特許第6290675号(P6290675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6290675-紫外線遮蔽塗料 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290675
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】紫外線遮蔽塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20180226BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180226BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/00 Z
   C09D5/32
   C09D7/12
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-62393(P2014-62393)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-208801(P2014-208801A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2017年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-61794(P2013-61794)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 陽介
(72)【発明者】
【氏名】福井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】長尾 朋和
(72)【発明者】
【氏名】本島 信一
(72)【発明者】
【氏名】中山 鶴雄
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−194235(JP,A)
【文献】 特開平05−125217(JP,A)
【文献】 特開平05−287116(JP,A)
【文献】 特開2011−117266(JP,A)
【文献】 特表平06−505810(JP,A)
【文献】 特開2010−168578(JP,A)
【文献】 特開2013−194182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00−10/00
C09D101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線遮蔽成分としての平均粒子径が1nm以上100nm以下であるCuI粒子と、
溶媒であるメトキシプロパノールと、を含み、
外線遮蔽作用を有し、且つJISK7136に基づき測定される全光線透過率が70%以上である塗料。
【請求項2】
前記塗料中の不揮発成分に対するCuI粒子の含有量が0.1質量%以上60質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽性能、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽性能に優れると共に、安定性、安全性、透明性に優れた紫外線遮蔽塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の変化によりオゾン層が破壊されつつあることから、短波長領域の紫外線が地表にまで到達することによる生体への影響が懸念されている。紫外線は、一般に、波長が320〜400nmの長波長紫外線(UVA)、波長が290〜320nmの中波長紫外線(UVB)、波長が290nm以下の短波長紫外線(UVC)の3つに分類される。これらの紫外線のうち、短波長紫外線(UVC)は、大気圏上空のオゾン層や、空気中の酸素などにより吸収、散乱されて地上には到達せず、人体に及ぼす影響は小さい。中波長紫外線(UVB)も本来は地上にほとんど到達しなかったが、昨今オゾン層の破壊により地上に到達するようになり、長波長紫外線(UVA)は地上に到達する紫外線の多くを占めている。中波長紫外線(UVB)、長波長紫外線(UVA)とも、人体が直接浴びることにより障害を引き起こす恐れがあるので、注意を要する。
【0003】
