特許第6290663号(P6290663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290663
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】開口部装置及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/12 20060101AFI20180226BHJP
   E06B 1/18 20060101ALI20180226BHJP
   E04B 2/88 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   E06B1/12 A
   E06B1/18 X
   E04B2/88
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-51564(P2014-51564)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-175152(P2015-175152A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】千本 英二郎
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−30376(JP,A)
【文献】 実開昭59−14(JP,U)
【文献】 特開2003−138852(JP,A)
【文献】 実開昭63−81186(JP,U)
【文献】 特開2008−248533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/12−1/36
E04B 2/88−2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠と横枠により枠組みされた枠体と、
該枠体を複数の開口部に区画する方立と、
該方立を補強する補強材と、
前記開口部に納められるガラス又は障子と、を備え、
前記方立は、筒状の方立本体部と、該方立本体部の屋外側に設けられ且つ隣り合う一対のガラス又は障子の側端部が挿入されて保持される一対の溝を有する保持部と、を有し、
さらに、前記方立は、第1の方立部材と、第2の方立部材と、を備え、
前記第1の方立部材は、前記方立本体部の一部である第1の方立本体部と、前記保持部としての第1の保持部と、を有し、
前記第2の方立部材は、前記方立本体部の一部である第2の方立本体部と、前記保持部としての第2の保持部と、を有し、
前記第1の保持部は、前記第1の方立本体部から屋外側に延出される第1の方立見込部と、前記第1の方立見込部の先端から第1の見付方向に延設される第1の方立見付部と、
を有し、
前記第2の保持部は、前記第2の方立本体部から屋外側に延出される第2の方立見込部と、第2の方立見込部の先端から前記第1の見付方向とは逆方向の第2の見付方向に延設される第2の方立見付部と、を有し、
前記補強材は、前記方立本体部内に配置された補強材本体部と、前記補強材本体部から前記一対の溝間を通って屋外側に延出する補強材延出部と、を有し、
前記補強材延出部は、前記第1の方立見込部と前記第2の方立見込部との間に配置され且つ締結部材によって前記第1の方立見込部及び前記第2の方立見込部と共締めされ、
前記第1の方立部材は、前記第1の方立見込部の屋外側先端から前記第2の方立見込部へ突出し、前記第2の方立見込部の見込面に当接する突出部を有する開口部装置。
【請求項2】
前記保持部に形成された一対の溝の深さが異なり、
前記補強材延出部は、前記方立の見付方向の中心よりも一方側に偏心した部位において前記補強材本体部から屋外側に延出する請求項1記載の開口部蔵置。
【請求項3】
前記補強材本体部を前記方立とともに前記横枠に締結部材で固定する工程と、
前記補強材延出部を、前記第1の方立見込部及び前記第2の方立見込部と締結部材で共締めする工程と、を含む請求項又は記載の開口部装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部装置及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部を方立や無目によって区画した開口部装置が知られている。このような開口部装置の方立としては、方立や無目によって支持されるガラスや障子に加わる風圧に耐えることができるように方立の見込み寸法を大きくしたり、縦枠内部にコ字形の補強材を配置したりしている(例えば、特許文献1参照)。また、カーテンウォールにおいて、方立の、ガラスの配置される溝よりも屋内側の中空内部に補強材を配置する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−125827号公報
