(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Zrと、Y、ScまたはCaの少なくとも1つと、を含む電解質層と、前記電解質層の第1の方向の一方側に配置された燃料極と、前記電解質層の前記第1の方向の他方側に配置され、SrとCoとを含む空気極と、前記電解質層と前記空気極との間に配置された中間層と、を備える電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面における前記空気極と前記中間層と前記電解質層とが含まれる20μm×20μmの矩形視野であって、前記矩形視野を構成する4つの辺のうちの2つの辺は前記中間層と前記電解質層との境界に略平行である矩形視野を、256×256の画素に分割し、EPMAマッピングにより各画素におけるSr強度を表すSr強度マッピングデータを生成し、
前記Sr強度マッピングデータにおける前記第1の方向に略直交する256本の画素ラインの各前記画素ラインについて、各前記画素のSr強度の積算値であるSr強度ライン積算値を算出し、
各前記画素ラインに対して、前記Sr強度ライン積算値をプロットして得られる強度曲線は、前記電解質層におけるSr強度ライン積算値が略一定となる部分の前記Sr強度ライン積算値を示す電解質層積算値部分と、前記電解質層積算値部分の前記Sr強度ライン積算値と略同一の前記Sr強度ライン積算値を示す第1の積算値部分と、前記電解質層積算値部分と前記第1の積算値部分との間に位置し、前記電解質層積算値部分の前記Sr強度ライン積算値よりも大きい前記Sr強度ライン積算値を示す第2の積算値部分と、を有し、
前記第2の積算値部分において、前記Sr強度ライン積算値が最大となる前記画素ラインであるピーク画素ラインより前記電解質層側で前記Sr強度ライン積算値が最小となる第1の点と、前記ピーク画素ラインより前記空気極側で前記Sr強度ライン積算値が最小となる第2の点とを結ぶ直線であるベースラインと、前記第2の積算値部分とで囲まれる領域の面積であるSrZrO3積算値は、600以上、10300以下であることを特徴とする、電気化学反応単セル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、単セルに含まれるSZOの量が少ないほど好ましいとされている。しかし、本願発明者は、単セルに含まれるSZOの量が過少であると、かえって発電性能が低下する上に、中間層と空気極との間の剥離が発生するおそれがある、という課題を新たに見出した。すなわち、上記従来の技術では、単セルの発電性能の低下抑制、および、中間層と空気極との間の剥離の抑制の点で向上の余地がある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」ともいう)の構成単位である電解単セルにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応単セルにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単セルは、Zrと、Y、ScまたはCaの少なくとも1つと、を含む電解質層と、前記電解質層の第1の方向の一方側に配置された燃料極と、前記電解質層の前記第1の方向の他方側に配置され、SrとCoとを含む空気極と、前記電解質層と前記空気極との間に配置された中間層と、を備える電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面における前記空気極と前記中間層と前記電解質層とが含まれる20μm×20μmの矩形視野であって、前記矩形視野を構成する4つの辺のうちの2つの辺は前記中間層と前記電解質層との境界に略平行である矩形視野を、256×256の画素に分割し、EPMAマッピングにより各画素におけるSr強度を表すSr強度マッピングデータを生成し、前記Sr強度マッピングデータにおける前記第1の方向に略直交する256本の画素ラインの各前記画素ラインについて、各前記画素のSr強度の積算値であるSr強度ライン積算値を算出し、各前記画素ラインに対して、前記Sr強度ライン積算値をプロットして得られる強度曲線は、前記電解質層におけるSr強度ライン積算値が略一定となる部分の前記Sr強度ライン積算値を示す電解質層積算値部分と、前記電解質層積算値部分の前記Sr強度ライン積算値と略同一の前記Sr強度ライン積算値を示す第1の積算値部分と、前記電解質層積算値部分と前記第1の積算値部分との間に位置し、前記電解質層積算値部分の前記Sr強度ライン積算値よりも大きい前記Sr強度ライン積算値を示す第2の積算値部分と、を有し、前記第2の積算値部分において、前記Sr強度ライン積算値が最大となる前記画素ラインであるピーク画素ラインより前記電解質層側で前記Sr強度ライン積算値が最小となる第1の点と、前記ピーク画素ラインより前記空気極側で前記Sr強度ライン積算値が最小となる第2の点とを結ぶ直線であるベースラインと、前記第2の積算値部分とで囲まれる領域の面積であるSrZrO
3積算値は、600以上、10300以下である。本電気化学反応単セルによれば、高抵抗な物質であるSrZrO
3の量の多さを表すSrZrO
3積算値が10300以下であるため、SrZrO
3の堆積に伴う電気化学反応単セルの性能低下を抑制することができ、また、SrZrO
3積算値が600以上であるため、空気極がある程度高温で焼き付けられていることとなり、中間層と空気極との剥離の発生を抑制することができる。
【0010】
(2)上記電気化学反応単セルにおいて、前記中間層は、GdとSmとの少なくとも一方と、Ceと、Zrとを含む固溶体層を備え、前記固溶体層の厚さは、0.246μm以上、0.482μm以下である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、高抵抗な固溶体層の厚さが厚くなり過ぎることによる電気化学反応単セルの性能低下を抑制しつつ、固溶体層の厚さをある程度厚くすることによって、SrZrO
