特許第6290759号(P6290759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290759
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のセンタースタンド構造
(51)【国際特許分類】
   B62H 1/02 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B62H1/02 F
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-194846(P2014-194846)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-64748(P2016-64748A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】林 志堅
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02460714(EP,A1)
【文献】 特開2009−241922(JP,A)
【文献】 特開2014−162409(JP,A)
【文献】 特開2010−235077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を支持する車体フレームと、後輪を支持して車体フレームに対して揺動軸まわりに回動自在に接続されるスイングアームと、を備えた鞍乗型車両の、センタースタンド構造であって、
前記車体フレームに固定される固定部分と、前記車体フレームの下方であって前記固定部分よりも車幅方向内側に位置しており、且つ、車幅方向に延びるスタンド軸線が設定されている、軸受部分と、前記固定部分と前記軸受部分とを連結する連結部分と、を有するステー部分と、
前記スタンド軸線回りに回動自在に前記軸受部分に支持されて、起立位置と該起立位置から上方に回動された収納位置とにわたって回動可能であって、起立位置で前記車体フレームを直立状態に支持する左右一対の脚部と、
前記脚部に連結されて、前記脚部が収納位置に位置するとき、前記脚部から上方へ延びており上端部に踏面を有する、踏み込み用の操作バーと、
を備えていることを特徴とする鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項2】
前記軸受部分は、前記車体フレームの後方に位置している、
請求項1に記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項3】
前記固定部分は、間隔をあけて複数配設されており、前記連結部分は、前記軸受部分から分岐して、前記固定部分のそれぞれに延びるV字状に形成されている、
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項4】
前記固定部分は、車幅方向及び車幅方向に直交する方向に間隔をあけて複数配置されている、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項5】
前記固定部分は、上下に間隔をあけて複数配置されており、
下側の前記固定部分が、上側の前記固定部分に対して、車幅方向内側に配置されている、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項6】
前記上側の前記固定部分は、側面視において前記スイングアームの揺動領域と重なる領域であって、前記スイングアームよりも車幅方向外側の領域に配置されている、
請求項5に記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項7】
前記脚部を前記軸受部分に回動自在に取り付ける支持構造を、さらに備え、
前記支持構造は、前記スタンド軸線に沿って車幅方向内側から車幅方向外側に向けて、前記軸受部分に挿通されるスタンド軸ボルトと、前記軸受部分の車幅方向外側で前記スタンド軸ボルトと螺合するナットと、を含んでいる、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【請求項8】
前記軸受部分に車幅方向内側から対向する対向部品が車体フレームに配置されており、
前記スタンド軸ボルトによるねじ嵌合部が、前記スタンド軸ボルトと前記対向部品との間のスタンド軸方向長さよりも長く構成されている、
請求項7に記載の鞍乗型車両のセンタースタンド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のセンタースタンド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体を直立状態で支持するためのセンタースタンドを備えた自動二輪車が知られている。例えば、特許文献1には、起立位置と起立位置から上方へ回動された収納位置とに回動可能な左右一対の脚部と、脚部が収納位置に位置するとき、脚部から上方へ延びており上端部に踏面を有する踏み込み用の操作バーと、を備えたセンタースタンドが開示されている。脚部は、基部が車体フレームに回動自在に支持されており、起立位置に回動するときに路面に接地する接地部を先端部に有している。
【0003】
そして、脚部を収納位置から起立位置へ回動させるスタンド操作では、操作バーの踏面を踏み込み操作することで、脚部を収納位置から起立位置側へ向けて回動させて、まず、接地部を路面に当接させる。この状態から、さらに踏面を踏み込み操作することで、接地部を支点とし踏面を力点として脚部を起立位置へ回動させることで、後車輪を持ち上げて車体を直立状態で支持できるようになっている。
【0004】
