(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290558
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】制御装置及び方法、それを備えた複合発電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20180226BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20180226BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20180226BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20180226BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20180226BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20180226BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04 Z
!H01M8/12
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-182095(P2013-182095)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-50106(P2015-50106A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】永井 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西浦 雅則
(72)【発明者】
【氏名】古賀 重徳
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−298889(JP,A)
【文献】
特開昭60−154471(JP,A)
【文献】
特開2007−294304(JP,A)
【文献】
特開2006−344401(JP,A)
【文献】
特開2009−205930(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0092287(US,A1)
【文献】
特開2009−099310(JP,A)
【文献】
特開2010−146934(JP,A)
【文献】
特開2013−080677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と内燃機関とを組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムの制御装置であって、
前記複合発電システムは、
前記燃料電池から前記内燃機関の燃焼器に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、
前記排燃料ガス供給ラインから分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、
前記排燃料ガス供給ラインの経路上に設けられる流量調整弁と、を具備し、
前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態に応じて、前記流量調整弁の開度に対するゲインを調整し、
前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態は、運転開始してから発電する前までの起動段階と、発電開始してから定格発電開始までの発電段階との複数段階有し、各段階に応じた前記流量調整弁の開度のゲインを調整し、
前記起動段階の前記流量調整弁の開度に対するゲインは、前記発電段階の前記流量調整弁の開度に対するゲインより大きくされている複合発電システムの制御装置。
【請求項2】
前記再循環ラインを流通する前記排燃料ガスのガス密度及び前記排燃料ガスの流量に応じて前記流量調整弁の開度のゲインを調整する請求項1に記載の複合発電システムの制御装置。
【請求項3】
前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態は、さらに、負荷が解列している停止段階を有する請求項1に記載の複合発電システムの制御装置。
【請求項4】
電力負荷に応じて前記流量調整弁の開度のゲインを調整する請求項1から請求項3のいずれかに記載の複合発電システムの制御装置。
【請求項5】
前記燃料電池に供給される燃料ガスの供給量、または電力発電量に基づいて、ガス密度を推定する請求項1から請求項4のいずれかに記載の複合発電システムの制御装置。
【請求項6】
前記排燃料ガス供給ラインで検出される前記排燃料ガスの温度、及び前記再循環ラインで検出される圧力値のうち、少なくとも1つに基づいて、前記ガス密度を推定する請求項5に記載の複合発電システムの制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の制御装置を備えた複合発電システム。
