特許第6290612号(P6290612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290612
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B65D47/36 210
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-245456(P2013-245456)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101400(P2015-101400A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100189968
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 浩司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武尚
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3119234(JP,U)
【文献】 特開2012−246028(JP,A)
【文献】 特開平08−034463(JP,A)
【文献】 特開2013−230834(JP,A)
【文献】 実公昭47−007916(JP,Y1)
【文献】 実開昭54−106955(JP,U)
【文献】 特開平10−167308(JP,A)
【文献】 特開2008−087831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円状又は楕円状のスコアにより区画されると共に開封手段を有する開口予定部を備え、
該開口予定部は、その天面周縁部に該開封手段と連続する補強部を有しており、
該補強部は、該開封手段側の位置に切欠部又は間隙部を有していることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記切欠部は、前記補強部の内周側に形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記補強部は、環状であり、
前記切欠部は、円弧状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記補強部は、前記開封手段とは反対側の位置に切欠部を更に有し、
該切欠部は、該補強部の内周側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項5】
前記補強部は、前記開封手段とは反対側の位置に間隙部を更に有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の合成樹脂製キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製キャップに関し、より詳細には、開口予定部の開封性を改善した合成樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プルリング等の開封手段によって開封可能に形成され、スコアによって区画された開口予定部が形成された合成樹脂製キャップがある。この様な合成樹脂製キャップにおいては、開口予定部の形状を、容器の内容物の流通性を高めるために、開口面積の大きくすることが可能な略円形とすると、開封時に開口予定部を除去する際に要求される力が大きくなる傾向がある。
【0003】
そのため、力の弱い子供や高齢者等にとっては、開封が困難となる場合があった。そこで、従来の合成樹脂製キャップでは、開口予定部の周縁に環状の変形規制部を設け、開口予定部の変形を規制し、スコアに効果的に応力集中を発生させることで開口予定部を除去する際に要求される力を小さくし、内容物の流通性を低下させることなく、開封性を向上した合成樹脂製キャップが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3119234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、今日の高齢化社会においては、開口予定部を除去する際に要求される力の更なる低減が求められている。開口予定部そのものを無くしてしまうことが最も理想的であるが、開口予定部は、容器の密閉性を保持するばかりでなく、合成樹脂製キャップを容器口部に装着する際に内容物が合成樹脂製キャップ内に飛散することを防止する役割を担うものであるため、開口予定部そのものを無くすことは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、開口予定部を保持したままより開封性を改善した合成樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円状又は楕円状のスコアにより区画されると共に開封手段を有する開口予定部を備え、該開口予定部は、その天面周縁部に該開封手段と連続する補強部を有しており、該補強部は、該開封手段側の位置に切欠部又は間隙部を有していることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0008】
