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特許6290425化学強化可能なガラスおよびそれから製造されたガラス要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290425
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】化学強化可能なガラスおよびそれから製造されたガラス要素
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/112 20060101AFI20180226BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   C03C3/112
   C03C21/00 101
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-540984(P2016-540984)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公表番号】特表2016-540721(P2016-540721A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2014077155
(87)【国際公開番号】WO2015091134
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】102013114225.7
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ダールマン
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ルーダス
(72)【発明者】
【氏名】インゲ ブルガー
(72)【発明者】
【氏名】イアムガート ヴェステンベアガー
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−033050(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%でのガラス要素(1)のガラス(2)のモル組成の次の成分:
SiO2 56〜70
Al23 10.5〜16
23 0.5〜3
25 0〜3
Na2O 10〜15
2O 0〜2
MgO 0〜3
ZnO 0
TiO2 0〜2.1
SnO2 0〜1
F 0.001〜5、および
さらなる成分0〜2%、
を有するガラス要素(1)であって、
その際に、B23のモル含量に対するフッ素のモル含量の商は、0.0003〜2の範囲内にある、前記ガラス要素(1)。
【請求項2】
前記ガラス要素がナトリウムイオンをカリウムイオンと交換することによって、該ガラス要素の表面上で化学強化されており、その際に、前記ガラス(2)の表面(3)内での圧縮応力は、少なくとも700MPaであり、およびアルカリ金属イオンの交換深さは、少なくとも25μmである、請求項1記載のガラス要素(1)。
【請求項3】
請求項1または2記載のガラス要素(1)を製造するための化学強化可能なガラスであって、モル%での次の成分:
SiO2 56〜70
Al23 10.5〜16
23 0.5〜3
25 0〜3
Na2O 10〜15
2O 0〜2
MgO 0〜3
ZnO 0
TiO2 0〜2.1
SnO2 0〜1
F 0.001〜5、および
さらなる成分0〜2%、
を有し、
その際に、B23のモル含量に対するフッ素のモル含量の商は、0.0003〜2の範囲内にある、前記の化学強化可能なガラス。
【請求項4】
次の特徴:
− その粘度が104dPasの値を有するガラス(2)の作業点が1300℃を下回る温度であること、
− 変態温度Tgが580℃を上回ることの少なくとも一方を特徴とする、請求項3記載のガラス。
【請求項5】
次の特徴:
− アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との総和が、13モル%を上回ること、
− アルカリ土類金属酸化物の総和が、最大で3モル%であること、
− アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびフッ素からの総和に対するB23およびAl23の総和のモル比が0.42〜1.5であること、
− 成分B23、Al23およびZrO2のモル全含量と成分Na2O、K2OおよびMgOのモル全含量とからのモル比(B23+Al23+ZrO2)/(Na2O+K2O+MgO)が、0.95〜1.55の範囲内の値を有することの少なくとも1つを特徴とする、請求項3または4記載のガラス。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか1項に記載のガラス(2)を準備しかつ熱成形によってガラス板の形のガラス要素(1)へと加工する、板状ガラス要素(1)の製造法であって、前記熱成形がフロート法、引き抜き法、ロール法またはオーバーフローフュージョン法の1つを含む、前記製造法。
