特許第6290411号(P6290411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290411高耐被毒性オレフィン二重結合異性化触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290411
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】高耐被毒性オレフィン二重結合異性化触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/25 20060101AFI20180226BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20180226BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20180226BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20180226BHJP
   C07C 6/04 20060101ALI20180226BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20180226BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   C07C5/25
   C07C11/08
   C07C1/24
   C07C11/04
   C07C6/04
   B01J21/06 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-533571(P2016-533571)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-539128(P2016-539128A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】US2014066404
(87)【国際公開番号】WO2015077332
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】61/906,618
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516148335
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン, バラ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ソグォン
(72)【発明者】
【氏名】ガートサイド, ロバート, ジェイ.
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−192140(JP,A)
【文献】 特表2012−520348(JP,A)
【文献】 特表2012−502057(JP,A)
【文献】 Conversion of ethanol and isopropanol on alumina, titania and alumina-titania catalysts,Materials Letters,1991年,Vol. 12, 3,P207-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンの異性化方法であって、
反応域において、少なくとも1種のC4−C7オレフィン含有原料を、上記オレフィンに二重結合位置異性化活性を示す触媒と接触させて、オレフィン異性化生成物を得る工程を含み、
上記触媒は、表面積が200m/gを超えるγ−アルミナ・チタニア触媒を含み、
上記接触は、オレフィン含有原料に含まれる含酸素化合物、そこで生成された含酸素化合物、またはその両方の存在下で行われ、
含酸素化合物の濃度が100ppm〜1000ppmであり、
上記触媒は、100ppm〜1000ppmの濃度の含酸素化合物による被毒に対して耐性を示す、
方法。
【請求項2】
上記触媒は、チタニアを.01wt%〜0wt%含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記触媒は、チタニアを0wt%〜0wt%含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記触媒は、更に、アルコールの脱水によりオレフィンを生成する活性も有する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
上記反応域は、温度が℃〜00℃の範囲、圧力が大気圧〜000psigの範囲で維持され、場合によっては不活性雰囲気下に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記反応域は、上記γ−アルミナ・チタニア触媒を含む第1触媒床と、塩基性金属酸化物異性化触媒を含む第2触媒床とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
