(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、田植機の走行機体後部に植付部を配置し、走行機体の前後中途部に運転席やハンドルや操作レバー等からなる運転操作部を配置し、走行機体の左右一側の前部から後部に下がるように苗搬送台を配置していた。この苗搬送台は複数の転動ローラが備えられて予備苗(苗マットを収容した苗トレイ)を苗搬送台の前部に載せることで、予備苗の重力と、押す力で転動ローラが転動して後方へ搬送可能としていた。
【0003】
しかし、予備苗を補給する補助作業者の身長は一定ではなく、また、補給するときに補助作業者が位置する畦の高さも一定ではないので、補助者の身長や圃場によっては無理な姿勢で補給しなければならないときがある。そこで、苗搬送台の高さを変更可能に構成した技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記従来技術では、苗搬送台を支持する前支柱及び後支柱を伸縮可能な油圧シリンダで構成するとともに、傾斜センサとコントローラを備えて、任意の高さに調整可能に構成していた。このような構成であると、部品点数が多く、油圧配管や電気配線が必要となって複雑な構成となるばかりでなく、高価となってしまうのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な構成で苗搬送台を昇降できるようにするとともに、苗搬送台の後部の高さが大きく変化しない苗搬送台を備えた移植機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、走行部の後部に、植付部を備え、前記走行部の
前側部に、予備苗の載置プレートと、機体前方から後部の
前記植付部へ予備苗を搬送する苗搬送台を、上下に重複して配置する移植機において、前記走行部の前側部
のみより、前記予備苗の載置プレートを支持する支柱を立設し、前記載置プレートの支柱の上部に、内外の支持フレームを配置し、前記内外の支持フレームに、前リンクと後リンクより構成される4節リンクを立設し、前記4節リンクを介して前記苗搬送台を取り付け、前記4節リンクに、昇降操作手段を連結し、前記4節リンクを構成する前リンクの長さは、後リンクの長さよりも長く構成し、前記苗搬送台を上昇した位置及び下降した位置において、後下がり傾斜が維持されつつ前記苗搬送台の後部の昇降高さの変化を小さくし
、前記4節リンクの側方に、前記昇降操作手段を操作する操作レバーとレバーガイドを設け、前記4節リンクは、前記操作レバーの上端と下端の間の高さに配置されているものである。
【0008】
請求項2においては、前記4節リンクと
前記レバーガイドとの間に、前記苗搬送台を上昇方向に付勢する弾性部材を介装したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
簡単な構成で苗搬送台を昇降することが可能となり、手動操作で所望の高さに操作でき、補助者の身長や畦の高さ等にあわせて昇降操作手段を操作することで、苗搬送台への予備苗を容易に補給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、
図1より、移植機として田植機1の全体構成について説明する。なお、A方向を前方として、前後方向を規定して説明する。
【0012】
本実施形態における田植機1は、主に走行部10、運転操作部20、植付部30等を備えている。田植機1の走行部10は、主に車体フレーム11、前輪12、後輪13、エンジン14、ボンネット15、車体カバー16等を備えている。
【0013】
田植機1の骨格を成す車体フレーム11は、車体フレーム11両側の前部を前輪12・12、後部を後輪13・13によって支持されている。車体フレーム11の前部略中央には、エンジン14が搭載されており、該エンジン14を覆うようにボンネット15が配設されている。
【0014】
前記ボンネット15の両側及びその後方には、車体フレーム11の上面を覆うように車体カバー16が配置されている。車体カバー16は、前低後高の略階段状に形成され、車体カバー16の前部の左右両側を、作業者が田植機1に乗り込む際のステップとしている。
【0015】
田植機1の運転、及び各種装置の操作を行う運転操作部20は、主に、ダッシュボード21、操向ハンドル22、運転席23等を備えている。前記ボンネット15の後部には、田植機1を操作するレバーやスイッチ等の操作装置を備えるダッシュボード21が配置されている。また、田植機1を操向するための操向ハンドル22は、前記ダッシュボード21の上方に突出するよう配設されている。
【0016】
