特許第6290603号(P6290603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290603
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】燃料電池用ガスケット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0273 20160101AFI20180226BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20180226BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01M8/0273
   H01M8/0276
   H01M8/10 101
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-236732(P2013-236732)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-97154(P2015-97154A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】佐宗 秀寿
(72)【発明者】
【氏名】古賀 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豪士
(72)【発明者】
【氏名】間所 和彦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 唯
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 正樹
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−030332(JP,A)
【文献】 特開2011−124223(JP,A)
【文献】 特開2003−157867(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/114567(WO,A1)
【文献】 特開2011−009146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0273
H01M 8/0276
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料電池に用いられるガスケットであって、燃料電池セルにおける膜−電極複合体のアノード側及びカソード側のそれぞれに配置されるガス拡散層に、これらのガス拡散層の外周を包囲するように板状基部に隆起形状をなすシールリップが形成されたガスケット本体が一体に成形されており、アノード側及びカソード側のうち一方の前記ガス拡散層に成形された前記ガスケット本体の板状基部に、他方の前記ガス拡散層に成形された前記ガスケット本体の板状基部の外周端部と嵌合又は遊嵌可能な段差面を形成したことを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【請求項2】
アノード側及びカソード側のうち一方の前記ガス拡散層に成形された前記ガスケット本体の板状基部に、前記段差面の内周側に位置して、前記膜−電極複合体の外周端部と嵌合又は遊嵌可能な第二段差面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を燃料側電極に直接供給する直接燃料供給型であって、液体燃料電池におけるスタックの各燃料電池セル間に形成される流路をシールするためのガスケットと、前記燃料電池セルの発電体における厚さ方向両側のガス拡散層(以下、GDLと略称する(GDL:Gas Diffusion Layer))が一体化されたガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載する燃料電池として、液体燃料を直接供給する直接液体燃料形燃料電池の開発が進められており、例えば、直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)などが知られている。そしてこの種の燃料電池の基本構造は、電解質膜(イオン交換膜)の両面に負極層(アノード)及び正極層(カソード)を設けた膜−電極複合体(以下、MEAと略称する(MEA:Membrane Electrode Assembly))を、カーボン、合成樹脂あるいは金属からなるセパレータで挟み込んでこれをひとつの発電単位(燃料電池セル)としている。そして、各燃料電池セルによる起電力は低いものであるが、多数の燃料電池セルを積層して電気的に直列に接続した燃料電池スタックとすることにより、必要な起電力が得られるようにしている。
【0003】
そしてこの種の燃料電池は、MEAのアノード側に供給される還元剤の燃料が還元されることによって電子が取り出され、電力を発生するものである。還元剤としては、メタノールなどのアルコール、ヒドラジンなどが用いられる。一方、MEAのカソード側に供給される酸化剤としては酸素や水などが用いられる。さらに、冷却が必要な場合は水や不凍液なども流通させる。そしてこれら複数種類の流体を燃料電池に供給するには、供給すべき空間からこれらの流体が散逸しないように、あるいは他の流体が混入したりすることがないように、これらの流体の流路を確実に密封する必要があり、このため、各燃料電池セルにはゴム状弾性を有する材料、特にゴム弾性体や熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂など、成形性の良い材料で成形されたガスケットが組み込まれている。
