(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290669
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ドア
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20180226BHJP
E06B 3/88 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/88
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-55906(P2014-55906)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178715(P2015-178715A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】小宮 晃
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−091916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00−5/20
E06B 3/04−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠および横枠により構成された矩形のドア枠内に、ドア本体が開閉可能に取付けられたドアにおいて、
前記ドア本体の底面の少なくとも室内側に熱によって膨張する耐火材が設けられ、
前記耐火材の下面の少なくとも戸先側に、発泡規制材が設けられ、
前記発泡規制材として、熱によって膨張する耐火材が用いられていることを特徴とするドア。
【請求項2】
縦枠および横枠により構成された矩形のドア枠内に、ドア本体が開閉可能に取付けられたドアにおいて、
前記ドア本体の底面の少なくとも室内側に熱によって膨張する耐火材が設けられ、
前記耐火材の下面の少なくとも戸先側に、発泡規制材が設けられ、
前記ドア本体の底面における戸先側端部に、ドア枠を構成する戸先側縦枠の見込み面側への発泡を抑制する部品が設けられていることを特徴とするドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アパートや一般住宅等に用いられるドアに関する。
【背景技術】
【0002】
アパートや一般住宅等に用いられるドアとして、防火性能を高めるため、特許文献1に記載のように、戸体の内部に断熱材や芯材を配置したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3003709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のドアの場合、ドア本体の戸先側は上下方向の中央部分は錠により固定されているから、室内側から出火した場合、ドア本体の戸先側ではドア本体の上下部分が外側に反り、ドア枠との間に隙間が生じる。その結果、この隙間部分から火炎や熱気が室外側に吹き出し、延焼を生じやすくなる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、室内側で火災が発生の際に、戸先側におけるドア本体の下端部とドア枠との間の隙間が有効に閉塞され、もって延焼を防止しうる構成のドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のドアは、縦枠および横枠により構成された矩形のドア枠内に、ドア本体
が開閉可能
に取付け
られたドアにおいて、
前記ドア本体の底面の少なくとも室内側に熱によって膨張する耐火材
が設け
られ、
前記耐火材の下面の少なくとも戸先側に、発泡規制材
が設け
られ、
前記発泡規制材として、熱によって膨張する耐火材が用いられていることを特徴とする。
【0007】
請求項
2のドアは、
縦枠および横枠により構成された矩形のドア枠内に、ドア本体が開閉可能に取付けられたドアにおいて、
前記ドア本体の底面の少なくとも室内側に熱によって膨張する耐火材が設けられ、
前記耐火材の下面の少なくとも戸先側に、発泡規制材が設けられ、
前記ドア本体の底面における戸先側端部に、ドア枠を構成する戸先側縦枠の見込み面側への発泡を抑制する部品
が設け
られていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、熱によって膨張する耐火材の発泡方向を発泡規制材によって規制し、戸先側のドア本体の下辺部とドア枠の下枠との間の隙間をより有効に閉塞することができる。
【0009】
また、発泡規制材として熱によって膨張する耐火材を用いたので、発泡規制材として用いる耐火材も発泡して隙間閉塞に寄与するので、延焼がより有効に防止される。
【0010】
請求項
2の発明によれば、戸先側において、縦枠の見込み面側への発泡が規制されるため、ドア本体の底辺と下枠との間の隙間閉塞の目的で設けた熱によって膨張する耐火材が隙間閉塞に有効に利用され、より有効に延焼が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のドアの一実施の形態を室内側から見た図である。
【
図4】本実施の形態のドア本体の枢着部を示す縦断面図である。
【
図6】本実施の形態において、ドア本体と下枠側気密材との当接構造を示す縦断面図である。
【
図7】本実施の形態のドア本体の戸先側下部構造を示す斜視図である。
【
図9】本実施の形態で用いるキャップを示す斜視図である。
【
