(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来例は、測量に先立ってミラー装置や対空標識を求点上まで運搬した上で、求点上において作業者がミラー装置を所定の姿勢に支えたり、対空標識を所定の姿勢で設置したりしなければならないために、手間がかかるという欠点がある。
【0005】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、
測量作業性に優れた測量方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
地上測量と空中測量の双方の測量成果を統合して地図情報を生成する測量方法であって、
空中写真測量のために中心位置を把握容易な照準近似の模様を施した標識面と、これに直交し、地上測量のためのレーザ光に反射可能な標識面とを備えてボックス形状に形成された多面標識体を有する測量用標識を測量対象領域内において地上の既知点からの視通および上空視通がとれる位置に配置するとともに、該測量用標識に形成されたジンバル機構により前記複数の標識面を水平姿勢および鉛直姿勢に保持させ、
次いで、既知点からの地上測量により3次元位置を各点において特定可能で、かつ鉛直姿勢の標識面を判別可能な測量対象領域の地上測量点群データを取得するとともに、上空からの空中写真測量によって3次元位置を各点において特定可能で、かつ水平姿勢の標識面を判別可能な測量対象領域の
空中測量点群データを取得した後、前記地上測量点群データ、および空中写真測量点群データ内から標識面を自動抽出して各点群データ内の標識位置を特定し、
この後、いずれか一方の点群データに基づいて測量対象領域の3次元形状モデルを形成する際のデータ欠損領域についての他方の点群データにおける対応データ領域を各点群データにおける標識面の3次元位置を利用して特定し、対応データ領域によりデータ欠損領域を補完して3次元形状モデルを形成する測量方法を提供することにより達成される。
【0007】
本発明における測量用標識は自走可能に形成することができ、求点まで移動させる際の労力や時間を軽減することができる上に、標識部1がジンバル機構2により重力方向Gを基準にした一定の姿勢に保持可能であることから、求点上において作業者が標識部1の姿勢を管理する必要もない。以上の測量用標識は、具体的には、走行駆動装置とジンバル機構2を利用して構成することが可能であり、また、ジンバル機構2によって標識部1を地上測量の際には鉛直姿勢に、空中測量の際には水平姿勢にすれば、良好な測量精度を確保することが可能である。なお、ジンバル機構2は、標識部1を支持する軸の根本側に配置してもよい。
【0008】
測量標識を以上のように構成した場合、測量作業性を極めて向上させることができる。以上の測量用標識は、例えば上述した従来例のようにトータルステーション等を利用した測量における標識であるいわゆる測量ターゲット装置や、写真測量において地上基準点やタイポイントを写真上で判別するための標識として活用したり、さらには、レーザ測量時においても活用することができる。また、モービルマッピングシステムや衛星画像の測量利用の際にも活用することが可能である。
【0009】
また、以上においては測量用標識を自走可能としたが、自力飛行可能にした場合には、例えば求点が険しい場所などに配置されるときにも比較的簡単に移動できる。この場合、測量用標識は、飛行駆動装置を利用して構成することが可能である。
【0010】
上記標識部1は、上述のように空中測量に利用する場合には水平姿勢に、地上測量に利用する場合には鉛直姿勢に保持することが望ましく、このため測量用標識は、標識部1の姿勢に応じて空中測量用と地上測量用の2種類で構成することが可能である。また、空中測量時と地上測量時の双方に兼用できるようにすれば汎用性を高めることができ、この場合、標識面3の姿勢変更を可能に標識部1を構成しても足りるが、空中測量時に使用される標識面3と、地上測量時に使用される標識面3の双方を備えて標識部1を構成すれば、かかる姿勢変更のための機構が不要になるために、構造をより単純にすることができ、より軽量化しやすくもなる。この場合、標識部1は、ジンバル機構2により鉛直姿勢および水平姿勢に保持された複数の標識面3、3、・・を備えてボックス状に形成される多面標識体4を有して構成することが可能であり、これにより地上測量に際しては鉛直姿勢の標識面3を水平方向の全方位から捉えることが可能となる。
