(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被測定光ファイバの長手方向に沿った前記複数のファイバブラッグ回折格子の配置順序は、反射波長に関して昇順又は降順であることを特徴とする請求項1に記載のOFDR装置。
前記被測定光ファイバに配置された前記複数のファイバブラッグ回折格子に歪みが掛かっていない状態において、前記複数のファイバブラッグ回折格子の長さが全て等しいとともに、隣り合う2つのファイバブラッグ回折格子の中心間距離も全て等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のOFDR装置。
前記中心間距離をL、前記被測定光ファイバの屈折率をn、前記光源の光周波数掃引速度をV、光速をcとしたときに、前記反射波長検出部の検出周波数の上限がV×2nL/c以上であることを特徴とする請求項3に記載のOFDR装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、光周波数領域反射測定法(Optical Frequency Domain Reflectometry:OFDR)を用いて、光ファイバの歪み分布又は温度分布を測定するOFDR装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。光ファイバの歪み分布と温度分布は同じ手法で測定可能であるため、以下では歪み測定を例に挙げてOFDR装置の構成及び動作を説明する。
【0003】
図12に、従来のOFDR装置の基本構成を示す。掃引光源41は、時間に対して光の周波数が直線的に変化するように出力光の波長を掃引する。光カプラ42は掃引光源41の出力光を2つに分岐する。光カプラ42で分岐された光の一方は被測定光ファイバ43に入射し、他方は反射用光ファイバ44に入射する。被測定光ファイバ43は、所定の長さのファイバブラッグ回折格子(Fiber Bragg Grating:FBG)45を備える。FBG45はその格子間隔に応じた特定の波長の光を反射するものであり、被測定光ファイバ43の長手方向に歪みが加わると反射する光の波長が変化する。
【0004】
反射用光ファイバ44の先端には全ての波長の光を反射する反射膜(反射面)44aが付いている。被測定光ファイバ43のFBG45で反射した光と反射用光ファイバ44の反射膜44aで反射した光(基準光)は光カプラ42で合波され、被測定光ファイバ43からの反射光と基準光が干渉する。受光器46は、この干渉光の光強度を電気信号(ビート信号)に変換して出力する。
【0005】
ビート信号の周波数fは、被測定光ファイバ43からの反射光と基準光の光周波数の差δvである。
図13に示すように、光カプラ42からFBG45の入射端までの被測定光ファイバ43のファイバ長をLS、光カプラ42から反射膜44aまでのファイバ長をLRとし、掃引光源41の光周波数掃引速度をV[Hz/s]、被測定光ファイバ43の屈折率をn、光速をcとすると、FBG45の入射端から距離zの位置で反射した光に関するビート信号の周波数f(z)は、下記の式(1)で表すことができる。
f(z)=V×2n(z+LS−LR)/c ・・・(1)
【0006】
式(1)は、LS=LRとなるように光学系を配置すれば、次式のようになる。
f(z)=V×2nz/c ・・・(2)
【0007】
FBG45の至る所で光の反射が起こるため、受光器46には、FBG45で発生した全ての反射光が重畳されて受光される。受光器46から出力された電気信号(ビート信号)はA/D変換器47でディジタル信号に変換される。よって、このディジタル信号を離散フーリエ変換して周波数f=f(z)の信号強度を求めれば、その信号強度は位置zからの反射光の強度となる。
【0008】
スペクトログラム算出部48では、上記のディジタル信号に対して微小波長区間ごとに離散フーリエ変換を行ない、スペクトログラムを算出する。ピーク波長検出部49は、算出されたスペクトログラムの微小周波数区間ごとに波長軸方向のピークを検出する。さらに、ピーク波長検出部49は、得られたピークとFBG45に歪みが掛かっていない状態での反射波長との差Δλに基づいて、被測定光ファイバ43の位置ごとの歪みを出力する。
【0009】