【請求項7】
ガラス要素(1)を、少なくとも1.5時間の間、カリウムイオンを含む、少なくとも300℃の温度を有する塩浴中に貯蔵し、かつガラス要素(1)のガラスのナトリウムイオンを該ガラス要素の表面上で塩浴のカリウムイオンと少なくとも部分的に交換し、その際に、アルカリ金属イオンの交換深さは、少なくとも25μmであり、その結果、前記ガラス要素の表面上に、少なくとも700MPaの表面上での圧縮応力を有する圧縮応力帯域が形成され、および前記ガラス要素が化学強化されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ガラス要素(1)を、主にKNO3を含有する塩浴中に貯蔵し、その際に、前記塩浴は、さらなるカリウム含有成分である、成分K3PO4、K2SO4およびKOHおよび/または銀含有塩の少なくとも1つを含有することができる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス要素(1)を、熱変形工程後に、かつ、塩浴中での貯蔵前に、切断工程、破断工程、穿孔工程、フライス加工工程または研磨工程の少なくとも1つによって後加工する、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
− タッチ機能を有するかまたは有しない電子機器である、携帯電話、スマートフォン、タブレットPCまたはタッチディスプレイを有するPC、モニター、テレビ、ナビゲーション機器、公共のディスプレイおよびターミナル、産業用ディスプレイのための、保護ガラスとして、
− 家庭内、ならびに道路車両、航空機、鉄道車両および船における表面のための強力な保護ガラスとして、
− 道路車両、鉄道車両、船および航空機の窓ガラスとして、
− 投光器またはランプの板ガラスとして、
− ソーラーセルまたはハードディスクドライブの支持体材料として、
− 安全ガラスのラミネートとしての、請求項2記載の化学強化されたガラス要素(1)の使用または請求項から9までのいずれか1項に記載の方法で製造された、化学強化されたガラス要素(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガラスの製造に関する。殊に、本発明は、極めて良好なスクラッチ挙動を有する被覆ガラスとしての、イオン交換により化学強化可能な強力ガラスに関する。前記ガラスは、保護ガラス(カバー)として、電子機器、例えばスマートフォン、タブレットPC、ナビゲーション機器等に使用されうる。
【0002】
スマートフォン、タブレットPC、ナビゲーション機器等は、今日では一般にタッチスクリーンにより操作される。ディスプレイおよびセンサーの保護ガラスとして、薄手のイオン交換された(化学強化された)ガラスが使用されてよい。ガラスの化学強化は、小さなアルカリ金属イオン(例えば、Na+)をより大きな同族体(例えば、K+)によって交換することにより、達成される。この場合、応力プロファイルがガラス内に導入される。
【0003】
国際公開第2009/070237号には、高い破壊靱性(靭性)とともに耐スクラッチ性でもあるべき化学強化可能なガラスが記載されている。前記ガラスは、表面での少なくとも600MPaのCSおよび40μmを上回るDoLを有する標準強化プロファイルを有する。この場合、脆性Bには、B=HV/KICが当てはまり、その際に、HVは、ビッカース硬さを示す。KICまたはBは、インデント測定に由来しうる試料サイズである。しかし、国際公開第2009/070237号には、正確な測定法は記載されておらず、殊に湿度が記載されていない。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0009154号明細書には、少なくとも200MPaのCSおよび少なくとも50μmのDoLを有する化学強化ガラスが確認される。前記プロファイルは、さまざまな強化浴中での交換によって形成され、それによって、ガラスの破壊挙動は、影響を及ぼされるべきである:ガラスは、幾つかの大きな断片に破壊されるべきである。スクラッチ許容差またはスクラッチ強度について指摘はなく、衝撃時の挙動だけが考慮されている。プロファイル形の正確な定義はなく、表面でのCS、DoLおよび中心応力値だけが記載されている。実施例中には、最大カリウム濃度が表面上に存在しない強化プロファイルが示されている。表面上のカリウム濃度は、体積内の値にほぼ相当する。圧縮応力の経過は、明らかではない。
【0005】
国際公開第2011/022661号には、化学強化された、耐破壊性および耐スクラッチ性のガラスが記載されている。目視的に目立つスクラッチ傷を形成する傾向は、ここに記載された本発明のための試験とも似ている試験構成によって試験されるが、しかし、その際に国際公開第2011/022661号中で使用される力は、ここに記載された本発明のための試験の場合(4N)よりも高く5N超が選択されている。化学強化は、極めて低い最小値で設定されている(CS400MPa以上およびDoL15μm以上)。強化プロファイルは、標準に相応する。
【0006】
しかし、必要とされる強度のためには、このように低い強化ではしばしば不十分である。