【請求項8】
燃料電池と内燃機関とを組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムの制御方法であって、
前記複合発電システムにおいて、前記燃料電池から前記内燃機関の燃焼器に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインの経路上に設けられる流量調整弁の開度に対するゲインを、前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態に応じて調整し、
前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態は、運転開始してから発電する前までの起動段階と、発電開始してから定格発電開始までの発電段階との複数段階有し、各段階に応じた前記流量調整弁の開度のゲインを調整し、
前記起動段階の前記流量調整弁の開度に対するゲインは、前記発電段階の前記流量調整弁の開度に対するゲインより大きくされている複合発電システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び方法、それを備えた複合発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応による発電方式を利用した発電装置であり、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」と呼ぶ)は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転される燃料電池である。このようなSOFCは、例えばマイクロガスタービン(以下、「MGT」と呼ぶ)等の内燃機関と組み合わせて複合発電システムを構築することにより、発電効率の高い発電が可能とされている(下記特許文献1参照)。具体的には、SOFCから排出される排燃料ガスを燃焼器で燃焼させ、燃焼ガスによってタービンを駆動し発電するものである。複合発電システムについては、下記に示すような従来技術が知られている。
【0003】
下記特許文献2には、燃料電池発電プラントに設置され、燃料電池に空気を供給する空気供給装置において、供給空気の流量調節する燃焼用空気流量調整弁の制御量を変動させ、起動時における制御動作を安定させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−205930号公報
【特許文献2】特開昭64−72466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、SOFCから排出されMGT燃焼器に供給されずに再びSOFCに供給される排燃料ガスの流量は、SOFCが起動から定格運転に至る過程において、例えば、少ない時で100Nm
3/hから多い時で500Nm
3/h等の広範囲で変動する。従来、排燃料ガスの流量は、上記特許文献1の
図1に示されるように、排燃料ガスの流通経路上に設けられる流量調整弁55と圧力制御弁45の開度制御によって調整されていた。流量調整弁は、同じ開度調整度見合いであっても、排燃料ガスの流量が少ない場合には調整後の流量変化は比較的小さくなり、排燃料ガスの流量が多い場合には比較的大きな流量変化となる。こうした場合、従来の複合発電システムにおいては、SOFCの起動から定格運転に至る運転状態によって流量調整弁の開度調整に対する流量の変化量が変動すると、SOFCに再循環される排燃料ガスに基づくセル内外の差圧が大きくなり、SOFCの起動に時間がかかる、或いは、SOFCに負担がかかるという問題があった。また、排燃料ガスの流通経路の圧力変動に伴い、圧力調整弁を設け、開度調整する必要があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、複合発電システムを速やかに起動させ、かつ、安定運転をさせることができる制御装置及び方法、それを備えた複合発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、燃料電池と内燃機関とを組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムの制御装置であって、前記複合発電システムは、前記燃料電池から前記内燃機関の燃焼器に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、前記排燃料ガス供給ラインから分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、前記排燃料ガス供給ラインの経路上に設けられる流量調整弁と、を具備し、前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態に応じて、前記流量調整弁の開度に対するゲインを調整する複合発電システムの制御装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、燃料電池と内燃機関とを組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムの制御装置であって、燃料電池から内燃機関の燃焼器に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインの経路上に設けられる流量調整弁の開度のゲインが、燃料電池と内燃機関との連携運転状態に応じて調整される。