反射波長の変化Δλが微小であれば、
図14に示すようにΔλは歪みεに比例し、Δλ=a×εとなる。ここで、歪みεの単位は1μストレインであり、これは1mの物体が1μm伸縮したときの歪み量を表す。例えば、n=1.45であり、歪みがない場合の反射波長が1550nmの場合には、aは1.2×10
−6程度の値となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るOFDR装置の実施形態について、図面を用いて説明する。OFDRでは光ファイバの歪み分布又は温度分布を測定することができるが、光ファイバの歪み分布と温度分布は同じ手法で測定可能であるため、以降は歪み測定を例に挙げてOFDR装置の測定原理を説明する。
【0024】
FBG(ファイバブラッグ回折格子)は、FBG反射波長λ
FBGに一致する波長の光を高い反射率で反射させ、FBG反射波長λ
FBGから遠い波長の光ほど低い反射率で反射させる。したがって、FBGへの入射光の波長を掃引しながらFBGからの反射光を測定すれば、
図1に示すようなλ
FBGにピークを持つ反射特性が得られる。
【0025】
図2(a)〜(e)のグラフは、
図12に示した構成において、掃引波長λ
A,λ
B,λ
C,λ
D,λ
E付近の微小波長区間におけるビート信号のディジタルデータ(以下、「ビート信号データ」ともいう)を離散フーリエ変換した結果をそれぞれ模式的に示している。各グラフの縦軸はFBGからの反射光の強度を表しており、横軸はフーリエ周波数、すなわちFBGの入射端からの距離zを表している。
【0026】
図2(f)の下段は、ビート信号データにおける掃引波長λ
D付近の微小波長区間のデータを概念的に示している。また、
図2(f)の上段は、
図2(a)〜(e)に示したフーリエ周波数f(位置z)におけるFBGからの反射光の強度を、横軸を掃引波長としてプロットしたグラフである。ここで、式(1)より、z=f×c/(2nV)−(LS−LR)である。
【0027】
このように、波長掃引をしながら、微小波長区間の局所的なビート信号データのみに離散フーリエ変換を行ってFBGからの反射光の強度を求めることにより、FBGの反射特性を得ることができる。
【0028】
さらに、このようにして得られた位置zでのFBGの反射特性からピーク波長を検出することにより、
図3に示すように、位置zにおけるFBG反射波長λ
FBGを求めることができる。
【0029】
図4(a)〜(e)のグラフは、FBGの位置z
Aからz
A+δzの領域にのみ張力が加わり、その部分のみが伸びた場合において、掃引波長λ
A,λ
B,λ
C,λ
D,λ
E付近の微小波長区間におけるビート信号データを離散フーリエ変換した結果をそれぞれ模式的に示すものである。
【0030】
また、
図4(f)は、
図4(a)〜(e)に示したフーリエ周波数f(位置z)におけるFBGからの反射光の強度(実線)と、歪みがない場合のFBGからの反射光の強度(破線)とを、横軸を掃引波長として示すグラフである。
図4(f)に示すように、FBGの位置z
Aからz
A+δzの領域に伸長歪みが加わったことにより、FBGの反射特性のピーク波長は歪み量に比例して長波長側にシフトする(
図14参照)。
【0031】
図4(g)は、位置zにおけるFBG反射波長λ
FBGを示すグラフであり、伸長歪みが加わった位置z
Aからz
A+δzの領域にのみ波長シフトが起こっている様子を示している。また、この波長シフト量Δλから上記の領域の歪み量が分かる(
図14参照)。
【0032】
このようにして、FBG内のあらゆる位置zでの反射特性を算出することにより、スペクトログラムを得ることができる。
図5は、位置z
Aからz
A+δzの領域に伸長歪みが加わったFBGのスペクトログラムを3次元的に示したものである。
【0033】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態としてのOFDR装置1の構成について説明する。
図6に示すように、本実施形態のOFDR装置1は、被測定光ファイバ100に光を出力する掃引光源11と、光合分波部としての光カプラ12と、反射波長検出部13と、反射用光ファイバ14と、を備え、被測定光ファイバ100の歪み分布又は温度分布を測定するものである。
【0034】