【0007】
国際公開第2009/070237号の記載と同様に、強度を減少させるクラックの形成傾向は、国際公開第2011/022661号によっても、圧子での押し込み試験により試験されかつ当該圧子でのスクラッチ実験では試験されていない。
【0008】
国際公開第2012/074983号には、標準と比べて変更された強化プロファイルでの化学強化ガラスが記載されている。両面上には、圧縮応力領域が存在し、内向きにそのつど引張応力領域が続き;ガラスの中心部には、最終的に再び圧縮応力が存在する。内側に存在する圧縮応力領域は、クラックが材料を突き抜け、かつ、それによって破壊が生じることを防止すべきである。同様に、さまざまなガラスからなるラミネートが記載されている。
【0009】
米国特許出願公開第2009/142568号明細書には、イオン交換により強化可能なガラスが記載されており、このガラスの機械的性質、殊に硬さ、強度および脆性は、いわゆる非架橋酸素(NBO)の機能と見なすことができる。この刊行物は、NBOに架橋酸素(BO)が相反するものであり、この架橋酸素(BO)がガラス網状組織を形成すると同時に強固にすることを教示している。ガラス中に存在するNBOが少なければ少ないほど、ガラスは、ますます堅固になる。しかし、この教示によれば、製造されたガラスは、欠点も有している。この欠点は、実際に強度に関連する性質は満たされているが、しかし、交換深さは中位であり、かつそのためのプロセス時間は、まさに長時間継続することにあると判断することができる。このことは、ガラスが高いホウ酸塩割合による極めて緻密なガラス網状組織を有するという事実に理由付けることができる。記載された組成物の大多数は、Li2Oを含有する。前記成分は、急速なイオン交換を可能にし、かつ高い弾性率を確実にする。しかし、Li2Oは、塩浴を化学的初期応力のために比較的急速に汚染し、その結果、浴のイオン交換能力を急速に弱めることが判明した。
【0010】
米国特許第8341976号明細書には、熱的に強化されたかまたは化学強化されたガラスの切断方法が記載されている。この場合、Al23およびB23のモル総和と伝統的にNa2O、K2O、MgOおよびCaOが属する網目修飾成分との商は、1を上回るべきである。また、このガラスは、かなりの深さでの急速なイオン交換を防止する、極めて緻密なガラス網状組織を有する。
【0011】
米国特許出願公開第2009/197088号明細書には、イオン交換可能なガラスが開示されており、このガラスは、高い初期応力、有利なイオン交換深さおよび低い液相温度を有する。このガラスの耐スクラッチ性については、網羅されていない。
【0012】
米国特許出願公開第2008/286548号明細書には、表面内により高い圧縮応力を有する、イオン交換可能なガラスが記載されている。さらに、液相温度での粘度が論議されている。記載されたガラスのスクラッチ挙動については、知られていない。
【0013】
本発明は、イオン交換された、強化ガラス、殊に被覆ガラスの範囲内の新規の解決策を提供する。本発明の課題は、殊に、高い初期応力値および大きな交換深さおよび/または短い交換時間とともに、高いスクラッチ許容差も有するガラスを提供することである。
【0014】
さらに、前記ガラスは、フロート法ならびに他の引き抜き法で製造されうるべきであり、このことから、結晶化挙動および粘度曲線に対するさらなる要件がもたらされる。そのうえ、記載された性質は、より大量のLi2Oなしでも達成可能であるべきである。好ましくは、前記ガラスは、Li2O不含であるべきである。
【0015】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の好ましい態様およびさらなる態様は、従属請求項中に記載されている。
【0016】
前記イオン交換の視点とともに、とりわけ、改善されたスクラッチ挙動の性質が考察される。この性質は、ガラスの適当な組成によって明らかに影響を及ぼされうる。本発明によれば、CaOおよびZrO2を含まないガラスが好ましい。CaOは、イオン交換に不利に作用し、およびZrO2は、溶融挙動に不利に作用することが判明した。
【0017】
さらに、本発明によるガラスは、B23を含有しないかまたはB23を僅かしか含有せず、それによって、イオン交換は、妨害されない。しかし、初期応力挙動を有利に構成するために、本発明は、非架橋酸素(NBO)を、フッ素を使って導入するという思想に基づくものである。成分のフッ素とホウ酸塩のバランスは、同時に良好な初期応力の結果およびスクラッチ挙動により決定される。
【0018】
そのために、特に、本発明は、ガラスのモル組成の次の成分を有するガラス、またはモル%でのガラス要素の次の成分を有するガラス要素を提供する:
成分 モル%
SiO2 56〜70
Al23 10.5〜16
23 0〜3
25 0〜3

Na2O 10〜15
2O 0〜2
MgO 0〜3
ZnO 0〜3

TiO2 0〜2.1
SnO2 0〜1
F 0.001〜5。
【0019】