本発明の前記切欠部は、前記補強部の内周側に形成されていてもよい。又、本発明は、前記補強部は、環状とし、前記切欠部は、円弧状としてもよい。又、本発明の前記補強部は、前記開封手段とは反対側の位置に切欠部を更に有するものとし、該切欠部は、該補強部の内周側に形成する様にしてもよい。そして、本発明の前記補強部は、前記開封手段とは反対側の位置に間隙部を更に有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、開口予定部に、その開封手段と連続する補強部を設け、該補強部の該開封手段側の位置に切欠部又は間隙部を設けたので、最も力を必要とするスコアの切り裂き始端を破断する際の力をより低減することが可能である。又、更に該補強部の該開封手段とは逆側の位置に切欠部又は間隙部を設けることでで、次に力を必要とするスコアの切り裂き終端を破断する際に必要な力をより低減することができる。従って、本発明は、開口予定部を保持したままより開封性を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態及び実施例1を示す平面図である。
図2図1のII−II線における断面図である。
図3】本発明の実施例2を示す平面図である。
図4図3のIV−IV線における断面図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す平面図である。
図6図5のVI−VI線における断面図である。
図7】本発明の第3実施形態を示す平面図である。
図8図7のVIII−VIII線における断面図である。
図9】本発明の比較例を示す平面図である。
図10図9のX−X線における断面図である。
図11】実施例及び比較例のストロークに対する開封強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者は、開封の際に開口予定部の最初に引っ張り挙げられる部分をより小さくし、スコアの変形を助長することで、従来の開口予定部の変形規制と同様に開封強度が低減できることを発見し、本発明に至った。
【0012】
本発明の第1実施形態について図1及び図2に基づき説明する。合成樹脂製キャップ1(以下、キャップ1ともいう)は、中栓2と、中栓2にヒンジ部3を介して結合された上蓋4とを備える。
【0013】
上蓋4は、天壁5と、天壁5の外周縁より垂下する周壁6とを有する。天壁5の内面には、上蓋4を閉蓋した際に、中栓2の注出筒12の内方に当接する様に形成されたインナーリング7が垂設されている。周壁6の一端側はヒンジ部3に連結されており、その反対側の他端にはその外周面に鍔部8が形成されると共にその内周面に環状突起9が形成されている。
【0014】
中栓2は、頂壁10と、頂壁10の外周縁により垂下する外筒11とを有する。頂壁10の内周縁は注出筒12と連続している。又、頂壁10の天面からは、係合筒13が立設されている。そして、中栓2の注出筒12よりも内方には、環状のスコア14によって区画された開口予定部15が設けられている。係合筒13は、上蓋4が閉蓋された際に環状突起9と係合し、当該閉蓋状態を保持するために形成される。本実施形態においては、スコア14は略円状又は略楕円状に形成される。
【0015】
注出筒12は、キャップ1が装着される容器(図示せず)の内容物を注出するための流路を構成するものであり、その略中央部で、頂壁10と連続している。又、注出筒12の下端外周面は、外筒11及び頂壁10と共に前記容器が嵌着される嵌着溝を形成している。
【0016】
開口予定部15には、そのヒンジ部3側に開封手段の一例のプルトップ16が設けられており、又、その周縁部15aの天面には、周縁部15aに沿って環状の補強部17が凸設されている。つまり、開口予定部15の周縁部15aは、他の部分より肉厚に形成されていることとなる。プルトップ16は、指で引掛け可能に形成されたリング部16aと、リング部16aと開口予定部15とを連結する柱部16bとからなる。尚、開口予定部15は、本実施形態の様に平板状でもよいが、擂鉢状等の他の形状も採用可能である。
【0017】
補強部17は、プルトップ16の柱部16bと連続する様に設けられている。又、補強部17の柱部16b側には、その内周側に第1切欠部18が形成されている。そして、補強部17の柱部16bとは反対側には、その内周側に第2切欠部19が形成されている。即ち、補強部17は、スコア14の切り裂き始端14a側及び切り裂き終端14b側が径方向に狭く形成されていることとなる。本実施形態では、第1切欠部18及び第2切欠部19は、角部18a,19aが形成される様に扇状に形成され、それらは、柱部10と連続しているか否かを除いて略同形状に形成されている。
【実施例】
【0018】
次に本発明の実施例について説明する。尚、下記で説明している構成以外の構成は、上記実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0019】
(1)実施例1(図1及び図2を参照)は、補強部17のプルリング17の柱部16b側とその反対側との各々に、周長の約15%の長さの第1切欠部18A及び第2切欠部19Aを設けたものである。
【0020】
(2)実施例2(図3及び図4を参照)は、補強部17のプルリング17の柱部16b側とその反対側との各々に、周長の約6%の長さの第1切欠部18B及び第2切欠部19Bを設けたものである。
