(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290772
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ブームの俯仰装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/95 20060101AFI20180226BHJP
B66C 23/82 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
B65G47/95
B66C23/82 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-238218(P2014-238218)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-98101(P2016-98101A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕太郎
【審査官】
川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−084357(JP,A)
【文献】
特開2011−042473(JP,A)
【文献】
実開昭60−151893(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/80、47/84−47/86
B65G 47/90−47/96
B65G 65/00−65/28
B65G 67/60−67/62
B66C 19/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体にブームが俯仰可能に支持されているとともに前記機体において前記ブームの幅方向に並列配置した互いに解除可能に同調(同期)する一対の電動シリンダを前記ブームの中心軸線に交差して配置されるイコライザプレートを介して前記ブームに連結したブームの俯仰装置であって、
前記イコライザプレートは中心位置に前記ブームに連結するための連結ピンの取付孔が形成されているとともに前記取付孔から前記ブームの幅方向の等離間で且つ前記ブームの下端方向位置に前記各電動シリンダにおけるロッドの先端を連結するための取り外し可能な電動シリンダ用連結ピンの電動シリンダ用取付孔がそれぞれ形成され、且つ前記各電動シリンダにおけるロッドの先端を連結するための電動シリンダ用連結ピンの電動シリンダ用取付孔から前記ブームの上端方向位置に前記ブームに形成した非常用取付孔に重なり非常用連結ピンを取り付ける補助取付孔が形成されており、前記一方の電動シリンダが故障した際に両電動シリンダの同調(同期)を解除するとともに前記故障した側の電動シリンダにおける電動シリンダ用連結ピンのイコライザプレートにおける電動シリンダ用取付孔への連結を取り外して正常な電動シリンダ側の前記補助取付孔と非常用取付孔に非常用連結ピンを連結して前記イコライザプレートと前記ブームとを連結し正常な電動シリンダにより前記ブームの俯仰を行うことを特徴とするブームの俯仰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種重機に備えられている俯仰するブームの俯仰装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石灰石や鉱石等のばら物の船積みに使用されるシップローダやスタッカ等の船積み装置や製鉄所に搬入される鉄鉱石、火力発電所に搬入される石炭、或いは貨物船に積み込まれる鉱石などのばら物を貯蔵、搬出などに用いられるスタッカやリクレーマなどの重機では俯仰可能なブームを備えているのが一般的である。
【0003】
そして、前記ブームを俯仰させる手段として各種のシリンダによるものが知られており、比較的小さな装置で大きな駆動力が得られること、起動・制動をショックレスに行えること、及び過大な荷重が作用した場合でも安全弁を作動させることで機械装置の損傷を比較的容易に回避できること、2本シリンダの場合に両シリンダの圧力同調が容易であること等から油圧シリンダが用いられていたが、油圧式の起伏手段は電動式のものと比較して、エネルギー効率が低いこと、駆動時の騒音が大きいこと、作動油の管理や廃油処理が必要になること等の難点があるため、油圧シリンダの代わりにボールネジを使用した電動モータ作動式の電動シリンダを用いるものが例えば特開2011−84357号公報、特開2012−46346号公報などに提示されている。
【0004】