【特許文献2】特開平2000−265607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、従来の方立の一例であって、内部に補強材を配置した方立9の横断面図である。図5に示すように、方立9は、内部に中空91が形成されたホロー構造であり、一方のガラス92の側端部が挿入される溝部93が見付方向における中心に形成されている。更に、中空91には、断面コ字状の補強材94が溝部93を覆うようにして配置される。このような断面コ字状の補強材94を用いれば、方立9の耐風圧性能を向上させることができるが、補強材94を配置するスペースを十分に確保するために方立9の見付方向及び見込方向の幅を大きくする必要がある。
このように、方立の見付方向の幅を大きくした場合には、開口部の面積が小さくなり、開口部装置の採光性や意匠性が低下してしまう。一方、方立の見込方向の幅を大きくした場合には、開口部装置を設置するためのスペースが大きくなり屋内の床面積が狭くなってしまう。
【0005】
なお、方立の、ガラスの配置される溝の形成された支持部よりも屋内側の中空内部に補強材を配置したカーテンウォールは、ガラスの延長面上に補強材が存在しておらず、耐風圧性能が十分でない。
ところで、特許文献2で開示されたカーテンウォールは、方立が2部材で構成され且つ方立の支持部が中空の形成されたホロー構造となっている。この方立を構成する一方の部材側の中空には、両部材を締結するビスの先端が進入する。中空内にビスの先端が進入することで、溝にガラスを挿入する際に、ガラスがビスの先端に接触するのを防止できる一方、方立の見付方向の幅が大きくなってしまう。また、この方立では、中空が形成されることで、支持部のガラスよりも屋外側の部分の幅及び方立の見込方向の幅が厚くなる。このように、特許文献2で開示されたカーテンウォールの方立は、見付方向及び見込方向の幅が大きい上に、屋外側から観察した際には、ガラスが奥(屋内側)に配置されているように見えることから、意匠性が低い。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な耐風圧性能を備えつつ、高い採光性と屋内の床面積を確保することが可能な開口部装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、縦枠と横枠により枠組みされた枠体(例えば、後述の枠体2)と、該枠体を複数の開口部に区画する方立(例えば、後述の方立3)と、該方立を補強する補強材(例えば、後述の補強材8)と、前記開口部に納められるガラス又は障子(例えば、後述のガラス61a,62a)と、を備え、前記方立は、筒状の方立本体部(例えば、後述の第1の方立本体部311及び第2の方立本体部321)と、該方立本体部の屋外側に設けられ且つ隣り合う一対のガラス又は障子の側端部が挿入されて保持される一対の溝(例えば、後述の溝312d,322c)を有する保持部(例えば、後述の第1の保持部312及び第2の保持部322)と、を有し、前記補強材は、前記方立本体部内に配置された補強材本体部(例えば、後述の補強材本体部81)と、前記補強材本体部から前記一対の溝間を通って屋外側に延出する補強材延出部(例えば、後述の補強材延出部82)と、を有する開口部装置(例えば、後述の開口部装置1)を提供する。
【0008】
本発明では、方立と、方立を補強する補強材を備える開口部装置において、方立が、筒状の方立本体部と、その屋外側に設けられ且つ隣り合う一対のガラス又は障子の側端部が挿入されて保持される一対の溝を有する保持部と、を有するものとした。また、補強材が、筒状の方立本体部の内部に配置された補強材本体部と、補強材本体部から一対の溝間を通って屋外側に延出する補強材延出部と、を有するものとする。
これにより、方立の強度を十分に向上させつつも、方立の見付方向及び見込方向の幅を十分に小さくすることができる。方立の見付方向の幅を十分に小さくすることで開口部装置の採光性が高くなる。一方、方立の見込方向の幅を十分に小さくすることで屋内の床面積を大きくすることができる。