この長波長紫外線(UVA)及び中波長紫外線(UVB)のうち、中波長紫外線(UVB)は早期から注目されており、日焼けや炎症等の皮膚障害を引き起こすことが知られている。この日焼けや炎症等から皮膚を保護するために、既に各種の日焼け止め製品が提案され、実用化されている。この日焼け止め製品では、中波長紫外線(UVB)の防御能の指標としてSPF(Sun Protection Factor)値が用いられている。
【0004】
一方、長波長紫外線(UVA)は、中波長紫外線(UVB)と比べて皮膚への影響が穏やかであるものの、太陽光中に多く含まれており、しかも皮膚の深部まで届くために、皮膚の老化に繋がるとして注目を集めている。この長波長紫外線(UVA)についても、防御能の指標としてPA(Protection Grade of UVA)値が用いられている。
【0005】
また、食品や医療・医薬品包装等の分野においても、紫外線によって内容物が変質、劣化、変色することが知られている。特に食品の酸化に大きく影響を与えるのは、近紫外領域(320〜420nm)であり、またビタミンB2へ影響を与えるのは、400〜500nmの領域の光である。これらの光の対策として、従来様々な技術が提案されてきた。
【0006】
これまで、長波長紫外線(UVA)を遮蔽する紫外線遮蔽剤としては、有機系紫外線遮蔽剤では、ジベンゾイルメタン誘導体、ベントリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アントラニル誘導体等が用いられており、無機系紫外線遮蔽剤では、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化セリウム粒子等が用いられている。(特許文献1)
【0007】
また、透明性に優れると共に紫外線を遮蔽する機能に優れ、且つ、包装体の内容物に接触しても酸化劣化を起こさず、特に食品包装の分野に用いられる包装材がある。この包装材は、紫外線遮蔽材として超微粉末金属酸化物を用いている。具体的には紫外線遮蔽材として酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄とフェノール系酸化防止剤を含有するフィルム状部材が提案されている。(特許文献2)
【0008】
また、塗料、ワニスあるいは皮膚を保護するローションまたはクリームのような液体、などの用途に、銅とハロゲン化物を含むUV吸収ガラスと、このUV吸収ガラスを用いた紫外線を吸収する液体などが提案されている。(特許文献3、特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−275223
【特許文献2】特開2004−225016
【特許文献3】特開平4−18501
【特許文献4】特開平4−275942
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記紫外線遮蔽剤、または紫外線遮蔽材を用いたフィルム等の部材においては、以下のような様々な問題がある。
【0011】
有機系紫外線遮蔽剤は、長波長紫外線(UVA)を吸収するものがあるが、吸収波長域が狭い点、あるいは溶解性、安定性などの問題から配合量や配合の組み合わせに限界がある。加えて有機系化合物の紫外線吸収剤においては、毒性等の面で包装材等に用いた場合に溶出等の懸念があり、食品、医療品、医薬品等への使用については課題があった。
【0012】
また、近年、無機系紫外線遮蔽剤で且つ長波長紫外線(UVA)に対する遮蔽能の高い酸化亜鉛が検討されているが、酸化亜鉛の紫外線遮蔽効果は、紫外線の吸収と散乱に基づくものであり、従来の酸化亜鉛は380nmまでの遮断範囲に留まっていた。
【0013】
また、UV吸収ガラスは、UV遮蔽能を持つ物質であるハロゲン化銅をガラス中に析出させるためにハロゲン物質と銅化合物を別々にガラス成分に配合しなければならず、また、析出にはホウ素が必要である。さらには、ハロゲン化銅の粒子径を制御することは製法上難しい。ガラスの製造工程では、高温での処理が必要であったり、ガラスの曇りを少なくするための加熱工程が必要であったり、パウダーとして用いる為に板状のガラスを細かく粉砕する工程が必要となり、UV吸収ガラスは製造工程が複雑である。また、ガラスが着色しているため、透明性、可視光透過性が必要な場合には使用できず、用途が限られてしまう。
【0014】
