触媒としても使用され得るイオン性化合物である。これらの化合物は、アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスチボニウム塩の群から選択され得る。これらの化合物の例は、モノ−、ジ−、トリ−又はテトラアルキルアンモニウムハライド又は擬ハロゲン化物、モノ−、ジ−、トリ−又はテトラアルキルホスホニウムハライド又は擬ハロゲン化物、及びモノ−、ジ−、トリ−又はテトラアルキルスチボニウムハライド又は擬ハロゲン化物である。任意のアニオンAne−が使用されてよく、好ましくは二価のアニオン、最も好ましくは一価のアニオンが使用され得る。無機アニオン、例えば、ハロゲン化物アニオン又は擬ハロゲン化物アニオンが使用され得るか又は有機アニオン、例えば、アルキルスルホネートアニオン、パーフルオロアルキルスルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン又はパーフルオロカルボキシレートアニオンが使用され得る。
【0069】
式(PCANe−の最も好ましい化合物の例は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素又はトリフラートなどの異なるアニオンを有する、テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩及びテトラオクチルアンモニウム塩である。
【0070】
式IV及びVの化合物の反応は、(塩基及び式(PCANe−の化合物に加えて)補助剤を用いずに、式IV及びVの化合物の溶液、分散液、懸濁液中で又は前記化合物のブレンド中で行うことができる。
【0071】
溶媒、分散又は懸濁は、存在する場合、あらゆる副反応を回避するように、例えば、ハロゲン化物と前記溶媒、分散又は懸濁との反応を回避するように選択されなければならない。
【0072】
式IVの化合物と式Vの化合物との間の反応を実施するための装置は当該技術分野でよく知られている。任意のタイプのブレンド又は混合装置を使用することができる。それらの例は、ミキサー、ミル、乳鉢又は押出機である。好ましくは、ボールミルがブレンド装置として使用される。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、式IVの化合物と式Vの化合物との間の反応は、物質中で行われるので、前記化合物及び前記塩基及び式(PCANe−の化合物のみが存在する。この好ましい実施態様では、反応はボールミル又は乳鉢中で行われる。この実施態様は実施が容易であり、容易に利用可能な装置を使用することができる。
【0074】
式IVの化合物と式Vの化合物とのブレンド時間は、通常、1分〜1時間の間、好ましくは1分〜30分の間である。全反応時間は、通常、5分〜5時間の間、好ましくは30分〜3時間の間である。
【0075】
反応時間の間の反応温度は、通常、10℃〜100℃の間、好ましくは20℃〜50℃の間である。
【0076】
反応が完了した後に、反応混合物は、任意に、液体成分から分離するために濾過され、固体反応混合物は、無機塩を除去するために適切な溶媒で洗浄される。溶媒は、プロトン性の有機溶媒及び無機溶媒、例えば、水、低級脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール、又は低級カルボン酸、例えば、ギ酸又は酢酸からなる群から選択され得る。
【0077】
好ましい方法では、Halは塩素であり、PCはカチオン[NR17181920であり、その際、R17、R18、R19及びR20は互いに独立して水素又はアルキルであり、基R17、R18、R19及びR20のうち少なくとも1つはアルキルであり、
ANe−はハロゲンアニオン、好ましくはクロリドアニオンであり、
eは1であり、且つ
塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩の群から選択される。
【0078】
非常に好ましい変法では、本方法は、混合装置、ボールミル又は押出機において、溶媒の不在下で実施される。
【0079】
式VIのモノマーが製造された後に、式Iの単位を含むポリマー化合物は、適切な重合技術を使用して重合によって製造される。重合技術の例は、バルク(物質)中の重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合、及び溶液中の重合である。当業者は、これらの重合技術を知っている。重合は、フリーラジカル重合として、アニオン付加重合として、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動重合(RAFT)として、原子移動ラジカル重合(ATRP)として、ニトロキシド媒介重合(NMP)として、コバルト媒介ラジカル重合(CMRP)として、カチオン付加重合として又は有機金属触媒媒介重合、例えば、チーグラー・ナッタ触媒を使用する又はメタロセン触媒を使用する重合として起こり得る。当業者はこれらの重合方法及びかかる重合方法を実施するのに必要な手段をよく知っている。
【0080】
フリーラジカル重合のために、例えば、好適な開始剤化合物、例えば、ラジカル源、例えば、有機過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、ラジカル発生レドックス系又はアゾ化合物、例えば、アゾ−ビス−(イソブチロニトリル)(AIBN)が必要とされる。
【0081】
好ましくは、式VIのモノマーの重合は、開始剤化合物を使用して溶媒中で又は溶媒の不在下でフリーラジカル重合として行われる。
【0082】
好ましくは、式Iの単位を有するオリゴマー又はポリマー化合物の製造のための重合反応において、式VIの異なるモノマーが使用される。このため、所定の酸化還元電位を有するオリゴマー又はポリマー化合物を生成することができる。