【0011】
また、上記標識部1は、測量方式に応じて適宜に構成することができる。具体的には例えば、写真測量時に使用するには、従来例のように中心位置を把握容易な照準近似の模様5を標識面3に施して構成することが望ましいし、また、トータルステーションによる測量時に使用するには、測距用光波を再帰反射するプリズムミラー6で構成することが望ましく、さらに、レーザ測量時に使用する際には上述の標識面3をレーザ光を反射可能にして構成することが望ましい。以上の標識部1は、測量方式に応じて個別に構成しても足りるが、複数の測量方式に兼用できるようにすれば、汎用性が向上する。この場合において、例えば標識面3について、中心位置を把握容易な照準近似の模様5を施し、かつレーザ光を反射可能に形成すれば、写真測量とレーザ測量とで兼用できるために、上述した自走や自力飛行などの高い移動能力を活用しつつ広域の効率的な測量を行う際の汎用性を向上させることができる。
【0012】
以上の測量用標識は、例えば自動車やヘリコプターなどに標識部1等を取り付けて構成することが可能であるが、このような自動車等に代えて、遠隔操作あるいは自律での移動制御可能な無人地上車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)といった無人機を用いることもでき、この場合には斜面崩壊現場などに配置しても作業者に危険が及ぶのを防止できる。この場合において、模型自動車や模型航空機などの小型の無人機を利用すれば、より軽量化できるために、上述した斜面崩壊現場などのように地盤強度に問題がある状況でも配置しやすくなる。
【0013】
また、求点7の地上座標を地上の既知点8から計測する測量方法であって、
前記計測に先立って、測量用標識9を遠隔操作により既知点8からの視通がとれる位置に設定した求点7上まで自走あるいは自力飛行させるとともに、前記測量用標識9の標識部1をジンバル機構2により鉛直姿勢に保持させる測量方法を
提供することもできる。
【0014】
上述した通り、写真測量やレーザ測量、さらにはトータルステーションを使用した測量など様々な測量方式において、測量用標識9を自走等させるとともに、ジンバル機構2により標識部1を重力方向Gを基準にした一定の姿勢に保持することによって、求点7の設定位置の簡単な変更作業を含め、作業性に優れた測量を実施することができる。また、例えば近年トータルステーションに搭載されることの珍しくない測量用標識9(測量ターゲット装置)の自動追尾機能を活用すれば、自走等のスムーズな移動との組み合わせによる相乗効果によって測量作業性が極めて向上する。
【0015】
以上は地上測量の場合であるが、空中測量のときには、
空中計測に先立って、測量用標識9を遠隔操作により上空視通がとれる位置に設定した求点7上まで自走あるいは自力飛行させるとともに、前記測量用標識9の標識部1をジンバル機構2により鉛直姿勢に保持させれば足りる。
【0017】
この発明によれば、測量対象領域に地上測量と空中測量を重ねて実施し、一方の測量成果のデータ欠損領域11を他方の測量成果の対応データ領域12で補完することによって、例えば地上測量のみでは得ることの困難な地物の高所に位置する上面の情報や、反対に空中測量のみでは得ることの困難な地物の垂直、あるいはオーバーハングする側面の情報をもカバーした地図情報を得ることが可能になる。地上測量や空中測量には、3次元位置を特定可能なレーザ測距点や画素の集まりからなる点群データを取得する写真測量やレーザ測量が利用され、これにより測量対象領域が広範な地理的範囲に及ぶときにも効率的な測量が可能となる。
【0019】
さらに、双方の測量成果を統合する場合には、例えば、地上測量において良好な標高座標の位置精度と、空中測量において良好な平面座標の位置精度の双方を活用して精度に優れた測量成果を得ることも可能になる。この場合には、統合作業に際し、例えば、双方の誤差が最小となるように最小二乗法等を用いて座標値を調整等すれば足りる。
【0020】
