特許第6290600号(P6290600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290600排ガスの熱回収装置およびこれを用いた排ガス処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290600
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】排ガスの熱回収装置およびこれを用いた排ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20180226BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20180226BHJP
   C03B 5/16 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B01D53/50 200
   B01D53/50ZAB
   F28F21/04
   C03B5/16
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-234662(P2013-234662)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93252(P2015-93252A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 柱
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】橋間 英和
(72)【発明者】
【氏名】小島 泰治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正博
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−100865(JP,A)
【文献】 特開2005−201625(JP,A)
【文献】 特開平03−052621(JP,A)
【文献】 特開2012−201582(JP,A)
【文献】 特開平11−201690(JP,A)
【文献】 特開平04−260408(JP,A)
【文献】 第33回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集,2011年12月20日,p.140-142
【文献】 檜山和成,実例にみる集塵技術,株式会社 工業調査会,2002年 6月24日,初版,第1刷,p.12-17
【文献】 公害防止の技術と法規編集委員会 編,新訂・公害防止の技術と法規[大気編],社団法人 産業公害防止協会,1978年 6月26日,p.191-192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/73;53/74−53/85;53/92;53/96
C03B 1/00−5/44;8/00−8/04;19/12−20/00
F28F 21/00−27/02
F28D 1/00−13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶解炉からの排ガスを対象とし、少なくとも、
該排ガスが、冷却処理される第1冷却部と、
該排ガスに含有する硫黄化合物の除去処理が行われる脱硫処理部と、
該第1冷却部または脱硫処理部から導出された第2排ガスが、除塵処理される除塵処理部と、
該除塵処理部から導出された第3排ガスが、冷却処理される第2冷却部と、を有し、
前記第2冷却部が、前記除塵処理部と接続流路がない一体化された構成を形成し、該除塵処理部から導出された第3排ガスが直ちに冷却処理され、
前記除塵処理部において、耐熱性の濾過材を用い、前記第3排ガス中の粒子濃度が、50mg/Nm以下となるように除塵処理され、
前記第1冷却部において、前記第2排ガスが、該第2排ガスの酸露点以上前記濾過材の耐熱温度以下となるように冷却処理され、
前記第2冷却部において、SiCを主成分としたセラミックス管を用い、該セラミックス管の表面温度が、前記第3排ガスの酸露点以下となるように冷却処理されるとともに、前記第3排ガスが、前記セラミックス管の内部に供給された熱媒体と熱交換され、加熱処理された熱媒体の温熱が回収されることを特徴とする排ガスの熱回収装置。
【請求項2】
前記セラミックス管の外周部に、金属製の落下防止装置が設けられることを特徴とする請求項記載の排ガスの熱回収装置。
【請求項3】
前記セラミックス管の外周部に、熱媒体の漏洩検知器および/または電気伝導率検出器が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の排ガスの熱回収装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の排ガスの熱回収装置を用いた排ガス処理システムであって、少なくとも、
(1)ガラス溶解炉からの排ガス中の硫黄化合物を除去する脱硫処理
(2)該脱硫処理の前後いずれかにおける排ガスの1次冷却処理
(3)該1次冷却処理または1次冷却処理の前置における熱交換による1次熱回収処理
によって、酸露点以上前記濾過材の耐熱温度以下となるように冷却処理および脱硫処理された第2排ガスが作製されるとともに、前記ガラス溶解炉からの排ガスとの熱交換による高温領域での熱回収が行われ、次に、
(4)耐熱性の濾過材を用い、除塵処理された第3排ガス中の粒子濃度を50mg/Nm以下とする前記第2排ガス中の除塵処理
(5)除塵処理された第3排ガスの2次冷却処理
(6)該2次冷却処理における熱交換による2次熱回収処理
によって、表面温度が該第3排ガスの酸露点以下となるように設定されたSiCを主成分としたセラミックス管によって冷却処理された第4排ガスが作製されるとともに、前記第3排ガスと熱交換された、前記セラミックス管の内部に供給された熱媒体による低温領域での熱回収が行われることを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項5】