掃引光源11は、規定された掃引波長範囲及び光周波数掃引速度(あるいは波長掃引速度)で波長掃引されたレーザ光を出力するようになっている。発振波長の掃引は、例えば、回折格子を用いた外部共振器レーザにおいて、回折格子やミラー等の角度を変えて共振波長を変えることにより実行される。
【0035】
一般にOFDRでは、時間に対して光の周波数が直線的に変化する掃引が理想である。波長掃引範囲がその中心波長に対して十分小さい場合、波長が直線的に変化する掃引は、周波数がほぼ直線的に変化することになる。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引とみなすことができる。
【0036】
また、掃引光源11は、出力したレーザ光の掃引波長と、そのレーザ光を出力した時刻とを掃引波長情報として反射波長検出部13に出力するようになっている。
【0037】
光カプラ12は掃引光源11の出力光を2つに分岐する。光カプラ12で分岐された光の一方は被測定光ファイバ100に入力され、他方は反射用光ファイバ14に入力される。さらに、光カプラ12は、被測定光ファイバ100からの反射光と、反射用光ファイバ14で反射された掃引光源11からの出力光の一部を合波する。これにより、光カプラ12からは、被測定光ファイバ100の位置zに応じた周波数成分を有する合波光(干渉光)が出力される。
【0038】
被測定光ファイバ100は、その長手方向に沿って直列に配置された所定の長さの複数のFBGを有する。複数のFBGは、互いに所定間隔を開けずに連続的に被測定光ファイバ100内に形成されてもよく、隣り合うFBGが所定間隔を開けて被測定光ファイバ100内に形成されてもよい。あるいは、独立した個別のFBGが光ファイバで接続された構成を被測定光ファイバ100としてもよい。
【0039】
反射用光ファイバ14は、全ての波長の光を反射する少なくとも1つの反射膜を有する。この反射用光ファイバ14は、例えば複数の光ファイバを用意し、各光ファイバの端面に反射膜を形成した後に、全ての光ファイバを透光性の接着剤などによる接着、又は、融着によって一体の光ファイバとすることによって製造される。反射用光ファイバ14の反射膜は、隣り合う2つのFBGの境界又は間隙に対応する位置のうちの少なくとも1つに形成されている。
【0040】
図6は、一例として、被測定光ファイバ100が5つのFBG101〜105を有し、反射用光ファイバ14が、3つの反射膜14a〜14cを有する場合を示している。
【0041】
ここで、各FBG101〜105のFBG反射波長をそれぞれλ1〜λ5とすると、λ1〜λ5は互いに異なっている。それらの大小関係は、λ1<λ2<λ3<λ4<λ5、又は、λ1>λ2>λ3>λ4>λ5となっている。すなわち、被測定光ファイバ100の長手方向に沿った複数のFBG101〜105の配置順序は、それらのFBG反射波長λ1〜λ5に関して昇順又は降順となっている。
【0042】
FBGがFBG反射波長に関して昇順に配置されている場合には、光カプラ12を介して被測定光ファイバ100及び反射用光ファイバ14に入力される光は、短波長から長波長に向かって波長掃引されるようになっている。
【0043】
被測定光ファイバ100の各FBGは、それぞれの反射波長に一致する光のみを反射するため、例えば掃引光源11から出射した掃引波長λ1のレーザ光は、FBG101で反射され、FBG102〜FBG105には到達しない。また、掃引光源11から出射した掃引波長λ2のレーザ光は、FBG101を通過してFBG102で反射され、FBG103〜FBG105には到達しない。
【0044】
なお、FBGがFBG反射波長に関して降順に配置されている場合には、光カプラ12を介して被測定光ファイバ100及び反射用光ファイバ14に入力される光は、長波長から短波長に向かって波長掃引されるとよい。
【0045】
図6の構成において、反射膜14a,14b,14cは、被測定光ファイバ100に配置された複数のFBGのうち、光カプラ12に近い側から数えて奇数番目のFBG101,103,105の出射端(偶数番目のFBG102,104の入射端)に対応する位置にそれぞれ配置されている。具体的には、光カプラ12から反射膜14aまでの光路長と、光カプラ12からFBG101の出射端位置までの光路長は等しい。同様に、光カプラ12から反射膜14b,14cまでの光路長と、光カプラ12からFBG103,105の出射端位置までの光路長はそれぞれ等しい。
