(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単電池の膨れによる密閉型二次電池の変形を高感度に検出でき、しかもセンサ特性の安定性にも優れる密閉型二次電池の変形検出センサ、密閉型二次電池、及び、密閉型二次電池の変形検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る密閉型二次電池の変形検出センサは、密閉型二次電池の変形検出センサにおいて、被検出物に貼り付けられる高分子マトリックス層と、検出部とを備え、前記高分子マトリックス層が、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有する発泡体であり、前記検出部が前記外場の変化を検出するものである。
【0009】
単電池の膨れにより二次電池が変形を生じると、それに応じて高分子マトリックス層が変形し、その高分子マトリックス層の変形に伴う外場の変化を検出部が検出する。発泡体である高分子マトリックス層は柔軟な変形が可能であり、二次電池の変形を高感度に検出できる。また、発泡体である高分子マトリックス層は圧縮が容易であるうえ、圧縮時に荷重が過剰に付加されにくく、二次電池内の狭い間隙にも配置でき、センサ特性の安定性にも優れる。
【0010】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出センサでは、前記高分子マトリックス層が、前記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、前記検出部が、前記外場としての磁場の変化を検出するものが好ましい。かかる構成によれば、高分子マトリックス層の変形に伴う磁場の変化を配線レスで検出することができる。また、感度領域が広いホール素子を検出部として利用できることから、より広範囲にわたって高感度な検出が可能となる。
【0011】
前記発泡体の気泡含有率が20〜80体積%であるものが好ましい。気泡含有率が20体積%以上であることにより、高分子マトリックス層が柔軟で変形しやすくなり、センサ感度を良好に高められる。また、気泡含有率が80体積%以下であることにより、高分子マトリックス層の脆化が抑えられ、ハンドリング性や安定性が高められる。
【0012】
前記発泡体の平均気泡径が50〜300μmであるものが好ましい。平均気泡径が50μm未満であると、整泡剤量の増大に起因してセンサ特性の安定性が悪化する傾向にある。また、平均気泡径が300μmを超えると、被検出物である単電池などとの接触面積が減少し、安定性が低下する傾向にある。
【0013】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出センサの第1の態様では、前記高分子マトリックス層が、厚み方向において20μm以上の平均気泡径差を有
する。この平均気泡径差が20μm未満であると、高分子マトリックス層が変形する際に気泡がより均一に圧縮されるため、センサ感度が低下する傾向にある。
【0014】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出センサの第2の態様では、前記高分子マトリックス層の前記被検出物に貼り付けられる一方側の平均気泡径が、その他方側の平均気泡径よりも
小さい。平均気泡径の小さい一方側には、比較的多くのフィラーが含有され、その一方側が被検出物側に向けられることから、高分子マトリックス層の小さな変形に対する外場の変化を大きくして、センサ感度を向上できる。
【0015】
前記発泡体の独立気泡率が5〜70%であるものが好ましい。これにより、高分子マトリックス層の圧縮されやすさを確保しつつ、優れた安定性を発揮できる。
【0016】
本発明に係る密閉型二次電池は、上述した変形検出センサが取り付けられたものであり、その形態は、単電池、電池モジュール及び電池パックの何れであってもよい。かかる密閉型二次電池では、単電池の膨れによる変形が変形検出センサにより高感度に検出される。また、発泡体である高分子マトリックス層は圧縮が容易であるうえ、圧縮時に荷重が過剰に付加されにくく、二次電池内の狭い間隙にも配置でき、センサ特性の安定性に優れる。
【0017】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出方法は、密閉型二次電池の変形検出方法において、高分子マトリックス層を被検出物に貼り付け、前記高分子マトリックス層は、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有する発泡体であり、前記高分子マトリックス層の変形に伴う前記外場の変化を検出し、それに基づいて前記密閉型二次電池の変形を検出するものである。
【0018】
単電池の膨れにより二次電池が変形を生じると、それに応じて高分子マトリックス層が変形し、その高分子マトリックス層の変形に伴う外場の変化が検出される。発泡体である高分子マトリックス層は柔軟な変形が可能であるため、二次電池の変形を高感度に検出できる。また、発泡体である高分子マトリックス層は圧縮が容易であるうえ、圧縮時に荷重が過剰に付加されにくく、二次電池内の狭い間隙にも配置でき、センサ特性の安定性にも優れる。
