(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290404
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】膨らまし可能な物体を封止および空気充填するための装置
(51)【国際特許分類】
B29C 73/02 20060101AFI20180226BHJP
B29C 73/24 20060101ALI20180226BHJP
B60S 5/04 20060101ALI20180226BHJP
F16K 15/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
B29C73/02
B29C73/24
B60S5/04
F16K15/04 B
F16K15/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-528881(P2016-528881)
(86)(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公表番号】特表2017-501047(P2017-501047A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2014067696
(87)【国際公開番号】WO2015070998
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】102013223108.3
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンティネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ツァウム・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】デーテリング・ライナー
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−023244(JP,A)
【文献】
特開2009−208343(JP,A)
【文献】
特表2010−503551(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/035163(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/00 − 73/34
B60S 5/04
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車タイヤを封止および空気充填するための装置(1)であって、前記物体に空気を充填するための圧縮空気源又はコンプレッサと、シール剤(7)を有する容器(6)のための接続部材(5)と、シール剤と圧縮ガスのための弁兼分配器ユニット(4)と、さらに前記弁兼分配器ユニットと膨らまし可能な前記物体との間のホース(10)を備えている、装置において、
前記弁兼分配器ユニット(4)内に、弁座(15)と協働する弁が配置され、前記圧縮空気源又はコンプレッサに向かうシール剤(7)の流れにより前記容器と前記圧縮空気源との間の接続部/接続通路を可逆的に閉じ、前記弁が、弁体としての1個のボール(13)を有したボール弁として形成されているか或いは1つの弁体を有したフラップ弁として形成されており、いずれの場合も前記弁体が流体の力によって対応する弁座(15)に押し付けられ且つそれにより前記弁が閉鎖され、弁体(13)の表面がざらざらしているかまたは凹部を有し、前記弁が閉じているときにシール剤(7)は通過できないことを特徴とする装置。
【請求項2】
圧縮空気源としてのコンプレッサを備え、前記弁兼分配器ユニット(4)が前記容器(6)の出口(12)と前記コンプレッサまたは前記コンプレッサの出口弁との間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弁座(15)が前記圧縮空気源またはコンプレッサの側に設けられている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記容器の出口と前記コンプレッサの圧力導管との間の前記接続通路(11)が管状中空室として形成され、前記弁座(15)が、前記接続通路内に挿入され端側が前記弁の弁体(13)に対応して形成された管部材(14)の端部として形成されている、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記弁座または弁が、前記弁兼分配器ユニット(4)の姿勢に依存して、シール剤(7)が前記圧縮空気源又はコンプレッサの方へ流れるような前記弁兼分配器ユニット(4)の傾動時に、容器と圧縮空気源との間の前記接続部/接続通路(11)を可逆的に閉じるように形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