図10】本実施の形態における火災発生時の反りと加熱発泡材の発泡状態を示す縦断面図である。
【
図11】本実施の形態における火災発生時の反りと加熱発泡材の発泡状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明のドアの一実施の形態を室内側から見た図、
図2、
図3はそれぞれ
図1のドアの縦断面図および横断面図である。
図1ないし
図3において、1はドア枠、2はドア枠1内に取付けられるドア本体である。ドア枠1は、アルミニウム合金等の金属製押出形材でなる吊元側縦枠3と戸先側縦枠4と上側の横枠(上枠)5と下側の横枠(下枠)6とをタッピングねじ(図示せず)により組み合わせて矩形に構成する。本実施の形態においては、縦枠3,4および上枠5は室外側部材3a,4a,5aと室内側部材3b,4b,5bとの間をゴム等の断熱性のブリッジ材3c,4c,5cとでそれぞれ結合し、下枠6も室内側の表面を合成樹脂材表面材6aで覆うことにより、断熱性を高めている。
【0013】
図1において、7はドア本体2の戸先側に設けた開閉用ハンドル、8a,8bは上下のシリンダー錠である。
【0014】
本実施の形態のドア本体2は、例えば鋼等でなる内側表面板10および外側表面板11との間にパネル状の断熱材12を挟み、断熱材12を内側表面板10と外側表面板11に接着して構成している。なお、内側表面板10と外側表面板11はその各両側部、上端部、下端部をそれぞれL字形に折り曲げ、各L字形の折曲げ端部を突き合わせてボックス状に構成している。断熱材12には例えば発泡ポリスチレン等の発泡材や水酸化アルミニウムコア等を用いる。14は縦枠3,4、上枠5および下枠6に取付けられた気密材であり、ドア本体2の周囲の室内側の面を当接させて気密性を保つものである。
【0015】
図4は本実施の形態のドア本体2の枢着部を示す縦断面図である。
図4に示すように、ドア本体2の吊元側には例えば鋼等でなる芯材15をドア本体2の上下全長にわたって設け、内側表面板10または外側表面板11の少なくともいずれか一方にリベット16により固定する。芯材15の上下端部には枢着用のプレート17,18を例えばねじ等により固定する。下枠6の吊元側縦枠3側には枢着軸19を取付け、その枢着軸19を、筒状スペーサ20と、プレート18に設けた枢着孔18aに回動可能に嵌合する。また、芯材15の上面に例えばねじなどで固定したプレート17には上方に突出させて枢着軸21を設ける。一方、上枠5の吊元側縦枠3側には鋼等でなる軸受部材22を設け、この軸受部材22に枢着孔22aを設ける。そして枢着軸21を軸受部材22の枢着孔22aに回動可能に嵌合する。これにより、ドア本体2をドア枠1に開閉可能に取付ける。なお、ドア本体2をドア枠1に枢着する手段として蝶番を用いてもよい。
【0016】
図3において、24はドア本体2の戸先側芯材、10aはこの芯材24の部分を覆うために内側表面板10の戸先側端部を曲成して形成したカバー部、25はこのカバー部10aにおける室外側部分に縦方向に固着したシート状の加熱発泡材、26は戸先側縦枠4の見込み面4dに縦方向に固着したシート状の加熱発泡材である。
【0017】
図5はドア本体2の底面図、
図6はドア本体2の下端部における気密材14との当接構造を示す縦断面図、
図7は戸先側の下部構造を示す斜視図、
図8は
図5のE−E拡大断面図、
図9は本実施の形態で用いるキャップを示す斜視図である。
【0018】
図5ないし
図8において、28はドア本体2の底面の室内側寄りに熱によって膨張する耐火材として設けたシート状の加熱発泡材であり、本実施の形態においては、
図5に示すように、この加熱発泡材28はドア本体2の前記プレート18の部分を除いた部分のほぼ全長にわたって設けている。本実施の形態においては、この加熱発泡材28はドア本体2の室内外方向の厚みの約半分の幅を有し、ドア本体2の底面の室内側寄りに設けているが、この加熱発泡材28は、ドア本体2の室内外方向の厚みと同じかあるいはそれに近い幅としてもよい。また、この加熱発泡材28の長さは、ドア本体2の底面の全幅に近いのではなく、例えばドア本体2の左右の幅の約半分以上として、戸先側縦枠4寄りに取付ければ、後述の反りに対応できる。
【0019】
29はこの加熱発泡材28の下面を覆うように、両面テープ30a(
図6、
図8参照)を介して固着した発泡規制材である。
この発泡規制材29として加熱発泡材を用い、この発泡規制材29をドア本体2の戸先寄りの部分に、ドア本体2のほぼ半分の幅にわたって設けているが、この発泡規制材29のドア本体2の左右方向の幅も、ドア本体2の左右方向の幅の例えば3分の1以上として、戸先側縦枠4側寄りに設けてもよい。
【0020】
図8に示すように、加熱発泡材28および発泡規制材29は、両面テープ30bおよびリベット等の固定具32により、内側表面板10の曲成された底板部10bと共にドア本体2の下側の芯材33に固定する。
図5、
図7において、34は外側表面板11の曲成された底板部11aを芯材33に固定するリベット等の固定具である。
【0021】
36はドア本体2の底面における戸先側端部に取付ける部品として設けたキャップである。このキャップ36は、加熱発泡材28がドア枠1を構成する戸先側縦枠4の見込み面4d側へ発泡することを抑制するものである。なお、本実施の形態においては、後述のように、このキャップ36は加熱発泡材28が室外側に向けて発泡することを抑制する手段も備えている。このキャップ36は合成樹脂成形品であり、