【0019】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出方法では、前記高分子マトリックス層の厚み方向の一方側の平均気泡径が他方側の平均気泡径よりも小さく、その一方側を前記被検出物に向けて
貼り付ける。かかる方法によれば、比較的多くのフィラーが含有される一方側が被検出物側に向けて貼り付けられるため、高分子マトリックス層の小さな変形に対する外場の変化を大きくして、センサ感度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1,2に示した電池モジュール1は、その筐体11の内部に複数の単電池2を有する。本実施形態では、4つの単電池2が直列に(例えば2並列2直列に、または4直列に)接続されている。詳しく図示しないが、単電池2は、正極と負極をそれらの間にセパレータを介して捲回または積層してなる電極群と、その電極群を収容する外装体とを備える。外装体の内部の密閉空間には、電極群が電解液とともに収容されている。単電池2の外装体には、アルミラミネート箔などのラミネートフィルムが用いられるが、これに代えて円筒型または角型の金属缶を使用してもよい。
【0023】
この電池モジュール1は、電動車両用の電源として使用され得るリチウムイオン二次電池であり、車両には電池パックの形態で搭載される。電池パックでは、直列に接続された複数の電池モジュール1が、コントローラなどの諸般の機器と共に筐体内に収容される。電池パックの筐体は、車載に適した形状に、例えば車両の床下形状に合わせた形状に形成される。なお、本発明において、密閉型二次電池は、リチウムイオン電池などの非水系電解液二次電池に限られず、ニッケル水素電池や鉛蓄電池などの水系電解液二次電池であっても構わない。
【0024】
図2に示すように、密閉型二次電池には変形検出センサが取り付けられている。その変形検出センサは、被検出物に貼り付けられた高分子マトリックス層3と、検出部4とを備えている。本実施形態では単電池2を被検出物とし、高分子マトリックス層3が単電池2に貼り付けられている。高分子マトリックス層3はシート状に形成されおり、その貼付には必要に応じて接着剤や接着テープが用いられる。
【0025】
高分子マトリックス層3は、その高分子マトリックス層3の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有する発泡体である。検出部4は、その外場の変化を検出する。検出部4は、外場の変化を検出可能な箇所に配置され、好ましくは単電池2の膨れによる影響を受けにくい比較的堅固な箇所に貼り付けられる。本実施形態では、筐体11の外面に検出部4を貼り付けているが、これに限られず、筐体11の内面や電池パックの筐体に検出部4を貼り付けても構わない。これらの筐体は、例えば金属またはプラスチックにより形成され、電池モジュールの筐体にはラミネートフィルムが用いられる場合もある。
【0026】
単電池2が膨れると、それに応じて高分子マトリックス層3が変形し、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化が検出部4によって検出される。検出部4から出力された検出信号は不図示の制御装置に送られ、設定値以上の外場の変化が検出部4により検出された場合には、その制御装置に接続された不図示のスイッチング回路が通電を遮断し、充電電流または放電電流を停止する。このようにして、単電池2の膨れによる二次電池の変形が高感度に検出され、二次電池の破裂が未然に防止される。
【0027】
発泡体である高分子マトリックス層3は、単電池2の膨れに応じた柔軟な変形が可能であり、二次電池の変形が高感度に検出される。また、発泡体である高分子マトリックス層3は圧縮が容易であるうえ、圧縮時に荷重が過剰に付加されにくく、二次電池内の狭い間隙にも配置でき、センサ特性の安定性にも優れる。本実施形態の高分子マトリックス層3は、単電池2とそれを収容する筐体11との間(間隙G2)に配置されているが、互いに隣り合う単電池2の間に配置してもよい。高分子マトリックス層3を折り曲げるようにして、単電池2や筐体11の角部に貼り付けることも可能である。高分子マトリックス層3は、必ずしも圧縮状態で装着する必要はなく、非圧縮状態で装着してもよい。
【0028】
図2の例では、それぞれ高分子マトリックス層3と検出部4を1つずつ示しているが、二次電池の形状や大きさなどの諸条件に応じて、それらを複数使用してもよい。更に、複数の高分子マトリックス層3を同じ被検出物(本実施形態では単電池2)に貼り付けたり、複数の検出部4によって同じ高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出するように構成したりしても構わない。
【0029】
本実施形態では、高分子マトリックス層3が上記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、検出部4が上記外場としての磁場の変化を検出する。この場合、高分子マトリックス層3は、エラストマー成分からなるマトリックスに磁性フィラーが分散してなる磁性エラストマー層であることが好ましい。
【0030】
