(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の剛体部のうち、順次接続された第1〜第4剛体部(41,42,43,44)は、平行四辺形の4つの頂点に対応する位置に配設された4つの前記節(33,34,35,36)によって順次環状に接続され、
前記4つの節とは異なる前記節のうちの少なくとも1つ(32)は、前記支持部の移動に拘わらず高さが一定に維持される特定の節であり、
前記第1剛体部(41)は、前記特定の節に回動可能接続され、
前記第2〜第4剛体部のうち、前記4つの節のうちの1つ(35)を介して前記第1剛体部に回動可能に接続された前記剛体部(44)と、前記第1剛体部とが、前記特定の剛体部とされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の腕支持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の構成では、腕台を腕に追従移動させる際、医師の腕は腕台によって常時上向きに押圧される。この押圧力(支持力)は、ばねによって印加されている。すなわち、特許文献2に記載の構成では、ばねの付勢力によって腕台が待機位置へ移動するように構成され、そのばねによって医師の腕に支持力を加えている。
【0006】
このため、ばねが発生する付勢力は、腕台の位置によって変化する。すなわち、特許文献2に記載の構成では、医師の腕に加わる支持力が腕台の位置によって変化し、更なる改良の余地があった。また、特許文献2に記載の構成では、前記支持力を医師の所望値に調整するのも困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、繊細な手作業が求められる作業者の好みに合わせて支持力を調整可能とし、かつ、腕台等の載置部の位置に拘わらず、作業者の腕に加わる支持力を所望の一定値に維持することのできる腕支持装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達するためになされた本発明は、作業者(D)の腕(A)を支持する腕支持装置(1)であって、前記腕が載置される載置部(11)は、複数の節(31,32,33,34,35,36,37,38)で回動可能に接続された複数の剛体部(21,22,41,42,43,44,45,46,49)を備えた支持部(12)によって、移動可能に支持される。また、前記各剛体部が独立して回動可能な自由度のうち鉛直軸と交差する軸回りの自由度を特定自由度とした場合、錘装着部(41S,44S,49S)は、その特定自由度以上の数の特定の剛体部(41,44,49)にそれぞれ設けられている。この錘装着部は、異なる重さの錘(51A,51B,51C,53A,53B,53C,53D,53E,55A,55B)を選択して装着可能であるか、又は、装着される錘53A,53B,53C,53D,53E,55A,55B)の重心と当該剛体部(44,49)における前記節(36)との距離を調整可能である。
【0009】
このため、本発明の腕支持装置は各錘装着部に装着された錘の重さ、又は、その錘の重心と当該剛体部における節との距離を調整することによって、載置部の位置に拘わらず、作業者の腕に加わる支持力を所望の一定値に維持することができる。
【0010】
なお、このような調整の方法は種々考えられるが、例えば、次のような方法が考えられる。すなわち、載置部に所望の支持力に応じた重さの錘を載せたと仮定して、その状態の腕支持装置全体の位置エネルギを計算する。そして、その位置エネルギの式を、各特定自由度に対応する前記各軸回りの回転角でそれぞれ微分した値が全て0となるように、前記各錘装着部に装着される錘の重さ又はその錘の節との距離を調整すれば、前記支持力を一定にすることができる。また、この調整のためには、例えば、特定自由度に応じた式数の連立方程式を解くことによって、前記微分した値が全て0となるような前記重さ又は距離を算出することが考えられるが、本発明では、錘装着部が前記式数以上あるので、良好に解を求めることができる。
【0011】
なお、本発明において、前記支持部が、前記載置部に、前記腕を下方から支持する支持力を前記錘の重力を用いて印加する場合、前記特定自由度に対応する前記各軸回りの前記各剛体部の相互の回動を抑制するブレーキを、更に備えることが望ましい。その場合、支持力の印加のためにばね等の弾性体やモータ等のアクチュエータが使用されなくても、前述のように適宜の支持力を腕に印加することができ、しかも、所望の位置でブレーキにより支持部の移動を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の概略構成]