【0021】
(3)比較例(図9及び図10を参照)は、開口予定部15の周縁部15aに環状の変形規制部22を設けたものである。
【0022】
図11は、実施例1及び2並びに比較例について、オートグラフを用いて開封試験を行った結果である。横軸はオートグラフのストロークを、縦軸はその際の荷重、即ち、開封強度の変化を示している。一次ピークFPE1、FPE2及びFPは、実施例1及び2並びに比較例のスコア14の切り裂き始端14aが破断する際の開封強度を示している。二次ピークSPE1、SPE2及びSPは、実施例1及び2並びに比較例のスコア14の切り裂き終端14bが破断し、開口予定部15が中栓2から完全に分離する際の開封強度を示している。
【0023】
開封試験の結果は、一次ピークは、FPE1≒FPE2<FPであった。この結果は、実施例1及び2の何れもが、比較例の様な変形規制部22を設けたものよりも開封強度を低減することが可能であることを示している。即ち、スコア14の切り裂き始端14aを開封強度の低減には、スコア14の切り裂き始端14a側において、開口予定部15の周縁部15aの強度を他の周縁部15aより小さいものとすることが有用であることを示している。又、少なくとも開口予定部15の周長の約6乃至15%の長さの切欠部18を設けることが特に有用である。
【0024】
これは、スコア14の切り裂き始端14a側において、開口予定部15の周縁部15aの強度を他の周縁部15aより小さいものとしたことによって、プルトップ16を引っ張り上げた際に最初に引っ張り挙げられる部分を小さくすることが可能となる。それによって、スコア14の変形を助長され、応力集中点が形成されたためであると推定される。
【0025】
又、2次ピークは、SPE1<SPE2<SPであった。この結果は、スコア14の切り裂き終端14bの開封強度の低減には、スコア14の切り裂き終端14b側において、開口予定部15の周縁部15aの強度を他の周縁部15aより小さいものとすることが有用であることを示している。特に、切欠部19を少なくとも開口予定部15の周長の約6乃至15%の長さで形成することが特に有用である。
【0026】
これは、スコア14の切り裂き終端14b側において、開口予定部15の周縁部15aの強度を他の周縁部15aより小さいものとすることによって、スコア14の切り裂き終端14bが破断する際に、補強部17が抵抗となることを軽減又は防止することができるためであると推定される。
【0027】
故に、補強部17のプルトップ16側(切り裂き始端14a側)に切欠部18又は間隙部20を形成することで、最も力を必要とする切り裂き始端14aの破断の際の開封強度を低減することが可能である。又、更にプルトップ16とは反対側(切り裂き終端14b側)に切欠部19又は間隙部21を形成することで、次に力を必要とする切り裂き終端14bの破断の際の開封強度を低減することが可能である。
【0028】
本発明を上記実施形態及び実施例により説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明の第2実施形態(図5及び6を参照)の様に第1切欠部18及び第2切欠部19の替りに第1間隙部20及び第2間隙部21を設け、スコア14の切り裂き始端14a側及びスコア14の切り裂き終端14b側において、開口予定部15の周縁部15aの強度を他の周縁部15aより小さいものとしてもよい。
【0029】
又、本発明の第3実施形態(図7及び図8を参照)の様に、第2切欠部19のみを間隙部21とすることも可能である。そして、上蓋2が螺合によって中栓3に取付けられるスクリューキャップにも適用可能である。更に、本発明は、頂壁の天面から注出筒が立設されている様な合成樹脂製キャップにも適用可能である。その際に、頂壁の底面より内筒(図示せず)を垂設してもよく、その場合、開口予定部を注出筒より内方の頂壁(図示せず)に設ける様にしてもよい。
【0030】
尚、上記実施形態及び実施例の構成は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、実施例1(第1実施形態)又は実施例2と実施例3(第3実施形態)と組み合わせて、第1切欠部18を第1間隙部20に置換したり、実施例2と実施例3とを組み合わせて切欠部の大きさをプルトップ16側とその反対側とを異なる大きさにしたりすることも可能である。又、実施例2の第2切欠部19Bを間隙部21とすることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 合成樹脂製キャップ 2 中栓 3 ヒンジ部
4 上蓋 5 天壁 6 周壁
7 インナーリング 8 鍔部 9 環状突起
10 頂壁 11 外筒 12 注出筒
13 係合筒 14 スコア 14a 切り裂き始端
14b 切り裂き終端 15 開口予定部 15a 周縁部
16 プルトップ 16a リング部 16b 柱部
17 補強部 17a 残余部 18 (第1)切欠部
18a 角部 19 第2切欠部 19a 角部
20 第1間隙部 21 (第2)間隙部 22 変形規制部
FP 一次ピーク SP 二次ピーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11