(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性長繊維不織布がポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびポリオレフィン系繊維から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の通気性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の通気性積層体は特定の熱可塑性長繊維不織布と特定の多孔質フィルムとが接合されているものである。本発明の通気性積層体を使い捨てカイロに用いた場合、該多孔質フィルムは、使い捨てカイロの発熱に必要な通気性および透湿性を調整できる微細孔を有している。また、該長繊維不織布は、該多孔質フィルムの保護および補強、並びに製袋加工性の改良などの目的で使用されている。
【0010】
本発明に用いる熱可塑性長繊維不織布は、特に限定されないが、比較的薄く、強力および耐摩耗性に優れた、スパンボンド法の長繊維不織布が好ましい。不織布を構成する繊維としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66および共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)および共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、並びにポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維を用いることができる。また、芯にポリエチレンテレフタレート、鞘にポリエチレンを用いた芯鞘構造などの複合繊維を用いてもよい。
【0011】
本発明に用いる長繊維不織布は、スパンボンド法で製造された不織布が好ましく、部分熱圧着率(エンボス面積率)が5〜25%、好ましくは7〜20%であり、目付が15〜50g/m
2、好ましくは20〜40g/m
2である。部分熱圧着率が5%未満または目付が15g/m
2未満では、強度および耐摩耗強度が低下する、一方、部分熱圧着率が25%を超えるか、または目付が50g/m
2を超えると、強度および耐摩耗性は高くなるが、硬い風合いとなるなどの問題がある。
【0012】
さらに、上記不織布は、エンボス加工が施されたスパンボンド不織布であり、特に、熱エンボスロールによるエンボス加工が施されたスパンボンド不織布であることが好ましい。上記のエンボス加工におけるエンボスの形状は、特に限定されず、例えば長方形や円形などが挙げられる。また、エンボス1個当たりの面積は、特に限定されないが、0.1〜10mm
2が好ましく、より好ましくは0.3〜5mm
2である。上記面積が0.1mm
2未満では、面積が小さすぎて熱融着による強度が得られないため、また10mm
2を超えると、エンボス1つ1つの間隔が大きくなるため、耐摩耗強度が低下する。
【0013】
本発明の通気性積層体における多孔質フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび無機充填剤の混合物から構成されることが好ましい。このような構成の多孔質フィルムは、中間モジュラスが向上でき、未延伸フィルムの延伸加工を行うことで多孔質化でき、且つ延伸ムラが減少できるなどの特長を有している。
【0014】
直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が4〜8のα−オレフィンモノマーとを重合して得られる直鎖状ポリエチレンである。上記直鎖状低密度ポリエチレンに用いられるα−オレフィンモノマーとしては、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1が好ましい。上記直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、全構成モノマーの繰り返し単位(全ての構成モノマーに起因する繰り返し単位)に対するエチレンモノマーの繰り返し単位(エチレンモノマーに起因する繰り返し単位)の含有量(含有率)は90モル%以上が好ましい。
上記直鎖状低密度ポリエチレンとしては、中でも、より低温におけるヒートシール性向上の観点から、メタロセン系触媒を用いて調製された、いわゆる、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)が特に好ましい。
【0015】
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.90〜0.94g/cm
3、190℃におけるMFRが1〜15g/10分、融点が101〜125℃の範囲内であることが好ましい。また、密度違いの2種以上を混合することが好ましく、例えば、低密度および低融点の直鎖状低密度ポリエチレンを配合することで、溶液粘度が調整でき、押し出し成形加工性及び製袋加工時のヒートシール性などを向上させることができる。