また、紫外線遮蔽能をフィルムや成型体等の部材に発現させる場合には、紫外線遮蔽物質を含む塗料を作製し、表面に塗布する方法がよく取られる。この際、塗布表面の透明性が要求されることが多くあるが、紫外線遮蔽能と透明性の両立には散乱光の影響を受けない粒子径の紫外線遮蔽剤を塗料中に良く分散させる必要がある。しかし、紫外線遮蔽物質と、塗料中の溶媒によっては紫外線遮蔽材が溶解、変色が容易に生じてしまい、機能劣化につながることがある。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽機能に優れ、また人体にも安全性の高い紫外線遮蔽塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち第1の発明は、紫外線遮蔽成分として一価の銅化合物および/またはヨウ化物と、溶媒と、を含むことを特徴とする紫外線遮蔽塗料。
【0017】
また、第2の発明は、前記溶媒は、非共有電子対を有する窒素原子を分子構造内に有さず、かつ、非共有電子対を有する硫黄原子を分子構造内に有さない溶媒であることを特徴とする第1の発明に記載の紫外線遮蔽塗料。
【0018】
さらに第3の発明は、前記一価の銅化合物および/またはヨウ化物の平均粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の紫外線遮蔽塗料。
【0019】
第4の発明は、前記塗料中の不揮発成分に対する一価の銅化合物および/またはヨウ化物の含有量が0.1質量%以上60質量%以下であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれか一つに記載の紫外線遮蔽塗料。
【0020】
第5の発明は、前記一価の銅化合物が、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、シアン化物、水酸化物、およびチオシアン化物からなる群から少なくとも1種類選択されることを特徴とする第1から第4のいずれか一つに記載の紫外線遮蔽塗料。
【0021】
第6の発明は、前記一価の銅化合物が、CuCl、CuBr、Cu(CH3COO)、CuSCN、Cu2S、Cu2O、CuCN、CuOH、およびCuIからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする第1から第5の発明のいずれか一つに記載の紫外線遮蔽塗料。
【0022】
第7の発明は、前記ヨウ化物が、CuI、AgI、SbI3、IrI4、GeI4、GeI2、SnI2、SnI4、TlI、PtI2、PtI4、PdI2、BiI3、AuI、AuI3、FeI2、CoI2、NiI2、ZnI2、HgIおよびInI3からなる群から少なくとも1種類選択されることを特徴とする第1から第6の発明のいずれか一つに記載の紫外線遮蔽塗料。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一価の銅化合物および/またはヨウ化物を用いることで紫外線遮蔽性能、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽性能に優れた紫外線遮蔽塗料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】透過スペクトルの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態の紫外線遮蔽塗料について詳述する。紫外線遮蔽塗料は、一価の銅化合物および/またはヨウ化物を有効成分とする紫外線遮蔽粒子、塗膜形成剤と、溶媒を含むことを特徴とする。
【0026】
本実施形態の紫外線遮蔽塗料は、塗布することが可能な物の表面に塗布して乾燥することで、少なくとも一価の銅化合物とヨウ化物のいずれかを含む、紫外線を遮蔽する塗膜を形成することができる。塗布対象物は、上述のように塗布可能であれば特に限定されないが、たとえば繊維構造体や、フィルムやシート、パネル、樹脂等の成形体、金属や木材等の構造物などであり、これらの表面に塗布することで、紫外線遮蔽機能を付与することができる。
【0027】
また本実施形態の紫外線遮蔽塗料の種類は特に限定されないが、用いる溶媒や塗膜形成剤の種類によって、油性塗料、酒精塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、ゴム系塗料などの塗料として提供することができる。
【0028】
本実施形態の紫外線遮蔽塗料において、紫外線を遮蔽する有効成分は、一価の銅化合物、ヨウ化物、あるいは一価の銅化合物とヨウ化物の混合物である。これらの有効成分は、紫外線遮蔽塗料において粒子の状態で塗料を構成する溶媒に分散して含まれる。
【0029】
有効成分である一価の銅化合物の種類については特に限定されないが、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、水酸化物、シアン化物、チオシアン酸塩、またはそれらの混合物からなることが好ましい。このうち、一価の銅化合物が、CuCl、Cu(CH3COO)、CuI、CuBr、Cu2S、Cu2O、CuOH、CuCN、およびCuSCNからなる群から少なくとも1種類以上、選択されることが一層好適である。
