特許第6290703号(P6290703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290703
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】液化ガスの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20180226BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   F25J1/00 D
   F25B27/00 Q
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-96719(P2014-96719)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-215104(P2015-215104A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】永田 大祐
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−210125(JP,A)
【文献】 特開2003−028567(JP,A)
【文献】 特開昭63−271084(JP,A)
【文献】 特開昭63−271085(JP,A)
【文献】 特開2012−237554(JP,A)
【文献】 特開2005−241232(JP,A)
【文献】 特表2009−509120(JP,A)
【文献】 特開2005−221199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が断熱圧縮される第1圧縮手段と、断熱圧縮された該熱媒体が定圧加熱される第1熱交換器と、加熱された該熱媒体が断熱膨張される複数の並列的に配設された膨張手段と、断熱膨張された該熱媒体が定圧冷却される第2熱交換器と、該第2熱交換器から導出された熱媒体が前記第1圧縮手段に導かれる流路と、を備えたランキンサイクルを有し、
前記膨張手段とリンクされ、該膨張手段と同数の直列的に配設された第2圧縮手段を有するとともに、
低温液化状態の液化天然ガスが、前記第2熱交換器に導入され、その寒冷を前記熱媒体に伝達して導出され、
給送された原料ガスが、複数の前記第2圧縮手段によって順に圧縮された後、前記第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、前記熱媒体によって冷却された後、液化ガスとして取り出されることを特徴とする液化ガスの製造装置。
【請求項2】
前記第2圧縮手段から導出された前記原料ガスが前記第1熱交換器または第2熱交換器に導かれる流路と、該第1熱交換器または第2熱交換器から導出された前記液化ガスの圧力調整を行う調整弁と、該調整弁を介して前記液化ガスが導入され、液体成分と気体成分に気液分離される気液分離部と、を有し、該気液分離部から導出された前記気体成分を前記第2圧縮手段に導入し、前記液体成分を液化ガスとして取り出すことを特徴とする請求項1記載の液化ガスの製造装置。
【請求項3】
第3熱交換器が、前記第1熱交換器から導出された前記熱媒体が前記膨張手段に導かれる流路に設けられ、該第3熱交換器において、該熱媒体と、前記第2熱交換器から導出された前記液化天然ガスと、前記第2圧縮手段から導出された前記原料ガスと、が熱交換されることを特徴とする請求項2記載の液化ガスの製造装置。
【請求項4】
原料ガスが前記第2圧縮手段に導かれる流路に、第1分岐流路および第2分岐流路が設けられ、前記気液分離部から導出された液体成分が導かれる流路に、第4熱交換器および第3分岐流路が設けられるとともに、
前記気液分離部から導出された前記気体成分が、前記第1熱交換器または第2熱交換器を介して前記第1分岐流路に導かれる流路と、前記第3分岐流路で分岐された前記液体成分が、前記第4熱交換器を介して前記第2分岐流路に導かれる流路と、を有し、
前記気液分離部から導出された前記液体成分が、前記第4熱交換器を介して液化ガスとして取り出されることを特徴とする請求項2または3記載の液化ガスの製造装置。
【請求項5】
前記ランキンサイクルが、沸点あるいは熱容量の異なる複数の熱媒体を用いた複数のランキンサイクルで構成され、少なくとも、低い沸点あるいは小さな熱容量の熱媒体を用いた1のランキンサイクルに係る、複数の並列的に配設された第1膨張手段と、高い沸点あるいは大きな熱容量の熱媒体を用いた他のランキンサイクルに係る、複数の並列的に配設された第2膨張手段と、を有するとともに、
前記第1膨張手段とリンクされ、該第1膨張手段と同数の直列的に配設された第2圧縮手段と、前記第2膨張手段とリンクされ、該第2膨張手段と同数の直列的に配設された第3圧縮手段と、が設けられ、
原料ガスが、前記第2圧縮手段によって圧縮された後、前記第3圧縮手段によって、さらに圧縮されて前記第1熱交換器に導入される、または、
原料ガスが、前記第2圧縮手段によって圧縮された後、前記第3圧縮手段の初段の圧縮手段によって圧縮されて前記第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、導出した液化ガスは、次段の圧縮手段によって圧縮されて前記第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、さらに、これを所定段数繰り返す、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の液化ガスの製造装置。
