(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発電所用水や、半導体製造プロセスにおけるシリコンウエハの洗浄用水としてなど、多くの分野で、不純物が高度に除去された超純水が用いられている。超純水は、一般に、原水(河川水、地下水、工業用水など)を、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(サブシステム)で順次処理することにより製造されている。
【0003】
多くのサブシステムでは、被処理水(一次純水システムで製造された一次純水)に含まれる全有機炭素(TOC)を分解するために、被処理水に紫外線を照射する紫外線酸化装置が設けられている。紫外線酸化装置では、紫外線酸化処理の過程で微量の酸化性物質(特に過酸化水素)が生成されることが知られている。この酸化性物質は、例えば超純水をシリコンウエハの洗浄用水として使用する場合、シリコンウエハの表面に自然酸化膜を形成する要因となってしまう。そこで、被処理水に含まれる酸化性物質、特に過酸化水素を分解することが求められており、その方法として、白金族金属が担体に担持された白金族金属担持触媒を利用した方法が提案されている。
【0004】
この白金族金属担持触媒は、過酸化水素を分解除去できるだけでなく(2H
2O
2→2H
2O+O
2)、水素共存下で酸素と反応することで、被処理水に含まれる酸素も除去することができる(2H
2+O
2→2H
2O)。そのため、白金族金属担持触媒は、サブシステムにおいて脱酸素装置として利用することも提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
白金族金属担持触媒が過酸化水素を分解する際に酸素が発生するが、この酸素も、白金族金属担持触媒の存在下で水素と反応することで除去することができる。したがって、白金族金属担持触媒が被処理水中の酸素や過酸化水素を除去する際には、水素が消費されることになる。そのため、特許文献1〜3に記載の脱酸素装置では、被処理水に対して水素を追加的に添加することが行われている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の超純水製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0017】
超純水製造装置1は、一次純水タンク2と、ポンプ3と、熱交換器4と、紫外線酸化装置5と、酸化性物質除去装置10と、非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)6と、限外ろ過膜装置7とを有している。これらは、二次純水システム(サブシステム)を構成し、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水を順次処理して超純水を製造し、その超純水をユースポイント8に供給するものである。
【0018】
一次純水タンク2に貯留された被処理水(一次純水)は、ポンプ3により送出され、熱交換器4に供給される。熱交換器4を通過して温度調節された被処理水は、紫外線酸化装置5に供給される。紫外線酸化装置5では、被処理水に紫外線が照射され、被処理水中の全有機炭素(TOC)が分解される。その後、被処理水は、酸化性物質除去装置10に供給され、そこで、被処理水に含まれる酸化性物質が除去される。ここでいう「酸化性物質」とは、酸素の他、過酸化水素を含むことに留意されたい。酸化性物質が除去された被処理水は、カートリッジポリッシャー6において、イオン交換処理により金属などが除去され、さらに、限外ろ過膜装置7において微細な不純物が除去される。こうして得られた超純水は、一部がユースポイント8に供給され、残りが一次純水タンク2に還流するようになっている。一次純水タンク2には、必要に応じて、一次純水システム(図示せず)から一次純水が供給されるようになっている。
【0019】
一次純水タンク2、ポンプ3、熱交換器4、紫外線酸化装置5、カートリッジポリッシャー6、および限外ろ過膜装置7としては、超純水製造装置のサブシステムにおいて一般的に用いられているものを使用することができる。そのため、これらの詳細な構成の説明は省略し、以下では、酸化性物質除去装置10の詳細な構成について説明する。
【0020】
酸化性物質除去装置10は、流入する被処理水(紫外線酸化装置5によりTOCが分解除去された一次純水)に水素を添加する水素添加装置11と、水素添加装置11により水素が添加された被処理水が流入して通過するようにされた触媒反応装置12と、を有している。
【0021】