【0004】
ガスケットは、ゴム状弾性を有するその本体部分(以下、ガスケット本体という)が燃料電池セルの構成部品であるセパレータ、MEA、GDLなどに一体的に成形することにより、燃料電池スタック組み付けの際のハンドリング性を向上させることができる。通常、ガスケット本体がセパレータに一体化されたものである場合は、セパレータがカーボン、合成樹脂あるいは金属からなることから、比較的剛性が大きいためハンドリング性が良く、またセパレータに加工を施してガスケット装着溝を設けたり、セパレータの端部や、セパレータに開設されたマニホールド穴を位置決めの目印として利用して精度良く位置決めして積層することができる。
【0005】
一方、ガスケット本体がGDLに一体化されたものである場合は、通常、ガスケット本体はGDLの最外周に途切れないように全周連続して賦形されている。そして、MEAにおけるアノード側とカソード側にそれぞれ独立したGDLを配置する場合は、ガスケット本体も各GDLにそれぞれ別々に成形される。したがって、積層時には、アノード及びカソードを担持したMEAを挟んでアノード側GDL及びカソード側GDLを配置することによって燃料電池セルとする。しかしながら、GDLはカーボンクロスやカーボンフェルト、メタルファイバークロスなどの多孔質材料からなるものであって、ハンドリング時に変形しやすく、さらに板状又はシート状からなることからGDL自体に位置決めとして利用できる目印が無いため、セパレータに一体的に成形したもののように精度良くアノード側とカソード側にそれぞれ独立したGDLに一体化されたガスケット本体同士(ガスケット間)を位置決めすることが難しく、積層時に各ガスケット間あるいはガスケットとMEAの間などに位置ずれを生じる懸念があった。
【0006】
そして積層された各ガスケット間に位置ずれがある場合、面圧低下やモーメントの発生によりガスケットの倒れが生じて積層によるガスケット本体の圧縮反力が不安定になったり、密封性が不安定になったりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−42838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、液体燃料を燃料側電極に直接供給する直接燃料供給型であって、ガスケット本体をガス拡散層に一体化した構造を備える液体燃料電池用ガスケットにおいて、積層の際に各ガスケット間の位置ずれが生じるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る燃料電池用ガスケットは、液体燃料電池に用いられるガスケットであって、燃料電池セルにおける膜−電極複合体のアノード側及びカソード側のそれぞれに配置されるガス拡散層に、これらのガス拡散層の外周を包囲するように板状基部に隆起形状をなすシールリップが形成されたガスケット本体が一体に成形されており、アノード側及びカソード側のうち一方の前記ガス拡散層に成形された前記ガスケット本体の板状基部に、他方の前記ガス拡散層に成形された前記ガスケット本体の板状基部の外周端部と嵌合又は遊嵌可能な段差面を形成したものである。
【0010】
このように構成すれば、アノード側及びカソード側のうち一方のガス拡散層に成形されたガスケット本体と、他方のガス拡散層に成形されたガスケット本体は、その一方の段差面と他方の板状基部の外周端部が嵌合又は遊嵌された状態で、膜−電極複合体のアノード側及びカソード側に積層されることから、各ガスケットが互いに高精度に位置決めされる。
【0011】
請求項2の発明に係る燃料電池用ガスケットは、請求項1に記載の構成において、アノード側及びカソード側のうち一方の前記ガス拡散層に成形された前記ガスケット本体の板状基部に、前記段差面の内周側に位置して、前記膜−電極複合体の外周端部と嵌合又は遊嵌可能な第二段差面を形成したものである。
【0012】
このように構成すれば、各ガスケットが互いに高精度に位置決めされると共に、アノード側及びカソード側のうち一方のガスケット本体の板状基部に形成された第二段差面と膜−電極複合体の外周端部が嵌合又は遊嵌によって、膜−電極複合体も高精度に位置決めされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料電池用ガスケットによれば、積層時に各ガスケットが互いに高精度に位置決めされるため、位置ずれによって圧縮反力や密封面圧が不安定になるのを有効に防止して、密封の信頼性、ひいては燃料電池の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る燃料電池用ガスケットが適用される燃料電池の概略構成を示す説明図である。
図2】本発明に係る燃料電池用ガスケットが適用される燃料電池のセルを示す平面図である。
図3】本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい第一の実施の形態を、図2におけるA−A位置で切断して示す未積層状態の要部断面図である。
図4】本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい第一の実施の形態を、図2におけるA−A位置で切断して示す積層状態の要部断面図である。
図5】本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい第二の実施の形態を、図2におけるA−A位置で切断して示す未積層状態の要部断面図である。