【0083】
式VIのモノマーの他に、前記モノマーと共重合可能な他のモノマーを重合反応に使用することができる。かかるモノマーの例は、式VIのモノマーとは異なるエチレン性不飽和化合物である。
【0084】
これらの他のモノマーは、
− アルファ−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン又は1−ブテン、
− エチレン性不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸又はマレイン酸、
− エチレン性不飽和スルホン酸、例えば、ビニルスルホン酸、
− エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、例えば、上記に定義されたエチレン性不飽和カルボン酸のメチルエステル又はエチルエステル、
− エチレン性不飽和スルホン酸のアルキルエステル、例えば、ビニルスルホン酸のメチルエステル又はエチルエステル、
− エチレン性不飽和カルボン酸アミド、例えば、上記に定義されたエチレン性不飽和カルボン酸のアミド、
− ビニル芳香族系、例えば、スチレン、又は
− 不飽和二環式又は多環式系、例えば、ノルボルネン
であってよい。
【0085】
本発明の式Iの単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物は、電気エネルギーの貯蔵手段において酸化還元活性物質として使用することができる。対極に応じて、本発明のオリゴマー又はポリマー化合物は、カソード又はアノードに使用することができる。理論に束縛されるものではないが、オリゴマー又はポリマー材料中のポリイミド環は、イミド環を介して非局在化した電子で充電され且つイミド環の一部を形成する芳香族系により安定化されると考えられる。驚くことに、本発明のオリゴマー又はポリマー材料は、材料の任意の本質的な劣化なしに、多くのサイクルの間に充放電することができる。
【0086】
本発明はまた、導電性材料と組み合わせた、任意にバインダー剤との組み合わせた、上記に定義された式Iの単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物を含む電極に関する。
【0087】
本発明のオリゴマー又はポリマー材料と組み合わせて使用され得る導電性材料は、金属導体又は半導体であってよい。通常、導電性材料は、1×10S/mを上回る、好ましくは3×10S/m〜1×10S/mの範囲内の導電性を有する。
【0088】
導電性材料の例は、金属、例えば、銅、銀、鉄、ニッケル、クロム、又は金、無機半導体、例えば、シリコン、ゲルマニウム及びガリウムヒ素、導電性材料及び半導電性の炭素含有材料、例えば、グラファイト、グラフェン、フラーレン、カーボンブラック、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフチレン、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、及びポリ(p−フェニレンビニレン)である。
【0089】
バインダー剤の例は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、セルロース及びその誘導体並びにデキストランである。
【0090】
本発明の電極又はオリゴマー又はポリマー材料は、電気エネルギーのために異なる記憶装置で使用することができる。その例は、電池、レドックスフロー電池、燃料電池、又はキャパシタである。
【0091】
本発明は、また、式Iの単位を含むオリゴマー又はポリマー化合物を、電気的活性材料として、電池、レドックスフロー電池、燃料電池又はキャパシタに用いる使用にも関する。
【0092】
以下に、本発明の電気的酸化還元活性物質の用途が、金属有機電池の形成において記載されている。しかしながら、これは1つの使用例に過ぎない。材料は、他のエネルギー貯蔵システムにおいて代替的に使用することができる。
【0093】
金属有機電池の例として、本発明のオリゴマー又はポリマーの電気的酸化還元活性物質をカソード物質として含む装置が記載されている。
【0094】
装置は4層からなる。層1及び層2はカソードを形成する。層1は、集電体として機能し且つガラス/PET(ポリエチレンテレフタレート)上の黒鉛箔、アルミニウム箔、インジウムスズ酸化物(ITO)又は導電性オリゴマー又はポリマー化合物からなる群から選択され得る。層2は、本発明のオリゴマー又はポリマーの電気的に活性な材料、(追加的であるが必須ではない)導電添加剤及び結合添加剤からなる複合材である。
【0095】
導電添加剤は、炭素材料、例えば、グラファイト、カーボンナノファイバー、グラフェン又はカーボンブラックからなる群から選択され得る。
【0096】
結合添加剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はセルロース誘導体、例えば、セルロースエーテル又はエステルからなる群から選択され得る。複合材中の成分の比率は、広い範囲内で変化し得る。
【0097】
層3は、液体又はオリゴマー若しくはポリマーイオン伝導性材料であるように選択され得る電解質からなる。
【0098】
電解質が液体であるように選択される場合、これは極性溶媒又は非プロトン溶媒及び導電性塩の混合物からなり得る。溶媒は、アセトニトリル、有機カーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、シクロペンチルメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、水及びジメチルスルホキシドからなる群から選択され得る。
