(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走査装置を用いて、被検体の複雑な三次元曲面形状の曲面部に沿って超音波探触子を走査した場合に、前記走査装置の駆動情報に基づいて取得された前記超音波探触子の位置情報から、若しくは前記走査装置の駆動情報及び前記走査装置に搭載された距離センサで検出された距離情報から、前記被検体の外形座標の計測値を取得する第1の手順と、
前記被検体の三次元形状モデルを形状定義関数で構築するとともに、前記被検体の外形座標の計測値に基づいて前記形状定義関数のパラメータを演算する第2の手順と、
前記走査装置を用いて、前記被検体の前記曲面部に沿って前記超音波探触子を走査し、前記超音波探触子の走査位置毎に、前記超音波探触子による超音波の送受信を行って、受信超音波の波形データを取得する第3の手順と、
前記被検体の三次元形状モデルに基づき、前記超音波探触子の走査位置毎に超音波の伝播経路を解析する第4の手順と、
前記超音波の伝播経路とこれに対応する前記波形データに基づき、探傷画像を生成する第5の手順と、
前記探傷画像を、前記被検体の三次元形状モデルに重畳して表示する第6の手順と、を有することを特徴とする超音波検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の検査対象として、上述したノズル103を例にとり、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図4は、本実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
図5は、本実施形態における走査装置の構造を表す図である。
【0018】
本実施形態の超音波検査装置は、斜角探傷用の超音波探触子1と、超音波探触子1を走査する走査装置2と、走査装置2を制御する制御装置3と、超音波探触子1による超音波の送受信を制御する送受信装置4と、各種の演算処理を実行する計算装置5と、各種のデータを記録する記憶装置6と、各種の情報を画面表示する表示装置7と、各種の条件を入力するとともに、各種の操作を実施するための入力装置8とを備えている。なお、計算装置5はコンピュータや電子部品を搭載した基板等で構成され、記憶装置6はハードディスクやランダムアクセスメモリ(RAM)等で構成されている。また、表示装置7はディスプレイ等で構成され、入力装置8はマウスやキーボード、タッチパネル等で構成されている。
【0019】
走査装置2は、例えば、配管102の外周側に取付けられた環状の軌道9と、この軌道9に沿って(すなわち、
図5中矢印D1の方向に)移動可能に設けられた周方向走査装置10と、この周方向走査装置10に設けられ、軌道9に対して垂直な方向(
図5中矢印D2の方向)にアーム11を移動させる軸方向移動装置12と、アーム11の先端側(
図5中右側)に設けられ、超音波探触子1を保持する倣い走査装置13とを備えている。
【0020】
周方向走査装置10は、軌道9の外周側に形成されたラック14と噛み合うピニオン15と、このピニオン15を回転させるモータ(図示せず)と、このモータの回転量を検出するエンコーダ(図示せず)とを有している。そして、ピニオン15が回転することにより、周方向走査装置10が軌道9に沿って移動する。これに伴い、倣い走査装置13(すなわち、超音波探触子1)がノズル103の周方向に移動するようになっている。
【0021】
軸方向移動装置
12は、軌道9に対して垂直な方向にアーム11を移動させるモータ(図示せず)と、このモータの回転量を検出するエンコーダ(図示せず)とを有している。そして、アーム11が移動することにより、ノズル103の軸方向における倣い走査装置13の位置を調整可能としている。なお、倣い走査装置13には、原子炉圧力容器
101との接触状態を検出するリミットセンサ16が設けられている。
【0022】
倣い走査装置13は、ノズル103の軸方向(
図5中矢印S3参照)に回動可能に設けられた探触子押付機構17と、この探触子押付機構17を回動させるモータ(図示せず)と、このモータの回転量を検出するエンコーダ(図示せず)とを有している。探触子押付機構17は、基端側がスライド可能に支持された押付アーム18と、この押付アーム18の先端側に取付けられ、超音波探触子1を保持する探触子ホルダ19と、押付アーム18をノズル103側に付勢して、超音波探触子1をノズル103の外面R部に押圧する付勢機構(詳細には、図示しないが、例えばバネ、空気圧シリンダ、又は油圧シリンダ)と、押付アーム18のスライド量を検出するエンコーダ(図示せず)とを有している。