加えて、上述のように地上測量の成果と空中測量の成果を統合して情報量等に優れた3次元形状モデルを得ることができれば、例えば斜面崩壊や地すべりなどの発生現場の地形解析にも有用となる。この場合において、遠隔操作により移動制御可能な測量用標識9を斜面崩壊や地すべりなどの発生現場13、あるいはその近傍に配置して経時的に繰り返し計測し、得られた3次元形状モデル同士を比較して時系列変化を解析すれば、斜面の安定状況や二次崩落の危険性などを極めて高精度に把握することができる。この際、万一、測量過程において二次崩落が発生して測量用標識9が喪失したときには、別途用意しておいた測量用標識9を再配置した上で観察を継続すれば足りる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、測量作業性を向上させることのできる測量用標識、および測量作業性に優れた測量方法を提供することができ、高精度かつ詳細な測量成果の充実を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1ないし
図4に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態において、測量用標識9は、
図1に示すように、標識部1を搭載し、無線により遠隔操作可能な小型の模型自動車21と、この模型自動車21への操作を無線遠隔入力するための遠隔操作装置22とを有する。
【0024】
上記模型自動車21は、走行駆動装置23を備え、該走行駆動装置23の駆動部23aにより車輪24に動力を与えて自走し、また、この駆動部23aを作動させるために図外のバッテリ等の給電手段を搭載する。また、上記走行駆動装置23は、駆動部23aを制御する駆動制御部23bを有し、この駆動制御部23bは、受信部25を介して上記遠隔操作装置22からの操作信号が入力されると、操作信号に従って駆動部23aを制御する。なお、
図1において26はアンテナである。
【0025】
上記遠隔操作装置22は、オペレータからの操作が入力される操作入力部27を有し、操作内容に応じた操作信号を送信部29を通じてアンテナ30から出力する。この遠隔操作装置22も上述の模型自動車21同様、図外の給電手段を備える。なお、以上の模型自動車21と遠隔操作装置22は、ラジオコントロール可能な玩具として市販されているものを活用して構成することができる。
【0026】
一方、上記標識部1は、
図1(b)に示すように、立方体近似のボックス状に形成され、模型自動車21に取り付けられる下面側を除く外表面5面を標識面3とする多面標識体4を有する。各標識面3は、その中心位置の把握を容易にする照準近似の模様5を施され、また、レーザ光等の測距用光波を再帰反射可能に形成される。上記模様5は、具体的には、正方形からなる各標識面3にその図心位置を中心とし、直径が標識面3の一辺よりもやや長い円形近似の図形を描き、この図形の外側の領域を灰色に着色するとともに、この図形の内側の領域を四分円毎に市松模様のように白黒の色違いに着色して構成される。以上の多面標識体4は、例えば合成樹脂材などの軽量の素材を中空のボックス状にして形成することが可能であり、また、その模様5は、例えば、各標識面3に測距用光波を再帰反射する白、黒、および灰色の粘着シートを張り付けるなどして形成することが可能である。
【0027】
以上の多面標識体4は、ジンバル機構2より支持され、このジンバル機構2を介して模型自動車21に取り付けられる。上記ジンバル機構2は、多面標識体4の5面の標識面3、3、・・を水平姿勢や鉛直姿勢に保持するもので、具体的には例えば、多面標識体4のピッチ方向およびロール方向の回転をジャイロで検出し、この回転を打ち消すように多面標識体4をモータで回転駆動させることにより、各標識面3が水平姿勢や鉛直姿勢を維持するように多面標識体4の姿勢を制御する。また、上記ジンバル機構2には、その姿勢維持機能を停止可能な図示省略のストッパも組み込まれており、該ストッパを模型自動車21の走行時に作動させることにより、移動時の振動から保護等される。このストッパは、上述した遠隔操作装置22により遠隔で作動あるいは解除することができる。
【0028】
以上の測量用標識9は、この実施の形態においては、斜面崩壊の発生現場(斜面崩壊や地すべりなどの発生現場13)の地形を測量する際に使用される。この測量は、
図2に示すように、崩壊斜面を中心とした所定の地理範囲内を対象とし、地上測量と空中測量を併用してなされる。
【0029】
上記地上測量は、レーザ測量であり、斜面崩壊の発生現場13からある程度離れていて仮に二次崩壊が発生した場合にも安全性を確保でき、かつ、崩壊斜面を含めて周囲の見通しが良い場所にレーザ測距装置30を設置してなされる。このレーザ測距装置30の設置地点は、図外の地上基準点からの三角測量などにより既知点8にされる。
【0030】