また、一対の溝が屋外側に形成されることで、ガラス又は障子も屋外側に寄せることができるので、開口部装置をカーテンウォール風にすることができ、開口部装置を屋外側から観察した際の意匠性が向上する。
【0009】
前記保持部に形成された一対の溝の深さが異なり、前記補強材延出部は、前記方立の見付方向の中心よりも一方側に偏心した部位において前記補強材本体部から屋外側に延出することが好ましい。
【0010】
前記方立は、第1の方立部材(例えば、後述の第1の方立部材31)と、第2の方立部材(例えば、後述の第2の方立部材32)と、を備え、前記第1の方立部材は、前記方立本体部の一部である第1の方立本体部(例えば、後述の第1の方立本体部311)と、前記保持部としての第1の保持部(例えば、後述の第1の保持部312)と、を有し、前記第2の方立部材は、前記方立本体部の一部である第2の方立本体部(例えば、後述の第2の方立本体部321)と、前記保持部としての第2の保持部(例えば、後述の第2の保持部322)と、を有し、前記第1の保持部は、前記第1の方立本体部から屋外側に延出される第1の方立見込部(例えば、後述の第1の方立見込部312a)と、前記第1の方立見込部の先端から第1の見付方向に延設される第1の方立見付部(例えば、後述の第1の方立見付部312b)と、を有し、前記第2の保持部は、前記第2の方立本体部から屋外側に延出される第2の方立見込部(例えば、後述の第2の方立見込部322a)と、第2の方立見込部の先端から前記第1の見付方向とは逆方向の第2の見付方向に延設される第2の方立見付部(例えば、後述の第2の方立見付部322b)と、を有し、前記補強材延出部は、前記第1の方立見込部と前記第2の方立見込部との間に配置され且つ締結部材(例えば、後述のビス83)によって前記第1の方立見込部及び前記第2の方立見込部と共締めされることが好ましい。
【0011】
前記第1の方立部材は、前記第1の方立見込部の先端から前記第2の見付方向に突出する突出部(例えば、後述の突出部312c)を更に有し、前記補強材延出部は、前記第1の方立見込部、前記第2の方立見込部及び前記突出部によって形成される空間に侵入することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記補強材本体部を前記方立とともに前記横枠に締結部材(例えば、後述のビス84a,84b)で固定する工程と、前記補強材延出部を、前記第1の方立見込部及び前記第2の方立見込部と締結部材(例えば、後述のビス83)で共締めする工程と、を含む開口部装置の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な耐風圧性能を備えつつ、高い採光性と十分な屋内の面積を確保することが可能な開口部装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る開口部装置を屋内側から見た姿図である。
図2】上記実施形態に係る開口部装置の縦断面図(図1のA−A線断面図)である。
図3】上記実施形態に係る開口部装置の横断面図(図1のB−B線断面図)である。
図4】上記実施形態に係る開口部装置の方立の拡大横断面図である。
図5】従来の開口部装置の備える方立の拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた開口部装置の上枠、下枠、縦枠の長手方向(すなわち、ガラスや障子の面内方向)を意味し、「見込方向」とは、屋内外方向(すなわち、奥行き方向)を意味する。
図1は、本実施形態に係る開口部装置1を屋内側から見た姿図である。開口部装置1は、店舗等に設置される排煙機構を有する開口部装置であり、開口部装置1は、本発明の一例としての連段窓である。
【0016】
開口部装置1は、建物に形成された開口に納められる。開口部装置1は、建物の開口に取り付けられる枠体2を備える。枠体2は、上枠21と、下枠22と、屋内側から見ての左側の縦枠23と、図示しない右側の縦枠と、により矩形に枠組みされる。
開口部装置1は、更に、枠体2を見付方向に並んだ複数の開口部に区画する方立3と、更に枠体2及び方立3によって形成される開口部を上下に区画する無目4と、を備える。
【0017】