この場合、さらに、二次条件として、B23のモル含量に対するフッ素のモル含量の商、すなわちF/B23は、0.0003〜15の範囲内、特に0.0003〜11、特に有利に0.0003〜10の範囲内にあることが当てはまる。
【0020】
さらなる好ましい二次条件は、殊に、量比によってももたらされるか、またはさまざまな一定の成分の全含量の商によってももたらされる。
【0021】
好ましい二次条件は、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の全てのモル割合の総和である。この場合、アルカリ金属酸化物は、元素Li、Na、Kの酸化物を含み、およびアルカリ土類金属酸化物は、元素Mg、BaおよびCaの酸化物を含む。アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との総和は、13モル%を上回り、有利に15モル%を上回るべきであった。
【0022】
これに対して、アルカリ土類金属酸化物の総和は、有利に3モル%以下である。
【0023】
さらに、NBOを形成するための条件をアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびフッ素からの総和に対するB23およびAl23の総和のモル比として公式化するか、または前記比を選択することによってNBOの形成を調節することは、有利であることが判明した。好ましい実施態様において、前記モル比は、0.42〜1.5、有利に0.5〜1.1、特に有利に0.5〜1である。
【0024】
前記ガラスの組成におけるさらなる好ましい二次条件によれば、成分B23、Al23およびZrO2のモル全含量と成分Na2O、K2OおよびMgOのモル全含量とからのモル比(B23+Al23+ZrO2)/(Na2O+K2O+MgO)は、0.95〜1.55の範囲内、特に1.0〜1.5の範囲内、特に有利に1.05〜1.45の範囲内の値を有する。
【0025】
さらに、前記ガラスは、原料の選択による僅かな不可避的不純物を含有する。
【0026】
さらに、前記ガラスは、さらなる成分、例えば清澄剤、クロリド、硫酸塩、CaO、SrO、BaOを0〜2%、特に0〜1%含有する。しかし、好ましくは、前記ガラスは、上記したように、CaO不含である。同様に、好ましくは、前記ガラスは、ZrO2不含である。概念“不含”がそのつど、原料および接触材料の選択によって、不可避的微少量の前記材料CaOおよびZrO2をなお含有していてよいように解釈しうることは、当業者には明らかなことである。
【0027】
ガラス要素の表面上でナトリウムイオンは、少なくとも部分的にカリウムイオンと交換可能であり、その結果、該表面上で、ガラス要素の化学強化のための圧縮応力帯域が形成しうる。
【0028】
次に、本発明を図に関連して実施例とともに詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、化学強化された板状ガラス要素を示し、ならびに前記ガラス要素中での機械的応力の経過曲線の図を重ねて示す略図である。
図2図2は、ガラス要素のガラス表面内のさまざまなスクラッチ傷を示すスケッチである。
図3図3は、ガラス要素のガラス表面内のさまざまなスクラッチ傷を示す顕微鏡写真である。
図4図4は、ガラス要素のガラス表面内のさまざまなスクラッチ傷を示す顕微鏡写真である。
図5図5は、ガラス要素のガラス表面内のさまざまなスクラッチ傷を示すスケッチである。
図6図6は、ガラス要素のガラス表面内のさまざまなスクラッチ傷を示す顕微鏡写真である。
図7図7は、ガラス要素のガラス表面内のさまざまなスクラッチ傷を示す顕微鏡写真である。
図8図8は、板状ガラス要素の1つの実施態様を示す略示断面図である。
図9図9は、板状ガラス要素の1つの実施態様を示す略示断面図である。
図10図10は、板状ガラス要素の1つの実施態様を示す略示断面図である。
【0030】
今や、上記の本発明による組成のガラスを用いると、高い初期応力値および/または急速な化学強化を達成することができる。したがって、また、さらなる視点によれば、本発明は、上記組成のガラスを有する化学強化されたガラス要素に関し、その際に、前記ガラス要素は、ナトリウムイオンをカリウムイオンと交換することによって、該ガラス要素の表面上で化学強化されている。
【0031】
ナトリウムイオンをカリウムイオンと交換することによる当該強化で、本発明によるガラス要素の場合に、少なくとも700MPaのガラスの表面内での圧縮応力(“CS”=“compressive Stress”)および少なくとも25μmのアルカリ金属イオンの交換深さが達成されうる。同様に、少なくとも750MPaのガラスの表面内での圧縮応力は、少なくとも30μmのアルカリ金属イオンの交換深さで達成されうる。また、少なくとも35μmのアルカリ金属イオンの交換深さの場合、800MPaを上回るガラスの表面内での圧縮応力が可能である。
【0032】