【0023】
探触子ホルダ19は、2軸のジンバル構造を有している。すなわち、超音波探触子1をノズル103の軸方向に回転可能に保持する内枠と、この内枠をノズルの周方向に回転可能に保持する外枠とを有している。これにより、上述した付勢機構によって押圧された超音波探触子1の姿勢を、ノズル103の外面R部104の法線方向に合わせるようになっている。そして、探触子押付機構17が回動することにより、ノズル103の外面R部104の形状に倣うように、超音波探触子1がノズル103の軸方向に移動するようになっている。
【0024】
制御装置3は、走査装置2のリミットセンサ16及び複数のエンコーダからの検出情報を入力している。そして、リミットセンサ16が原子炉圧力容器に接触するように、アーム11の移動量を制御する。これにより、ノズル103の軸方向における倣い走査装置13の位置(言い換えれば、探触子押付機構17の回動中心位置)を制御するようになっている。また、例えば
図6中左側に示すような走査パターンに基づき、周方向走査装置10の移動位置を制御するとともに、探触子押付機構17の回動角を制御する。これにより、ノズル103の外面R部104の形状に倣うように、ノズル103の周方向及び軸方向に超音波探触子1を走査させるようになっている。
【0025】
超音波探触子1は、詳細を図示しないが、例えば1つの圧電素子及びシューを有している。超音波送受信装置4は、超音波探触子1の走査位置毎に、圧電素子に電圧を印加して圧電素子を振動させ、超音波を発生させる。そして、圧電素子からシューを介して送信された超音波が、ノズル103の外面で屈折し、ノズル103の内部に斜角で入射する(上述の
図3(b)参照)。そして、ノズル103の内部に欠陥が存在する場合は、その欠陥で反射した超音波が圧電素子で受信され、波形信号(電気信号)に変換されて出力される。
【0026】
送受信装置4は、超音波探触子1の走査位置毎に、圧電素子からの波形信号に対し所定の処理(詳細には、アナログ信号からデジタル信号への変換処理等)を行って波形データ(
図6中右側参照)を取得して、記憶装置
6に記憶させるようになっている。波形データは、超音波の路程と波高値の関係からなる離散データである。
【0027】
計算装置5は、探触子位置演算部20、伝播経路解析部21、及び探傷画像生成部22を有している。
【0028】
探触子位置演算部20は、制御装置3を介して走査装置2の駆動情報(詳細には、上述した複数のエンコーダの検出情報等)を入力しており、走査装置2の駆動情報と走査装置2の幾何学的情報に基づき、三次元空間における超音波探触子1の走査位置を演算するようになっている。伝播経路解析部21は、記憶装置
6から読込んだ被検体(本実施形態では、ノズル)の三次元形状モデル(詳細は後述)に基づき、探触子位置演算部20で演算された超音波探触子1の走査位置などから、超音波の伝播経路を解析して、そのデータを記憶装置
6に記憶させるようになっている。
【0029】
探傷画像生成部22は、超音波探触子1の走査位置に対応する波形データ及び超音波伝播経路データを、記憶装置
6から読込む。そして、超音波伝播経路に基づき、波形データの路程を三次元空間上の座標に変換し、三次元座標と波高値の組合せからなる波高データテーブルに変換する。そして、波高データテーブルに基づき、三次元探傷画像を生成して、記憶装置
6に記憶させる。
【0030】
表示装置7は、伝播経路表示部23及び探傷画像表示部24を有している。伝播経路表示部23は、記憶装置6から超音波伝播経路データ及びノズルの三次元形状モデルを読込み、
図7(a)で示すような画面25を表示する。この画面25では、超音波探触子のマーカ26A及び超音波伝播経路のマーカ26Bを、ノズルの三次元形状モデルの画像27に重畳して示す。探傷画像表示部24は、記憶装置6から三次元探傷画像及びノズルの三次元形状モデルを読込み、
図7(b)で示すような画面28を表示する。この画面28では、三次元探傷画像(詳細には、例えばエコーの反射源の位置と大きさを示すエコー画像29を含むもの)を、ノズルの三次元形状モデルの画像27に重畳して示す。
【0031】
ここで、本実施形態の大きな特徴として、計算装置5は、形状モデル生成部30及び外形座標取得部31をさらに有している。
【0032】
形状モデル生成部30は、形状定義関数を用いて、被検体(本実施形態では、ノズル)の三次元形状モデルを構築するようになっている。具体的に、
図8(a)及び
図8(b)を用いて、ノズルの三次元形状モデルの一部を構築する形状定義関数を説明する。
【0033】