【請求項6】
第1圧縮手段によって断熱圧縮された熱媒体が、第1熱交換器において定圧加熱された後、複数の並列的に配設された膨張手段によって断熱膨張され、さらに第2熱交換器において定圧冷却される、ランキンサイクルを形成するとともに、
低温液化状態の液化天然ガスが、前記第2熱交換器に導入され、その寒冷を前記熱媒体に伝達し、
給送された原料ガスが、前記膨張手段とリンクされ、該膨張手段と同数の直列的に配設された第2圧縮手段によって順に圧縮された後、前記第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、前記熱媒体によって冷却された後、液化ガスとして取り出されることを特徴とする液化ガスの製造方法。
【請求項7】
前記第2圧縮手段から導出された前記原料ガスが、前記第1熱交換器または第2熱交換器において冷却され、調整弁によって圧力調整され、気液分離部において液体成分と気体成分に気液分離されるとともに、該気液分離部から導出された前記気体成分が前記第2圧縮手段に導入され、前記液体成分が液化ガスとして取り出されることを特徴とする請求項6記載の液化ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(以下「LNG」ということがある)の寒冷を利用した液化ガスの製造装置および製造方法に関し、特に空気分離装置などによって製造される窒素ガスの液化技術として有用である。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(NG)は、輸送や貯蔵の利便性などのため、液化天然ガス(LNG)として貯蔵され、これを気化した後に、主として火力発電用や都市ガス用として用いられる。このため、LNGの寒冷を有効利用する技術が開発されている。一般に、LNGの寒冷を利用して窒素ガス等を液化する設備としては、窒素ガスを圧縮機でLNGとの熱交換で液化可能な圧力まで圧縮し、次いで熱交換器でLNGと熱交換させてLNGを昇温気化させるとともに、窒素ガスを液化するプロセスが用いられている。
【0003】
また、圧縮機を駆動するための電力は、昼間の料金に比べて夜間が安く設定されているため、上記LNGの供給量の変動と電力料金の差を勘案して、効率よくガスを液化するためのガス液化プロセスが提案されている。例えば、図7に示すように、1台以上のガス用圧縮機101と、1台以上のガス用膨張タービン103と、ガスと液化天然ガスとを熱交換させる熱交換器102とを備えた液化プロセスにより、前記液化天然ガスの寒冷を利用して前記ガスを液化する方法において、供給される液化天然ガスの増量時には前記膨張タービン103を停止又は減量運転し、供給される液化天然ガスの減量時には前記膨張タービン103を稼働又は増量運転することを特徴とする液化天然ガスの寒冷を利用したガスの液化方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、一般的に、こうした液化プロセスにおいては、膨張タービンのシャフトにブースターを連結させたコンパンダーが広く用いられる。ブースターにより低圧流体を高圧流体へと圧縮し、高圧流体を膨張タービンに導入し膨張させることにより低温流体とすることができる。このとき、膨張により発生した仕事は、膨張タービンのシャフトに連結させたブースターコンプレッサーにより回収される(例えば、特許文献2参照)。また、液化プロセスに膨張タービンのシャフトにブースターを連結させたコンパンダーを用いる場合において、ブロアーによる昇圧、膨張タービンによる膨張降温を2段階行う方法が知られている(例えば、特許文献3,4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−045050号公報
【特許文献2】特表平10−501053号公報
【特許文献3】特開平09−049685号公報
【特許文献4】特開平06−050657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような低温の液化ガス等の製造装置では、以下のような種々の課題が生じることがあった。
(i)ガス液化プロセスに供給されるLNG量は、一般に火力発電や都市ガス等の需要変動によって変動することがあり、利用できる寒冷量も変動することがある。従って、供給されるLNGが減少した場合においても、液化ガス等の生産量に対して影響を受けないように、LNGの寒冷を効率よく利用できる装置や方法が要求されている。
(ii)圧縮ガスの製造プロセスにおいて、常温常圧のガスを加圧するのは、大きなエネルギーを付加すると同時に、圧縮に伴うガス温上昇を抑える寒冷が必要とされる。例えば窒素ガスのように、大量に消費される汎用的な圧縮ガスの製造には、寒冷の効率的な利用と合せて、総合的なエネルギーの低減が大きな課題となっていた。
(iii)常圧ガスの液化開始温度は、LNGが約−80℃、窒素が約−120℃である。例えばLNGを寒冷として用いた窒素ガスの常圧による液化プロセスにおいては、窒素の液化が開始された状態において、これと熱交換が行われるLNGは、依然として大きな潜熱を有する液体状態であり、当該プロセスだけから見れば、LNGの寒冷が十分に利用させているとはいえない。また、残存するLNGの寒冷を他の用途に転用することは、必ずしも容易ではなく、LNGの寒冷を含めたエネルギーの効率的な利用は、こうした液化プロセスにおいて重要な課題となっていた。
