(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
乗用車モーター油中に使用される摩擦調整剤の領域においては、多数の選択肢がある。エンジン油摩擦調整剤として利用可能な多数の選択肢のうちの1つは、摩擦調整剤として長年使用されてきた、ビス−エトキシオレイルアミンである。
【0003】
最近まで、ディーゼルエンジン油配合者は、潤滑剤及びそれを使用するエンジンの耐用年数を最大化するという問題に焦点を絞ってきた。これは、摩耗防止剤及び抗酸化剤の助けを借りてなされてきた。配合者は、燃料節約を最大化する目的にエンジン油の特徴を合わせることにあまり時間を費やしてこなかった。
【0004】
ディーゼルエンジンの燃料節約の改善に対する最近の関心には、数多くの要因が寄与してきた。地球気候変動法は、徐々にではあるが着実に、ディーゼルエンジンからの排出に制限を課してきた。さらに、原油価格が2008年に急騰した。突然に、多くのトラック会社では、単独最大経費として燃料コストが労働コストに取って代わった。原油価格は、2008年に1バレル145ドルの最高値をつけてからは大幅に下落したものの、燃料節約は、OEM、ディーゼルエンジン所有者及びディーゼルエンジン油製造者にとって、一重要課題として確立されたものである。
【0005】
乗用車エンジンにおいて用いられる燃料節約と並行する方法でのヘビーデューティディーゼルエンジンにおける燃料節約への取組みは、最良の戦略ではないことが証明された。乗用車エンジン油中で成功裏に使用された摩擦調整剤は、ディーゼルエンジンにおいて残念な結果を示した。油の粘度を低減させることによる摩擦の低減は、摩耗問題につながった。明らかに、ディーゼルエンジンにおける燃料節約の問題に取り組むには、新規なアプローチが必要である。
【0006】
乗用車及びヘビーデューティディーゼルエンジン油の両方において機能するように設計された新規な有機摩擦調整剤(OFM)が出現し始めた。摩擦低減における目覚ましい利益が、新種のビス−エトキシアルキルアミン/アミドの混合ホウ酸エステルで見られている。こうした利益が、ベンチ及びエンジン試験の両方を通して実証された。
【0007】
Malec、米国特許第4,231,883号は、摩擦調整剤としてのアルコキシル化ヒドロカルビルアミンの使用を教示している。
【0008】
Chien−Weiら、米国特許第3,011,880号は、沈着物に対する耐性及び低温運転性を向上させるための燃料添加剤としての、ビスアルコキシル化ヒドロカルビルアミドのホウ酸エステルの使用を教示している。
【0009】
Colombo、EP393748は、潤滑剤における摩擦調整剤及び抗腐食剤としての、モノ及びビス−エトキシル化アルキルアミドのホウ酸エステルの使用を教示している。
【0010】
Papayら、米国特許第4,331,545号は、潤滑剤及び燃料の両方用の摩擦調整剤としての、モノエトキシル化ヒドロカルビルアミドのホウ酸エステルの使用を教示している。多価アルコール及びアルキルアルコールの混合ホウ酸エステルが記載されている。
【0011】
Horodysky、米国特許第4,382,006号は、潤滑剤用の摩擦調整剤としての、ビス−エトキシル化アルキルアミンのホウ酸エステルの使用を教示している。ホウ酸エステルの例は、ブタノールとの混合エステルである。
【0012】
Horodysky、米国特許第4,389,322号は、潤滑剤用の摩擦調整剤としての、ビス−エトキシル化アルキルアミドのホウ酸エステルの使用を教示している。ホウ酸エステルの例は、ブタノールとの混合エステルである。
【0013】
Horodyskyら、米国特許第4,406,802号は、潤滑剤における摩擦調整剤としての、ビス−アルコキシル化アルキルアミン、ビス−アルコキシル化アルキルアミド及びアルコールヒドロキシエステルを含む化合物の混合ホウ酸エステルの使用を教示している。
【0014】
Horodyskyら、米国特許第4,478,732号は、潤滑剤における摩擦調整剤としての、ビス−アルコキシル化アルキルアミン、ビス−アルコキシル化アルキルアミド及びアルコールヒドロキシエステルを含む化合物の混合ホウ酸エステルの使用を教示している。
【0015】
Yasushi、JP2005320441は、低硫黄配合物における耐摩耗添加剤としての、グリセロールモノエステル及びビス−エトキシル化アルキルアミドの混合ホウ酸エステルの使用を教示している。
【0016】