三次元空間上の任意の座標をS=(x,y,z)とすると、ノズル103の外面円筒部105に相当する陰関数g(S)を、下記の式(1)で表現できる。すなわち、陰関数g(S)=0を満たす三次元座標Sの集合が、ノズル103の外面円筒部105を表す。また、原子炉圧力容器101の外面円筒部に相当する陰関数h(S)を、下記の式(2)で表現できる。すなわち、陰関数h(S)=0を満たす三次元座標Sの集合が、原子炉圧力容器
101の外面円筒部を表す。ここで、Rtoは、ノズル103の外面円筒部105の半径であり、Rvoは、原子炉圧力容器101の外面円筒部の半径である。
【0036】
ノズル103の外面円筒部105の半径Rtoをオフセット値aだけ拡大した曲面を仮想すれば、これに相当する陰関数G(S,a)を、下記の式(3)で表現できる。また、原子炉圧力容器101の外面円筒部の半径Rvoをオフセット値bだけ拡大した曲面を仮想すれば、これに相当する陰関数H(S,b)を、下記の式(4)で表現できる。
【0039】
そして、上記の式(1)〜(4)を用いれば、ノズル103の外面R部104に相当する陰関数f(g,h)を、下記の式(5)で表現できる。
【0041】
ここで、
図8(a)で示すように、αは、ノズル103の外面R部104と原子炉圧力容器101の外面円筒部の間の稜線までの、ノズル103の外面円筒部105の半径Rtoのオフセット値である。βは、ノズル103の外面R部104とノズル103の外面円筒部105の間の稜線までの、原子炉圧力容器101の外面円筒部の半径Rvoのオフセット値である。また、
図8(b)で示すように、関数f(g,h)は、g(S)−h(S)関数空間上で境界条件(αp,0),(0,βp)を満たすものである。境界条件(αp,0)がG(S,α)=0かつh(S)=0に相当し、境界条件(0,βp)がg(S)=0かつH(S,β)=0に相当する。そして、関数f(g,h)は、
図8(b)で示すようにg(S)−h(S)関数空間上で楕円曲線を表し、
図8(a)で示すように三次元空間上で滑らかな(言い換えれば、1階微分値も連続的に変化する)曲面を表すものである。
【0042】
上述の
図4に戻り、外形座標取得部31は、探触子位置演算部20で演算された超音波探触子1の位置情報を入力している。そして、ノズル103の外面R部104に沿って走査された超音波探触子1の位置情報から、ノズル103の外形座標の計測値を取得する。形状モデル生成部30は、外形座標取得部31で取得されたノズル103の外形座標の計測値に基づいて、上述した形状定義関数のパラメータを演算する。そして、このようにして生成した三次元形状モデルを記憶装置
6に記憶させるようになっている。
【0043】
次に、本実施形態の超音波検査方法を、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態における超音波検査方法の手順を表すフローチャートである。
【0044】
ステップS201にて、オペレータは、初期設定の一つとして、被検体の種類を選択することにより、形状定義関数を選択する。具体的には、例えば、供用中検査(ISI)の対象である複数の被検体が表示装置7でリスト表示され、一つの被検体(本実施形態では、ノズル103)を入力装置8で選択する。これに伴い、計算装置5の形状モデル生成部30が、対応する形状定義関数を選択する。
【0045】
その後、ステップS202に進み、オペレータは、形状定義関数のパラメータの初期値を入力する。具体的には、例えばステップS201で選択された被検体(本実施形態では、ノズル103)に対応する形状定義関数のパラメータ入力画面32(
図10参照)が表示装置7で表示され、パラメータ(
図10では、パラメータH
n,H
t,R
vo,R
vi,R
to,R
ti,R
n,Rf
o,Rf
i,Rf
t,Rf
n,θ
to)の初期値として設計値を入力装置8で入力する。
【0046】
そして、ステップS203に進み、オペレータは、探傷条件(詳細には、例えば、超音波探触子1の幾何学的情報や音響特性情報、被検体の音響特性情報、被検体の検査範囲、走査装置2の幾何学的情報や走査パターン等)を入力装置8で入力する。なお、被検体の種類と探傷条件との関係を予め記憶したデータベースを設け、被検体の種類に応じて探傷条件を自動的に入力するようにしてもよい。なお、入力された各種の情報は、制御装置3、送受信装置4、並びに、計算装置5の探触子位置演算部20及び伝播経路解析部21等で適宜参照される。
【0047】
