特許第6290903号(P6290903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6290903実験試料の自動処理のための実験機器及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290903
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】実験試料の自動処理のための実験機器及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20180226BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20180226BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   G01N35/00 E
   G01N35/00 A
   !C12N15/00 A
【請求項の数】16
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-534930(P2015-534930)
(86)(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公表番号】特表2015-536643(P2015-536643A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013002942
(87)【国際公開番号】WO2014053235
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】12006836.6
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/708,064
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ティーメ
(72)【発明者】
【氏名】クラース フエスマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ロート
(72)【発明者】
【氏名】ユーディト リュッケ
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト ポール
【審査官】 伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519029(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0184546(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0105074(US,A1)
【文献】 特開2008−035841(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111366(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0048846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−1/42
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの実験試料(10)のプログラム制御処理のための実験機器(1)であって、
・少なくとも1つの実験試料(10)のプログラム制御処理のための処理装置(2)であって、前記処理が、少なくとも部分的に使用者によって選択される(9)複数のプログラムパラメーター(8)を使用することによって制御される、処理装置(2)、
・電子制御装置(3)であって、
・データ処理のための少なくとも1つのプロセッサ装置(4)であって、当該データ処理が実験機器を制御するための制御プログラム(101)の実行に関与する、プロセッサ装置(4)、
・前記制御プログラム及び前記プログラムパラメーターを含むデータを保存するための少なくとも1つのメモリ装置(5)
を有する、電子制御装置(3)、
・使用者によるデータの手入力とこれらのデータを含む情報の表示のためのユーザーインターフェイス装置であって、ディスプレイ(50)を有する、ユーザーインターフェイス装置(50)、及び
・前記実験機器を制御するための少なくとも1つの制御プログラム(101)であって、前記少なくとも1つの制御プログラムが、以下のステップ:
(a)前記ディスプレイ(50)の第1表示エリア(51)における少なくとも1つの質問エリアの表示であって、質問エリアが少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有する、表示、
(b)前記少なくとも1つの情報エリアに表示されている前記プログラムパラメーターについての情報と前記少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉されている使用者による入力に基づく前記処理のプログラム制御実行に必要とされる複数のプログラムパラメーター(9)の質問、
(c)使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおける、前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値の前記ディスプレイ(50)の第2表示エリア(52)の情報エリア内での表示であって、必要とされる複数のプログラムパラメーター(9)の質問の後にこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される全ての値がこの第2表示エリアに表示され、前記プログラムパラメーターについて使用者により入力される値が、「スクラッチリスト」と呼ばれるテキスト表示及び/又は画像表示としてこれらのプログラムパラメーターについての情報と共に表示される、表示、
(d)前記ステップ(a)及び(b)において質問されたプログラムパラメーター(9)を使用した、方法プログラム(103)の作成、及び当該方法プログラム(103)を実行することによる処理の実施
を実行するための命令を含む、制御プログラム(101)
を有する、前記実験機器(1)。
【請求項2】
少なくとも1つのプログラムモジュール(102)を有する、請求項1に記載の実験機器であって、所定のプログラムモジュールが実験試料の処理に関連する所定の実験作業を制御するために使用され、
・前記処理が、少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターが関連する選択されたプログラムモジュールを使用することによって制御され、
・前記少なくとも1つのプロセッサ装置が、少なくとも1つのプログラムモジュールの実行のために使用され、そして、前記少なくとも1つのメモリ装置が、少なくとも1つのプログラムモジュールの保存のために使用され、
・前記少なくとも1つの制御プログラムが、選択されたプログラムモジュールに基づいてステップ(a)、(b)、(c)及び(d)を実行するために命令を含み、ステップ(b)において質問されるプログラムパラメーターが、選択されたプログラムモジュールと関連する、実験機器。
【請求項3】
プログラムモジュール及び少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターが、実験試料の処理に関連する所定の実験作業を制御するために使用される方法プログラム(103)を自動的に作成するために使用することができ、
・前記少なくとも1つのプロセッサ装置が、少なくとも1つの方法プログラムの実行のために使用され、そして、前記少なくとも1つのメモリ装置が、少なくとも1つの方法プログラムの保存のために使用され、
・ステップ(b)において質問される前記プログラムパラメーターが、前記選択されたプログラムモジュールを使用することにより作成された方法プログラムと関連し、
・前記少なくとも1つの制御プログラムが、必要とされるプログラムパラメーターに基づいてこのプログラムモジュールに従って前記方法プログラムを作成するステップ(c2)を選択されたプログラムモジュールに基づいて実行するために命令を含み、
・ステップ(d)において、前記処理が、前記方法プログラムを実行することによって実施されることを特徴とする、請求項2に記載の実験機器。
【請求項4】
前記制御プログラムが、使用者がユーザーインターフェイスを介してNP>1の数の所定のプログラムモジュールから所望のプログラムモジュールを選択できるように設計されており、前記プログラムモジュールと関連する方法プログラムが、各ケースにおいて前記メモリ装置に保存されるか、又は保存され得ることを特徴とする、請求項2又は3に記載の実験機器。
【請求項5】
ステップ(a)において、複数の質問エリアが、前記複数のプログラムパラメーターを質問するために表示される、請求項1から4の何れか一項に記載の実験機器。
【請求項6】
ステップ(a)において、前記プログラムパラメーターが、提供されている複数の質問エリアを含むリストに基づくリストの形式で質問され、そして、前記リストの少なくとも1つのセクションが、前記第1表示エリアに表示される、請求項1から5の何れか一項に記載の実験機器。
【請求項7】
前記リストは、前記第1表示エリアに前記リストの異なるセクションを表示するために使用者が前記第1表示エリアに触れることによって動かすことができる、請求項6に記載の実験機器。
【請求項8】
ステップ(b)において、必要とされるプログラムパラメーターがNTの数の質問エリアを介して確認される、請求項1から7の何れか一項に記載の実験機器。
【請求項9】
各質問エリアが、各ケースにおいて、1からNTの関連質問番号Nを有し、この質問番号が、前記質問エリア内、又は前記質問エリアの隣の前記第1表示エリア内に表示されることを特徴とする、請求項8に記載の実験機器。
【請求項10】
前記質問番号Nが、プログラムパラメーターについて使用者が入力する少なくとも1つの値のスクラッチリストに表示される、請求項9に記載の実験機器。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプログラムパラメーターが、前記処理装置による実験試料の処理に適切である以下のセットの物理的変数:試料数、希釈倍率、標的体積、試料容器ホルダ又はマイクロタイタープレート中の前記試料の位置、試料温度、時間及び/又は時間差、温度又は温度差、このようなパラメーターの変化速度、から選択される、請求項1から10の何れか一項に記載の実験機器。
【請求項12】
前記制御プログラムが、以下のステップ
使用者によって編集することができる前記方法プログラムの前記メモリ装置内の保存
を実行するために命令をさらに含む、請求項1から11の何れか一項に記載の実験機器。
【請求項13】
前記ディスプレイ(50)がタッチスクリーンディスプレイである、請求項1から12のいずれか1項に記載の実験機器。
【請求項14】
前記実験機器における制御プログラムによる実験機器の手段による少なくとも1つの実験試料のプログラム制御処理のための方法であって、前記実験機器が少なくとも以下の構成要素:
・少なくとも1つの実験試料の前記自動処理のための処理装置であって、前記処理が、少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターを使用することによって自動的に制御される、処理装置、
・電子制御装置であって、
・データ処理のためのプロセッサ装置であって、当該データ処理が、前記実験機器を制御するための制御プログラムの実行に関与するプロセッサ装置、及び
・前記制御プログラム及び前記プログラムパラメーターを含むデータを保存するための少なくとも1つのメモリ装置
を有する、電子制御装置、
・使用者によるデータの手入力及びこれらのデータが含む情報の表示のためのユーザーインターフェイス装置であって、ディスプレイを有する、ユーザーインターフェイス装置、及び