(iv)また、膨張タービンと連結されたブースターは、機械的な制約により圧縮比を約2.5倍以上にすることは非常に困難であるという問題点があった。さらに、上記のように、ブロアーによる昇圧、膨張タービンによる膨張降温を2段階行う方法においても、圧縮比が2.5倍に満たせることはできなかった。
(v)一般に、高い圧縮比によって所定の圧力を得るためには、多段階のコンプレッサーユニットを設け、流体を予め所定の圧力まで昇圧した後、コンパンダーのブースターにて所望の圧力まで昇圧される方法が採られる。しかしながら、多段階のコンプレッサーユニットの運転で消費されるエネルギーは、例えば液化窒素製造プロセスにおいては、その膨張サイクルにおいて必要とされるほとんどの全てのエネルギーであり、消費エネルギーの低減あるいはエネルギー効率の向上等を図る観点からは、大きな障害となっていた。
【0007】
本発明の目的は、LNGの寒冷を効率よく利用し、液化ガスの作製に必要となるエネルギーの削減を図るとともに、コンプレッサーユニットのように消費エネルギーの大きな部材を用いずに、膨張タービンを有効に利用して、大きな圧縮比あるいは自由度の高い圧縮比を確保することができる液化ガスの製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す液化ガス製造装置および製造方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明に係る液化ガスの製造装置は、熱媒体が断熱圧縮される第1圧縮手段と、断熱圧縮された該熱媒体が定圧加熱される第1熱交換器と、加熱された該熱媒体が断熱膨張される複数の並列的に配設された膨張手段と、断熱膨張された該熱媒体が定圧冷却される第2熱交換器と、該第2熱交換器から導出された熱媒体が前記第1圧縮手段に導かれる流路と、を備えたランキンサイクルを有し、前記膨張手段とリンクされ、該膨張手段と同数の直列的に配設された第2圧縮手段を有するとともに、低温液化状態の液化天然ガスが、前記第2熱交換器に導入され、その寒冷を前記熱媒体に伝達して導出され、給送された原料ガスが、複数の前記第2圧縮手段によって順に圧縮された後、前記第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、前記熱媒体によって冷却された後、液化ガスとして取り出されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る液化ガスの製造方法は、第1圧縮手段によって断熱圧縮された熱媒体が、第1熱交換器において定圧加熱された後、複数の並列的に配設された膨張手段によって断熱膨張され、さらに第2熱交換器において定圧冷却される、ランキンサイクルを形成するとともに、低温液化状態の液化天然ガスが、前記第2熱交換器に導入され、その寒冷を前記熱媒体に伝達し、給送された原料ガスが、前記膨張手段とリンクされ、該膨張手段と同数の直列的に配設された第2圧縮手段によって順に圧縮された後、前記第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、前記熱媒体によって冷却された後、液化ガスとして取り出されることを特徴とする。
【0011】
こうした構成によって、液化ガスの作製において、LNGの寒冷を効率よく利用し、液化ガスの作製に必要となるエネルギーの削減を図るとともに、単独のコンプレッサーのように消費エネルギーの大きなユニットを用いずに、膨張タービンを有効に利用して、大きな圧縮比あるいは自由度の高い圧縮比を確保することができる液化ガスの製造装置および製造方法を提供することができる。具体的には、圧縮ガスとの熱交換によって効率よく熱伝達が行われ、液化ガスの作製に要する寒冷が非常に少ないとの知見を基に、低温ガスの作製において、圧縮ガスとの熱交換を有効に利用することができるランキンサイクル(以下「RC」ということがある)を適用することによって、非常に効率よくLNGの寒冷を利用できるとともに、寒冷の伝達に必要なエネルギーを大幅に削減することが可能となった。また、RCにおいて用いられる複数の並列的に配設された膨張タービンにリンクされた同数の第2圧縮手段を用い、原料ガスを直列的に順に圧縮することによって、大きな圧縮比あるいは自由度の高い圧縮比を確保することができる。ここでいう第2圧縮手段は、後述するように、コンプレッサーユニットのような単独の圧縮機能を有するユニットと区分して、タービンにリンクされたコンプレッサー等をいう
【0012】
本発明は、上記液化ガスの製造装置であって、前記第2圧縮手段から導出された前記原料ガスが前記第1熱交換器または第2熱交換器に導かれる流路と、該第1熱交換器または第2熱交換器から導出された前記液化ガスの圧力調整を行う調整弁と、該調整弁を介して前記液化ガスが導入され、液体成分と気体成分に気液分離される気液分離部と、を有し、該気液分離部から導出された前記気体成分を前記第2圧縮手段に導入し、前記液体成分を液化ガスとして取り出すことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記液化ガスの製造方法であって、前記第2圧縮手段から導出された前記原料ガスが、前記第1熱交換器または第2熱交換器において冷却され、調整弁によって圧力調整され、気液分離部において液体成分と気体成分に気液分離されるとともに、該気液分離部から導出された前記気体成分が前記第2圧縮手段に導入され、前記液体成分が液化ガスとして取り出されることを特徴とする。
