(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性炭は、紙−フェノール樹脂積層体の炭化物をBET比表面積が前記範囲になるまで賦活処理したものである請求項1〜3の何れかに記載の浄水器用活性炭の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
有機ハロゲン化合物は細孔径2nm以下のミクロ孔に吸着するが、通水条件下で有機ハロゲン化合物に対する吸着性能を向上させるには、有機ハロゲン化合物の粒子内での拡散速度を向上させる必要がある。そのためにはミクロ孔への導入路となる細孔径2nm超50nm以下のメソ孔の増大が必須であると考えられている。しかしながら従来の活性炭は比表面積や細孔容積の厳密な制御が不十分であり、通水条件下での有機ハロゲン化合物の効率的な除去ができなかった。
【0015】
例えば特許文献1では、球状フェノール樹脂の細孔直径0.6〜0.8nmの細孔容積の割合を高めている。しかしながら特許文献1では有機ハロゲン化合物の細孔内での拡散速度向上に寄与する比較的大きな細孔については十分に考慮されておらず、通水条件下での吸着性能を改善するには至っていない。
【0016】
また特許文献2では、フラーレンを原料とする活性炭の細孔径2〜10nmの細孔容積比率を改善することで通水条件下での有機ハロゲン化合物に対する吸着性能の向上を図っている。しかしながら通水条件下でより優れた吸着量と有機ハロゲン化合物の拡散速度とを両立させる観点から、細孔径と細孔容積との関係を検討する余地があった。特に特許文献2では活性炭原料としてフラーレンを用いているが、製造コストが高く、またフラーレンを原料とする活性炭では、通水条件下での有機ハロゲン化合物に対する吸着性能向上に適した比表面積、及び細孔容積に調整することが難しいという問題があった。
【0017】
そこで本発明者らは、有機ハロゲン化合物に対する平衡吸着量だけでなく、通水条件下でも優れた吸着性能を有する活性炭について検討した。その結果、吸着量と有機ハロゲン化合物の拡散速度とをバランスよく両立できる細孔径と細孔容積との関係、及び比表面積を見出した。
【0018】
すなわち本発明の粉末状または粒状の浄水器用活性炭は、有機ハロゲン化合物の拡散速度向上に寄与するメソ孔のうち、細孔径2nm超10nm以下の細孔容積比率(以下、「2〜10nmの細孔容積比率」ということがある)、および有機ハロゲン化合物の吸着量向上に寄与する細孔径2nm以下の細孔容積比率(以下、「2nm以下の細孔容積比率」ということがある)、更に活性炭の比表面積を厳密に制御することで、有機ハロゲン化合物に対する平衡吸着量、および通水条件下での吸着性能を向上できることを見出した。
【0019】
本発明の浄水器用活性炭は、BET比表面積が700m
2/g以上1250m
2/g未満であり、細孔径30nm以下の細孔容積(以下、「全細孔容積」ということがある)に対して2nm以下の細孔容積比率が50%以上80%未満であり、全細孔容積に対して2〜10nmの細孔容積比率が10%以上40%未満であることを特徴とする。
【0020】
上記構成を有する本発明の浄水器用活性炭は、活性炭内での有機ハロゲン化合物の移動、拡散が早くなり、かつ、吸着サイトも十分に存在する。そのため、本発明の活性炭は通水条件下での吸着性能に優れている。
【0021】
以下、本発明の活性炭について具体的に説明する。
【0022】
[BET比表面積が700m
2/g以上1250m
2/g未満]
活性炭のBET比表面積が小さすぎると十分な吸着量が得られない。したがってBET比表面積は700m
2/g以上、好ましくは800m
2/g以上、より好ましくは900m
2/g以上である。一方、BET比表面積が大きくなりすぎると活性炭の充填密度が低下すると共に、吸着量向上に寄与する2nm以下の細孔容積比率と、拡散速度向上に寄与する2〜10nmの細孔容積比率をバランスよく確保できなくなる。したがってBET比表面積は1250m
2/g未満、好ましくは1100m
2/g以下、より好ましくは1050m
2/g以下、更に好ましくは1000m
2/g未満である。
【0023】
[全細孔容積に対する細孔径2nm以下の細孔容積比率が50%以上80%未満]