・前記実験機器を制御し、且つ、前記試料処理と以下のステップ:
(a)前記ディスプレイの第1表示エリアにおける少なくとも1つの質問エリアの表示であって、質問エリアが少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有する、表示、
(b)前記少なくとも1つの情報エリアに表示されている前記プログラムパラメーターについての情報と前記少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉されている使用者による入力に基づく前記処理の実行に必要とされる複数のプログラムパラメーターの漸進的質問、
(c)使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおけるプログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値の前記ディスプレイの第2表示エリアの情報エリア内での表示であって、
要とされる複数のプログラムパラメーターの前記質問の後にこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される全ての値が、「スクラッチリスト」と呼ばれるテキスト表示及び/又は画像表示としてこれらのプログラムパラメーターについての情報と共にこの第2表示エリアに表示される、表示、
(d)前記ステップ(a)及び(b)において質問されたプログラムパラメーター(9)を使用した、方法プログラム(103)の作成、及び当該方法プログラム(103)を実行することによる処理の実施
を有する前記方法を実施するための少なくとも1つの制御プログラム
を有することを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1から13の何れか一項に記載の実験機器のための制御プログラムを有する記憶媒体であって、前記実験機器において以下のステップ:
(a)前記タッチスクリーンディスプレイの第1表示エリアにおける少なくとも1つの質問エリアの表示であって、質問エリアが少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有する、表示、
(b)前記少なくとも1つの情報エリアに表示されている前記プログラムパラメーターについての情報と前記少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉されている使用者による入力に基づく前記処理の実行に必要とされる複数のプログラムパラメーターの漸進的質問、
(c)使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおける、前記プログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値の前記ディスプレイの第2表示エリアの情報エリア内での表示であって、必要とされる複数のプログラムパラメーターの前記質問の後にこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される全ての値が、「スクラッチリスト」と呼ばれるテキスト表示及び/又は画像表示としてこれらのプログラムパラメーターについての情報と共にこの第2表示エリアに表示される、表示、
(d)前記ステップ(a)及び(b)において質問されたプログラムパラメーター(9)を使用した、方法プログラム(103)の作成、及び当該方法プログラム(103)を実行することによる処理の実施
を実行するために命令を含む、記憶媒体。
【請求項16】
実験試料の処理に関連する実験作業を実施するための請求項1から13の何れか一項に記載の実験機器又は請求項14に記載の方法の使用であって、当該実験作業が以下の作業:
・「MagSep Blood gDNA」:全血からのゲノムDNAの精製
・「MagSep Tissue gDNA」:生体組織からのゲノムDNAの精製、
・「MagSep Viral DNA/RNA」:無細胞性体液からのウイルス性RNA又はDNAの精製、
を含む核酸精製、及び
・「Compose Mastermix」;プレミックス又は個々の構成成分からの1つ以上のPCTマスターミックスの作製;本件では、必要な各構成成分の体積が前記制御装置によって、「Compose Mastermix」処理に関連する前記プログラムモジュールによって計算される、
・「Normalize Concentrations」;本件では全ての試料において同じ濃度にするために少なくとも2つのDNA/RNA試料が希釈される;前記所望の濃度は使用者により手入力され得るか、又はファイルからインポートされる、
・「Create Dilution Series」;本件では既知の濃度を有する1つ以上のDNA/RNA標準試料定量的PCRのために使用され得る校正曲線を作成するために連続的に希釈される、
・「Setup Reactions」;本件では反応過程が1種類以上のマスターミックスと混合される複数又は多数の試料によって行われる、
を含むPCR適用
を含む群から選択されることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実験試料の自動処理のための実験機器及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
そのような実験機器は化学実験、生物学実験、生化学実験、医学実験又は法医学実験において試料、特に液体試料を高いレベルの効率で処理するために使用される。実験機器は自動でなければ手作業で実施されなければならない処理ステップを自動化し、このようにしてこれらの処理操作のスピード、精度及び信頼性を高める。
【0003】
液体実験試料の処理は、この試料の組成を物理学的に、化学的に、生化学的に又は別の点で変えることに向けられ得る。その試料の処理により、例えば、試料が分割又は希釈され得る。試料の内容物を分析することができ、又は例えば化学反応により、特にその試料を使用することにより新しい内容物を作製することができる。特にDNA又はRNA又はそれらの構成成分の処理と分析との関連で、実験機器は適切な期間内に大量の情報を得るために、又は大量のそのような試料を分析するために有用である。
【0004】
実験機器は通常はワークステーション付きの作業面を有し、その上で試料を様々な方法で処理又は保存することができる。異なる位置間、特に試料容器間での液体試料の輸送のために、例えば、プログラム制御移動装置が通常は流体移送装置と併せて使用され、その流体移送装置は例えばピペッティングシステムを有してよい。異なるステーション上での試料の輸送と試料の処理の両方がプログラム制御下で自動化され得る。
【0005】
公知の実験機器のプログラミングは不便であり、あまり使いやすくないと多くの場合で記述されている。時には使用者は、使用者自身が装置特異的なプログラミングを実施することができるようにプログラミングの知識を身に着けなければならなかった。この場合、公知の実験機器は、全体としてエディターで書かれているプログラムのために制御プログラムが通常は体系化されていない方式で入力されるという問題を有する。プログラマーはプログラムパラメーターと変換式の正しい選択について心配する必要があるばかりでなく、同時にエラーの無いプログラム論理とプログラミング言語の正しい構文を心配する必要もある。現在市販されている幾つかの実験機器は、規定数のプログラムパラメーターが専ら実験機器上のディスプレイと入力オプションによって獲得される入力システムを提供する。多くの場合、これらの入力されたプログラムは製造業者特異的なアクセサリーキットと使用されることに限定されており、したがって使用者が望む大量適用の実施にとっては複雑であり、柔軟性に欠ける。
【0006】
米国特許出願公開第2011/0160909(A1)号明細書はモーター付きピペッティングワークステーションについて記載しており、そのモーター付きピペッティングワークステーションではピペットツールの配置と動作はコンピューター制御及びリモート制御されている。この目的のためにそのワークステーションはディスプレイ、特にタッチスクリーンを有するユーザーインターフェイスによって画像化されたピペットとピペットの位置を表示する。米国特許出願公開第2007/0184546(A1)号明細書は稼働中の試料の自動処理の作業ステップを画像化するためにディスプレイを使用する自動化ピペッティング装置について記載しており、その自動化ピペッティング装置ではディスプレイは1つより多くの表示エリアを有する。米国特許出願公開第2010/0105074(A1)号明細書はフローサイトメーターを使用する細胞分析のためのハイスループット処理とシステムについて記載している。そのシステムはウェルプレート内に含まれる液体試料の移送、混合、遠心分離のための自動化液体処理ユニットを有する。米国特許出願公開第2004/0158433(A1)号明細書は液体試料の自動化分析のための装置について記載しており、その装置では後続の処理を適合させることを目的に試料分析の結果が制御装置に移転される。米国特許出願公開第2012/0004742(A1)号明細書は試料分析のための装置を記載しており、その装置はデータメモリ装置、ディスプレイ及び制御装置を備え、カレンダー形式を使用してその装置の画像化された維持状況を表示するために使用される。それらの文献はそれぞれユーザーインターフェイスの画像化構造体の改善には関連せず、且つ、本発明に従うデータ入力のための表示エリアとデータ出力のための追加の表示エリアを有する特定の構造体を含むユーザーインターフェイスの実施形態について記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は簡単で使い勝手が良い実験試料の自動処理のための実験機器及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特に請求項1に記載の実験機器と請求項14に記載の方法によってこの目的を達成する。好ましい実施形態は特に従属請求項の対象である。
【0009】
少なくとも1つの実験試料のプログラム制御処理のための本発明の実験機器は
・少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターを使用することによって前記処理が制御されることを特徴とする、前記少なくとも1つの実験試料のプログラム制御処理のための処理装置、
・電子制御装置であって、
・データ処理のための、特に前記実験機器を制御するための制御プログラムを実行するための少なくとも1つのプロセッサ装置を有し、
・データ、特に前記制御プログラムと前記プログラムパラメーターを保存するための少なくとも1つのメモリ装置を有する
前記電子制御装置、
・使用者によるデータの手入力と情報の表示、特にこれらのデータが含む情報の表示のためのユーザーインターフェイス装置であって、ディスプレイ、特にタッチスクリーンディスプレイを有することを特徴とする前記ユーザーインターフェイス装置、及び
・前記実験機器を制御するためのこの少なくとも1つの制御プログラムであって、前記少なくとも1つの制御プログラムが以下のステップ:
(a)前記ディスプレイの第1表示エリアにおける少なくとも1つの質問エリアの表示であって、質問エリアが少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有することを特徴とする前記表示、
(b)前記少なくとも1つの情報エリアに表示されている前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについての情報と前記少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉されている使用者による入力、特に前記少なくとも1つの入力エリアにおけるタッチに基づく前記処理のプログラム制御実行に必要とされるプログラムパラメーターの漸進的質問、