前記2次冷却処理において、前記第3排ガスの導入路に対して非直線もしくは直線的に配設された複数のセラミックス管から構成され、該セラミックス管の少なくともいくつかが、その内部を流通する熱媒体の一部を取り出し可能な構成を有し、そのうちの1または複数のセラミックス管から取り出した出した所望の温度の熱媒体を得ることを特徴とする請求項記載の排ガス処理システム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の熱回収装置を用いた温熱利用システムであって、第2冷却部によって回収された熱媒体を、加温用熱媒体または温熱物として利用することを特徴とする温熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの熱回収装置およびこれを用いた排ガス処理システムに関し、特に、硫黄化合物を含有するガラス溶解炉からの排ガスの熱回収装置およびこれを用いた排ガス処理システムにおいて有用である。
【背景技術】
【0002】
ガラスビン等のガラス製品は、溶解炉においてバーナー等高温条件下で溶解され、溶解したガラスを成形することにより製造される。このとき、溶解炉は、1500℃以上の高温になっており、バーナーからの燃焼排ガスと溶解したガラスから発生する成分とを含む排ガスが排出される。こうして発生する1200℃以上の熱は、熱回収され、水蒸気を発生させて発電用に、あるいは燃焼用空気の加熱用等に利用されている。
【0003】
例えば、ガラス溶解炉からの廃熱回収方法として、図8のような煙突に行く損失熱を回収する装置が設けられた実施例が挙げられる(例えば特許文献1参照)。具体的には「この場合煙突排出温度は約450〜500°F(229〜260℃)に下がる。なお400〜500°Fより低い煙突排出温度は、望ましくない腐食性酸化物、および低温において生ずる別の有害な反応生成物が凝縮して付着するという危険がある。図には熱交換器120が示されている。この熱交換器120はダクト117にあり、溶解器(溶解炉)からの排気ガスを全部受ける。熱交換器120はブレイトンサイクルの一部である。・・単純な形のブレイトンサイクルは、図に示したように圧縮機Cから成り、この圧縮機Cは軸121によってタービンTに機械的に連結され、タービンTは電力を発生するための発電機122を駆動する出力軸121を有している。・・圧縮機Cはフィルタ123を介して約60°F(15.6℃)の大気を取り入れる入口を有している。この浄化された空気は、空気を圧縮し同時にその温度を350°F(177℃)に上げる圧縮機Cに入る。この圧縮空気は熱交換器120を通され、そこでその温度を上げるために補助的に熱を奪い、約1400°F(760℃)の温度で約100psiの圧力で圧縮機Cから出る。この加熱され圧縮された空気はタービンTの中で膨張してこれを駆動し、このタービンTは圧縮機Cおよび発電機122を駆動する。タービンTからの排気は約750〜800°F(399〜427°F)の温度を有し、図に示したように左側の再生器に加えられる予熟された燃焼用空気源となる」(第6頁右欄第5〜40行)構成が示されている。
【0004】
また、図9のようなガラス溶解装置における熱回収装置(熱交換器)が挙げられる(例えば特許文献2参照)。具体的には「(ガラス溶解炉211aの)排気口231aには排気系232aが接続されており、排気系232aには熱交換器271a、集塵装置272a、石灰充填塔276a、吸引ファン274a及び煙突275aがこの順で接続されている。排気口231aから排出された高温の排ガスの保有熱を気体搬送中の粉体状のガラス混合原料と熱交換して気体搬送中の粉体状のガラス混合原料を加熱し(図中のX→Y)、更に集塵装置272aで集塵処理して、これらで捕捉されたダスト類を受器273aに回収する一方、集塵処理した排ガスの一部を石灰充填塔276aへと通し、残部を吸引ファン277aを介して熱交換器271aの上流側における排気系232aに戻して、この石灰充填塔276aでガラス混合原料の一部となる炭酸カルシウムを生成させた後、吸引ファン274aを介して煙突275aから大気中へ放出するようになっている」(段落0025)構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平04−068448号公報
【特許文献2】特開2011−37706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような排ガスの熱回収装置等では、次のような問題が生じる。
(i)ガラス溶解炉からの排ガスは、上記のように非常に高温(800〜1500℃)であり、電力用の蒸気発生用や燃焼用空気の加熱用の温熱として好適である。反面、例えば250℃以下の低温の排ガスからの熱回収は、熱回収効率が悪いことから、そうした低温状態まで熱回収された排ガスは、そのまま排出されることが多かった。しかしながら、こうした熱回収装置を含む排ガス処理システムやガラス溶解炉を含む溶融ガラス製造プロセス全体のエネルギー効率の観点からは、未回収の温熱は無視できず、その効率的な熱回収が大きな課題となっていた。
(ii)ガラス溶解炉からの排ガスには硫黄化合物等が含まれており、腐食性がある。従って、熱交換器の直接排ガスが接する部分には耐腐食性の高い部材を用いる必要がある。特に、上記(i)における低温状態は、排ガス中に発生する硫酸ミスト等の酸露点以下の温度条件に相当することから、通常の耐腐食性の素材では長期間の使用はできなかった。一方、熱交換器は、その熱交換効率の確保するために、排ガスの温熱を熱媒体に伝達し易い素材を用いる必要がある。また、熱交換効率を向上させるためには、接触表面積を大きくする等特有の構成を有することから加工性の高い素材が好ましい。こうした条件を確保するには、特殊な素材を用いることが要求され、特に酸露点以下の条件での使用ができる素材の選択は、大きな課題であった。
(iii)耐腐食性の素材として、例えばセラミックス管等が挙げられる。しかしながら、ガラス溶解炉からの排ガスは、上記のように非常に高温(800〜1500℃)であり、セラミックス管にかかる温度差が大きな場合、クラックが生じ易いという課題があった。また、セラミックス管にクラックが生じた場合、熱回収用の熱媒体の煙道内への流入や、セラミックス管の煙道内への落下などが発生する可能性がある。さらに、煙道内は一般的に高温で、落下した場合は取り出すことが難しく、ガラス溶解炉が停止するまで取り出すことができない場合がある。特に、ガラス溶解炉は、長期間連続運転されることが多く、落下を予め防止するという課題がある。
(iv)また、セラミックス管において、クラックの生じる原因は、温度差や温度ヒステリシスによるものだけではなく、排ガス中に含まれる飛散したガラス原料、あるいは排ガスが壁面などで固化し剥がれたものや排ガス成分が凝固した粒子等が、セラミックス管に衝突した衝撃や熱衝撃による場合もある。しかしながら、こうした衝撃等を有効に防止することは難しく、定期的な交換を行うことが一般的であった。