図1中には、板状の本発明によるガラス要素1が図示されている。ガラス2からなるガラス要素は、2つの対向する面31、32を有する。前記ガラス要素1は、表面3上のナトリウムイオンを交換深さΔdにまで交換することにより、化学強化される。前記イオン交換および表面的により高い濃度で存在するカリウムイオンのより大量のイオン交換によって、圧縮応力5が形成される。前記圧縮応力CSの経過曲線は、図中に重なり合って図示されている。前記圧縮応力は、表面3の該圧縮応力の最大値CSmaxから厚さΔdの層内で低下し、かつ板状のガラス要素の内側範囲内で弱い引張応力に移行する。厚さΔdの層は、ほぼ圧縮応力帯域5に相当する。ガラス要素1の厚さdは、特に、0.2〜1.1ミリメートルの範囲内にある。当該の薄手のガラスには、特に強度を高めるために化学強化する方法が適している。
【0033】
しかし、もちろん、必要な場合には、より僅かな圧縮応力および/または交換深さを形成させることも可能である。
【0034】
この場合、さらに、本発明によるガラスは、580℃を上回るガラス転移温度Tgによって傑出している。それというのも、ガラス中の応力が十分な場合には、ガラス転移温度未満でもガラス中での弛緩過程が関連することになるので、高いTgは、化学強化に関連しかつ特に有利である。
【0035】
被覆ガラスとして、殊に電子ディスプレイに利用するために、前記ガラス要素は、特に有利に板状に製造される。当該ガラス板の成形は、フロート法、引き抜き法(引き上げまたは引き下げ)、ロール法またはオーバーフローフュージョン法によって行うことができる。
【0036】
本発明によるガラスは、一般に作業温度または作業点(104 dPasの粘度)1380℃以下を示す。したがって、前記ガラスは、特殊ガラス用の通常のタイプの槽中で溶融され、かつ熱成形は、上記の熱成形法のフロート法、引き抜き法(引き上げまたは引き下げ)、ロール法またはオーバーフローフュージョン法によって問題なしに行うことができる。
【0037】
それによれば、本発明は、なお1つのさらなる視点によれば、本発明によるガラスを準備しかつ熱成形によってガラス板の形のガラス要素に加工する、板状ガラス要素の製造法に関し、その際に、前記熱成形は、フロート法、引き抜き法、ロール法またはオーバーフローフュージョン法の1つを含む。
【0038】
前記強化は、有利に、ガラス中に含まれるナトリウムイオンを塩浴からのカリウムイオンと交換することによって行われる。それによれば、ガラス板に熱変形することによる前記方法のさらなる態様において、イオン交換は、カリウムイオンを含む塩浴中で実施される。この場合、本発明の実施態様によれば、ガラス要素、特に板状のガラス要素を本発明によるガラスから製造し、かつ引き続き少なくとも1.5時間の間、カリウムイオンを含む、少なくとも300℃の温度を有する塩浴中に貯蔵し、かつガラス要素のガラスのナトリウムイオンを該ガラス要素の表面上で塩浴のカリウムイオンと少なくとも部分的に交換する、化学強化されたガラス要素を製造する方法が設けられており、その際に、アルカリ金属イオンの交換深さは、少なくとも25μmであり、その結果、前記ガラス要素の表面上に、少なくとも700MPaの表面上での圧縮応力を有する圧縮応力帯域が形成され、かつ前記ガラス要素は、化学強化される。
【0039】
イオン交換には、380℃〜460℃の範囲内の塩浴の温度および1〜10時間の範囲内の塩浴中でのガラス板の貯蔵時間は、特に有利であることが証明された。
【0040】
しかし、前記パラメーターは、非板状のガラス要素、例えばガラス棒の強化にも適している。
【0041】
前記化学強化は、本発明の実施態様によれば、主にKNO3を含有する塩浴中での貯蔵によって行われる。任意に、さらなるカリウム含有成分、例えばK3PO4、K2SO4およびKOHは、塩浴中に含有されていてよい。純粋なKNO3溶融液が好ましい。任意に、銀含有塩、例えばAgNO3が含有されていてもよい。イオン交換の際に銀イオンを注入することによって、こうして、ガラス要素に抗菌作用が付与されてもよい。
【0042】
さらに、本発明によるガラスを用いると、高い圧縮応力および大きい侵入深さが一段階の強化により達成されうる。一段階の強化は、ガラスが順次にさまざまな塩浴中に貯蔵される多段階の方法と比べて殆んど費用が掛からずかつ迅速である。
【0043】
前記ガラス板は、本発明の実施態様によれば、既に、本発明によるガラス要素であることができる。しかし、とりわけ、前記ガラス要素は、さらに後加工され、殊に、目標寸法のガラス板を得ることができる。さらに、後加工は、例えば穿孔またはフライス加工による穴、切欠または凹所の導入を含むこともできる。後加工、例えば殊に目標の形への裁断またはフライス加工、穿孔、エッチング、サンドブラストは、貯蔵前に塩浴中で、切断工程、破断工程または研磨工程の少なくとも1つによって行うことができる。前記ガラス要素をフロート法によって形成する場合には、表面をポリシング仕上げ加工することも好ましく、錫不純物が除去されうる。後加工は、とりわけ化学強化前に行われ、加工の際の損傷は、強化前に存在する応力に基づいて回避されうる。
【0044】