活性炭の細孔径2nm以下の細孔は、有機ハロゲン化合物の吸着量向上に有効な細孔であり、2nm以下の細孔容積比率が小さすぎると十分な吸着量を確保できない。したがって全細孔容積に対する2nm以下の細孔容積比率は50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。一方、2nm以下の細孔容積比率が大きくなりすぎると、拡散速度向上に寄与する2〜10nmの細孔容積比率を十分に確保できず、通水条件下での吸着性能が低下する。したがって全細孔容積に対する2nm以下の細孔容積比率は80%未満、好ましくは75%以下である。
【0024】
[全細孔容積に対する細孔径2nm超10nm以下の細孔容積比率が10%以上40%未満]
活性炭の細孔径2nm超10nm以下の細孔は、有機ハロゲン化合物の活性炭内部への拡散速度を向上させて通水条件下での吸着性能向上に有効である。2〜10nmの細孔容積比率が小さすぎると、拡散速度が遅くなり通水条件下での吸着性能が低下する。したがって全細孔容積に対する2〜10nmの細孔容積比率は10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。一方、2〜10nmの細孔容積比率が大きくなりすぎると、2nm以下の細孔容積比率が低下して吸着量が低下する。したがって全細孔容積に対する2〜10nmの細孔容積比率は40%未満、好ましくは35%以下である。
【0025】
有機ハロゲン化合物に対する通水条件下の吸着性能を更に向上させるためには以下の条件を満足することが望ましい。
【0026】
[全細孔容積に対する10nm以下の細孔容積比率]
更に活性炭の細孔径10nm以下の細孔は、上記の通り、吸着量と拡散速度向上に寄与する細孔であり、一定以上確保することで、活性炭の吸着性能を高めることができる。したがって活性炭の全細孔容積に対する上記2nm以下の細孔容積比率と2〜10nmの細孔容積比率の合計容積比率(以下、「10nm以下の細孔容積比率」ということがある)は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。上限は特に限定されないが、10nm以下の細孔容積比率が大きくなりすぎると、有機ハロゲン化合物の導入路となる細孔径10nm超の大きな細孔径を有するメソ孔やマクロ孔が減少して活性炭内部での有機ハロゲン化合物の移動、拡散効率が低下して通水条件下での吸着性能が低下する。したがって全細孔容積に対する10nm以下の細孔容積比率は、好ましくは98%以下、より好ましくは96%以下、更に好ましくは95%以下である。
【0027】
[活性炭の全細孔容積]
本発明の活性炭は上記細孔容積比率を満足していればよく、細孔径30nm以下の細孔容積、すなわち全細孔容積は限定されないが、全細孔容積が小さすぎると、十分な吸着量を確保できない。したがって全細孔容積は好ましくは0.30cm
3/g以上、より好ましくは0.40cm
3/g以上、更に好ましくは0.50cm
3/g以上である。全細孔容積の上限は特に限定されず、例えば好ましくは0.80cm
3/g以下、より好ましくは0.70cm
3/g以下である。
【0028】
[活性炭の平均細孔径]
活性炭の平均細孔径は特に限定されないが、活性炭内部への有機ハロゲン化合物の導入効率を向上させる観点から、好ましくは2.0nm以上、より好ましくは2.1nm以上、更に好ましくは2.2nm以上、より更に好ましくは2.3nm以上である。一方、平均細孔径が大きくなりすぎると、充填密度が低下することがあるため、好ましくは4.0nm以下、より好ましくは3.5nm以下、更に好ましくは3.0nm以下である。
【0029】
[活性炭の平均粒径]
本発明の活性炭は粉末状または粒状であればよく、平均粒径は特に限定されないが、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上であって、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0030】
本発明の活性炭は、トリクロロメタン、トリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、トリブロモメタンなどのトリハロメタン類、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどの有機ハロゲン化合物、より好ましくは分子量が小さく、吸着されにくい1,1,1−トリクロロエタンに対して優れた吸着性能を有する。