3積算値の増大による電気化学反応単セルの性能低下を抑制することができる。
【0011】
(3)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面における前記SrZrO3積算値は、1600以上、9200以下である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、SrZrO
3積算値が9200以下であるため、SrZrO
3の堆積に伴う電気化学反応単セルの性能低下を効果的に抑制することができ、また、SrZrO
3積算値が1600以上であるため、中間層と空気極との剥離の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)上記電気化学反応単セルにおいて、前記中間層は、GdとSmとの少なくとも一方と、Ceと、Zrとを含む固溶体層を備え、前記固溶体層の厚さは、0.271μm以上、0.457μm以下である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、高抵抗な固溶体層の厚さが厚くなり過ぎることによる電気化学反応単セルの性能低下を効果的に抑制しつつ、固溶体層の厚さをある程度厚くすることによって、SrZrO
3積算値の増大による電気化学反応単セルの性能低下を効果的に抑制することができる。
【0013】
(5)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面における前記SrZrO3積算値は、3100以上、7800以下である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、SrZrO
3積算値が7800以下であるため、SrZrO
3の堆積に伴う電気化学反応単セルの性能低下をさらに効果的に抑制することができ、また、SrZrO
3積算値が3100以上であるため、中間層と空気極との剥離の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0014】
(6)上記電気化学反応単セルにおいて、前記中間層は、GdとSmとの少なくとも一方と、Ceと、Zrとを含む固溶体層を備え、前記固溶体層の厚さは、0.307μm以上、0.422μm以下である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、高抵抗な固溶体層の厚さが厚くなり過ぎることによる電気化学反応単セルの性能低下をさらに効果的に抑制しつつ、固溶体層の厚さをある程度厚くすることによって、SrZrO
3積算値の増大による電気化学反応単セルの性能低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0015】
(7)上記電気化学反応単セルにおいて、前記電解質層は、固体酸化物を含む構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、SrZrO
3の堆積による性能低下が発生しやすい電気化学反応単セルにおいて、SrZrO
3の堆積に伴う電気化学反応単セルの性能低下を抑制することができる。
【0016】
(8)上記電気化学反応単セルにおいて、前記電気化学反応単セルは、燃料電池単セルである構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、SrZrO
3の堆積に伴う発電性能低下を抑制することができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。
【0020】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0021】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0022】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図2および
図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0023】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0024】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0025】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0026】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0027】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0028】
図4および