強化された形の本発明によるガラスの主要な用途は、消費者範囲からの電子モバイル機器、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、タッチディスプレイを有するPC、ナビゲーション機器、モニター、テレビのための強力な保護被覆ガラスであり、一般にタッチ機能を有するかまたは有しない電子機器のための保護ガラスとしての前記の強力な保護被覆ガラスである。この場合、前記ガラスは、その良好な機械的性質に基づいて、過酷な環境条件、例えば公共のディスプレイおよびターミナル、および産業用ディスプレイ、ならびに家財道具にも適している。
【0045】
特に、厚手のガラス板としての実施態様において、強化されたガラスは、道路車両、鉄道車両、船および航空機の(外側)窓ガラスとして使用されてもよい。
【0046】
このために、少なくとも1.5ミリメートルのガラス厚さが好ましい。また、保護板として、または車両内部空間における強力な保護ガラスとして、ならびに家財道具において、本発明によるガラス板は、使用されてよく、その際に、ここで、1.5ミリメートル未満の厚さを有するより薄手のガラスが使用されてもよい。
【0047】
また、投光器またはランプの板ガラスとして、本発明によるガラス要素は、使用されてよい。
【0048】
前記の機械的性質は、ガラスをさらに強力な支持体材料として適したものにする。ここでは、とりわけ、ソーラーセルまたは光起電力パネルの支持体として、ならびにハードディスクドライブ媒体の磁気層のための支持体として考えられている。
【0049】
最後に、強化された本発明によるガラス板は、さらなる層との組合せで、殊に安全ガラスのラミネートとして使用されてもよい。例えば、2つ以上の本発明によるガラス要素は、重ねて貼り合わされてよく、強力な安全ガラスを製造することができる。
【0050】
とりわけ、例えば前記の使用例の場合のように、板状のガラス要素、殊にガラス板が製造される。しかし、本発明は、異形のガラス要素、例えばレンズに使用することも考えられる。
【0051】
さらに、本質的に色付け成分を含まないガラスが好ましく、その際に、任意の酸化状態の、着色イオン種を有する3d遷移金属、特にV、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Cuに対する、色付け成分の全割合は、0.1モル%未満である。
【0052】
好ましくは、前記組成物は、次の成分を含有する:
成分 モル%
SiO2 61〜70
Al23 11〜14
23 0〜0.5

Li2O 0〜0.1
Na2O 11〜15
2O 0〜2
MgO 0〜3
CaO 0(無水)
ZnO 0〜1
CeO2 0〜0.05

ZrO2 0(無水)
SnO2 0〜0.3
F 0.001〜3

F/B23 0.002〜6。
【0053】
特に好ましくは、前記組成物は、次の成分を含有する:
成分 モル%
SiO2 64〜70
Al23 11〜14
23 0〜0.5

Li2O 0〜0.1
Na2O 11〜15
2O 0〜2
MgO 0〜3
CaO 0(無水)
ZnO 0.1未満
CeO2 0〜0.05

ZrO2 0(無水)
SnO2 0〜0.3
F 0.001〜1

F/B23 0.002〜2。
【0054】
本発明による組成物の幾つかの特殊な特徴は、既に上記に説明されている。次に、前記ガラス組成物のさらなる視点および該ガラス組成物の性質、殊に高められたスクラッチ許容差と同時に良好な強化可能性についても説明する。
【0055】
SiO2は、主要成分およびガラスフォーマとして網状組織の安定化にとって重要である。このことは、とりわけ、ガラスの十分な化学的耐性にとって好ましい。僅か過ぎるSiO2含量は、高められた失透傾向をまねく。また、他方で、SiO2の極めて高い含量は、高い溶融温度を必然的に伴う。さらに、高いSiO2含量を有するガラスは、極めて緻密な構造を有し、このことは、イオン交換に有害である。
【0056】
Al23は、スクラッチ挙動を改善しかつ同時にイオン交換にとってプラスであることを証明する。後者のイオン交換にとってプラスであることは、ソーダ石灰変種と比べたアルカリ金属アルミノケイ酸塩ガラスのCS値およびDoL値と比べて著しく反映されている。前者のスクラッチ挙動の改善は、イオン交換の際に明らかにより高い値を達成する。Al23は、純粋なケイ酸塩ガラスにおいて網目修飾成分によってもたらされるガラス構造内での非架橋酸素官能基(NBO)の形成を防止する。しかし、Al23によって融点は明らかに高められかつ極度に大量のAl23は、失透傾向ならびに耐酸性を劣化させる。ここでも、本発明によるガラスの組成で、一方で高すぎない軟化点と僅かな失透傾向との良好なバランスが達成され、他方で良好なスクラッチ許容差および良好なイオン交換可能性が達成される。
【0057】
23は、スクラッチ挙動に関連して強いプラスの影響を示し、同様のことは、溶融挙動についても言える。しかし、前記B23は、イオン交換を極めて明らかに妨害し、およびプロセス時間は、長くなりすぎる。他方で、プロセス温度は、イオン交換の際には高めなければならない。このことを防止するために、B23の使用は、適度な含量(0.5モル%未満)に限定することができる。米国特許出願公開第2009/142568号明細書および米国特許第8341976号明細書によれば、良好な耐スクラッチ性は、非架橋酸素(NBO)が不在であることに帰する。このことは、架橋酸素(BO)だけを有するガラスが極めて良好なスクラッチ挙動を有するであろうことを意味する。しかし、当該ガラスは、その構造において、イオン交換が極めて困難になるように緊密であることが判明する。それというのも、イオンは、交換の際に材料内で移動できなければならないからである。すなわち、NBOは、再び形成されることになる。