更に、上記オレフィン異性化生成物をメタセシス触媒と接触させて、上記オレフィン異性化生成物をオレフィンメタセシス反応物へと変換する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記メタセシス触媒は、下流側の反応器内に配置される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
C4−C7オレフィンの二重結合位置異性化触媒であって、表面積が200m/gを超えるγ−アルミナ・チタニア混合物を含み、
上記オレフィンの二重結合位置異性化は、オレフィン含有原料に含まれる含酸素化合物、そこで生成された含酸素化合物、またはその両方の存在下で行われ、
含酸素化合物の濃度が100ppm〜1000ppmであり、
100ppm〜1000ppmの濃度の含酸素化合物による被毒に対して耐性を示す、
触媒。
【請求項10】
上記触媒は、チタニアを.01wt%〜0wt%含有する、請求項に記載の触媒。
【請求項11】
上記触媒は、チタニアを0wt%〜0wt%含有する、請求項に記載の触媒。
【請求項12】
上記触媒は、更に、アルコールの脱水によりオレフィンを生成する活性も有する、請求項に記載の触媒。
【請求項13】
オレフィンを製造するシステムであって、
C4−C7オレフィン含有炭化水素原料を受け入れる入口と、
表面積が200m/gを超え、且つ、上記オレフィンの二重結合位置異性化によりオレフィン異性化生成物を生成する活性を有するγ−アルミナ・チタニア触媒を含む少なくとも1つの触媒床を有する反応域と、
上記オレフィン異性化生成物を含有する流出物を回収する出口とを備え
上記オレフィン含有炭化水素原料は含酸素化合物の存在下で供給され、
含酸素化合物の濃度が100ppm〜1000ppmであり、
上記触媒は、100ppm〜1000ppmの濃度の含酸素化合物による被毒に対して耐性を示す、
システム。
【請求項14】
上記触媒は、チタニアを.01wt%〜0wt%含有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
上記触媒は、チタニアを0wt%〜0wt%含有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
上記触媒は、更に、アルコールの脱水によりオレフィンを生成する活性も有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
上記反応域は、更に、上記γ−アルミナ・チタニア触媒を含む上記少なくとも1つの触媒床の下流側に、塩基性金属酸化物異性化触媒を含む少なくとも1つの触媒床を有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
上記反応域は、更に、メタセシス触媒を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
上記メタセシス触媒は、上記γ−アルミナ・チタニア触媒を含む上記触媒床の下流側の触媒床に含まれる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
上記メタセシス触媒は、上記γ−アルミナ・チタニア触媒又は塩基性金属酸化物異性化触媒と混合される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
オレフィンの異性化方法であって、
反応域において、少なくとも1種のC4−C7オレフィン含有原料を、上記オレフィンに二重結合位置異性化活性を示す触媒と接触させて、オレフィン異性化生成物を得る工程を含み、
上記触媒は、チタニアを10wt%〜40wt%含有する、表面積が350m/gを超えるγ−アルミナ・チタニア触媒を含み、
上記接触は、オレフィン含有原料に含まれる含酸素化合物、そこで生成された含酸素化合物、またはその両方の存在下で行われ、
含酸素化合物の濃度が100ppm〜1000ppmであり、
上記触媒は、100ppm〜1000ppmの濃度の含酸素化合物による被毒に対して耐性を示す、
方法。
【請求項22】
C4−C7オレフィンの二重結合位置異性化用触媒であって、チタニアを10wt%〜40wt%含有する、表面積が350m/gを超えるγ−アルミナ・チタニア混合物を含み、
上記オレフィンの二重結合位置異性化は、オレフィン含有原料に含まれる含酸素化合物、そこで生成された含酸素化合物、またはその両方の存在下で行われ、
含酸素化合物の濃度が100ppm〜1000ppmであり、
100ppm〜1000ppmの濃度の含酸素化合物による被毒に対して耐性を示す、
触媒。
【請求項23】
オレフィンを製造するシステムであって、
C4−C7オレフィン含有炭化水素原料を受け入れる入口と、
チタニアを10wt%〜40wt%含有する、表面積が350m/gを超え、且つ、上記オレフィンの二重結合位置異性化によりオレフィン異性化生成物を生成する活性を有するγ−アルミナ・チタニア触媒を含む少なくとも1つの触媒床を有する反応域と、
上記オレフィン異性化生成物を含有する流出物を回収する出口とを備え、