図6】本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい第二の実施の形態を、図2におけるA−A位置で切断して示す積層状態の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1は、本発明に係る燃料電池用ガスケットが適用される燃料電池の概略構成を示すものであり、図2は、燃料電池におけるひとつの発電単位である燃料電池セルを示すものである。
【0016】
すなわちこの種の燃料電池は、電解質膜の一方の面に負極層(アノード)を設けると共に他方の面に正極層(カソード)を設けた膜−電極複合体(以下、MEAと略称する)1を、厚さ方向両側から、カーボンクロスやカーボンフェルト、メタルファイバークロスなどガスの流通を許容する無数の微細貫通空隙を有する多孔質材料からなる板状又はシート状のガス拡散層(以下、GDLと略称する)2,3を介して、カーボン、合成樹脂あるいは金属からなるセパレータ4,5で挟み込み、これを発電の最小単位である燃料電池セル10として、この燃料電池セル10を複数組積層し、不図示のボルト、ナット等の締め付け機構により一体化して燃料電池スタックが構成されるものである。
【0017】
一方のGDL2(以下、第一GDL2という)の外周側には、ゴム状弾性材料(ゴム弾性体又はゴム状弾性を有する熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂など)からなる第一ガスケット本体6が一体に成形されており、他方のGDL3(以下、第二GDL3という)の外周側には、第一ガスケット本体6と同じゴム状弾性材料からなる第二ガスケット本体7が一体に成形されている。
【0018】
なお、第一GDL2は、MEA1のアノード側及びカソード側のうち一方に積層配置されるものであり、第二GDL3は、MEA1のアノード側及びカソード側のうち他方に積層配置されるものである。また、第一ガスケット本体6及び第二ガスケット本体7は、請求項1に記載されたガスケット本体に相当するものである。
【0019】
セパレータ4,5と、第一GDL2に一体成形された第一ガスケット本体6には、それぞれ複数のマニホールド孔4a,5a,6aが開設されており、積層状態では、セパレータ4,5のマニホールド孔4a,5aと第一ガスケット本体6のマニホールド孔6aが互いに重合(連通)されることによって還元剤(体燃料)、酸化剤や冷媒の供給通路及び排出通路(マニホールド)10aが形成されるようになっている。
【0020】
そしてこの燃料電池は、各燃料電池セル10において、マニホールド孔を流通する還元剤が、第一GDL2及び第二GDL3のうちの一方のGDLを介してMEA1のアノード側に供給され、他のマニホールド孔を流通する酸化剤が、第一GDL2及び第二GDL3のうちの他方のGDLを介してMEA1のカソード側に供給され、還元剤の水素原子と酸化剤の酸素から水を生成する反応によって電力を発生するものである。そして、各燃料電池セル1による起電力は低いものであるが、多数の燃料電池セル1を積層して電気的に直列に接続した燃料電池スタックとすることによって、必要な高電圧を得るものである。
【0021】
図3及び図4は、本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい第一の実施の形態として、MEA1と、第一GDL2及びこれと一体の第一ガスケット本体6と、第二GDL3及びこれと一体の第二ガスケット本体7を図2のA−A位置で切断して示すものである。
【0022】
図3に示すように、第一ガスケット本体6は、そのゴム状弾性材料の一部が第一GDL2の端縁部に含浸して硬化することによって、この第一GDL2の外周を包囲するように一体に成形されている。なお、参照符号21は、第一GDL2に第一ガスケット本体6のゴム状弾性材料が含浸された領域(含浸部)を示す。
【0023】
第一ガスケット本体6には、その板状基部61におけるMEA1との積層面に対して厚さ方向反対側を向いた面(図3における下面)に、第一GDL2の外周(含浸部21の外周)を取り囲むように延びる断面山形の隆起形状をなすシールリップ62と、マニホールド孔6aの外周を取り囲むように延びる断面山形の隆起形状をなすシールリップ63が形成され、MEA1との積層面と同じ側の面(図3における上面)に、シールリップ63と背中合わせでマニホールド孔6aの外周を取り囲むように延びる断面山形の隆起形状をなすシールリップ64と、MEA1の外周を取り囲むように延びる段差面65が形成されている。この段差面65は、シールリップ64よりも低い突条66の内周面をなすように形成されている。
【0024】
また、第一ガスケット本体6の板状基部61は、段差面65を境にして外周側が内周側より相対的に厚肉となっており、段差面65より内周側では、第一GDL2と略同等の厚さに形成されている。
【0025】
一方、第二ガスケット本体7は、そのゴム状弾性材料の一部が第二GDL3の端縁部に含浸して硬化することによって、この第二GDL3の外周を包囲するように一体に成形されている。なお、参照符号31は、第一GDL2に第二ガスケット本体7のゴム状弾性材料が含浸された領域(含浸部)を示す。
【0026】
第二ガスケット本体7には、その板状基部71におけるMEA1との積層面に対して厚さ方向反対側を向いた面(図3における上面)に、第二GDL3の外周(含浸部31の外周)を取り囲むように延びる断面山形の隆起形状をなすシールリップ72が形成されている。
【0027】