磁性フィラーとしては、希土類系、鉄系、コバルト系、ニッケル系、酸化物系などが挙げられるが、より高い磁力が得られる希土類系が好ましい。磁性フィラーの形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、柱状および不定形のいずれであってよい。磁性フィラーの平均粒径は、好ましくは0.02〜500μm、より好ましくは0.1〜400μm、更に好ましくは0.5〜300μmである。平均粒径が0.02μmより小さいと、磁性フィラーの磁気特性が低下する傾向にあり、平均粒径が500μmを超えると、磁性エラストマー層の機械的特性が低下して脆くなる傾向にある。
【0031】
磁性フィラーは、着磁後にエラストマー中に導入しても構わないが、エラストマーに導入した後に着磁することが好ましい。エラストマーに導入した後に着磁することで磁石の極性の制御が容易となり、磁場の検出が容易になる。
【0032】
エラストマー成分には、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーまたはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、および天然ゴム等を挙げることができる。このうち好ましいのは熱硬化性エラストマーであり、これは電池の発熱や過負荷に伴う磁性エラストマーのへたりを抑制できるためである。更に好ましくは、ポリウレタンゴム(ポリウレタンエラストマーともいう)またはシリコーンゴム(シリコーンエラストマーともいう)である。
【0033】
ポリウレタンエラストマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリウレタンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、活性水素含有化合物と磁性フィラーを混合し、ここにイソシアネート成分を混合させて混合液を得る。また、イソシアネート成分に磁性フィラーを混合し、活性水素含有化合物を混合させることで混合液を得ることも出来る。その混合液を離型処理したモールド内に注型し、その後硬化温度まで加熱して硬化することにより、磁性エラストマーを製造することができる。また、シリコーンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、シリコーンエラストマーの前駆体に磁性フィラーを入れて混合し、型内に入れ、その後加熱して硬化させることにより磁性エラストマーを製造することができる。なお、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
【0034】
ポリウレタンエラストマーに使用できるイソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、イソシアネート成分は、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、及びイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。好ましいイソシアネート成分は、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、より好ましくは2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートである。
【0035】
活性水素含有化合物としては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを用いることができる。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール等の高分子量ポリオールを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
活性水素含有化合物として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール成分、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類を混合することもできる。好ましい活性水素含有化合物は、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルポリオール、より好ましくはポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体である。
【0037】
イソシアネート成分と活性水素含有化合物の好ましい組み合わせとしては、イソシアネート成分として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの1種または2種以上と、活性水素含有化合物として、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、および3−メチル−1,5−ペンタンアジペートの1種または2種以上との組み合わせである。より好ましくは、イソシアネート成分として、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネートと、活性水素含有化合物として、ポリプロピレングリコール、および/またはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体との組み合わせである。