水素添加装置11としては、被処理水に水素を添加できるものであればよく、例えば、ガス溶解膜を用いたガス溶解方式を利用したものや、電解セルを用いた直接電解方式を利用したものを用いことができる。本実施形態においては、後述するように、被処理水への水素の添加を応答性良く正確に行うことができるのが好ましい。そのため、電極間に印加する電圧を変化させることで水素添加量を迅速に調整可能な直接電解方式を用いることが好ましい。
【0022】
触媒反応装置12は、白金族金属担持触媒を備えている。白金族金属担持触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、白金族金属が担体に担持されたものであり、過酸化水素を含有する被処理水と接触することで、過酸化水素を水と酸素とに分解する機能を有している(2H
2O
2→2H
2O+O
2)。それとともに、白金族金属担持触媒は、水素添加装置11により被処理水に添加された水素、すなわち被処理水に溶解した水素(溶存水素)と、被処理水に溶解した酸素(溶存酸素)とを反応させて、水を生成する機能を有している(2H
2+O
2→2H
2O)。このとき白金族金属担持触媒が除去する溶存酸素は、触媒反応装置12に供給される被処理水にもともと溶解していた酸素に由来する溶存酸素と、上記分解により生じた酸素とに由来する溶存酸素である。以下、「被処理水中の溶存酸素」という場合、上記2種類の溶存酸素の少なくとも一方を含むものとする。これにより、触媒反応装置12は、水素を含有する被処理水を白金族金属担持触媒と接触させることで、被処理水中の酸化性物質を除去することができる。こうして、触媒反応装置12により酸化性物質が除去された被処理水は、カートリッジポリッシャー6に流入するようになっている。触媒反応装置12の形態としては、例えば、白金族金属担持触媒を層状に充填した触媒充填塔が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
白金族金属担持触媒の担体としては、アニオン交換体またはアニオン交換樹脂を用いることができる。触媒の調整および反応性の観点からは、アニオン交換体を用いることが好ましい。特に、アニオン交換体は、モノリス状有機多孔質であることがより好ましい。モノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いることで、2000〜20000h
−1の空間速度で被処理水を通水することができ、その結果、水処理性能を向上させることができる。また、担体としてモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた場合、白金族金属の担持量は、触媒1L当たり10〜30000mgであることが好ましい。これは、担持量が10mgより少ないと、触媒と酸化性物質との接触(衝突)が十分に行われず、期待したほどの触媒反応効果を得ることができなくなり、担持量が30000mgよりも多いと、白金族金属は高価であるため、装置コストの上昇を招くことになるためである。さらに、30000mgを超える担持量は、期待した触媒反応効果を得るためには十分な量であり、これ以上担持量を増やしたとしても、触媒反応の効率化や処理性能の向上といった効果は期待できない。それだけでなく、担持量が過剰であると、処理水への白金族金属の溶出量が増加傾向を示すことにもなる。なお、高い触媒効果が得られることから、モノリス状有機多孔質アニオン交換体は、OH形であることが好ましい。
【0024】
触媒反応装置12では、上述のように、水素添加装置11で被処理水に添加された水素(溶存水素)と被処理水中の溶存酸素とが反応して水が生成することで、被処理水中の酸化性物質を除去することができる。超純水製造装置1では、処理水(超純水)に溶解する酸素の量をできるだけ低減することが強く求められている。したがって、水素添加装置11で添加される水素の量(水素添加量)は、被処理水中の溶存酸素と反応して水を生成させる理論値以上であることが好ましい。しかしながら、その量が過剰であると、製造される超純水に多量の溶存水素が含まれてしまい、水質の観点からは好ましくない。
【0025】
このため、本実施形態の酸化性物質除去装置10は、水素添加装置11の水素添加量を調整する制御部(制御手段)13を有している。制御部13は、触媒反応装置12を通過途中または通過後の被処理水の溶存水素濃度に基づいて、水素添加装置11の水素添加量を調整する。具体的には、制御部13は、上記溶存水素濃度が所定の濃度範囲に収まるように、水素添加装置11の水素添加量を調整する。これにより、酸化性物質除去装置10から流出する被処理水の溶存水素を極力減らすことができ、溶存水素濃度が極低濃度の超純水を製造することができる。
【0026】