一方、空中測量は、写真測量であり、無線により遠隔操作可能な小型の模型ヘリコプター31に撮影装置31dを搭載させてなされる。この模型ヘリコプター31は、回転翼31aを駆動、制御する飛行駆動装置31bに加えて、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機31cや、上記撮影装置31dを支持し、その撮影方向を直下に保持するジンバル機構31eをも有しており、これにより写真測量の外部標定要素が特定される。
【0031】
測量に際しては、前準備として先ず最初に、
図2に示すように、崩壊斜面の頂部近傍や裾野近傍などの測量対象範囲内であって、レーザ測距装置30の設置場所からの視通および上空視通がとれる位置に測量用標識9の適数が設置される。この設置は、オペレータが遠隔操作装置22を操作して測量用標識9の模型自動車21を無線遠隔操作により移動制御してなされ、また、設置状態において標識部1の標識面3は、ジンバル機構2により鉛直姿勢や水平姿勢に保持される。
【0032】
次いで、レーザ測距装置30を作動させて測量対象範囲の地形を地上からレーザ計測し、また、模型ヘリコプター31を遠隔操作装置22により遠隔操作し、例えば対地高度数百メートルの上空から測量対象範囲の地形をステレオ撮影、すなわち異なる方向から重複して撮影すれば、現場での測量作業は終了する。なお、
図2において一点鎖線はレーザ測距装置30等bによる測量範囲を示したもの、矢印は重力方向Gを示したものであり、また、上述の空中写真測量における撮影縮尺は1/500以上に確保される。
【0033】
また、以上のようにして現場で得られた地上測量と空中測量のそれぞれの成果は、この後、統合処理装置32により統合される。この統合処理装置32は、具体的にはコンピュータであり、
図3に示すように、地上測量と空中測量のそれぞれの測量成果である地上測量データ33と空中測量データ34が入力される入力部35と、これら地上測量データ33と空中測量データ34を統合処理する演算部36と、統合処理結果等を図外のディスプレイなどに出力する出力部37とを有する。
【0034】
上記入力部35には、地上測量の成果としてレーザ測距データ33aが入力されるとともに、レーザ測距装置30の設置地点(既知点8)の3次元座標値などのようにレーザ測距データ33aを標定するのに必要なデータが地上標定データ33bとして入力される。また、空中測量の成果として空中写真データ34aが入力されるとともに、GNSS受信機31cにより得られた撮影地点の3次元座標値などのように空中写真データ34aを標定するのに必要なデータが空中標定データ34bとして入力される。なお、上述のようにステレオ撮影がされるために、空中写真データ34aはステレオペア画像で構成される。
【0035】
また、上記演算部36は、
図3に示すように、上述の地上測量データ33や空中測量データ34の各々に基づいて、相互に比較可能な比較用データの各々を生成する地上正射データ生成部38や空中正射データ生成部39と、測量対象範囲内において地上測量では計測できない領域、言い換えればレーザ測距装置30の設置位置から照射した測距用レーザ光が途中で遮られるなどして届かない、測量データのデータ欠損領域11を抽出する欠損領域抽出部40と、上記比較用データに基づいて地上測量データ33と空中測量データ34のそれぞれの測量要素をマッチングをするマッチング処理部41と、これらの測量要素を統合する統合部43とを有する。
【0036】
上記地上正射データ生成部38は、
図3に示すように、地上測量データ33、すなわち点群データ(地上測量点群データ)から測量用標識9の位置を抽出する標識抽出部38aと、上記地上測量点群データから3次元形状モデルを生成する3次元形状モデル生成部38bと、上記地上測量点群データを地表面に対する正射影位置に配列した地上測量正射データを生成する正射データ生成部38cとを有する。上記標識抽出部38aは、標識面3で測距用レーザ光が反射するのを利用してその位置を抽出するものであり、例えば3次元座標値をもつ個々の点の集まりである地上測量点群データ内において、既知である標識面3の広さに応じたサイズの垂直面を検索し、当該垂直面を標識面3として抽出する。この標識抽出部38aは、この実施の形態においては上述のようにサイズとその垂直姿勢を条件に地上測量点群データから標識面3を自動抽出するが、マウス等の入力手段を通じたオペレータからの指定に従って抽出しても足りる。
【0037】