(v)特に、酸露点以下の低温条件においては、発生した硫酸ミスト等の酸ミストが粉塵と結合・凝集して成長した粒子等によって、接ガス部分の腐食や細部の閉塞等を生じることがある。低温条件での熱回収時においては、こうした状況を生じないような除塵処理を行う必要があり、従前からの課題であった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、排ガスからの熱回収を、高温領域から低温領域まで効率よく行うことができ、かつ排ガスの酸露点に対応した排ガス処理を行うことができる熱回収装置を提供し、これを用いたエネルギー効率の高い排ガス処理システムや温熱利用システムを提供することである。また、熱回収装置に耐腐食性の素材であるセラミックス管を用いた場合の課題であるクラック等の発生要因を低減し、長期使用が可能で安全性の高い熱回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す排ガスの熱回収装置およびこれを用いた排ガス処理システムによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明に係る排ガスの熱回収装置は、
ガラス溶解炉からの排ガスを対象とし、少なくとも、
該排ガスが、冷却処理される第1冷却部と、
該排ガスに含有する硫黄化合物の除去処理が行われる脱硫処理部と、
該第1冷却部または脱硫処理部から導出された第2排ガスが、除塵処理される除塵処理部と、
該除塵処理部から導出された第3排ガスが、冷却処理される第2冷却部と、を有し、
前記除塵処理部において、耐熱性の濾過材を用いて除塵処理され、
前記第1冷却部において、前記第2排ガスが、該第2排ガスの酸露点以上前記濾過材の耐熱温度以下となるように冷却処理され、
前記第2冷却部において、SiCを主成分としたセラミックス管を用い、該セラミックス管の表面温度が、前記第3排ガスの酸露点以下となるように冷却処理されるとともに、前記第3排ガスが、前記セラミックス管の内部に供給された熱媒体と熱交換され、加熱処理された熱媒体の温熱が回収されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、本発明に係る排ガスの熱回収装置を用いた排ガス処理システムであって、少なくとも、
(1)ガラス溶解炉からの排ガス中の硫黄化合物を除去する脱硫処理
(2)該脱硫処理の前後いずれかにおける排ガスの1次冷却処理
(3)該1次冷却処理または1次冷却処理の前置における1次熱回収処理
によって、酸露点以上前記濾過材の耐熱温度以下となるように冷却処理および脱硫処理された第2排ガスが作製されるとともに、前記ガラス溶解炉からの排ガスに対する高温領域での熱回収が行われ、次に、
(4)耐熱性の濾過材を用いた前記第2排ガス中の除塵処理
(5)除塵処理された第3排ガスの2次冷却処理
(6)該2次冷却処理における熱交換による2次熱回収処理
によって、表面温度が該第3排ガスの酸露点以下となるように設定されたSiCを主成分としたセラミックス管によって冷却処理され第4排ガスが作製されるとともに、前記第3排ガスと熱交換された、前記セラミックス管の内部に供給された熱媒体による低温領域での熱回収が行われることを特徴とする。
【0011】
従前、ガラスの溶解炉からの排ガス処理プロセスにおいては、排ガス中に含まれるダストやガラスの原料由来の硫黄化合物(特に硫酸ミスト等)の処理とともに、排ガスが有する温熱を低温領域(例えば250℃以下)まで効率よく熱回収することは非常に難しかった。本発明において、検証過程における以下の知見(a)〜(c)を基に、こうした構成の排ガスの熱回収装置を用いることによって、排ガスからの熱回収を、高温領域(例えば800〜1500℃)から低温領域まで効率よく行うことができ、かつ排ガスの酸露点に対応した排ガス処理を行うことができることを見出した。
(a)排ガスの温度(酸露点)に対応した、2段階の異なる手法による冷却処理および熱回収処理を行うことによって、低温領域まで効率よく熱回収することができる。つまり、酸露点を超えた高温領域においては、大きな温度差を利用して高エネルギーの温熱を回収し、酸露点を含む低温領域においては、温度差は小さいが熱回収用の低温熱媒体の温度制御が容易な特性を利用して比較的低エネルギーの温熱を回収することができる。
(b)高温領域においては、酸ミスト等の発生の少ない状態で高エネルギーの温熱を回収し、発電用水蒸気発生用あるいは燃焼空気加熱用等の温熱として利用することができる。一方、低温領域においては、予め脱硫処理が行われ酸ミスト等の発生の少ない状態を形成するとともに、予め細かな除塵処理が行われ酸ミスト等の発生があっても粉塵等の凝集等による2次的な腐食や閉塞等の発生を抑制することができ、さらに、SiCを主成分としたセラミックス管を用いた熱交換器を適用することによって、酸ミスト等の発生があっても腐食されることなく、長期使用が可能で安全性の高い熱回収装置を構成することができる。従って、回収された熱媒体の温熱を、低温条件において精度の高い温度制御が要求される低温ボイラ用温水作製用等の温熱として利用することができる。
(c)酸ミスト等の発生があっても粉塵等の凝集等の発生を防止するためには、予め凝集等が生じない程度の細かな除塵処理を行うことが好適である。こうした除塵機能を有する除塵処理部としては、耐熱性濾過材を用い、これに対応する濾過能力を設定することが好ましい。例えば後述する粒子濃度50mg/Nm以下となるように、バグフィルターの濾材および容量が設定される。
【0012】
本発明は、上記排ガスの熱回収装置であって、前記除塵処理部において、前記第3排ガス中の粒子濃度が、50mg/Nm以下であることを特徴とする。
検証過程において、上記知見(a)〜(c)に加え、さらに下記のような知見(d)を得た。
(d)酸露点以下の低温条件にあっても、第2冷却部に導入される排ガス(第3排ガス)中の粉塵の量を、粒子濃度50mg/Nm以下とすることによって、第2冷却部に用いられたセラミックス管の表面での付着物の発生を抑制することができた。つまり、発生した硫酸ミスト等の酸ミストが、粉塵と結合・凝集して成長した粒子等が形成しないような条件を見出した。
このとき、第2冷却部が、除塵処理部と接続流路がない一体化された構成を形成し、該除塵処理部から導出された第3排ガスが直ちに冷却処理されることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記の排ガスの熱回収装置において、前記セラミックス管の外周部に、金属製の落下防止装置が設けられることを特徴とする。