操向ハンドル22の後方、車体フレーム11の前後略中央上部には、作業者が着座するための運転席23が配置され、その後部に施肥機24が配置されている。そして、走行部10の後方には、昇降リンク機構40を介して植付部30が昇降自在に連結されている。
【0017】
植付部30は、圃場に苗を植え付けるものであり、主に苗載台31、植付フレーム32、フロート33、ロータリケース34、植付爪35等を備えている。
【0018】
昇降リンク機構40の後端に左右揺動自在に植付フレーム32が取り付けられ、植付フレーム32の下方にリンクを介してフロート33が取り付けられ、植付フレーム32から後方に伝動ケースが延設され、伝動ケースの後端にロータリケース34が回転可能に支持され、ロータリケース34の両端に植付爪35・35が揺動可能に取り付けられる。植付フレーム32の後部上には、苗台レールを介して、苗載台31が左右往復摺動可能に載置され、該苗載台31は前高後低に傾斜するように配設される。
【0019】
このようにして、田植機1は、前進走行とともに苗載台31を横送り機構により左右に往復運動(摺動)させ、この往復運動に同期させて、ロータリケース34と植付爪35を駆動して、各条に一株分の苗を掻き取りながら、連続的に植付け作業を行う。
【0020】
苗の植付作業が進むにつれて、苗載台31上の苗は圃場へと植付けられ減少する。続けて植付作業を行うためには、苗載台31へと苗を補充しなくてはならない。苗載台31上の苗が残り少なくなると(所定量以上減少すると)、予備苗載台上の苗を補充(苗継ぎ)する。または、畦際に田植機1が到達した時に、畦際より補助作業者が田植機1上の作業者に予備苗5を渡して補充する。本実施例では、苗マットを収容した苗箱(以下予備苗5)を予備苗載台及び苗搬送台60上に載置している。
【0021】
田植機1の前部のダッシュボード21右側には、右側の予備苗載台(図示せず)が設置され、ダッシュボード21の左側に苗搬送台60が配置される。ただし、苗搬送台60を右側または左右両側に配置する構成であってもよい。
【0022】
苗搬送台60を取り付ける支持部材50について説明する。
図2に示すように、支持部材50は、車体フレーム11から側方に延出する前後の支持ブラケット51・51、支持ブラケット51の外側から立設される前支柱52と後支柱53と、前支柱52と後支柱53から側方に分岐して突設される前補助支柱54と後補助支柱55とからなる。つまり、前支柱52と後支柱53はパイプ状の鋼管で構成されて、支持ブラケット51の側端より鉛直方向に立設される。前支柱52と後支柱53の下よりの上下中途部から、正面視略L字状にパイプを折り曲げた前補助支柱54と後補助支柱55が側方に突出され、前支柱52と後支柱53の上端は連結プレート57により連結され、前補助支柱54と後補助支柱55の上端は外支持フレーム72により連結される。ただし、前補助支柱54と後補助支柱55と外支持フレーム72は、側面視逆U字状に一体的にパイプを折り曲げ形成して構成することもできる。この前支柱52と後支柱53と前補助支柱54と後補助支柱55とにより囲まれた空間内の上下中途部に、載置プレート56が略水平に固定されて予備苗5を載置できるようにしている。
【0023】
支持部材50上に昇降機構70を介して苗搬送台60が取り付けられる。昇降機構70は左右一対の4節リンクからなり、前支柱52と後支柱53の上端に前後略水平方向に横設される内支持フレーム71と、前補助支柱54と後補助支柱55の上端に前後水平方向に横設される外支持フレーム72と、内支持フレーム71の前部に下端が軸支される内前リンク73と、内支持フレーム71の後部に下端が軸支される内後リンク74と、外支持フレーム72前部に下端が軸支される外前リンク75と、外支持フレーム72の後部に下端が軸支される外後リンク76と、内前リンク73と内後リンク74と外前リンク75と外後リンク76の上部を枢支軸で連結し苗搬送台60を取り付ける上フレーム77と、後述するレバーガイド82より突出したピンと内前リンク73に設けたストッパ84との間に介装され上方に回動するように付勢するバネで構成される弾性部材78と、内後リンク74の下部を支持する回動軸79に連結される昇降操作手段80からなる。ただし、4節リンクは本実施形態では左右一対設けているが、剛性の高いリンクを用いることで前後二本のリンクで構成することも可能であり、また三組以上で構成することも可能であり、限定するものではない。
【0024】
図5に示すように、内前リンク73と外前リンク75の長さL1(前上下の節間距離)は同じ長さに構成され、内後リンク74と外後リンク76の長さL2(後上下の節間距離)も同じ長さに構成され、内前リンク73と外前リンク75の長さL1は、内後リンク74と外後リンク76の長さL2より長く(L1>L2)構成している。こうして、