【0099】
導電性塩は、式(Me+(Anf−の金属カチオンMe+及びアニオンAnf−を含む群から選択されてよく、その際、e及びfは、M及びAnの原子価に相当する整数であり、a及びbは塩の分子構成を表す整数であり、ここで、ebのはfaのに等しく、Anは過塩素酸塩、塩素酸塩、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、カルボン酸塩及びスルホン酸塩からなる群から選択されてよく、且つMは層4で使用される金属から選択され得る。
【0100】
層4は金属箔であってよい。金属は、Li、Na、K、Mg及びCaから選択され得る。
【0101】
全ての有機電池の別の例として、アノード材料として本発明のオリゴマー又はポリマーの電気活性材料を含む装置が記載されている。
【0102】
装置は5層からなる。
【0103】
層1及び層2はカソードを形成する。層1は、集電体として機能し且つ黒鉛箔、アルミニウム箔、ガラス/PET上のITO又は導電性オリゴマー又はポリマー化合物からなる群から選択され得る。
【0104】
層2は、本発明に記載されたポリマーよりも高い酸化還元電位を有する酸化還元活性ポリマー、導電添加剤及び結合添加剤からなる複合材である。導電添加剤は、炭素材料、例えば、グラフェン、グラファイト、カーボンナノファイバー又はカーボンブラックからなる群から選択され得る。結合添加剤は、PVdF、PVC又はセルロース誘導体からなる群から選択され得る。複合材中の成分の比率は広い範囲内で変化し得る。この酸化還元活性ポリマーの例は、ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ−メタクリレート)(PTMA)である。
【0105】
層3は、液体又はポリマーイオン伝導性材料であるように選択され得る電解質からなる。
【0106】
電解質が液体であるように選択される場合、これは極性非プロトン性溶媒と導電性塩の混合物からなり得る。溶媒は、アセトニトリル、有機カーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、シクロペンチル−メチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、水及びジメチルスルホキシドからなる群から選択され得る。
【0107】
層4は、本発明による酸化還元活性ポリマー材料及び導電添加剤及び結合添加剤からなる複合材である。導電添加剤は、炭素材料、例えば、グラフェン、グラファイト、カーボンナノファイバー又はカーボンブラックからなる群から選択され得る。結合添加剤は、PVdF、PVC又はセルロース誘導体からなる群から選択され得る。複合材中の成分の比は、広い範囲内で変化し得る。
【0108】
層5は、集電体として機能し且つ黒鉛箔、アルミニウム箔、ガラス上のITO又は導電性ポリマー化合物からなる群から選択され得る。
【0109】
以下の実施例は、それらを限定せずに本発明を例示することが意図されている。
【0110】
実施例1:5−メチル−2−(4−ビニルベンジル)イソインドリン−1,3−ジオンの合成
0.5gの4−メチルフタルイミド(3.10ミリモル)、0.53mlの4−ビニルベンジルクロリド(3.72ミリモル、1.2当量)、100mgのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(0.31ミリモル)及び1.29gの炭酸カリウム(9.30ミリモル、3当量)を、乳鉢中で乳棒を用いて5分間ブレンドした。1時間室温で放置した後、水(50ml)を混合物に添加し、懸濁液を濾過した。濾液を水(50ml)とメタノール(50ml)で洗い、真空下で乾燥させると、0.75gの4−メチル−2−(4−ビニルベンジル)イソインドリン−1,3−ジオン(87%)が淡黄色の粉末として得られた。
【0111】
実施例2:ポリ(5−メチル−2−(4−ビニルベンジル)イソインドリン−1,3−ジオン)の合成
711mgの5−メチル−2−(4−ビニルベンジル)イソインドリン−1,3−ジオン(2.56ミリモル)と8.42mgのAIBN(0.05ミリモル、0.02当量)を脱気したTHFに溶解した。反応混合物を75℃で18時間撹拌し、次いで冷エーテル中に注いだ。沈殿物を濾過し、冷エーテルから再沈殿した後、680mgのポリマー(86%)が白色粉末(SEC、DMAc:M9,500g/モルのPS標準)として得られた。
【0112】
実施例3:電極の準備
ポリマー/炭素ナノコンポジット電極を、ポリマー(5.47mg)、気相成長炭素繊維(VGCF)(85mg)、及びPVdF(10mg)のNMP(1ml)中の約0.6ミリグラムのスラリーを黒鉛箔(1cm)上に被覆することによって調製し、NMPを真空下にて40℃で12時間蒸発させると、ポリマー/炭素複合層が、厚さ20〜50mmでポリマー/VGCF/PVdF(5/85/10)の比で得られた。
【0113】
実施例4:試験電池の作製と特性評価
コイン電池を、アセトニトリル中の0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAClO)の電極層を、セパレーターフィルム(Holsten社製のセルガード#2400)を使用して、ポリマーカーボンナノファイバー複合材被覆電極及びPTMA/VGCF/PVdF=5/85/10(w/w/w)の組成を有するカソードとして黒鉛箔上に被覆されたPTMAカーボンナノファイバー複合材で挟むことによって製造した。アノードとカソード活性物質の量を同じ容量を得るために調整した。これらの電池のサイクル性能を、様々な電流密度で繰り返し充放電ガルバノスタットサイクルによって調べた。これらの試験を、通常、10℃で実施した。250サイクル後、容量を元の容量の90%に維持した。