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
図1に示す実施形態の腕支持装置1は、手術を行う作業者としての医師Dの腕(具体的には前腕A)を支持する装置である。腕支持装置1は、医師Dの前腕Aが載置されるアームホルダ11と、アームホルダ11を移動可能に支持する多関節アーム12と、を備える。
【0014】
多関節アーム12は、ベース部21(
図2参照),肩部22,第1腕部23,第2腕部24,及びホルダ支持部25(
図2参照)を備え、5自由度に構成されている。多関節アーム12の全体を支持するベース部21は、例えば医師Dが座る椅子Cの隣接位置等、床F(
図2参照)の上における所望の位置に固定的に配置可能となっている。肩部22は、ベース部21から鉛直方向に伸び、ベース部21に対して鉛直軸回りに回動可能に構成されている。第1腕部23は、肩部22の上端に水平軸回りに回動可能に接続されている。第2腕部24は、一端が第1腕部23の一端(アームホルダ11に近い側の端部)に水平軸回りに回動可能に接続されている。アームホルダ11は、その第2腕部24の他端に、水平軸及びその軸と直交する軸回りに回動可能に接続されている。
【0015】
図2に模式的に示すように、多関節アーム12は、節31,32,33,34,35,36,37,38と、その節31〜38で回動可能に接続されたベース部21、肩部22、及び、剛体部41,42,43,44,45,46とを有している。なお、本実施形態では、節31〜38はいずれも1つの軸を中心にして、隣接する2つのベース部21、肩部22、又は、剛体部41〜46を回動可能に接続する回転関節である。また、以下の説明では、剛体部41〜44が直線状の棒状部材であるものと仮定するが、これらの剛体部41〜44としては、湾曲した棒状の部材や板状の部材等、種々の形状の部材を採用することができる。
【0016】
図2に示すように、節31は、ベース部21の上端に、肩部22を鉛直軸回りに回転可能に接続する。第1腕部23の内部には、2本の剛体部41,42が上下方向に一定間隔に維持された平行リンク機構47が設けられている。その平行リンク機構47の上側の剛体部41は、中心よりもアームホルダ11から離れた側の部分が、節32を介して肩部22の上端に水平軸回りに回動可能に接続されている。剛体部41,42のアームホルダ11に近い側の端部は、節33,34を介して剛体部43に水平軸回りに回動可能接続され、剛体部41,42の他端は、節35,36を介して剛体部44に水平軸回りに回動可能に接続されている。この接続によって、節33,34,35,36は平行四辺形の4つの頂点に対応する位置に配設され、その節33,34,35,36によって4つの剛体部41,43,42,44が環状に接続されることによって、いわゆる4節リンクが構成されている。
【0017】
剛体部43は、第2腕部24の内部に設けられている。剛体部43は、節34から節33へ至る方向に、節33を突き抜けて延び、その先端に、ホルダ支持部25を介してアームホルダ11が接続されている。ホルダ支持部25は、剛体部43の先端に節37を介して水平軸回りに回動可能に接続され、その軸と直交する主として鉛直軸回りに回動可能な節38を介してアームホルダ11を支持する。より詳細には、節37と節38との間には短い剛体部45が接続され、節38にはアームホルダ11と一体に節38回りに回動する剛体部46(アームホルダ11の一部であってもよい)が接続されている。また、節38には、アームホルダ11に加わる力を検出する力センサ48が設けられている。
【0018】
剛体部41は、節35を突き抜けて延びており、その先端部にカウンタウェイト51が設けられている。また、剛体部44は、節35から節36へ至る方向に、節36を突き抜けて延びており、その先端にカウンタウェイト53が設けられている。なお、カウンタウェイト51,53の詳細な構成及び調整方法については後述する。
【0019】
また、節31,32,33,37には、当該節31,32,33,37の機能(本実施形態では回転機能)を制限する(本実施形態ではロックする)ブレーキ31A,32A,33A,37Aが設けられている。本実施形態では、ブレーキ31A,32A,33A,37Aとして、電磁ブレーキが用いられている。これにより、腕支持装置1において、アームホルダ11の移動を制限(本実施形態ではロック)する動作モードであるロックモードと、アームホルダ11の移動の制限(ロック)を解除した動作モードであるフリーモードと、が実現される。なお、ブレーキ33Aについては、多関節アーム12の先端の荷重を軽減するため、節35に配することも可能である。
【0020】