上記の熱回収装置においては、熱伝導度が高く耐食性に優れたセラミックス管を、低温条件で用い、かつ排ガス中での凝集物の発生を防止することによって、既述のようなクラック等の発生を未然に防止する。本発明は、さらに、長期間連続運転されることが多いガラス溶解炉の使用条件において、万一セラッミクス管の破損が生じた場合でも、その煙道あるいはダクト内への落下を防止することによって、熱回収装置が配設されるガラス溶解炉の排ガス処理システムの安全性を確保することが可能となった。
【0014】
本発明は、上記の排ガスの熱回収装置において、前記セラミックス管の外周部に、熱媒体の漏洩検知器および/または電気伝導率検出器が設けられることを特徴とする。
上記のように、ガラス溶解炉の排ガス処理システムにおいては、その使用条件における安全性が非常に重要である。本発明は、セラミックス管内部に供給される熱媒体の漏洩の検知することによって、セラミックス管の破損を未然に検知することを可能とした。また、セラミックス管表面の付着物をモニタするための電気伝導率の変化を検知することによって、セラミックス管の破損を未然に検知するとともに、セラミックス管の熱交換機能の低下の早期検知を可能とし、さらに第2冷却部の上流段での除塵機能の低下をモニタすることを可能とした。
【0015】
本発明は、上記排ガス処理システムであって、前記2次冷却処理において、前記第3排ガスの導入路に対して非直線もしくは直線的に配設された複数のセラミックス管から構成され、該セラミックス管の少なくともいくつかが、その内部を流通する熱媒体の一部を取り出し可能な構成を有し、そのうちの1または複数のセラミックス管から取り出した所望の温度の熱媒体を得ることを特徴とする。
低温ボイラ等においては、低温水作製用等の温熱として、低温条件において精度の高い温度制御が要求される。本発明は、排ガス処理システムの2次冷却処理において得られる複数の温度条件の温熱を利用することによって、任意の所望の温度条件の温熱を回収することが可能となった。
【0016】
本発明は、温熱利用システムであって、上記熱回収装置を用い、第2冷却部によって回収された熱媒体を、加温用熱媒体または温熱物として利用することを特徴とする。
上記のように、第2冷却部においてまたは2次冷却処理によって、効率よくクリーンな熱媒体の温熱を回収することができる。特に低温の温熱は、利用価値が高く、低温条件において精度の高い温度制御が要求される低温ボイラ用温水作製用等の温熱として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る排ガス熱回収装置の基本的な構成を例示する概略図
図2】本発明に係る除塵処理部の構成例を示す概略図
図3】本発明に係る第2冷却部の構成例を示す概略図
図4】本発明に係る除塵処理部および第2冷却部の構成例を示す概略図
図5】第2冷却部の冷却機能の実験データを例示する概略図
図6】本発明に係る温熱利用システムの1の構成例を示す概略図
図7】本発明に係る温熱利用システムの他の構成例を示す概略図
図8】従来技術に係るガラス溶解炉からの廃熱回収方法を例示する概略図
図9】従来技術に係るガラス溶解装置における熱回収装置を例示する概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る排ガスの熱回収装置は、少なくとも、ガラス溶解炉からの排ガスを対象とし、少なくとも、排ガスが、冷却処理される第1冷却部と、排ガスに含有する硫黄化合物の除去処理(以下「脱硫処理」という)が行われる脱硫処理部と、第1冷却部または脱硫処理部から導出された第2排ガスが、除塵処理される除塵処理部と、除塵処理部から導出された第3排ガスが、冷却処理される第2冷却部と、を有し、除塵処理部において、耐熱性の濾過材を用いて除塵処理され、第1冷却部において、第2排ガスが、第2排ガスの酸露点以上濾過材の耐熱温度以下となるように冷却処理され、第2冷却部において、SiCを主成分としたセラミックス管を用い、セラミックス管の表面温度が、第3排ガスの酸露点以下となるように冷却処理されるとともに、第3排ガスが、セラミックス管の内部に供給された熱媒体と熱交換され、加熱処理された熱媒体の温熱が回収されることを特徴とする。こうした構成の排ガスの熱回収装置を用いることによって、排ガスからの熱回収を、高温領域から低温領域まで効率よく行うことができ、かつ排ガスの酸露点に対応した排ガス処理を行うことができる。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<本発明に係る排ガスの熱回収装置の基本構成>
図1は、本発明に係る排ガスの熱回収装置(以下「本装置」という)の基本的な概略全体構成を例示する(第1構成例)。ガラス溶解炉(図示せず)から供出された排ガスが、第1冷却部1において冷却処理されて第1排ガスG1、脱硫処理部2において脱硫処理されて第2排ガスG2が生成される。第2排ガスG2は、除塵処理部3において除塵処理され第3排ガスG3が生成された後、第2冷却部4に導入され第4排ガスG4が生成される。第4排ガスG4は、そのままあるいはさらに清浄化処理がされた後煙突等(図示せず)から排出される。第2冷却部4には、その表面温度が、第3排ガスの酸露点以下となるように設定されたセラミックス管4a,4bが設けられ、セラミックス管4a,4bの内部に供給された熱媒体Mと第3排ガスG3の間で熱交換される。第3排ガスG3が冷却処理されるとともに、加熱処理された熱媒体Mの温熱が回収される。本装置は、酸露点以上濾過材の耐熱温度以下に冷却処理され,脱硫処理および除塵処理されて清浄化された第3排ガスG3が、第2冷却部に導入され熱交換されることによって、効率よく低温領域での熱回収を行うことができる。
【0020】
このとき、ガラス溶解炉から供出された高温(例えば800〜1500℃)の排ガスを冷却処理するとともに、第1冷却部1において、あるいは予め第1冷却部1よりも上流段(図示せず)において熱回収を行う(高温領域での熱回収)ことによって、高温領域から低温領域まで排ガスからの熱回収を効率よく行うことができる。上記(a)のように、排ガスの温度(酸露点)に対応した、2段階の異なる手法による冷却処理および熱回収処理を行うことによって、低温領域まで効率よく熱回収することができる。つまり、酸露点を超えた高温領域においては、大きな温度差を利用して高エネルギーの温熱を回収し、酸露点を含む低温領域においては、温度差は小さいが熱回収用の低温熱媒体の温度制御が容易な特性を利用して比較的低エネルギーの温熱を回収することができる。
【0021】