【0046】
あるいは、反射膜14a,14b,14cは、被測定光ファイバ100に配置された複数のFBGのうち、光カプラ12に近い側から数えて奇数番目のFBG101,103,105の入射端に対応する位置にそれぞれ配置されてもよい。具体的には、光カプラ12から反射膜14a,14b,14cまでの光路長と、光カプラ12からFBG101,103,105の入射端位置までの光路長はそれぞれ等しい。
【0047】
以下では、説明を単純化するために、複数のFBGに歪みが掛かっていない状態において、全てのFBGの長さが等しく、隣り合うFBG間に隙間がないものとする。ここで、各FBGの長さをL
FBGとする。FBG101の入射端位置をz=0とし、光カプラ12から反射膜14aまでの距離が光カプラ12からFBG101の出射端位置までの距離に等しいとすれば、
図6の構成における反射膜14a〜14cの位置はそれぞれ、被測定光ファイバ100のz=L
FBG,3L
FBG,5L
FBGと光路長が等しい位置となる。
【0048】
被測定光ファイバ100で反射した光と反射用光ファイバ14の反射膜14a〜14cで反射した光(基準光)は光カプラ12で合波されて干渉する。各ファイバが通常の単一モードファイバの場合には光の偏波状態が不定となるので、被測定光ファイバ100からの反射光と反射用光ファイバ14からの基準光の偏波が直交して干渉信号が得られなくなることがある。
【0049】
この事態を避けるためには、被測定光ファイバ100側又は反射用光ファイバ14側の少なくとも一方に偏波コントローラを挿入して偏波を調整してもよい。若しくは、被測定光ファイバ100からの反射光の互いに直交する2つの偏波成分をそれぞれ検出する偏波ダイバーシティ受信を用いてもよい。あるいは、全て若しくは一部のファイバを偏波保持ファイバとしてもよい。
【0050】
また、反射膜14a〜14c及び被測定光ファイバ100で反射した光が光カプラ12を介して掃引光源11に戻ることによる悪影響を防ぐため、必要に応じて掃引光源11と光カプラ12の間に光アイソレータを挿入してもよい。
【0051】
反射波長検出部13は、受光器15、A/D変換器16、スペクトログラム算出部17、及びピーク波長検出部18を有する。
【0052】
受光器15は、入力光の強度に比例した電気信号を出力するフォトダイオード(PD)からなる。具体的には、受光器15は、光カプラ12で合波された被測定光ファイバ100からの反射光と基準光の干渉光が入力され、この干渉光の光強度を電気信号(ビート信号)に変換して出力するようになっている。
【0053】
A/D変換器16は、受光器15から出力されたアナログの電気信号(ビート信号)をディジタル信号に変換するようになっている。
【0054】
スペクトログラム算出部17は、掃引光源11から出力された掃引波長情報に基づいて、A/D変換器16から出力されたディジタル信号(ビート信号データ)と掃引波長との対応付けを行う。既に述べたように、被測定光ファイバ100の各FBGはそれぞれの反射波長に対応する光のみを反射するため、受光器15は2つ以上のFBGからの反射光を同時に検出することがない。このため、掃引光源11からの掃引波長情報に基づいて、その時点で検出された干渉光のビート信号データが、どのFBGから発生した反射光によるものであるかを特定することができる。
【0055】
さらに、スペクトログラム算出部17は、ビート信号データに対して微小波長区間ごとに離散フーリエ変換を行ない、スペクトログラムを算出するようになっている。
【0056】
ピーク波長検出部18は、スペクトログラム算出部17によって算出されたスペクトログラムから、微小周波数区間ごとにピーク波長、すなわち位置zでの反射波長のピーク(FBG反射波長)を検出するようになっている。
【0057】
さらに、ピーク波長検出部18は、検出したFBG反射波長とFBGに歪みが掛かっていない状態でのFBG反射波長との差Δλに基づいて被測定光ファイバ100の位置zにおける歪みを算出する。被測定光ファイバ100の歪みεと反射波長の変化Δλとの関係は、Δλが微小であればΔλ∝εとなる。
【0058】