【0038】
磁性エラストマー中の磁性フィラーの量は、エラストマー成分100重量部に対して、好ましくは1〜450重量部、より好ましくは2〜400重量部である。これが1重量部より少ないと、磁場の変化を検出することが難しくなる傾向にあり、450重量部を超えると、磁性エラストマー自体が脆くなる場合がある。
【0039】
磁場の変化を検出する検出部4には、例えば、磁気抵抗素子、ホール素子、インダクタ、MI素子、フラックスゲートセンサなどを用いることができる。磁気抵抗素子としては、半導体化合物磁気抵抗素子、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)が挙げられる。このうち好ましいのはホール素子であり、これは広範囲にわたって高い感度を有して検出部4として有用なためである。
【0040】
高分子マトリックス層3の非圧縮状態での厚みは、好ましくは300〜3000μm、より好ましくは400〜2000μm、更に好ましくは500〜1500μmである。上記の厚みが300μmよりも小さいと、所要量のフィラーを添加しようとした際に脆くなってハンドリング性が悪化する傾向にある。一方、上記の厚みが3000μmよりも大きいと、二次電池内の間隙に配置された高分子マトリックス層3が過度に圧縮されて変形しにくくなり、センサ感度が低下する場合がある。
【0041】
磁性フィラーの防錆などを目的として、高分子マトリックス層3の柔軟性を損なわない程度に、高分子マトリックス層3を封止する封止材を設けてもよい。封止材には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、エチレン・アクリル酸エチルコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリブタジエン等を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0042】
上記のように、高分子マトリックス層3は、分散したフィラーと気泡を含有する発泡体である。発泡体としては、一般の樹脂フォームを用いることができるが、圧縮永久歪などの特性を考慮すると熱硬化性樹脂フォームを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂フォームとしては、ポリウレタン樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォームなどが挙げられ、このうちポリウレタン樹脂フォームが好適である。ポリウレタン樹脂フォームには、上掲したイソシアネート成分や活性水素含有化合物を使用できる。
【0043】
ポリウレタン樹脂フォームに用いられる触媒としては、公知の触媒を限定なく使用することができるが、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、N,N,N',N'‐テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミン触媒、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の金属触媒を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記触媒の市販品として、東ソー社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王社製の「カオーライザー NO.1」、「カオーライザー NO.30P」、エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」、東栄化工社製の「BTT−24」、日本化学産業社製の「プキャット25」などが挙げられる。
【0045】
ポリウレタン樹脂フォームに用いられる整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤など、通常のポリウレタン樹脂フォームの製造に用いられるものを使用することができる。上記シリコーン系整泡剤やフッ素系整泡剤として用いられるシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤は、分子内に、ポリウレタン系に可溶な部分と、不溶な部分とが存在し、上記不溶な部分がポリウレタン系材料を均一に分散し、ポリウレタン系の表面張力を下げることによって、気泡を発生させやすく、割れにくくするものであり、もちろん、上記表面張力を下げ過ぎると気泡が発生しにくくなる。本発明の樹脂フォームにおいては、例えば、上記シリコーン系界面活性剤を用いる場合、上記不溶な部分としてのジメチルポリシロキサン構造によって、気泡径を小さくしたり、気泡数を多くしたりすることが可能となるのである。
【0046】