図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0029】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0030】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上下方向の一方側(下側)に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112の上下方向の他方側(上側)に配置された空気極(カソード)114と、電解質層112と空気極114との間に配置された中間層180とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、中間層180)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0031】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を含むように形成されている。すなわち、電解質層112は、Zr(ジルコニウム)とY(イットリウム)とを含んでいる。空気極114は、略矩形の平板形状部材である。本実施形態では、空気極114は、集電層220と、集電層220より電解質層112側(下側)に位置する活性層210とから構成されている(
図6参照)。空気極114の活性層210は、主として、酸化剤ガスOGに含まれる酸素のイオン化反応の場として機能する層であり、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)と活性化物質としてのGDC(ガドリニウムドープセリア)とを含むように形成されている。また、空気極114の集電層220は、主として、空気室166から供給された酸化剤ガスOGを拡散させると共に、発電反応により得られた電気を集電する場として機能する層であり、LSCFを含むように形成されている。すなわち、空気極114は、Sr(ストロンチウム)とCo(コバルト)とを含んでいる。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0032】
中間層180は、略矩形の平板形状部材であり、GDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZとを含むように形成されている。中間層180は、空気極114から拡散したSrが電解質層112に含まれるZrと反応して高抵抗なSZOが生成されることを抑制する。単セル110における中間層180周辺の構成については、後に詳述する。
【0033】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0034】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0035】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0036】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0037】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0038】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0039】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0040】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0041】
A−3.単セル110における中間層180周辺の詳細構成:
図6は、単セル110における中間層180周辺の詳細構成を示す説明図である。
図6には、中間層180を挟んで電解質層112の一部と空気極114の一部とが含まれる領域(
図4の領域X1)における単セル110のXZ断面構成が示されている。
【0042】
本実施形態では、単セル110は、LSCFを含む空気極114(の活性層210)と、YSZを含む電解質層112との間に、GDCとYSZとを含む中間層180が設けられている。また、中間層180は、固溶体層182を備えている。固溶体層182は、例えば中間層180を焼き付ける際に、中間層180と電解質層112との相互拡散によって生成される層であり、中間層180における電解質層112との境界付近に存在している。固溶体層182は、中間層180と電解質層112との相互拡散によって生成される層であるため、GDCとYSZとを含んでいる。すなわち、固溶体層182は、Gd(ガドリニウム)と、Ce(セリウム)と、Zrとを含んでいる。
【0043】
単セル110において、例えば空気極114を焼き付ける際や発電運転を行う際に、空気極114に含まれるSrが電解質層112側に拡散し、この拡散したSrがZrと反応すると、高抵抗物質であるSZOが生成される。SZOが生成されると、単セル110の電気抵抗が増大して発電性能が低下する。中間層180は、このようなSrの空気極114から電解質層112への拡散を抑制することによって、SZOの生成を抑制する。
【0044】
A−4.性能評価:
本実施形態の燃料電池スタック100を構成する単セル110は、SZO量および固溶体層182の厚さTsに特徴がある。以下、SZO量および固溶体層182の厚さTsが互いに異なる複数の単セル110のサンプルを用いて行った各種性能評価について説明する。
【0045】
図7は、性能評価結果を示す説明図である。
図7に示すように、各サンプルは、SZO量および固溶体層182の厚さTsが互いに異なっている。なお、本性能評価では、単セル110に含まれるSZO量の多さを、「SZO(SrZrO
3)積算値Vs」という指標を用いて表している。SZO積算値Vsが大きいほど、単セル110に含まれるSZO量は多い。SZO積算値Vsの算出方法は、「A−5.単セル110の分析方法」において詳述する。
【0046】
A−4−1.単セル110の製造方法:
以下の製造方法に従い、単セル110の各サンプルを製造した。なお、本性能評価では、SZO積算値Vsおよび固溶体層182の厚さTsが互いに異なる複数の単セル110のサンプルを得るために、各サンプルを製造する際に、中間層180におけるZrの含有量が0.015〜1(wt%)の範囲内において、中間層180の焼付温度および空気極114の焼付温度を互いに異ならせている。