このブームの俯仰装置は、電動シリンダを2本並列配置する方式が採用されるのが通常であり、機体に2本の電動シリンダを並列的に取付け、左右の電動機軸を自在接手等の同調軸で連結することにより互いに同調(同期)しながら作動するようになっている。
【0005】
この場合、従来は、前記2本の電動シリンダにおけるロッドの先端を連結ピンを介して直接ブームに連結されているものであり、ブームに幅方向の偏荷重がかかった場合などに2本の電動シリンダへの作用荷重が均等でなくなり不静定荷重が生じることになり、電動シリンダの寿命が短くなるという問題がある。
【0006】
また、前記従来の電動シリンダを用いた俯仰装置では、前記電動シリンダの一方が故障した非常の場合には両電動シリンダの同調を解除して正常に作動する側の1本の電動シリンダを用いてブームを俯仰させることになるが、前述のように電動シリンダを2本並列配置した場合においては、ブームに直接連結するためのシリンダ取付部はブームフレームの重心からの偏心量が大きく、1本の電動シリンダのみを用いてブームを俯仰させることによってブームフレーム側に過大なねじり負荷が加わるためブームの自重や通常作業時の負荷の割にフレームを強固にしなければならないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−84357号公報
【特許文献2】特開2012−46346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、2本の電動シリンダを用いたブームの起伏手段において、ブームのスムーズな俯仰動作を実現できるようにすること、更には2本の電動シリンダの内の一方が故障した場合に1本の電動シリンダによって俯仰動作を実施する際のブーム構造材へのねじり負荷を少なくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、機体と前記機体に俯仰可能に支持されたブームとの間に前記ブームの幅方向に並列配置した互いに同調(同期)する一対の電動シリンダを連結して前記ブームを俯仰駆動するブームの俯仰装置であって、前記機体に設置した各電動シリンダにおけるロッドの先端をイコライザプレートを介して前記ブームに連結したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記イコライザプレートは、中心位置に前記ブームの中心軸に前記ブームに連結するための連結ピンの取付孔が形成されているとともに前記
イコライザプレートにおける前記取付孔
から前記ブームの幅方向の等離間
位置で且つ前記ブームの
下端方向位置に前記各電動シリンダにおけるロッドの先端を連結するための
電動シリンダ用連結ピン
を取り付ける電動シリンダ用取付孔がそれぞれ形成されていることを特徴とすることが好ましい。
【0011】
更に、前記一対の電動シリンダの同調(同期)が解除可能であるとともに前記イコライザプレートの前記一対の連結ピンが取り外し可能で且つ前記各電動シリンダにおけるロッドの先端を連結するための
電動シリンダ用連結ピンの
電動シリンダ用取付孔
から前記ブームの
上端方向
位置に前記ブームに形成した非常用取付孔に重なり非常用連結ピンを取り付ける補助取付孔が形成されており、前記一方の電動シリンダが故障した際に両電動シリンダの同調(同期)を解除するとともに前記故障した側の電動シリンダのイコライザプレートの
電動シリンダ用取付孔への連結を
取り外して正常な電動シリンダ側の前記補助取付孔と非常用取付孔に非常用連結ピンを連結して前記イコライザプレートと前記ブームとを連結して正常な電動シリンダにより前記ブームの俯仰を行うことにより一方の電動シリンダが故障した場合に対処することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2本の電動シリンダを用いたブームの起伏手段において、ブームのスムーズな俯仰動作を実現できるようにすること、更には2本の電動シリンダの内の一方が故障した場合に1本の電動シリンダによって俯仰動作を実施する際のブーム構造材へのねじり負荷を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示した実施の形態における要部を示す説明図。
【
図3】
図1に示した実施の形態における一方の電動シリンダが故障した場合の要部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は本発明における好ましい実施の形態を示すものであり、機体1上に俯仰動作を行うブーム2を備えているとともに、前記機体1上に並列配置した2本の電動シリンダ3,4が配置されている。
【0016】