上記シリコーン系整泡剤の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「SF−2962」、「SRX 274DL」、「SF−2965」、「SF−2904」、「SF−2908」、「SF−2904」、「L5340」、エボニック・デグサ社製の「テゴスターブB−8017」、「B−8465」、「B−8443」などが挙げられる。また、上記フッ素系整泡剤の市販品としては、例えば、3M社製の「FC430」、「FC4430」、大日本インキ化学工業社製の「FC142D」、「F552」、「F554」、「F558」、「F561」、「R41」などが挙げられる。
【0047】
上記整泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜12質量部である。整泡剤の配合量が1質量部未満であると発泡が十分ではなく、10質量部を超えるとブリードアウトする可能性がある。
【0048】
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の気泡含有率は、20〜80体積%であることが好ましい。気泡含有率が20体積%以上であると、高分子マトリックス層3が柔軟で変形しやすくなり、センサ感度を良好に高められる。また、気泡含有率が80体積%以下であると、高分子マトリックス層3の脆化が抑えられ、ハンドリング性や安定性が高められる。気泡含有率は、JIS Z−8807−1976に準拠して比重測定を行い、この値と無発泡体の比重の値から算出される。
【0049】
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の平均気泡径は、好ましくは50〜300μmである。また、その発泡体の平均開口径は、好ましくは15〜100μmである。平均気泡径が50μm未満または平均開口径が15μm未満であると、整泡剤量の増大に起因してセンサ特性の安定性が悪化する傾向にある。また、平均気泡径が300μmを超え、または平均開口径が100μmを超えると、被検出物である単電池などとの接触面積が減少し、安定性が低下する傾向にある。平均気泡径及び平均開口径は、高分子マトリックス層の断面をSEMにより100倍の倍率で観察し、得られた画像について画像解析ソフトを用いて上記断面の任意範囲内に存在する全ての気泡の気泡径、及び全ての連続気泡の開口径を測定し、その平均値から算出される。
【0050】
図3の例では、高分子マトリックス層3が厚み方向において平均気泡径差を有する。即ち、この高分子マトリックス層3では、その厚み方向の一方側(
図3の下側)と他方側(
図3の上側)とで大きさの異なる気泡30が偏在している。平均気泡径差は、高分子マトリックス層3を厚み方向に四等分する三本の直線L1〜L3を引き、その直線L1〜L3に関する平均気泡径の最大値から最小値を差し引いた値として求められる。直線に関する平均気泡径は、それぞれの直線上で気泡30を通る線分の長さの平均値として算出される。通常、平均気泡径差は、一方側の直線L3に関する平均気泡径と、他方側の直線L1に関する平均気泡径との差となる。
【0051】
上記の平均気泡径差は、好ましくは20μm以上である。これが20μm未満であると、高分子マトリックス層3が変形する際に気泡30がより均一に圧縮されるため、センサ感度が低下する傾向にある。また、その平均気泡径差は、好ましくは150μm以下である。これが150μmを超えると、気泡30の圧縮の度合が不均一になり過ぎて、センサ特性の安定性が悪化する恐れがある。
【0052】
図3に示した高分子マトリックス層3は、その一方側が単電池2に貼り付けられ、かかる一方側の平均気泡径が、その他方側の平均気泡径よりも小さいことが好ましい。これにより、比較的多くの磁性フィラーが含有される一方側が単電池2に向けられ、高分子マトリックス層3の小さな変形に対する磁場の変化を大きくして、センサ感度を向上できる。具体的には、直線L3に関する平均気泡径が、直線L1に関する平均気泡径よりも小さいことが好ましい。そして、それらの平均気泡径の差は20μm以上が好ましく、また150μm以下が好ましい。
【0053】
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の独立気泡率は、5〜70%であることが好ましい。これにより、高分子マトリックス層3の圧縮されやすさを確保しつつ、優れた安定性を発揮できる。また、高分子マトリックス層3を形成する発泡体に対するフィラー(本実施形態では磁性フィラー)の体積分率は、1〜30体積%であることが好ましい。
【0054】
上述したポリウレタン樹脂フォームは、磁性フィラーを含有すること以外は、通常のポリウレタン樹脂フォームの製造方法により製造できる。その磁性フィラーを含有するポリウレタン樹脂フォームの製造方法は、例えば以下の工程(i)〜(v)を含む。
(i)ポリイソシアネート成分および活性水素成分からイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成する工程
(ii)該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを混合、予備撹拌して、非反応性気体雰囲気下で、気泡を取り込むように激しく撹拌する一次撹拌工程
(iii)更に活性水素成分を加えて、二次撹拌して、磁性フィラーを含む気泡分散ウレタン組成物を調製する工程
(iv)該気泡分散ウレタン組成物を所望の形状に成形し、硬化して、磁性フィラーを含むウレタン樹脂フォームを作製する工程