(c)使用者による入力の直後か使用者が幾つかの入力を行った後、特に使用者により必要とされる全ての入力を行った後のどちらかの使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおける、前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値の前記ディスプレイの第2表示エリアの情報エリア内での表示であって、
好ましくはこれらの必要とされるプログラムパラメーターの前記質問の後にこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される1つの値、複数の値、又は全ての値がこの第2表示エリアに表示されることを特徴とする前記表示、
(d)前記質問されたプログラムパラメーターを使用することによる前記処理の実施
を実行するために命令を含むことを特徴とする前記制御プログラム
を有する。
【0010】
本発明の実験機器は、1つ以上の質問エリアを用いて第1表示エリアに入力が行われ、この入力の結果が、関連のプログラムパラメーターの説明を含んで常に第2表示エリアにおいて使用者に示されることに基づく体系化された方式でプログラムパラメーターが入力されるという利点を提供する。結果として、プログラムパラメーターが明文化された状態の既に入力されたデータの概要がいかなるときにも使用者に提供される。
【0011】
前記ディスプレイがタッチスクリーンディスプレイである場合、特に直感的に、且つ、簡便に本実験機器を操作することができる。さらに、タッチスクリーンディスプレイは維持に手がかからず、特に従来の操作者用制御要素、特に機械的可動部品を有するものよりも掃除、除染又は滅菌が簡単である。タッチスクリーンディスプレイは化学物質に対して耐性があるデザインを有することができ、このことは特定の実験環境において非常に有利である。あるいは、前記ディスプレイは入力用に提供されなくてよく、表示機能に限定されてよい。その場合、入力又は選択を行うために使用することができる、マウスポインターのようにディスプレイ上に指示用オブジェクトを動かす指示用装置、例えば、ユーザーインターフェイス装置の操作者用制御要素を使用して入力を行う。ユーザーインターフェイス装置はキーパッドを有してもよい。
【0012】
前記ディスプレイは、そのようなディスプレイの通例で、実質的に長方形の表示エリアを表示することができることが好ましい。好ましくは、第1表示エリアは実質的に長方形である。好ましくは、第2表示エリアは実質的に長方形である。追加の表示エリア、例えば、タイトル・バー、及び/又はベース・バー、及び/又はボーダー・バー及び/又はナビゲーション・バーが提供され得る。好ましくは、第1表示エリアと第2表示エリアは互いに水平方向に隣接して提示される。このことは、ディスプレイサイズの水平方向の長さ(「ディスプレイの幅B」)がディスプレイサイズの縦方向の長さ(「ディスプレイの高さH」)よりも長い場合に特に有利である。このように、特に明らかに互いに重ねて情報と入力パネルを有する質問エリアを提示するために第1表示エリアを使用することができ、その情報を提示するために第2表示エリアを使用することができることが好ましい。こうして、さらにより直感的に、且つ、簡便に本実験機器を制御することができる。第1表示エリアと第2表示エリアを互いに重ねて縦方向に提示することも可能であり、好ましい。特にH>Bであるときにこれが当てはまり得る。第1表示エリアに提示されるリストのスクロール移動は、特にH>Bである場合に水平方向で起こり得る。
【0013】
好ましくは、第1表示エリアの高さH1は第2表示エリアの高さH2と実質的に同じである。これにより、利用可能なディスプレイの高さHの最適な使用が特に可能になる。こうして、さらにより直感的に、且つ、簡便に本実験機器を制御することができる。H1がH2と同じでないことも可能である。
【0014】
好ましくは、特に第1表示エリアと第2表示エリアが互いに水平方向に隣接して表示されるときに第1表示エリアの幅B1は第2表示エリアの幅B2よりも実質的に長い。これにより、第1表示エリアにおいてプログラムパラメーターを簡便に質問することが可能になり、一方、第2表示エリアにおける表示を簡潔及び明確に保つことができ、このことは第2表示エリア内に既に入力されたパラメーターを提示する目的と合致する。こうして、さらにより直感的に、且つ、簡便に本実験機器を制御することができる。
【0015】
情報エリア及び/又は質問エリアはそれぞれ好ましくは実質的に長方形、又は円形、又は異なる形であり得、特に第1表示エリア又は第2表示エリアに由来する基本的細目(elemental detail)であり得る。使用者に対して情報、例えば、質問予定のプログラムパラメーターの説明を表示するために情報エリアが使用される。入力エリアは使用者が特に入力エリアの選択及び/又はこの入力エリア内での入力により入力を行うために使用され、その入力は後に特にその入力からプログラムパラメーターを得るために、又はプログラムパラメーターとしてその入力を直接的に使用するために本実験機器によって処理され、且つ、その入力は特に保存される。入力エリアは値及び/又は細目のコレクション、具体的にはリストとしてのコレクションからの、特に「ポップアップ」リストからの選択、及び/又はテキスト、特に値の入力を提供することができる。
【0016】
特に使用者が必要とする少なくとも1つの、複数の、又は全てのパラメーターが質問されるときに第1表示エリアと第2表示エリアが表示される。したがって、この表示は少なくとも本実験機器の操作中に断続的に起こる。前記ディスプレイが第1表示エリア及び/又は第2表示エリアを表示しないときに使用者によって必要とされる少なくとも1つのパラメーターが質問されることも可能である。ステップ(a)及び(b)において説明されるステップ以外の目的で第1表示エリアと第2表示エリアをそれぞれ使用することもできる。
【0017】
さらに、捕捉されたプログラムパラメーターを使用することによって少なくとも1つの実験試料の処理が自動的に制御され得るように本実験機器を設計することが好ましい。使用者により行われる入力、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターの少なくとも1つの値を使用してさらに必要とされるあらゆるプログラムパラメーターを特に計算によって、又は本実験機器のデータベース内のデータとの比較によって自動的に確認するように本実験機器、特にその制御プログラムを設計することが好ましい。とりわけ、好ましくは処理の実施のために使用されることが具体的に意図されている制御パラメーターは自動的に決定されることが好ましい。これらのステップは本実験機器によって特に自動的に実施されるので、これらの処置が本実験機器の操作を簡便にし、使用者は特にプログラムコードの設計から免れる。本発明の1つの好ましい改良点では、使用者は試料に対して実施される処理に直接的に関連する入力のみを要求する。これらの入力は、しばしば、手作業による処理の実施にも必要であり、且つ、使用者が知っている同一の細目である。対照的に、本実験機器の制御に関連するようなパラメーター、特に制御パラメーターは、好ましくは自動的に規定されるので、具体的に規定される必要が無い。制御パラメーターは処理装置の技術的部分を制御するために具体的に必要とされるパラメーターである。制御パラメーターはプログラムパラメーターであり得、又は技術の実施のためにプログラムパラメーターから得られるパラメーターであり得、特に自動的に決定されるパラメーターであり得る。
【0018】
試料のプログラム制御処理はその処理の手順が実質的に自動的に制御されること、具体的にはコンピュータープログラムの規定に基づき制御されることを意味すると理解されるものとする。とりわけ、プログラム制御処理の場合では少なくとも使用者が必要とするプログラムパラメーターの捕捉の後には基本的に使用者の活動は必要とされない。
【0019】
プログラムパラメーターは、特定の値に対してコンピュータープログラム又はサブルーチンを「設定」するために使用され得る、コールに有効な変数を意味すると理解される。これらの設定は処理の間に考慮され、したがって通常はプログラムの結果に影響もする。プログラムパラメーターは使用者が必要とするプログラムパラメーター、すなわち外部からプログラムに対して設定される影響因子であり得る。使用者が必要とするプログラムパラメーターは処理の実行、特に方法プログラムの実行のために必要とされるという点で独特である。使用者が必要としない他のプログラムパラメーターを使用者が必要とするプログラムパラメーターから得ることができ、又は別の方法で利用可能にすることができる。
【0020】
命令は通常はプログラミング言語の中央要素を表す。そのような言語でのプログラムは主に1つ以上の命令から構成される。命令は、プログラミング言語の構文で定式化されており、且つ、プログラムの実行の際に実行される必要がある1つのルールである。命令が有する必要がある構文状の外観は各プログラミング言語又はその詳述によって規定される。マシンレベルのプログラミングでは命令はしばしばコマンドとも呼ばれる。
【0021】
命令は通常はアサインメント、コントロール・アサインメント(ジャンプ、ループ及び条件付き命令など)及びプロシージャコールである。プログラミング言語に応じてアサーション、デクラレーション、クラス定義、及び関数定義も時には命令である。したがって、制御プログラムにおける命令は慣習的形式をとり得る。
【0022】
プログラムモジュールは、一連の処理ステップとデータ構造を備える1つのソフトウェアの自己充足型機能単位を意味すると通常は理解される。本件では、以下の定義が特に当てはまる。モジュールの内容はしばしば、繰返し実行されることが必要であるデータの再帰性計算又は処理である。モジュールはインターフェイスと実装の分離を介したカプセル化を提供する、すなわち、モジュールのインターフェイスが、入力情報として必要とされるデータ要素、及びそのモジュールによる処理の結果を定義する。実装は実際のプログラムコードを含む。モジュールは関数又はサブルーチンと呼ばれ、例えば、一連の処理ステップを実施し、且つ、結果として呼び出しプログラムにデータを返す。モジュール自体が追加のモジュールを呼ぶことができ、したがって階層状のプログラムコールが可能である。モジュールにおいて規定されるデータ構造と方法は他のモジュールから伝えられ、受け継がれることが可能である。したがって、モジュールは体系化されており、且つ、オブジェクト指向のプログラミングにおける必須の要素である。
【0023】
制御プログラムは、プログラムパラメーター、特に使用者が必要とするプログラムパラメーター及び追加のプログラムパラメーターに基づいて、特にそれらのプログラムパラメーターに基づいて作成された制御パラメーターに基づいて少なくとも1つの試料の所望の自動処理を引き起こす実行可能なコンピュータープログラムを意味すると理解される。制御装置は、それらのプログラムパラメーター、特に使用者が必要とするプログラムパラメーター及び追加のプログラムパラメーターに基づいて、特にそれらのプログラムパラメーターに基づいて作成された制御パラメーターに基づいて処理装置を制御する。
【0024】
方法プログラムは、所定の種類の処理に従い、且つ、使用者によって規定される方法に従う処理の特定の流れを決定する制御プログラムを意味すると理解される。
【0025】
好ましくは、使用者は試料処理の種類を規定することができる。そのような種類の処理を特に
核酸精製、具体的には
・「MagSep Blood gDNA」:具体的にはEppendorf(登録商標)MagSep Blood gDNAキットを使用することによる全血からのゲノムDNAの精製、
・「MagSep Tissue gDNA」:具体的にはEppendorf(登録商標)MagSep Tissue gDNAキットを使用することによる生体組織からのゲノムDNAの精製、
・「MagSep Viral DNA/RNA」:具体的にはEppendorf(登録商標)MagSep Viral DNA/RNAキットを使用することによる無細胞性体液からのウイルス性RNA又はDNAの精製、