ロックモードは、位置が固定されたアームホルダ11の上に医師Dが前腕Aを載置する状態を想定した動作モードである。ロックモードでは、ブレーキ31A,32A,33A,37Aにより節31,32,33,37が固定され、アームホルダ11の移動が禁止される。ロックモードにおいては、医師Dがアームホルダ11から前腕Aを外しても、アームホルダ11の位置が固定されている。ただし、節38には作業者の微動作業、緻密な作業を妨げないためブレーキがなく、ロックモードであっても、アームホルダ11の角度は節38回りに調整することができる。
【0021】
一方、フリーモードは、前腕Aとアームホルダ11との間の摩擦抵抗により医師Dがアームホルダ11を前腕Aに追従移動させる状態を想定した動作モードである。フリーモードでは、ブレーキ31A,32A,33A,37Aによる節31,32,33,37の固定が解除され、作業者の好みに合わせた下方からの支持力によりアームホルダ11を自由に動かすことができる。フリーモードにおいて、医師Dは前腕Aにそれ程力を加えなくてもその前腕Aにアームホルダ11を追従移動させることができる。ロックモードとフリーモードとの切換は、医師Dによるボタン操作に応じて切り替えられてもよく、前腕Aに加わる力を力センサ48等にて検出することによって自動的に切り替えられてもよい。
【0022】
[カウンタウェイトの構成及び調整方法]
図3に示すように、カウンタウェイト51は、複数の錘51A,51B,51Cを組み合わせて構成されている。なお、
図3では、錘51A,51B,51Cのみを図示したが、カウンタウェイト51を構成する錘は他にもあってもよい。剛体部41の剛体部44に近い側の端部には、錘51A,51B,51Cを固定するための一対のネジ穴41Sが設けられている。ネジ穴41Sには、一対のネジ51Zが螺合可能となっており、錘51A,51B,51Cにも、ネジ51Zを貫通させる穴部51Sが、ネジ穴41Sと同じ間隔を開けてそれぞれ設けられている。このため、錘51A,51B,51Cのうち所望のものの穴部51Sに一対のネジ51Zを貫通させてそのネジ51Zをネジ穴41Sに螺合させれば、カウンタウェイト51を所望の重さに調整することができる。
【0023】
カウンタウェイト53は、複数の錘53A,53B,53C,53D,53Eを組み合わせて構成されている。なお、
図3では、錘53A,53B,53C,53D,53Eのみを図示したが、カウンタウェイト53を構成する錘は他にもあってもよい。剛体部44の節35から節36に至る方向の先端部には、錘53A,53B,53C,53D,53Eを固定するためのネジ穴44Sが設けられている。このネジ穴44Sは複数対設けられ、各対のネジ穴44Sと節36との距離は異なる。各対のネジ穴44Sは、各錘53A,53B,53C,53D,53Eに設けられたネジ53Zを貫通させるための一対の穴部53Sと、同じ間隔を開けて設けられている。このため、錘53A,53B,53C,53D,53Eのうち所望のものの穴部53Sに一対のネジ53Zを貫通させてそのネジ53Zをネジ穴44Sに螺合させれば、カウンタウェイト53を所望の重さに調整することができる。また、使用するネジ穴44Sとして、対をなすどのネジ穴44Sを選ぶかにより、カウンタウェイト53の重心と節36との距離を調整することができる。
【0024】
なお、
図2には記載していないが、剛体部45の節37回りの回動は、図示省略した平行リンクを介して
図4に示す剛体部49に伝達される。この剛体部49の先端部には、複数の錘55A,55Bを備えたカウンタウェイト55が設けられている。なお、
図4では、錘55A,55Bのみを図示したが、カウンタウェイト55を構成する錘は他にもあってもよい。
【0025】
剛体部49の先端には、複数の錘55A,55Bを固定するためのネジ穴49Sが設けられている。このネジ穴49Sは複数対設けられ、各対のネジ穴49Sと剛体部49が回動可能に接続された節(図示省略)との距離は異なる。各対のネジ穴49Sは、各錘55A,55Bに設けられたネジ55Zを貫通させるための一対の穴部55Sと同じ間隔を開けて設けられている。このため、錘55A,55Bのうち所望のものの穴部55Sに一対のネジ55Zを貫通させてそのネジ55Zをネジ穴49Sに螺合させれば、カウンタウェイト55を所望の重さに調整することができる。また、使用するネジ穴49Sとして対をなすどのネジ穴49Sを選ぶかにより、カウンタウェイト55の重心と前記節との距離を調整することができる。
【0026】
以下、カウンタウェイト51,53の調整方法について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、カウンタウェイト55及びそれに接続されたリンクによる影響、及びアームホルダ11の節37回りの回動による影響は無視できるものとする。その場合、