以下、反射波長検出部13の検出周波数の上限について
図7等を参照しながら説明する。ここでは、
図6の構成において、λ1<λ2<λ3<λ4<λ5であり、掃引光源11が波長λ1から波長λ5までを含む波長範囲で短波長側から長波長側まで波長掃引するものとする。
【0059】
まず、掃引光源11は、FBG101の入射端で反射される波長λ1の反射光と、反射膜14aで反射される基準光との光路差に相当する掃引波長の変化分以上、λ1よりも短波長側から波長掃引を開始する。ここで、上記の光路差に相当するフーリエ周波数f、すなわちz=0の位置におけるフーリエ周波数はV×2nL
FBG/cとなる。
【0060】
一方、FBG101の出射端で反射される波長λ1の反射光は、反射膜14aで反射される基準光との光路差がゼロとなるため、このときのz=L
FBGにおけるフーリエ周波数fはゼロとなる。
図7の領域Iにおける実線は、掃引波長λ1の光が反射膜14aで反射された場合の位置zとフーリエ周波数f(z)との関係を示している。
【0061】
同様に、掃引波長λ1の光は、反射膜14bや反射膜14cでも反射される。
図7の領域Iの破線及び一点鎖線はそれぞれ、掃引波長λ1の光が反射膜14b及び14cで反射された場合の位置zとフーリエ周波数f(z)との関係を示している。
【0062】
次に、掃引波長λ2の光がFBG102の入射端で反射された場合には、反射膜14aで反射される基準光との光路差がゼロとなるため、このときのz=L
FBGにおけるフーリエ周波数f(z)はゼロとなる。
【0063】
掃引波長λ2の光がFBG102の出射端で反射された場合には、反射膜14a及び反射膜14bで反射される基準光との光路差がL
FBGとなるため、このときのz=2L
FBGにおけるフーリエ周波数f(z)はV×2nL
FBG/cとなる。
図7の領域IIにおける実線、破線、及び一点鎖線はそれぞれ、掃引波長λ2の光が反射膜14a,14b,14cで反射された場合の位置zとフーリエ周波数f(z)との関係を示している。
【0064】
以下同様に、領域III,IV,Vにおける実線、破線、及び一点鎖線は、掃引波長λ3〜λ5の光が反射膜14a〜14cでそれぞれ反射された場合の位置zとフーリエ周波数f(z)との関係を示している。
【0065】
このように、位置zに対応するフーリエ周波数は、反射膜の数だけ存在する(この例では3点)。ただし、受光器15及びA/D変換器16の少なくとも一方の検出周波数の上限f
LIMITよりも高域にある成分は、受光器15又はA/D変換器16から見て信号強度が弱いために検出されない。
【0066】
つまり、
図7の例では、例えば検出周波数の上限f
LIMITがV×2nL
FBG/cに等しければ、被測定光ファイバ100の測定可能な長さは5L
FBGとなる。仮に、FBG反射波長がλ6(>λ5)で長さがL
FBGのFBGがFBG105の出射端に連続して形成されていれば、被測定光ファイバ100の測定可能な長さは6L
FBGとなる。
【0067】
これに対して、FBG反射波長が1つであり、反射膜が1つであった従来方法では、検出周波数の上限f
LIMITがV×2nL
FBG/cであるとすると、測定可能な長さはL
FBGとなり、本実施形態における
図7の例の1/5程度の狭さであった。
【0068】
以下、被測定光ファイバ100の測定可能な長さの具体例について
図8を参照しながら説明する。掃引光源11は、波長λ0を中心に、振幅A、周波数f
Sで発振波長を正弦波的に掃引するものであるとすると、その発振波長は次式で表すことができる。
λ(t)=λ0+Asin(2πf
St) ・・・(3)
【0069】
このとき波長掃引速度V
λは次式で表される。
V
λ=2πfAcos(2πf
St) ・・・(4)
【0070】
図8の太線で示した領域では、発振波長は直線的に波長掃引されており、この領域でOFDRが実施される。この領域での波長掃引速度V
λは、近似的にV
λ=2πfAとなる。ここで、A=25nm、f
S=150Hzであるとすると、V
λ=2.4×10
4[nm/s]となる。これを周波数に換算すれば、λ0が1550nmの場合には、V=3×10
15[Hz/s]となる。
【0071】