【0016】
前記低密度ポリエチレン、即ち高圧法の低密度ポリエチレンの密度は、0.900〜0.930g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.910〜0.925g/cm
3である。また、高圧法低密度ポリエチレンの190℃におけるMFRは、特に限定されないが、1.0〜3.0g/10分が好ましく、より好ましくは1.5〜2.5g/10分である。
なお、本発明における密度とはJIS K 6922−2及びJIS K 7112に準拠して得られた密度をいうものとする。また、本発明におけるMFRはISO1133(JIS K 7210)に準拠して測定することができる。
【0017】
本発明に用いられる多孔質フィルムは無機充填剤を含有することが好ましい。該無機充填剤は、延伸により充填剤の周囲にボイド(孔)を発生させることによって、フィルムを多孔質化させる役割を担う。かかる無機充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、石粉、ゼオライト、アルミナ、アルミニウム粉末および鉄粉の他、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウムおよび炭酸バリウム等の炭酸の金属塩、硫酸マグネシウムおよび硫酸バリウム等の硫酸の金属塩、酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化マグネシウム等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の金属水酸化物、並びに酸化マグネシウム−酸化ニッケルの水和物および酸化マグネシウム−酸化亜鉛の水和物等の金属水和物(水和金属化合物)などが挙げられる。中でも、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムが好ましい。無機充填剤の形状は、延伸によるボイド(孔)形成の観点から、粒子状が好ましい。即ち、無機充填剤としては炭酸カルシウムからなる無機粒子が好ましい。無機充填剤は飽和脂肪酸処理されたものが好ましく用いられる。
【0018】
無機充填剤の粒径としては、粒度分布測定における50%平均粒径(D=50%)で1.0〜10μmが好ましく、さらに好ましくは、2.0〜7.0μm、特に好ましくは2.5〜5.0μmである。粒径がこの範囲にあると、延伸加工でボイド形成性が向上し、フィルムの破れおよび外観不良などが抑制される。粒径が1μm未満では、分散不良が起こりやすく、凝集しやすくなる。一方、10μmを越えると、樹脂に対する添加量を多くできるが、延伸加工時に開孔径が大きくなり、通気性が高くなり、透湿度が低下し、且つ、延伸加工時の無機充填剤の脱落が多くなり、貫通孔が生じやすくなる。
【0019】
前記無機充填剤の含有量は、フィルム全重量に対して35〜50wt%が好ましく、さらに好ましくは37〜48wt%、特に好ましくは40〜47wt%である。含有量がこの範囲であると、延伸加工時のボイド加工性が良好になり、且つ製膜時の破れおよび外観不良が抑制される。無機充填剤が35%未満ではボイド形成性が低下する。一方、50wt%を越えると、ボイド形成性は良くなるが、透気度が過剰になり、且つ、延伸加工時に無機充填剤の脱落、ピンホール、破れおよび外観不良が生じやすくなる。
【0020】
本発明に用いる多孔質フィルムは、前記ポリエチレン樹脂および無機充填剤の特定範囲に配合することで、目的とするフィルム特性およびヒートシール性が得られる。つまり、直鎖状低密度ポリエチレンが40〜62wt%、高圧法の低密度ポリエチレンが2〜10wt%、無機充填剤が35〜50wt%からなる混合樹脂を2軸混練押出機などで混合分散させて好ましく用いられる。
【0021】
本発明で用いる多孔質フィルムには、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤および安定剤などの各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
【0022】
本発明における多孔質フィルムは、溶融成膜法によって製造することができる。中でもTダイ法が好ましい。例えば、上記のポリオレフィン系樹脂、無機充填剤、及び、必要に応じて、各種添加剤を、2軸混練押出などで混合分散し、一旦ペレット状にした後、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機にて溶融押出して未延伸フィルムを作製し、該未延伸フィルムを、1軸に延伸することにより多孔質化して製造する。
【0023】
本発明で用いる多孔質フィルムの製法における特徴は、無機充填剤含有ポリエチレン系樹脂を一旦ペレット状にした後、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機で再度混錬することで、樹脂中の無機充填剤が均一に混ざり、孔の分散性を向上させことができ、且つ、延伸加工することで微細な孔が生じ、細孔体積が大きくでき、好適なヒートシール性が得られ、熱シール時のエッジ切れを少なくできることである。