運転状態においてシール剤を有する容器が倒立で前記弁兼分配器ユニットに挿入され、又はねじ込まれ、容器の倒立姿勢から20°より大きくずれると、弁が閉鎖されるように形成されている、請求項5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨らまし可能な物体を封止および空気充填するための装置、特に自動車タイヤを封止および空気充填するためのパンクセットであって、物体に空気を充填するための圧縮空気源、特にモータ、好ましくは電気モータによって駆動されるコンプレッサと、シール剤を有する容器のための接続部材と、シール剤と圧縮ガスのための弁兼分配器ユニットと、さらに例えば弁兼分配器ユニットと膨らまし可能な物体との間のホースのような接続手段と、場合によってはエネルギ供給のための接続手段と、例えば装置運転用のマノメータのような通常の切り換え−および/または制御−および表示装置を備えている上記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのパンクの場合、通常は、例えば乗用車において従来普通であるように、リムに取り付けた充填済みスペアタイヤを携行しなければならないという問題がある。このスペアタイヤは故障したタイヤを有する車輪に代えて取り付けられ、その後故障したタイヤはスペアタイヤのために設けられた車両内のラゲージルーム内に固定され、後で修理しなければならない。そのためには、ラゲージルームに到達するために自動車内の荷物を片づけなければならないだけでなく、自動車自体をジャッキで持ち上げて面倒な修理作業を行わなければならない。
【0003】
この欠点を回避するために、修理セットまたはパンクセットが知られている。この修理セットまたはパンクセットは、コンプレッサと、タイヤ内で凝固するシール剤、たいていの場合ラテックスミルク混合物と、然るべき接続ホースと、エネルギ供給のために必要なケーブルコネクタと、スイッチと、マノメータと、操作要素を含んでおり、それによって常時使用可能な全部揃った修理セットを提供する。これにより、リムに装着されたスペアタイヤを携行する必要がないかあるいはホース、いろいろな工具レンチ、ジャッキ等のような他の修理材料の常日頃のチェックが不要である。
【0004】
特許文献1は、車載工具と車両用作業機器を収容するため、特にタイヤを修理するためのコンプレッサと工具と作業機器と付属品を収容するための持ち運び可能な容器を備えた修理セットを開示している。この容器はキャリングケースの形に形成され、付属品と、切り換え−、制御−および表示装置のための複数の部分室を有する。
【0005】
このような市販のタイヤ封止用パンクセットは、素人が簡単にかつミスなく操作できるようでなければならず、そして非常に高い動作信頼性を有するように形成しなければならない。従って、考えられるすべての誤操作を許容補正して、正しい使用に簡単に導く一連の装置が必要である。
【0006】
既に説明したように、タイヤパンクの仮の修理のためのこのようなパンクセット用空気コンプレッサは一般的に、接続部材を介して、すなわちいわゆる弁兼分配器ユニットを介して、シール剤瓶および修理すべきタイヤに接続される。
【0007】
この弁兼分配器ユニットにより、圧縮空気はコンプレッサからシール剤容器/シール剤瓶内に案内され、容器からシール剤を押し出して同様に弁兼分配器ユニットと接続ホースを経てタイヤ内に搬送する。すなわち、シール剤がタイヤ内に充填される。弁兼分配器ユニットはコンプレッサとタイヤの直接的な接続も行うことができ、それによってシール剤を充填しないで、タイヤにのみ空気を充填することができる。このような多彩な使用方法は、一連の通路および切り換え機能を有する、このような弁兼分配器ユニットのきわめて複雑な構造を必要とする。
【0008】
パンクセットの従来の構造の場合、保管状態で通常は密閉されたシール剤瓶が弁兼分配器ユニットにねじ込まれる。一般的に、ねじ込みまたは装着によって、密閉状態が開放され、シール剤容器/シール剤瓶が自動的に使用可能になる。
【0009】
そのすぐ後または時間が経ってから、操作人によってコンプレッサのスイッチが入れられる。上記の運転信頼性および考えられる誤操作の回避の観点から、コンプレッサの時間的にずれたスイッチ投入によって、小さな問題が発生し得る。コンプレッサのスイッチ投入前に、すなわちシステムのまだ無圧の状態で、シール剤容器/シール剤瓶に含まれるタイヤ封止剤が所定の流れ方向とは反対の方向に移動するかもしれない。これは、例えば通常の静止