上記3次元形状モデル生成部38bは、地上測量データ33の地上測量点群データが示す3次元座標値に従ってTIN(Triangulated Irregular Network)等により構成されるDSM(Digital Surface Model)を生成する。
【0038】
上記正射データ生成部38cは、地上測量点群データを上記DSMに投影し、地上測量点群データを構成する各点を正射影位置に位置変換、位置調整した地上測量正射データを生成する。
【0039】
一方、空中正射データ生成部39は、
図3に示すように、空中測量データ34、すなわちステレオペア画像から測量用標識9の位置を抽出する標識抽出部39aと、上記ステレオペア画像から3次元形状モデルを生成する3次元形状モデル生成部39bと、上記ステレオペア画像から点群データ(空中測量点群データ)を生成する点群データ生成部39cと、上記空中測量点群データを地表面に対する正射影位置に配列した空中測量正射データを生成する正射データ生成部39dとを有する。上記標識抽出部39aは、写真画像に写る標識面3を抽出するものであり、例えば既知である標識面3の広さに応じたサイズや模様5、色を頼りに標識面3を特定し、抽出する。なお、標識抽出部39aは、上述した地上正射データ生成部38の標識抽出部38aと同様に、標識面3を自動抽出する以外に、マウス等の入力手段を通じたオペレータからの指定に従って抽出しても足りる。
【0040】
上記3次元形状モデル生成部39bは、空中測量データ34を利用して、写真測量の要領に従ってステレオマッチングによりDSMを生成する。また、上記点群データ生成部39cは、市販の点群データ生成ソフト同様、上記DSMを利用してステレオペア画像から点群データ(空中測量点群データ)を生成する。
【0041】
さらに、上記正射データ生成部39dは、上述した地上正射データ生成部38における正射データ生成部38cと同様に、上記空中測量点群データを上述のDSMに投影し、空中測量点群データの各点を正射影位置に位置変換、位置調整した空中測量正射データを生成する。
【0042】
一方、欠損領域抽出部40は、上述した地上測量正射データにおける点群の配置の多寡に基づき、点の存在しない領域をデータ欠損領域11として自動抽出する。具体的には、
図2に太線で示すように、崩壊斜面の頂部や、裾野の凹部には、地上測量の測距用レーザ光が届かない領域が発生しており、これに応じて地上測量正射データにも、
図4において実線で囲まれたデータ欠損領域11が発生する。なお、
図2において崩壊斜面の中腹に位置する太線は、空中測量において計測できない、すなわち写真撮影できない領域を示すものであり、また、
図4(a)においてデータ欠損領域11内等に二点鎖線で矩形近似に示された図形は、標識部1の標識面3を参考に示したものである。また、
図4(a)および後述する
図4(b)において多数の小さな丸印は点群データを構成する各々の点を模式的に示したものである。なお、欠損領域抽出部40は、データ欠損領域11を地上測量正射データから自動抽出する以外に、マウス等の入力手段を通じたオペレータからの指定に従って抽出しても足りる。
【0043】
また、上記マッチング処理部41は、地上測量正射データと空中測量正射データがマッチングする相対位置関係を判定する。具体的には、上述した各標識抽出部38a、39aにより抽出された標識面3の位置を材料として相対位置関係を決定する。なお、マッチングに際しては、地上正射データ生成部38の標識抽出部38aにおいて得られた標識部1の鉛直姿勢の標識面3の位置に基づいて、地上測量正射データにおける標識部1の水平姿勢の標識面3の対応位置が計算され、この対応位置の標識面3と、空中正射データ生成部39の標識抽出部39aにおいて得られた水平姿勢の標識面3の空中測量正射データにおける位置とがマッチングされる。また、マッチングに際しては標識面3の中心位置が求められ、この中心位置に基づいて地上測量正射データと空中測量正射データの相対位置関係が判定される。なお、マッチングの際に地上測量正射データと空中測量正射データと間の計測誤差の調整値、変換パラメータを算出しておけば、地上測量において精度の高い標高値と、空中測量において精度の高い平面座標値の双方の精度を有効に活用したマッチング条件を得ることも可能である。
【0044】
さらに、上記統合部43は、以上のマッチング処理部41によるマッチング成果に基づき、上述の欠損領域抽出部40により抽出された地上測量正射データのデータ欠損領域11に、空中測量正射データにおける対応データ領域12のデータを組み込み、地上測量と空中測量の双方の成果を統合した点群データを生成し、また、この点群データに基づいて測量対象範囲の地形の3次元形状データを生成する。