及びPCR増幅、具体的には
・「Compose Mastermix」、
・「Normalize Concentrations」、
・「Create Dilution Series」、
・「Setup Reactions」
に使用することができる。
【0026】
好ましくは、本実験機器はプログラムパラメーターの適切なセットを自動的に選択する基準として使用者により選択される処理の種類を取得し、使用者は後に使用者が必要とするプログラムパラメーターをステップ(b)及び(c)において質問する。プログラムパラメーターセットは第1に使用者が必要とするプログラムパラメーターを含むことができ、第2に追加のプログラムパラメーターを含むことができる。これらの追加のプログラムパラメーターは選択された処理の種類に基づいて自動的に規定され得るか、又は使用者が入力した少なくとも1つのプログラムパラメーター又は全てのプログラムパラメーターに基づいて自動的に規定され得る、及び/又はメモリ装置に保存され得る。保存されているパラメーターセットは処理の種類に対して最適化された形式であるか、又は本実験機器によって最適化されることが好ましく、その結果として使用者は好ましいことにそれらのパラメーターの最適化についてのどのような特別の知識も必要としない。処理装置による具体的な処理の実施に必要である制御パラメーターはそれらのプログラムパラメーターセットから得られる。
【0027】
ある種類の処理について、この種類の処理に特異的であるプログラムパラメーターからなるプログラムパラメーターセットが定義されることが好ましい。このプログラムパラメーターセット内のプログラムパラメーターは処理に使用されるアクセサリー、例えば、試料容器、輸送容器、及び/又は使用予定のツールを、及び/又はさらに消耗品を特に定義することができる。
【0028】
プログラムパラメーターセットと処理の種類との間の関連は本実験機器のメモリ装置の中に保存されている。好ましくは、使用者が本実験機器においてそのような関連を保存することができる、及び/又はさらに使用することができるように本実験機器を設計する。この関連は、プログラムパラメーターのより明確で、よく体系化された質問と組み合わされて、本実験機器の操作を特に効率的にする。各プログラムモジュールが特定の用途向けに適合させられている1つ以上のプログラムモジュールを使用してこの関連を確立することが好ましい。
【0029】
好ましくは、本実験機器は、所定のプログラムモジュールが実験試料の処理のための所定の実験作業を制御するために使用されることを特徴とする少なくとも1つのプログラムモジュールであって、
・少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターが関連する選択されたプログラムモジュールを使用することによって前記処理が制御され、
・少なくとも1つのプロセッサ装置が特に少なくとも1つのプログラムモジュールの実行のために使用され、且つ、少なくとも1つのメモリ装置が前記少なくとも1つのプログラムモジュールの保存のために使用され、
・少なくとも1つの制御プログラムが、ステップ(b)において質問される前記プログラムパラメーターが関連する前記選択されたプログラムモジュールに基づいてステップ(a)、(b)、(c)及び(d)を実行するために命令を含むことを特徴とする前記プログラムモジュールを有する。
【0030】
使用者によって規定される方法を作成するためにプログラムモジュールが本実験機器によって使用される場合に本実験機器は特に有利である。本件では、プログラムモジュールは、そのプログラムモジュール及び処理の種類と関連する適切なパラメーターセット内で使用者により必要とされるプログラムパラメーターを質問し、使用者が適切な値を入力する。次に制御プログラムが、特にそのプログラムモジュール及びそのプログラムモジュールと関連するプログラムパラメーター又は前記プログラムパラメーターの値を使用することによって、制御パラメーターによる処理制御用の、方法プログラムとも呼ばれる、使用者により間接的に形作られた実際の制御コードを作成する。
【0031】
好ましくは、本実験機器は、実験試料の処理のための特定の実験作業を制御するために使用される少なくとも1つの方法プログラムを自動的に作成するためにプログラムモジュール及び少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターを使用することができ、その実験機器では
・少なくとも1つのプロセッサ装置が特に少なくとも1つの方法プログラムの実行のために使用され、且つ、少なくとも1つのメモリ装置が少なくとも1つの方法プログラムの保存のために使用され、
・ステップ(b)において質問される前記プログラムパラメーターが、選択されたプログラムモジュールを使用することにより作成された前記方法プログラムと関連し、
・少なくとも1つの制御プログラムが、必要とされるプログラムパラメーターに基づいてこのプログラムモジュールに従って前記方法プログラムを作成するステップ(c2)を前記選択されたプログラムモジュールに基づいて実行するために命令を含み、
・ステップ(d)において前記方法プログラムを実行することによって前記処理が実施される。
【0032】
好ましくは、使用者がユーザーインターフェイスを介してNP>=1の数の所定のプログラムモジュールから所望のプログラムモジュールを選択することができるように制御プログラムが設計されており、その制御プログラムでは各ケースにおいて前記プログラムモジュールと関連する方法プログラムがメモリ装置に保存される、又は保存され得る。したがって、本実験機器の外部で方法プログラムを作成し、後に本実験機器に移転することもできる。直ぐに実行する代わりに使用者が方法プログラムを最初に保存し、変更/追加し、及び/又は後の時点で実行することができる。
【0033】
好ましくは、複数のプログラムパラメーターを質問するために複数の質問エリアがステップ(a)において表示される。
【0034】
好ましくは、連続的に配置された質問エリアを有する質問集の形式で、特に複数の質問エリアが提供されているリストの形式でプログラムパラメーターがステップ(a)において質問され、その場合にその質問集又はリストの少なくとも1つのセクションが第1表示エリアに表示される。そのようなデータ入力は特に明確である。
【0035】
好ましくは、質問集又はリストは、使用者が触れた入力エリアを有する質問エリアが他の表示エリアと比べて第1の種類の画像の強調と共に表示されるような形式である。例として、この質問エリアは他の質問エリアよりも明るい形状で、又は異なる色で提示され得る。このことにより、本実験機器の使用がさらにより簡便になる。
【0036】
好ましくは、質問集又はリストは、使用者がプログラムパラメーターの値を未だに入力していない質問エリアが他の質問エリアと比べて第2の種類の画像の強調と共に、例えば、異なる色で表示されるような形式である。このことにより、本実験機器の使用がさらにより簡便になる。
【0037】
好ましくは、質問集又はリストは、使用者が少なくとも1つのプログラムパラメーターの少なくとも1つの値についての全ての入力を既に行った質問エリアが他の質問エリアと比べて第3の種類の画像の強調と共に、例えば、異なる色で表示されるような形式である。このことにより、本実験機器の使用がさらにより簡便になる。
【0038】
好ましくは、本実験機器及び/又はその制御プログラムは、第1表示エリアに前記リストの異なるセクションを表示するために使用者が特に第1表示エリアに触れることによってそのリストを動かすことができ、特に身振りによってそのリストをスクロールすることができるような形態である。
【0039】
好ましくは、必要とされるプログラムパラメーターがステップ(b)においてNTの数の質問エリアを介して確認される。好ましくは、各質問エリアは各ケースにおいて1とNTを含むそれらの間の関連質問番号Nを有し、この質問番号が質問エリア内又は質問エリアの隣に表示される。このことにより、本実験機器の使用がさらにより簡便になる。
【0040】
好ましくは、プログラムパラメーターについて使用者が入力する値がステップ(c)において特に自動的に作製された「スクラッチリスト」と呼ばれるテキスト表示及び/又は画像表示としてこれらのプログラムパラメーターについての情報と共に表示される。このことが明確性を高め、本実験機器の使用がさらにより簡便になる。好ましくは、全てのプログラムパラメーターの質問の後にこのスクラッチリストが、各ケースにおいて好ましくは説明と共に使用者によって表された全てのプログラムパラメーターを表示し、好ましくは追加のプログラムパラメーターを表示し、特にこれらのプログラムパラメーターの「初期値」を表示する。
【0041】
好ましくは、プログラムパラメーターについて使用者が入力する少なくとも1つの値のスクラッチリストに該当する質問番号Nが表示される。このことが明確性を高め、本実験機器の使用がさらにより簡便になる。
【0042】
好ましくは、少なくとも1つのプログラムパラメーター、特に使用者が必要とするプログラムパラメーターは、処理装置による実験試料の処理に適切である以下のセットの物理的変数:試料数、希釈倍率、標的体積、試料容器ホルダ又はマイクロタイタープレート中の前記試料の位置、試料温度、時間及び/又は時間差、温度又は温度差、このようなパラメーターの変化速度等から選択される。
【0043】
好ましくは、制御プログラムは以下のステップ:
使用者により入力されたプログラムパラメーターを使用することによる方法プログラムの作成、及び使用者によって編集され得ることを特徴とするその方法プログラムのメモリ装置内での保存
を実行するために命令も含む。このことが本実験機器の使用をさらにより適応性のあるものにする。
【0044】
本発明は、実験機器を用いる前記実験機器中の制御プログラムによる少なくとも1つの実験試料のプログラム制御処理のための方法であって、前記実験機器が少なくとも以下の構成要素:
・少なくとも部分的に使用者によって選択される複数のプログラムパラメーターを使用することによって前記処理が自動的に制御されることを特徴とする、前記少なくとも1つの実験試料の前記自動処理のための処理装置、
・電子制御装置であって、
・データ処理のための、特に前記実験機器を制御するための制御プログラムを実行するためのプロセッサ装置を有し、且つ
・データ、特に前記制御プログラムと前記プログラムパラメーターを保存するための少なくとも1つのメモリ装置を有する
前記電子制御装置、
・使用者によるデータの手入力と情報の表示、特にこれらのデータが含む情報の表示のためのユーザーインターフェイス装置であって、ディスプレイ、特にタッチスクリーンディスプレイを有することを特徴とする前記ユーザーインターフェイス装置、及び
・前記実験機器を制御し、且つ、以下のステップ:
(a)前記ディスプレイの第1表示エリアにおける少なくとも1つの質問エリアの表示であって、質問エリアが少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有することを特徴とする前記表示、
(b)前記少なくとも1つの情報エリアに表示されている前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについての情報と前記少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉されている使用者による入力、特に前記少なくとも1つの入力エリアにおけるタッチに基づく前記処理の実行に必要とされるプログラムパラメーターの漸進的質問、
(c)使用者による入力の直後か使用者が幾つかの入力を行った後、特に使用者により必要とされる全ての入力を行った後のどちらかの使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおける、前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値の前記ディスプレイの第2表示エリアの情報エリア内での表示であって、