図9に示すように、中央部に立上げして形成された取付け部36aを有し、この取付け部36aに貫通孔36bを有する。また、キャップ36の室外側の上面に溝部36cを有する。この溝部36cは、芯材24の室外側部分を挟持する外側表面板11の曲成部11bを嵌めるものである。36dは、内側表面板10のカバー部10aを囲う立上げ壁である。また、キャップ36の室内側に、加熱発泡材28および発泡規制材29を載せる平面部36eと、加熱発泡材28および発泡規制材29の室外側の縁を当接させて発泡方向を規制する壁部36fを有する。
【0022】
このキャップ36は、
図8に示すように、ドア本体2の戸先側に下側から当て、溝部36cを、外側表面板11の芯材挟持用曲成部11bに嵌め、内側表面板10のカバー部10aを取付け部36aと立上げ壁36dとの間で挟み、平面部36eを発泡規制材29の下面の戸先側端部に当て、取付けねじ37をカバー部10aの貫通孔10c、キャップ36の立上げ部36aの貫通孔36bに挿通して芯材24のねじ孔24aに螺入することにより、ドア本体2の底面における戸先側端部に取付ける。
【0023】
このドアにおいて、室内側で出火してドア本体2の室内側が火炎や熱気によりあおられた場合、内側表面板10から加熱され、ドア本体2は室内側に膨出するように反り、その結果、ドア本体2の下端側は
図10の矢印38に示すように室外側に反り、ドア本体2の下端部と下枠6との間の隙間が拡大する。一方、火災によって内側表面板10を介して加熱発泡材28に伝熱され、加熱発泡材28が加熱されて発泡する。この際、加熱発泡材28の底面は発泡規制材29により覆われており、発泡規制材29の温度上昇は加熱発泡材28より遅れるため、加熱発泡材28のみがまず発泡し、下枠6とドア本体2の底面の間を閉塞する。この時、加熱発泡材28の下方への発泡は、発泡規制材29により規制される。
【0024】
また、最初の発泡は温度の高い室内側から始まると共に、ドア本体2の戸先側では、加熱発泡材28の室外側はキャップ36の壁部36fに対面しているので、室外側への発泡が防止され、加熱発泡材28は室内側に向けて集中的に発泡する。このため、ドア本体2の下端部とドア枠1の下枠6との間の隙間が発泡後の加熱発泡材28により有効に閉塞され、延焼が防止される。
【0025】
本実施の形態においては、加熱発泡材28が縦枠4の見込み面4d側に向けて発泡することがキャップ36により抑制されるため、加熱発泡材28の発泡方向がさらに室内側に集中し、ドア本体2と下枠6との間の隙間がより確実に閉塞される。さらに、この実施の形態のキャップ36は、加熱発泡材28の室外側の縁を当てる壁部36fを有しているので、ドア本体2の戸先側において、加熱発泡材28の室外側への発泡が確実に規制され、ドア本体2の下辺部とドア枠1の下枠6との間の隙間が発泡後の加熱発泡材28により有効に閉塞される。また、加熱発泡材28や発泡規制材29はドア本体2の下面に固着しているので、居住者が加熱発泡材28や発泡規制材29を踏みつけて破損する等の問題も生じない。
【0026】
また、本実施の形態においては、ドア本体2の戸先側端部と縦枠4の見込み面4dにそれぞれ加熱発泡材25,26を取付けているので、
図11に示すように、これらが発泡することにより、ドア本体2の戸先側端部と縦枠4の見込み面4dとの間の隙間も閉塞される。
【0027】
加熱発泡材28の発泡の向きを規制する発泡規制材29として
、加熱発泡材を用いているので、発泡規制材として同種の材料を用いることが可能になり、経済的に構成できると共に、最終的には発泡規制材29として用いる加熱発泡材も発泡して隙間閉塞に寄与するので、延焼がより有効に防止される。なお、本実施の形態において、発泡規制材29として用いる加熱発泡材としては、同じ材質のものを用いてもよく、また、同じ材質ではなく、発泡規制材29側の加熱発泡材の発泡温度を高くしてもよい。
【0028】
なお、室内側において火災が発生した場合、ドア本体2の吊元側は、上下端部が枢着軸19,21によりドア枠1に固定されているので、ドア本体2の吊元側の上下方向の中央部が室内側に反った際には、この吊元側は吊元側縦枠3に圧接され、隙間発生の問題は発生しない。また、ドア本体2の戸先側の上端部の外側への反り発生により生じる隙間閉塞のためには、上枠5あるいはドア本体2の上面に加熱発泡材を取付ければよく、上枠5あるいはドア本体2の上面に加熱発泡材を取付けても、居住者等による加熱発泡材の踏みつけの問題も生じない。また、室外側で発生する火災の場合、戸先側においては、上下方向の中央側がハンドル7のラッチ錠によりドア枠1に固定されているので、ドア本体2の上下端は縦枠4の上下端部に押し付けられるため、隙間発生の問題は生じない。
【0029】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明を実施する場合、加熱発泡材28の室外側への発泡を規制する部材として、キャップ36以外の部材をドア本体2の下面における加熱発泡材28の室外側に設けてもよく、さらに発泡規制材29に加熱発泡材28の室外側縁に当てる部分を設けてもよい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、構成部材やその組み合わせについて、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:ドア枠、2:ドア本体、3:吊元側縦枠、4:戸先側縦枠、5:上枠、6:下枠、7:ハンドル、8a,8b:シリンダー錠、10:内側表面板、11:外側表面板、12:断熱材、19,21:枢着軸、24:戸先側芯材、28:耐火材(加熱発泡材)、29:発泡規制材(加熱発泡材)、30a,30b:両面テープ、32:固定具、33:芯材、34:固定具、36:キャップ、37:取付けねじ