スタンド操作時において脚部を収納位置から起立位置へ回動させる回動モーメントは、踏面を踏み込み操作する踏み込み力と、支点としての接地部から力点としての踏面までの距離と、に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−241922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スタンド操作の操作性を向上させるには、支点から力点までの距離を増大させることで、回動モーメントを増大させることが必要となる。このため、収容位置における踏面の位置を上昇させることで、踏面と接地部との間の距離を増大させて、スタンド操作時の回動モーメントを増大させることが考えられる。しかしながら、踏面は、乗車した運転者及び同乗者の足下スペースを避けて配置されることになるので配置の自由度が低く、踏面と接地部との間の距離を増大させることが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、鞍乗型車両のセンタースタンドにおいて、収納位置における操作バーの踏面の位置を上昇させることなく、スタンド操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
前輪を支持する車体フレームと、後輪を支持して車体フレームに対して揺動軸まわりに回動自在に接続されるスイングアームと、を備えた鞍乗型車両の、センタースタンド構造であって、前記車体フレームに固定される固定部分と、前記車体フレームの下方であって前記固定部分よりも車幅方向内側に位置しており、且つ、車幅方向に延びるスタンド軸線が設定されている、軸受部分と、前記固定部分と前記軸受部分とを連結する連結部分と、を有するステー部分と、前記スタンド軸線回りに回動自在に前記軸受部分に支持されて、起立位置と該起立位置から上方に回動された収納位置とにわたって回動可能であって、起立位置で前記車体フレームを直立状態に支持する左右一対の脚部と、前記脚部に連結されて、前記脚部が収納位置に位置するとき、前記脚部から上方へ延びており上端部に踏面を有する、踏み込み用の操作バーと、を備えていることを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、スタンド軸線を車体フレームの下方に配置することで、収容位置における左右一対の脚部の上下方向位置を低く抑えやすい。これにより、踏面の位置を上昇させることなく、操作バーを長くできるので、スタンド操作における回動モーメントを増大させることができる。したがって、スタンド操作の操作性を向上させることができる。
【0011】
さらに、軸受部分が固定部分よりも車幅方向内側に配置されることから、車体の車幅方向中心線から、スタンド構造の車幅方向外側部分までの寸法を抑えることができる。これにより、旋回等で車体を傾斜させた場合における、路面とスタンド構造との干渉を回避して、車体旋回時において車体が許容できる傾斜角(バンク角)を増大させることができ、走行フィーリングを向上させることができる。
【0012】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0013】
(a)前記軸受部分は、前記車体フレームの後方に位置している。
【0014】
(b)前記固定部分は、間隔をあけて複数配設されており、前記連結部分は、前記軸受部分から分岐して、前記固定部分のそれぞれに延びるV字状に形成されている。
【0015】
(c)前記固定部分は、車幅方向及び車幅方向に直交する方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0016】
(d)前記固定部分は、上下に間隔をあけて複数配置されており、下側の前記固定部分が、上側の前記固定部分に対して、車幅方向内側に配置されている。
【0017】
(e)前記構成(d)を有し、且つ、前記上側の前記固定部分は、側面視において前記スイングアームの揺動領域と重なる領域であって、前記スイングアームよりも車幅方向外側の領域に配置されている。
【0018】
(f)前記脚部を前記軸受部分に回動自在に取り付ける支持構造を、さらに備え、前記支持構造は、前記スタンド軸線に沿って車幅方向内側から車幅方向外側に向けて、前記軸受部分に挿通されるスタンド軸ボルトと、前記軸受部分の車幅方向外側で前記スタンド軸ボルトと螺合するナットと、を含んでいる。
【0019】
(g)前記構成(f)を有し、且つ、前記軸受部分に車幅方向内側から対向する対向部品が車体フレームに配置されており、前記スタンド軸ボルトによるねじ嵌合部が、前記スタンド軸ボルトと前記対向部品との間のスタンド軸線方向の長さよりも長く構成されている。
【0020】
前記構成(a)によれば、車体フレームを車両の重心位置から、より後方に離れた位置においてセンタースタンドで支持できる。これにより、前車輪への分担荷重が増大される一方で、センタースタンドへの分担荷重が低減されることになる。この結果、センタースタンドに掛かる荷重の低減に対応して、踏み込み操作に要する力を低減でき、スタンド操作性を向上させることができる。
【0021】
前記構成(b)によれば、連結部分がV字状に形成されるので、各固定部分を、間隔をあけて配設しながらも連結部分の重量が増大することを抑制できる。また、固定部分を、間隔をあけて配設することで、センタースタンドからの荷重が、車体フレームに分散して伝達される。
【0022】
前記構成(c)によれば、各固定部が同一面内に配置されることがないので、ステー部分が、平板でなく、例えば折り曲げ部、又は傾斜部等を有するように形成されることになる。これにより、ステー部分の剛性を向上させることができる。
【0023】
前記構成(d)によれば、下側の固定部分が車幅方向内側に配置されているので、旋回等で車体を傾斜させた場合における、路面とステー部分との干渉を回避して、バンク角を増大させることができる。しかも、連結部分は、軸受部分から分岐して各固定部分に延びるV字状に形成することで、ステー部分の側面視及び後面視においてV字状に配置されるので、ステー部分の剛性をさらに向上させることができる。
【0024】
前記構成(e)によれば、上側の固定部分を、スイングアームとの干渉を回避しながら、スイングアームの車幅方向外側に配置することで、下型の固定部分に対してさらに間隔をあけて配置しやすく、これにより、ステー部分の剛性をさらに向上させることができる。
【0025】