【0014】
窒素ガスなどの液化ガスの作製において、LNGの寒冷を利用するとき、LNGの温度は−155℃前後であり、一方窒素の大気圧沸点は−196℃であるので、この間の温度レベルの差を埋める必要がある。本発明は、こうした機能を、ランキンサイクルを用いて実現するもので、ランキンサイクルに用いられた熱媒体を、LNGの寒冷を利用して約−150〜−155℃まで冷却することによって、窒素ガス等に伝達する寒冷を確保し、通常臨界圧力以上(例えば5〜6MPa)に昇圧してから、常圧または低圧に加圧された窒素ガス等に対して第1熱交換器を通じて該寒冷を伝達し、さらに高圧に圧縮された窒素ガス等に対して第2熱交換器を通じて該寒冷を伝達することによって、液化された窒素ガスを効率よく作製することができる。液化ガスの作製において、非常に効率よくLNGの寒冷を利用できるとともに、寒冷の伝達に必要なエネルギーを大幅に削減することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記液化ガスの製造装置において、第3熱交換器が、前記第1熱交換器から導出された前記熱媒体が前記膨張手段に導かれる流路に設けられ、該第3熱交換器において、該熱媒体と、前記第2熱交換器から導出された前記液化天然ガスと、前記第2圧縮手段から導出された前記原料ガスと、が熱交換されることを特徴とする。
こうした構成によって、さらに効率よくLNGの寒冷を利用することができ、エネルギー効率が高い液化ガスの作製が可能となる。特に、第3熱交換器に冷却水を導入し、熱容量の大きな冷熱による熱交換ができる構成を用いた場合には、起動時や停止時の過渡的な変動等に対しても、熱媒体,液化天然ガスおよび液化ガスに対する予備的あるいは補助的な温熱の移動を図ることができ、LNGの寒冷の安定的な利用および安定したエネルギー効率を確保することが可能となる。
【0016】
本発明は、上記液化ガスの製造装置であって、原料ガスが前記第2圧縮手段に導かれる流路に、第1分岐流路および第2分岐流路が設けられ、前記気液分離部から導出された液体成分が導かれる流路に、第4熱交換器および第3分岐流路が設けられるとともに、前記気液分離部から導出された前記気体成分が、前記第1熱交換器または第2熱交換器を介して前記第1分岐流路に導かれる流路と、前記第3分岐流路で分岐された前記液体成分が、前記第4熱交換器を介して前記第2分岐流路に導かれる流路と、を有し、前記気液分離部から導出された前記液体成分が、前記第4熱交換器を介して液化ガスとして取り出されことを特徴とする。
取り出し直前の安定した条件の液化ガスを原料ガスと混合する循環系を構成することによって、安定的かつエネルギー効率のよい液化ガスの供給を可能とした。
【0017】
本発明は、上記液化ガスの製造装置であって、前記ランキンサイクルが、沸点あるいは熱容量の異なる複数の熱媒体を用いた複数のランキンサイクルで構成され、少なくとも、低い沸点あるいは小さな熱容量の熱媒体を用いた1のランキンサイクルに係る、複数の並列的に配設された第1膨張手段と、高い沸点あるいは大きな熱容量の熱媒体を用いた他のランキンサイクルに係る、複数の並列的に配設された第2膨張手段と、を有するとともに、
前記第1膨張手段とリンクされ、該第1膨張手段と同数の直列的に配設された第2圧縮手段と、前記第2膨張手段とリンクされ、該第2膨張手段と同数の直列的に配設された第3圧縮手段と、が設けられ、原料ガスが、前記第2圧縮手段によって圧縮された後、前記第3圧縮手段によって、さらに圧縮されて前記第1熱交換器に導入される、または、原料ガスが、前記第2圧縮手段によって圧縮された後、前記第3圧縮手段の初段の圧縮手段によって圧縮されて前記第1熱交換器に導入され、導出した液化ガスは、次段の圧縮手段によって圧縮されて前記第1熱交換器に導入され、さらに、これを所定段数繰り返す、ことを特徴とする。
液化ガスの製造装置は、半導体製造設備等においては、インラインに用いられることが多く、連続的なガスの供給が要求される場合とともに、その供給量や供給圧力等が大きく変動することがある。また、既述のように、LNGの安定供給が必ずしも確保できない場合がある。本発明は、LNGの寒冷の伝達を担う熱媒体について沸点あるいは熱容量の異なる複数の熱媒体を用いて複数のランキンサイクルで構成するとともに、原料ガスを、第1のRCに係る第2圧縮手段によって多段階に圧縮された後、さらに第2のRCに係る第3圧縮手段の初段の圧縮手段によって圧縮されて第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、導出した液化ガスは、次段の圧縮手段によって圧縮されて第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、さらに、これを所定段数繰り返し、こうした場合の変動要素を、各ランキンサイクルにおける熱媒体の流量や圧力といった制御が容易な制御要素を調整することによって、安定的かつエネルギー効率のよい液化ガスの供給を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る液化ガスの製造装置の基本構成例を示す概略図