開口部装置1の、屋内側から見て左側から3本目の方立までは、無目4を境にして上段に、排煙窓51が納められ、下側に、FIX窓52が納められた排煙窓ユニット5が3ユニット連続して配設される。排煙窓は、縦方向にスライド自在である。開口部装置1は、更にオペレータ231を有する。オペレータ231は、縦枠23の上側に配置されて固定される。オペレータ231は、見付方向に延びるワイヤ7の端部を巻き取って排煙窓の重みを支える。オペレータ231は、操作引手232と、上昇コード233と、を有する。操作引手232を引くことでオペレータ231のロック機構が解除され、通常閉鎖されている排煙窓51が自重で下がって開放される。一方、上昇コード233を引くことで排煙窓51を上昇させて閉鎖させることができる。見付方向に並んだ3つの排煙窓51は、連動しており、オペレータ231によって一括して開放・閉鎖を行うことが可能である。
【0018】
開口部装置1の、屋内側から見て左側から3本目の方立よりも右側には、無目4を境にして上下にFIX窓61,62が納められたFIX窓ユニット6が連設される。続いて、図2図4により、開口部装置1の屋内側から見て右側の構造(FIX窓ユニット6)について詳しく説明する。
【0019】
図2は、開口部装置1の縦断面図であって、図1のA−A線断面図である。図2に示すように、開口部装置1は、上段の開口部に納められたガラス61a及び下段の開口部に納められたガラス62aを備える。ガラス61a及びガラス62aは、単板ガラスである。
【0020】
図2に示すように、上枠21は、屋内側に配置される上方に開放された断面コ字状である上枠本体部211と、上枠本体部211から屋外側に延設され且つガラス61aの上端部を保持する溝212aを形成する上枠ガラス保持部212と、更に上枠ガラス保持部212から屋外側に延設される上枠延設部213と、を有する。上枠本体部211は、内側に形成され且つ上枠21の長手方向に延びる溝211a,211bを有する。
上枠21は、例えば、アルミニウムを押し出し成型することによって形成することができる。
【0021】
無目4は、屋内側に配置され且つ中空部を有するホロー構造である無目本体部41と、無目本体部41から屋外側に延設され且つ中空部を有するホロー構造である無目ガラス保持部42と、を有する。無目ガラス保持部42は、屋外側の端部から垂設する垂設部42aを有することでガラス62aの上端部を保持する溝42bを形成する。
無目4は、例えば、アルミニウムを押し出し成型することによって形成することができる。
【0022】
無目4の屋外上側には、無目ガラス保持部42に係止されるガラス保持部材43が配置される。無目4及びガラス保持部材43によって、ガラス61aの下端部を保持する溝43aが形成される。
【0023】
下枠22は、屋内側に配置され且つ中空部を有するホロー構造である下枠本体部221と、下枠本体部221から屋外側に延設され且つ中空部を有するホロー構造である下枠延設部222と、を有する。下枠本体部221は、屋外側の上端から立設され且つ後述する溝223aの屋内側の一部を形成する立設部221aを有する。また、下枠本体部221は、内側に形成され且つ下枠22の長手方向に延びる溝221b,221cを有する。
【0024】
下枠22は、アンカー225,226にそれぞれ係合された水切り材227及び支持部材228と、屋内外方向からビス等の固定具により締結されて支持される。このような構造によって、下枠22は、水切り材227及び支持部材228から分離してリサイクルすることが可能になっている。下枠22は、例えば、アルミニウムを押し出し成型することによって形成することができる。
下枠22の屋外上側には、下枠延設部222に係止されるガラス保持部材223が配置される。下枠22及びガラス保持部材223によって、ガラス62aの下端部を保持する溝223aが形成される。なお、図示しない右側の縦枠の下部には、キャップ部材241が配置される。
【0025】
図2に示すように、ガラス61aは、溝43aの内部に配置される支持部材61bによって支持される。ガラス61aの上端部は、溝212a内において、バックアップ材61f,61fによって挟まれる。更にバックアップ材61f,61fの下方には、シール材61e,61eが塗工される。ガラス61aの下端部は、溝43a内において、バックアップ材61c,61cによって挟まれる。更にバックアップ材61c,61cの上方には、シール材61d,61dが塗工される。
【0026】
ガラス62aは、溝223aの内部に配置される支持部材62fによって支持される。ガラス62aの上端部は、溝42b内において、バックアップ材62j,62jによって挟まれる。更にバックアップ材62j,62jの下方には、シール材62i,62iが塗工される。ガラス62aの下端部は、溝223a内において、バックアップ材62g,62gによって挟まれる。更にバックアップ材62g,62gの上方には、シール材62h,62hが塗工される。