触媒反応装置12を通過途中の被処理水の溶存水素濃度は、触媒反応装置12から引き出されたサンプリングライン14aに設けられた溶存水素計(濃度測定手段)14bにより測定することができる。また、触媒反応装置12を通過後の被処理水の溶存水素濃度は、触媒反応装置12の下流側に接続された配管から分岐したサンプリングライン14cに設けられた溶存水素計(濃度測定手段)14dにより測定することができる。なお、超純水製造装置1では、上述したように、処理水の溶存酸素濃度が適切に管理されていることが好ましく、そのために、溶存酸素計が、例えばサンプリングライン14cに設けられていてもよい。
【0027】
水素添加量の調整に用いる被処理水の溶存水素濃度としては、触媒反応装置12を通過途中または通過後のいずれかのものであればよい。しかしながら、触媒反応装置12を通過後の被処理水の溶存水素濃度に基づいた水素添加量の調整は、処理水質を確認した上での調整となるため、例えば、原水の水質が急激に変化した場合など、調整に遅れが生じてしまい、処理水質が一時的に悪化してしまう虞がある。その一方で、触媒反応装置12を通過途中の被処理水の溶存水素濃度に基づいた調整では、以下に示すように、触媒反応装置12内部の触媒の反応状態を把握しながら、余裕を持って水素添加量の調整を行うことができ、良好な処理水質を安定して得ることができる。したがって、触媒反応装置12を通過途中の被処理水の溶存水素濃度に基づいて、水素添加装置11の水素添加量を調整するようになっていることが好ましい。
【0028】
ここで、触媒反応装置12を通過途中の被処理水の溶存水素濃度に基づいた水素添加量の調整について説明する。以下、「中間溶存水素濃度」および「出口溶存水素濃度」とは、それぞれ触媒反応装置12を通過途中および通過後の被処理水の溶存水素濃度を意味する。また、「入口溶存酸素濃度」および「出口溶存酸素濃度」とは、それぞれ触媒反応装置12を通過前および通過後の被処理水の溶存酸素濃度を意味する。
【0029】
触媒反応装置12では、白金族金属担持触媒によって水素と酸素との反応(2H
2+O
2→2H
2O)が生じている。このような触媒の反応速度が被処理水の通水速度に対して十分に速い場合、水素と酸素とは化学量論的に反応すると考えられる。これにより、中間溶存水素濃度から装置内部の触媒の反応状態を把握することができる。
【0030】
例えば、中間溶存水素濃度がある程度高くなっている場合、2つの状態が考えられる。1つは、サンプリングライン14aの位置において被処理水中の溶存酸素が十分に低減されている状態、すなわち、サンプリングライン14aの位置よりも上流側の触媒によって被処理水中の溶存酸素が溶存水素と十分に反応している状態である。この状態では、水素添加量は十分であり、そのため、中間溶存水素濃度がどのような濃度範囲にあるかにかかわらず、出口溶存酸素濃度を所望に低下させることができる。
【0031】
ところで、白金族金属担持触媒は溶存水素を吸着(吸蔵)することができる。そのため、反応の初期には、溶存水素は触媒反応装置12の出口に向かって減少し、出口溶存水素濃度は中間溶存水素濃度よりも低下することになる。しかしながら、反応が進行して吸蔵量が増加し、その結果、飽和平衡に達すると、理論上、出口溶存水素濃度は中間溶存水素濃度と同じになる。したがって、上述した状態では、中間溶存水素濃度が高くなっていると、出口溶存水素濃度も高くなり、装置出口から所望の濃度以上の水素が流出する可能性がある。このため、中間溶存水素濃度と出口溶存水素濃度とがほぼ同じ場合には、中間溶存水素濃度はできるだけ低くなるように調整されることが好ましく、そのように目標濃度範囲を設定することで、出口溶存水素濃度も十分に低く抑えることができる。
【0032】
中間溶存水素濃度が有限である場合のもう1つの状態は、サンプリングライン14aの位置において被処理水中の溶存酸素と溶存水素との反応が終了しておらず、残存する溶存酸素がこの位置よりも下流側の触媒によって溶存水素と反応することになる状態である。この状態では、入口溶存酸素濃度や出口溶存酸素濃度を測定し、その測定結果を利用して中間溶存水素濃度の目標濃度範囲を設定し、水素添加装置11の水素添加量を調整することが好ましい。そのために、例えば、触媒反応装置12の上流側の配管やサンプリングライン14cに、溶存酸素計(他の濃度測定手段)が設けられていてもよい。
【0033】
入口溶存酸素濃度の測定結果を利用する場合、さまざまな入口溶存酸素濃度に対して、中間溶存水素濃度と出口溶存水素濃度および出口溶存酸素濃度との相関関係(例えば、相関関数など)をあらかじめ求めておく。そして、測定された入口溶存酸素濃度に対して、ある相関関係が選択され、その相関関係に基づいて、中間溶存水素濃度の適切な濃度範囲が設定される。この濃度範囲は、出口溶存水素濃度および出口溶存酸素濃度が所望の値(または範囲)となるような範囲であり、すなわち、触媒反応装置12の出口までに被処理水中の溶存酸素との反応が終了するのに十分な濃度に対応する範囲である。こうして設定された濃度範囲に中間溶存水素濃度が収まるように、水素添加量を調整することで、所望の処理水質を得ることができる。