【0030】
また、有効成分として用いられるヨウ化物としては、CuI、AgI、SbI3、IrI4、GeI2、GeI4、SnI2、SnI4、TlI、PtI2、PtI4、PdI2、BiI3、AuI、AuI3、FeI2、CoI2、NiI2、ZnI2、HgIおよびInI3から少なくとも1種類選択されることが好適である。
【0031】
含有される一価の銅化合物および/またはヨウ化物の大きさは特に限定されないが、平均の粒子径が500μm以下の微粒子とすることが好ましい。平均粒子径が500μmを超えると、500μm以下である場合に比べて、基体に塗布乾燥させた場合に、表面が本来有する質感を損ねたり、また、一価の銅化合物および/またはヨウ化物の基体への固着強度が弱くなるため、摩擦力などにより基体から剥離・脱落しやすくなる。
【0032】
さらに、塗膜の密着強度を考慮すると、一価の銅化合物および/またはヨウ化物の平均粒子径は1μm以下であることがより好ましい。塗布対象の1つであるフィルターやネットなどの繊維構造体やシート或いはフィルムなどでは、その使用環境や時間の経過により、繊維やシートなどの基材表面に形成した一価の銅化合物および/またはヨウ化物を含む塗膜が剥離する場合がある。一価の銅化合物および/またはヨウ化物の平均粒子径を1μm以下とすることで、塗布対象物の種類に関わらず、耐久性の高い塗膜を形成することが可能な塗料が得られる。
【0033】
さらに、塗布対象に透明性を持たせるなら一価の銅化合物および/またはヨウ化物の平均粒子径は100nm以下であることが好ましい。
【0034】
なお一価の銅化合物および/またはヨウ化物の平均粒子径の下限値は、1nm以上とすることが好ましい。1nm以上であれば紫外線遮蔽効果を安定して維持でき、さらに粒子の製造上、取扱上および化学的安定性の観点からも好ましい。なお本明細書において、平均粒子径とは体積平均粒子径をいう。
【0035】
本実施形態の紫外線遮蔽粒子は、粒子単独で使用してもよいし、他の物質との複合粒子として使用してもよい。より具体的には、他の物質を母粒子として、該母粒子の粒径よりも小さい粒径の本実施形態の紫外線遮蔽粒子を子粒子として、該子粒子は該母粒子に埋め込まれて固定されているような複合粒子である。また、母粒子に本実施形態の紫外線遮蔽粒子を用い、子粒子に他の物質を用いてもよい。
【0036】
ここで、母粒子に埋めこまれる子粒子の大きさは、母粒子の粒径にあわせて適宜決定できるが、母粒子の粒径の1/10以下であることが好ましい。具体的には平均の粒子径が1nm以上、50μm未満であることが好ましい。1nm未満では化学的に不安定となる。また、50μm以上である場合は母粒子に埋め込んでも脱落する可能性が高くなるため好ましくない。母粒子の表面に埋め込まれていてもよいし、子粒子が母粒子の内部に完全に埋め込まれていてもよい。
【0037】
複合粒子として用いられる他の物質としては、一価の銅化合物および/またはヨウ化物と反応しない物質で、埋め込むことが可能であれば、特に限定されるのではないが、樹脂が好ましい。樹脂の場合、硬度が高くないため、本実施形態の紫外線遮蔽粒子を深く埋め込むことができる。また、樹脂は粒子重量が軽くなるため複合微粒子にしたとき、分散媒に分散させた場合に、沈降しにくく、分散しやすくなり好ましい。用いる樹脂としては、例えば、架橋アクリルや、PMMA、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン、セルロースなどが挙げられ、本実施形態の紫外線遮蔽粒子との密着性からナイロン6が挙げられる。
【0038】
複合粒子の製造方法は、母粒子と子粒子とを複合化できれば特に限定されないが、例えば、乳鉢などで母粒子と子粒子とを混ぜ合わせることで子粒子が母粒子に埋め込まれた複合粒子を形成することができる。また、その他に例えば、母粒子と子粒子を衝突させるなどして機械的に母粒子と子粒子を結合させる高速気流衝撃法や、母粒子と子粒子に強い圧力を加えることにより生じるエネルギーによって母粒子と子粒子とを結合させる表面融合法などのメカノケミカル法によっても形成することができる。
【0039】
他の物質と本実施形態の紫外線遮蔽粒子との複合粒子とすることで、紫外線遮蔽能を持つ子粒子を、粒子径の大きい母粒子に埋め込むことにより、凝集が起こりにくく再分散性に優れ、かつ、使用時に吸い込んでしまっても粒径が大きいため人体への影響をなくすことで、製造の際の危険性を低減できる。他の物質が樹脂の場合には、さらに上述の通り粒子を分散媒に分散させた場合に沈降しにくく、分散状態が維持されるので好ましい。