前記構成(f)によれば、軸受部分の車幅方向内側には、ナット及び該ナットから車幅方向内側へ突出するスタンド軸ボルトのねじ先部分が位置していない。これにより、締結手段の軸受部分より車幅方向内側への突出を抑制して、他の車載部品を配置するための車載部品配置領域を広く画定できる。また、軸受部分は、固定部分よりも車幅方向内側に位置しているので、軸受部分の車幅方向外側にナット等が位置しても車幅方向外側への突出を抑えやすい。
【0026】
前記構成(g)によれば、スタンド軸ボルトの締結が緩んだ場合であっても、スタンド軸ボルトによる、ねじ嵌合が解ける前に、スタンド軸ボルトのボルト頭部が対向部品に当接することになる。これにより、スタンド軸ボルトの軸受部分へのねじ嵌合を維持して、スタンド軸ボルトの抜けを回避することができるので、センタースタンドのステー部分への支持を維持できる。
【発明の効果】
【0027】
要するに本発明によると、収容位置における操作バーの踏面の位置を上昇させることなく、スタンド操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車を右後方から見た斜視図である。
図2図1の自動二輪車の要部左側面図である。
図3】センタースタンド構造周辺を左後方から見た要部斜視図である。
図4】起立状態にあるセンタースタンド構造を示す斜視図である。
図5図2のV−V線に沿った断面図である。
図6A】収納位置にあるスタンド構造を示す要部左側面図である。
図6B】収納位置と起立位置との間にあるスタンド構造を示す要部左側面図である。
図6C】起立位置にあるスタンド構造を示す要部左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1を右後方から見た斜視図であり、センタースタンド40により後車輪8を持ち上げて、前車輪3とともに、自動二輪車1を直立状態で支持している状態を示している。なお、本実施形態で用いる方向の概念は、自動二輪車1の運転者から見た方向の概念と一致するものとして説明する。
【0031】
図1に示されるように、自動二輪車1は、車体フレーム20に支持されたエンジン11と、車体フレーム20の下方に配置されており、エンジン11の排気部11aに前部排気管12で接続された排気チャンバ13と、車体の後部右側に配置されており、排気チャンバ13に後部排気管14で接続された排気マフラ15と、を有している。また、自動二輪車1の前部には、上下に延びる左右一対のフロントフォーク2、2が設けられており、フロントフォーク2の下部に前車輪3が回動自在に支持されている。
【0032】
図2は、自動二輪車1の要部左側面図であり、車体フレーム20及びセンタースタンド40の周辺を拡大して示している。図2に示されるように、車体フレーム20は、ヘッドパイプ5から後下方に延びる左右一対のメインフレーム21、21と、ヘッドパイプ5から下方へ延びる左右一対のダウンフレーム22、22と、メインフレーム21の後部から後上方へ延びる左右一対のリヤフレーム23、23と、を有している。
【0033】
メインフレーム21は、ヘッドパイプ5から略後下方へ延びるメインフレーム部24と、メインフレーム部24の後部から下方へ延びるスイングアームブラケット部25と、を有している。リヤフレーム23には、前席及び後席からなるシート10(図1参照)と、後席に乗車する同乗者が足を置くためのタンデムステップ17と、が設けられている。
【0034】
エンジン11は、直列4気筒エンジンであって、気筒列を車幅方向に向けて、車体フレーム20に搭載されている。具体的には、エンジン11は、ダウンフレーム22の下端部に設けられた左右一対のシリンダ前部取付部22aと、メインフレーム部24の後部に設けられた左右一対のシリンダ後部取付部21aと、スイングアームブラケット部25の上部及び下部に設けられた左右一対のエンジン後上部取付部25a及び左右一対のエンジン後下部取付部25bと、により車体フレーム20に支持されている。
【0035】
後車輪8を支持するためのスイングアーム16は、左右一対のスイングアームブラケット部25のピボット軸部25cに回動可能に支持され、後方に延びており、スイングアーム16の後端部に、後車輪8が回転自在に支持されている。後車輪8に設けられた被駆動スプロケット18と、エンジン11の左側面に配置された出力スプロケット(図示しない)との間に、駆動チェーン19が巻き掛けられており、この駆動チェーン19を介して後車輪8が駆動される。
【0036】
排気チャンバ13は、車体フレーム20の下方であって、前後方向位置がエンジン11と後車輪8との間に配置されている。なお、本実施形態では、自動二輪車1を旋回等で傾斜させたときに排気チャンバ13が路面に最初に路面に当接するようになっており、すなわち、排気チャンバ13により自動二輪車1のバンク角が決まっている。エンジン11の各気筒から排出された排気ガスは、前部排気管12…12により、排気チャンバ13の前部に導入される。
【0037】
図3は、排気チャンバ13周辺を左後方から見た斜視図であり、スイングアーム16、後車輪8、及びエンジン11等を省略して示している。図3に示されるように、左側のスイングアームブラケット部25Lには、左側第1、第2ステー固定部26、27(図2も併せて参照)が設けられている。左側第1、第2ステー固定部26、27は、車幅方向に垂直な平面部として構成されており、雌ねじ部26a、27aが車幅方向に貫通形成されている。
【0038】
図2に示されるように、左側第1ステー固定部26は、ピボット軸部25cと同程度の上下方向位置に配置されており、本実施例では、左側第1ステー固定部26は、左側スイングアームブラケット部25Lの後部であって、ピボット軸部25cの中心軸線O7よりも下方且つ駆動チェーン19の下側の直線部19a及びエンジン後下部取付部25bよりも上方に配置されている。また、左側第1ステー固定部26は、側面視におけるスイングアーム16の揺動領域に重複した位置であって、スイングアーム16よりも車幅方向外側に位置している。
【0039】
また、左側第2ステー固定部27は、左側スイングアームブラケット部25Lの後下部に設けられている。図3に示されるように、左側第2ステー固定部27は、左側第1ステー固定部26に対して、車幅方向及び車幅方向に直交する方向に間隔をあけて配置されており、本実施例では、左側第1ステー固定部26よりも下方の車幅方向内側に配置されている。
【0040】