【0034】
また、触媒反応装置12の出口までに反応が終了しておらず、出口溶存酸素濃度が高い場合、被処理水中の溶存酸素に対する水素添加量が不足していることを意味する。その場合、まず、中間溶存水素濃度の目標濃度範囲を高めに設定し、出口溶存酸素濃度が十分に低下するまで水素添加量を増加させる。そして、出口溶存酸素濃度が十分に低下したら、中間溶存水素濃度の目標濃度範囲は、上述したように、装置出口から所望の濃度以上の水素が流出しないような範囲に設定され、それに基づいて、水素添加量の調整が行われることになる。
【0035】
一方で、中間溶存水素濃度が十分に低い場合、例えば、ppbレベルである場合やサブppb以下である場合も、2つの状態が考えられる。1つは、被処理水中の溶存酸素に対して水素添加量が不足している状態であり、もう1つは、サンプリングライン14aの位置までの間に、添加された水素が過不足なく被処理水中の溶存酸素と反応して消費されている状態である。これら2つの状態は、出口溶存酸素濃度によって区別することができる。すなわち、出口溶存酸素濃度が高いままである場合、前者の状態であり、出口溶存酸素濃度が十分に低下している場合、後者の状態であると判断することができる。したがって、出口溶存酸素濃度の測定結果から、どちらの状態であるかを判断し、それに基づいて、中間溶存水素濃度の濃度範囲を設定することができる。例えば、出口溶存酸素濃度が十分に低下している場合、中間溶存水素濃度が十分に低くなるように(例えば、ppbレベルや、サブppb以下になるように)、水素添加装置11の水素添加量を調整することができる。これにより、出口溶存酸素濃度を十分に低下させるだけでなく、出口溶存水素濃度を十分に低くすることができ、より良好な処理水質を得ることができる。
【0036】
なお、水素添加装置11はON/OFF運転を行うようになっていてもよい。この場合、例えば、中間溶存水素濃度が所定値になったときに、水素添加量は少なくされるか、あるいは水素添加自体が停止される。このとき、中間溶存水素濃度は減少するが、これが十分に低くなるまで、水素添加量は少なくされたままか、水素添加自体が停止されたままであってもよい。さらには、中間溶存水素濃度が十分に低い状態をしばらく維持するように、水素添加量が少なくされたままか、水素添加自体が停止されたままであってもよい。なぜなら、中間溶存水素濃度が十分に低い状態であっても、それより下流側の触媒に溶存水素が吸着(吸蔵)している間(溶存酸素との反応で触媒上の溶存水素が消費されるまでの間)は、その触媒によって被処理水中の溶存酸素を除去できるためである。その後、中間溶存水素濃度が所定値になるように、水素添加量は多くされる。したがって、水素添加装置11がON/OFF運転を行う場合、出口溶存水素濃度が所望の値(または範囲)となるようなON/OFFの動作条件を確認しておくことが好ましい。
【0037】
中間溶存水素濃度および出口溶存水素濃度の具体的な設定範囲は、触媒反応装置12の形態、具体的には、白金族金属担持触媒の構成や形状、寸法などに応じて、実験などにより適宜決定することができる。また、中間溶存水素濃度測定用のサンプリングラインは、図示した実施形態では、触媒反応装置12の中流領域に設置されているが、設置箇所はこれに限定されるものではなく、触媒反応装置12の上流領域や下流領域であってもよい。さらに、複数箇所にサンプリングラインを設置することもできる。これにより、白金族金属担持触媒での反応の状態をより詳細に把握することができる。
【0038】
次に、本実施形態の超純水製造装置の変形例について説明する。
図2は、本実施形態の酸化性物質除去装置の一変形例を示す概略構成図であり、
図3は、他の変形例を示す概略構成図である。
【0039】
これらの変形例は、
図1に示す実施形態における酸化性物質除去装置の構成を変更した変形例であり、特に触媒反応装置の構成を変更した変形例である。以下、
図1に示す実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付して説明は省略し、
図1に示す実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0040】
酸化性物質除去装置20は、水素添加装置11により水素が添加された被処理水の一部が流入して通過するようにされた第1の触媒反応装置22aと、被処理水の他の一部が流入して通過するようにされた第2の触媒反応装置22bとを有している。第1の触媒反応装置22aは、