【0040】
本実施形態の紫外線遮蔽塗料は、塗料の種類にもよるが、通常は塗膜形成剤を含有する。塗膜形成剤とは、塗料が固まる基になる成分であってバインダーとして機能する成分であり、ビヒクルとも呼ばれる。本実施形態において、塗膜形成剤は特に限定されないが、例えば合成樹脂が好ましく、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン尿素樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂、セルロース系樹脂等が使用できる。塗料に透明性が必要な場合、透明性のある樹脂を選択すればよく、さらに必要に応じて無色の樹脂を選択すればよい。
【0041】
本実施形態の紫外線遮蔽塗料において塗膜形成剤が含有される場合には、一価の銅化合物やヨウ化物の紫外線遮蔽物質と、塗膜形成剤と、が塗料中の不揮発成分となる。塗膜形成剤が紫外線遮蔽塗料に含まれる場合において、一価の銅化合物および/またはヨウ化物の含有量は、塗料中の不揮発成分100質量%に対し、0.1質量%から60質量%の範囲であることが好ましい。10質量%から40質量%であることが一層望ましい。一価の銅化合物および/またはヨウ化物の含有量が0.1質量%に満たない場合は、紫外線遮蔽能が範囲内にある場合よりも小さくなり、また60質量%を超えると、コストの上昇や塗膜強度の低下の原因となる。
【0042】
なお、本実施形態の紫外線遮蔽塗料において、溶媒に一価の銅化合物および/またはヨウ化物と塗膜形成剤が分散または溶解しているときの、塗料全体に対する一価の銅化合物および/またはヨウ化物と塗膜形成剤の割合(つまり、塗料における不揮発成分の割合)は特に限定されず、塗料の用途等に応じて適宜変更可能である。また、後述する添加剤や顔料を含む場合も同様に適宜変更可能である。さらに、本実施形態における各成分の混合方法も特に限定されず、例えば公知の方法によって行うことができる。
【0043】
次に本実施形態の紫外線遮蔽塗料に含まれる溶媒は、塗料の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。溶媒としてはたとえば、水、メタノール、エタノール、ジ−n−プロピルエーテル、n−ペンテン、ジブチルエーテル、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、n−ヘプタン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサン、ジイソプロピルケトン、イソブチルクロリド、シクロヘキサン、エチルアミルケトン、酢酸イソブチル、ベンドニトリル、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸アミル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、ジエチルカルボネート、ジエチルケトン、エチルベンゼン、キシレン、ブチルカルビトール、トルエン、酢酸エチル、ダイアセトンアルコール、ベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、スチレン、エチルカルビトール、酢酸メチル、アノン、アニソール、セロソルブ、ジエチルアセトアミド、ジエチルカルボネート、ジオキサン、アセトン、メチルイソブチルカルビノール、ニトロベンゼン、アクリロニトリル、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ブタノール、シクロヘキサノール、アセトニトリル、プロピルアルコール、ベンジルアルコール、ブチレンカルボネート、ジメチルホルムアミド、エチレンカルボネート、メチルホルムアミドまたはこれらの混合物などを用いることができる。
【0044】