図1に示すように、苗搬送台60を下げた状態では、苗搬送台60の前端が後端よりも少し上がった状態となっており、予備苗5が苗搬送台60上で後方へ流れるようになっている。この苗搬送台60を最下げ位置にすると、その前端位置は最上げ位置よりも前方に移動する。例えば、苗を補給する補助者と田植機1(苗搬送台60)との間の距離が長いときには、苗搬送台60を最下げ位置にすることで、距離が縮まり補給しやすくなる。また、苗搬送台60を高い位置に上昇させた状態では(
図1二点鎖線)、前後のリンクの長さ違いにより、苗搬送台60の前部の上昇長さは後部の上昇長さよりも長くなり、植付部30の苗載台31の上端に対して苗搬送台60後部の上下変化が小さくなるようにしている。こうして、苗搬送台60の後端から苗載台31上へ苗マットを補充するときに上下変化が小さく、作業者の作業負荷を軽減できる。
【0025】
前記弾性部材78はバネで構成しているが限定するものではなく、
図9に示すように、ガスダンパ等で構成してもよい。また、弾性部材78の取付位置も限定するものではなく、内前リンク73と内支持フレーム71との間や、外前リンク75と外支持フレーム72の間や
図9に示すように、内後リンク74と内支持フレーム71との間等であってもよく、操作力を低減できる構成であればよい。
【0026】
昇降操作手段80は、
図7に示すように、操作レバー81とレバーガイド82からなり、レバーガイド82は内支持フレーム71の内側面に固定され、前後方向に長孔82aを開口して操作レバー81を挿入して前後摺動自在にガイドし、該長孔82aに所定間隔をあけて凹部82c・82c・・・を設けて操作レバー81を係止可能としている。ただし、凹部82cの数は限定するものではない。操作レバー81は下端が前記回動軸79に固定され、上下中途部がレバーガイド82の長孔82aに挿入されてガイドされる。回動軸79は内支持フレーム71に回動自在に支持され、右端が操作レバー81の下端に固定され、左端が内後リンク74の下端に固定される。ただし、操作レバー81の下端は左右回動可能として、凹部82c側へ回動するようにバネ等で付勢されている。また、操作レバー81の一端に連結される回動軸79は4節リンクの4つの支持軸のうち何れか一つで構成することができる。
【0027】
また、昇降操作手段80には、4節リンクが所定範囲以上回転しないようにストッパ84が設けられている。ストッパ84は内前リンク73と外前リンク75の長手方向中途部からピンを内支持フレーム71及び外支持フレーム72側に突設し、下方への回動を規制している。
【0028】
こうして、昇降操作手段80は、操作レバー81を下降回動した状態では、苗搬送台60は下降されて、内前リンク73と外前リンク75のストッパ84が内支持フレーム71と外支持フレーム72に当接し、レバーガイド82によっても規制されている。この状態から、操作レバー81を上昇回動すると、回動軸79を介して内後リンク74が上昇回動され、内前リンク73と内後リンク74と外前リンク75と外後リンク76は上フレーム77や枢支軸を介して互いに連結されているので、上昇回動される。このとき弾性部材78により補助力が加えられ、軽い力で苗搬送台60を前が大きく後が小さく上昇させることができ、所望の高さで、操作レバー81を長孔82aの凹部82cに係止させることで、その高さを保持することができる。
【0029】
また、苗搬送台60を下降させるときには、操作レバー81を長孔82aの凹部82cから解除して下降方向に回動する。このとき、弾性部材78により上昇方向に付勢されているため、急に下がることはなく、軽い力で下降することができる。
【0030】
次に、苗搬送台60について説明する。苗搬送台60は、植付作業に用いる予備苗5を後方へ搬送し、苗載台31への苗マットの補給を容易にすると共に、苗搬送台60の後部に複数の予備苗5を載置できるようにしている。苗搬送台60は、田植機1の左右一側に配置しているが、両側に配置することも可能である。
【0031】
図2、
図3、
図4に示すように、苗搬送台60は、搬送台61を複数連結することで構成されている。本実施例の苗搬送台60は、主に前後中央に配置され前記上フレーム77に固定される固定搬送台61bと、該固定搬送台61bの前方に連結される前搬送台61aと、固定搬送台61bの後方に連結される後搬送台61cから構成されている。
【0032】