なお、多孔質フィルムには、充分な接着強度を得るために表面活性処理がなされていてもよく、必要に応じて帯電防止処理などの各種処理が施されていてもよい。
【0024】
上記多孔質フィルムの成型時において、押出温度は170〜270℃が好ましく、さらに好ましくは180〜260℃、特に好ましくは210〜250℃である。また、未延伸フィルム作製時の引き取り速度は5〜25m/分が好ましく、引き取りロール温度(冷却温度)は10 〜40℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。
【0025】
前記未延伸フィルムを1軸に延伸する方法としては、ロール延伸方式やテンター延伸方式など公知慣用の延伸方式を用いることができる。延伸温度は40〜100℃が好ましく、さらに好ましくは50〜80℃である。尚、カイロ発熱時の通気度の変化、カイロ製袋加工時のヒートシール温度などでの熱収縮を防止するために、5〜20%の緩和状態にて、フィルムの軟化点以上、融点以下の温度でのヒートセットが好ましい。多孔質化と安定成膜の観点から、延伸倍率(単軸方向)は3〜5倍が好ましく、さらに好ましくは3.5〜4.5倍である。
延伸倍率が3倍未満の場合は、微細孔のボイド発生が少なくなり、延伸ムラが発生し、透気度および透湿度がバラツキ、5倍を超えると、透気度および透湿度は高くできるが、無機充填剤の樹脂中からの脱落が発生し、貫通孔も生じ、通気度のバラツキが大きくなり、且つ、フィルムの配向が大きく製袋加工時のエッジ切れが生じやすくなる。
【0026】
本発明で用いる多孔質フィルムの坪量は40〜100g/m
2であり、好ましくは45〜90g/m
2、より好ましくは50〜80g/m
2である。坪量が40g/m
2以上であることにより、また、坪量が100g/m
2以下であることにより、通気性、透湿性および製袋加工性が良好になる。坪量が40g/m
2未満では、破れが起こり、また外観品位および微細孔のボイド形成性などが低下し、一方100g/m
2を超えると、ピンホールはなくなり、外観品位などは良くなるが、硬くなり、ソフト感がなく、使用感が悪くなると共に高い価格になるので好ましくない。
【0027】
本発明に用いる多孔質フィルムは、細孔分布が0.025〜3.0μmの範囲における水銀圧入方による測定において、メディアン径が1.0μm以下、好ましくは0.2〜0.6μm、より好ましくは0.3〜0.5μmである。また、細孔体積は0.30ml/g以上、好ましくは0.40〜0.60ml/g、より好ましくは0.45〜0.60ml/gである。細孔比表面積は5.0m
2/g以上が好ましく、さらに好ましくは5.5〜10m
2/g、特に好ましくは、6.0〜10m
2/gである。この領域の細孔分布測定値のメディアン径、細孔体積および細孔表面積が上記の範囲であると、孔の構成は小さいボイドが多数存在する構成となり、通気性および透湿性のバラツキを小さくできる。従って、使い捨てカイロの小さいサイズにおいても、均等な通気性および透湿性が得られ、カイロの特性の最高発熱温度および発熱持続時間などが良好となる。
【0028】
本発明に用いる多孔質フィルムの10%伸長時の応力は5N/10mm以上であり、好ましくは6〜15N/10mm、より好ましくは7〜12N/10mmである。10%伸長時の応力が高いことは、多孔質フィルムと不織布とを貼り合わせる際の張力などによるフィルムの伸長が起こり難くなる為、カイロ製品の通気性および透湿性に対する加工操作による影響を少なくできる。
【0029】
本発明で用いる多孔質フィルムの王研式透気度は500〜15000秒/100ccが好ましく、さらに好ましくは700〜10000秒/100cc、特に好ましくは800〜8000秒/100ccである。また、透湿度は500〜2000g/m
2/24hrが好ましく、さらに好ましくは500〜1800g/m
2/24hr、特に好ましくは600〜1500g/m
2/24hrである。該フィルムの透気度および透湿度がこの範囲であれば、不織布と接着剤で貼り合わせて通気性積層体とした際に、得られる通気性積層体の通気性および透湿性を目的の範囲にすることが可能である。
透気度が500秒/100cc未満または透湿度が500g/m
2/24hr未満では、得られた通気性積層体をカイロ製品にした時に、最高温度、安定温度、持続時間などが使用できる範囲外となる場合が生じる。
【0030】
本発明において前記不織布と前記多孔質フィルムとを積層する方法としては、接着剤を介して貼り合わせる方法が好ましい。用いる接着剤は、得られる通気性積層体の透気度および透湿度を後述する範囲に制御できるものであれば特に限定されず、不織布と多孔質フィルムの貼り合わせなどに用いられる公知の接着剤を用いることができる。