(v)該ウレタン樹脂フォームを着磁して磁性ウレタン樹脂フォームを形成する工程
【0055】
ポリウレタン樹脂フォームの製造方法としては、水などの反応型発泡剤を用いる化学的発泡法が知られているが、上記工程(ii)のような非反応性気体雰囲気下で機械的撹拌する機械的発泡法を用いることが好ましい。機械的発泡法によれば、化学的発泡法に比べて成形操作が簡便であり、発泡剤として水を用いないので、微細な気泡を有する強靭で反発弾性(復元性)などに優れた成形体が得られる。
【0056】
まず、上記工程(i)のように、ポリイソシアネート成分および活性水素成分からイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成する。次に、上記工程(ii)のように、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを混合、予備撹拌して、非反応性気体雰囲気下で、気泡を取り込むように激しく撹拌し、上記工程(iii)のように、更に活性水素成分を加えて撹拌して、磁性フィラーを含む気泡分散ウレタン組成物を調製する。上記工程(i)〜(iii)のように、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタン樹脂フォームにおいて、予めイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成してからポリウレタン樹脂フォームを形成する方法は当業者に公知であり、製造条件は配合材料によって適宜選択することができる。
【0057】
上記工程(i)の形成条件としては、まず、ポリイソシアネート成分および活性水素成分の配合比率は、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と活性水素成分中の活性水素基との比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.5〜5、好ましくは1.7〜2.3となるように選択する。また、反応温度は60〜120℃が好ましく、反応時間は3〜8時間が好ましい。更に、従来公知のウレタン化触媒、有機触媒、例えば東栄化工株式会社から商品名「BTT−24」で市販されているオクチル酸鉛、東ソー株式会社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王株式会社製の「カオーライザー NO.1」、「エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」などを用いてもよい。上記工程(i)に用いられる装置としては、上記のような条件で上記材料を撹拌混合して反応させることができるものであれば使用でき、通常のポリウレタン製造に用いられるものを使用することができる。
【0058】
上記工程(ii)の予備撹拌を行う方法としては、液状樹脂とフィラーを混合することができる一般的な混合機を用いる方法が挙げられ、例えばホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサなどが挙げられる。
【0059】
上記工程(ii)において、高粘度であるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに整泡剤を加えて撹拌(一次撹拌)し、上記工程(iii)において、更に活性水素成分を加えて二次撹拌することによって、反応系内に取り込んだ気泡が抜けにくくなり、効率的な発泡を行うことができるため好ましい。
【0060】
上記工程(ii)における非反応性気体としては可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、これらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用が最も好ましい。また、上記一次撹拌および二次撹拌、特に一次撹拌の条件についても、通常の機械的発泡法によるウレタンフォーム製造時の条件を用いることができ、特に限定されないが、撹拌翼または撹拌翼を備えた混合機を用いて、回転数1000〜10000rpmで1〜30分間激しく撹拌する。そのような装置として、例えばホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機などが挙げられる。
【0061】
上記工程(iv)において、上記気泡分散ウレタン組成物をシート状など所望の形状に成形する方法も特に限定されず、例えば、上記混合液を離型処理したモールド内に注入し、硬化させるバッチ式成形方法、離型処理した面材上に上記気泡分散ウレタン組成物を連続的に供給し硬化させる連続成形方法を用いることができる。また、上記硬化条件も、特に限定されず、60〜200℃で10分間〜24時間が好ましく、硬化温度が高すぎると上記樹脂フォームが熱劣化してしまい機械的強度が悪化し、硬化温度が低すぎると上記樹脂フォームの硬化不良が生じてしまう。また、硬化時間が長すぎると上記樹脂フォームが熱劣化してしまい機械的強度が悪化し、硬化時間が短すぎると上記樹脂フォームの硬化不良が生じてしまう。上記気泡分散ウレタン組成物が硬化する過程では、大きい気泡が小さい気泡よりも早く浮き上がろうとするため、これを利用することで、