【0031】
本発明の活性炭は水道水や工業廃水に含まれる上記物質の除去に好適である。
【0032】
本発明の活性炭は、後記実施例の平衡試験に基づく平衡吸着量で好ましくは20mg/g以上、より好ましくは25mg/g以上を達成できる。また本発明の活性炭は、通水条件下でのトリハロ化合物除去用活性炭として好適であり、後記実施例の通水試験に基づく有機ハロゲン化合物の除去率80%以上を維持できる通水量は、好ましくは通水量52L/g以上、より好ましくは通水量60L/g以上、更に好ましくは通水量70L/g以上、より更に好ましくは通水量80L/g以上である。
【0033】
本発明の活性炭を使用する浄水器の形態は特に限定されず、各種公知の浄水器に使用できる。
【0034】
以下、本発明の活性炭の製造方法について具体的に説明するが、本発明の製造方法は下記製造例に限定されず、適宜変更することができ、それらも本発明に含まれる。
【0035】
上記本発明の活性炭は、賦活原料を賦活処理することで製造できる。「賦活処理」とは、賦活原料の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。賦活処理としては、水蒸気賦活することが推奨される。また、賦活処理は一回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。賦活原料は、通常の活性炭の原料として用いられるものでもよいが、特に下記原料が推奨される。
【0036】
賦活原料としては、比較的大きい細孔が形成されやすい賦活原料(以下、「メソ孔形成原料」という場合がある)と比較的小さい細孔が形成されやすい賦活原料(以下、「ミクロ孔形成原料」という場合がある)との複合物が好適である。賦活原料として、メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との複合物を用いれば、賦活処理を複数回行うことなく、一回の賦活処理で上記所定の各細孔径に応じた細孔容積比率を有する活性炭が得られる。
【0037】
メソ孔形成原料としては、例えば、紙、綿繊維、木質材料などのセルロース系原料などが挙げられる。ミクロ孔形成原料としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂などの合成樹脂系原料などが挙げられる。これらのメソ孔形成原料、およびミクロ孔形成原料は、それぞれ少なくとも1種以上使用する。なお、メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との配合比は、所望する活性炭の物性に応じて適宜変更すればよい。メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との複合物としては、例えば、紙−フェノール樹脂積層体が好適である。
【0038】
紙−フェノール樹脂積層体は、特許文献1や特許文献2で用いられているフェノール樹脂やフラーレンなどを原料とした活性炭と比べて、賦活条件を制御することで、メソ孔やミクロ孔の形成を厳密にコントロールできる。そのため、活性炭の比表面積、及び細孔容積比率などをより精緻に制御することが可能である。したがって通水条件下で有機ハロゲン化合物の吸着性能に極めて優れた活性炭が得られる。
【0039】
メソ孔形成原料とミクロ孔形成原料との混合物または複合物は、炭化処理して用いることが好ましい。前記炭化処理は、通常、窒素ガス、ヘリウム、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で炭素原料が燃焼しない温度、時間で加熱処理すればよい。該炭化処理の温度は、好ましくは500℃以上、より好ましくは550℃以上であり、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下である。保持時間は特に限定されないが、該炭化処理温度で5〜10分程度以上保持すればよい。
【0040】
賦活処理は特に限定されず、上記本発明の活性炭のBET比表面積、および細孔容積比率が得られればよい。BET比表面積や細孔容積比率を簡便かつ精緻にコントロールする観点からは水蒸気賦活が好ましい。