上記オレフィン含有炭化水素原料は含酸素化合物の存在下で供給され、
含酸素化合物の濃度が100ppm〜1000ppmであり、
上記触媒は、100ppm〜1000ppmの濃度の含酸素化合物による被毒に対して耐性を示す、
システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する実施形態は、概して、水蒸気又は流動接触分解等の分解プロセスにより得られたオレフィン系炭化水素を処理して、オレフィンを異性化及び/又はメタセシス反応によって別のオレフィンへと変換することに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されるような典型的なオレフィン製造設備においては、メタン及び水素を除去するためのフロントエンド脱メタン塔と、それに続いてエタン、エチレン及びCアセチレンを除去するための脱エタン塔が設けられている。この脱エタン塔から得られた塔底物は、炭素数がC〜Cの範囲のオレフィンなどの化合物の混合物からなる。この混合物は、通常は分留などによって炭素数ごとに分離できる。分離されたC〜Cオレフィンに対して異性化及びメタセシス反応を行うことにより、所望の物質を製造できる。
【0003】
使用されるメタセシス触媒及び二重結合異性化触媒は、一般的に被毒物質の影響をかなり受けやすい。被毒物質としては、水、CO及び含酸素化合物(エーテル、アルコール等)が挙げられる。これらの被毒物質を確実に除去するには、異性化/メタセシス反応系の上流側で保護層を使用するのが一般的である。実際には、上記保護層はメタセシス反応系の直前又は更に上流側に配置される。
【0004】
酸化マグネシウムなどの二重結合異性化触媒は、現在、有効径が約5mmのタブレット状で商業的に使用されている。本明細書において有効径とは、非球形粒子を球形に成形したと仮定した場合の該粒子の直径を指す。上記タブレットは、ブテンを単独で処理する際には良好な異性化活性を示す。しかしながら、被毒物質の存在下では、上記タブレットは1−ブテンを2−ブテンに異性化する活性を短時間しか示さない。さらには、上記タブレットの性能は、反応サイクル数が増加するにつれて徐々に悪化する。その異性化活性は、数回の再生/反応サイクルを行っただけでも低い。このように性能が低下すると、時間とともに系内の1−ブテンが急激に増加して、液圧で再循環が制限されることで反応器性能が制限され、ブテンを経済的に生成可能なプロピレンなどの最終生成物へと変換するプロセスが全体として制限され得る。同様の活性損失は、二重結合異性化触媒としてこれらの触媒を単独で作用させて、内部オレフィンから末端オレフィンを生成する際にも見られる。
【0005】
酸化マグネシウム触媒の性能を向上させる試みもなされている。例えば特許文献2には、リン、硫黄、遷移金属等の特定の不純物を制限することにより、酸化マグネシウム異性化触媒の失活速度を改善することが開示されている。しかしながら、含酸素化合物の存在下での失活は依然として問題のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,223,895号明細書
【特許文献2】米国特許第6,875,901号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
現在、含酸素化合物などの原料に存在し得る被毒物質に対して耐性がある異性化プロセス及び/又は異性化/メタセシス複合プロセスにおいて使用できる触媒が見つかっている。
【0008】
一態様における本明細書に開示する実施形態は、オレフィンの二重結合異性化方法であって、オレフィンを含有する流体の流れを、被毒物質である含酸素化合物に対して耐性を示す異性化触媒を含む固定床と接触させることにより、上記オレフィンの少なくとも一部をその異性体へと変換する工程を含む方法に関する。
【0009】
他の態様における本明細書に開示する実施形態は、オレフィンの二重結合異性化と同時に、アルコールの脱水を行う方法に関する。同時に異性化及び脱水を行う際は、1種類の触媒を用いて行ってもよく、1つ又は複数の反応器又は反応床において行ってもよい。
【0010】
他の態様における本明細書に開示する実施形態は、プロピレンの製造方法であって、n−ブテン、イソブテン、パラフィン及びアルコールを含有する炭化水素流を、イソブテンを含む軽質C留分と、n−ブテン及びパラフィンを含む重質C留分とを含む少なくとも2留分に分留する工程;エチレン及び上記重質C留分を、メタセシス触媒と、被毒物質である含酸素化合物に対して耐性を示す異性化触媒とを含む固定床反応器に供給し、上記重質C留分を上記異性化触媒と接触させることにより、アルコールの少なくとも一部を変換して追加のオレフィンを生成しつつ、上記1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンへと変換する工程;並びに、エチレン及び上記2−ブテンの少なくとも一部をメタセシス触媒と接触させて、プロピレン、パラフィン、未反応エチレン、未反応アルコール、未反応1−ブテン及び未反応2−ブテンを含むメタセシス生成物を得る工程を含む方法に関する。
【0011】