【0058】
米国特許出願公開第2009/142568号明細書および米国特許第8341976号明細書によれば、このことは、一方でAl23とB23とのバランスにより試験され、他方で網目修飾成分により試験される。しかし、それによって、不利に高いB23割合、ひいてはイオン交換の際の関連した長いプロセス時間がもたらされる。それに対して、本発明の解決策は、B23と元素フッ素とのバランスにある。
【0059】
フッ素は、含量が高すぎるとガラスのスクラッチ挙動に不利な影響を及ぼし、かつ、そのうえ、イオン交換に不利な影響を及ぼす。しかし、ガラス中のホウ素含量が少ない場合には、ガラス成分としてのフッ素の導入は、意外なことに、プラスである。フッ素含量が少なすぎる場合には、ガラス量の劣悪な溶融挙動がもたらされる。さらに、劣悪なイオン交換、他方で、劣悪なスクラッチ挙動のはっきりした兆候が現れる。したがって、本発明は、フッ素およびB23の含量の調整に努めており、その際に、0.0003〜10のモル比F/B23が使用される。
【0060】
アルカリ金属酸化物(Na2O、K2O)およびアルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)は、スクラッチ許容差を減少させる。このことは、ガラス構造内での非架橋酸素(NBO=non bridging oxygen)の発生に起因するものと思われる。CaO、SrOおよびBaOならびにZnOは、イオン交換を妨害し、かつしたがって、微少量でのみ使用することができる。
【0061】
25は、イオン交換を促進する。さらに、P25の添加によって、B23の不利な影響は減少されうる。少なすぎる量のP25は、失透に対してプラスに作用し、多すぎる量のP25は、化学的耐性を低下させかつ溶融プロセス中の蒸発を高める。
【0062】
CeO2およびSnO2は、酸化還元活性清澄剤として利用される。低すぎる値は、ガラス中に多数の気泡をまねき、高すぎる値は、溶融残留物を生じかつ望ましくない色をガラス中にもたらす。
【0063】
さらに、前記ガラスは、とりわけ、常用ではあるが健康を脅かすかまたは環境を汚染する清澄剤As23およびSb23を含むべきではない。
【0064】
ZrO2は、スクラッチ挙動に対して良好であり、かつイオン交換に関連して中性の挙動を取る。それにもかかわらず、ガラスは、原料による通常の汚染を除いて、ZrO2“不含”であるべきである。含量が高すぎる場合、ガラスの失透傾向は、溶融プロセスおよび成形プロセスの間に明らかに上昇し、このことで、殊にオーバーフローフュージョン法での熱成形の際に邪魔になるというはっきりした兆候が現れる。
【実施例】
【0065】
次の表には、ガラス成分および本発明によるガラスの4つの実施例のさまざまな性質が記載されている。性質としては、熱膨張係数(CTE)、ガラス転移温度Tg、密度、作業点、または作業温度(T4)、表面内での圧縮応力(CS)および化学強化されたガラス要素の交換深さ(DOL)、ならびに強化されたガラス上での50回の耐スクラッチ試験の際の目視可能な欠陥の数がある。前記化学強化は、KNO3からなる塩浴中で420℃の温度で6時間の間、行われた。
【0066】
【表1】
【0067】
前記耐スクラッチ試験を約50%の湿度で実施した。耐スクラッチ試験の場合、圧子の先端、特にヌープ圧子を、圧子の先端の4Nの荷重で、0.4mm/秒の送り速度および1mmの送りでガラス要素の表面上に押し込んだ。
【0068】
実施例A1のガラスは、ホウ酸塩を有さずかつ比較例である。実施例A2およびA3の場合、B23のモル含量に対するフッ素のモル含量の商は、10.0である。
【0069】
実施例A4によるガラスは、特により耐スクラッチ性であることが証明される。ここで、フッ素とホウ酸塩の含量は、さらに互いに適合されている。そのために、本発明のさらなる態様によれば、実施例およびそのさらなる特別な組成に限定することなく、B23のモル含量に対するフッ素のモル含量の商は0.2〜2の範囲内にあることが設けられている。
【0070】
図2図7につき、ガラス表面内でのスクラッチ傷のさまざまなパターンを説明する。損傷パターンを生じさせるために、そのつど、ダイヤモンド圧子で4Nの定義された力および0.4mmの送り速度でガラス表面3内にスクラッチ傷9を生じさせた。
【0071】
この場合、図2〜4は、目視的に目立たない損傷パターンを示す。
【0072】
そのために、図2は、損傷帯域、または圧子7が押し込まれるスクラッチ傷9を示す略示横断面図である。スクラッチ傷9の空間的な広がりは、圧子の先端の道に狭く限定されたままである。また、スクラッチ傷9の深さは、典型的に交換深さおよび圧縮応力帯域5の深さよりも僅かである。
【0073】