一般的な受光器の帯域の上限が1GHz程度であるのに対して、A/D変換器の帯域の上限は、広帯域なものでも250MHz程度である。したがって、OFDR装置としての検出周波数の帯域はA/D変換器で制限される。
【0072】
A/D変換器の帯域の上限を250MHzとすると、ナイキスト周波数は125MHzとなる。よって、測定可能な最大の測定ファイバ長L
maxは、式(2)より、L
max=125MHz×c/(2nV)=125×10
6×3×10
8/(2×1.5×3×10
15)=4.2mとなる。
【0073】
よって、本実施形態の
図7に示した構成であれば、4.2mの5倍の21mまで測定範囲を拡大することが可能である。
【0074】
図9には比較例として、
図7の構成に加えて、FBG102の出射端に対応する位置にも反射膜14dが配置された場合の位置zとフーリエ周波数f(z)との関係を示す。しかしながら、この例では、FBG102,103の領域II,IIIにおいて、フーリエ周波数f(z)が、異なる位置zで同一の値を取ることになる。このような場合には、検出された干渉光がFBG102,103内のどの位置から発生した反射光によるものであるのかを特定できなくなる。
【0075】
したがって、FBGが形成された各領域の位置zにおける複数のフーリエ周波数f(z)のうち、低周波数側の値が検出周波数の上限f
LIMIT以下に全て含まれるとともに、上記各領域において、フーリエ周波数f(z)が、異なる位置zで同一の値を取らないことが重要であることが分かる。
【0076】
なお、隣り合うFBGが所定間隔を開けて被測定光ファイバ100内に形成されている場合には、複数のFBGに歪みが掛かっていない状態において、複数のFBGの長さが全て等しいとともに、隣り合う2つのFBGの中心間距離Lが全て等しい構成であってもよい。この場合には、検出周波数の上限はV×2nL/c以上であればよい。
【0077】
以上説明したように、本実施形態のOFDR装置1は、FBG反射波長λ
FBGが互いに異なる複数のFBGが被測定光ファイバ100の長手方向に沿って、連続的に又は所定間隔を開けて直列に配置されている。反射用光ファイバ14の反射膜は、隣り合う2つのFBGの境界又は間隙に対応する位置のうちの少なくとも1つに配置される。特に、複数の反射膜がある場合には、掃引光源11から遠い位置にあるFBGからの反射光は、遠い位置にある反射膜からの反射光と干渉させる。
【0078】
これにより、FBGに対する歪み分布又は温度分布の測定において、受光器及びA/D変換器の測定帯域を拡大させることなく、測定可能なFBGの距離範囲を拡大させることができる。
【0079】
また、本実施形態のOFDR装置1においては、被測定光ファイバ100の長手方向に沿った複数のFBGの配置順序は、FBG反射波長λ
FBGに関して昇順又は降順である。これにより、反射波長検出部13に入射した干渉光が、どのFBGから発生した反射光によるものであるかは発振波長とFBG反射波長λ
FBGの関係から特定することができる。
【0080】
また、本実施形態のOFDR装置1においては、被測定光ファイバ100に配置された複数のFBGに歪みが掛かっていない状態において、複数のFBGの長さが全て等しいとともに、隣り合う2つのFBGの中心間距離Lも全て等しい。これにより、反射波長検出部13に入射した干渉光が、各FBGのどの位置から発生した反射光によるものであるかを特定することが容易になる。
【0081】
また、本実施形態のOFDR装置1においては、中心間距離をL、被測定光ファイバ100の屈折率をn、掃引光源11の光周波数掃引速度をV、光速をcとしたときに、反射波長検出部13の検出周波数の上限がV×2nL/c以上である。
【0082】
これにより、受光器及びA/D変換器の測定帯域が狭い場合であっても、中心間距離Lを短くするとともに、FBGの個数を増やすことにより、測定可能なFBGの距離範囲を拡大させることができる。
【0083】
また、本実施形態のOFDR装置1においては、反射用光ファイバ14の反射膜は、被測定光ファイバ100に配置された複数のFBGのうち、光カプラ12に近い側から数えて奇数番目のFBGの出射端(あるいは、入射端)に対応する位置に配置される。
【0084】
これにより、反射波長検出部13に入射した干渉光が、各FBGのどの位置から発生した反射光によるものであるかを特定することが容易になる。