その他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書に開示の実施形態に係る触媒を使用した異性化及びメタセシスプロセスのプロセスフロー略図である。
図2】本明細書に開示の実施形態に係る触媒を使用した異性化及びメタセシスプロセスのプロセスフロー略図である。
図3】本明細書に開示の実施形態に係る触媒を使用した異性化及びメタセシスプロセスのプロセスフロー略図である。
図4】本明細書に開示の実施形態に係る触媒を使用した異性化及びメタセシスプロセスのプロセスフロー略図である。
図5】本明細書に開示の実施形態に係る触媒を使用した異性化及びメタセシスプロセスのプロセスフロー略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示する実施形態は、含酸素化合物による被毒をほとんど又は全く示さないアルミナ系異性化触媒を提供する。上記触媒は、オレフィンの位置異性化を触媒する活性部位を有するγ−アルミナ・チタニア結晶性混合物であってもよい。いくつかの実施形態において、アルミナ・チタニア触媒の組成中、チタンの下限は0.01、1、2、3、4、5、10、15、20又は25wt%、その上限は15、20、25、30、35、40、45又は50wt%であってよく、これらの下限値及び上限値の組み合わせは特に制限されない。γ−アルミナ・チタニア触媒の他の態様を以下に記載する。
【0014】
本明細書においてγ−アルミナ・チタニア触媒は、更にアルコールの脱水を触媒する活性部位も有するものであってよい。すなわち、上記触媒は、オレフィンの二重結合異性化を促進するとともに、アルコールを脱水して追加のオレフィンを生成することが可能な二重活性を有するものであってもよい。アルミナ・チタニア触媒について本明細書では特定の態様を記載するが、他の様々な二重活性触媒も本明細書に開示の実施形態の範囲内に含まれることを意図していると理解されたい。
【0015】
本明細書に記載の通り、二重結合異性化及びアルコール脱水という二重の目的で使用されるアルミナ・チタニア触媒は、エーテル、アルコール及び水等の含酸素化合物の存在下で失活しないことから、従来の塩基性金属酸化物触媒に対して改善されたものである。さらに、上記触媒は、メタノール約5ppmの存在下で活性が増大することが分かっており、より望ましいオレフィン位置異性体平衡比を達成でき、また、本明細書に記載されるアルミナ触媒の表面積は高温触媒再生時に損なわれない。
【0016】
本明細書に記載されるγ−アルミナ・チタニア触媒は、単独で使用してもよく、従来のMgO触媒と混合して使用してもよい。
【0017】
本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒は、ペレットや押出物などといった形態であってもよい。特許文献2には、粉末は有用な触媒形態であると記載されているが、固定床又は充填床での粉末の使用に伴って大きな圧力損失が生じることから、異性化触媒をメタセシス触媒と混合して工業用固定床反応器又は固定床異性化反応器においてエチレンの存在下で使用する場合、粉末は商業的には使用されていない。したがって、固定床反応器において通常は使用されない粉末及びより微細な材料は、本明細書に開示の実施形態に係る触媒からは明確に除外される。
【0018】
本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒は、固定床反応器と共に使用しても、触媒蒸留構造体として形成してもよいものである。したがって、異性化触媒は、ペレット、球体、押出物などといった形態であり、通常は0.5mm〜5mm(例えば1mm〜4mmの範囲又は2mm〜3mmの範囲等)の有効径を有することとなる。
【0019】
本明細書に開示の二重結合異性化触媒は、固定床反応器、蒸留塔反応器等の当該技術分野において公知の反応器において、2−ブテン等の様々な内部オレフィンを1−ブテン等のα−オレフィン化合物へと変換するために使用できる。以下、ブテンに関して説明するが、2−ペンテンから1−ペンテン、2−又は3−ヘキセンから1−ヘキセン、2−又は3−ヘプテンから1−ヘプテンへの変換なども考えられる。
【0020】
本明細書に開示の他の実施形態において、二重結合異性化触媒はα−オレフィンを内部オレフィンへと変換するためにも使用できる。具体的には、本明細書に開示の実施形態に係る触媒は、1−ブテンの2−ブテンへの異性化と、アルコールの脱水による追加のオレフィンの生成と、2−ブテンとエチレンとのメタセシス反応によるプロピレンの生成とを同時に行うプロセスにおいて有用であり、上記異性化反応はエチレンの存在下で行ってもよい。
【0021】
本明細書に開示の1以上の実施形態によれば、オレフィンの異性化プロセスは、反応域において混合C4流又はオレフィン混合物をγ−アルミナ・チタニア触媒と接触させる工程を含んでいてもよい。上記混合物は、例えば、1−ブテン、2−ブテン、含酸素化合物等を含んでいてもよい。本明細書に開示のγ−アルミナ・チタニア触媒は、いくつかの実施形態において、アルコールを脱水してオレフィンと水を生成すると同時に、得られたオレフィンと供給原料オレフィンを異性化して、モノオレフィン炭化水素を含む異性化生成物を生成する活性を有していてもよい。