本発明において処理対象となる排ガスは、硫黄化合物(SOx)を含有するガラス溶解炉から排出される排ガス等が該当する。具体的には、芒硝等を含むガラス材料の生産プロセスにおけるガラス溶解炉からのSOxを含有する排ガスが対象となる。こうした排ガスは、非常に高温で高エネルギーを有するとともに、多くの酸ミストが含まれることから、効率よくかつ安定的に熱回収するには、その酸露点に対応した排ガス処理が必要となる。具体的には、脱硫処理によって酸露点を下げるとともに、酸ミスト等の発生し易い温度以下に冷却処理する場合には、酸ミストによる腐食および酸ミストと粉塵との結合・凝集を防止するように、耐食性素材の利用および微細粒子までの除塵処理が必要となる。
【0022】
〔第1冷却部〕
第1冷却部1では、ガラス溶解炉から供出された高温(例えば800〜1500℃)の排ガスG0が、直接あるいは1次冷却処理されて導入され、第2排ガスG2の酸露点以上濾過材の耐熱温度以下となるように冷却処理される。冷却温度を、酸露点例えば250〜300℃以上とすることによって、排ガス中の酸ミストの発生を防止することができるとともに、下流段に設けられる除塵処理部3の濾過材3aの耐熱温度例えば約200〜300℃以下とすることによって、高い耐熱性が必要とされる特別な設備や特殊な材料を使用せずに後段での除塵処理等の清浄化処理を行うことができる。第1冷却部1で冷却された気体成分は、第1排ガスG1として供出されると同時に、冷却処理によって発生した液体成分(固体成分を含む)は回収される。
【0023】
冷却処理方法としては、例えば、従前の熱回収装置等(既述)のように、高温用の熱交換器を用い、排ガスG0と空気あるいは高温用熱媒体によって熱交換させ、排ガスG0の冷却処理を行う方法が挙げられる。あるいは、排ガスG0に直接冷却水が添加され、水の気化熱による排ガスG0の冷却処理を行う方法が挙げられる。このとき、冷却水を噴霧状に添加することによって、効率的に排ガスG0を冷却することができる。また、第1冷却部1として高温用の熱交換器を用い、直接高温の排ガスG0が導入された場合には、高温領域での排ガスG0からの熱回収を行い冷却処理することができる。一方、予め第1冷却部1よりも上流段(前置)において、高温領域での熱回収(1次冷却処理)が行われた場合には、第1冷却部1では熱回収を行わずに、脱硫処理部2または/および除塵処理部3の最適処理条件にあった上記範囲内の所定温度までの冷却処理を行うことができる。また、第1構成例では、第1冷却部1で冷却された第1排ガスG1が、脱硫処理部2に導入された構成を示すが、これに代えて、予め高温条件で脱硫処理された排ガスが、第1冷却部1に導入される構成とすることが可能である。なお、前置において高温領域での熱回収を行う場合には、高温用熱媒体による排ガスとの熱交換だけではなく、排ガスの温熱を吸収する蓄熱式の熱回収方法等、高温条件に好適な熱回収方法を適用することができる。
【0024】
〔脱硫処理部〕
脱硫処理部2では、第1排ガスG1に処理剤が添加され、第1排ガスG1中の硫黄化合物の除去処理が行われる。予め酸ミストの源となる硫黄化合物を除去(減量)処理することによって、第2排ガスG2の酸露点を低下させ、下流段の2次冷却処理時(第2冷却部4)において発生する可能性のある酸ミストの低減することができる。処理剤としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムあるいは水酸化アンモニウムなどの水酸化物,炭酸ナトリウムや炭酸カリウムあるいは炭酸アンモニウムなどの炭酸化物,炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどの炭酸水素化物あるいは酸化ナトリウムや酸化カリウムなどの酸化物を主成分とする薬剤、またはこれらの水溶液を挙げることができる。処理剤として水酸化ナトリウム水溶液等の水溶液を用いた場合には、第1冷却部1同様、排ガスに対して噴霧状に添加することによって、効率的に脱硫処理を行うことができる。また、水溶液を用いた場合には、さらに脱硫処理機能とともに当該水溶液による冷却処理機能をも利用することができる。このとき、過剰量のアルカリ処理液を供給し、その一部を循環的に再利用する供給系を用いた場合には、当該循環供給系の中に熱回収用の熱交換器(図示せず)を設けることによって、さらに効率的な熱回収を行うことができる。また、該循環供給系に中和処理等再生処理部(図示せず)を設けることによって、脱硫機能の効率を上げることができる。脱硫処理部2で脱硫処理された気体成分は、清浄化された第2排ガスG2として集塵処理部3に供出されると同時に、液体成分(固体成分を含む)が発生した場合には回収される。なお、第1構成例では、脱硫処理部2を第1冷却部1の下流段に設けた構成を例示したが、上記のように、第1冷却部1の上流段に設け、脱硫処理された排ガスを第1冷却部1に供給する構成も可能である。また、脱硫処理部2を第1冷却部1と別体として例示したが、これらを一体化した1次処理部として構成することもできる。
【0025】
〔除塵処理部〕
除塵処理部3では、脱硫処理部2から導出された第2排ガスG2が、耐熱性の濾過材3aによって気固分離処理される。上記(c)のように、酸ミスト等の発生があっても粉塵等の凝集等の発生を防止するためには、予め凝集等が生じない程度の細かな除塵処理を行うことが好適である。こうした除塵機能を有する除塵処理部3としては、耐熱性濾過材3aを用い、これに対応する濾過能力を設定することが好ましい。分離された固体成分が、硫酸ナトリウム,シリカあるいはセレン等の化合物を含む粉塵として取り出される。分離され清浄化された気体成分は、第3排ガスG3として第2冷却部4に供出される。耐熱性の濾過材3aとしては、ガラス繊維やPTFE、セラミック系の濾過材等を主成分とする濾過織布や濾過不織布,粒状体あるいは粉状体等を用いることが好ましい。特にPTFE系の濾過材は、酸性ダストに対する耐性を有することで、ダストの濾布からの剥離性に優れるため、低温条件下での酸ミスト形成の核となる物質の減少を図ることができる。こうした酸ミスト軽減機能は、除塵処理部3を第2冷却部4の上流段に設けることによって高い組合せ効果を得ることができる。
【0026】
このとき、除塵処理部3において、第3排ガスG3の粒子濃度が、50mg/Nm以下となるように除塵処理されることが好ましい。つまり、上記(d)のように、酸露点以下の低温条件にあっても、発生した硫酸ミスト等の酸ミストが、粉塵と結合・凝集して成長した粒子等が形成しないような条件として、第2冷却部4に導入される第3排ガスG3中の粉塵の量を、粒子濃度50mg/Nm以下とすることによって、第2冷却部に用いられたセラミックス管の表面での付着物の発生を抑制するとの知見を得た。従って、こうした条件で除塵処理されることによって、第2冷却部4における低温領域での熱回収を非常に効率よく行うことができる。