燃料電池が起動から定格運転に至る過程では、燃料電池で消費され内燃機関に供給される排燃料ガスの流量や成分が変化するため、排燃料ガスの圧力や流体密度に変動が生じると推定されるが、燃料電池へ再循環される排燃料ガスの流量が比較的少ない(例えば、SOFCの起動)状態では開度に対するゲインを大きめにする(弁開度の調整量に対する流量の変化量を大きくする)等、複合発電システムの連携運転状態に応じて流量調整弁の開度のゲインが調整される。このように、圧力の変化を抑制することで、速やかに、かつ、自動的に複合発電システムの安定運転ができ、複合発電システムの運用性を向上できる。
【0009】
上記複合発電システムの制御装置において、前記再循環ラインを流通する前記排燃料ガスのガス密度及び前記排燃料ガスの流量に応じて前記流量調整弁の開度のゲインを調整することが好ましい。
このように流量調整弁のゲインが制御されれば、再循環ラインを流通していると推定される排燃料ガスの流量とガス密度とに応じたフィードフォワード制御ができる。ここで、ガス密度とは、排燃料ガスのガス組成、温度、圧力によって求められる値である。
【0010】
上記複合発電システムの制御装置において、前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態は、運転開始してから発電する前までの起動段階と、発電開始してから定格発電開始までの発電段階と、負荷が解列している停止段階との複数段階有し、各段階に応じた前記流量調整弁の開度のゲインを調整することとしてもよい。
このように、連系運転状態の各段階に応じてゲインを設けるので、例えば、運転の途中に排燃料ガス流量が増減するような場合であっても、運転状態に応じてゲインを設定でき、複合発電システムの安定運転に寄与できる。
【0011】
上記複合発電システムの制御装置において、前記起動段階の前記流量調整弁の開度に対するゲインは、前記発電段階の前記流量調整弁の開度に対するゲインより大きくされていることとしてもよい。
起動段階においては、排燃料ガス供給ラインに流通する排燃料ガスの流量は少なくなると推定されるが、(排燃料ガスの流量が多くなる)発電段階よりもゲインを大きくすることにより、流量を感度良く増減させることができる。
【0012】
上記複合発電システムの制御装置において、電力負荷に応じて前記流量調整弁の開度のゲインを調整することとしてもよい。
関数等により電力負荷に基づいて排燃料ガスの流量が決定できるので、発電開始後であれば電力負荷をパラメータとしてゲイン調整できる。
【0013】
上記複合発電システムの制御装置において、前記燃料電池に供給される燃料ガスの供給量、または電力発電量に基づいて、ガス密度を推定することとしてもよい。
その時の負荷指令において、およそのガス温度及び圧力が推定できるため、燃料ガスの供給量または電力発電量によって、ある程度の精度でゲインを決定できる。
【0014】
上記複合発電システムの制御装置において、前記排燃料ガス供給ラインで検出される前記排燃料ガスの温度、及び前記再循環ラインで検出される圧力値のうち、少なくとも1つに基づいて、前記ガス密度を推定することとしてもよい。
燃料ガスの供給量または電力発電量に加えて、検出されたガス温度、圧力に基づいてゲインを決定することにより、より高い精度でゲインを決定できる。
【0015】
本発明は、上記いずれかに記載の制御装置を備えた複合発電システムを提供する。
【0016】
本発明は、燃料電池と内燃機関とを組み合わせた連携運転を行って発電する複合発電システムの制御方法であって、前記複合発電システムにおいて、前記燃料電池から前記内燃機関の燃焼器に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインの経路上に設けられる流量調整弁の開度に対するゲインを、前記燃料電池と前記内燃機関との連携運転状態に応じて調整する複合発電システムの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複合発電システムを速やかに起動させ、かつ、安定運転をさせることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合発電システムの概略構成図である。
【