さらに溶媒としては、紫外線遮蔽率、及び透明性に優れる塗布膜を形成するために、一価の銅化合物および/またはヨウ化物と溶解性を示さないものが好ましく、分子構造内に一価の銅化合物および/またはヨウ化物と反応性の高い、非共有電子対を有する窒素原子や、非共有電子対を有する硫黄原子を分子構造内に有さない溶媒が好ましい。非共有電子対を有する窒素や非共有電子対を有する硫黄を分子構造内に有する溶媒を使用した場合、一価の銅化合物やヨウ化物と、窒素や硫黄と、が反応して、塗膜の透明性が低下するためである。具体的には、水、メタノール、エタノール、ジ−n−プロピルエーテル、n−ペンテン、ジブチルエーテル、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、n−ヘプタン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサン、ジイソプロピルケトン、イソブチルクロリド、シクロヘキサン、エチルアミルケトン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸アミル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、ジエチルカルボネート、ジエチルケトン、エチルベンゼン、キシレン、ブチルカルビトール、トルエン、酢酸エチル、ダイアセトンアルコール、ベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、スチレン、エチルカルビトール、酢酸メチル、アノン、アニソール、セロソルブ、ジオキサン、アセトン、メチルイソブチルカルビノール、ブタノール、シクロヘキサノール、プロピルアルコール、ベンジルアルコール、ブチレンカルボネート、エチレンカルボネート、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0045】
本実施形態の紫外線遮蔽塗料は以上説明した構成の他に、必要に応じて添加剤、顔料を含んでも良い。添加剤としては、可塑剤、乾燥剤、硬化剤、皮張り防止剤、平坦化剤、たれ防止剤、防カビ剤、抗菌剤、熱線吸収剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、粘性調整剤、安定剤、乾燥調整剤、などがあげられる。さらに、抗ウイルス組成物、抗菌組成物、防黴組成物、抗アレルゲン組成物、触媒、反射防止材料、遮熱特性を持つ材料などと混合して使用してもよい。
【0046】
本実施形態の紫外線遮蔽塗料は、他の紫外線遮蔽物質を併用してもよい。例えば、無機物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、又は酸化亜鉛が挙げられる。また、有機系材料であれば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’.5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;あるいは、フェニルサリシレート、2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリ等と併用してもよい。
【0047】
本実施形態の塗料は、公知の方法、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの方法で無機基材や有機基材へコーティングすることにより、基材上に塗膜を形成することができる。また、ブラシなどで塗布してもよい。また、必要に応じて、加熱乾燥などによる溶剤除去や、再加熱、赤外線、紫外線、電子線、γ線などの照射により塗膜を固化させてもよい。
【0048】
本実施形態の塗料が塗布乾燥されて一価の銅化合物および/またはヨウ化物を含む塗膜が形成可能な繊維構造体としては特に限定されないが、例えば織物や不織布などが挙げられ、それらの具体的な応用例としては、衣類、寝具、網戸用ネット、鶏舎用ネット、農業用ネットなどが挙げられる。これらの繊維構造体は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ポリテトラフロロエチレン、ポリビニルアルコール、ケブラー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、レーヨン、キュプラ、テンセル、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、綿、麻、羊毛、絹、竹、などの高分子材料や、アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮、銅、タングステン、チタニウムなどの金属からなる繊維で構成されている。
【0049】
また、本実施形態の紫外線遮蔽塗料が塗布乾燥される部材は、フィルムやシートとすることもできる。フィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン−エチレン共重合体などの樹脂からなるものが挙げられる。また、シートとしては、ポリカーボネート樹脂シート、フィルム塩化ビニルシート、フッ素樹脂シート、ポリエチレンシート、シリコーン樹脂シート、ナイロンシート、ABSシート、ウレタンシートなどの高分子からなるシートやチタニウム、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、真鍮などの金属からなるシートが挙げられる。