好ましくはこれらの必要とされるプログラムパラメーターの前記質問の後にこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される1つの値、複数の値、又は全ての値がこの第2表示エリアに表示され、これにより少なくとも前記パラメーター質問の後にその選択の結果が使用者に伝えられることを特徴とする前記表示、
(d)前記質問されたプログラムパラメーターを使用することによる前記処理の実施
を有する前記方法を実施するためのこの少なくとも1つの制御プログラム
を有することを特徴とする前記方法にも関連する。
【0045】
少なくとも1つの実験試料のプログラム制御処理のための本発明の方法のさらなる特徴を本発明の実験機器の説明の中に見出すことができる。
【0046】
本発明は、本実験機器に対して以下のステップ:
(a)タッチスクリーンディスプレイの第1表示エリアにおける少なくとも1つの質問エリアの表示であって、質問エリアが少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有することを特徴とする前記表示、
(b)前記少なくとも1つの情報エリアに表示されている前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについての情報と前記少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉されている使用者による入力、特に前記少なくとも1つの入力エリアにおけるタッチに基づく前記処理の実行に必要とされるプログラムパラメーターの漸進的質問、
(c)使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおける、前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値の前記ディスプレイの第2表示エリアの情報エリア内での表示であって、
好ましくはこれらの必要とされるプログラムパラメーターの前記質問の後にこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される1つの値、複数の値、又は全ての値がこの第2表示エリアに表示されることを特徴とする前記表示、
(d)前記質問されたプログラムパラメーターを使用することによる前記処理の実施
を実行するために命令を含む本発明の実験機器用の制御プログラムを有する記憶媒体、特に光学式、磁気式、又は電子式データ記憶媒体にも関連する。
【0047】
本発明は、実験試料の処理用の実験作業を実施するための本発明の実験機器又は本発明の方法の使用であって、この実験作業が以下の作業:
核酸精製、具体的には
・具体的にはEppendorf(登録商標)MagSep Blood gDNAキットを使用することによる全血からのゲノムDNAの精製;この種の処理は「MagSep Blood gDNA」とも呼ばれる、
・具体的にはEppendorf(登録商標)MagSep Tissue gDNAキットを使用することによる生体組織からのゲノムDNAの精製;この種の処理は「MagSep Tissue gDNA」とも呼ばれる、
・具体的にはEppendorf(登録商標)MagSep Viral DNA/RNAキットを使用することによる無細胞性体液からのウイルス性RNA又はDNAの精製;この種の処理は「MagSep Viral DNA/RNA」とも呼ばれる、
及びPCR増幅、具体的には
・プレミックス又は個々の構成成分、具体的には緩衝液、ポリメラーゼ、dNTP、プライマー、マーカーなどからの1つ以上のPCTマスターミックスの作製;本件では、具体的には必要な各構成成分の体積が前記制御装置によって、具体的には「Compose Mastermix」処理に関連する前記プログラムモジュールによって計算される;この種の処理は「Compose Mastermix」とも呼ばれる、
・全ての試料において同じ濃度にするための少なくとも2つのDNA/RNA試料の希釈;前記所望の濃度は例えば使用者により手入力され得るか、又はファイルからインポートされ得る;この種の処理は「Normalize Concentrations」とも呼ばれる、
・定量的PCRのために使用され得る校正曲線を作成するための既知の濃度を有する1つ以上のDNA/RNA標準試料の連続的希釈;この種の処理は「Create Dilution Series」とも呼ばれる、
・複数又は多数の試料が1種類以上のマスターミックスと混合されている反応過程の実行;任意により、そのようにしてDNA/RNAの複製のための反応を行うことも可能である;この種の処理は「Setup Reactions」とも呼ばれる、
を含む群から特に選択されることを特徴とする前記使用にも関連する。
【0048】
追加の種類の処理を実施するために使用することができるように本実験機器を改変することができる。この改変は、その改変に必要とされるファイル及び/又はプログラム若しくはプログラム部分、特に処理の種類と関連するプログラムモジュールが後に本実験機器、特にそのメモリ装置に移転されるという事実に基づいて達成され得る。
【0049】
実験試料は実験で処理され得る試料である。実験試料という用語の代わりに本発明の明細書は「試料」という用語も使用する。その試料は液体であり得る。その試料は液体であり得、ゲル状であり得、粉末状であり得、又は固形であり得、又はこの種の相を有し得る。その試料はそのような相の混合物、特に液体混合物、溶液、懸濁液、例えば細胞懸濁液、乳液又は分散液であり得る。溶液は少なくとも2つの物質の均一な混合物である。液体試料は、通常は生物学実験、化学実験、医学実験において取り扱われる試料であり得る。液体試料は分析試料、試薬、培地、緩衝液などであり得る。溶液は1種類以上の溶解した固体物質、液体物質又は気体物質(溶質)を有し、好ましくはまた、溶液が占めるよりも大きな割合の体積を、又は最大の体積を占める液体溶媒を有する。その溶媒自体が溶液であってよい。
【0050】
実験試料の処理は以下に言及される以下の手順のうちの1つ以上を特に同時的又は連続的に伴い得る:
−重力、及び/又は本実験機器によってもたらされる力の作用下での実験試料の輸送、特に輸送装置による実験試料の輸送、
−試料の非接触性(非侵襲性)物理処理、特に熱処理、特に加熱及び/又は冷却、特に試料の調節性温度制御;又は試料の凍結若しくは融解、又は試料における相変化の他の熱促進、例えば、蒸発、濃縮など;試料の磁気処理;試料の光学処理、特に試料の放射線、特に光、特に可視光、赤外光又はUV光への曝露、又はこの試料に由来するそのような放射線、特に蛍光の検出;磁性部分を有する試料の磁気処理、特に試料の液体相からの磁性部分、特に「磁気ビーズ」の磁気的分離;試料の運動、すなわち各ケースにおいて、例えば、試料の混合又は試料内での部分の分離を目的とした、又は試料からの磁性部分の輸送又は試料への磁性部分の輸送のための試料に対する機械的処理、特に振盪、回転、振動、震動、遠心分離、音波処理、特に超音波を用いる音波処理の実施、
−試料の侵襲性物理処理、すなわち試料に対する機械的処理の実施:撹拌ツール、例えば撹拌ロッド又は磁気フレア(magnetic flea)の試料への導入と撹拌、音波処理又は超音波処理用のソノード(sonode)の導入、輸送用具、特に輸送容器、例えば、ディスペンサーチップ又はピペットチップ、又はカニューレ又はホースの試料への導入;他の補助器具の試料への添加、
−試料の化学、生化学又は生体医学処理:化学物質(例えば反応物質、試薬、溶媒、溶質)、生化学物質(例えば生化学的巨大分子、例えば、DNA成分、DNA成分;医薬品)、又は生体医学物質(血液、血清、細胞培地)の添加、
−試料の貯蔵、特にプログラム制御下で定義された期間の、特にある特定の物理条件下での、例えば、ある特定の温度、(複数の)温度又は温度変化、特に反復性温度変化、例えば、循環的及び/又は周期的反復性温度変化での、及び/又は外界圧力設定での、例えば、過剰圧力又は過小圧力の適用、特に真空での、及び/又は所定の外界雰囲気設定での、例えば、不活性ガス又は特定の湿度での、ある特定の放射線条件下での、例えば、可視光から遮蔽された、暗中での、又は所定の照射下での試料の貯蔵、
−試料の測定又は分析、特に試料の非侵襲性処理及び/又は侵襲性処理による分析、特に試料の少なくとも1つ以上の化学、物理的、生化学的及び/又は医学的特性を測定するための試料の測定又は分析;特に細胞計測器による細胞の計数、
−特に試料の非侵襲性処理及び/又は侵襲性処理による試料の処理、特に試料の少なくとも1つの特性の変化。
【0051】
この処理は特にプログラム制御下で、少なくとも1つのプログラムパラメーターを使用することによって起こる。
【0052】
この処理は特に少なくとも1種類の制御パラメーターに基づいて起こり、その制御パラメーターは処理装置による実験試料の処理を決定する。制御パラメーターは期間、回数、特定の試料体積及び/又は計量体積、特定の試料温度などを規定することができる。制御パラメーターは特定の輸送ヘッドの自動使用、特定の種類の輸送容器の自動使用、特定の種類の試料容器の自動使用、1つ以上の個々の試料の自動使用、又は作業エリアにおけるこれらの構成要素の特定の位置の自動使用に関連し得る。制御パラメーターは個々の試料の処理又は複数又は多数の試料の処理に関連し得る。
【0053】
好ましくは、制御パラメーターは少なくとも1つのプログラムパラメーターに基づいて本実験機器によって自動的に選択され、特に使用者により選択されたプログラムパラメーターに基づいて自動的に選択される。このことにより、使用者が全ての制御パラメーターを個々に決定する必要が無いという利点が使用者に提供される。使用者はその機械のプログラミングについてのどのような知識も持つ必要が無い。代わりに、使用者が入力するプログラムパラメーターによって処理に必要とされる制御パラメーターが選択される。このことが本実験機器の使用を特に簡便にする。
【0054】
制御パラメーターはプログラムパラメーターに対応することもあり得る。
【0055】
試料の輸送は試料容器から輸送容器への、及び/又は輸送容器から試料容器又は他の行き先への輸送であり得る。この輸送は特にプログラム制御下で、少なくとも1つのプログラムパラメーターを使用することによって起こる。
【0056】
例として、輸送容器は可動性ピストンと注入口/排出口を有するディスペンサー容器であり得る。ピストンはディスペンサー容器中に過小圧力又は過剰圧力を作り出し、そうして試料を容器に吸い込む、又は試料を再び分注する。この手順はディスプレーサの原理に従う。すなわち、ピストンが動かしている、試料から以前に取り込まれた体積に起因する力によって、移動予定の通常は液体であり、したがって圧縮できない試料が動かされる。ピストンは通常は本実験機器に付随する移動装置によって動かされる、特にプログラム制御下で動かされる。
【0057】
輸送容器はピペットチップでもよい。ピペットチップは注入口/排出口と第2開口部を有する。第2開口部は吸入装置と結合しており、その結果として過小圧力により試料容器から輸送容器へと液体試料を吸う(ピペットする)ことができる。例えば、吸入領域に空気を通すことによって、重力によって、及び/又はピペットチップの前記第2開口部を介して作り出された過剰圧力によって試料が分注される。
【0058】
輸送容器は好ましくは部分的又は完全にプラスチックから作られる。輸送容器は好ましくは、典型的には試料の1つの処理、又は少数の処理ステップのためにだけ使用される消耗品である。あるいは、輸送容器は部分的又は完全に別の材料を含んでよい。
【0059】
試料の輸送は開始位置から目的位置への試料の輸送であり得る。開始位置は試料が第1試料容器内に配置されているときの位置であり得、この試料の目的位置はその試料が移送される第2試料容器内のその試料の位置であり得る。本件では、この種の輸送は試料移送又は移送とも呼ばれる。実際には試料移送は通常は貯蔵容器、例えば、試料が貯蔵された貯蔵容器、及び/又は大量の試料を含み得る貯蔵容器から、例えば、試料がさらに処理される第2試料容器まで試料を移送するために実施される。この輸送は特にプログラム制御下で、少なくとも1つのプログラムパラメーターを使用することによって起こる。