【0047】
(電解質層112と燃料極116との積層体の形成)
YSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、例えば厚さ約10μmの電解質層用グリーンシートを得る。また、NiOの粉末をNi重量に換算して55質量部となるように秤量し、YSZの粉末45質量部と混合して混合粉末を得る。この混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、例えば厚さ270μmの燃料極用グリーンシートを得る。電解質層用グリーンシートと燃料極用グリーンシートとを貼り付けて、乾燥させる。その後、例えば1400℃にて焼成を行うことによって、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0048】
(中間層180の形成)
中間層180におけるZrの含有量が0.015〜1(wt%)の範囲内になるように、GDC粉末(Ce:Gd=8:2(モル比))にYSZ粉末(8YSZ)を添加し、高純度ジルコニア玉石にて60時間分散混合を行う。この分散混合は、分散混合後の粉末のBET法による比表面積が13〜23m
2/gの範囲でサンプル毎に定められた値になるように行われる。混合後の粉末に、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整して中間層用ペーストを調製する。得られた中間層用ペーストを、上述した電解質層112と燃料極116との積層体における電解質層112の表面にスクリーン印刷によって塗布し、1100℃〜1400℃の範囲でサンプル毎に焼成を行う。これにより、中間層180が形成され、中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体を得る。なお、この中間層180の焼き付けの際に、中間層180と電解質層112との相互拡散が発生し、中間層180における電解質層112との境界付近の位置に固溶体層182が生成される。
【0049】
(空気極114の形成)
LSCF粉末と、GDC粉末と、アルミナ粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、粘度を調整して、空気極活性層用ペーストを調製する。得られた空気極活性層用ペーストを、上述した中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体における中間層180の表面にスクリーン印刷によって塗布し、乾燥させる。また、LSCF粉末と、アルミナ粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、粘度を調整して、空気極集電層用ペーストを調製する。得られた空気極集電層用ペーストを、上述した空気極活性層ペーストの上にスクリーン印刷によって塗布し、乾燥させる。その後、サンプル毎に焼成を行う。サンプルS1〜S10は1100℃で焼成し、サンプルS11は1000℃で焼成した。これにより、空気極114の活性層210および集電層220が形成される。以上の工程により、上述した構成の単セル110が製造される。
【0050】
A−4−2.評価項目および評価方法:
本性能評価では、空気極114の接合性と、単セル110の発電性能とについて評価を行った。
【0051】
(空気極114の接合性の評価方法)
作製した単セル110の各サンプルについて、空気極114の表面に市販のセロハンテープを貼り付けてから剥がしたときの、空気極114の剥離の発生の有無を調べた。
【0052】
(単セル110の発電性能の評価方法)
作製した単セル110の各サンプルについて、温度:700℃、雰囲気:水素320ml、露点温度30℃の条件で、0.55A/cm
2の電流密度での初期電圧を測定した。
【0053】
(判定)
空気極114の接合性の評価において空気極114の剥離が発生した場合、または、単セル110の発電性能の評価において初期電圧が0.90V未満であった場合に、不合格(×)と判定し、その他の場合に、合格(〇)と判定した。
【0054】
(性能評価結果)
図7に示すように、サンプルS11では、空気極114の剥離が発生したため、不合格と判定された。サンプルS11では、空気極114の焼付温度(1000℃)が他のサンプルと比べて低いため、空気極114に含まれるSrの拡散が抑制され、SZO積算値Vsが非常に小さい値となっている。しかし、サンプルS11では、空気極114の焼付温度が低いため、空気極114と中間層180との接合力が弱く、空気極114の剥離が発生したものと考えられる。そのため、SZO積算値Vsは209より大きいことが好ましいと言える。なお、その他のサンプルでは、空気極114の剥離は発生しなかった。
【0055】
また、サンプルS1およびサンプルS10では、初期電圧が0.90V未満であったため、不合格と判定された。サンプルS1およびサンプルS10において初期電圧が低くなった理由は、以下の通りであると考えられる。
図8は、各サンプル(ただしサンプルS11を除く。
図9および
図10についても同様)についてのSZO積算値Vsと固溶体層182の厚さTsとの関係を示す説明図であり、
図9は、SZO積算値Vsと初期電圧との関係を示す説明図であり、
図10は、固溶体層182の厚さTsと初期電圧との関係を示す説明図である。
【0056】
中間層180の焼付温度が高いほど、固溶体層182の厚さTsは厚くなった。これは、中間層180の焼付温度が高いほど、中間層180と電解質層112との相互拡散が促進されるからであると考えられる。また、中間層180の焼付温度が高いほど、SZO積算値Vsは小さい値となった。これは、中間層180の焼付温度が高いほど、固溶体層182の厚さTsが厚くなり、固溶体層182による空気極114からのSrの拡散抑制効果が高くなるからであると考えられる。