同様に、右側スイングアームブラケット部25Rには、右側第1、第2ステー固定部28、29が設けられている。左側第1、第2ステー固定部26、27と異なり、第1、第2ステー固定部28、29には、ボルト挿通孔28a、29aが貫通形成されている。他の構成は左側第1、第2ステー固定部26、27と同じであるので、説明を省略する。
【0041】
左側スイングアームブラケット部25L及び右側スイングアームブラケット部25Rの下端部は車幅方向に延びるクロス部材30で連結されている。クロス部材30には、車幅方向の略中央部から後方へ突出した排気チャンバ取付部31が一体形成されており、排気チャンバ取付部31に排気チャンバ13が取り付けられている。
【0042】
排気チャンバ13の右側部には、後部排気管14が接続されており、後部排気管14の後端部に排気マフラ15が接続されている。後部排気管14には、スタンドストッパ9が取り付けられている。スタンドストッパ9は、後部排気管14の下方に位置する底板9aと、底板9aの車幅方向の両端部から上方へ立設されて後部排気管14の両側部に固着される左右一対の側板9b、9bと、を含んでおり、後述するように、底板9aが収納位置にあるセンタースタンド40のダンパ47に当接するように構成されている。
【0043】
[センタースタンド構造100]
次に、センタースタンド構造100について説明する。センタースタンド構造100は、起立位置と該起立位置から上方へ回動された収納位置との間を回動自在なセンタースタンド40と、左右一対のスイングアームブラケット部25L、25Rにそれぞれ取り付けられてセンタースタンド40をスタンド軸線O1(図2参照)回りに回動自在に支持する左右一対の左側ステー50及び右側ステー60と、センタースタンド40を起立位置又は収納位置に向けて付勢する弾性部材70と、を備えている。センタースタンド40は、起立位置で自動二輪車1(図1参照)を直立状態に支持するようになっている。
【0044】
[左側ステー50]
図4は、センタースタンド構造100の後方斜視図であり、センタースタンド40を起立位置に回動させた状態を示している。図4に示されるように、左側ステー50は、左側スイングアームブラケット部25L(図3参照)の左側第1、第2ステー固定部26、27(図3参照)に固定される第1、第2固定部分51、52と、センタースタンド40の基部を、車幅方向に延びるスタンド軸線O1(図2参照)回りに回動自在に支持する軸受部分53と、第1、第2固定部分51、52と軸受部分53とを連結する連結部分54と、を有している。
【0045】
第1、第2固定部分51、52及び軸受部分53は、車幅方向に垂直な平面部として画定されており、車幅方向に貫通するボルト挿通孔51a、52a、及び53aがそれぞれ穿設されている。センタースタンド40は、軸受部分53のボルト挿通孔53aの中心軸線O2回りに、起立位置と収納位置との間を回動するようになっており、すなわち、中心軸線O2は、センタースタンド40の回動中心となるスタンド軸線O1に相当する。
【0046】
図3に示されるように、第1、第2固定部分51、52はそれぞれ、左側スイングアームブラケット部25Lの第1、第2ステー固定部26、27に車幅方向外側から当接するように形成されている。第2固定部分52は、第1固定部分51に対して、車幅方向及び車幅方向に直交する方向に間隔をあけて配置されており、本実施例では、第1固定部分51よりも下方の車幅方向内側に配置されている。
【0047】
そして、左側ステー50は、左側スイングアームブラケット部25Lの車幅方向外側に配置されて、ボルト挿通孔51a、52aを通して車幅方向外側から挿通される締結ボルト59により、第1、第2ステー固定部26、27の雌ねじ部26a、27aに固定されている。
【0048】
図4に示されるように、軸受部分53は、第1、第2固定部分51、52よりも後下方の車幅方向内側に配置されている。図2に示されるように、言い換えると、軸受部分53は、左側スイングアームブラケット部25Lの下部よりもさらに後下方に配置されている。さらに言い換えると、軸受部分53は、側面視における排気チャンバ13と重複する領域の、排気チャンバ13の車幅方向外側へ配置されている。
【0049】
左側ステー50の軸受部分53にスタンド軸線O1が設定されることで、スタンド軸線O1を、側面視においてスイングアームブラケット部25よりも後下方に設定できる。
【0050】
図4に示されるように、軸受部分53には、後方に突出した第1突起53bと、前部から下方に突出した第2突起53c(図2参照)と、が設けられている。第1突起53bは、センタースタンド40の収納位置における位置決めを行い、第2突起53cは、センタースタンド40の起立位置における位置決めを行う。
【0051】
連結部分54は、軸受部分53と第1固定部分51とを連結する第1連結部分54aと、軸受部分53と第2固定部分52とを連結する第2連結部分54bと、を有する二股に分岐した略V字状の形態を有しており、下方に進むにつれて車幅方向内側に傾斜している。これにより、連結部分54により自動二輪車1のバンク角が減少することを抑制できる。また、図3に示されるように、連結部分54は、後面視においても、略V字状の形態を有している。
【0052】
連結部分54を軸受部分53からそれぞれ位置の異なる各固定部分51、52に向かうように二股に分岐させることで、第1連結部分54a及び第2連結部分54bそれぞれを折り曲げ加工により容易に形成することを可能とし、連結部分54が全体として絞り形状となることを回避できる。また、連結部分54には、車幅方向外側に突出する係止ピン55がさらに設けられ、係止ピン55に、弾性部材70の一端部の係止フック71が係止されるようになっている。
【0053】
言い換えると、左側ステー50は、上側の第1固定部分51から下方に延びる第1垂直部分50aと、下側の第2固定部分52から下方に延びる第2垂直部分50bと、第1垂直部分50a及び第2垂直部分50bの下部から車幅方向内側に屈曲されて下方に延びる傾斜部分50dと、傾斜部分50dの下部から下方に延びる第3垂直部分50cと、を有している。第1〜第3垂直部分50a〜50cは、車幅方向に垂直に延びており、傾斜部分50dは、下方に進むにつれて車幅方向内側に傾斜している。また、第3垂直部分50cには、軸受部分53が設けられている。