そして、ステップS204に進み、オペレータは、走査装置2を構成する軌道9を配管102の外周側に取付ける。その後、走査装置2を構成する他の部品を取付けるとともに、超音波探触子1を取付ける。なお、配管102の軸方向と軌道9の周方向が直交しているかどうかを目視等で確認し、直交していなければ、軌道9の設置角度を調整する。
【0048】
その後、ステップS205に進み、ノズル103の外形座標の計測を行う。詳細には、走査装置2が、ノズル103の外面R部104の形状に沿うように、ノズル103の周方向及び軸方向に超音波探触子1を走査する。但し、走査装置2の走査間隔は、後述の探傷を行う場合と異なり、例えばノズル103の周方向及び軸方向ともに15度ピッチ程度でよい。すなわち、走査間隔(サンプリング間隔)が小さくなれば多くの外形座標を計測できるものの、時間がかかってしまうため、必要な精度と時間のトレードオフを見極めて、走査間隔を設定することが好ましい。そして、計算装置5の探触子位置演算部20が、ノズル103の外面R部104に沿って走査された超音波探触子1の位置を演算する。そして、外形座標取得部31が、探触子位置演算部20で演算された超音波探触子1の位置情報から、例えば
図11で示すようなノズル103の外形座標の計測値33(点群データ)を取得する。
【0049】
その後、ステップS206に進み、形状定義関数のパラメータを補正する。詳細には、形状モデル生成部30が、形状定義関数のパラメータとして設計値を入力したときの三次元形状モデルの外面と外形座標の計測値33とを比較し、最小二乗法を用いたパラメータフィッティングを行う(
図12参照)。ノズル103の外面R部104が公差の大きい部位であることから、ノズル103の外面円筒部105の半径Rtoや原子炉圧力容器101の外面円筒部の半径Rvoをほとんど変化させず、外面R部104の曲率半径Rfoによって変化するオフセット値α及びβを公差範囲内で変化させる。そして、ノズル103の外形座標の計測値33との残差の二乗和が最小となるパラメータを求める。
【0050】
なお、離散的な点群データの補完法として、一般的に、ラグランジュ多項式を用いる方法が知られている。しかし、これは曲線を単一の多項式で表そうとするものであり、複雑な三次元曲面形状を表す場合には、ルンゲの現象に代表されるような振動現象が生じ、正確な形状を再現できない。また、スプライン関数のように複数の多項式を用いる補完法を用いれば、振動現象をある程度抑えることができるものの、完全ではなく、ある程度詳細なピッチで点群データを取得する必要がある。一方、本実施形態の形状定義関数を用いた補完法においては、そのパラメータの初期値として設計値が与えられており、異なる曲面と曲面をつなぐ接続条件や、公差に基づいてパラメータサーベイの範囲などが定義されている。そのため、振動現象が生じることなく、迅速に、滑らかな3次元曲面形状を表現することができる。
【0051】
そして、ステップS207に進み、ノズル103の探傷を行う。詳細には、超音波探触子1が超音波を送受信し、送受信装置4が波形データを取得して、記憶装置
6に収録する。
【0052】
そして、ステップS208に進み、計算
装置5の伝播経路分析部21が、ノズルの三次元形状モデルに基づき、現在の超音波探触子の走査位置における超音波の伝播経路を分析する。詳細には、ノズルの三次元形状モデルに基づき、超音波探触子の走査位置に対応するノズルの外面の超音波入射点を演算する。そして、その超音波入射点におけるノズルの外面の法線方向を演算し、このノズルの外面の法線方向及び探傷条件に基づいて超音波の入射方向を演算する。そして、超音波入射点及び入射方向を初期条件とし、レイトレース法と呼ばれる解析手法を用いて、超音波の伝播経路を演算する。そして、現在の超音波の伝播経路が、記憶装置
6に記憶されるとともに、表示装置7の伝播経路表示部23でノズルの三次元形状モデルに重畳されて表示される。
【0053】
その後、ステップS209に進み、現在の超音波の伝播経路に基づき、対応する波形データを波高データテーブルに変換する。そして、波高データテーブルに基づき、三次元探傷画像を構成するボクセルの値を代入することで、三次元探傷画像を更新する。具体的には、例えば
図13で示すように、検査範囲108の周囲に三次元探傷画像の生成範囲109が予め設定されており、この範囲109に対応するボクセルのうち、超音波ビーム34(言い換えれば、超音波の伝播経路35にビーム幅を持たせたもの)が通過するボクセル36を抽出する。そして、波高データテーブルに基づき、ビーム通過ボクセル36の値を内挿処理して代入する。ボクセル36にすでに値が代入されている場合は、最初に代入された値を残すか、常に新しい値で上書きするか、最大値を残すか、若しくは重み付け平均を取るような処理を選択して実行する。このようにして更新された三次元探傷画像が、記憶装置