【0041】
水蒸気賦活では、賦活原料を所定の温度まで加熱した後、水蒸気を供給することにより上記所定のBET比表面積、及び細孔容積比率の範囲となるように賦活処理を行う。賦活原料の加熱は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0042】
賦活処理を行う際の温度(炉内温度)は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上であり、1500℃以下が好ましく、より好ましくは1300℃以下である。また、賦活処理を行う際の加熱時間は0.5時間以上が好ましく、より好ましくは1.0時間以上であり、10時間以下が好ましく、より好ましくは5時間以下である。
【0043】
賦活処理中に供給する水蒸気の総量は特に限定されない。
【0044】
水蒸気の供給態様は特に限定されず、例えば水蒸気を希釈せずに供給する態様、水蒸気を不活性ガスで希釈して混合ガスとして供給する態様のいずれも可能である。賦活反応を効率良く進行させるためには、不活性ガスで希釈して供給する態様が好ましい。水蒸気を不活性ガスで希釈して供給する場合、該混合ガス(全圧101.3kPa)中の水蒸気分圧は好ましくは30kPa以上、より好ましくは40kPa以上である。
【0045】
水蒸気賦活後の活性炭は、必要に応じて洗浄処理、熱処理、粉砕処理を行ってもよい。洗浄処理は、水蒸気賦活後の活性炭を、水や酸溶液またはアルカリ溶液などの公知の溶媒を用いて行う。活性炭を洗浄することにより、灰分などの不純物を除去できる。熱処理は、水蒸気賦活後あるいは洗浄後の活性炭を、さらに不活性ガス雰囲気下で加熱する。活性炭を熱処理することにより、活性炭に含まれる水を除去できる。粉砕処理は、ディスクミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて行う。なお、活性炭の粒径は、必要に応じて適宜調整すればよい。
【0046】
本願は、2014年4月3日に出願された日本国特許出願第2014−76685号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年4月3日に出願された日本国特許出願第2014−76685号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0048】
(測定条件など)
1.比表面積、全細孔容積
活性炭0.2gを250℃にて真空加熱した後、窒素吸着装置(マイクロメリティックス社製、「ASAP−2400」)を用いて、吸着等温線を求め、BET法により比表面積(m
2/g)を算出し、吸着等温線から細孔直径30nm以下の細孔の全細孔容積(V
total:cm
3/g)を算出した。
【0049】
2.平均細孔径、および各細孔径の細孔容積
平均細孔径は、活性炭に形成された細孔の形状をシリンダー状と仮定して算出した。また各細孔径の細孔容積は、BJH法において解析して各細孔径における細孔容積を算出した。上記算出した比表面積と全細孔容積に基づき、下記式(1)〜(4)により算出した。なお、細孔径分布は
図3のグラフに示した。
【0050】
平均細孔径(nm)=(4×全細孔容積(V
total:cm
3/g))/比表面積(m
2/g)・・・(1)
【0051】
細孔直径2nm以下の細孔容積(≦V
2nm:cm
3/g)=全細孔容積(V
total:cm
3/g)−(2〜10nmの細孔容積(V
2-10nm:cm
3/g)+10nm超の細孔容積(V10nm<:cm
3/g))・・・(2)
【0052】
細孔直径2nm超10nm以下の細孔容積(V
2-10nm:cm
3/g)=全細孔容積(Vtotal:cm
3/g)−(2nm以下の細孔容積(≦V
2nm:cm
3/g)+10nm超の細孔容積(V
10nm<:cm
3/g))・・・(3)
【0053】
10nm超の細孔容積(V10nm<:cm
3/g)=全細孔容積(Vtotal:cm
3/g)−(2nm以下の細孔容積(≦V2nm:cm
3/g)+2〜10nmの細孔容積(V2-10nm:cm
3/g))・・・(4)
【0054】
3.全細孔容積(Vtotal)に対する各細孔径(≦V2nm、V2-10nm、V10nm<)の細孔容積比率