【0054】
図2に示されるように、本実施例では、第1垂直部分50aが駆動チェーン19の車幅方向外側に配置されることで、左側ステー50と駆動チェーン19との干渉を回避している。また、傾斜部分50dにより、左側ステー50による自動二輪車1のバンク角の減少を抑制している。
【0055】
[右側ステー60]
図4に示されるように、右側ステー60は、右側スイングアームブラケット部25R(図3参照)の右側第1、第2ステー固定部28、29(図3参照)に固定される第1、第2固定部分61、62と、センタースタンド40の基部を回動自在に支持する軸受部分63と、第1、第2固定部分61、62と軸受部分63とを連結する連結部分64と、を有している。第1、第2固定部分61、62及び軸受部分63は、車幅方向に垂直な平面部として画定されている。
【0056】
第1、第2固定部分61、62にはそれぞれ、雌ねじ部61a、62aが車幅方向に貫通形成されており、軸受部分63には、車幅方向に貫通するボルト挿通孔63aが穿設されている。センタースタンド40は、軸受部分63のボルト挿通孔63aの中心軸線O3回りに、起立位置と収納位置との間を回動するようになっている。言い換えると、ボルト挿通孔63aの中心軸線O3は、ボルト挿通孔53aの中心軸線O2と一致しており、ともにセンタースタンド40の回動中心となるスタンド軸線O1に相当する。
【0057】
図3に示されるように、第1、第2固定部分61、62はそれぞれ、右側スイングアームブラケット部25Rの第1、第2ステー固定部28、29に車幅方向内側から当接するように形成されている。第2固定部分62は、第1固定部分61に対して、車幅方向及び車幅方向に直交する方向に間隔をあけて配置されており、本実施例では、第1固定部分61よりも下方かつ車幅方向内側に配置されている。
【0058】
そして、右側ステー50は、右側スイングアームブラケット部25Rの車幅方向内側に配置されて、第1、第2ステー固定部28、29のボルト挿通孔28a、29aを通して車幅方向外側から挿通される締結ボルト69により雌ねじ部61a、62aに締結されることで、右側スイングアームブラケット部25Rに固定されている。
【0059】
図4に示されるように、軸受部分63は、第1、第2固定部分61、62よりも後下方の車幅方向内側に配置されている。言い換えると、軸受部分63は、右側スイングアームブラケット部25R(図3参照)の下部よりもさらに後下方に配置されている。さらに言い換えると、軸受部分63は、側面視における排気チャンバ13(図3参照)と重複する領域の、排気チャンバ13の車幅方向外側へ配置されている。
【0060】
軸受部分63には、後部前後方向に延びる段部63bと、前部から下方に突出した突起63cと、が設けられている。段部63bは、センタースタンド40の収納位置における位置決めを行い、突起63cは、センタースタンド40の起立位置における位置決めを行う。
【0061】
連結部分64は、軸受部分63と第1固定部分61とを連結する第1連結部分64aと、軸受部分63と第2固定部分62とを連結する第2連結部分64bと、を有する二股に分岐した略V字状の形態を有しており、下方に進むにつれて車幅方向内側に傾斜している。図3を併せて参照して、連結部分64は、後面視においても、略V字状の形態を有している。
【0062】
連結部分64を軸受部分63からそれぞれ位置の異なる各固定部分61、62に向かうように二股に分岐させることで、第1連結部分64a及び第2連結部分64bそれぞれを折り曲げ加工により容易に形成することを可能とし、連結部分64が全体として絞り形状となることを回避できる。
【0063】
言い換えると、右側ステー60は、上側の第1固定部分61から下方に延びる第1垂直部分60aと、下側の第2固定部分62から下方に延びる第2垂直部分60bと、第1垂直部分60a及び第2垂直部分60bの下部から車幅方向内側に屈曲されて下方に延びる傾斜部分60dと、傾斜部分60dの下部から下方に延びる第3垂直部分60cと、を有している。第1〜第3垂直部分60a〜60cは、車幅方向に垂直に延びており、傾斜部分60dは、下方に進むにつれて車幅方向内側に傾斜している。また、第3垂直部分60cには、軸受部分63が設けられている。
【0064】
また、左側ステー50の第3垂直部分50cに左側の軸受部分53が設けられ、右側ステー60の第3垂直部分60cに右側の軸受部分63が設けられているので、左右の軸受部分53、63の中心軸線O2、O3を同軸に配置しやすい。
【0065】
[センタースタンド40]
センタースタンド40は、略H字状の形態をなし、自動二輪車1を直立状態で支持する左右一対の左側脚部33及び右側脚部43と、左側脚部33と右側脚部43とを接続する連結部42と、左側脚部33に接続された操作バー41と、を有している。
【0066】
左側脚部33は、軸受部分53に回動自在に支持される基端部側に位置するリンク部35と、先端部側に位置する接地部36と、リンク部35から接地部36に延びる脚本体部34と、を有している。脚本体部34は、リンク部35から接地部36に向かうにつれて車幅方向外側へ傾斜して延びている。
【0067】
また、上述したように、スタンド軸線O1を、左側ステー50の軸受部分53に設定することで、スタンド軸線O1をスイングアームブラケット部25L(図2参照)よりも後下方へ配置でき、これにより、収容位置における左側脚部33の上下方向位置が低く抑えられている。
【0068】
脚本体部34の下部には、車幅方向外側に向けて立設された係止ピン37が設けられている。係止ピン37には、弾性部材70の他端部の係止フック72が係止されるようになっている。
【0069】
リンク部35は、後面視で略L字状の形態をなし、脚本体部34の上端部に接合される底部35aと、底部35aの車幅方向外側の端部から上方に立設された、車幅方向に垂直なフランジ部35bと、を有している。フランジ部35bには、雌ねじ孔35cが車幅方向に貫通形成されている。
【0070】