図3は、さらに、当該スクラッチ傷を上から見た写真を示し、図4は、横断面の写真を示す。図4に示された倍率につき、上記のパラメーター(押付力4N、0.4mm/秒の送り速度)で圧子の先端が本発明によるガラス中に押し込まれる当該の目視的に目立たないスクラッチ傷9が、典型的にはそれぞれ30μm未満の幅および深さを有することは、明白なことである。
【0074】
図5図7は、明らかな貝殻状破面およびチッピングを観察することができかつそれによって目視的に目立つスクラッチ傷を示す。圧子が押付力4Nおよび0.4mm/秒の送り速度で本発明によるガラスの表面上に送られるが、しかし、殆んどスクラッチ許容差のないガラスの場合よりも明らかに滅多にスクラッチ傷の前記形状を有しない場合には、当該スクラッチ傷は、本発明によるガラス上に生じてもよい。
【0075】
図5は、図2に相応してスクラッチ傷9の形状を横断面図で略示しており、図6は、表面3を上から見た写真を示し、および図7は、横断面の写真を示す。
【0076】
前記スクラッチ傷9は、上から見た(図6)明らかに目視可能な貝殻状破面91を示す。前記貝殻状破面は、図5の略示横断面図中に記載されかつ図7の横断面図についても明らかに確認することができる横のクラック92によって生じる。
【0077】
前記貝殻状破面は、スクラッチ傷9の長手方向に対して横に表面3に沿って広く延在し、かつそれによって、目視的に目立つ。また、前記の横のクラックは、なお圧縮応力帯域5内に走り、その結果、いずれにせよ、化学強化によって達成された強度は、あまり低下しない。
【0078】
実施例を有する表中に記載された目視可能な欠陥は、図5〜7につき説明されたような当該スクラッチ傷に関連する。この場合には、前記圧子の先端が、一般に常に、ガラス表面の或る程度の損傷を生じさせることを述べることができる。すなわち、前記耐スクラッチ試験は、残りの場合でも、すなわち例えば上記表の実施例A4の際の残りの48の場合でも、ガラス中にスクラッチ傷を残す。しかし、前記スクラッチ傷は、図2図4と同様に表されており、かつ、したがって、目視的に目立たない。
【0079】
さらに、図3図4図6および図7の写真は、典型的な損傷パターンの説明だけに利用され、かつ本発明によるガラスには受け入れられない。
【0080】
図8図10につき、本発明によるガラス要素1の実施態様が示される。図2に示された実施態様の場合、最終形への切断に加えて、縁部加工が行われる。特に、板状ガラス要素1の縁部11は、丸みを付けられた形を有するC字形縁部12として形成されている。前記C字形縁部は、研磨またはフライス加工によって、特に化学強化前に製造される。
【0081】
もう1つの実施態様によれば、板状ガラス要素1の片側もしくは両側31、32、またはガラス板の片側もしくは両側31、32には、被覆14が設けられていてよい。当該被覆14は、とりわけ、硬質被覆、反射防止層、防指紋被覆、撥油コーティング、プリンティングまたは導電性被覆であることができる。また、前記被覆は、半導体被覆であることができ、例えば、ソーラーセルとして使用されうる。前記被覆14は、全面的であってよいし、構造化されていてよい。前記被覆は、強化前ならびに強化後に施されてよい。
【0082】
図9中に示された実施態様の場合、前記縁部11は、該縁部が切断後に存在するように、そのままにしておき、したがって、基本的に真っ直ぐである。
【0083】
さらなる実施態様として、図9中に示されたガラス要素1は、片側32に凹所16を有する。前記凹所16は、例えばフライス削りされていてよい。この凹所は、CNC加工によって設けられていてよく、その際に、ここで、フライス削りの範囲内で、マイクロクラックの最大クラック深さは、30μmに限定されたままである。前記ガラス要素の表面を構造化する、さらなる方法は、例えばエッチングまたはサンドブラストである。
【0084】
最後に、図10は、湾曲したガラス板の形のガラス要素1の実施例を示す。さらなる実施態様として、前記ガラス板には、開口または孔18が備えられている。これらの開口または孔18は、穿孔、フライス加工、サンドブラストまたはエッチングによって、ガラス要素1の強化前に設けられていてよい。
【0085】
本発明が前記実施例に限定されないことは、当業者には明白なことである。殊に、実施例の個々の特徴は、互いに組み合わされてもよい。例えば、図8による縁部形は、図9または図10中に示された実施例の場合にも使用されうる。また、図8の実施例は、図9および図10中に示された実施例の場合と同様に凹所16および/または開口18を有することができる。さらに、前記ガラス板は、全体的に1つの方向および/または他の方向に湾曲されていてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 板状の本発明によるガラス要素、 2 ガラス、 3 ガラス表面、 5 圧縮応力帯域、 7 圧子、 9 スクラッチ傷、 11 縁部、 12 C字形縁部、 14 被覆、 16 凹所、 18 開口、 31、32 対向する面、 92 横のクラック、 CSmax 圧縮応力の最大値、 d ガラス要素1の厚さ、 Δd 交換深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10