姿勢または所定の直立状態からのシステムの傾動時に起こり得る。タイヤシール剤が所定の流れ方向とは反対の方向にコンプレッサ内に流れると、コンプレッサが後の運転の際に損傷し得る。
【0010】
所定のシステム要素内でのタイヤシール剤の逆流を回避するために、従来技術では通常、逆止弁が挿入されているかあるいはシール剤瓶とコンプレッサとの間の空気経路が延長されている。このような付加的な逆止弁を使用する場合には、この逆止弁の組み込みが修理すべきタイヤ内の正確な圧力測定を妨害するという欠点がある。これはエンドユーザにとって安全性を損なう危険がある。それに対して、空気経路の延長は、材料コストと製造コストを増大させ、そして達成されるシステム出力に不利に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国実用新案登録第29812740U11号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の課題は、弁兼分配器ユニットの構造が簡単で、コンプレッサへのシール剤の逆流が回避され、それによって高い運転信頼性が達成され、そして考えられる他の誤操作が閉め出される、膨らまし可能な物体の封止および空気充填のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は請求項1の特徴によって解決される。他の有利な実施形は従属請求項に開示されている。
【0014】
その際、弁兼分配器ユニット内に、弁座と協働する弁が配置され、この弁が流れる媒体の密度と流れ方向に依存して、シール剤容器と圧縮空気源との間の接続部/接続通路を可逆的に閉じる。
【0015】
この構造により、弁または弁体がシール剤瓶接続部材の側から圧力で付勢されると、弁体がシール剤によって弁座に押し付けられる。この場合、弁が閉鎖され、シール剤の敏感な範囲またはマノメータへのシール剤のさらなる流入が防止される。その際、完全な封止が行われず、媒体の密度に依存して流れが可能であるように、弁体と弁座の表面が形成されていると有利である。例えば空気が通過し、シール剤の液体が通過しないようにすることができる。
【0016】
すなわち、弁の背後にあるコンプレッサおよび/またはマノメータとの均圧が達成可能である。操作媒体としてのタイヤシール剤によって弁の閉鎖が行われると、シール剤の一層高い密度に基づいて、弁の完全な封止が達成される。すなわち、コンプレッサへのシール剤の侵入が阻止される。
【0017】
普通の運転
姿勢ではシール剤逆流は行われず、弁ボールは空気通路を開放する。封止および空気充填のためのシステムまたは装置が弁兼分配器ユニットと共に、例えばコンプレッサ出口の方へ傾動すると、シール剤はコンプレッサ出口の方へ流れることができる。これは本発明に係る弁構造によって防止され、コンプレッサ出口は閉鎖される。すなわち、弁が閉鎖され、シール剤の逆流が防止される。
【0018】
そのために、圧縮空気源としてのコンプレッサを備えた本発明に係る装置において、弁兼分配器ユニットがシール剤容器の出口とコンプレッサの出口弁との間に配置されていると有利である。
【0019】
弁座が圧縮空気源またはコンプレッサの出口弁の側に設けられていると、弁の閉鎖がシール剤の密度、流れ方向および圧力に依存して実現されるのできわめて良好である。
【0020】
ばね力によって動作する逆止弁と異なり、本発明に係る構造では、普通の運転
姿勢で、通常コンプレッサまたは弁兼分配器ユニットに接続されたマノメータによって問題なくタイヤ内の空気圧を測定することができる。それによって、コンプレッサの圧力測定機器/マノメータがタイヤ内の実際の圧力よりも高い圧力を表示する運転状態は存在しない。
【0021】
有利な発展形態では、弁が弁体として、保持器または中空室内で動くことができる少なくとも1個のボールを備え、このボールが流体の力によってボール表面に対応して形成された弁座に押し付けられることにより、弁が閉鎖可能である。このような弁は非常に動きやすく、偶然のかみ込みまたは付着の作用を受けにくい。このようなシステムにおいて、弁座と反対側で、すなわちシール剤容器の入口の範囲で圧縮空気の流れ方向において、弁体が開放横断面に対する偶然の接触によってシール剤容器への空気流を阻止することを回避する装置が設けられていると有利である。
【0022】
他の有利な実施形において、弁がフラップ弁として形成され、流体の力によって対応して形成された弁座に押し付けられると、構造が非常に簡単である。
【0023】