例えば、ゴム系(天然ゴム、スチレン系エラストマーなど)、ウレタン系(アクリルウレタン系)、ポリオレフィン系(エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)等)、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ビニルアルキルエーテル系およびフッ素系などの公知の接着剤を用いることができる。また、上記接着剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、2液型のポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0031】
また、接着剤は、いずれの形態を有している接着剤であってもよく、特に限定されないが、2液型ウレタン樹脂などの反応型樹脂を用いるドライラミネート法などが好ましい。
さらに、熱により溶融させることにより塗工することができ、不織布に対しても直接塗布して接着剤層を形成することができる利点、ヒートシール部ではヒートシール加工によって更に大きな接着力が得られる利点を有することから、ホットメルト型(熱溶融型)接着剤が好適に用いられる。このような接着剤としては、ポリアミド系又はポリエステル系のホットメルト型接着剤が好ましく、熱可塑性ポリアミド系ホットメルト型接着剤、又は、熱可塑性ポリエステル系ホットメルト型接着剤がより好ましい。
【0032】
不織布と多孔質フィルムとの具体的な積層方法としては、接着剤の種類などによっても異なり、特に限定されないが、2液型のポリエステル系樹脂またはウレタン系樹脂等の接着剤をグラビアロールで多孔質フィルム面に塗布した後、積層して接着させるドライラミネートなどが好ましく用いられる。この場合、接着剤の塗布面積が接着強度、通気性および透湿性に影響することから、グラビア版の形状および非接合面積率を考慮する必要がある。例えば、グラビア版は、斜め格子柄などがドクターのかき落し性の点で好ましい。また、不織布とフィルムとの接合面積率が通気性積層体の通気性および透湿性に影響するので、非接合面積率は15〜55%が好ましく、さらに好ましくは20〜50%である。非接合面積率が15%未満では、高い接着力は得られるが、通気性および透気性が低下する。一方、55%を超えると、通気性および透湿性は向上するが、接着力が低下する。
また、ホットメルト型接着剤を用いる場合には、接着剤を不織布上に塗布した後、多孔質フィルムを貼り合わせる方法が好ましく用いられる。ホットメルト型接着剤の塗布方法として用いられる公知慣用の方法を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、通気性を維持する観点から、スプレー塗布による塗布、ストライプ塗工、ドット塗工が好ましい。
【0033】
接着剤の塗布量(固形分)は、特に限定されないが、袋体形成時のヒートシール部の接着性と経済性の観点から、2〜10g/m
2が好ましく、より好ましくは3〜8g/m
2である。
また、不織布と多孔質フィルムとの接合強度は1N/25mm以上が好ましく、さらに好ましくは2〜15N/25mm、特に好ましくは3〜15N/25mmである。接合強度が1N/25mm未満の場合は、通気性積層体の取扱い中および製品カイロの使用中などで剥離する場合がある。
【0034】
本発明の通気性積層体の王研式透気度は5000〜240000秒/100cc、好ましくは7000〜90000秒/100ccであり、透湿度は200〜800g/m
2/24hrであることが好ましく、さらに好ましくは300〜750g/m
2/24hrである。透気度および透湿度がこの範囲であれば、使い捨てカイロ製品の最高温度、安定温度、持続時間を適正範囲にできるので好ましい。一方、透気度および透湿性がこの範囲外では、使い捨てカイロ製品のこれらの特性を適正範囲にすることが困難である。
【0035】
本発明の通気性積層体を用いた使い捨てカイロは、袋体即ち通気性積層体の透気度および透湿度、並びに発熱組成物の充填量および配合などにより、最高温度、安定温度および持続時間の調整が可能である。具体的には、袋体の通気性を小さくすることで、最高温度を下げることができる。また透湿度を小さくすることで、発熱反応を遅延し、持続時間を長くできる。更に、発熱組成物の充填量が少ないと、持続時間が短い使い捨てカイロが得られる。
【0036】
貼るカイロとしては、袋体の片面に本発明の通気性積層体を用い、他面に非通気性のフィルムまたは、非通気性のフィルムと不織布の積層体を用いる構成にし、非通気性面に粘着性樹脂を塗布し、離型紙を貼り、鉄分、活性炭、バーミキュライト、水および塩類を含有する発熱組成物を袋体に充填して、周囲を封止して得られる。
なお、本発明のカイロの最高温度、安定温度および持続時間の適正範囲は、それぞれ50〜65℃、40〜60℃および8〜15時間とした。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。本発明における各特性値の測定方法は以下の通りである。