右側脚部43は、軸受部分63に回動自在に支持される基端部側に位置するリンク部45と、先端部側に位置する接地部46と、リンク部45から接地部46に延びる脚本体部44と、を有している。脚本体部44は、リンク部45から接地部46に向かうにつれて車幅方向外側へ傾斜して延びている。右側脚部43は、左側脚部33に対して、脚本体部44に係止ピンが設けられていない点と、上下方向の中間部よりやや下方においてダンパ47が設けられている点と、が異なり、他の構成は略同一である。
【0071】
ダンパ47は、脚本体部44に固着されるブラケット47aと、ブラケット47aに取り付けられる弾性部材47bと、で構成されている。ブラケット47aは、板状部材からなり、センタースタンド40が起立位置に位置するときに後方を向く取付面47cを有している。取付面47cには、例えば、ゴム製の弾性部材47bが、接着又は締結手段により取り付けられている。
【0072】
そして、図3に示されるように、センタースタンド40が収納位置に位置するとき、ダンパ47は、後部排気管14のスタンドストッパ9に当接するようになっている。すなわち、ダンパ47の弾性部材47bの上端面が、スタンドストッパ9の底板9aの下端面に当接するようになっている。
【0073】
連結部42は、パイプ部材からなり、センタースタンド40が収納位置に位置する状態で、下方に向けて突出した略U字状の形態をなしている。これにより、図2に示されるように、連結部42を、排気チャンバ13の後端部及び後車輪8の前端部を回避しつつ、排気チャンバ13と後車輪8との間に隙間を確保して配置しやすい。連結部42と左側の脚本体部34との間の接合部及び、連結部42と右側の脚本体部44との接合部には、補強板48が接合されている。
【0074】
操作バー41は、センタースタンド40が収納位置に位置する状態で、上下方向に延びる操作バー本体41aと、操作バー本体41aの上端部に設けられた踏面部41bと、を有している。操作バー本体41aは、上部が前方に向けて湾曲されており、上端部に設けられる踏面部41bを前方に向けて配置しやすくなっている。
【0075】
踏面部41bは、タンデムステップ17及び、タンデムステップ17に置いた同乗者の足に対して、十分に隙間を確保した干渉しない位置、特に上下方向に十分な間隔をあけて配置されており、前方側から踏面を踏み込み操作しやすいように、前方やや上方を向いている。
【0076】
また、上述したように、収容位置における左側脚部33の上下方向位置は、低く抑えられているので、左側脚部33から上方の踏面部41bまで延びる操作バー本体41aを長くすることができる。
【0077】
[支持構造110]
次に、センタースタンド40の、左側ステー50及び右側ステー60への回動自在な支持構造110を、左側脚部33と左側ステー50との間の支持構造を例にとって説明する(右側も同様である)。図5は、図2のV−V線に沿った断面図であり、スタンド軸線O1に沿った、左側脚部33の左側ステー50への回動自在な支持部の断面を示している。
【0078】
図5に示されるように、支持構造110は、左側脚部33のリンク部35及び左側ステー50の軸受部分53に加えて、スタンド軸ボルト38と、カラー39と、ロックナット32と、を有している。カラー39は、高さH1が軸受部分53の車幅方向の厚さW1よりも大きく設定されており、軸受部分53のボルト挿通孔53aに、スタンド軸線O1回りに回動可能に嵌挿されている。スタンド軸ボルト38は、頭部高さH2が低くされた、所謂、低頭ボルトである。
【0079】
左側脚部33のリンク部35は、フランジ部35bが左側ステー50の軸受部分53の車幅方向外側に位置しており、スタンド軸ボルト38が、カラー39の内径部を通して車幅方向内側から車幅方向外側へ挿通されて、リンク部35の雌ねじ孔35cに締結されている。このとき、カラー39の高さH1は、軸受部分53の車幅方向厚さW1よりも大きくされているので、スタンド軸ボルト38による締結により、軸受部分53が押接されることがない。この結果、スタンド軸ボルト38、カラー39、及び左側脚部33が、軸受部分53に対して、スタンド軸線O1回りに回動自在に支持されることになる。
【0080】
さらに、スタンド軸ボルト38は、リンク部35のフランジ部35bから、さらに車幅方向外側へ突出した部分が、車幅方向外側からロックナット32により締結されている。これにより、スタンド軸ボルト38の耐緩み性を向上させている。
【0081】
なお、スタンド軸ボルト38は、ボルト頭部38aの高さH2が低く構成された低頭ボルトであるので、左側ステー50の車幅方向内側に位置するボルト頭部38aの突出量が小さく、これにより、左側ステー50の車幅方向内側に車載部品が配置される車載部品配置領域を確保しやすい。本実施形態では、排気チャンバ13を前記車載部品配置領域に配置している。
【0082】
また、スタンド軸ボルト38は、左側脚部33のリンク部35の雌ねじ孔35c及びロックナット32に締結された状態で、スタンド軸ボルト38と、雌ねじ孔35c及びロックナット32とのねじ嵌合長さL1が、ボルト頭部38aと排気チャンバ13との間の車幅方向の距離L2よりも長く設定されている。
【0083】
これにより、スタンド軸ボルト38の締結が緩んだ場合であっても、スタンド軸ボルト38と、ロックナット32及び/又は雌ねじ孔35cとのねじ嵌合が解ける前に、ボルト頭部38aが排気チャンバ13に当接することになる。これにより、スタンド軸ボルト38と、ロックナット32及び/又は雌ねじ孔35cとのねじ嵌合を維持して、スタンド軸ボルト38の抜けを回避することができるので、センタースタンド40を左側ステー50の軸受部分53に確実に支持できる。
【0084】
[弾性部材70]
図2に示されるように、弾性部材70は、引っ張りコイルスプリングであって、左側ステー50と左側の脚本体部34とにわたって取り付けられており、左側ステー50側の端部に係止フック71を備え、左側の脚本体部34側の他端部に係止フック72を備えている。係止フック71を左側ステー50に設けられた係止ピン55に係止させつつ、係止フック72を左側の脚本体部34に設けられた係止ピン37に係止させて、取り付けられている。
【0085】