【0027】
除塵処理部3として、第1構成例においては濾過材3aを用いた構成を例示したが、こうした濾過式除塵処理部の上流段に、比較的大きな粒径の粉塵を予め除去可能な他の除塵処理手段を設けることが好ましい。濾過材3aの負荷を軽減して長期間の除塵機能を確保するとともに、異なる機能を有する除塵処理との組合せによる副次的な効果を得ることが可能となる。例えば、図2に例示するような電気集塵器3bあるいはサイクロン式集塵器(図示せず)との組合せを挙げることができる。ガラス溶解炉からの排ガス中にはNaやCa等の金属成分が多く含まれ、イオン化された金属成分は、凝集し易く微細粒子であっても凝集物の核となりやすい。電気集塵器3bを前置させることによって、こうした金属成分の多い粉塵に対して効果的な除塵を行うことができる。また、ガラス溶解炉からの排ガスG0中には大小種々の粉塵が多く含まれ、流通流路での圧力損失の原因となる。サイクロン式集塵器を前置させることによって、多量の粉塵があっても、こうした圧力損失の発生が殆どなく効果的な除塵を行うことができる。
【0028】
〔第2冷却部〕
第2冷却部4には、SiCを主成分としたセラミックス管4a,4bが設けられ、除塵処理部3から導出された第3排ガスG3が導入される。セラミックス管4a,4bの内部には、熱媒体Mが供給され、表面温度が第3排ガスG3の酸露点以下となるように設定される。第3排ガスG3がセラミックス管4a,4bによって冷却処理され、第4排ガスG4として供出されると同時に、加熱処理された熱媒体Mの温熱が回収される。このとき、セラミックス管4a,4bの耐食性によって、酸露点以下となった表面に酸ミスト等の発生があっても、腐食の発生および腐食物による熱交換機能の低下もなく、予め細かな除塵処理が行われたことによって、表面での粉塵等の凝集等による2次的な腐食や閉塞等の発生を防止することができる。こうした機能によって、上記(b)のように、本装置における低温領域の冷却処理においても、予め脱硫処理が行われ酸ミスト等の発生の少ない状態を形成するとともに、予め細かな除塵処理が行われ酸ミスト等の発生があっても粉塵等の凝集等による2次的な腐食や閉塞等の発生を抑制することができ、さらに、SiCを主成分としたセラミックス管4a,4bを用いた熱交換を行うことによって、酸ミスト等の発生があっても腐食されることなく、長期使用が可能で安全性の高い熱回収装置を構成することができる。また、回収された熱媒体Mの温熱を、低温条件において精度の高い温度制御が要求される低温ボイラ用温水作製用等の温熱として利用することができる。
【0029】
セラミックス管4a,4bは、SiCを主成分(ここでいう主成分とは、セラミックス管を構成する全成分100質量(重量)%に対して、90質量(重量)%以上占める成分であり、95質量(重量)%以上であることが好適である。)としたセラミックス素材(例えばコバレントマテリアル社製、商品名CERASIC[登録商標]−B)を用い、例えば半球状の一端部を有し、他端部から熱媒体Mの導入・流通が可能な円筒形状とすることが好ましい。耐熱性,耐食性および熱伝導性に優れるとともに、本装置の使用に必要な強度を確保することができる。熱媒体Mとしては、熱容量の大きな市水や井戸水等を用いることによって、低温条件において精度の高い温度制御を行うことができる。
【0030】
第2冷却部4において、複数のセラミックス管(以下、任意の第nセラミックス管を「第nセラミックス管」または「セラミックス管4n」ということがある)が、直列または並列に配列されることによって、任意の所望の温度条件および量の温熱を回収することができる。具体的には、図3(A)に例示するように、4つのセラミックス管4a〜4dが、流路に対して直列に配設された構成において、熱媒体Mの流量を調整することによって最下流のセラミックス管4dの供出部から所望の温度条件および量の温熱を回収することができる。また、セラミックス管4a〜4dのいくつかが、その内部を流通する熱媒体Mの一部を取り出し可能な構成を有することが好ましい。例えば上流側から第2のセラミックス管4bに取出部を設け、直列的に流通する熱媒体Mの一部を取り出すことによって、最上流側のセラミックス管4aから供出される熱媒体Mよりも低温で、より下流側のセラミックス管4cから供出される熱媒体Mよりも高温の温熱を、任意の量回収することができる。なお、図3(A)においては、熱媒体Mが第3排ガスG3と並流様に流通する構成を例示したが、向流式に熱交換する構成を適用することができる(図示せず)。
【0031】
また、図3(B)に例示するように、第3排ガスG3の導入路に対して非直線もしくは直線的に配設された複数(図では6つ)セラミックス管4a〜4fから構成され、その少なくともいくつかが、その内部を流通する熱媒体Mの一部を取り出し可能な取出部を有し、そのうちの1または複数のセラミックス管から取り出した熱媒体Mによって、所望の温度の熱媒体Mを得ることができる。第2冷却部4において、最上流に配設された第1セラミックス管4aから取り出し可能な最高温度の温熱と、最下流に配設された第6セラミックス管4fから取り出し可能な最低温度の温熱の間を、より細分化された温度で、任意の所望の温度条件の温熱を任意の量回収することができる。また、セラミックス管4a〜4fを非直線的に配設することによって、第2冷却部4の内部容積を有効に利用し、そのコンパクト化を図ることができる。
【0032】
セラミックス管4nは、その外周部に、図3(C)に例示するような金属製の落下防止装置Prを設けることが好ましい。セラミックス管4nは、熱伝導度が高く耐食性に優れる一方、周囲温度が繰返し変動すると既述のようなクラック等の発生は避けがたい。特に温度差が大きい場合や長期間使用されたセラミックス管では、そうした破損が生じ易い。さらに、長期間連続運転されることが多いガラス溶解炉の使用条件において、万一セラッミクス管の破損が生じた場合でも、その煙道あるいはダクト内への落下を防止することが要求される。第2冷却部4においては、セラミックス管4nを低温条件で用いるとともに第3排ガスG3中の凝集物の発生を防止することによって、クラック等の発生を未然に防止することができるが、さらに、こうした落下防止装置Prを設けることによって、長期間連続運転される熱回収装置の安全性を確保することができる。
【0033】