図8に示す結果から、固溶体層182の厚さTsが薄くなるほど、SZO積算値Vsは大きくなり、反対に、固溶体層182の厚さTsが厚くなるほど、SZO積算値Vsは小さくなると言える。
【0057】
また、
図9に示すように、SZO積算値Vsが特定の範囲にあるときに初期電圧は高くなり、SZO積算値Vsが該範囲より小さすぎても大きすぎても初期電圧は低くなった。また、
図10に示すように、固溶体層182の厚さTsが特定の範囲にあるときに初期電圧は高くなり、固溶体層182の厚さTsが該範囲より薄すぎても厚すぎても初期電圧は低くなった。これは、SZO積算値Vsが大きすぎると(すなわち、固溶体層182の厚さTsが薄すぎると)、固溶体層182の電気抵抗は低くなるものの、SZOによる電気抵抗が非常に高くなって、単セル110の電気抵抗が高くなり、反対に、SZO積算値Vsが小さすぎると(すなわち、固溶体層182の厚さTsが厚すぎると)、SZOによる電気抵抗は低くなるものの、固溶体層182の電気抵抗が非常に高くなって、やはり単セル110の電気抵抗が高くなるためであると考えられる。
【0058】
図7に示すように、サンプルS1では、固溶体層182の厚さTsが非常に厚くなっている。そのため、サンプルS1では、固溶体層182の電気抵抗が非常に高くなり、単セル110の電気抵抗が高くなったため、初期電圧が低い値になったものと考えられる。また、サンプルS10では、固溶体層182の厚さTsが非常に薄くなっており、その結果、SZO積算値Vsが非常に大きくなっている。そのため、サンプルS10では、SZOによる電気抵抗が非常に高くなり、単セル110の電気抵抗が高くなったため、初期電圧が低い値になったものと考えられる。
【0059】
これに対し、サンプルS2〜S9では、初期電圧が0.90V以上であり、かつ、上述したように空気極114の剥離も無かったため、合格と判定された。サンプルS2〜S9では、SZO積算値Vsおよび固溶体層182の厚さTsが、SZOによる電気抵抗低減と固溶体層182の電気抵抗低減との両方がバランス良く達成される範囲内にあるため、単セル110の電気抵抗が低くなり、初期電圧の低下が抑制されたものと考えられる。
【0060】
なお、サンプルS8では、初期電圧が0.91V以上と、特に良好な発電性能を示した。そのため、サンプルS8では、SZO積算値Vsおよび固溶体層182の厚さTsが、特に好ましい範囲内にあると言える。また、サンプルS3〜S7では、初期電圧が0.92V以上と、一層良好な発電性能を示した。そのため、サンプルS3〜S7では、SZO積算値Vsおよび固溶体層182の厚さTsが、一層好ましい範囲内にあると言える。
【0061】
以上の性能評価結果により得られたSZO積算値Vsと初期電圧との関係を示すグラフ(
図9)において、各プロットから導き出される近似曲線AC1と初期電圧が0.90,0.91,0.92Vを示す各ラインとの交点を算出すると、SZO積算値Vsが600以上、10300以下の範囲内にあると初期電圧が0.90V以上となり、SZO積算値Vsが1600以上、9200以下の範囲内にあると初期電圧が0.91V以上となり、SZO積算値Vsが3100以上、7800以下の範囲内にあると初期電圧が0.92V以上となる。そのため、SZO積算値Vsが600以上、10300以下の範囲内にあると、中間層180と空気極114との間の剥離を抑制しつつ、発電性能の低下を抑制することができるため、好ましいと言える。また、SZO積算値Vsが1600以上、9200以下の範囲内にあると、中間層180と空気極114との間の剥離を抑制しつつ、発電性能の低下を効果的に抑制することができるため、より好ましいと言える。また、SZO積算値Vsが3100以上、7800以下の範囲内にあると、中間層180と空気極114との間の剥離を抑制しつつ、発電性能の低下をさらに効果的に抑制することができるため、さらに好ましいと言える。
【0062】
また、以上の性能評価結果により得られた固溶体層182の厚さTsと初期電圧との関係を示すグラフ(
図10)において、各プロットから導き出される近似曲線AC2と初期電圧が0.90,0.91,0.92Vを示す各ラインとの交点を算出すると、固溶体層182の厚さTsが0.246μm以上、0.482μm以下の範囲内にあると初期電圧が0.90V以上となり、固溶体層182の厚さTsが0.271μm以上、0.457μm以下の範囲内にあると初期電圧が0.91V以上となり、固溶体層182の厚さTsが0.307μm以上、0.422μm以下の範囲内にあると初期電圧が0.92V以上となる。そのため、固溶体層182の厚さTsが0.246μm以上、0.482μm以下であると、高抵抗な固溶体層182の厚さTsが厚くなり過ぎることによる発電性能低下を抑制しつつ、固溶体層182の厚さTsをある程度厚くすることによって、SZOを原因とする発電性能低下を抑制することができるため、好ましいと言える。また、固溶体層182の厚さTsが0.271μm以上、0.457μm以下であると、高抵抗な固溶体層182の厚さTsが厚くなり過ぎることによる発電性能低下を効果的に抑制しつつ、固溶体層182の厚さTsをある程度厚くすることによって、SZOを原因とする発電性能低下を効果的に抑制することができるため、より好ましいと言える。また、固溶体層182の厚さTsが0.307μm以上、0.422μm以下であると、高抵抗な固溶体層182の厚さTsが厚くなり過ぎることによる発電性能低下をさらに効果的に抑制しつつ、固溶体層182の厚さTsをある程度厚くすることによって、SZOを原因とする発電性能低下をさらに効果的に抑制することができるため、さらに好ましいと言える。