【0027】
図3は、開口部装置1の横断面図であって、図1のB−B線断面図である。つまり、図3では、FIX窓ユニット6のうち、FIX窓62における横断面図を示す。なお、FIX窓61における横断面図も図3と同一の構造であるので説明は省略する。また、図4は、図3に示した、開口部装置1の備える方立3の拡大横断面図である。
【0028】
図3に示すように、FIX窓62の左右の縦材を構成する方立3,3は同一の構造である。
図3及び4に示すように、方立3は、屋内側から見て、右側に配置される第1の方立部材31と、左側に配置される第2の方立部材32と、を備える。
【0029】
第1の方立部材31は、第1の方立本体部311と、第1の方立本体部311の屋外側に設けられ且つガラス62aの屋内側から見て左側の側端部が挿入されて保持される溝312dを有する第1の保持部312と、を有する。
第1の保持部312は、第1の方立本体部311から見込方向(屋外側)に延出される第1の方立見込部312aと、第1の方立見込部312aの先端から見付方向(屋内側から見て右側)に延設される第1の方立見付部312bと、第1の方立見込部312aの先端から第1の方立見付部312bの延びる方向とは反対側(屋内側から見て左側)に突出する突出部312cと、を有する。
【0030】
図4に示すように、第1の方立見込部312aは、後述するビス83の螺合される孔の周囲において第2の方立部材32側に突出して形成される凸部312eを有する。凸部312eが形成されることで、によって、ビス83の螺合される孔が深くなり、ビス83の先端を溝312dの内部に侵入させずとも、第1の方立部材31及び第2の方立部材32を強固に締結することができる。また、ビス83の先端を溝312dの内部に侵入させないことで、溝312dにガラス62aを挿入する際に、ガラス62aがビス83に接触して割れてしまうのを防ぐことができる。第1の方立見込部312aは、更に、見込面(屋内側から見て右側の見込面)に形成される斜面312fを有する。斜面312fは、屋外側から屋内側に向かって、屋内側から見て左側に傾斜するように形成される。つまり、斜面312fは、屋内側から見て右側及び屋内側に面が向いて形成される。
第1の方立見付部312bは、先端から屋内側に突出して形成される凸部312gを有する。
突出部312cは、その先端に気密材315の配置される溝部を有する。
【0031】
第2の方立部材32は、第2の方立本体部321と、第2の方立本体部321の屋外側に設けられ且つガラス62aの屋内側から見て右側の側端部が挿入されて保持される溝322cを有する第2の保持部322と、を有する。
第2の保持部322は、第2の方立本体部321から見込方向(屋外側)に延出される第2の方立見込部322aと、第2の方立見込部322aの先端から見付方向(屋内側から見て左側)に延設される第2の方立見付部322bと、を有する。第2の方立見込部322aは、屋外側の見込面において気密材315と接する。
【0032】
第1の方立本体部311及び第2の方立本体部321は、断面略正方形の筒状に形成される。
本実施形態において、隣り合う一対のガラス62a,62aは、それぞれ溝312d,322cに対向する側端部が挿入されて保持される。溝312dと溝322cとでは、溝312dの方が深い溝に形成される。
【0033】
ガラス62aの屋内側から見て左側の端部は、溝312d内において、バックアップ材62b,62bによって挟まれる。更にバックアップ材62b,62bの右側には、コーキング材62c,62cが塗工される。ガラス62aの屋内側から見て右側の端部は、溝322c内において、バックアップ材62d,62dによって挟まれる。更にバックアップ材62d,62dの左には、コーキング材62e,62eが塗工される。
【0034】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る開口部装置1は、更に、方立3を補強する補強材8を備える。補強材8は、方立3内を上下方向に延びる。補強材8は、例えばアルミよりも強度が高いSUSやスチール等で構成される。補強材8は、例えば板状の長尺部材を、その長手方向を折り曲げ軸として、その幅方向に複数回折り曲げ成形することで、所定の形状に形成される。