セラミックス管4nは、その外周部に、図3(D)に例示するような熱媒体Mの漏洩検知器および/または電気伝導率検出器(以下「検出器S」という)を設けることが好ましい。具体的には、セラミックス管4nの先端部に接するように検出端Saが配設され、セラミックス管4nの側面に沿うように検出導路Sbを有する検出器Sが挙げられる。セラミックス管4n内部に供給される熱媒体Mの漏洩の検知することによって、セラミックス管4nの破損を未然に検知することできる。また、セラミックス管4n表面の付着物をモニタするための電気伝導率の変化を検知することによって、セラミックス管4nの破損を未然に検知するとともに、セラミックス管4nの熱交換機能の低下の早期検知あるいは低下時期の推測を行うことができる。さらに、セラミックス管4nの表面に付着した物質の状態を検知することによって、第2冷却部4の上流段の除塵処理部3での除塵機能の低下状態をモニタすることができる。これによって、実動状態のセラミックス管4nの状態を把握し、第2冷却部4の安全性を確保することができる。
【0034】
〔除塵処理部と第2冷却部の一体化〕
本装置において、低温領域の熱回収を除塵処理と一体的に行うことが好ましい場合がある。1次冷却処理および脱硫処理が行われ清浄化された第2排ガスG2には、2次冷却処理において発生する可能性のある酸ミストの核となる物質を含む所定量の粉塵が含まれるとともに、除塵処理された第3排ガスG3には、こうした粉塵のうちの微粒子が残留し、時間とともに凝集して大きな粒子となり酸ミストの核に成長する可能性がある。従って、第2冷却部4を除塵処理部3と一体化して接続流路等をなくして、除塵処理された第3排ガスG3を、直ちに冷却処理することが好ましい。具体的には、図4に例示するように、除塵処理部3の上部の供出部3cと直結するように第2冷却部4が配設されることによって、除塵処理された第3排ガスG3を直ちに2次冷却処理することができ、酸ミストの発生が抑制された第4排ガスG4を排出することができる。
【0035】
<本装置を用いた排ガス処理システム>
本装置を用いた排ガス処理システム(以下「本システム」という)は、少なくとも
(1)ガラス溶解炉からの排ガス中の硫黄化合物を除去する脱硫処理
(2)該脱硫処理の前後いずれかにおける排ガスの1次冷却処理
(3)該1次冷却処理または1次冷却処理の前置における1次熱回収処理
(4)耐熱性の濾過材を用いた前記第2排ガス中の除塵処理
(5)除塵処理された第3排ガスの2次冷却処理
(6)該2次冷却処理における熱交換による2次熱回収処理
によって、排ガス処理が行われる。
こうした処理によって、清浄化された排ガスが排出されるとともに、排ガスからの熱回収を高温領域から低温領域まで効率よく行うことができ、かつ排ガスの酸露点に対応した排ガスの各処理によって長期使用が可能で安全性の高い、エネルギー効率の高い排ガス処理システムを構成することが可能となった。以下、各工程について詳述する。
【0036】
(1)排ガスの脱硫処理工程
1次冷却処理工程の前後いずれかにおいて、ガラス溶解炉からの排ガスG0中の硫黄化合物の除去処理を行う。排ガスG0あるいは1次冷却処理された第1排ガスG1に水酸化ナトリウム水溶液等の処理剤が添加され、排ガスG0中の硫黄化合物を基準値(法的規制値あるいは設定された規制値等)以下に低減するとともに、下流段での酸ミスト等の発生を抑制することができる。多量の液状処理剤を添加することによって、同時に後述する1次冷却処理あるいはその一部を担うことが可能である。この場合、余剰の処理剤は、再生処理等を行い再度使用する循環系を構成することができる。
【0037】
(2)排ガスの1次冷却処理工程
脱硫処理工程の前後いずれかにおいて、ガラス溶解炉から供出された排ガスG0の1次冷却処理を行う。高温(例えば800〜1500℃)の排ガスG0を直接1次冷却処理する工程、または予め前置の冷却処理された排ガスを1次冷却処理する工程がある。いずれも、酸露点以上で、下流段の除塵処理工程において用いられる濾過材3aの耐熱温度以下(例えば200〜300℃)となる第1排ガスを作製するように、1次冷却処理される。酸ミストが生じない条件下において1次冷却処理を行うことによって、その下流段での除塵処理および2次冷却処理を効率よく行うことができる。
【0038】
(3)1次冷却処理または1次冷却処理の前置における1次熱回収処理工程
1次冷却処理または1次冷却処理の前置において、高温領域での1次熱回収を行う。前者は、上記(1)の高温の排ガスG0を直接1次冷却処理する工程において、排ガスG0と熱交換された空気あるいは高温用熱媒体によって排ガスG0の温熱が回収される。後者は、1次冷却処理工程の前置工程として、1次冷却処理を行う第1冷却部の上流段に設けられ、高温用熱媒体が流通する熱交換器あるいは吸熱・蓄熱器において、排ガスG0の温熱が回収される。高温領域における大きな温度差を利用して効率よく高エネルギーの温熱を回収し、発電用水蒸気発生用あるいは燃焼空気加熱用等の温熱として利用することができる。
【0039】
(4)第2排ガス中の除塵処理工程
上記工程(1)〜(3)によって冷却・清浄化された第2排ガスG2中の除塵処理が行われる。除塵処理後の第3排ガスG3の粒子濃度が、50mg/Nm以下となるように除塵処理されることが好ましい。従って、粉塵等が多量に含まれる場合あるいは大きな粉塵等が多量に含まれる場合には、予め電気集塵器やサイクロン式集塵器等を用いて1次除塵処理を行った後、濾過式集塵器を用いて精緻な除塵処理を行うことが好適である。耐熱性の濾過材3aを用いて高い除塵処理を行うことによって、下流段における粉塵等の凝集等を防止する機能を有するとともに、低温条件下での酸ミスト形成の核となる物質の減少を図ることができる。
【0040】
(5)第3排ガスの2次冷却処理
上記工程(4)において除塵処理された第3排ガスG3の2次冷却処理を行う。例えば200〜300℃に1次冷却処理された第3排ガスG3を、表面温度が第3排ガスG3の酸露点以下(例えば250℃以下)となるように設定されたセラミックス管4nを用いて冷却し、第4排ガスG4を作製する。第3排ガスG3中に含まれる酸ミスト(一部)は、セラミックス管4nの表面に凝縮して分離することができ、その下流段での酸ミストの発生を防止することができる。セラミックス管4nは、その内部を熱媒体Mが流通し、耐食性を有し熱伝導性の高いSiCを主成分とすることが好ましい。腐食の発生なく、効率よく冷却処理を行い、清浄化された第4排ガスG4として供出することができる。
【0041】
(6)熱媒体との熱交換による2次熱回収処理