図2】本発明に係る液化ガスの製造装置の基本構成例の一態様を示す概略図
図3】本発明に係る液化ガスの製造装置の第2構成例を示す概略図
図4】本発明に係る液化ガスの製造装置の第2構成例の一態様を示す概略図
図5】本発明に係る液化ガスの製造装置の第3構成例を示す概略図
図6】本発明に係る液化ガスの製造装置の第4構成例を示す概略図
図7】本発明に係る液化ガスの製造装置の第5構成例を示す概略図
図8】従来技術に係るガス液化プロセスの構成例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<液化ガスの製造装置の構成>
本発明に係る液化ガスの製造装置(以下「本装置」という)は、熱媒体が断熱圧縮される第1圧縮手段と、断熱圧縮された熱媒体が定圧加熱される第1熱交換器と、加熱された熱媒体が断熱膨張される複数の並列的に配設された膨張手段と、断熱膨張された熱媒体が定圧冷却される第2熱交換器と、第2熱交換器から導出された熱媒体が第1圧縮手段に導かれる流路と、を備えたランキンサイクル(RC)を有し、膨張手段とリンクされ、該膨張手段と同数の直列的に配設された少なくとも1つの第2圧縮手段を有するとともに、低温液化状態の液化天然ガス(LNG)が、第2熱交換器に導入され、その寒冷を熱媒体に伝達して導出され(V.NG)、給送された原料ガスが、複数の前記第2圧縮手段によって順に圧縮された後、第1熱交換器または第2熱交換器に導入され、熱媒体によって冷却された後、液化ガスとして取り出されることを特徴とする。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、液化するガスとして窒素ガスの場合を例示することがあるが、本発明は、他のガス、例えば空気やアルゴン等の液化にも同様にして適用することができる。また、各部の温度、圧力、流量などの条件は、ガスの種類や流量等、その他の条件に応じて適宜変更することができる。
【0020】
〔本装置の基本構成例〕
本装置の基本構成例(第1構成例)の概要を、図1に例示する。本装置は、熱媒体が循環するランキンサイクル(RC)を有する。熱媒体は、順に、第1圧縮手段である圧縮ポンプ1によって断熱圧縮され、第1熱交換器2において原料ガスによって定圧冷却され、複数(本構成では2つで例示)の並列的に配設された膨張手段であるタービン3a,3bによって断熱膨張され、第2熱交換器4においてLNGの寒冷によって定圧冷却され、再度圧縮ポンプ1に吸引される循環系を形成する。こうした構成によって、LNGの寒冷を安定的にかつ効率的に原料ガスに伝達することができる。ここで、「熱媒体」としては、炭化水素や液化アンモニア,液化塩素あるいは水等種々の物質を挙げることができる。また、常温常圧下において液体のみならず気体を含み、特に熱容量の大きい気体、例えば二酸化炭素等を適用することができる。炭化水素としてメタン,エタン,プロパンあるいはブタン等単体で使用する場合以外に、複数の化合物の混合物を使用することによって、最適な沸点あるいは熱容量の設計を行うことができる。特に、後述するような複数のRCを用いた場合には、例えば1のRCに「メタン+エタン+プロパン」の混合物を用い、他のRCに「エタン+プロパン+ブタン」の混合物を用いることによって、LNGの冷熱を複数の温度帯で熱伝達させることができる。
【0021】
所定流量のLNGが第2熱交換器4に供給され、所定量の寒冷が確保されるとともに、LNGの供給流量を制御することによって、RCにおいて循環する熱媒体に伝達される熱量が制御され、原料ガスに伝達される寒冷を容易に調整することができる。第2熱交換器4に導入されたLNGは、一部または全部が気化されて気化天然ガス(V.NG)として導出される。所望の流量の原料ガス(GN2)が第2圧縮手段の第1段であるコンプレッサー5aによって圧縮され、さらに第2段であるコンプレッサー5bによって圧縮された後、第1熱交換器2に供給され、所定量の寒冷が伝達され所望の温度に冷却され、所望の圧力に圧縮され、液化ガス(LN2)として取り出される。こうした構成によって、所望の高い圧縮比を確保しつつ、安定的に所望の液化ガスを製造することができる。また、エネルギー効率について、LNGの寒冷と原料ガスを直接熱交換する従前の装置に比較して、大幅に向上させることができる。なお、本構成および以下の構成例において例示する第1〜第4熱交換器を含む各熱交換器において、LNGと熱媒体あるいは原料ガスや液化ガスや冷却水を、随時向流条件あるいは並流条件で導入・供出する。このとき、第1熱交換器4におけるLNGと熱媒体あるいは液化ガスとの間や、第2熱交換器4における熱媒体と原料ガスあるいは液化ガスとの間においては、向流条件とすることによって、特に高い熱交換効率を得ることができる。
【0022】
以上のように、ランキンサイクル(RC)が形成された本装置において、低温液化状態の液化天然ガスが、第2熱交換器4に導入され、その寒冷を熱媒体に伝達し、タービン3a,3bとリンクされたコンプレッサー5a,5bによって圧縮された原料ガスが、第1熱交換器2に導入され、熱媒体の寒冷によって冷却され、液化ガスとして取り出される。
【0023】