図3のようにサイズ違いの気泡が偏在した状態が得られる。
【0062】
上記工程(v)において、磁性フィラーの着磁方法は特に限定されず、通常用いられる着磁装置、例えば電子磁気工業株式会社製の「ES−10100−15SH」、株式会社玉川製作所製の「TM−YS4E」などを用いて行うことができる。通常、磁束密度1〜3Tを有する磁場を印加する。磁性フィラーは、着磁後に、磁性フィラー分散液を形成する上記工程(ii)において添加してもよいが、途中の工程での磁性フィラーの取り扱い作業性などの観点から、上記工程(v)において着磁することが好ましい。
【0063】
本実施形態では、既述の通り、フィラーが分散した発泡体である高分子マトリックス層3を単電池2に貼り付け、単電池2が膨れて高分子マトリックス層3が変形した場合には、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出し、それに基づいて二次電池の変形を検出する。また、高分子マトリックス層3の厚み方向の一方側の平均気泡径が他方側の平均気泡径よりも小さい場合には、その一方側を単電池2に向けて貼り付けることで、センサ感度の向上が見込める。
【0064】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0065】
前述の実施形態では、単電池2を被検出物として、高分子マトリックス層3を単電池2に貼り付けた例を示したが、これに限られない。特にラミネートフィルム型の電池モジュールにおいては、電池モジュールの筐体を被検出物として、高分子マトリックス層を電池モジュールの筐体に貼り付け、それによって単電池の膨れによる密閉型二次電池の変形を検出することも考えられる。
【0066】
前述の実施形態では、磁場の変化を利用した例を示したが、電場などの他の外場の変化を利用する構成でもよい。例えば、高分子マトリックス層がフィラーとして金属粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性フィラーを含有し、検出部が外場としての電場の変化(抵抗および誘電率の変化)を検出する構成が考えられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
高分子マトリックス層となる磁性ポリウレタン樹脂フォーム(エラストマー成分をポリウレタンエラストマーとする磁性エラストマーの一つ)の製造には、以下の原料を用いた。
TDI−80:トルエンジイソシアネート(三井化学社製、2,4−体=80%、コスモネートT−80)
ポリオールA:プロピレングリコールを開始剤としたポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数2(旭硝子社製、EX−2020)
ポリオールB:グリセリンを開始剤としたポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数3(旭硝子社製、EX−3030)
ポリオールC:グリセリンを開始剤としたポリオキシプロピレングリコール、OH価84、官能基数3(旭硝子社製、EX−2030)
オクチル酸ビスマス:プキャット25(日本化学産業社製)
オクチル酸鉛:BTT−24(東栄化工社製)
ネオジム系フィラー:MF−15P(平均粒径33μm、愛知製鋼社製)
サマリウム系フィラー:SmFeN合金微粉(平均粒径2.5μm、住友金属鉱山社製)
整泡剤:シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製、L−5340)
【0069】
また、プレポリマーには、表1に示すプレポリマーAを用いた。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1
反応容器に、ポリオールA(プロピレングリコールを開始剤としたポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数2、旭硝子社製、EX−2020)42.6重量部と、ポリオールB(グリセリンを開始剤としたポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数3、旭硝子社製、EX−3030)42.6重量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器にトルエンジイソシアネート(三井化学社製、2,4体=80%、コスモネートT−80)14.8重量部を添加して、反応容器内の温度を80℃に保持しながら2時間反応させて、イソシアネート末端プレポリマーA(NCO%=3.58%)を合成した。
【0072】
次に、プレポリマーA60.8重量部、シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、L−5340)4.8重量部およびオクチル酸ビスマス(日本化学産業社製、プキャット25)0.11重量部の混合液にNdFeB磁粉(愛知製鋼社製、MF−15P)45.5重量部を添加し、フィラー分散液を調製した。このフィラー分散液を、撹拌翼を用いて回転数1000rpmで、反応系内に気泡を取り込むように5分間激しく一次撹拌を行った。その後、ポリオールC(グリセリンを開始剤としたポリオキシプロピレングリコール、OH価84、官能基数3、旭硝子社製、EX−2030)34.5重量部を添加し、3分間二次撹拌を行って、磁性フィラーを含有する含む気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0073】