【0063】
A−5.単セル110の分析方法:
A−5−1.SZO積算値Vsの算出方法:
上述したSZO量の多さを表す指標値であるSZO積算値Vsの算出方法は、以下の通りである。
図11は、SZO積算値Vsの算出方法を示す説明図である。
【0064】
はじめに、
図11の上段に示すように、SZO積算値Vsの算出対象の単セル110について、Z方向に平行な断面(例えばXZ断面)を露出させ、該断面において20μm×20μmの矩形視野FOVaを設定する。矩形視野FOVaは、第1の方向(Z方向)における空気極114の少なくとも一部と中間層180と電解質層112の少なくとも一部とが含まれる(すなわち、空気極114と中間層180との境界B1、および、中間層180と電解質層112との境界B3が含まれる)ように、かつ、矩形視野FOVaを構成する4つの辺のうちの2つの辺(上辺Stおよび下辺Sb)が中間層180と電解質層112との境界B3に略平行になるように設定される。なお、本明細書では、略平行とは、2つの線(または2つの面)のなす角X(0度≦X≦90度)が2度以下であることを意味し、略直交とは、2つの線(または2つの面)のなす角Xが88度以上であることを意味する。
【0065】
次に、
図11の中段に例示するように、矩形視野FOVaを256×256の画素に分割し、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)マッピングにより、各画素におけるSr強度I(sr)を表すSr強度マッピングデータIDを生成する。EPMAマッピングでは、Srの特性X線のピーク強度をカウント単位で測定する。測定には、例えばJEOL社製のFE−EPMA JXA−8500Fを使用し、測定試料に照射する電子線は15kVで加速し、照射電流20nA、マッピングエリア□20μm、256pixel×256pixelの条件下で測定する。各画素での特性X線の計測時間は30ミリ秒とする。また、Srの特性X線の分光には、分光結晶としてPETHを使用する。
【0066】
次に、Sr強度マッピングデータIDにおけるZ方向に略直交する256本の画素ラインL(n)(L(1)〜L(256))のそれぞれについて、各画素のSr強度I(sr)の積算値であるSr強度ライン積算値ΣI(L)を算出する。そして、
図11の下段に例示するように、横軸にSr強度ライン積算値ΣI(L)を取り、縦軸に各画素ラインL(n)の位置を取ることにより、Z方向に沿った各位置におけるSrの強度を示すSr強度曲線ICを得る。Sr強度曲線ICは、各画素ラインL(n)に対してSr強度ライン積算値ΣI(L)をプロットすることにより得られる曲線であり、256本の画素ラインL(n)のSr強度ライン積算値ΣI(L)を示す256個の点を滑らかに結ぶ曲線である。
【0067】
上述したように、空気極114はLSCFを含むように形成されているため、空気極114には、電解質層112を形成する材料や中間層180を形成する材料よりも多量のSrが含まれている。そのため、
図11の下段に示すように、Sr強度曲線ICにより示されるSr強度ライン積算値ΣI(L)は、空気極114の位置(上側の位置)において大きな値となる。この位置では、Srは主としてLSCFとして存在しているものと考えられる。また、上述したように、空気極114に含まれるSrが電解質層112側に拡散すると、拡散したSrが電解質層112側に存在するZrと反応してSZOが生成される。そのため、Sr強度曲線ICにより示されるSr強度ライン積算値ΣI(L)は、空気極114の位置から電解質層112側(下側)に向かうにつれて、一旦、値が減少して小さい値をとり、そこから再び値が増加して大きな値となり、さらにそこから値が減少して小さい値をとる。この「再び値が増加して大きな値」となる箇所では、Srは主としてSZOとして存在しているものと考えられるため、この部分におけるSrの強度がSZO量に相関するものと考えられる。そのため、SZO量の多さを表すSZO積算値Vsを、以下のように算出するものとする。
【0068】
すなわち、まず、Sr強度曲線ICにおいて、電解質層積算値部分PAeと、第1の積算値部分PA1と、第2の積算値部分PA2とを特定する。電解質層積算値部分PAeは、電解質層112におけるSr強度ライン積算値ΣI(L)が小さい値で略一定となる部分のSr強度ライン積算値ΣI(L)を示す部分である。すなわち、電解質層積算値部分PAeは、
図11の下段に例示するSr強度曲線ICの最下部において、小さな値で推移している部分(谷部)である。また、第1の積算値部分PA1は、電解質層積算値部分PAeのSr強度ライン積算値ΣI(L)と略同一のSr強度ライン積算値ΣI(L)を示す部分である。すなわち、第1の積算値部分PA1は、
図11の下段に例示するSr強度曲線ICにおける空気極114の位置のすぐ下側において、小さな値で推移している部分(谷部)である。なお、2つのSr強度ライン積算値ΣI(L)が略同一であるとは、一方のSr強度ライン積算値ΣI(L)が他方のSr強度ライン積算値ΣI(L)の90%以上、110%以内の範囲にあることを意味する。また、第2の積算値部分PA2は、電解質層積算値部分PAeと第1の積算値部分PA1との間に位置し、電解質層積算値部分PAeのSr強度ライン積算値ΣI(L)よりも大きいSr強度ライン積算値ΣI(L)を示す部分である。すなわち、第2の積算値部分PA2は、
図11の下段に例示するSr強度曲線ICにおいて、2つの谷部(電解質層積算値部分PAeおよび第1の積算値部分PA1)に挟まれた山の部分である。
【0069】