(1)坪量(g/m
2):タテ20cm×ヨコ25cmの試料を任意に3か所切り取り、重量を測定し、その平均値を単位面積当たりの重量に換算して求めた。
(2)厚み(mm):荷重10kpa下で、任意に10か所測定し、平均値を求めた。
【0038】
(3)10%伸長時の応力(N/10mm):ヨコ方向10mm、タテ方向(MD方向)200mmの試料を任意に3枚採取し、JIS−L−1913に準じて定長引張試験機を用いて、つかみ間隔10cm、引張速度100mm/分で測定し、タテ方向の10%伸長時の応力を3枚の平均値で求めた。
【0039】
(4)王研式透気度(秒/100cc):旭精工(株)製KR−1−8−7MRの王研式透気度測定機で測定する(JIS−P−8117に準じる)。測定値は3か所の平均値で示す。
また、透気度変化率はもみモデルテスト前後の変化率として下記の如く求めた。
もみモデルテスト後の測定として、積層体からタテ15cmヨコ15cmの正方形のサンプルを切り取り、引張試験機を用い、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分の条件で、伸長率5%および10%に設定して、タテ方向、ヨコ方向の両方向に10回伸長を繰り返すもみモデルテストを行ない、テスト前後の透気度から次式によって透気度の変化率を求めた。
透気度変化率(%)=[(テスト前−テスト後)/(テスト前)]×100
【0040】
(5)透湿度(g/m
2/24hr):JIS−L−1099に準じてカップ法にて測定する(乾燥剤:塩化カルシュウム 15g)。
【0041】
(6)細孔分布:水銀圧入法による細孔分布測定を行なう。
島津製作所−マイクロメリテックス社製細孔分布測定装置(9250型)を使用。
試料は、各12.5mm×25mmに裁断し、折り畳み、標準5ccセルに採り、初期圧20kPaの条件で測定した。水銀パラメーターは水銀接触角130度、水銀表面張力485ダイン/cmに設定して測定した。
<メディアン径>:積算細孔分布のY軸の最小値と最大値の中間に相当するX軸値を意味する。
<細孔体積>:測定時の最大圧力までに水銀が圧入された細孔体積の積算値を試料重量で割った値。
<細孔表面積>:細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した細孔の表面積で、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から計算された値。
【0042】
(7)部分熱圧着率(エンボス面積比率):不織布の表面を、マイクロスコープ(倍率20倍)により観察し、測定領域(10mm(MD方向)×10mm(TD方向))中のエンボス加工部分の面積の割合(面積%)を計測(計算)し、エンボス面積比率とした(下記式)。
エンボス面積比率(%)=エンボス加工部分の面積(mm
2)/100×100
なお、不織布の片面について測定(n=5)を行い、平均値を当該不織布のエンボス面積比率とした。
【0043】
(8)接合強度(N/25mm):JIS−K−6854−3のT型剥離に準じる。
幅25mm×長さ200mmの通気性積層体サンプルをタテ方向から3枚採取し、定長引張試験機を用い、引張速度100mm/分、つかみ間隔50mmで剥離強度を測定して、平均値で示す。
【0044】
(9)シール強度(N/15mm):熱シール機を用いて、シールバー上下の表面温度を150℃にし、シール幅5mm、圧力2kg/cm
2、時間1秒にて通気性積層体サンプルの熱シールを行なった後、タテ方向及びヨコ方向から、幅15mm×長さ100mmの試料を3枚ずつ採取し、定長引張試験機を用い、引張速度300mm/分、つかみ間隔30mmで剥離強度を測定して、平均値で示す。
【0045】
(10)カイロの作成:通気性積層体と、不織布および非通気性フィルム(LLDPE70μm)の積層体とから各々幅95mm×長さ130mmの試料を切り取り、内側で多孔質フィルムと非通気性フィルムが合わさるようにして、3方向を熱シールして袋体を作り、該袋体に使い捨てカイロ用発熱組成物(鉄分、活性炭、バーミキュライト、水、塩類を含有する発熱組成物)を40g入れ、JIS−S−4100に準じて、表面温度、持続時間などを測定して、カイロ仕様の評価を行った(熱シール条件:シール幅5mm、温度150℃、時間1秒)。
【0046】
(11)製袋加工性:上記(11)における製袋加工時の破れ、エッジ切れ、およびシール不良を目視観察し、下記基準で評価した。
○:製袋加工時の破れ、エッジ切れ、シール不良がない。
△:製袋加工時のエッジ切れが少し生じる,程度である。
×:製袋加工時の破れ、エッジ切れ、シール不良が多く発生する。
【0047】
[実施例1]
不織布としては、スパンボンド方式により製造されたポリエステル長繊維不織布(エンボス面積比率11%、目付け25g/m
2)を用いた。なお、上記不織布のエンボス1個当たりの面積は1.0mm
2である。