【0060】
輸送容器は好ましくは本実験機器の輸送装置に接続される、又は接続可能である。
【0061】
試料容器は単一の試料のみを含む単一試料用容器であり得、又は互いに接続する複数の単一試料用容器を含む多重式容器であり得る。
【0062】
単一試料用容器は開放性容器又は封止可能容器であり得る。封止可能容器の場合ではカバー要素、特に閉止キャップが存在し得る。カバー要素は、例えば、蝶番式の蓋又は蝶番式の閉止キャップとしてしっかりと容器に接続され得るか、又は分離した構成要素として使用され得る。
【0063】
好ましくは、多重式容器は互いに対して固定した位置に配置された複数の単一試料用容器、特に格子状パターンの交差点に従って配列された複数の単一試料用容器を有する。これにより、それらの位置の自動化作動と特に試料の個々のアドレス指定が簡単になる。多重式容器はプレート要素の形状であり得、そのプレート要素では単一試料用容器がプレート様の配置を形成するように接続している。それらの単一試料用容器はプレート内でくぼみの形状であり得るか、又はウェブ要素を介して互いに接続され得る。そのプレート要素は単一試料用容器が保持されているフレーム要素を有し得る。構成要素のこれらの接続は一体型接続、すなわち凝集性接続であり得、及び/又は一般的な射出成型加工により作製される接続であり得、又は圧力バメ(force fit)及び/若しくは成形バメ(form fit)により作製され得る。プレート要素は特にマイクロタイタープレートであり得る。
【0064】
多重式容器は複数(2から10まで)の単一試料用容器を有し得る。それらの容器は多数の(10を超える)、典型的には12個、16個、24個、32個、48個、64個、96個、384個、1536個の単一試料用容器を有してもよい。多重式容器は特にマイクロタイタープレートであり得る。マイクロタイタープレートは1つ以上の工業規格、特に工業規格ANSI/SBS1−2004、ANSI/SBS2−2004、ANSI/SBS3−2004、ANSI/SBS4−2004に基づいて設計され得る。
【0065】
輸送容器又は試料容器によって保持され得る最大試料体積は典型的には0.01mlと100mlの間、特に、選択される輸送容器又は試料容器の種類に応じて10〜100μlの間、100〜500μlの間、0.5〜5mlの間、5〜25mlの間、25〜50mlの間、50〜100mlの間である。
【0066】
試料容器はその試料容器又はその試料容器の内容物についての情報を有し得る情報エリアを有し得る。情報エリアはコード化情報、例えば、バーコード又はQRコード、又はRFIDチップ、又は異なる方法でコード化された情報を有し得る。その情報は試料及び/又は試料容器の識別に関する情報を有し得る。本実験機器はこの情報を読み、好ましくは制御装置にとってその情報を利用可能にするために情報読み取り装置を有し得る。
【0067】
試料容器は好ましくは部分的又は完全にプラスチックから作られる。試料容器は好ましくは、典型的には試料の1つの処理、又は少数の処理ステップのためにだけ使用される消耗品である。あるいは、試料容器は部分的又は完全に別の材料を含んでよい。
【0068】
試料容器は好ましくは本実験機器の輸送装置を使用して輸送され得る。
【0069】
多数の試料を連続的及び/又は並行的に処理するように本実験機器を設計することが好ましい。とりわけ、多数の試料容器、特に単一試料用容器及び/又は多重式容器をプログラム制御式に処理する、特に輸送する、空ける、及び/又は満たすように本実験機器を設計することが好ましい。
【0070】
好ましくは、本実験機器は少なくとも1個の試料容器のための少なくとも1つの保持器具、特に複数の単一試料用容器を保持するための「試料容器ラック」と呼ばれる保持フレームを有する。本実験機器の作業エリア内で、又は異なる作業エリア間で移動することができるように保持器具を輸送可能であるように設計することが好ましい。保持器具はその保持器具の所定の位置で複数又は多数の単一試料用容器を保持することができる。これにより、試料容器又は試料の個々のプログラム制御式作動又はアドレス指定が簡単になる。
【0071】
ワークステーションは1つ以上の構成要素をこの作業位置に位置調整する、及び/又は方向付けるための補助器具を有し得る。これらの構成要素は、例えば、1つの、複数の、又は多数の単一試料用容器であり得、又は1つ以上の多重式容器を有してよく、又は試料容器用の保持器具を有してよい。これらの補助器具は、圧力バメ及び/又は成形バメによりこれらの構成要素をワークステーションに接続するために使用され得る。例として、ワークステーションはワークステーション内の所定の位置に補助器具としての作業面内のくぼみを含み、相補的補助器具として作業面内で成形バメにより前記構成要素上のでっぱりを保持し、そうして位置調整及び/又は方向付けを引き起こすことができる。
【0072】
第1保持器具を所定の方式で第2保持器具又はワークステーション上に配置するために、特に第2保持器具又はワークステーション内で第1保持器具を位置調整及び/又は方向付けするために1つ以上のアダプター器具を提供することができる。
【0073】
本実験機器は、周囲に対して開放的であっても、収容器具によって部分的又は完全にさえぎられていてもよい少なくとも1つの作業エリアを有することが好ましい。使用者が収容器具によってさえぎられている作業エリアにおいてプログラム制御下で起きている手順を観察することを可能にするために収容器具が部分的に透明であることが好ましい。
【0074】
好ましくは、本実験機器はちょうど1つの作業エリアを有する。そのような実験機器は小型であり、且つ、特に実験台上での使用に適切であり得、その場合に本実験機器は特にベンチ装置とも呼ばれる。ベンチは例えば化学実験、生化学実験又は生体医学実験内の作業台であり得る。本実験機器はそのような実験内での構成に合うように設計されてもよい。作業エリアを有する実験機器はそのような実験内での独立操作装置の形態であってもよく、又は複合装置に組み込まれてよい。
【0075】
本実験機器は連係型実験機器の形態であってもよく、その場合に作業エリア間で1つ、複数又は多数の試料を連続的及び/又は並行的に輸送するために輸送機器を使用することができるように複数の作業エリアが隣接して配置される。通常は多数の試料の並行的及び/又は連続的処理に関わる特定の実験作業が実施されるように連係型実験機器内の作業エリアを設計することが好ましい。各作業エリアのこの専門化によって、その連係型実験機器内で高い作業処理能力が達成される。そのような特定の作業を実施するため、各作業エリアは少なくとも1つの試料に対してたった1種類の処理の、又はたった数種類の処理の、例えば2〜10種類の処理の実施を伴うことができる。輸送機器は試料又は試料容器のプログラム制御移動のためのレールシステム及び/又はロボット装置を有し得る。
【0076】
実験機器はLIMSに接続され得るか、又は接続可能であり得る。LIMSは実験情報管理システムを表す。LIMSは化学、物理学、生物学、医学の自動的実験又は半自動的実験におけるデータ処理に関連するソフトウェアシステムであることが知られている。そのようなデータは試料に対する測定から得られたものであり得、及び/又はデータ処理の制御に関連し得る。LIMSは好ましくは測定値の獲得と測定値の評価のために使用される。LIMSは実験における作業処理能力を高めるために、及び/又は実験試料の処理効率を最適化するために使用される。
【0077】
作業エリアは好ましくは実質的に平面的で、好ましくは水平方向に配置された作業面を有し得る。作業エリアは複数の所定のワークステーションを有し得る。ワークステーションは作業エリアのセクションと関連し得る。この関連は恒久的であってよいし、又はプログラム制御下で決定され得る。ワークステーションは恒久的に構成されていても、様々なアクセサリーによって適合可能であってもよい。
【0078】
ワークステーションの位置及び/又はワークステーションのアクセサリー付加状況は本実験機器、特にメモリ装置において1つの情報として保存され得る。作業エリア内の特定の位置に配置され、且つ、これらのワークステーションのうちの1つ以上で処理されることが意図されている試料のプログラム制御処理を可能にするためにこの情報を使用することができる。
【0079】
物質を貯蔵するため、例えば、試料、洗浄剤、廃棄物を貯蔵するためにワークステーションを使用することができる。
【0080】
ツール要素を保管するためにワークステーションを使用することができる。
【0081】
例として、ツール要素は流体移送のための輸送ヘッド、特にピペッティングヘッドであり得、そのピペッティングヘッドは一のピペットチップをそのピペッティングヘッドに接続するための接続部(シングルチャンネルピペッティングヘッド)又は複数のピペットチップをそのピペッティングヘッドに接続するための接続部(マルチチャンネルピペッティングヘッド)を有し得る。ピペッティングヘッドに接続されている少なくとも1つの気密性でガス密性のチャンネルは、少なくとも1本のピペットチップが接続部に接続されているときにその少なくとも1本のピペットチップに流体を吸い込むために使用され得る。このピペット操作は実験機器において特にプログラム制御下で、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターの影響下で起こる。輸送ヘッドは、分注チップのピストンを動かすための少なくとも1つの移動装置を有する分注ヘッドであってもよい。実験機器では、特にプログラム制御下で、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターの影響下で移動装置が動かされる。液体を計量するために、特に様々なエリアで計量するために輸送ヘッドを使用することができ、この輸送ヘッドに特異的な体積範囲、例として、1〜50μL又は20〜300μL、又は50〜1000μL(「l」と「L」はそれぞれリットルの略である)から選択され得る体積を有する液体試料を計量するために輸送ヘッドを設計することができる。輸送ヘッドは中でたった1つの試料が輸送されるシングルチャンネルヘッドの形状であっても、中で複数の試料が並行して処理又は輸送される多重チャンネル、特に8チャンネル又は12チャンネルの形状であってもよい。好ましくは、各種の輸送ヘッドに基づいて、特に適切な体積範囲に応じて使用され得る特定の輸送容器が提供される。
【0082】
例として、ツール要素は輸送物品のための輸送ヘッド、例えば、物品を運搬するため、及び/又は把持するための運搬ツール及び/又は把持ツールであり得る。運搬ツールは、例えば、物品が圧力バメ及び/又は成形バメ及び/又は磁気作用によってその運搬ツールに接続されるため、その運搬ツール上に物品を取り外し可能なように取り付けるための取り付け部を有し得る。これは作業面内又は複数の作業エリア間及び/又は複数の作業面間で可能である。
【0083】
ツール要素は、例えば、少なくとも1つの試料に対する熱処理、音波処理、光学処理、及び/又は機械的処理を実施するための処理ユニットでもあり得る。
【0084】
実験試料に対する処理を実施するためにワークステーションを使用することができる。この目的のために処理ユニットをワークステーション上に恒久的に設置してよく、又はワークステーション上に配置可能であり得る。この処理は特にプログラム制御下で、少なくとも1つのプログラムパラメーターを使用して起こる。
【0085】
少なくとも1つの試料を同時的又は連続的に、特に規定された期間内に特定の温度に調節するため、及び/又は特定の速度でこれらの温度を変化させるために熱処理用の処理ユニットは温度制御装置を有し得る。この熱処理は特にプログラム制御下で、少なくとも1つのプログラムパラメーターを使用して起こる。これにより、例えば、1つ、複数、又は多数のPCR試料に対してPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を実施することが可能になる。