補強材8は、第1の方立本体部311及び第2の方立本体部321の内部に配置された補強材本体部81と、見込方向(屋外側)に延出する補強材延出部82と、を有する。
【0035】
補強材本体部81は、断面コ字状に形成され第1の方立本体部311の内面に沿うように配置される。
補強材延出部82は、補強材本体部81から第1の保持部312と第2の保持部322との間(第1の方立見込部312aと第2の方立見込部322aとの間)を通って延出する。より詳しくは、補強材延出部82は、第1の方立見込部312a、第2の方立見込部322a及び突出部312cによって形成される空間に侵入する。このように、補強材延出部82は、第1の方立見込部と前記第2の方立見込部との間に配置される。また、補強材延出部82は、方立3の見付方向の中心よりも屋内側から見て左側に偏心した部位において見込方向(屋外側)に延出する。補強材延出部82は、締結部材としてのビス83によって第1の方立見込部312a及び第2の方立見込部322aと共締めされる。
【0036】
補強材8は、締結部材としてのビス84a,84bによって第1の方立部材31及び下枠22と共締めされる。ビス84a,84bは、それぞれ下枠22における溝221c,221b(図2参照)の端部から螺入される。なお、第2の方立部材32は、締結部材としてのビス84c,84dによって下枠22に固定される。ビス84c,84dは、それぞれ下枠22における溝221c,221b(図2参照)のビス84a,84bが螺入される端部とは逆側の端部から螺入される。
なお、方立3を、屋内側から見て、図3及び図4とは左右対称の構造にしてもよい。つまり、第1の方立部材31と第2の方立部材32は左右逆に配置してもよい。また、補強材8についても、屋内側から見て、図3及び図4とは左右対称の構造にしてもよい。更には、補強材延出部82を、方立3の見付方向の中心よりも屋内側から見て右側に偏心した部位において見込方向(屋外側)に延出させてもよい。
【0037】
続いて、開口部装置1の施工方法について説明する。本実施形態に係る施工方法は、工場ではなく、開口部装置1が設置される現場で行うことができる。
本実施形態に係る施工方法は、補強材本体部81を方立3(第1の方立部材31)とともに横枠(上枠21及び下枠22)に締結部材で固定する工程を含む。
この工程において、補強材本体部81を第1の方立部材31とともに下枠22に固定する場合は、締結部材としてのビス84a,84bを用いる。ビス84a,84bは、それぞれ下枠22における溝221c,221b(図2参照)の端部から螺入され、補強材本体部81及び第1の方立部材31が下枠22に固定される。補強材本体部81を第1の方立部材31とともに上枠21に固定する場合も同様である。更に、この工程においては、第2の方立部材32が、締結部材としてのビス84c,84dによって下枠22に固定される、上枠21にも同様に固定される。なお、無目4についても図示しない締結部材を用いて上枠21及び下枠22と同様に、第1の方立部材31及び第2の方立部材32に締結される。
この工程において、横材としての上枠21及び下枠22並びに縦材としての第2の方立部材32及び補強材8が一体化された第1の方立部材31を含む枠体が形成される。
【0038】
また、本実施形態に係る施工方法は、補強材延出部82を、第1の方立見込部312a及び第2の方立見込部322aと締結部材としてのビス83で共締めする工程を含む。
この工程においては、上述した、横材としての上枠21及び下枠22並びに縦材としての第2の方立部材32及び補強材8が一体化された第1の方立部材31を含む枠体を複数並べて、これらをビス83によって締結する。この工程では、方立3の延びる方向において所定間隔を開けてビス83を複数締結する。
この工程は、建物の開口に上述した枠体を配置した上で行ってもよい。
【0039】
更に、本実施形態に係る施工方法では、ビス83による共締めを行った後に、ガラス61a,62aが枠体内に納められる。ガラス61a,62aは枠体内にやり返しにより納められる。つまり、左右の溝のうち深い方の溝312dの奥までガラス61a,62aの一方の側端部を送り込んだのちに、ガラス61a,62aの他方の側端部を浅い方の溝322cに挿入する。ガラス61a,62aが枠体内に納められた後に、ガラス保持部材43,223がそれぞれ無目4及び下枠22に係合され、コーキング等の処理が行われる。