図2】(a)再循環流量と流量調整弁の開度に対するゲインとの関係の一例を示した図である。(b)再循環流量とSOFCの発電室温度との関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る制御装置及び方法、それを備えた複合発電システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示される複合発電システム(燃料電池及び内燃機関による複合発電システム)1は、高温型の燃料電池であるSOFC10と、内燃機関であるガスタービンやガスエンジンの一例としてマイクロガスタービン(以下、「MGT」と呼ぶ)50と制御装置90とを備えており、SOFC10とMGT50とを組み合わせることにより、効率のよい発電を行うものである。
【0021】
すなわち、都市ガス(天然ガス)等を改質した燃料ガス及び空気等の酸化性ガスの供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電するSOFC10に加えて、SOFC10から発電後に排出される高温の排燃料や排出空気を燃焼器に導入して燃焼ガスによってMGT50を運転し、MGT50の出力軸に連結された不図示の発電機を駆動して発電を行うものである。
さらに、MGT50から排出される高温の燃焼排ガスを排熱回収ボイラに導入すれば、発生した蒸気によって蒸気タービンを駆動することによる発電も組み合わせた複合発電システムの構築も可能である。
【0022】
以下では、上述したSOFC10を採用した複合発電システム1について説明する。このSOFC10は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスを用い、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転(発電)するものであり、イオン伝導率を高めるため、作動温度が約800〜1000℃程度と高く設定されている。
また、以下の説明では、燃料として都市ガスをSOFC10の外部または内部で改質して使用し、酸化性ガスとして空気を使用する場合について説明するが、この場合の空気は、MGT50から供給される圧縮空気となる。又は、別に空気圧縮機を設けて空気を供給することとしても良い。
【0023】
図1に示されるように、MGT50は、圧縮機51と、燃焼器52と、タービン53とを備えている。なお、図中の符号54はフィルタ、55は再生熱交換器である。
圧縮機51は、フィルタ54を介して導入した大気(空気)を圧縮するもので、この場合の駆動源はタービン53となる。圧縮機51で圧縮された圧縮空気は、燃焼用空気として燃焼器52や、酸化性ガスとして再生熱交換器55を介してSOFC等へ供給される。
燃焼器52は、圧縮空気の供給を受けて燃料の都市ガスを燃焼させ、高温高圧の燃焼排ガスを生成してタービン53へ供給する。この燃焼器52には、後述するSOFC10からの排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ライン27cと、未使用の都市ガス(燃料ガス)を供給する燃料ガス供給系統40とが接続されている。
【0024】
タービン53は、燃焼器52からの燃焼排ガスのエネルギーにより回転して軸出力を発生し、この軸出力を利用して圧縮機51及び図示しない発電機が駆動される。
タービン53で仕事をした燃焼排ガスは、再生熱交換器55で圧縮空気と熱交換させた後、煙突60から大気へと放出される。
【0025】
複合発電システム1は、SOFC10及びMGT50を組み合わせて発電を行うシステムであり、SOFC10の燃料極へ燃料を供給する燃料供給系20及び空気極へ酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給系70を備えている。燃料供給系20は、都市ガス供給弁(開閉弁)21を備えた都市ガス(燃料ガス)供給ライン22を備えている。また、
図1には、燃料供給系20として、都市ガス供給ライン22のみを記載しているが、燃料供給系20からSOFC10に供給されるのは都市ガスに限られず、図示しないラインから供給される窒素や蒸気(水)等も含まれる。
【0026】
図示の燃料ガス排出系27は、SOFC10に供給され発電に利用された排燃料ガスをMGT50に送給、又はSOFC10に再循環させる流路である。この燃料ガス排出系27は、排燃料ブロワ29を有する排燃料ガスライン27aと、排燃料ガスライン27aを経由してSOFC10に排燃料ガスを再循環させる再循環ライン27bと、排燃料ガスライン27aを経由してMGT50と接続する排燃料ガス供給ライン27cとにより構成されている。
【0027】
燃料ガス排出系27において、再循環ライン27bは、SOFC10の排燃料ガスを燃料供給系20に戻す(再循環する)ための流路である。また、再循環ライン27bには、排燃料ガスの再循環流量を検出する流量検出部41が設けられており、検出した再循環流量の値は、後述する流量調整弁30の開度のゲイン情報を生成する場合の値として用いられる。
排燃料ガス供給ライン27cは、SOFC10からMGT50の燃焼器52へ流量調整弁30を介して排燃料ガスを供給する流路である。