そして、係止ピン55の中心位置と係止ピン37の中心位置とを結んだ弾性作用線O5は、センタースタンド40が収納位置に位置するとき、スタンド軸線O1よりも上方に位置しており(図6Aを併せて参照)、センタースタンド40が起立位置に位置するとき、スタンド軸線O1よりも前方に位置する(図6Cを併せて参照)ように、係止ピン55の左側ステー50における位置が設定されている。また、係止ピン55を軸受部分53よりも上方へ配置することで、自動二輪車1のバンク角が減少することを抑制している。
【0086】
以上説明した、センタースタンド構造100の動作を説明する。
【0087】
図6Aは、センタースタンド40が、収納位置に位置する状態を示している。センタースタンド40は、スタンド軸線O1回りに、弾性部材70によって上方へ付勢されている。このとき、図3を併せて参照して、左右一対の左側脚部33及び右側脚部43は、やや後上がりに傾斜して後方へ延びている。これにより、左側脚部33及び右側脚部43のうち、リンク部35、45から接地部36、46に向けて車幅方向外側へ拡開された部分が、より上方に位置することになり、センタースタンド40を、所定のバンク角に影響しない領域に配置しやすい。
【0088】
また、左側脚部33のリンク部35が、底部35aの上端面で左側ステー50の第1突起53bに当接している。図示は省略するが、同様に、右側脚部43のリンク部45が、底部45aの上端面で右側ステー60の段部63bに当接している。これにより、センタースタンド40の収納位置における位置決めがなされている。
【0089】
さらに、右側脚部43のダンパ47が、弾性部材47bを後部排気管14に取り付けられたスタンドストッパ9に当接している。これにより、起立位置から収納位置へ回動させたときのセンタースタンド40の収納位置に緩やかに位置決めできるとともに、自動二輪車1を運転しているときに生じるセンタースタンド40の振動を減衰させて、該振動が、後部排気管14及びこれを介して車体フレーム20に伝達されるのを抑制している。
【0090】
次に、図6Aに示す収納位置から、操作バー41の踏面部41bを踏み込み操作することで、センタースタンド40は、スタンド軸線O1回りに下方へ回動する。このとき、図6Bに示されるように、接地部36、46の前部が路面に当接する。また、弾性部材70による弾性作用線O5は、スタンド軸線O1に近づくことになる。
【0091】
上述したように、操作バー41は、左側脚部33の収納位置における上下方向位置が低く抑えられているので、踏面部41bの配置を上昇させることなく操作バー本体41aを長くでき、これにより、支点となる接地部36から力点となる踏面部41bまでの距離L3が長くなる。この結果、スタンド軸線O1回りの回動モーメントを増大されることになり、踏面部41bを踏み込む力Fを低減できる。
【0092】
また、図2を併せて参照して、スタンド軸線O1は、スイングアームブラケット部25Lよりも後方に位置しているので、スタンド軸線O1を、重量物であるエンジン11の近傍に位置する自動二輪車1の重心位置から離して設定できる。これにより、スタンド軸線O1をスイングアームブラケット部25Lの近傍に設定する場合に比して、自動二輪車1を前車輪3とセンタースタンド40とで支持するときの前車輪3への荷重を増大させつつ、センタースタンド40への荷重を低減させることができる。この結果、センタースタンド40に掛かる荷重に対応して、センタースタンド40を起立位置へ回動させるための踏面部41bを踏み込む力を、さらに低減できる。
【0093】
この状態から、さらに踏面部41bを踏み込み操作することで、接地部36、46を支点とし、踏面部41bを力点として、センタースタンド40がスタンド軸線O1回りにさらに前方へ回動されることになる。
【0094】
図6Cに示されるように、弾性部材70の弾性作用線O5は、スタンド軸線O1を超えて前方に位置するようになり、すなわち思案点を超えて、センタースタンド40を起立位置へ付勢するようになる。また、センタースタンド40が起立位置に移動することで、後車輪8が上方へ持ち上げられて、自動二輪車1が直立状態で支持されることになる。
【0095】
また、図視は省略するが、センタースタンド40が起立位置に位置するとき、左側脚部33のリンク部35が、底部35aの前端面で左側ステー50の第2突起53cに当接している。また、図4に示されるように、右側脚部43のリンク部45が、底部45aの前端面で右側ステー60の突起63cに当接している。これにより、センタースタンド40の起立位置における位置決めがなされている。
【0096】
また、センタースタンド40が起立位置に位置するとき、左右一対の左側脚部33及び右側脚部43は、下方に進むにつれて車幅方向外側へ傾斜して延びており、すなわち、センタースタンド40の下方が車幅方向外側に拡開されているので、自動二輪車1を安定して支持できる。
【0097】
さらに、センタースタンド40は、起立位置において、左右の軸受部分53、63で車幅方向内側に位置している。すなわち、センタースタンド構造100は、左右一対の左側ステー50及び右側ステー60と、左側脚部33及び右側脚部43とで、軸受部分53、63で最も車幅方向内側に位置するL字形状に形成されており、センタースタンド40の剛性が高められている。
【0098】
次に、センタースタンド40の組み付けについて説明する。左側ステー50に設定される軸受部分53の中心軸線O2と、右側ステー60に設定される軸受部分63の中心軸線O3とは、ともにセンタースタンド40の回動軸線であるスタンド軸線O1に一致するように、左側ステー50及び右側ステー60はスイングアームブラケット部25にそれぞれ組み付けなければならない。
【0099】
本実施形態では、まず、センタースタンド40に左側ステー50及び右側ステー60を取り付けて、センタースタンド40、左側ステー50、及び右側ステー60を、一体として、スイングアームブラケット部25に取り付けるようにしている。これにより、センタースタンド40を組み付け治具として、左側ステー50及び右側ステー60の各軸受部分53、63の軸線O2、O3の同軸を維持しながら、それぞれスイングアームブラケット部25L、25Rに容易に組み付けできる。
【0100】
以上説明したセンタースタンド構造によれば、以下の効果を発揮できる。
【0101】