【0050】
これらの高分子からなるフィルムやシートの場合、予め、一価の銅化合物および/またはヨウ化物を含む塗膜の密着性を高める為に、コロナ処理や大気プラズマ処理、火炎処理などにより親水化されてあればさらに良い。また金属からなるシートでは、表面に付着している圧延用オイルや腐食生成物などを、溶剤や酸、アルカリなどにより除去すれば良い。またシート表面に塗装や印刷などが施されてあっても良い。
【0051】
さらにまた、本実施形態の紫外線遮蔽塗料が塗布乾燥される部材としては、成形体とすることもできる。例えば、ABSやポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリエステルなどの高分子からなる成形体が挙げられる。金属の場合では、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、真鍮、ステンレス、チタニウムなどが挙げられる。金属表面には予め電気めっきや無電解めっきなどにより金属の薄膜や塗装、印刷などが施されてあっても良い。
【0052】
以上の本実施形態の紫外線遮蔽塗料によれば、一般に320〜400nmの波長である長波長紫外線を含む紫外線を確実に遮蔽することができるという優れた効果が得られる。特に、本実施形態の紫外線遮蔽材は従来遮蔽することが難しかった、380nm〜400nmの範囲の長波長紫外線も効果的に遮蔽することができる。
【0053】
また本実施形態の紫外線遮蔽塗料によれば、紫外線遮蔽機能の有効成分である一価の銅化合物やヨウ化物の粒径を所定の範囲に制御して含有させることで、耐久性のより高い安定した塗膜を形成可能な塗料を提供することができる。また、上記粒子の粒径を所定の範囲に調整したり、さらに分子構造内に非共有電子対を有する窒素、または分子構造内に硫黄原子を有さない物質を溶媒として用いることで、紫外線遮蔽能が高く、かつ透明性の高い塗料を提供することができる。また、本実施形態の紫外線塗料の紫外線遮蔽成分は有機系ではないため、人体に対してより安全性が高い。
【0054】
以上のようにして得られた本発明に係る紫外線遮蔽材は、カーテン、障子様フィルムなどのインテリア類、カーディガン等の衣類、寝装具等の布帛、食品、医療、医薬品の包装に用いられるフィルム状の包装材料や充填する容器など、窓ガラスへの貼り付けフィルム、ブラインド、壁紙などの建装材、車両用シート、防虫用シートシャッター、紫外線滅菌用部材、ビニールハウス、植物等の日焼け防止用カバーなどの農業資材、サンバイザー、サングラス、カラーコンタクト、日傘、書類保存用のファイル、クリアフォルダ、デスクマットなどの日用雑貨など、様々な分野に利用できる。
【実施例】
【0055】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
(ヨウ化銅(CuI)ナノ粒子の作製)
本発明方法の紫外線遮蔽塗料の作製にあたっては、ビーズミルを用いて水、またはエタノール中でヨウ化銅(日本化学産業株式会社製)の粉砕を行うことにより得られるヨウ化銅ナノ粒子溶液を紫外線遮蔽材として用いた。ヨウ化銅の粉砕において、分散剤としてポリビニルピロリドン(SIGMA-ALDRICH製)を用いて粉砕し、2種のヨウ化銅ナノ粒子を作成した。ヨウ化銅ナノ粒子の平均粒子径は、それぞれ75nm、100nmであった。
【0057】
(実施例1)
塗膜形成材としてアクリル樹脂(アクリディックDL−967、DIC株式会社製)を、紫外線遮蔽材としてヨウ化銅ナノ粒子(上述の平均粒子径100nmの粒子)を用い、溶媒としてメトキシプロパノールを用いて、アクリル樹脂20質量%、ヨウ化銅ナノ粒子2質量%(不揮発成分100質量%に対し11.1質量%)となるように混合し、紫外線遮蔽塗料とした。
【0058】
(実施例2)
塗膜形成材としてウレタン樹脂(MAT−200E、DIC株式会社製)を、紫外線遮蔽材としてヨウ化銅ナノ粒子(上述の平均粒子径75nmの粒子)を用い、溶媒として水を用いて、ウレタン樹脂20質量%、ヨウ化銅ナノ粒子2質量%(不揮発成分100質量%に対し11.1質量%)となるように混合し、紫外線遮蔽塗料とした。
【0059】
(実施例3)
塗膜形成材としてアクリル樹脂(アクリディックDL−967、DIC株式会社製)を、紫外線遮蔽材としてヨウ化銅ナノ粒子(上述の平均粒子径100nmの粒子)を用い、溶媒としてアセトニトリルを用いて、アクリル樹脂20質量%、ヨウ化銅ナノ粒子2質量%(不揮発成分100質量%に対し11.1質量%)となるように混合し、紫外線遮蔽塗料とした。