なお、再循環ライン27bには圧力センサー35、排燃料ガスライン27aには温度センサー36が設けられている。
【0028】
図示の酸化性ガス供給系70は、MGT50の圧縮機51で圧縮され、再生熱交換器55で熱交換した圧縮空気(酸化性ガス)をSOFC10の空気極へ供給する流路である。
また、酸化性ガス排出系72は、SOFC10に供給され発電に利用された排酸化性ガスをMGT50に供給する流路であって、SOFC10とMGT50との間を連結する。
【0029】
制御装置90は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
【0030】
制御装置90は、SOFC10とMGT50との連携運転状態に応じて、流量調整弁30の開度に対するゲインを調整する。具体的には、制御装置90は、再循環ライン27bに流通する排燃料ガスの流量(再循環流量)及びガス密度と、流量調整弁30の開度に与えるゲインとを対応付けた「ゲイン情報」を有しており、連携運転状態に応じて再循環ライン27bに流れると推定される再循環流量及びガス密度に対応付けられたゲインによって流量調整弁30を先行的に(フィードフォワード)制御する。ここで、ガス密度とは、排燃料ガスのガス組成、温度、圧力によって求められる値である。
【0031】
図2(a)には、ゲイン情報の一例が示されており、横軸には再循環ライン27bを流通する再循環流量を示し、縦軸には再循環流量に基づいて決定される流量調整弁30の開度に与えられるゲインの一例を示している。
【0032】
図2(a)の横軸の左端は、SOFC10が起動開始時に再循環ライン27bに流通する排燃料ガスの再循環流量であり(例えば、100Nm
3/h)、横軸の右端方向は、SOFC10の定格運転後の再循環ライン27bに流通する排燃料ガスの再循環流量を示している(例えば、500Nm
3/h)。本実施形態においては、SOFC10が起動から定格運転になるまでの過程において、再循環ライン27bに流通する排燃料ガスの再循環流量が、次第に増大する場合を例に挙げて説明する。ここで、SOFC10とMGT50との連携運転状態は、運転開始してから発電する前までの起動段階(例えば、窒素遮断弁開、800℃未満)と、発電開始してから定格発電開始までの発電段階(例えば、800℃以上950℃(定格)以下)と、負荷が解列している停止段階(例えば、負荷が解列していること(850℃未満))との複数段階有することとして説明する。
【0033】
また、
図2(a)においては、排燃料ガスのガス密度が併せて示されており、SOFC10が起動段階におけるガス組成は主に窒素N
2であり、運転が進み発電室温度が上昇するにつれて改質してガス組成が変化して、液化天然ガスLNG(Liquefied Natural Gas)と水H
20となり、定格運転近傍では二酸化炭素CO
2と水H
2Oと水素H
2と一酸化炭素COを含む様子が示されている。
【0034】
なお、ガス密度は、SOFC10に供給される燃料ガスの供給量、または電力発電量に基づいて推定することとしてもよい。その時の負荷指令において、およそのガス温度及び圧力が推定できるため、燃料ガスの供給量または電力発電量のみでも、ある程度の精度でゲインを決定することができる。
さらに、排燃料ガス供給ライン27cで検出される排燃料ガスの温度、及び再循環ライン27bで検出される圧力値のうち、少なくとも1つに基づいてガス密度を推定してもよい。燃料ガスの供給量または電力発電量に加えて、検出されたガス温度、圧力に基づいてゲインを決定することにより、より精度高くゲインを決定できる。
【0035】
また、
図2(a)に示されるガス密度は、最も割合の高い成分を表記しており、グラフ中の点線の前後では徐々に成分のバランスが変化することを意味しており、急激に組成が変わるという意味でない。
【0036】
また、
図2(b)は、横軸に再循環ライン27bを流通する排燃料ガスの再循環流量を示し、縦軸にはSOFC10の発電室温度を示した図の一例であり、
図2(a)と対応付けられている。縦軸の発電室温度が0℃から約800℃においては、SOFC10の起動から発電開始前の解列時(SOFC10が発電していない状態)を示しており、縦軸の800℃から1000℃はSOFC10が発電を行う併入時(SOFC10が発電している状態)を示している。
【0037】
本実施形態の
図2(a)に示されるように、連携運転状態の進行に応じて、再循環流量が増大する場合においては、起動段階(解列時)における流量調整弁30の開度に対するゲインは、発電段階における流量調整弁30の開度に対するゲインより大きく設定されることが好ましい。つまり、排燃料ガスの流量が少ない場合には、流量調整弁30の感度(弁開度の調整量に対する流量の変化量)をよくすることが好ましい。
なお、本実施形態で用いるゲイン情報は、過去の実績等に基づいて算出され、制御装置90の記憶手段等に格納させておく情報であり、SOFC10とMGT50との連携運転中に随時読み出されてフィードフォワード(先行的)制御に用いられる。そのため、流量調整弁30の感度は、起動段階から発電段階を経て、定格運転に至る過程において、排燃料ガスのガス密度に応じてフィードフォワード制御することも可能である。