他の有利な実施形では、シール剤容器の出口とコンプレッサの圧力導管との間の接続通路が管状中空室として形成され、弁座が、接続通路内に挿入され端側が弁体に対応して形成された管部材として形成されている。それによって、個々の要素を非常に簡単に作ることができる構造が達成可能である。このような実施形では、阻止することを回避する上記装置が、管または管状中空体に挿入されたリブとして形成可能である。このリブには、弁体が弁体と壁部との間に通路を提供しながら接触することができる。
【0024】
他の有利な実施形では、弁座または弁が、弁兼分配器ユニットの
姿勢に依存して、シール剤容器と圧縮空気源との間の接続部/接続通路を可逆的に閉じるように形成されている。それによって、可逆的な閉鎖機能は流れの力によって補助されるかまたは強化され、装置の作用がさらに改善される。
姿勢に依存して閉鎖する弁のきわめて有利な実施形では、運転状態においてシール剤を有する容器が頭上から弁兼分配器ユニットに挿入され、好ましくはねじ込まれ、シール剤容器の
倒立姿勢から20°より大きくずれると、弁が閉鎖されるように形成されている。それによって、普通の修理
姿勢で確実な使用が可能であり、誤って装置を「倒した」ときに、重要な範囲へのシール剤の認められない逆流が防止される。
【0025】
他の有利な実施形では、弁座または弁体の表面がざらざらしているかまたは凹部を有し、このざらざらまたは凹部が媒体密度に依存して閉じた弁を通る流れを可能にする。例えば空気が通過し、一方、シール剤の流れが阻止される。その結果、システム内の圧力測定、すなわち弁の前後の範囲の圧力測定が、あらゆる運転状態で、すなわち弁が「閉じている」ときにも可能になる。
【0026】
実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】流体の力によって閉じるボール弁を備えた本発明に係る装置の部分図である。
【
図2】弁座として形成された、本発明に係る装置の管体の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、膨らまし可能な物体を封止および空気充填するための本発明に係る装置1、すなわち自動車タイヤを封止および空気充填するためのパンクセットの部分図である。この装置1は、導管/圧力導管2に接続された図示していないコンプレッサを備えている。通常の運転状態における導管2内の空気の普通の流れ方向は流れ矢印3によって示してある。装置1はさらに、シール剤と圧縮ガスのための弁兼分配器ユニット4を備え、この弁兼分解器ユニットはシール剤7を有する容器6のための接続部材5を備えている。弁兼分配ユニット4には、導管2の範囲においてマノメータ8が接続されている。このマノメータによって、導管系内の空気圧とタイヤ内の空気圧を測定することができる。
【0029】
シール剤および圧縮ガスのための弁兼分配器ユニット4はさらに、膨らまし可能な物体、すなわちここでは図示していないタイヤを接続するための接続手段を備えている。この接続手段として、接続部材9と、タイヤに通じるホース10が役立つ。
【0030】
弁兼分配器ユニット内には、弁座と協働する弁が設けられている。この弁は、流れる媒体の密度と流れ方向に依存して、シール剤容器と圧縮空気源の間の接続部/接続通路を可逆的に閉鎖する。
【0031】
図1に示した実施形では、シール剤容器6の出口12とコンプレッサの圧力導管2の間の接続通路11が管状の中空室として形成されている。この場合、弁座15は、接続通路11内に挿入され端側がボール状弁体13に対応して形成された管部材14の端部によって形成されている。
【0032】
すなわち、弁は中空室内で移動可能である弁体としてのボールを備え、ボールが流体の力によってボール表面に対応する管部材14の弁座15に押し付けられることによって閉鎖可能である。
図2には単一部材としての管部材14が拡大して示してある。この図にはさらに、弁座15が非常に良好に示してある。
【0033】
圧縮空気源がコンプレッサとして形成されている場合には、弁兼分配器要素はシール剤容器の出口と図示していないコンプレッサの出口弁との間と、マノメータとシール剤容器の出口との間に配置されている。この場合、弁座はマノメータの側またはコンプレッサの側にある。このような弁は、もちろん、コンプレッサ出口とマノメータとの間に挿入することができるが、その場合もしかすると敏感なマノメータ部品がシール剤逆流に対して保護されないかもしれない。
【符号の説明】
【0034】
1 膨らまし可能な物体を封止および空気充填するための装置
2 導管/圧力導管
3 流れの矢印
4 弁兼分配ユニット
5 容器のための接続部材
6 容器
7 シール剤
8 マノメータ
9 接続部材
10 ホース
11 接続通路
12 出口
13 弁体
14 管部材
15 弁座