これまでに記載された潤滑剤のいずれにも、少なくとも3個の水酸基を有するヒドロカルビルポリオールを配合した混合ホウ酸エステルを用いて、ディーゼルエンジン油における摩擦調整の問題に取り組んでいるものはない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は多様な変更形態及び代替形態が可能であるものの、その具体的な実施形態を本明細書においてより詳細に説明する。しかしながら、本明細書における具体的な実施形態の説明は、開示した特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更形態、等価物及び代替物を包含することを意図することが、理解されるべきである。
【0023】
定義
以下の用語は明細書を通して使用され、特段の指示がない限り以下の意味を有するものとする。
【0024】
「ポリアミン」という用語は、複数の塩基性窒素を含有する有機化合物をいう。化合物の有機部分は、脂肪族、環状、又は芳香族炭素原子を含有し得る。
【0025】
「ポリアルキレンアミン」又は「ポリアルキレンポリアミン」という用語は、一般式
H
2N(−R−NH)
n−H
(式中、Rはアルキレン基であり、好ましくは2〜3個の炭素原子を有し、nは約1から11までの整数である)
により表される化合物をいう。
【0026】
「アミド」又は「ポリアミド」という用語は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、又はカルボン酸エステルと、ポリアミンを含むアミンとの反応生成物をいう。
【0027】
「カルボン酸成分」という用語は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸エステルをいう。
【0028】
潤滑油添加剤
一実施形態では、潤滑油添加剤は、窒素含有反応物、例えばアルキルアルカノールアミド、アルコキシル化アルキルアルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルコキシル化アルキルアルカノールアミンなどと;ホウ素含有成分、例えばホウ酸などと;少なくとも3個の水酸基を有するヒドロカルビルポリオールとの反応生成物である。
【0029】
窒素含有反応物
アルカノールアミド
一実施形態では、窒素含有反応物は、アルキルモノアルカノールアミド又はアルキルジアルカノールアミドである。そのようなアルキルモノアルカノールアミド及びアルキルジアルカノールアミドには、ヤシ油から誘導されたモノエタノールアミド又はココモノエタノールアミド、ヤシ油から誘導されたジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド及びラウリン酸モノイソプロパノールアミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。典型的には、ヤシ油中のアルキル基は、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、オレイル及びリノレイル基の混合基を含む。
【0030】
典型的には、アルキルモノアルカノールアミド及びアルキルジアルカノールアミドは、カルボン酸及びエステルを、モノアルカノールアミン及びジアルカノールアミンと反応させることにより調製される。アルキルモノ−及びジ−アルカノールアミドは、個々のC
8〜C
18カルボン酸、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など、又はこれらのメチルエステル、例えば、デカノイル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、及びオレイルのエステル、又は動物脂肪若しくは植物油、すなわち、獣脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、魚油等から誘導されたアルキルの混合物から調製することができる。これらを、例えば、モノエタノールアミン、モノ−n−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジアルカノールアミン、ジグリコールアミン(2−(2−アミノエトキシ)エタノール)、3−ヒドロキシ−1−アミノ−ブタン、4−ヒドロキシ−1−アミノブタン、アミノ−シクロヘキサノールなどの多種多様なアルカノールアミンと容易に反応させて、所望のアルキルアルカノールアミドを生成することができる。アルキルアルカノールアミドは、米国特許第4,085,126号;米国特許第4,116,986号において記載された方法を含むが、これらに限定されるものではない、当該技術分野において周知の方法にしたがって調製することができる。
【0031】
一実施形態では、窒素含有反応物は次の構造を有するアルキルアルカノールアミドである:
【化1】
式中、Rは6から22個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは約8から約18個までの炭素原子を含み;より好ましくは、Rは12個の炭素原子を含む。
【0032】