【0060】
(実施例4)
塗膜形成材としてアクリル樹脂(アクリディックDL−967、DIC株式会社製)を、紫外線遮蔽材としてヨウ化銅ナノ粒子(上述の平均粒子径100nmの粒子)を用い、溶媒としてジメチルスルホキシドを用いて、アクリル樹脂20質量%、ヨウ化銅ナノ粒子2質量%(不揮発成分100質量%に対し11.1質量%)となるように混合し、紫外線遮蔽塗料とした。
【0061】
(実施例5)
紫外線遮蔽材として、ヨウ化銅粉末(日本化学産業株式会社製)をジェットミルで乾式粉砕し、平均粒子径130nmのヨウ化銅ナノ粒子を得た。得られたヨウ化銅ナノ粒子と、分散剤としてポリビニルピロリドンをエタノール中に分散し、ヨウ化銅ナノ粒子分散液を得た。このヨウ化銅ナノ粒子分散液と、塗膜形成材としてアクリル樹脂(アクリディックDL−967、DIC株式会社製)を用い、溶媒としてメトキシプロパノールを用いて、アクリル樹脂20質量%、ヨウ化銅ナノ粒子2質量%(不揮発成分100質量%に対し11.1質量%)となるように混合し、紫外線遮蔽塗料とした。
【0062】
(比較例1)
実施例1の紫外線遮蔽材として二酸化チタン(テイカ株式会社製、微粒子酸化チタンMT−100HD、平均粒子径15nm)を用いた以外は、同様の方法で紫外線遮蔽塗料を得た。
【0063】
(比較例2)
実施例1の紫外線遮蔽材として酸化亜鉛(住友大阪セメント株式会社製、超微粒子酸化亜鉛ZnO−410、平均粒子径15nm)を用いた以外は、同様の方法で紫外線遮蔽塗料を得た。
【0064】
(紫外線遮蔽塗膜形成方法)
上述の実施例、比較例の紫外線遮蔽塗料5gを縦19cm横14cmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー38T60、東レ株式会社製)にスプレー塗布を行い、フィルム上への塗料の塗布を行った。塗布後のフィルムは80℃にて5分間以上乾燥後、室温にて冷却を行いポリエチレンテレフタレートフィルム上への紫外線遮蔽塗膜形成を行った。
【0065】
(紫外線遮蔽塗膜の光学特性評価)
表面に紫外線遮蔽塗膜を形成したポリエチレンテレフタレートフィルムの光学特性を紫外−可視光線分光光度計(V−670、日本分光株式会社)、及び濁度計(NDH2000、日本電色産業株式会社)を用いた透過率測定により評価した。紫外−可視光線分光光度計による透過率測定は、200〜800nmの波長域において、波長走査速度400nm/min、スペクトルバンド幅5nmにおいて行い、以下の通りに紫外線遮蔽性の評価を行った。
【0066】
(紫外線遮蔽性)
200〜400nmの波長域において透過率が5%未満:◎
200〜400nmの波長域において透過率が5%以上20%未満:○
200〜400nmの波長域において透過率が20%以上:×
【0067】
(透明性)
JIS K 7136に基づき、濁度計による全光線透過率測定を行い、透明性の評価を以下の通りに行った。
全光線透過率が70%以上:◎
全光線透過率が50%以上70%未満:○
全光線透過率が50%未満:△
【0068】
各実施例と比較例の構成と、紫外線遮蔽性と透明性の結果を表1に示す。実施例1、2と比較例1、2の塗料の透明性が確認された。
【0069】
【表1】
【0070】
図1に実施例1〜5と、比較例1及び2の塗料を用いて形成した塗膜を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの透過スペクトルを示す。紫外線遮蔽材としてCuIを用いた実施例1〜6においては、長波長紫外線といわれている320〜400nmの波長の光の透過率が20%未満であった。これに対し、紫外線遮蔽材に二酸化チタン(TiO2)を用いた比較例1では340nm付近から5%を超え、さらに380nm付記では20%を超え、400nmでは60%を超えていた。また、紫外線遮蔽材に酸化亜鉛(ZnO)を用いた比較例2では380nm付近から透過率が5%を超え、400nm付近では60%を超えていることが確認された。
【0071】
さらに、非共有電子対を有する窒素原子や非共有電子対を有する硫黄原子を分子構造内に有さない溶媒を用いた実施例1、2と5では透明性が高いことが確認された。さらに、紫外線遮蔽材の平均粒子径が100nm以下である実施例1と2は、実施例5と比較してPETフィルム表面に、より分散して塗布されているため、長波長紫外線遮蔽波長の光の透過率が5%未満と非常に高い紫外線遮蔽性能を持つことを確認された。
図1