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)49wt%、高圧法の低密度ポリエチレン5wt%、炭酸カルシウム(D=50%、4μm)45wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる樹脂混合物を220℃で溶融混練し、混合原料を得た。得られた混合原料を用い、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機により、Tダイ法で溶融押出し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを温度60℃で加熱し、延伸倍率4.2倍に延伸加工して、本発明に用いる1軸延伸の坪量60g/m
2のポリエチレン系多孔質フィルムを得た。表1に不織布および多孔質フィルムの特性を示す。
【0048】
次いで、これらの不織布と多孔質フィルムとを2液型ポリエステル系樹脂を用い、非接合面積率が19%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、本発明の通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表2から、得られた使い捨てカイロの最高温度、安定温度および持続時間などは適正範囲であることが分かる。
【0049】
[実施例2]
不織布としては、スパンボンド方式により製造されたポリアミド長繊維不織布(エンボス面積比率6%、目付け40g/m
2)を用いた。なお、上記不織布のエンボス1個当たりの面積は0.14mm
2である。
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)53wt%、高圧法の低密度ポリエチレン5wt%、炭酸カルシウム(D=50%、4μm)41wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる樹脂混合物を220℃で溶融混練し、混合原料を得た。得られた混合原料を用い、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機により、Tダイ法で溶融押出し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを温度60℃で加熱し、延伸倍率4.5倍に延伸加工して、本発明に用いる1軸延伸の坪量60g/m
2のポリエチレン系多孔質フィルムを得た。表1に不織布および多孔質フィルムの特性を示す。
【0050】
次いで、これらの不織布と多孔質フィルムとを2液型ポリエステル系樹脂を用い、非接合面積率が42%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、本発明の通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表2から、得られた使い捨てカイロの最高温度、安定温度および持続時間などは適正範囲であることが分かる。
【0051】
[実施例3]
実施例1の不織布と多孔質フィルムとを用いて、下記の如く接合面積の異なる通気性積層体を得た。実施例1と同様の樹脂の2液型ポリエステル系樹脂を用い、非接合面積率が36%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、本発明の通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表2から、得られた使い捨てカイロの最高温度、安定温度および持続時間などは適正範囲であることが分かる。
【0052】
[実施例4]
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)55wt%、高圧法の低密度ポリエチレン3wt%、炭酸カルシウム(D=50%、4μm)41wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる樹脂混合物を220℃で溶融混練し、混合原料を得た。得られた混合原料を用い、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機により、Tダイ法で溶融押出し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを温度60℃で加熱し、延伸倍率4.5倍に延伸加工して、本発明に用いる1軸延伸の坪量60g/m
2のポリエチレン系多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの特性を表1に示す。
【0053】
次いで、得られた多孔質フィルムと実施例2に記載の不織布とを2液型ポリエステル系樹脂を用い、非接合面積率が36%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、本発明の通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表2から、得られた使い捨てカイロの最高温度、安定温度および持続時間などは適正範囲であることが分かる。