また、第二ガスケット本体7の板状基部71は、第二GDL3と略同等の厚さに形成されており、その外周端部71aの平面形状の大きさは、第一ガスケット本体6の段差面65の平面形状よりも僅かに小さく形成されており、したがってこの第二ガスケット本体7は、図4に示すように、前記段差面65の内周に嵌め込み可能となっている。また、前記段差面65の高さは、MEA1と第二ガスケット本体7の板状基部の厚さの和と同等又はそれ以上となっている。
【0028】
図4に示す積層状態では、MEA1を、その厚さ方向両側から第一GDL2及びこれと一体の第一ガスケット本体6と、第二GDL3及びこれと一体の第二ガスケット本体7を介してセパレータ4,5で挟持することによって燃料電池セル10が構成される。このとき、MEA1の外周部は、その両側の第一ガスケット本体6及び第二ガスケット本体7によって密接状態で挟持され、第一ガスケット本体6に形成されたシールリップ62,63,64及び第二ガスケット本体7に形成されたシールリップ72は、適当に圧縮された状態でセパレータ4,5に密接され、これによって、MEA1と第一GDL2及び第二GDL3が積層された発電領域の周囲が密封されると共に、セパレータ4,5のマニホールド孔4a,5aと前記発電領域との間の流路から還元剤又は酸化剤が漏れないように前記流路が密封される。
【0029】
以上のように構成された第一の実施の形態によれば、積層の際に、第一GDL2に一体成形された第一ガスケット本体6と、第二GDL3に一体成形された第二ガスケット本体7は、第一ガスケット本体6に形成された段差面65と第二ガスケット本体7の板状基部71の外周端部71aが互いに遊嵌されることから、互いに高精度に位置決めされる。
【0030】
したがって、積層過程で、剛性の低い第一GDL2に一体成形された第一ガスケット本体6と、剛性の低い第二GDL3に一体成形された第二ガスケット本体7を互いに位置決めする作業を容易に行うことができ、しかも第一ガスケット本体6に形成されたシールリップ62と第二ガスケット本体7に形成されたシールリップ72が同じ位置で圧縮されるので、積層によるシールリップ62,72の圧縮反力が不安定になったり、密封性が不安定になったりすることがない。
【0031】
次に図5及び図6は、本発明に係る燃料電池用ガスケットの好ましい第二の実施の形態として、MEA1と、第一GDL2及びこれと一体の第一ガスケット本体6と、第二GDL3及びこれと一体の第二ガスケット本体7を図2のA−A位置で切断して示すものである。
【0032】
この第二の実施の形態において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、第一GDL2に一体に成形された第一ガスケット本体6に、第二GDL3に一体に成形された第二ガスケット本体7の板状基部71の外周端部71aと遊嵌可能な段差面65の内周側に位置して、MEA1の外周端部1aと遊嵌可能な第二段差面67を形成した点にある。
【0033】
第二段差面67は、段差面65を形成している突条66よりも突出高さの低い第二突条68の内周面をなすように形成されている。また、第二ガスケット本体7の板状基部71の外周端部71aの近傍には、前記第二突条68と遊嵌可能な第三段差面71bが形成されている。その他の部分は、第一の実施の形態と同様に構成することができる。
【0034】
以上のように構成された第二の実施の形態によれば、第一の実施の形態と同様、積層の際に、第一GDL2に一体成形された第一ガスケット本体6と、第二GDL3に一体成形された第二ガスケット本体7は、第一ガスケット本体6に形成された段差面65と第二ガスケット本体7の板状基部71の外周端部71aが互いに遊嵌されることによって、互いに高精度に位置決めされる。
【0035】
加えて、第二ガスケット本体7の板状基部71は、積層時に第三段差面71bと第二突条68が互いに遊嵌されることによっても位置決めされ、しかも、MEA1もその外周端部1aが第二突条68による第二段差面67と遊嵌されることによって、MEA1とGDL(第一GDL2、第二GDL3)及びこれと一体のガスケット本体(第一ガスケット本体6、第二ガスケット本体7)が高精度に位置決めされる。
【0036】
したがって、積層過程でそれ自体に位置決めとして利用できる目印がないシート状のMEA1と、それ自体に位置決めとして利用できる目印がない板状又はシート状のGDL2に一体成形された第一ガスケット本体6と、それ自体に位置決めとして利用できる目印がない板状又はシート状のGDL3に一体成形された第二ガスケット本体7を互いに位置決めする作業を一層容易に行うことができ、しかも第一ガスケット本体6に形成されたシールリップ62と第二ガスケット本体7に形成されたシールリップ72が同じ位置で圧縮されるので、積層によるシールリップ62,72の圧縮反力が不安定になったり、密封性が不安定になったりすることがない。
【0037】
なお、上述した第一及び第二の実施の形態では、MEA1と第一GDL2及び第二GDL3が積層された発電領域の周囲を密封するシールリップ62,72と、マニホールド10aの周囲を密封するシールリップ63,64が互いに独立して形成されたものを示したが、発電領域の周囲を密封するシールリップが、一部のマニホールド10aを包囲するように延びるように形成されたものとしても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 MEA(膜−電極複合体)
2 第一GDL(ガス拡散層)
3 第二GDL(ガス拡散層)
4,5 セパレータ
6 第一ガスケット本体(ガスケット本体)
65 段差面
66 突条
67 第二段差面
68 第二突条
7 第二ガスケット本体(ガスケット本体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6