【0022】
本明細書に開示の実施形態に係る触媒は、表面積が、ある実施形態では200m/gを超え、他の実施形態では250m/gを超え、他の実施形態では300m/gを超え、他の実施形態では350m/gを超え、他の実施形態では400m/gを超えるγ−アルミナ・チタニア触媒である。
【0023】
上記γ−アルミナ・チタニア触媒は、アルコールの脱水及びオレフィンの二重結合異性化に対する二重活性を有しながら、更に、いくつかの実施形態では1000ppmまで、例えば10ppm〜900ppm、他の実施形態では100ppm〜800ppmの濃度範囲の典型的な被毒物質である含酸素化合物に対して耐性を示すものであってもよい。
【0024】
さらに、上記γ−アルミナ・チタニア触媒は、例えば従来の異性化触媒の上流側で又は該異性化触媒との混合物として(例えば、MgO触媒床の上流側、γ−アルミナ・チタニア/MgO触媒混合物、塩基性金属酸化物異性化触媒及びメタセシス触媒の混合物、又は、メタセシス触媒床の上流側)など、反応域において初期触媒床を形成していてもよい。本明細書のγ−アルミナ・チタニア触媒の下流側の触媒床で使用できる異性化触媒としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム及び酸化リチウム等の塩基性金属酸化物が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用してもよい。酸化ナトリウム、酸化カリウム等の他の酸化物を促進剤として上記触媒に添加してもよい。
【0025】
MgO等の塩基性金属酸化物異性化触媒は、一般的に、被毒物質である含酸素化合物の影響を受けやすい。γ−アルミナ・チタニア触媒の初期触媒床を使用すると、オレフィンの初期異性化が起こるとともに、被毒物質捕捉能も得ることができ、有利である。いくつかの実施形態において、上記触媒は、更に、アルコールを脱水して追加のオレフィンを生成することもできる。
【0026】
本明細書に開示の二重結合異性化反応は、5℃〜約500℃の温度範囲(例えば250℃〜約450℃の温度範囲)で行ってもよい。また、上記反応の圧力は、大気圧〜約2000psigの範囲(例えば大気圧〜1500psig又は大気圧〜700psig)に制御してもよい。上記反応は、約50psig又は100psig〜約500psigに制御することもできる。また、加圧は、場合によっては不活性雰囲気下で行ってもよい。
【0027】
本明細書に開示するγ−アルミナ・チタニア触媒は、オレフィン製造プロセスにおいて使用できる。該プロセスでは、アルコールの脱水及びオレフィン二重結合の異性化に対する二重活性を有する異性化触媒を有利に利用できる。メタセシス触媒を混合物として又は下流反応床に配置して併用する場合、異性化触媒及びメタセシス触媒を使用して、オレフィン混合物から所望のオレフィンを製造できる。
【0028】
本明細書に開示するメタセシス触媒としては、同一又は異なっていてもよいオレフィン同士を反応させて、同一又は異なっていてもよい第3及び第4のオレフィンを製造できる活性を有する任意の公知のメタセシス触媒が使用できる。
【0029】
上記メタセシス触媒は、上記異性化触媒と混合してもよく、同一触媒床中の別個の層であってもよく、同一反応器内の別個の触媒床であってもよく、別個の反応器内に配置されてもよい。
【0030】
上記γ−アルミナ・チタニア異性化触媒は、異性化触媒及びメタセシス触媒の混合物を含む触媒床の上流側の保護層を形成していてもよく、メタセシス触媒とは別になっている塩基性金属酸化物異性化触媒と混合してもよく、塩基性金属酸化物異性化/メタセシス触媒と混合してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示するプロセスにおける供給原料は、1−ブテン及び2−ブテンを含有する混合C4流であり、他のC4炭化水素及やブタノール等の含酸素化合物を含有してもよい。場合によっては、C2〜C6アルコールの第2の原料流を反応域に供給してもよい。アルコールが存在する場合、γ−アルミナ・チタニア触媒によって脱水されて、追加のオレフィンが生成される。そこで生成されたオレフィンと共に、元々存在するオレフィンも異性化されて、2−ブテンを含む異性化生成物が得られる。その後、上記2ーブテンをエチレンとメタセシス反応させて、プロピレンを製造できる。
【0032】
本明細書のγ−アルミナ・チタニア触媒の含酸素化合物耐性とアルコールを脱水して追加のオレフィンを生成する活性とにより、複数の有用な置換を行うことができる。本明細書に開示の実施形態によれば、エタノールを脱水してエチレンを生成し、このエチレンを2−ブテンとメタセシス反応させてプロピレンを製造できる。この方法は、例えば、エタノールの供給は可能であるが、エチレンの入手が限られる場合に有用となり得る。他の実施形態によれば、プロパノールを脱水して、追加のプロピレン生成物を得ることもできる。更に他の実施形態によれば、イソ−、1−又は2−ブタノールを脱水して、追加の1−及び2−ブテンを生成できる。これらの実施形態の組み合わせもまた、本開示が意図するものである。