【0040】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、方立3と、方立3を補強する補強材8を備える開口部装置1において、方立3が、筒状の、第1の方立本体部311及び第2の方立本体部321と、その屋外側に設けられ且つ隣り合う一対のガラス61a,62aの側端部が挿入されて保持される一対の溝312d,322cを有する第1の保持部312及び第2の保持部322と、を有するものとした。また、補強材8が、筒状の第1の方立本体部311及び第2の方立本体部321の内部に配置された補強材本体部81と、補強材本体部81から一対の溝312d,322c間を通って屋外側に延出する補強材延出部と、を有するものとした。
これにより、ガラスの延長面上も補強することで方立3の強度(耐風圧性能)を十分に向上させつつも、方立3の見付方向及び見込方向の幅を十分に小さくすることができる。方立3の見付方向の幅を十分に小さくすることで開口部装置1の採光性が高くなる。一方、方立3の見込方向の幅を十分に小さくすることで屋内の床面積を大きくすることができる。
また、一対の溝312d,322cが屋外側に形成されることで、ガラス61a,62aも屋外側に寄せることができるので、開口部装置1をカーテンウォール風にすることができ、開口部装置1を屋外側から観察した際の意匠性が向上する。
【0041】
また、本実施形態では、補強材延出部82が、方立3の見付方向の中心よりも一方側(屋内側から見て左側)に偏心した部位において補強材本体部81から屋外側に延出するものとすることで、溝312dの深さを溝322cの深さよりも深くした。
これにより、開口部装置1を施工する際に、ガラス61a,62aを枠体内にやり返しによって納めるのが容易になる。
【0042】
また、本実施形態では、方立3を、第1の方立部材31及び第2の方立部材32の2部材とした。また、補強材延出部82を、第1の方立部材31と第2の方立部材32との間(第1の方立見込部312aと第2の方立見込部322aとの間)に配置してビス83によって第1の方立部材31と第2の方立部材32との間(第1の方立見込部312aと第2の方立見込部322aとの間)と共締めした。
これにより、方立3の組み立てとともに補強材8を容易に方立3に緊結できるようになり、施工性の高い開口部装置を提供できる。
【0043】
また、本実施形態では、方立3が、第1の方立見込部312aの先端から屋内側から見て左側に突出する突出部312c有するものとした。また、補強材延出部82は、第1の方立見込部312a、第2の方立見込部322a及び突出部312cによって形成される空間に侵入するものとした。
これにより、より強固に補強材8を方立3に緊結できるので、方立3の強度が向上する。
【0044】
また、本実施形態では、開口部装置1の施工方法において、補強材本体部81を方立3(第1の方立部材31)とともに横枠(上枠21及び下枠22)に締結部材(ビス84a,84b)で固定した。更に、補強材延出部82を、第1の方立見込部312a及び第2の方立見込部322aと締結部材としてのビス83で共締めした。
このように、補強材8を容易に方立3に緊結できるので、工場ではなく、開口部装置1が設置される現場において、開口部装置1の部材を組み立てるのが可能になる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、方立3を含む枠体にガラス61a,62aが納められるものとしたがこれに限定されず、例えば引違い戸や辷り出し窓等の障子を開口部に納める構成としてもよい。
また、本発明によれば、例えば、店舗等の低階層用カーテンウォールにおいても、方立の見付け寸法及び見込み寸法を小さくできるとともに、方立に風圧(負圧や正圧)が作用した場合に十分な性能を示すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1…開口部装置
2…枠体
3…方立
31…第1の方立部材
311…第1の方立本体部(方立本体部)
312…第1の保持部(保持部)
312a…第1の方立見込部
312b…第1の方立見付部
312c…突出部
312d…溝
32…第2の方立部材
321…第2の方立本体部
322…第2の保持部
322a…第2の方立見込部
322b…第2の方立見付部
322c…溝
61a,62a…ガラス(ガラス又は障子)
8…補強材
81…補強材本体部
82…補強材延出部
83…ビス(締結部材)
84a,84b…ビス(締結部材)
図1
図2
図3
図4
図5