具体的には、例えばRCの熱媒体としてエタンとプロパンが等モル配合された主成分からなる混合物を用い、約6MPaのLNGが第2熱交換器4に導入され、原料ガスとして窒素ガスが給送された場合を例に挙げると、第2熱交換器4から約−115℃に冷却されて導出され熱媒体が、圧縮ポンプ1によって約1.8MPaに断熱圧縮され、第1熱交換器2に導入され、原料ガスと熱交換され加熱されて導出され、タービン3a,3bによって断熱膨張され、約−45℃,約0.05MPaで第2熱交換器4に導入される。タービン3a,3bとリンクしたコンプレッサー5a,5bによって、順に約2.1MPa,約5MPaに圧縮されて第1熱交換器2に導入された窒素ガス(原料ガス)は、約−90℃に冷却されて導出され、約−90℃,約5MPaの液化窒素ガスとして取り出される。
【0024】
〔実証結果について〕
本装置を用いて液化窒素ガスを作製した場合を、従前の方法を用いて作製した場合と比較して、そのエネルギー効率を実証した。以下の通り、本装置を用いることによって、約50%以上の向上を図ることができた。
(i)従前の方法を用いて液化窒素ガスを作製した場合
LNGが1ton/hで供給され、コンプレッサーが15.7kWhの電力で作動した場合を想定すると、例えば677Nm/hの窒素ガスが、20barから37barまで加圧することができる。この際、コンプレッサーの入り口温度は40℃、出口温度は111℃となる。
(ii)本方法を用いて液化窒素ガスを作製した場合
同様の液化窒素ガスを得るため、つまり677Nm/hの窒素ガスを20barから37barまで加圧するのに必要なLNGは、0.485ton/hで十分であった。
(iii)両者を対比すると、下式1から
(1−0.485)×15.7=8.09[kWh]
8.09/15.7=0.52 ・・式1
電力として約8kWh、つまり約52%を低減することができた。
【0025】
また、上記基本構成例における一態様として、原料ガスを、圧縮する前に第1熱交換器2に導入して低温化した構成を、図2に例示する。こうした構成によって、断熱圧縮後の冷却効果を上げ、第2熱交換器4における液化効果を上げることができる。具体的には、第1熱交換器2に導入された原料ガスは、約−80℃に冷却されて導出され、タービン3a,3bとリンクしたコンプレッサー5a,5bによって、順に約2.1MPa,約5MPaに圧縮され、さらに第1熱交換器2に導入され、約−90℃に冷却されて導出され、約−90℃,約5MPaの液化窒素ガスとして取り出される。
【0026】
〔本装置の第2構成例〕
本装置の第2構成例の概要を、図3に示す。以下、基本構成と共通する要素は、説明を省略することがあるとともに、共通の名称および符号で示す。本装置は、同様のランキンサイクル(RC)を有するとともに、コンプレッサー5a,5bから導出された液化ガスが、第1熱交換器2または第2熱交換器4に導かれる流路(第2構成例では第2熱交換器4に導入)と、第1熱交換器2または第2熱交換器4から導出(第2構成例では第2熱交換器4から導出)された液体成分を含む液化ガスの圧力調整を行う調整弁6と、調整弁6を介して液化ガスが導入され、液体成分が気液分離される気液分離部7と、を有し、気液分離部7から導出された気体成分をコンプレッサー5aに導入し、低温の液体成分を液化ガス(LN2)として取り出すことを特徴とする。また、原料ガス(GN2)を、圧縮する前に第1熱交換器2に導入して低温化することによって、断熱圧縮後の冷却効果を上げ、第2熱交換器4における液化効果を上げることができる。基本構成における機能に加え、供給させるLNGの温度と原料ガスの沸点との差異による熱伝達の困難性を、RCおよび気液分離部7を活用することによって、効率よくLNGを寒冷として利用し、液化ガスを安定的にかつ効率的に作製することができる。
【0027】
また、第2構成例では、気液分離部7から導出された気体成分を、第2熱交換器4に導入して低温化した後、流路S1を介して、流路L3およびL4を介して給送された原料ガスと混合し、流路L5を介してコンプレッサー5aに導入することによって、より冷却効果を上げ、第2熱交換器4における液化効果を上げることができる。さらに、気液分離部7から導出された気体成分の持つ圧力を利用し、当該気体成分を、破線に示す流路S1(S1’)を介して、コンプレッサー5aによって圧縮された原料ガスと流路L6において混合した後、コンプレッサー5bによって圧縮させることによって、より断熱圧縮後の冷却効果を上げ、第2熱交換器4における液化効果を上げることができる。こうした構成によって、供給された原料ガスが、コンプレッサー5a,5bによって順次昇圧された状態で、第2熱交換器4において冷却され、調整弁6によって圧力調整され、凝縮した液体成分が気液分離部7において気液分離され、気液分離部7から低温の液化ガスとして取り出される。
【0028】
このとき、原料ガスが、窒素や酸素よりも比較的沸点が高い、例えばエタンやプロパン等の場合には、図4に例示するように、コンプレッサー5a,5bに昇圧された後に第1熱交換器2に導入することによっても、液化することができる。LNGの寒冷との温度差が小さく、第1熱交換器2から導出され、圧縮された状態で再度に第1熱交換器2に導入することによって、液化に十分なLNGの寒冷を、熱媒体を介して伝達することができるためである。なお、図4に例示する構成においても、図3における破線に示す構成を適用することが可能である。また、LNGの圧力>原料ガスの圧力(例えば約50bar)の場合、LNGが原料ガスサイドにリークする可能性があり、こうした構成によって、そのリスクを回避することができる。
【0029】