上記の気泡分散ウレタン組成物を、1.2mmのスペーサーを有する離型処理したPETフィルム上に滴下し、ニップロールにて1.2mmの厚みに調整した。その後、80℃で1時間硬化を行って、磁性フィラーを含有するポリウレタン樹脂フォームを得た。得られた上記フォームを着磁装置(電子磁気工業社製)にて2.0Tで着磁することにより、磁性ポリウレタン樹脂フォームを得た。配合および製造条件を表2に示す。ここで、表2の「高分子マトリックス層の貼付」の項目に関し、「気泡径大」は、平均気泡径が大きい側(前述の実施形態における他方側)をホール素子(単電池とは反対側)に向け、平均気泡径が小さい側(前述の実施形態における一方側)を単電池に向けて貼り付けたことを意味する。「気泡径小」は、その反対である。
【0074】
実施例2〜8及び比較例1,2
表2の配合および製造条件に基づき、実施例1と同様にして磁性ポリウレタン樹脂フォームを得た。
【0075】
(気泡含有率の測定)
JIS Z−8807−1976に準拠して比重測定を行い、この値と無発泡体の比重の値から気泡含有率を算出した。比重測定は、作製した磁性ポリウレタン樹脂フォームを40mm×75mmの大きさに切り出したものを測定用サンプルとし、温度23±2℃、湿度50±5%の環境で16時間静置した後、比重計(ザルトリウス社製、LA−230S)を用いて行った。
【0076】
(平均気泡径及び平均開口径の測定)
作製した磁性ポリウレタン樹脂フォームの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立サイエンスシステムズ社製、S−3500N)を用いて100倍の倍率で観察し、得られた画像について、画像解析ソフト(三谷商事社製、WinROOF)を用いて、任意範囲の気泡径(直径)ならびに開口径(直径)を測定し、平均気泡径ならびに平均開口径を算出した。
【0077】
(平均気泡径差の測定)
作製した磁性ポリウレタン樹脂フォームの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立サイエンスシステムズ社製、S−3500N)を用いて70倍の倍率で観察し、得られた画像について、上記断面を厚み方向に四等分する三本の直線を引き(
図3参照)、それぞれの直線上にて気泡を通る線分の長さの平均値を、各直線に関する平均気泡径として算出し、その各直線に関する平均気泡径の最大値から最小値を差し引いた値を求めた。
【0078】
(独立気泡率の測定)
作製した磁性ポリウレタン樹脂フォームを20mm×20mmの大きさに切り出し、空気比較式比重計930型(ベックマン社製)を使用して測定した。独立気泡率は、測定で得たカウンター値とサンプル容積値とに基づき、以下の式により算出した。
独立気泡率(%)=(カウンター値/サンプル容積値)×100
【0079】
(センサ特性の評価)
作製した磁性ポリウレタン樹脂フォームを5mm×30mmの大きさに切り出し、1.44Ahの単電池(サイズ:縦90mm×横30mm×厚み4mm)に貼り付けた。
図4のように、内部空間の厚みTが5.0mmのアクリル樹脂製の筐体15に上記単電池(単電池2)を収容し、それらの間に設けられた1.0mmの間隙G3に磁性ポリウレタン樹脂フォーム(高分子マトリックス層3)を配置した。筐体を振動試験機に設置し、振動数200Hz、振幅0.8mm(全振幅1.6mm)の正弦波を与え、振動試験を行った。なお、正弦波は互いに垂直な3方向からそれぞれ3時間印加した。
【0080】
振動試験後、筐体の上面にホール素子(旭化成エレクトロニクス社製、EQ−430L)を取り付け、単電池に満充電(4.3V)の状態から2.88Ah(2C)の条件で過充電を行い、磁束密度が所定値(0.5gauss/sec)に達するまでの時間を測定し、この試験を5回行って得られた平均の時間(分)をセンサ感度とした。磁束密度が所定値に達するまでの時間が短いほど、センサ感度が高いことを示す。更に、その測定した時間のうち最長と最短との差(分)を安定性の指標とした。この差が小さいほど、センサ特性の安定性に優れることを示す。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
比較例1では、無発泡体である高分子マトリックス層が硬く、圧縮時に荷重が過剰に付加されたためにセンサ感度が低かったと考えられる。比較例2では、比較例1に比べて高分子マトリックス層の硬度が低いものの、圧縮された高分子マトリックス層が全体的に変形したためにセンサ感度が低かったと考えられる。これに対し、実施例1〜8では、比較的優れたセンサ感度を示し、しかも安定性にも優れていた。センサ感度については、上記の測定時間が45,46分を超えると発火の恐れがあるが、いずれの実施例でも、それ以下の時間でセンシングできた。実施例4,5では、センサ感度または安定性が僅かに比較的低いものの、いずれも使用可能なレベルであった。