【0033】
本明細書の1つ以上の実施形態によれば、本明細書に開示する混合C原料は、例えばスチームクラッカー又は流動接触分解(FCC)ユニットなどから得られるC〜C6+炭化水素(C、C〜C及びC〜Cクラッカー流出物等)を含有してもよい。また、Cオレフィンの混合物を含有する他の精製所から得られる炭化水素流を使用してもよい。C、C及び/又はC成分が原料中に存在する場合、原料流を予備分留して、一次Cカット、C〜Cカット又はC〜Cカットとしてもよい。
【0034】
原料流に含有されるC成分としては、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン及びブタジエンが挙げられる。いくつかの実施形態においては、混合C原料を前処理して、ノルマルブテンに富んだメタセシス反応用原料を得る。例えば、ブタジエンがC原料中に存在する場合、該ブタジエンを水素添加又は抽出によって除去してもよい。他の実施形態においては、ブタジエン水素添加と同時又はその後に混合ブテン原料を水素化異性化条件下に置いて、1−ブテンを2−ブテンへと変換し、イソブテンは分留により2−ブテン流から分離してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態においては、上述のように、エチレンと、ノルマルブテンを含む炭化水素混合物とを、メタセシス機能及び異性化機能の両方を有する触媒を含む反応器に供給して、上記1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンへと変換するとともに、上記2−ブテンをエチレンと反応させて、メタセシス生成物としてプロピレンを生成してもよい。エチレンは、エチレンのn−ブテンに対する比を少なくとも0.5、他の実施形態では少なくとも1.0、他の実施形態では0.5〜約2.5の範囲、更に他の実施形態では約1.0又は1.5〜約2.0に維持できる速度で反応器に供給してもよい。メタセシス反応器内に含まれる触媒は、担体上に担持された第VI−B族及び第VII−B族金属の酸化物等の任意の公知のメタセシス触媒であってよい。触媒担体の種類は特に限定されず、アルミナ、シリカ、その混合物、ジルコニア及びゼオライトが挙げられる。上記メタセシス触媒に加えて、メタセシス反応器に含まれる触媒としては、上述した脱水及び二重結合異性化の二重活性を有するγ−アルミナ・チタニア触媒が挙げられる。
【0036】
本明細書に開示の実施形態に係る触媒が有用となり得るメタセシスプロセスの一例を図1に示す。n−ブテン及びパラフィンを含有するCカット等の混合炭化水素流を入口からフローライン10を介してセパレーター12に供給できる。セパレーター12では、Cカットが、Cカットに含まれる軽質C及びC等の軽質留分と、n−ブテン等の重質C留分とを含む少なくとも2留分に分離される。上記軽質留分は、フローライン14を介して塔頂留分としてセパレーター12から回収できる。
【0037】
上記重質C留分は、フローライン16を介して塔底留分として回収し、異性化/メタセシス反応器18に供給できる。エチレンをフローライン20及び/又は22を介して反応器18に同時供給してもよい。異性化/メタセシス反応器18は、従来のメタセシス触媒及び本明細書に開示の実施形態に係るγ−アルミナ・チタニア異性化触媒の触媒床24を1つ以上含んでいてもよい。メタセシス触媒及び異性化触媒は、後述するように、それらの触媒を連続して1つの触媒床に充填するか、又は、それらの触媒を別々の触媒床として反応器に配置するなどして、1つの触媒床において混合してもよく、あるいは順番に反応器に配置してもよい。
【0038】
異性化/メタセシス反応器18から得られた流出物は、出口から回収し、フローライン26を介して分離システム28に供給してもよい。分離システム28は、例えば、流出物を炭素数別に分離するための蒸留装置を備えていてもよい。図示したように、分離システム28は、メタセシス生成物を、フローライン30を介して回収されるエチレン含有留分と、フローライン32を介して回収されるプロピレン含有留分と、フローライン34を介して回収されるC留分と、フローライン36を介して回収されるC5+留分とを含む少なくとも4留分に分留できる。
【0039】
フローライン30を介して回収したC留分の一部は、フローライン38を介してシステムからパージできる。所望により、フローライン30を介して回収したエチレンの少なくとも一部をエチレン原料としてフローライン22を介して異性化/メタセシス反応器18へと再循環させてもよい。
【0040】
フローライン34を介して回収したC留分の少なくとも一部は、フローライン40を介してセパレーター12へと再循環させてもよく、必要に応じて、一部をフローライン42を介してパージしてもよい。あるいは、図示しないが、フローライン34を介して回収したC留分をメタセシス反応器18又は他の下流処理ユニットへと再循環させてもよい。さらに、炭化水素流がブタジエンを含有する場合、上記プロセスには、セパレーター12で炭化水素原料を分留する前に、ブタジエンの少なくとも一部を水素添加する水素添加段階が含まれてもよい。
【0041】