図5に示すように、節37の位置には、前腕Aの自重(正確には、前腕Aを下方から支持するための所望の支持力)及びアームホルダ11の自重に応じた錘250が装着されていると仮定することができる。そこで、以下、そのような仮定の元に説明を進める。また、鉛直軸回りの回転は前記支持力に影響を与えないので、節31,38は無視することができる。従って、この系では、節32回りの自由度と、その自由度とは独立した節33回りの自由度との、2自由度について考察すればよい。
【0027】
図5に示すように、錘250の重さをm1、カウンタウェイト51の重さをM1、カウンタウェイト53の重さをM2とする。節32は、アームホルダ11の移動に拘わらず高さが一定に維持される。この節32を基準にして各部の位置エネルギを考える。
【0028】
節32から水平に延ばした線に対する剛体部41の傾斜角をθ1とし、節32からカウンタウェイト51の重心までの距離をL1とした場合、カウンタウェイト51の位置エネルギはM1g・L1・sinθ1となる。剛体部41と剛体部43とのなす角をθ2、節32から節35までの距離をL2、節35からカウンタウェイト53の重心までの距離をL3+αとした場合、カウンタウェイト53の位置エネルギはM2g・(L2・sinθ1−(L3+α)・sin(π−θ1−θ2))となる。なお、カウンタウェイト53の重心までの距離をL3+αとしたのは、前述のようにどのネジ穴44Sの対が使用されるかによってその距離が変わるからである。
【0029】
節32から剛体部41の重心41Jまでの距離をL5とし、剛体部41の重さをM41とすると、剛体部41の位置エネルギは−M41g・L5・sinθ1となる。節32から節33までの距離をL6、節33から錘250の重心までの距離をL7とした場合、錘250の位置エネルギはm1g・(−L6・sinθ1+L7・sin(π−θ1−θ2))となる。
【0030】
このようにして各部の位置エネルギを計算し、その位置エネルギの総和Uをθ1で微分することによって節32回りのトルクτ1を求め、Uをθ2で微分することによって節33回りのトルクτ2を求めると、以下のような式が得られる。
【0031】
τ1=Acosθ1+τ2 (1) τ2=Bcos(θ1+θ2) (2) ただし、 A=M1g・L1+M2g・L2+…−m1g・L6−… (3) B=M2g・(L3+α)+…−m1g・L7−… (4)
そこで、A=B=0、すなわち式(3)(4)の左辺を0とした連立方程式をM1,M2について解くことにより、アームホルダ11の位置に拘わらず、すなわちθ1,θ2に依存せずにバランスを取ることのできるM1,M2の値を求めることができる。また、錘250の重さm1には、医師Dが所望する支持力の強さ(例えば500g〜700gの所望値)が反映されているので、アームホルダ11の位置に拘わらず、医師Dの前腕Aに印加される支持力は所望の一定値に維持することができる。
【0032】
[実施形態の効果]
このように、本実施形態の腕支持装置1では、カウンタウェイト51,53の重さM1,M2を調整することにより、アームホルダ11の位置に拘わらず、アームホルダ11から医師Dの前腕Aに印加される支持力を所望の一定値に維持することができる。
【0033】
なお、前記計算では、カウンタウェイト55に関連する機構の影響を無視したが、それらの機構も加味してもよい。すなわち、剛体部45の節37回りの回転角をθ3とし、カウンタウェイト55の重さをM3として、3式からなる3元の連立方程式を解いてもよい。その場合、カウンタウェイト51,53,55の重さM1,M2,M3を当該連立方程式の解の値に設定することで、アームホルダ11から医師Dの前腕Aに印加される支持力を前記所望の一定値に一層良好に維持することができる。
【0034】
すなわち、腕支持装置1の多関節アーム12は5自由度に構成され、そのうちの鉛直軸回りの自由度を除いた独立して回動可能な自由度(特定自由度)は、節32回り、節33回り、節37回りの3自由度である。腕支持装置1は、錘51A〜51C、錘53A〜53E、または錘55A,55Bを任意に選択し、かつ、任意に組み合わせて装着可能なネジ穴41S,44S,49Sを、その特定自由度に応じた数の剛体部41,44,49に備えている。このため、前記連立方程式の元と式数とが一致し、解を良好に求めることができる。よって、その解の値にカウンタウェイト51,53,55の重さM1,M2,M3を設定することで、アームホルダ11から医師Dの前腕Aに印加される支持力を前記所望の一定値に良好に維持することができる。
【0035】