一実施形態では、窒素含有反応物は、以下の構造を有するアルキルジアルカノールアミドである:
【化2】
式中、Rは6から22個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは約8から約18個までの炭素原子を含み;より好ましくは、Rは12個の炭素原子を含む。
【0033】
一実施形態では、窒素含有反応物は、アルコキシル化アルキルアルカノールアミドである。アルコキシル化部分は、エトキシル化、プロポキシル化、ブトキシル化などであってもよい。
【0034】
アルコキシル化アルキルアルカノールアミドのアルキル部分は、好ましくは分枝鎖若しくは直鎖の、3から21個の炭素原子を含有する、より好ましくは8から18個の炭素原子を含有するアルキル若しくはアルケニル基、又はこれらの組合せである。アルコキシ部分は、エトキシ、プロポキシ、若しくはブトキシ基、又はこれらの組合せであってもよい。好ましい一実施形態では、プロポキシル化アルキルアルカノールアミド、より好ましくはプロポキシル化アルキルエタノールアミドが使用される。
【0035】
以下の構造により表されるアルコキシル化アルキルアルカノールアミド:
【化3】
式中、R
1は、分枝鎖若しくは直鎖の、飽和若しくは不飽和C
3〜C
21アルキル基、好ましくはC
8〜C
18アルキル基、又はこれらの組合せであり;R
2は、水素、若しくはC
1〜C
2アルキル基又はこれらの組合せであり、好ましくはR
2は水素又はC
1アルキル基のいずれかであり;xは、約1から約8まで、好ましくは約1から約5まで、より好ましくは約1から約3までである。
【0036】
有用なアルコキシル化アルキルアルカノールアミドの例には、ポリオキシプロピレン−、ポリオキシブチレン−アルキルエタノールアミド又はアルキルイソプロパノールアミドが含まれる。アルコキシル化アルキルエタノールアミドが好ましく、特にプロポキシル化アルキルエタノールアミドが好ましい。アルキルエタノールアミド部分は、好ましくはアルキルモノエタノールアミドであり、より好ましくはラウリン酸モノエタノールアミド、カプリン酸モノエタノールアミド、カプリル酸モノエタノールアミド、カプリル酸/カプリン酸モノエタノールアミド、デカン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、イソステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、リノール酸モノエタノールアミド、オクチルデカン酸モノエタノールアミド、2−ヘプチルウンデカン酸モノエタノールアミド、ヤシ油から誘導されたアルキルモノエタノールアミド、牛脂から誘導されたアルキルモノエタノールアミド、大豆油から誘導されたアルキルモノエタノールアミド、及びパーム核油から誘導されたアルキルモノエタノールアミドから誘導される。これらのうち、カプリン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸系、及び大豆油又はヤシ油から誘導されたものが好ましい。
【0037】
好ましいプロポキシル化脂肪酸エタノールアミドには、プロポキシル化ヒドロキシエチルカプリルアミド、プロポキシル化ヒドロキシエチルコカミド、プロポキシル化ヒドロキシエチルリノールアミド、プロポキシル化ヒドロキシエチルイソステアラミド、及びこれらの組合せが含まれる。プロポキシル化ヒドロキシエチルコカミドがより好ましい。好ましい具体的な物質は、PPG−1ヒドロキシエチルカプリルアミド、PPG−2ヒドロキシエチルコカミド、PPG−3ヒドロキシエチルリノールアミド、PPG−2ヒドロキシエチルイソステアラミド、及びこれらの組合せである。PPG−2ヒドロキシエチルコカミドが特に好ましい。
【0038】
代替的な一実施形態では、アルコキシル化アルキルイソプロパノールアミドが使用される。アルキルイソプロパノールアミド部分は、好ましくはアルキルモノイソプロパノールアミドであり、より好ましくは、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、カプリン酸モノイソプロパノールアミド、カプリル酸モノイソプロパノールアミド、カプリル酸/カプリン酸モノイソプロパノールアミド、デカン酸モノイソプロパノールアミド、ミリスチン酸モノイソプロパノールアミド、パルミチン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミド、イソステアリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、リノール酸モノイソプロパノールアミド、オクチルデカン酸モノイソプロパノールアミド、2−ヘプチルウンデカン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油から誘導されたアルキルモノイソプロパノールアミド、牛脂から誘導されたアルキルモノイソプロパノールアミド、大豆油から誘導されたモノイソプロパノールアミド、及びパーム核油から誘導されたアルキルモノイソプロパノールアミドから誘導される。