6に記憶されるとともに、表示装置7の探傷画像表示部24でノズルの三次元形状モデルに重畳されて表示される。
【0054】
そして、ステップS210に進み、計算装置5は、検査(言い換えれば、走査)が完了したか否かを判定する。検査が完了していない場合は、ステップS210の判定が満たされず、ステップS211に移る。ステップ211では、ノズル103の外面R部104に沿って超音波探触子1を移動させ、その後、上述したステップS207〜S209の手順を行う。検査が完了すれば、ステップS210の判定が満たされ、検査が終了する。
【0055】
以上のような本実施形態においては、被検体の三次元形状モデルを形状定義関数で構築するとともに、被検体の外形座標の計測値に基づいて形状定義関数のパラメータを演算する。これにより、迅速かつ高精度に、被検体の三次元形状モデルを生成することができる。そして、この被検体の三次元形状モデルに基づき、超音波の伝播経路を解析し、この超音波の伝播経路に基づいて生成した三次元探傷画像等を表示する。したがって、迅速かつ高精度に、エコーの反射源の位置を評価することができる。
【0056】
なお、上記第1の実施形態において、表示装置7は、超音波探触子のマーカ26A及び超音波伝播経路のマーカ26Bを、ノズルの三次元形状モデルの画像27に重畳して示す画面25と、三次元探傷画像(詳細には、例えばエコー画像29を含むもの)を、ノズルの三次元形状モデルの画像27に重畳して示す画面28とを表示する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば、画面28を表示するものの、画面25を表示しなくともよい。また、画面25,28に代えて、例えば
図14で示すように、超音波探触子のマーカ26A、超音波伝播経路のマーカ26B、及び三次元探傷画像を、ノズルの三次元形状モデルの画像27に重畳して示す画面37を表示してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0057】
本発明の第2の実施形態を、
図15及び
図16により説明する。
【0058】
図15は、本実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
図16は、本実施形態における距離センサの構造を表す図である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態及び変形例と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、走査装置2の倣い走査装置13には、複数の接触式距離センサ38が設けられている。これら距離センサ36は、所定のピッチ角で扇状に配置されており、複数の方向におけるノズル103の外面との距離を同時に検出可能としている。
【0060】
計算装置5の外形座標取得部31Aは、走査装置2の幾何学情報と、制御装置3を介して入力した走査装置2の駆動情報(詳細には、周方向走査装置10のエンコーダの検出情報や軸方向移動装置
12のエンコーダの検出情報)から、距離センサ36の位置を演算する。そして、距離センサ38の位置情報及び検出情報から、ノズル103の外形座標の計測値を演算して取得するようになっている。
【0061】
以上のように構成された本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、迅速かつ高精度に、被検体の三次元形状モデルを生成して、エコーの反射源の位置を評価することができる。
【0062】
なお、上記第2の実施形態においては、複数の接触式距離センサ36を走査装置2に搭載した場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば
図17で示すように、複数の方向におけるノズル103の外面との距離を同時に検出可能なレーザ式(非接触式)距離センサ38Aを、走査装置2に搭載してもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、特に、説明しなかったが、走査装置2の走査パターン(上述の
図6参照)を、超音波の伝播経路の解析に基づいて設定してもよい。すなわち、例えば超音波の伝播経路がノズル103の検査範囲108に到達するか否かを判定することにより、探触子押付機構17の回動角の範囲を提示又は自動設定してもよい。また、例えばノズル103の周方向及び軸方向における所望の検査ピッチに対応する走査ピッチ(すなわち、周方向走査装置10の移動ピッチ及び探触子押付機構17の回動ピッチ)を演算して提示又は自動設定してもよい。このような場合も、本発明の特徴の恩恵を被ることができる。すなわち、迅速かつ高精度に、走査パターンを設定することができる。