(1)スタンド軸線O1を車体フレーム20の下方に配置することで、収容位置における左右一対の左側脚部33及び右側脚部43の上下方向位置を低く抑えやすい。これにより、踏面部41bの位置を上昇させることなく操作バー41を長くできるので、スタンド操作時における回動モーメントを増大させることができる。したがって、スタンド操作の操作性を向上させることができる。
【0102】
(2)さらに、軸受部分53(63)が第1、第2固定部分51、52(61、62)よりも車幅方向内側に配置されることから、車体の車幅方向中心線から、スタンド構造の車幅方向外側部分までの寸法を抑えることができる。これにより、旋回等で車体を傾斜させた場合における、路面とセンタースタンド構造100との干渉を回避して、バンク角を増大させることができ、走行フィーリングを向上させることができる。
【0103】
(3)車体フレーム20を車両の重心位置から、より後方に離れた位置においてセンタースタンド40で支持できる。これにより、前車輪3への分担荷重が増大される一方で、センタースタンド40への分担荷重が低減されることになる。この結果、センタースタンド40に掛かる荷重の低減に対応して、踏み込み操作に要する力を低減でき、スタンド操作性を向上させることができる。
【0104】
(4)連結部分54(64)がV字状に形成されるので、第1、第2固定部分51、52(61、62)を、間隔をあけて配設しながらも連結部分54(64)の重量が増大することを抑制できる。また、第1、第2固定部分51、52(61、62)を、間隔をあけて配設することで、センタースタンド40からの荷重が、車体フレーム20に分散して伝達される。
【0105】
(5)第1、第2固定部分51、52(61、62)が同一面内に配置されることがないので、ステー部分が、平板でなく、例えば折り曲げ部、又は傾斜部等を有するように形成されることになる。これにより、左側ステー50(右側ステー60)の剛性を向上させることができる。
【0106】
(6)下側の第2固定部分52(62)が車幅方向内側に配置されているので、旋回等で車体を傾斜させた場合における、路面と左側ステー50(右側ステー60)との干渉を回避して、バンク角を増大させることができる。しかも、連結部分は、軸受部分から分岐して各固定部分に延びるV字状に形成することで、左側ステー50(右側ステー60)の側面視及び後面視においてV字状に配置されるので、左側ステー50(右側ステー60)の剛性をさらに向上させることができる。
【0107】
(7)上側の第1固定部分51(61)を、スイングアーム16との干渉を回避しながら、スイングアーム16の車幅方向外側に配置することで、下型の第2固定部分52(62)に対してさらに間隔をあけて配置しやすく、これにより、左側ステー50(右側ステー60)の剛性をさらに向上させることができる。
【0108】
(8)軸受部分53(63)の車幅方向内側には、ロックナット32及びロックナット32から車幅方向内側へ突出するスタンド軸ボルト38のねじ先部分が位置していない。しかも、軸受部分53(63)の車幅方向内側には、低頭ボルトである、スタンド軸ボルト38のボルト頭部38aが位置している。これにより、支持構造110の軸受部分53(63)より車幅方向内側への突出を抑制して、他の部品を配置するための車載配置領域を広く画定できる。
【0109】
また、軸受部分53(63)は、第1、第2固定部分51、52(61、62)よりも車幅方向内側に位置しているので、軸受部分53(63)の車幅方向外側にロックナット32及びスタンド軸ボルト38のねじ先部分が位置していても、バンク角への影響を抑制しやすい。
【0110】
(9)スタンド軸ボルト38の締結が緩んだ場合であっても、スタンド軸ボルト38と、ロックナット32及び/又は左側ステー50(右側ステー60)の雌ねじ部53a(63a)とのねじ嵌合が解ける前に、ボルト頭部38aが排気チャンバ13に当接することになる。これにより、スタンド軸ボルト38と、ロックナット32及び/又は雌ねじ部53a(63a)とのねじ嵌合を維持して、スタンド軸ボルト38の抜けを回避することができるので、センタースタンド40の左側ステー50(右側ステー60)への支持を維持できる。
【0111】
上記の実施形態では、左側ステー50と右側ステー60とは別体として構成しているが、これらを車幅方向に連結するクロス部材を設けてもよい。これにより、左側ステー50と右側ステー60とを一体としてスイングアームブラケット部25に組み付けることで、両軸受部分53、63のボルト挿通孔53a、63aの中心軸線O2、O3の同軸を容易に実現できる。
【0112】
また、左側ステー50及び右側ステー60を互いに連結することで、両ステー50、60の剛性を向上させることができるので、この結果、センタースタンド40の支持剛性を向上させることができる。
【0113】
なお、本発明は、以上の実施形態に示すものに限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上のように、本発明に係るセンタースタンド構造によれば、収納位置における操作バーの踏面の位置を上昇させることなく、スタンド操作性を向上させることができるので、この種の製造技術分野において好適に実施される可能性がある。
【符号の説明】
【0115】
1 自動二輪車
8 後車輪
9 スタンドストッパ
11 エンジン
13 排気チャンバ
14 後部排気管
16 スイングアーム
17 タンデムステップ
19 駆動チェーン
20 車体フレーム
25 スイングアームブラケット部
26 左側第1ステー固定部
27 左側第1ステー固定部
28 右側第1ステー固定部
29 右側第2ステー固定部
32 ロックナット
33 左側脚部
35 リンク部
36 接地部
37 係止ピン
38 スタンド軸ボルト
40 センタースタンド
41 操作バー
41b 踏面部
43 右側脚部
47 ダンパ
50 左側ステー
51 第1固定部分
52 第2固定部分
53 軸受部分
54 連結部分
55 係止ピン
60 右側ステー
61 第1固定部分
62 第2固定部分
63 軸受部分
64 連結部分
70 弾性部材
O1 スタンド軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C