基本構成と同様、例えばRCの熱媒体としてエタンとプロパンが等モル配合された主成分からなる混合物を用い、約6MPaのLNGが第2熱交換器4に導入され、原料ガスとして窒素ガスが給送された場合を具体例に挙げると、第1熱交換器2に導入された原料ガスは、コンプレッサー5a,5bによって、順に約2.1MPa,約5MPaに圧縮されて約−50℃の低温圧縮された窒素ガスとなる。この低温圧縮された窒素ガスは、さらに第2熱交換器4に導入されて約−153℃に冷却され、調整弁6を介して膨張して約−179℃に冷却されて気液分離部7に導入される。気液分離部7において気液分離された液体成分は、約−179℃,約0.05MPaの液化窒素ガスとして取り出される。
【0030】
〔実証結果について〕
基本構成における実証試験と同様、本装置を用いて液化窒素ガスを作製した場合を、従前の方法を用いて液化窒素ガスを作製した場合と比較して、そのエネルギー効率を実証した。以下の通り、本装置を用いることによって、約25%以上のエネルギー効率の向上を図ることができた。
(i)従前の方法を用いて液化窒素ガスを作製した場合
LNGが1ton/hで供給され、約0.05MPaの液化窒素ガスを作製するのに、0.28kWh/Nmのエネルギーを必要とした。
(ii)本方法を用いて液化窒素ガスを作製した場合
上記本装置における具体例の条件によって、約0.05MPaの液化窒素ガスを作製するのに、0.21kWh/Nmのエネルギーで十分であった。
(iii)両者を対比すると、下式1から
(0.28−0.21)/0.28=0.25 ・・式1
電力として約25%を低減することができた。
【0031】
〔本装置の第3構成例〕
本装置の第3構成例の概要を、図5に示す。第3構成例に係る本装置は、第2構成例と同様、ランキンサイクル(RC)と、調整弁6と、気液分離部7と、を有するとともに、第3熱交換器8が、第1熱交換器2から導出された熱媒体がタービン3a,3bに導かれる流路に設けられ、第3熱交換器8において、該熱媒体と、第2熱交換器4から導出されたLNGと、コンプレッサー5bから導出された液化ガスと、が熱交換されることを特徴とする。第2構成例における機能に加え、さらに効率よくLNGの寒冷を利用することができ、エネルギー効率が高い液化ガスの作製が可能となる。なお、第2構成例同様、液化ガスを第1熱交換器2に導入することによって液化することができる構成を適用することができる。また、調整弁6と気液分離部7が設けられずに、第1熱交換器2から導出され液化ガスとして取り出すことも可能である。なお、第3構成例においても、図3における破線に示す構成を適用することが可能である。
【0032】
このように、第3熱交換器8において、LNGの残存する寒冷を、第1熱交換器2において加熱された熱媒体と、圧縮され熱量が増加した液化ガスの冷却に利用することによって、さらに効率よくLNGの寒冷を利用することができる。また、ここでは、第3熱交換器8として、これに冷却水を導入した構成を例示する。熱容量の大きな冷熱による熱交換ができ、熱媒体,液化天然ガスおよび液化ガスに対して迅速な温熱の移動を図ることができる。起動時や停止時の過渡的な変動等に対しても、熱媒体,液化天然ガスおよび液化ガスに対する予備的あるいは補助的な温熱の移動を図ることができ、LNGの寒冷の安定的な利用および安定したエネルギー効率を確保することができる。
【0033】
〔本装置の第4構成例〕
本装置の第4構成例の概要を、図6に示す。第4構成例に係る本装置は、第3構成例に加え、原料ガスが第1熱交換器2から導かれる流路L4〜L6に、第1分岐流路S1(S1’)および第2分岐流路S2が設けられ、気液分離部7から導出された液体成分が導かれる流路L8に、第4熱交換器9および第3分岐流路S3が設けられるとともに、気液分離部7から導出された気体成分が、第2熱交換器4を介して第1分岐流路S1(S1’)に導かれる流路L11と、第3分岐流路S3で分岐された液体成分が、第4熱交換器9を介して第2分岐流路S2に導かれる流路L12と、を有し、気液分離部7から導出された液体成分が、第4熱交換器9を介して取り出されることを特徴とする。主成分である原料ガスの給送手段として複数段の圧縮機を設けるとともに、取り出し直前の安定した条件の液化ガスを戻し、その原料ガスと混合することによって、安定的かつエネルギー効率のよい液化ガスの供給を可能とした。なお、上記のように、第1分岐流路S1(S1’)を、流路L4またはL5の位置S1とすること、第2分岐流路S2を、流路L3の位置とする構成も可能である。
【0034】
図6では、さらに、第4構成例において、第3分岐流路S3に第2調整弁12が設けられ、第4熱交換器9から導出された液化ガスの一部(ここではLNaという)が第2調整弁12を介して第4熱交換器9に再度導入される構成を例示する。低圧ではあるが、第2調整弁12によって低温の液化ガスを断熱膨張させることによって、より低温の液化ガスが作製され、第4熱交換器9における寒冷として機能させることができる。また、図6では、液化ガスLNaが流路L12を介して直接第2分岐流路S2と繋がる構成を例示したが、液化ガスLNaをさらに第1熱交換器2または第2熱交換器4を介して第2分岐流路S2と繋がる構成とし、より第1熱交換器2または第2熱交換器4の機能を有効に利用することができる。
【0035】
〔検証結果について〕
第4構成例に係る液化装置を用いて液化窒素ガスを作製した場合の、各流路におけるガスあるいは液の温度および圧力を検証した。検証結果を表1に例示する。