【0064】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、特に、説明しなかったが、走査装置2の軌道9の周方向と配管102の軸方向が直交しているかどうかを判断するための情報を取得して表示し、この情報に基づいて軌道9の設置角度(すなわち、走査装置2の設置角度)を調整するようにしてもよい。このような変形例を、
図18〜
図20を用いて説明する。なお、
図18及び
図19においては、便宜上、探触子押付機構17及び超音波探触子1の図示を省略している。
【0065】
制御装置3は、周方向走査装置10を軌道9に沿って移動させつつ、リミットセンサ16が原子炉圧力容器101に接触するように、倣い走査装置13の位置を制御する。そして、走査装置2の駆動情報(詳細には、周方向走査装置10のエンコーダの検出情報や軸方向移動装置11のエンコーダの検出情報)及び走査装置2の幾何学情報から、周方向走査装置10の移動位置と倣い走査装置13の移動位置(言い換えれば、アーム11の移動方向における周方向走査装置10からリミットスイッチ16までの長さ)との関係(
図20参照)を取得して、表示装置7に表示させる。
【0066】
図18で示すように走査装置2が傾いていない場合(言い換えれば、走査装置2の軌道9の周方向と配管102の軸方向が直交している場合)は、
図20中実線で示すように、周方向走査装置10の周方向方位0度における倣い走査装置13の移動位置L
0と、周方向走査装置10の周方向方位180度における倣い走査装置13の移動位置L
180が等しくなる。また、周方向走査装置10の周方向方位90度における倣い走査装置13の移動位置L
90と、周方向走査装置10の周方向方位270度における倣い走査装置13の移動位置L
270が等しくなる。
【0067】
一方、
図19で示すように走査装置2が傾いている場合(言い換えれば、走査装置2の軌道9の周方向と配管102の軸方向が直交していない場合)は、
図20中点線で示すように、周方向走査装置10の周方向方位0度における倣い走査装置13の移動位置M
0と、周方向走査装置10の周方向方位180度における倣い走査装置13の移動位置M
180が異なるようになる。あるいは、図示しないが、周方向走査装置10の周方向方位90度における倣い走査装置13の移動位置M
90と、周方向走査装置10の周方向方位270度における倣い走査装置13の移動位置M
270が異なるようになる。したがって、それらの差分を減らすように、軌道9の設置角度(すなわち、走査装置2の設置角度)を調整すればよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、走査装置2は、
図5等で示すような構造を有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、ノズル103の外面R部104の形状に倣うように、ノズル103の周方向及び軸方向に超音波探触子1を走査できるのであれば、他の構造でもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、上記実施形態においては、超音波探触子1は、1つの圧電素子及びシューを有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、超音波探触子1は、一次元的又は二次元的に配列された複数の圧電素子を有してもよい。そして、送受信装置4は、超音波探触子1の走査位置毎に、各圧電素子の超音波送受信のタイミングを制御して超音波の送受信方向を走査し、超音波の送受信方向毎に、波形データを取得する。また、計算装置5の伝播経路解析部21は、被検体の形状モデルに基づき、超音波探触子1の走査位置及び超音波の送受信方向に応じて超音波の伝播経路を解析する。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、以上においては、検査対象として、原子炉圧力容器101の側面に接合された、原子炉圧力容器101より小径のノズル(管台)103を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、円筒状の容器又は配管の側面に接合された、その容器又は配管より小径の管台でもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。