【0086】
実験試料を測定するための処理ユニットは測定機器を有し得る。測定機器は少なくとも1つの試料の少なくとも1種類の物理的特性と合致する少なくとも1種類の物理的パラメーターを測定する検出器を有し得る。物理的パラメーターは、特に波長に基づく、すなわち特定のスペクトルの捕捉による放射線の強度、特に試料からの放射線放出の強度、例えば、刺激されて蛍光を発する試料からの蛍光の強度に相当し得る。物理的パラメーターは試料を透過した放射線の強度、試料によって散乱した放射線の強度、又は試料によって反射した放射線の強度に相当し得る。物理的パラメーターは試料温度、又は試料の電気的特性に関連し得る。試料の電気的特性は、例えば、容量測定によって決定可能であり得るか、又は抵抗測定によって決定可能であり得る。測定機器は少なくとも1つのプログラムパラメーターによって制御可能であり得、測定機器の測定値は特に本実験機器の制御装置を介して捕捉可能であり得、且つ、特にメモリ装置内で測定データとして保存可能であり得、及び/又はプロセッサ装置により処理可能であり得る。
【0087】
処理ユニットは少なくとも1つの試料を処理するための、特に少なくとも1つの試料に対する処理を実施するための処理装置を有し得る。試料における(生)化学反応又は生物学的状態変化又は生体医学的状態変化、例えば滅菌を実現するために試料の機械的処理、例えば、運動、例えば、振盪又は震動、熱処理、又は放射線処理のために処理装置を使用することができる。この処理は特にプログラム制御下で、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターを使用することによって起こる。
【0088】
本実験機器は少なくとも1つの可動性ヘッド部を輸送するための輸送装置を有し得る。ヘッド部は少なくとも1つの試料を輸送するための、及び/又は少なくとも1つのツール要素を輸送するための輸送ヘッドであり得る。ヘッド部は少なくとも1個の輸送容器を輸送装置に接続するための接続部を有し得る。
【0089】
輸送装置は、ヘッド部及び/又は接続部を動かし、特に、適切な場合は少なくとも1個の輸送容器をプログラム制御下で動かすために、特に前記制御装置、又は別の制御装置によって規定される移動順序に従って動かすために、ロボット装置ともよばれるプログラム制御移動装置を有してもよい。このヘッド部はそのヘッド部上に提供されるこの接続部を有し得る。さらに、このヘッド部は、ツール要素をそのヘッド部に接続することを目的としたそのヘッド部上に提供されるその接続部を有し得る。
【0090】
ロボット装置は可動性構成要素、例えば、可動性ヘッド部、特に保持ツール又は把持ツール、又は別の可動性ツール要素、例えば、可動性処理ユニットのプログラム制御移動を可能にするために1つ以上の駆動装置、例えば、電気モーターを有し得る。ロボット装置は、作業エリア内の様々な位置、好ましくは自由に選択可能な位置の間でのヘッド部の輸送を可能にし、特に試料の輸送を可能にする一要素移動アーム又は多要素移動アームを有し得る。さらに、ロボット装置はレールシステムを有してよく、その場合にそのレールシステムの配置によって規定される位置までこのレールシステムによって動かされ得る可動性スライド要素又はロール要素の上にヘッド部が取り付けられる。ロボット装置の動きは好ましくはプログラム制御されており、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターによって制御されている。
【0091】
本実験機器は、試料及び/又は試料容器並びに/又はこの試料及び/若しくはこの試料容器に対する処理命令についての情報を読み、好ましくは本実験機器の制御装置にとってその情報を利用可能にするための情報読み取り装置を有し得る。
【0092】
本実験機器は好ましくは少なくとも1つの計量装置を有する。この計量装置は好ましくは輸送予定の所望の試料体積を設定することを目的として少なくとも1つの所望の試料体積を計量するために使用され得る。例として、計量装置は、試料容器から輸送容器への、及び/又は輸送容器から試料容器又は別の行き先への所定の体積の試料の輸送を促進するように設計されている制御装置に基づいて形成され得る。例として、この輸送は、それぞれ好ましくは輸送ヘッド内に組み込まれているピペッティング装置内の吸入装置の作動又は分注装置内の移動装置の作動によって達成される。この作動は好ましくはプログラム制御下で、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターの制御下で起こる。
【0093】
本実験機器は試料の時間依存的処理を可能にするために好ましくは少なくとも1つのタイマー装置及び/又は好ましくはタイムキーパー装置を有する。時間依存的処理は好ましくはプログラム制御下で、特に少なくとも1つのプログラムパラメーターの制御下で起こる。
【0094】
本発明の実験機器の1つの好ましい実施形態では前記実験機器はプログラム制御処理において使用される以下に言及される構成要素のうちの1つ以上を自動的に選択する基準として、使用者により選択される処理の種類と使用者により入力されるプログラムパラメーターを取り込むように設計される:
−少なくとも1つの適切な試料容器、特に、共に処理されることが意図されている、例えば、混合されることが意図されている複数の試料、又は化学反応又は生化学的相互作用、生物学的相互作用又は生体医学的相互作用が起こることが意図されている複数の試料を保持するのに適切な試料容器、
−少なくとも1つの適切な輸送容器、特にピペットチップ及び/又はディスペンサーチップ、
−少なくとも1つの適切な輸送ヘッドであって、好ましくは自動的に選択された輸送容器を接続することができる輸送ヘッド、
−所望の処理を実施するために使用される少なくとも1つの適切なツール要素。
【0095】
好ましくは、本発明の実験機器はプログラム制御処理において使用される以下に言及される制御パラメーターのうちの1つ以上を自動的に選択する基準として、使用者により選択される処理の種類と使用者により入力されるプログラムパラメーターを取り込むように設計される:
−処理の特定の作業ステップが実施される少なくとも1つの期間、
−少なくとも1つの試料体積及び/又は計量体積、
−少なくとも1つの作業面の少なくとも1つの作業位置、
−試料の所望の処理のために本実験機器のロボット装置において必要とされる移動順序を規定するための移動パラメーター。
【0096】
言及した構成要素及び/又は制御パラメーターの自動選択であって、少なくとも1つのプログラムパラメーターに基づく、特に使用者により選択される少なくとも1つのプログラムパラメーターに基づく自動選択によって、使用者自身がそれらの構成要素と制御パラメーターの選択を個々に決定する必要が無いという利点が使用者に提供される。代わりに、使用者が入力するプログラムパラメーターによって処理に必要とされる制御パラメーターが選択される。使用者はその機械のプログラミングについてのどのような知識も持つ必要が無い。このことが本実験機器の使用を特に簡便にする。
【0097】
言及した構成要素及び/又は制御パラメーターの自動選択であって、少なくとも1つのプログラムパラメーターに基づく自動選択によって、正しいピペッティングヘッドが自動的に把持されること、又はより一般的には適切なツール、例えば、輸送ヘッド及び/又はツールヘッドが使用されることを使用者情報(例えば、希釈予定の20試料)が意味するという効果を実現することが可能になる。このことは、使用者はどれが最適なツールであるのか決定する必要は無く、むしろ使用者は何が使用者の所望の処理であるのか、例えば、所望の方法による核酸精製を決定するだけであることを意味する。したがって、使用者、例えば、生物学者、生物学技師、医療技師は、トレーニングによって容易、且つ、速やかに行うことができる決定を行う必要があるだけであり、使用者は抽象的なプログラミング言語に精通する必要は無く、又は比較的に長い計算を引き受ける必要は無い。
【0098】
本実験機器の処理装置は好ましくは少なくとも1つの作業エリア、好ましくは少なくとも1つの輸送装置、好ましくは少なくとも1つの処理ユニットを有する。
【0099】
好ましくは、本実験機器は使用者により入力されるプログラムパラメーターを恒久的に保存し、それらのパラメーターを後に自動的に、又は使用者が開始したときにリロードする特性を有する。そこで、使用者はある種類の試料処理を完全に定義するためにパラメーターの個々の例を変更することができる。これにより使用者の利便性が高まり、エラーを起こしにくくなる。このことは、実験機器が特に効率的に再帰性処理に使用されるという背景に対して有利である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
本発明の実験機器と本発明の方法のさらに好ましい改良点は図面及びそれらの説明と併せて例となる実施形態の以下に続く説明の中に見出され得る。例となる実施形態の中の同一の構成要素には別途説明されない限り、又は文脈から明らかである限り同じ参照記号が基本的に表示される。
図1】本発明の実験機器の例となる実施形態を模式的に示す図である。
図2】第1表示エリアと第2表示エリアを有する図1の本発明の実験機器のタッチスクリーンディスプレイを示す図である。
図3a】本発明の方法を実行するための本発明の実験機器における例となる実施形態に基づくプログラムパラメーター、制御プログラム及び制御パラメーターの使用を模式的に示す図である。
図3b】例となる実施形態に基づくプログラムパラメーター、制御プログラム、プログラムモジュール及び制御パラメーターの使用を模式的に示す図である。
図3c】例となる実施形態に基づくプログラムパラメーター、制御プログラム、プログラムモジュール、方法プログラム及び制御パラメーターの使用を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図1は本実験機器1を示す。本実験機器1は液体実験試料10のプログラム制御自動処理に使用される。本実験機器は実験台設備の形態である。本実験機器は1種類以上の処理に応じて処理を実施するための処理装置2を有する。
【0102】
本実験機器1は電子制御装置3も有する。この電子制御装置はデータ処理のためのプロセッサ装置4を含み、このデータ処理は本実験機器と処理を制御するための制御プログラムの実行を伴う。電子制御装置3はデータ、特に制御プログラム7とプログラムパラメーター8を保存するための少なくとも1つのメモリ装置5も含む。プログラムパラメーター8は所望の処理を実施するために使用者が必要とするプログラムパラメーター9と追加のプログラムパラメーター11を含み、それらのプログラムパラメーターは、例えば、本実験機器で計算され得るか、又は本実験機器中に既に保存されており、又はこの実験機器に移転される。
【0103】
本実験機器はベースプレート、収容フレーム及び収容器具を含むベース部分12を有する。
【0104】
本発明の説明の文脈の中で、「水平方向の」はx軸に対して平行であり、y軸に対して平行であること、すなわち図の平面に対して垂直であることを意味し、「縦方向の」は「重力方向に沿う」こと、すなわちz軸に沿うことを意味する。これらの軸線は図1に示されるようなデカルト座標系x、y、zの部分である。正のz軸は「頂点」を指し、負のz軸は「底」を指す、すなわち重力方向である。
【0105】
本実験機器1は作業エリア20を有する水平方向に配置された作業プラットホームも有し、本件ではその作業エリアは平面的で、水平方向に配置された作業面20の形状である。この作業プラットホームは処理装置2を付随し、試料の処理に使用される。その作業面はその作業面上に配置された、具体的にはこの作業面上の所定の位置に配置された様々なワークステーション21、22、23、24及び25を有する。このことがワークステーション内の位置のアドレス指定と作動を簡単にする。