【0038】
なお、発電段階におけるゲインの設定方法は上記に限定されない。
例えば、発電後の負荷電力は再循環流量の関数で求められる点に着目し、制御装置90は、負荷電力に基づいて再循環流量を算出する関係式を備えておき、負荷電力に応じて流量調整弁30の開度のゲインを決定できるゲイン情報を有し、負荷電力に応じて流量調整弁30の開度のゲインを調整することとしてもよい。
また、
図2(a)で示されるゲインは、再循環流量に応じて直線的に変化している場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、例えば、再循環流量に応じてステップ状(段階的)に変化するゲインを設定することとしてもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る複合発電システム1の作用について
図1及び
図2(a)(b)を用いて説明する。
複合発電システム1のSOFC10とMGT50との連携運転(コンバインド運転)において、燃料である都市ガスはSOFC10に投入され,燃料の化学エネルギーがSOFC10で直接電力に変換される。その後、SOFC10からの排燃料ガスはMGT50の燃焼器52に供給される。一方、フィルタ54を介して導入した(空気)はMGT50の圧縮機51で昇圧された後にSOFC10に供給され、酸化剤(酸化性ガス)として一部が使用された後、高温排熱とともに再びMGT50に送られ、空気の持つ顕熱や圧力もエネルギーとして下流のMGT50側で電力に変換されることにより、システム全体では高い発電効率を得ることが可能となる。
【0040】
制御装置90には、複合発電システム1が起動から連携運転状態になるまでに計測され収集された各種情報に基づいて、再循環ライン27bの再循環流量と流量調整弁30の開度のゲインとが対応付けられたゲイン情報が記憶手段等に記憶されている。
複合発電システム1のSOFC10が起動する段階において、制御装置90からゲイン情報が読み出され、現在、再循環ライン27bに流れていると推定される再循環流量に対応するゲインが読み出される。流量調整弁30の開度に対応して読み出されたゲインが適用され、流量調整弁30の開度がフィードフォワード制御によって調整される(例えば、起動段階(解列時)における再循環流量が少ない場合には、弁開度調整に応じて流量を敏感に変動させるべくゲインは大きめに設定される)。
【0041】
SOFC10の発電が開始されると、発電開始後において再循環ライン27bに流れていると推定される排燃料ガスの再循環流量に対するゲインが読み出され、流量調整弁30の開度に対して読み出されたゲインが適用され、流量調整弁30の開度が調整される(例えば、再循環流量が多い場合には、開度調整に応じて流量変動を抑えるようにゲインは小さめに設定される)。
【0042】
以上説明してきたように、本実施形態に係る制御装置90及び方法、それを備えた複合発電システム1によれば、SOFC10が起動から定格運転に至る過程では、SOFC10で消費されMGT50に供給される排燃料ガスの流量や成分が変化するため、排燃料ガスの圧力や流体密度に変動が生じると推定されるが、排燃料ガスの流量が比較的少ない(例えば、SOFCの起動)状態では開度に対するゲインを大きめにする(つまり、開度の調整に応じて敏感に流量変化させる)等、複合発電システム1の連携運転状態に応じて流量調整弁30の開度のゲインが調整される。これにより、圧力の変化を抑制し、速やかに、かつ、自動的に複合発電システム1の安定運転ができ、複合発電システム1の運用性を向上できる。
【0043】
〔変形例〕
なお、本実施形態においては、SOFC10が起動から定格に至る過程において、再循環流量が順に増加する場合を例に挙げて説明していたが、これに限られない。例えば、SOFC10が起動から定格に至る過程において、再循環流量が増減することがあってもよいこととする、そのような場合には、SOFC10とMGT50との連携運転状態の起動段階、発電段階、停止段階の各段階に応じて、流量調整弁30の開度のゲインを調整するためのそれぞれのゲイン情報を制御装置90に設け、このゲイン情報に基づいて各段階に応じた流量調整弁30の開度のゲイン調整をすることとしてもよい。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 複合発電システム(燃料電池・ガスタービン発電システム)
10 SOFC(固体酸化物形燃料電池)
20 燃料供給系
21 都市ガス供給弁(開閉弁)
22 都市ガス(燃料ガス)供給ライン
27 燃料ガス排出系
27a 排燃料ガスライン
27b 再循環ライン
27c 排燃料ガス供給ライン
29 排燃料ブロワ
30 流量調整弁
35 圧力センサー
36 温度センサー
40 燃料ガス供給系統
50 MGT(マイクロガスタービン)
51 圧縮機
52 燃焼器
53 タービン
60 煙突
70 酸化性ガス供給系
72 酸化性ガス排出系
90 制御装置