本明細書に開示の実施形態に係る触媒が有用となり得るプロセスの他の例を図2に示す。異性化/メタセシス反応器システム18は、本明細書に開示の実施形態に係るγ−アルミナ・チタニア異性化触媒を含む異性化反応器100を備えていてもよい。異性化反応器100は、本明細書に開示するγ−アルミナ触媒を含んでいてもよく、いくつかの実施形態においては、アルコールの脱水及びオレフィンの二重結合異性化に対する活性を有し、更に典型的な被毒物質である含酸素化合物に対して耐性を示すものであってもよい。その後、異性化後の流出物26aは、更に、例えば上述の方法などによって下流側で処理及び/又は分離してもよい。
【0042】
本明細書に開示の実施形態に係る触媒が有用となり得るプロセスの他の例を図3に示す。異性化/メタセシス反応器システム18は、本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒を含む異性化反応器110を備えていてもよい。反応器120は、本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒又は任意の従来の異性化触媒を含んでいてもよく、更に任意の従来のメタセシス触媒を含んでもよい。反応器120内のメタセシス触媒及び異性化触媒は、それらの触媒を連続して1つの触媒床に充填するか、又は、それらの触媒を別々の触媒床として反応器に配置するなどして、1つの触媒床において混合してもよく、あるいは順番に反応器に配置してもよい。
【0043】
異性化反応器100は、アルコールの脱水及びオレフィンの二重結合異性化に対する活性を有し、更に典型的な被毒物質である含酸素化合物に対して耐性を示すものなど、本明細書に開示するγ−アルミナ・チタニア触媒を含んでいてもよい。異性化後の流出物25は、反応器120に供給して更に異性化及びメタセシス反応を行ってもよい。その後、メタセシス反応後の流出物26bは、図1を参照して上述したように下流側で分離してもよい。
【0044】
本明細書に開示の実施形態に係る触媒が有用となり得るプロセスの他の例を図4に示す。異性化/メタセシス反応器システム18は、本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒を含む異性化反応器110を含んでいてもよい。反応器130は、任意の従来のメタセシス触媒を含んでいてもよい。反応器130のメタセシス触媒は、1つの触媒床であってもよく、複数の触媒床として反応器に配置してもよい。
【0045】
異性化反応器110は、本明細書に開示するγ−アルミナ・チタニア触媒を含んでいてもよい。異性化後の流出物25は、反応器130に供給してオレフィンメタセシス反応を行ってもよい。その後、メタセシス反応後の流出物26cは、図1を参照して上述したように下流側で分離してもよい。いくつかの実施形態においては、反応器120と130の間で水分離中間工程を採用してもよい。
【0046】
本明細書に開示の実施形態に係る触媒が有用となり得るプロセスの他の例を図5に示す。異性化/メタセシス反応器システム18は、本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒142を含む異性化反応器140を含んでいてもよい。反応器140は、更に、本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒144又は任意の従来の異性化触媒を含んでいてもよく、更に任意の従来のメタセシス触媒を含んでもよい。触媒床144中のメタセシス触媒及び異性化触媒は、それらの触媒を連続して1つの触媒床に充填するか、又は、それらの触媒を別々の層として反応器に配置するなどして、1つの触媒床において混合してもよく、あるいは順番に触媒床に配置してもよい。
【0047】
異性化触媒床142は、本明細書に開示するγ−アルミナ・チタニア触媒を含んでいてもよい。その後、メタセシス反応後の流出物26dは、上述したように処理してもよい。
【0048】
本明細書に開示の実施形態に係る異性化触媒は、異性化触媒が含酸素化合物に曝露され得る他のプロセスにおいても有用となり得る。そのようなプロセスとしては、C5、C6、C7、C8及びそれ以上のオレフィン等、C4オレフィン以外のオレフィンを異性化するプロセスであって、従来の塩基性金属酸化物異性化触媒を被毒することが知られている含酸素化合物が原料流に含まれ得るプロセスが挙げられる。
【0049】
上述したように、本明細書に開示の実施形態は、1−ブテンの2−ブテンへの異性化、アルコールの脱水によるオレフィンの生成、及び、2−ブテンとエチレンのメタセシス反応によるプロピレンの生成という二重機能のための触媒を提供する。本明細書に開示する異性化触媒は、チタニアと混合した結晶性γ相アルミナ触媒であってもよい。
【0050】
本開示に含まれる実施形態の数は限られるが、本開示を利用した当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を考え出すことができることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5