また、カウンタウェイト51,53,55の重さM1,M2,M3が不連続な値しか取り得ない場合であっても、本実施形態では、カウンタウェイト53,55は重心の位置が調整可能であるので、前記支持力を前記所望の一定値に良好に近づけることができる。従って、医師Dは、1mm以下の血管を縫合する手術等の繊細な作業も良好に行うことができる。しかも、前記支持力は前述のように調整することができるので、脳外科手術,耳鼻科手術などといった手術の形態、医師Dの年齢や経験、医師Dが椅子Cに腰掛けて手術を行うか立って手術を行うか、等の各種条件に応じて、適切な値に前記支持力を調整することができる。
【0036】
さらに、節32,33,37には、その回転機能を制限するロックするブレーキ32A,33A,37Aが設けられているので、医師Dは、ロックモードを設定することにより、アームホルダ11の位置を良好に固定することができる。すなわち、本実施形態の腕支持装置1では、多関節アーム12に、ばね等の弾性体もモータ等のアクチュエータも使用されていないので、アームホルダ11から医師Dの前腕Aに印加される支持力を極めて安定して一定値に維持することができる。しかしながら、その場合、ブレーキ32A,33A,37Aがないと、医師Dが前腕Aをアームホルダ11から外したときに、カウンタウェイト51,53,55に加わる重力によってアームホルダ11が上昇してしまう。これに対して、本実施形態の腕支持装置1では、ブレーキ32A,33A,37Aによるロックモードが設定されることにより、アームホルダ11の位置を良好に固定することができる。
【0037】
また、本実施形態の腕支持装置1は、平行四辺形の4つの頂点に対応する位置に配設された節33,34,36,35によって順次環状に接続された剛体部41,43,42,44からなる4節リンクを備えている。そして、高さが一定に維持される節32に接続された剛体部41と、その剛体部41に節35を介して接続された剛体部44とに、重さを調整可能なカウンタウェイト51,53が設けられている。このため、カウンタウェイト51,53の重さの最適値を計算する処理が容易になる。
【0038】
なお、前記実施形態において、アームホルダ11が載置部の一例に、ベース部21、肩部22、及び剛体部41,42,43,44,49が剛体部の一例に、多関節アーム12が支持部の一例に、ネジ穴41S,44S,49Sが錘装着部の一例に、剛体部41〜44が第1〜第4の剛体部の一例に、剛体部41が第1剛体部の一例に、節32が特定の節の一例に、それぞれ相当する。
【0039】
[本発明の他の実施形態]
また、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、カウンタウェイトは、多関節アーム12における前記以外の箇所に設けられてもよい。また、本発明は、一部の電気スタンドのように、より多くの節及び剛体部を有したより複雑なリンク機構を備えた腕支持装置にも適用することができる。そして、その場合、鉛直でも水平でもない斜めの軸回りに剛体部を回動可能に接続する節も含まれてもよい。そのような軸回りの自由度も特定自由度である。
【0040】
さらに、錘の重心と節との距離を調整する方法も、種々考えられる。例えば、剛体部における節から近接離間する方向に沿って長尺に開口した貫通穴(いわゆる長穴)を、当該剛体部に形成し、その長穴の任意の箇所にネジの締め付けによって錘を固定可能にしてもよい。その場合、長穴における所望の位置にネジを締め付けて錘を固定することにより、錘の重心と節との距離を調整することができる。
【0041】
また、節から近接離間する方向にネジの軸を合わせて螺合させることのできるネジ穴を剛体部に形成し、そのネジ穴に錘の付いたネジを螺合させてもよい。その場合、ネジの螺合量を調整することによって、錘の重心と節との距離を調整することができる。その他にも、例えば、剛体部における錘の装着部自身が移動可能とされてもよい。
【0042】
またさらに、本発明の腕支持装置において、ブレーキは必ずしも設けなくてもよい。また、本発明は、手術用の腕支持装置以外にも、精密機械製造用の腕支持装置等、種々の分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…腕支持装置 11…アームホルダ 12…多関節アーム
21…ベース部 22…肩部 23…第1腕部 24…第2腕部
31,32,33,34,35,37,38,36,37,38…節
31A,32A,33A,37A…ブレーキ
21,22,41,42,43,44,49…剛体部
41S,44S,49S…ネジ穴 51,53,55…カウンタウェイト
51S,53S,55S…穴部 51Z,53Z,55Z…ネジ
51A,51B,51C,53A,53B,53C,53D,53E,55A,55B,250…錘 A…前腕 D…医師