2次冷却処理において、セラミックス管4nを介して熱媒体Mと第3排ガスG3の熱交換が行われ、加熱された熱媒体Mの温熱が回収されることによって、低温領域での2次熱回収が行われる。熱媒体Mとして、温度差は小さいが温度制御が容易な熱回収用の低温熱媒体(例えば市水や井戸水等)を用いることによって、低温領域での比較的低エネルギーの温熱を回収することができる。また、複数のセラミックス管4nを第3排ガスG3の導入路に対して非直線もしくは直線的に配設し、そのいくつかのセラミックス管4nから熱媒体Mを取り出すことによって、精度の高い温度制御されたる所望の温度の熱媒体Mを得ることができる。
【0042】
<本装置に用いた第2冷却部の機能の検証>
第1構成例に係る本装置を用い、本装置の第2冷却部4の冷却機能および第3排ガスG3中の粒子濃度の影響の検証を行った。
【0043】
〔本装置の第2冷却部の冷却機能の検証〕
第2冷却部4を用い、所定温度の熱媒体Mを導入し、供給流量を指標として熱交換後の供出温度を確認した。
(i)検証条件
第1構成例のように、2つのセラミックス管(CERASIC[登録商標]−B)4a,4bが直列に配設された第2冷却部4を用い、供給される熱媒体Mとして12℃の冷却水を用いた。第3排ガスG3を温度180℃,流量20000Nm/hrで導入するとともに、セラミックス管4aの導入口から導入される冷却水の流量を2〜10L/minを変動範囲として、セラミックス管4bの供出口から供出される冷却水の温度をモニタし、第2冷却部4の冷却機能を検証した。
(ii)検証結果
検証結果として、図5に例示するように、供給流量2〜3L/minにおいて、供出温度/供給流量の相関が直線近似範囲を有する結果を得た。つまり、この範囲において当該第2冷却部4における冷却機能を利用することによって、第3排ガスG3の温度および流量に対応した、第4排ガスG4の温度および熱媒体Mの出口温度を精度よく制御することができることが確認された。
【0044】
〔本装置の第2冷却部に対する第3排ガスG3中の粒子濃度の影響の検証〕
第2冷却部4を用い、所定の粒子濃度および酸ミストを含む第3排ガスG3を所定流量導入し、第3排ガスG3中の粒子濃度を指標としてセラミックス管(CERASIC[登録商標]−B)における酸ミストの発生量を確認した。
(i)検証条件
1つのセラミックス管4nが配設され、熱媒体Mとして12℃の冷却水を用いた第2冷却部4を用い、除塵処理部3における濾過材3aの濾過能力を変動させ、セラミックス管4nの表面において発生した酸ミストの量をモニタし、第2冷却部4の冷却機能(および除塵処理部3の除塵効果)を検証した。
(ii)検証結果
検証結果として、第3排ガスG3中の粒子濃度が50mg/Nm以下の条件下において、セラミックス管4nの外表面での凹凸36μm(最大高さRy)以下の付着量とすることができることが確認された。
【0045】
<回収された温熱の利用する温熱利用システム>
本装置または本システムにより回収された低温領域の温熱は、低温加熱用の温熱として利用することができる。具体的には、第2冷却部4においてまたは2次冷却処理によって回収された熱媒体Mを、低温ボイラ用温水作製用等の低温の加温用熱媒体または低温の温熱物として利用する温熱利用システムを構成することができる。第2冷却部4においてまたは2次冷却処理によって効率よく回収されたクリーンな熱媒体Mの温熱を利用し、低温条件において精度の高い温度制御を実現することができる。具体的な利用例として、以下の2つの構成例を示す。
【0046】
〔利用例1〕:ボイラ給水への利用
第2冷却部4において回収された温熱は、加温水としてボイラ給水に利用することによって、ボイラ燃料(例えばLNG)の削減を図ることができる。具体的には、図6に例示するように、第2冷却部4から供出された加温水W1が、ボイラ給水タンク11に供給され、その所定流量が、ボイラ水W2として貫流ボイラ12に供給される構成が挙げられる(1の構成例)。加温水W1は、例えば80℃に設定された第2冷却部4において、原水として例えば井戸水Wを用い、軟水器13によって作製された例えば15℃の軟水Woを基に作製される。加温水W1は、例えば69℃に加温され、例えば流量400L/hrで第2冷却部4からボイラ給水タンク11に供給される。また、ボイラ給水タンク11では、原水として例えば井戸水Wを用い、軟水器14によって作製された軟水W3が例えば流量2〜4t/hr供給され、加温水W1とともに、アフタークーラ15によって循環的に所定温度に制御され、所定温度のボイラ水W2が作製される。貫流ボイラ12では、燃料として例えばLNGが供給され、ボイラ給水タンク11から供給されたボイラ水W2を利用して蒸気W4が作製される。第2冷却部4から供出された排ガス(第4排ガスG4)は煙突16を介して排出される。このように、ボイラ水W2の加温用温熱として第2冷却部4からの温熱を利用することによって、例えば80GJ/month相当の燃料削減を図ることができることが検証された。
【0047】
〔利用例2〕:吸着式冷凍機または吸収式冷凍機への利用
第2冷却部4において回収された温熱は、吸着式冷凍機または吸収式冷凍機の加温水として利用することによって、吸着式冷凍機または吸収式冷凍機の加温用エネルギー(例えば電熱等)の削減を図ることができる。具体的には、図7に例示するように、第2冷却部4から供出された加温水W1が、温水タンク21に供給され、その所定流量が、温水W5として吸着式冷凍機または吸収式冷凍機22に供給される構成が挙げられる(他の構成例)。加温水W1は、例えば80℃に設定された第2冷却部4において、原水として例えば吸着式冷凍機または吸収式冷凍機22からの還流水W6(例えば65℃)を基に例えば70℃に加温され、温水タンク21に供給される。また、吸着式冷凍機または吸収式冷凍機22には、温水タンク21から温水W5が供給されるとともに、計装エアAが供給され、冷却塔23をおいて冷却された冷却水W7が、冷却水ポンプ24によって循環的に供給および供出される。吸着式冷凍機または吸収式冷凍機22では、温水W5と冷却水W7を用いて所定温度の温冷媒W8が作製され、冷房機器等25の温冷媒として循環的に供給および供出される。第2冷却部4から供出された排ガス(第4排ガスG4)は煙突26を介して排出される。このように、冷房機器等25の温冷媒作製用の吸着式冷凍機または吸収式冷凍機の加温用温熱として、第2冷却部4からの温熱を利用することによって、吸着式冷凍機または吸収式冷凍機の加温用エネルギーの削減を図ることができることが検証された。
【符号の説明】
【0048】
1 第1冷却部
2 脱硫処理部
3 除塵処理部
4 第2冷却部
4a,4b セラミックス管
5 温熱利用設備
6 晶析処理部
G0 排ガス
G1〜G4 第1〜第4排ガス
M 熱媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9