【0085】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態としてのOFDR装置2について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0086】
図10に示すように、本実施形態のOFDR装置2の光合分波部は、第1の光カプラ21と、光サーキュレータ22,23と、第2の光カプラ24と、からなっている。また、受光器はバランスドレシーバ25で構成されている。
【0087】
掃引光源11の出力光は第1の光カプラ21で2つに分岐され、一方は光サーキュレータ22の第1端子に入力され、光サーキュレータ22の第2端子から出力され、被測定光ファイバ100に導かれる。被測定光ファイバ100からの反射光は、光サーキュレータ22の第2端子に入力され、光サーキュレータ22の第3端子から出力される。
【0088】
一方、第1の光カプラ21で分岐された光の他方(基準光)は、光サーキュレータ23の第1端子に入力され、光サーキュレータ23の第2端子から出力され、反射用光ファイバ14に導かれる。反射用光ファイバ14からの反射光は、光サーキュレータ23の第2端子に入力され、光サーキュレータ23の第3端子から出力される。
【0089】
そして、被測定光ファイバ100からの反射光と反射用光ファイバ14からの反射光が第2の光カプラ24において合波され干渉する。ここで、第2の光カプラ24の2つの出力ポートからそれぞれ出力される合波光の位相は、互いに逆位相となる。これら2つの合波光はバランスドレシーバ25に入力される。
【0090】
バランスドレシーバ25は、例えば2つのPD及び減算器を有しており、第2の光カプラ24からの2つの合波光を2つのPDでそれぞれ受けて電気信号に変換し、それらの電気信号を減算器で減算して、被測定光ファイバ100からの反射光と基準光の干渉によるビート信号を出力するようになっている。
【0091】
このようなバランス受信によって、干渉によるビート信号は振幅が2倍になり、2つの合波光に含まれる同相の雑音はキャンセルされ、ランダムな雑音は振幅が√2倍になるので、信号対雑音比を改善することができる。
【0092】
A/D変換器16よりも後段の構成は第1の実施形態と同様である。本実施形態の構成においても、ビート信号のスペクトログラムを算出した後、被測定光ファイバ100において歪みが発生した箇所を特定することができる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態のOFDR装置2においては、受光器は、合波光をバランスド受光するバランスドレシーバ25で構成される。これにより、歪み分布又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0094】
また、光合分波部が光サーキュレータを用いて構成されることにより、掃引光源11に光が戻ることがないため、第1の実施形態と比較して光を有効に利用することができる。
【0095】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態としてのOFDR装置3について図面を参照しながら説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0096】
図11に示すように、本実施形態のOFDR装置3は、反射用光ファイバ14に掃引光源11からの出力光を入力するとともに、光カプラ12に反射用光ファイバ14からの反射光を入力する光カプラ30を備える。光カプラ30は、掃引光源11の出力光を複数に分岐するようになっている。
【0097】
本実施形態における反射用光ファイバ14は、反射膜14a〜14cがそれぞれ形成された複数の光ファイバ31〜33からなる。複数の光ファイバ31〜33は、光カプラ30にそれぞれ接続されている。つまり、
図11の構成では、光カプラ30で3つに分岐された掃引光源11の出力光が、それぞれ光ファイバ31〜33に入力される。
【0098】
上記のように構成された本実施形態のOFDR装置3は、各光ファイバ31〜33を光カプラ30から取り外すことができるため、各反射膜14a〜14cの位置を容易に独立に調整することが可能である。