【0054】
[実施例5]
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)54wt%、高圧法の低密度ポリエチレン5wt%、炭酸カルシウム(D=50%、7μm)40wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる混合樹脂を220℃で溶融混練し、混合原料を得た。得られた混合原料を用い、ギヤポンプ付き2軸混錬押出機により、Tダイ法で溶融押出し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを温度60℃で加熱し、延伸倍率4.5倍に延伸加工して、本発明に用いる1軸延伸の坪量70g/m
2のポリエチレン系多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの特性を表1に示す。
【0055】
次いで、得られた多孔質フィルムと実施例1に記載の不織布とを2液型ポリエステル系樹脂を用い、非接合面積率が52%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、本発明の通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表2から、得られた使い捨てカイロの最高温度、安定温度および持続時間などは適正範囲であることが分かる。
【0056】
本発明の通気性積層体は、多孔質フィルムと不織布を適切な接着面積率で接合し、透気度を特定範囲にすることで、使い捨てカイロに用いた場合、最高温度、安定温度、持続時間が適正範囲にでき、使い捨てカイロの製品化ができ、且つ、製袋加工時の破れ、エッジ切れ、シール不良などなく、収率よく製品が得られた。
【0057】
[比較例1]
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)62wt%、高圧法の低密度ポリエチレン5wt%、炭酸カルシウム(D=50%、4μm)32wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる混合樹脂を220℃で溶融混練し、混合原料とした以外は実施例1と同様の方法で多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの特性を表1に示す。
次いで、得られた多孔質フィルムと実施例1に記載の不織布とを2液型ポリエステル系樹脂を用い、非接合面積率が52%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表2から、非接合面積率を多くしても、使い捨てカイロとしての通気性が低く、最高温度、安定温度が低く、カイロの適正外の特性となったことが分かる。
【0058】
[比較例2]
メタロセン触媒の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、密度0.915、MFR(190℃)3.5g/10分)41wt%、高圧法の低密度ポリエチレン5wt%、炭酸カルシウム(D=50%、4μm)53wt%、ステアリン酸および酸化防止剤が合計で1wt%からなる混合樹脂を220℃で溶融混練し、混合原料とした以外は実施例1と同様の方法で多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの特性を表1に示す。
次いで、得られた多孔質フィルムと実施例1に記載の不織布とを2液型ポリエステル系樹脂を用い、グラビア方式で多孔質フィルム面に接着剤を途布して、非接合面積率が19%の斜め格子柄グラビア版で、多孔質フィルム面に接着剤を途布して、ドライラミネート法で貼り合わせ、通気性積層体を得た。さらに、得られた通気性積層体を用いてカイロを作製し、その評価を行なった。表2に通気性積層体およびカイロの特性を示す。表1および表2から、多孔質フィルムの開孔が多くなり、エッジ切れやすいものとなり、使い捨てカイロの製袋加工適正が得られなかったことが分かる。
【0059】
[比較例3]
高圧法の低密度ポリエチレン添加しない樹脂配合であること、および、未延伸フィルムを延伸倍率5.5倍で延伸加工したこと以外は実施例5と同様に行って多孔質フィルムを得、次いで得られた多孔質フィルムを用いて実施例5と同様に通気性積層体および使い捨てカイロを得た。表1および表2に多孔質フィルム、通気性積層体およびカイロの特性を示す。多孔質フィルムとしては、延伸加工時において無機充填剤の脱落が多く、製袋加工時にはエッジ切れが多く発生し、得られた使い捨てカイロは最高温度がより高く、膨らみが生じるなど問題があった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】