【0036】
【表1】
【0037】
〔本装置の第5構成例〕
本装置の第5構成例の概要を、図7に示す。第5構成例に係る本装置は、第4構成例に加え、ランキンサイクルが、沸点あるいは熱容量の異なる複数の熱媒体を用いた複数のランキンサイクル(図中は2つのRC)で構成されるとともに、1のランキンサイクルRCaにおいて複数(2つで例示)の並列的に配設されたタービン3a,3bとリンクされたコンプレッサー5a,5bに加え、他のランキンサイクルRCbにおいて複数(3つで例示)の並列的に配設されたタービン3c,3d,3eとリンクされたコンプレッサー5c,5d,5eを有することを特徴とする。
【0038】
ここで、ランキンサイクルRCaでは、低い沸点あるいは小さな熱容量の熱媒体を用いられ、他のランキンサイクルRCbでは、高い沸点あるいはおきな熱容量の熱媒体を用いられる。LNGの寒冷の伝達を担う熱媒体を、沸点あるいは熱容量の異なる複数の熱媒体を用いて複数のランキンサイクルで構成し、液化ガスの供給量や供給圧力等の変動要素を、各ランキンサイクルにおける熱媒体の流量や圧力といった制御が容易な制御要素を調整することによって、安定的かつエネルギー効率のよい液化ガスの供給を可能とした。また、原料ガスが、1のランキンサイクルRCaに係るタービン3a,3bとリンクされたコンプレッサー5a,5bによって順次圧縮された後、他のランキンサイクルRCbに係るタービン3c,3d,3eとリンクされたコンプレッサー5c,5d,5eによって順に圧縮される。このとき、コンプレッサー5cによって圧縮されたガスが第1熱交換器2に導入され、該第1熱交換器2から導出されたガスがコンプレッサー5dによって圧縮されて再度第1熱交換器2に導入され、該第1熱交換器2から導出されたガスがコンプレッサー5dによって再度圧縮された後、第1熱交換器2に導入されることによって、複数のランキンサイクルによって得られる動力を有効に活用するとともに、より効率的な圧縮状態での定圧冷却を行い、高いエネルギー効率を確保することができる。
【0039】
ここでいう、沸点あるいは熱容量の異なる複数の熱媒体とは、物質そのものが異なる場合、混合物や化合物を構成する物質が異なる場合のみならず、複数の物質の混合物の組成が異なる場合を含む。例えば、1つの熱媒体をメタン20%とエタン40%とプロパン40%からなる混合物とし、他の熱媒体をメタン2%とエタン49%とプロパン49%からなる混合物とすることによって、異なる特性を有する2つのRCを構成することができ、その組合せによって、種々の変動要素にあった寒冷や冷熱の移動を図るとともに、膨張手段とリンクした圧縮手段に対する効率的なエネルギーの伝達を行うことができる。
【0040】
また、成分の異なる熱媒体を用いた場合には、さらに広い範囲の熱伝達機能を形成することができる。つまり、上記のように、LNGの寒冷の温度と原料ガスの沸点あるいは圧縮ガスの温度との関係から、LNGの寒冷を利用できる温度帯に制限があり、第4構成例のように、1のランキンシステムRCaと他のランキンシステムRCbを直列に配列することによって、複数の温度帯においてLNGの寒冷を利用することが可能となる。例えば1のランキンシステムRCaに「メタン+エタン+プロパン」の混合物を用い、他のランキンシステムRCbに「エタン+プロパン+ブタン」の混合物を用いることによって、LNGの冷熱を複数の温度帯で熱伝達させることができる。第5構成例のように、1のランキンシステムRCaと他のランキンシステムRCbを直列に配列し、1のランキンシステムRCaによって例えば−150〜−100℃の範囲のLNGの冷熱を利用し、他のランキンシステムRCbにおいて例えば−150〜−100℃の範囲のLNGの冷熱を利用することによって、効率的にLNGの冷熱を利用することができる。また、これを窒素ガスの圧縮エネルギーとして利用した場合には、液体窒素製造量当たりの必要エネルギー(消費電力)を大幅に低減することができる。
【0041】
なお、図7では、気液分離部7から導出された気体成分が、第1熱交換器2を介して、コンプレッサー5b−5c間の流路に設けられた第1分岐流路S1(S1’)に導かれる構成を例示したが、上記各構成例と同様、第2熱交換器4を介してあるいはこれらを介さずに、第1分岐流路S1(S1’)に導かれる構成も可能である。また、第1分岐流路S1(S1’)が、コンプレッサー5aまでの原料供給流路あるいはコンプレッサー5a−5eまでのいずれかの流路に設けられる構成も可能である。さらに、第3分岐流路S3で分岐された液体成分が、第4熱交換器9を介して直接コンプレッサー5aまでの原料供給流路に設けられた第2分岐流路S2に繋がる構成も可能である。
【0042】
以上、各構成例について、各説明図を基に説明したが、本装置あるいは本装置は、これらに限定されず、その構成要素の組合せあるいは関連する公知の構成要素との組合せを含む広い概念で構成されるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 第1圧縮手段(圧縮ポンプ)
2 第1熱交換器
3a,3b 膨張手段(タービン)
4 第2熱交換器
5a,5b 第2圧縮手段(コンプレッサー)
GN2 原料ガス
LN2 液化ガス
LNG 液化天然ガス
V.NG 気化天然ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8