上記各細孔容積を全細孔容積で除して各細孔径の細孔容積比率(%)を算出した。
【0055】
4.通水試験
粒径を53〜250μmの範囲内に調整した活性炭2.0gをカラム(直径15mm)に充填し、JIS S 3201(2010年:家庭用浄水器試験法)に準じて通水試験を行った。具体的には1,1,1−トリクロロエタン濃度0.3±0.060mg/Lとなるように調整した原水を空間速度(SV)500h
-1でカラムに通過させた。カラム通過前後の1,1,1−トリクロロエタン濃度をヘッドスペースガスクロマトグラム法にて定量測定を行った。破過点をカラム流入水に対する流出水の1,1,1−トリクロロエタン濃度20%とし、破過点に達した時点の1,1,1−トリクロロエタン通水量(=[破過点までの総ろ過水量(L)/活性炭質量(g)])を算出し、ろ過性能とした。なお、ヘッドスペースはパーキンエルマー社製TurboMatrixHS、ガスクロマトグラム質量分析計は島津製作所社製QP2010を用いた。
【0056】
5.平衡試験
1,1,1−トリクロロエタン0.5gをメタノール50mLで希釈した後、更にメタノールで10倍希釈して原液を調整した。原液5mLを純水で希釈し、濃度5mg/Lの1,1,1−トリクロロエタン水溶液を調整した。容量100mLの褐色三角フラスコに攪拌子と粒径を53〜250μmの範囲内に調整した活性炭を入れた後、1,1,1−トリクロロエタン水溶液で満水にして密閉した。その後20℃に維持した恒温槽に三角フラスコを載置し、14時間攪拌した。14時間経過後、三角フラスコ内の水溶液をシリンジフィルターでろ過した。得られたろ過液をヘッドスペースガスクロマトグラム法にて1,1,1−トリクロロエタン水溶液の平衡濃度(mg/L)、および活性炭質量で除した1,1,1−トリクロロエタン水溶液の平衡吸着量(mg/g)を求めて吸着等温線を作成し、平衡濃度0.3mg/Lにおける1,1,1−トリクロロエタン平衡吸着量を算出し、1,1,1−トリクロロエタンに対する吸着量とした。
【0057】
活性炭No.1
炭素原料として紙−フェノール樹脂積層体を炭化して得られる粉砕炭を870℃に加熱し、不活性雰囲気に調整した加熱炉内に投入した。紙−フェノール樹脂積層体の投入と同時に加熱炉内に水蒸気(水蒸気分圧:40kPa)を供給し、不活性ガス雰囲気で、2.0時間水蒸気賦活処理を行って活性炭No.1を得た。なお、水蒸気の供給量は投入した紙−フェノール樹脂積層体100質量部に対して300質量部とした。
【0058】
活性炭No.2〜4
賦活時間を変更した以外は、活性炭No.1と同様にして活性炭No.2〜4を製造した。
【0059】
活性炭No.5
市販されている椰子殻水蒸気賦活活性炭(MCエバテック社製)を用意しNo.5とした。
【0060】
活性炭No.6
炭化した紙−フェノール樹脂積層体30gに賦活剤として質量比0.64倍の水酸化カリウムを添加した後、加熱炉に投入して窒素雰囲気中、800℃で2時間賦活処理した。得られた賦活炭に60℃の温水で水洗浄処理をしてから塩酸洗浄処理(塩酸濃度5.25質量%)を行い、60℃の温水で水洗浄処理。その後、活性炭をマッフル炉にいれて、窒素流通下(2L/分)、炉内温度を750℃まで昇温(昇温速度:10℃/分)し、750℃で2時間保持して活性炭No.6を製造した。
【0061】
【表1】
【0062】
図1に各活性炭の平衡試験での1,1,1−トリクロロエタン平衡吸着量と比表面積の関係を示す。また
図2に各活性炭の通水試験での1,1,1−トリクロロエタン通水量と比表面積との関係を示す。
図3に活性炭No.1〜6の細孔径分布を示す。
【0063】
図1に示すように、紙−フェノール樹脂積層体を用いた活性炭No.1〜4、6は、ヤシガラを用いた活性炭No.5よりも平衡試験において優れた吸着性能を有していた。また
図2に示すように、通水試験においては活性炭No.1〜4は、活性炭No.6よりも優れた吸着性能を有していた。
【0064】
図3に示すように、活性炭No.1〜4は活性炭No.5、6と比べて2〜10nmの細孔容積比率が大きい。したがって本発明の要件を満足する活性炭No.1〜4は、
図1、2に示すように、平衡試験、および通水試験のいずれにおいても、1,1,1−トリクロロエタンに対する優れた吸着性能を発揮したと考えられる。