この電動シリンダ3,4は従来のブームについての俯仰装置に用いられるものと同様に機体1の例えばブーム2の長さ方向中央付近に幅方向に所定の間隔で配置されており、電動モータ31,41の駆動によりボールネジ(図示せず)を回動させることでシリンダ部32,42からロッド33,43を進退動作させて作動するようになっている。
【0017】
また、前記電動モータ31,41により駆動するボールネジ部分が同期軸5により連結されて両電動シリンダ3,4が解除可能に同期(同調)している。
【0018】
更に、前記電動シリンダ3,4のロッド33,43は直接ブーム2に連結されておらずにイコライザプレート6を介して連結されている。
【0019】
図2は連結部分の詳細を示すものであり、前記イコライザプレート6は、中心位置にブーム2の中心軸線上に形成された取付孔23に連結するための連結ピン7の取付孔71が形成されているとともに前記
イコライザプレート6における取付孔71
から前記ブーム2の幅方向の等離間
位置で且つブーム2の
下端方向位置に各電動シリンダ3,4におけるロッド33,43の先端を連結するための
電動シリンダ用連結ピン8,9
を取り付ける電動シリンダ用取付孔81,91がそれぞれ形成されている。
【0020】
更にまた、前記イコライザプレート6の前記各電動シリンダ3,4のロッド33、43を取り付ける一対の連結ピン8,9は取り外し可能である。
【0021】
加えて、イコライザプレート6には、各電動シリンダ3,4におけるロッド33,34の先端を連結するための
電動シリンダ用連結ピン8,9の
電動シリンダ用取付孔81,91
からブーム2の
上端方向
位置においてブーム2に形成した非常用取付孔21,22に重なり非常用連結ピン(図示せず)を取り付ける補助取付孔82,92が形成されている。
【0022】
本実施の形態によれば、従来の俯仰装置と同様に前記電動シリンダ3,4を伸縮させてブーム2を俯仰させるものである点は同様であるが、本実施の形態では、電動シリンダ3,4のロッド33,43は直接ブーム2に連結されておらずにブーム2に連結ピン7により連結されたイコライザプレート6に連結ピン8,9を介して連結されているのでイコライザ効果が生じることにより、電動シリンダ3,4へのブーム2の荷重が均等に掛かるので動作時の不静定荷重の作用が生じない。従って、どちらの電動シリンダ3,4に対しても均等に負荷が掛かり、ブーム2における幅方向の荷重及びブーム2における長手方向軸まわりのねじり荷重による一方の電動シリンダ3または4への過負荷を防止することができる。
【0023】
また、電動シリンダ3,4の一方、例えば電動シリンダ4が故障した際に両電動シリンダ3,4の同調(同期)を解除するとともに
図3に示すように、前記故障した側の電動シリンダ4のイコライザプレート6の
電動シリンダ用取付孔91への連結を解除して正常な電動シリンダ3側の補助取付孔82とブーム2に形成されている非常用取付孔21に非常用連結ピン84を連結してイコライザプレート6とブーム2とを連結して正常な電動シリンダ3によりブーム2の俯仰を行う。
【0024】
このようにして一方の電動シリンダ4が故障した際に、もう一方の電動シリンダ3のみで運転せざるを得ない場合においても、連結ピン8により電動シリンダ3を連結したイコライザプレート6は、電動シリンダ3側のブーム2に形成されている非常用取付孔21とイコライザプレート6の補助取付孔82が非常用連結ピン84にてブーム2と連結されることにより電動シリンダ3の駆動力がそのままブーム2に伝達されるため、故障した電動シリンダ4を取り外してもう一方の電動シリンダ3だけでブーム2を俯仰させることができる。
【0025】
尚、ここでは、電動シリンダ4が故障した場合を示したが、電動シリンダ3が故障した場合も同様にして他方の電動シリンダ4のみで運転せざるを得ない場合であってもブーム2を俯仰させることができる。
【0026】
さらに、ブーム2の左右の主構造部材の下部にシリンダを取付けていた従来の構造に比べて、本構造ではブームの構造部材幅にとらわれずに2本の電動シリンダをブーム重心に接近して配置することができ、1本のシリンダによるブーム俯仰運転時のブーム重心からの電動シリンダ取付部までの偏心に起因するブーム構造材に発生するねじり負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 機体、2 ブーム、3,4 電動シリンダ、5 同期軸、6 イコライザプレート、
7 連結ピン、
8,9 電動シリンダ用連結ピン、21,22 非常用取付孔、23 取付孔、31 電動モータ、32 シリンダ部、33 ロッド、41 電動モータ、42 シリンダ部、43 ロッド、7
1 取付孔、81,91
電動シリンダ用取付孔、82,92 補助取付孔、84 非常用連結ピン