図4(b)は、空中測量正射データを示すものであり、二点鎖線で囲まれた領域が対応データ領域12である。また、
図4(a)と同図(b)とを比較すると明らかなように、地上測量正射データと空中測量正射データとは、地上分解能が異なるために、上述したマッチング処理や統合処理に際しては分解能が合致するように縮尺等が調整される。
【0045】
以上のようにして統合部43により生成された3次元形状データ、すなわちDSMは、
図2に太線で示す全てのデータ欠損領域11が解消されたものになり、これが出力部37を介して図外のディスプレイに出力される。
【0046】
また、以上において述べたような測量作業や、この測量作業により得られた測量成果に基づく統合処理装置32による3次元形状データの生成処理は、一定期間毎に繰り返され、得られた3次元形状データ同士を比較することにより、二次崩壊の発生状況を含む斜面崩壊の時系列変化が解析される。なお、上記比較は、ディスプレイに表示された3次元形状データ同士をオペレータがそれぞれ目視してすることが可能であるが、3次元形状データ同士の一致、不一致を比較演算処理により検出する比較部を演算部36に設ければ、より簡単かつ高精度にすることができる。
【0047】
なお、以上においては地上測量のデータ欠損領域11を空中測量の対応データ領域12で穴埋めする場合を示したが、反対に、空中測量のデータ欠損領域11を地上測量の対応データ領域12で穴埋めしても足り、この場合には例えば、地上測量点群データと空中測量点群データの双方を正射影方向に直交する方向に配置調整してからマッチング等すれば足りる。また、ジンバル機構2はピッチ方向とロール方向のみの2軸ではなく、ヨー方向への測量用標識9の回転をも打ち消す3軸対応のものを用いることも可能であり、この場合には、鉛直姿勢の標識面3を地上の計測地点、すなわちレーザ測距装置30の設置位置向かって正対、あるいは正対近似に保持することにより位置精度の向上を図ることができる。
【0048】
図5に測量用標識9の他の実施の形態を示す。なお、以下に述べるこの実施の形態を含む全ての実施の形態の説明において、上述した実施の形態と同一の要素は同一の符号を付して説明を省略する。この実施の形態において、測量用標識9の標識部1は、
図5(a)に示すように、無線により遠隔操作可能な小型の模型ヘリコプター43に搭載される。
【0049】
上記模型ヘリコプター43は、飛行駆動装置44の駆動部44aにより回転翼43aに動力を与え、これにより生じる揚力により自力飛行し、また、図外のバッテリ等の給電手段を搭載する。また、飛行駆動装置44の駆動制御部44bは、受信部45を介して図外の遠隔動作装置22からの操作信号が入力されると、操作信号に従って駆動部44aを制御する。なお、
図1において46はアンテナである。以上の模型ヘリコプター31も、ラジオコントロール可能な玩具として市販されているものを活用して構成することができる。なお、
図5(a)において43bは、着陸時に地面に接する脚部である。
【0050】
したがってこの実施の形態においては、
図5(b)に示すように、崩壊斜面の中腹に生じた岩棚47など、上述の模型自動車21の走行によっては到達が困難な場所にも標識部1を簡単に配置することができる。
【0051】
図6にさらに他の測量用標識9を用いてなされる測量の他の実施の形態を示す。この実施の形態において、標識部1は、上述した多面標識体4に代えて、測距用光波を再帰反射するプリズムミラー6により構成され、測量用標識9は、上記プリズムミラー6をジンバル機構2を介して模型自動車21に取り付け、また、水平姿勢に保持して形成される。
【0052】
また、測量には、自動追尾機能を備えたトータルステーション48が用いられる。
図6に二点鎖線の矢印で示すように、遠隔操作装置22により測量用標識9を順次適数の求点7上に移動させ、自動追尾機能を利用してトータルステーション48により各求点7上にある測量用標識9の位置を測量させる、すなわち具体的には、各求点7上で測量用標識9を停止させた状態で測量命令をトータルステーション48に入力すれば、
図6において一点鎖線の矢印で示すように自動で視準、測距、測角し、また記録処理がなされるために、極めて迅速、かつ簡単に測量作業が終了する。なお、
図6において48aは三脚である。