上述のようにして特定された第2の積算値部分PA2において、Sr強度ライン積算値ΣI(L)が最大となる画素ラインL(n)であるピーク画素ラインLpを特定する。また、ピーク画素ラインLpより電解質層112側においてSr強度ライン積算値ΣI(L)が最小となる第1の点PO1と、ピーク画素ラインLpより空気極114側においてSr強度ライン積算値ΣI(L)が最小となる第2の点PO2とを特定する。そして、第1の点PO1と第2の点PO2とを結ぶ直線であるベースラインBLと、Sr強度曲線ICにおける第2の積算値部分PA2とで囲まれる領域(
図11の下段においてハッチングを付した領域)の面積を、該矩形視野FOVaにおけるSZO積算値Vsとして算出する。
【0070】
上述した単セル110の断面において、互いに重ならない10個の矩形視野FOVaを設定し、各矩形視野FOVaにおいて上述したようにSZO積算値Vsを算出し、各矩形視野FOVaにおけるSZO積算値Vsの平均値を、最終的な単セル110のSZO積算値Vsとする。
【0071】
A−5−2.固溶体層182の厚さTsの特定方法:
固溶体層182の厚さTsの特定方法は、以下の通りである。
図12は、固溶体層182の厚さTsの特定方法を示す説明図である。
【0072】
はじめに、
図12の上段に示すように、固溶体層182の厚さTsの特定対象の単セル110について、Z方向に平行な断面(例えばXZ断面)を露出させ、該断面において矩形視野FOVbを設定する。矩形視野FOVbは、電解質層112と中間層180との境界B3であると想定される位置を中心に適宜設定される。設定された矩形視野FOVbにおいて、境界B3に略直交する線分SLを設定する。なお、線分SLと矩形視野FOVbの外周との交点の内、空気極114側(上側)の交点を交点PO11といい、電解質層112側(下側)の交点を交点PO12という。
【0073】
次に、線分SLを500個の画素に分割し、EPMAマッピングにより、各画素におけるGd(またはSm、以下同様)およびCeの強度を表す強度データを生成する。EPMAマッピングでは、GdおよびCeの特性X線のピーク強度をカウント単位で測定する。測定には、例えばJEOL社製のFE−EPMA JXA−8500Fを使用し、測定試料に照射する電子線は15kVで加速し、照射電流20nA、ライン長3.61μm、500pixelの条件下で測定する。各画素での特性X線の計測時間は500ミリ秒とする。また、Gdの特性X線の分光には、分光結晶としてLIFHを使用し、Ceの特性X線の分光には、分光結晶としてPETを使用する。
【0074】
次に、得られたGdおよびCeの強度データに対してスムージング(10点平均)を行う。また、スムージング後のGd,Ceそれぞれの強度データについて、線分SL上の500個の画素の内の上から1番目から61番目までの画素における強度の平均値を濃度100%とし、線分SL上の500個の画素の内の上から406番目から491番目までの画素における強度の平均値を濃度0%として、各画素における強度を濃度値に変換する。
【0075】
図12の下段には、変換されたGd,Ceの濃度値の一例が示されている。なお、
図12の下段には、参考のために、Zrの濃度値も表示されている。濃度値のグラフ上において、Ceの濃度値が60%となる位置を、固溶体層182の上側(空気極114側)の境界B2とし、Gdの濃度値が40%となる位置を、固溶体層182の下側(電解質層112側)の境界B3とし、境界B2と境界B3との間の距離を、該矩形視野FOVbにおける固溶体層182の厚さTsとして特定する。
【0076】
上述した単セル110の断面において、互いに重ならない10個の矩形視野FOVbを設定し、各矩形視野FOVbにおいて上述したように固溶体層182の厚さTsを特定し、各矩形視野FOVbにおける固溶体層182の厚さTsの平均値を、最終的な単セル110の固溶体層182の厚さTsとする。
【0077】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0078】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、空気極114は、活性層210と集電層220との二層構成であるとしているが、空気極114が活性層210および集電層220以外の他の層を含むとしてもよいし、空気極114が単層構成であるとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0079】
また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。例えば、上記実施形態では、電解質層112がYSZを含むとしているが、電解質層112はZrと、Y、Sc(スカンジウム)またはCa(カルシウム)との少なくとも1つと、を含むように構成されていればよく、YSZに代えて、あるいはYSZに加えて、例えばScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)やCaSZ(酸化カルシウム安定化ジルコニア)等の他の材料を含むとしてもよい。また、上記実施形態では、空気極114(活性層210および集電層220)がLSCFを含むとしているが、空気極114はSrとCoとを含むように構成されていればよく、LSCFに代えて、あるいはLSCFに加えて、他の材料を含むとしてもよい。また、上記実施形態では、中間層180における固溶体層182以外の部分がGDCおよびYSZを含むとしているが、中間層180における固溶体層182以外の部分が、GDCに代えて、あるいはGDCに加えて、例えばSDC(サマリウムドープセリア)等の他の材料を含むとしてもよいし、YSZに代えて、あるいはYSZに加えて、例えばScSZやCaSZ等の他の材料を含むとしてもよい。また、固溶体層182は、中間層180と電解質層112との相互拡散によって生成される層であるため、その構成材料は、中間層180の構成材料および電解質層112の構成材料に応じて変わり得る。具体的には、固溶体層182は、GdとSm(サマリウム)との少なくとも一方と、Ceと、Zrとを含むように構成される。