【0106】
ワークステーション21は前記作業エリアの表面部分である。このワークステーションは保持器具31、すなわち複数の個々の容器、すなわち試験管34を試料容器ラック31中の所定の位置に保持するための試料容器ラック31を有する。保持器具31は補助器具(示されず)、すなわちワークトップ20上の2本のピン(示されず)とこれらのピンが成形バメにより噛みあう保持器具のベース上の2つのくぼみ(示されず)によってこの作業面20上の所定の位置において方向付けられ、位置調整される。このことは、マイクロタイタープレートである多重式容器35の位置調整、ピペットチップ37用の保持器具32の位置調整、混合と試料の温度制御を同時に行うために使用されるサーモミックス装置33の位置調整、及び必要なときに自動的に作動し、使用されるようにワークステーション25上に取り付けられているヘッド部46の位置調整に同様に当てはまる。
【0107】
処理装置2は試料を輸送するための輸送装置40も有する。輸送装置40は、リフト要素42を動かすためのレール器具を有するロボット装置を有する。そのレール器具はリフト要素42に接続されているヘッド部43を具体的にはレール要素41によってx方向と平行に動かすように設計されており、且つ、具体的にはレール要素44によるy方向と平行な移動用に設計されている。ヘッド部43の縦方向の移動はリフト要素42によって達成される。ロボット装置は制御装置3又はその制御装置に付随する第2制御装置を有する。(第2)制御装置は実験試料の処理の際に輸送装置40によって動かされるヘッド部43が従う移動順序を制御する。
【0108】
本実験機器1はディスプレイ50も有し、そのディスプレイは接触感受性ディスプレイ(「タッチスクリーンディスプレイ」)の形状である。そのディスプレイは第1表示エリアと第2表示エリアを有する。
【0109】
第1表示エリアは所望の処理を特に以下のように実施するために使用される:少なくとも1つの情報エリアとこの少なくとも1つの情報エリアに付随する少なくとも1つの入力エリアを有する少なくとも1つの質問エリアがディスプレイの第1表示エリアにおいて表示される(ステップa)。さらに、少なくとも1つの情報エリアに表示されている少なくとも1つのプログラムパラメーターについての情報と少なくとも1つの入力エリアにおいて捕捉される使用者による入力、特に少なくとも1つの入力エリアにおけるタッチに基づいて、処理のプログラム制御実行に必要とされるプログラムパラメーターが漸進的に質問される(ステップb)。
【0110】
第2表示エリアは以下のように使用される:使用者による少なくとも1つのプログラムパラメーターの入力の後に続く各ケースにおいて、前記少なくとも1つのプログラムパラメーターについて使用者により入力される少なくとも1つの値がディスプレイの第2表示エリアの情報エリア内に表示され、これらの必要とされるプログラムパラメーターの質問に続いてこれらのプログラムパラメーターについて使用者により入力される1つの値、複数の値、又は全ての値がこの第2表示エリアにおいて表示される(ステップc)。
【0111】
ステップ(a)、(b)及び(c)は図2を参照しても説明される。
【0112】
本実験機器の簡便な操作を可能にするため、試料の処理のために使用者によって必要とされるプログラムパラメーター9の第1表示エリア51における質問、及びこれらのプログラムパラメーター9とそれらのプログラムパラメーターの説明の第2表示エリア52における表示が使用される。とりわけ、本実験機器は、使用者により入力されるプログラムパラメーター9から制御プログラム101(図3aを参照のこと)を用いて全ての情報、特に実験試料に対して使用者が望む処理の実施に必要である制御パラメーター104(図3aを参照のこと)を得るように設計される。これらの手段により実現される効果は、制御プログラム又は方法プログラムをプログラミングするためのプログラミングについての知識を使用者が必要とすることなく、少なくとも部分的に使用者によって定義される処理にプログラム制御実験機器1を使用することができることである。
【0113】
純粋に用途に関連する使用者入力情報に基づいて、制御プログラムは、処理時間に応じて、特に少なくとも部分的に所定の数種類の処理のうちの1つに応じて特定の所望の処理を実施するために試料の処理にとっての適切な過程を作成する。その処理のデータ、特にプログラムパラメーター及び/又はソフトウェアは既に本実験機器に保存されているか、又は後に本実験機器に保存することができる。これらの使用者入力情報はプログラムパラメーター9であり、それらのパラメーターは同様の方法で手作業により実施された処理から使用者に既に知られている。このことは、本実験機器1の操作はそのような使用者にとって比較的に直感的であることを意味する。これらの使用者入力情報は、例えば、試料数、1つ以上の希釈倍率、標的体積、試料容器ラック31中の試料位置、又はマルチウェルプレート35中の試料位置に関連する、又はそれらである。
【0114】
好ましくは、本実験機器によって実施され得る各種の処理は、メモリ装置に保存されている、又は後にメモリ装置に保存することができるプログラムモジュール102(図3bを参照のこと)を有する。そのプログラムモジュールはステップ(a)、(b)及び(c)の実施を制御することができ、又は処理の種類に特異的な方法でそれらのステップに影響を与えることができる。その後、プログラムモジュール102は制御パラメーター104の作成を促進することができるか、又はその作成に影響を与えることができる。各プログラムモジュール102は特定の数、好ましくは少ない数(例えば2から15)NTの質問ステップを提供する。これらの質問ステップでは使用者は少なくとも1つのプログラムパラメーター9の値を入力する。最後の質問ステップでは使用者は処理の実施を開始することができ、本実験機器は使用者によって入力されるプログラムパラメーターを自動的に考慮する。本実験機器は標準的な事例の処理の種類にとって必要とされる情報又はプログラムパラメーターを既に含むことが好ましい。本実験機器は使用者がさらに最適化操作を実施することを必要とせずに処理を実施する。代わりに、プログラムモジュールによって作成される処理過程は重要な処理ステップの特定の最適化、例えば、適切な試料容器、輸送容器、タイミング又は他のパラメーターの選択に関連する最適化を既に含む。各プログラムモジュールは関連の決定木を有してよく、その決定木によれば必要とされるプログラムパラメーター9が決定木のブランチ又は分岐に応じて質問される。
【0115】
本実験機器のプログラミングのこの自動化の利点は以下の例を参照して説明され得る:試料の一連の希釈を実施するため、作業エリアに適切なアクセサリーが準備されることが必要であり、それらの処理を制御するための命令が作成されることが必要であり、且つ、これらの命令のためのプログラムパラメーターが設定されることが必要である。その一連の希釈について、手作業での実施の場合では、又は専ら手作業でプログラム可能な方法プログラムを提供する先行技術に由来する公知の実験機器の場合では、計量コマンドに対する様々な体積が方法プログラマー自身によって計算されなければならないという不利な点が存在する。最終的な自動的処理は条件付きブランチコマンドと非条件付きブランチコマンドが付け加えられることを必要とする。このことは適切なプログラミング経験及びそれらのコマンドとその設備の操作法についての知識を必要とする。他方、本発明の実験機器の好ましい改良点ではそのアプローチは言及した制御パラメーターの自動的決定によってかなり単純化される。
【0116】
好ましくは、プログラムモジュール102は、使用者により選択される処理の種類に応じて使用者により定義される特定の処理の制御プログラムであって、特にこの処理の自動実施のための全ての制御パラメーターを作成する前記制御プログラムとして使用される方法プログラム103(図3cを参照のこと)を作成する。後に使用者が改変するために、又は任意によりプログラムモジュールによって自動的に書かれたのではなく、むしろプログラムされた方法プログラムを有するためにその方法プログラムを編集することができるように本実験機器は設計され得る。このことが本実験機器をさらに使いやすくする。
【0117】
ステップ(a)及び(b)による処理の種類に向けられた使用者ガイダンスは一連の複雑なコマンドとそれらのコマンドのパラメーター記述を不要にする。特に、方法プログラムはプログラムモジュールによって書かれる。本件では、命令(コマンド)とプログラムパラメーター11は関連する種類の処理によって大部分が規定されるか、又は自動的に計算される。尊重される移送コマンドの分布パターンは自動的に作成される。さらなる自動計算は液体の量、容器のサイズ、及び/又は一連の希釈に関連し得る。使用予定の試料容器、輸送容器、ツール要素及び/又はヘッド部は、例えば、本実験機器によって自動的に確認され、又は提案される。
【0118】
図2は第1表示エリア51と第2表示エリア52を有するタッチスクリーンディスプレイ50を示す。質問ステップは第1表示エリア51において質問集として行われ、本件ではタッチスクリーン上での縦方向に指を滑らせる身振りによって縦方向にスクロールされ得るリストの形式で行われる。選択した種類の処理についての情報、例えば、本件では「NAP」を再現することができるタイトル・バーがそのリストの上に表示される。質問集は「ウィザード」とも呼ばれ得る。質問ステップはそれぞれ、入力予定のプログラムパラメーターの説明又は他の情報を本件ではテキスト形式で少なくとも1つの情報エリア内に有する入力エリア(ライトエリア)を有し、質問ステップの番号Nが各入力エリアの隣に表示される。図2では質問ステップ1から4の入力エリアが少なくとも部分的に見えようにリストがスクロールされており、番号2、3及び4だけが見える。N=2及びN=3である入力エリアの隣でチカチカしているシグナルは、使用者の入力が既にこの質問ステップに対して行われており、使用者によって必要とされる適切なプログラムパラメーター9が既に入力されていることを表す。ステップ(b)と一致して、特定の質問ステップについて入力が第2表示エリアにおいて既に行われており、本件では番号N=1、2及び3が示されている。本件では情報は第2表示エリアにおいて行ごとにテキスト形式で示されており、例えば、行の左に番号、例えば、「2」が示されており、次にプログラムパラメーター9の説明、例えば、「試料数」が示されており、次に該当するプログラムパラメーターについて使用者により入力される値、本件では「12」が示されている。
【0119】
タッチスクリーンディスプレイ50は少なくとも1つの追加表示エリアを有し得る。本件ではタッチスクリーンディスプレイは第3表示エリア53と第4表示エリア54を有する。追加表示エリアは、例えば、入力エリア55を有してよく、その入力エリアは特にノブ又はレバー又はそれらのようなものを真似るために使用されるボタンの形状である。本件では第3入力エリアは、例えば、選択した種類の処理についての情報を再現することができるタイトル・バーである。第3入力エリアは「ヘルプ」ボタン及び「ホーム」ボタンも有し、そのヘルプボタンはヘルプ情報、特に特定の種類の処理及びその処理のプログラムパラメーターについてのヘルプ情報をディスプレイに表示するために使用者によって使用され得る。「ホーム」ボタンは、例えば、本実験機器上の基本設定を変更するために、又は処理の種類を選択し、ウィザードを再起動するために開始スクリーンに変更するのに使用者によって使用され得る。この表示は表示エリアにおいて提供され得、その表示エリアは少なくとも部分的に第1表示エリア及び/又は第2表示エリアに対応する。第4表示エリア54はベース・バーの形状であり、「バック」ボタン55、「ネクスト」ボタン55、及び「キャンセル」ボタン55を有する。本実験機器は、例えば、関連する入力エリアを半透明の形状か、そうでなければ視覚的に強調された形状で提示することにより使用者が未だに対処していない質問ステップを識別する。
図1
図2
図3a
図3b
図3c