搬送台61は、主に、左右フレーム62・62、前後フレーム63・63、転動ローラ64等を備えている。前後方向に長く形成された左右一対の左右フレーム62・62のそれぞれの前後両端に前後フレーム63・63が横設されている。左右フレーム62・62間に前後方向に所定間隔をあけて転動ローラ64・64・・・が回転自在に支持され、該転動ローラ64・64・・・上に予備苗5を載置して搬送できるようにしている。
【0033】
搬送台61は、三つそれぞれを連結して苗搬送台60を成している。詳しくは、前搬送台61aの左右フレーム62・62の後端内側に、それぞれ板状のブラケット65が上方に突出するように固設されている。
【0034】
前記前搬送台61aと連結される固定搬送台61bは、その左右フレーム62・62の前端内側に、それぞれ板状のブラケット66が上方に突出するように固設されている。また、ブラケット65の上部後端と、ブラケット66の上部前端は、左右方向に重なるように形成されており、その重なり部分の両方に回動軸67が挿入され、前搬送台61aが固定搬送台61bに回動自在に連結されている。固定搬送台61bと後搬送台61cも略同様の構成で連結されている。
【0035】
前搬送台61aと固定搬送台61bを連結するブラケット65・66の高さは、固定搬送台61bと後搬送台61cとを連結するブラケットよりも高く突出するようにしており、固定搬送台61bの上方に後搬送台61c、さらにその上方に前搬送台61aが、上下方向に所定間隔を有して折り畳み収納可能に構成されている。
【0036】
そして、後搬送台61cを固定搬送台61bの延長方向に後方に回動して開いた状態では、運転席23の側方に位置しているため、折り畳み操作は容易にできる。しかし、前搬送台61aを固定搬送台61bの前方延長方向に回動して開いた状態では、運転席23に着座した作業者からは手が届かない位置となっているので、従来では、折り畳み収納作業が面倒な操作となっていた。
【0037】
本実施形態では、
図4に示すように、前搬送台61aの機体左右内側に位置する左右フレーム62の側面に、折り畳み操作具90が設けられている。折り畳み操作具90はロッド90aの一端に持手90bが設けられ、ロッド90aの他端(前端)は左右フレーム62の前部に回動自在に支持されている。また、ロッド90aの長手方向中途部は左右フレーム62の側面に設けた係止具91に係止される構成としている。係止具91は本実施形態ではロッド90aの上下を挟む構成としているが、その構成は限定するものではない。
また、持手90bを係止する構成であってもよい。また、持手90bはリング状に構成しているが、L字状等に構成してもよく構成は限定するものではない。
【0038】
このような構成において、作業が終了したり、格納するときに苗搬送台60を折り畳む場合、後搬送台61cを持ち上げて固定搬送台61b側へ回動して、後搬送台61cを固定搬送台61bの上に載置する。次に、折り畳み操作具90の持手90bを持って係止具91から解除し、上後方へ引き付ける。すると、前搬送台61aの前部が持ち上げられて後方へ回動することができる。そして、前搬送台61aを固定搬送台61bに載せると、ロッド90aを係止具91に係止して折り畳み操作が完了となる。こうして、前搬送台61aを折り畳み操作具90により後方へ容易に引き付けるように回動でき、収納作業が簡単にできるようになる。
【0039】
以上のように、走行部10の後部に植付部30を備え、走行部10の側部であって前部から後部に苗搬送台60が配置される移植機(田植機1)において、前記走行部10の前側部より立設した前支柱52と後支柱53と前補助支柱54と後補助支柱55の上部に4節リンク(内前リンク73と内後リンク74と外前リンク75と外後リンク76)を介して苗搬送台60が取り付けられ、4節リンクに昇降操作手段80を連結したので、昇降操作手段80を操作することで容易に苗搬送台60を昇降できるようになり、簡単な構成で安価な昇降機構70を構成できる。また、苗搬送台60の高さを補助作業者の身長に合わせて調節できるので、苗搬送台60へ予備苗5を補給する補助作業者の労力を軽減できる。
【0040】
また、4節リンクを構成する前リンク73・75の長さは後リンク74・76の長さよりも長く構成し、苗搬送台60を上昇した位置及び下降した位置において、後下がり傾斜が維持されつつ苗搬送台60の後部の昇降高さの変化を小さくしたので、苗搬送台60を昇降調節しても苗搬送台60の後部の高さの変化量は小さいので、田植機1に乗っている作業者が苗搬送台60から植付部30の苗載台31に補給するときの上下動を小さくでき、補給時の負担を軽減できる。また、4節リンクを構成する内前リンク73とレバーガイド82との間に苗搬送台60を上昇方向に付勢する弾性部材78を介装したので、苗搬送台60を昇降して高さを調節するときの操作力を軽減でき、急な昇降動作も抑えることができる。