【0080】
なお、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、SZO積算値Vsや固溶体層182の厚さTsが上述した好ましい範囲にある必要は無く、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの単セル110について、SZO積算値Vsや固溶体層182の厚さTsが好ましい範囲にあれば、該単セル110について、中間層180と空気極114との間の剥離を抑制しつつ、発電性能の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0081】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100の構成が、平板形の単セル110を複数備える構成であるが、本発明は、他の構成、例えば国際公開第2012/165409号に記載されているように、略円筒形の単セル110aを複数備える燃料電池スタック100aにも同様に適用可能である。
図13は、変形例における燃料電池スタック100aの構成を概略的に示す説明図である。
図13に示す変形例における燃料電池スタック100aは、Z方向に互いに所定間隔をあけて並べて配置された複数の発電単位102aを備える。複数の発電単位102aは、隣り合う発電単位102a間に配置された集電部870を介して電気的に直列に接続されている。各発電単位102aは、扁平柱形状の外観を有し、電極支持体830と、単セル110aと、インターコネクタ810とを備える。単セル110aは、燃料極840と、電解質層850と、空気極860と、中間層900とを含む。なお、
図13に示す変形例におけるZ方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0082】
電極支持体830は、略楕円形状の断面を有する柱状体であり、多孔質材料で形成されている。電極支持体830の内部には、柱状体の延伸方向に延びる複数の燃料ガス流路820が形成されている。燃料極840は、電極支持体830の側面の内、互いに平行な一対の平坦面の一方と、各平坦面の端部同士をつなぐ2つの曲面とを覆うように設けられている。電解質層850は、燃料極840の側面を覆うように設けられている。空気極860は、電解質層850の側面の内、電極支持体830の平坦面上に位置する部分を覆うように設けられている。ただし、電解質層850と空気極860との間には、中間層900が配置されている。また、中間層900における空気極860との境界側には、中間層900と電解質層850との相互拡散により生成された固溶体層(図示せず)が存在する。インターコネクタ810は、燃料極840および電解質層850が設けられていない側の電極支持体830の平坦面上に設けられている。集電部870は、発電単位102aの空気極860と、その発電単位102aに隣り合う発電単位102aのインターコネクタ810とを電気的に接続する。空気極860の外側に酸化剤ガスが供給され、電極支持体830に形成された燃料ガス流路820に燃料ガスが供給され、所定の作動温度まで加熱されると、燃料電池スタック100aにおいて発電が行われる。
【0083】
このような構成の燃料電池スタック100aにおいても、上記実施形態と同様に、少なくとも1つの単セル110aにおいて、SZO積算値Vsが600以上、10300以下の範囲内にあると、中間層900と空気極860との間の剥離を抑制しつつ、発電性能の低下を抑制することができるため、好ましいと言える。また、固溶体層の厚さが0.246μm以上、0.482μm以下であると、高抵抗な固溶体層の厚さが厚くなり過ぎることによる発電性能低下を抑制しつつ、固溶体層の厚さをある程度厚くすることによって、SZOを原因とする発電性能低下を抑制することができるため、好ましいと言える。
【0084】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルおよび電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、電解質層と空気極との間に中間層を設け、SZO積算値Vsを600以上、10300以下の範囲内にすれば、中間層と空気極との間の剥離を抑制しつつ、性能の低下を抑制することができ、中間層における電解質層との境界側に生成される固溶体層の厚さを0.246μm以上、0.482μm以下とすれば、高抵抗な固溶体層の厚さが厚くなり過ぎることによる性能低下を抑制しつつ、固溶体層の厚さをある程度厚くすることによって、SZOを原因とする性能低下を抑制することができる。
【0085】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【解決手段】ZrとY、Sc又はCaの少なくとも1つとを含む電解質層112と、電解質層の一方側に配置された燃料極と、電解質層の他方側に配置されSrとCoとを含む空気極114と、電解質層と空気極との間に配置された中間層180とを備え、電気化学反応単セルにおいて、所定の方法で算出されるSrZrO
積算値は、600〜10300である電気化学反応単セル110。中間層180が、GdとSmとの少なくとも1方と、CeとZrとを含む固溶体層182を備え、固溶体層182の厚さが、0.246μ、0.482μm、好ましくは、0.271〜0.457μm、特に好ましくは、0.307〜0.422μmである、電気化学反応単位セル。