図1に示す実施形態の触媒反応装置12と同様の構成を有しており、第1の触媒反応装置22aを流出した被処理水がカートリッジポリッシャー6に流入するようになっている。一方、第2の触媒反応装置22bは、第1の触媒反応装置22aの白金族金属担持触媒と同一の白金族金属担持触媒を備えており、したがって、第1の触媒反応装置22aと同様の機能を有している。
【0041】
第2の触媒反応装置22bは、第1の触媒反応装置22aに流入する被処理水の線速度と同じ線速度で被処理水が流入するようにされていることが好ましい。例えば、通水条件が同等、すなわち、各触媒反応装置22a,22bに同じ線速度および空間速度で被処理水を通水した場合、それぞれの白金族金属担持触媒での反応の挙動は同等になる。そのため、第2の触媒反応装置22bでの溶存水素濃度を測定することは、第1の触媒反応装置22aでの溶存水素濃度を測定したのと同義になる。また、線速度を同じにして、第2の触媒反応装置22bでの空間速度を第1の触媒反応装置22aでの空間速度の2倍にした場合、第2の触媒反応装置22bを通過後の被処理水の水質(溶存水素濃度など)は、被処理水の流れ方向に対して第1の触媒反応装置22aの中間位置での水質と同等であると推定することができる。
【0042】
一方、第1の触媒反応装置22aと第2の触媒反応装置22bとの間で線速度が異なる場合、触媒上での溶存酸素と溶存水素との反応点に差が生じる。具体的には、第2の触媒反応装置22bでの線速度が第1の触媒反応装置22aでの線速度よりも大きい場合、第2の触媒反応装置22bの触媒上での反応帯(触媒反応が起きている領域)が、第1の触媒反応装置22aに比べて長くなる。このことは、見かけ上の反応効率が悪くなることを意味する。したがって、線速度を大きくすると、第2の触媒反応装置22bは、見かけ上悪い条件で運用管理されることになり、運転上は安全側になる。これにより、例えば、第2の触媒反応装置22bの出口から一定以上の溶存酸素や溶存水素が流出したとしても、実際に酸化性物質の除去を行う第1の触媒反応装置22aからは溶存酸素や溶存水素が流出しないか、あるいは流出したとしてもその程度は小さくなる。また、このことは、水素添加装置11による水素添加量の調整もより早い段階で実施できることにつながる。このような理由により、第2の触媒反応装置22bでの線速度は、第1の触媒反応装置22aでの線速度よりも大きくなっていてもよい。
【0043】
このように、本変形例では、第2の触媒反応装置22bを通過途中または通過後の被処理水の溶存水素濃度を測定することで、第1の触媒反応装置22aの白金族金属担持触媒での反応の状態を推定して、その状態を適切に制御することができる。したがって、
図1に示す実施形態と同様に、第2の触媒反応装置22bを通過途中または通過後の被処理水の溶存水素濃度が所定の濃度範囲に収まるように、水素添加装置11の水素添加量を調整することで、第1の触媒反応装置22aの白金族金属担持触媒での反応の状態を最適にすることができる。すなわち、所望の処理水質が得られるように、第1の触媒反応装置22aの白金族金属担持触媒での反応の状態を適切に制御することができる。
【0044】
なお、第1および第2の触媒反応装置22a,22bの線速度および空間速度の関係によっては、上述したように、第2の触媒反応装置22bを通過後の被処理水の溶存水素濃度だけで、第1の触媒反応装置22aの任意位置での水質を模擬的に確認することができる。このような場合には、第2の触媒反応装置22bに設けられたサンプリングライン上の溶存水素計14bを省略することもできる。一方で、
図1に示す実施形態と同様に、第2の触媒反応装置22bの複数箇所にサンプリングラインが設置されていてもよい。
【0045】
また、
図2に示す変形例では、第2の触媒反応装置22bは、1つの白金族金属担持触媒を備えたものであるが、
図3に示すように、直列に接続された2つの白金族金属担持触媒(カラム)を備えたものであってもよく、また、3つ以上のカラムを直列に接続したものであってもよい。このような場合、各カラムを通過後の被処理水の溶存水素濃度を測定することで、第1の触媒反応装置22aの内部での反応状態をより詳細に推定することができ、その結果、水素添加装置11の水素添加量の調整をきめ細かく行うことができる。例えば、
図3に示す例において、上流側のカラム出口(溶存水素計14b)が被処理水の流れ方向に対して第1の触媒反応装置22aの50%の位置に相当し、下流側のカラム出口(溶存水素計14d)が80%の位置に相当するとする。このとき、上流側のカラム出口での溶存水素濃度が数ppbとなり、下流側のカラム出口での溶存水素濃度が1ppb以下となるように、水素添加量の調整を行うことで、第1の触媒反応装置における溶存酸素と溶存水素との反応帯の先端が被処理水の流れ方向に対して50%から80%の位置にある状態を再現することができる。