【0039】
以下の構造により表されるアルコキシル化アルキルジアルカノールアミド:
【化4】
式中、R
1は分枝鎖若しくは直鎖の、飽和若しくは不飽和C
3〜C
21アルキル基、好ましくはC
8〜C
18アルキル基、又はこれらの組合せであり;R
2は水素若しくはC
1〜C
2アルキル基又はこれらの組合せであり、好ましくはR
2は水素又はC
1アルキル基であり;xは約1から約8まで、好ましくは約1から約5まで、より好ましくは約1から約3までである。
【0040】
有用なアルコキシル化アルキルジアルカノールアミドの例には、ポリオキシプロピレン−、ポリオキシブチレン−アルキルジエタノールアミド又はアルキルジイソプロパノールアミドが含まれる。アルコキシル化アルキルジエタノールアミドが好ましく、プロポキシル化アルキルジエタノールアミドが特に好ましい。アルキルジエタノールアミド部分は、好ましくはアルキルジエタノールアミドであり、より好ましくは、ラウリン酸ジエタノールアミド、カプリン酸ジエタノールアミド、カプリル酸ジエタノールアミド、カプリル酸/カプリン酸ジエタノールアミド、デカン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、イソステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、リノール酸ジエタノールアミド、オクチルデカン酸ジエタノールアミド、2−ヘプチルウンデカン酸ジエタノールアミド、ヤシ油から誘導されたアルキルジエタノールアミド、牛脂から誘導されたアルキルジエタノールアミド、大豆油から誘導されたアルキルジエタノールアミド、及びパーム核油から誘導されたアルキルジエタノールアミドから誘導される。これらのうち、カプリン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸系、及び大豆油又はヤシ油から誘導されたものが好ましい。
【0041】
好ましいプロポキシル化脂肪酸ジエタノールアミドには、プロポキシル化ビスエトキシカプリルアミド、プロポキシル化ビスエトキシコカミド、プロポキシル化ビスエトキシリノールアミド、プロポキシル化ビスエトキシイソステアラミド、及びこれらの組合せが含まれる。プロポキシル化ビスエトキシコカミドがより好ましい。好ましい具体的な物質は、PPG−1ビスエトキシカプリルアミド、PPG−2ビスエトキシコカミド、PPG−3ビスエトキシリノールアミド、PPG−2ビスエトキシイソステアラミド、及びこれらの組合せである。PPG−2ビスエトキシコカミドが特に好ましい。
【0042】
代替的な一実施形態では、アルコキシル化アルキルジイソプロパノールアミドが使用される。アルキルイソプロパノールアミド部分は、好ましくはアルキルジイソプロパノールアミドであり、より好ましくはラウリン酸ジイソプロパノールアミド、カプリン酸ジイソプロパノールアミド、カプリル酸ジイソプロパノールアミド、カプリル酸/カプリン酸ジイソプロパノールアミド、デカン酸ジイソプロパノールアミド、ミリスチン酸ジイソプロパノールアミド、パルミチン酸ジイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジイソプロパノールアミド、イソステアリン酸ジイソプロパノールアミド、オレイン酸ジイソプロパノールアミド、リノール酸ジイソプロパノールアミド、オクチルデカン酸ジイソプロパノールアミド、2−ヘプチルウンデカン酸ジイソプロパノールアミド、ヤシ油から誘導されたアルキルジイソプロパノールアミド、牛脂から誘導されたアルキルジイソプロパノールアミド、大豆油から誘導されたジイソプロパノールアミド、及びパーム核油から誘導されたアルキルジイソプロパノールアミドから誘導される。
【0043】
アルカノールアミン
一実施形態では、窒素含有反応物は、以下の構造の1つを有するアルキルアルカノールアミンである:
【化5】
式中、R
1は分枝鎖若しくは直鎖の、飽和若しくは不飽和C
3〜C
21アルキル基、好ましくはC
8〜C
18アルキル基、又はこれらの組合せであり;R
2は水素若しくはC
1〜C
2アルキル基又はこれらの組合せであり、好ましくはR
2は水素又はC
1アルキル基であり;xは約1から約8まで、好ましくは約1から約5まで、より好ましくは約1から約3までである。
【0044】
一実施形態では、窒素含有反応物は、アルキルモノアルカノールアミン又はアルキルジアルカノールアミンである。そのようなアルキルモノアルカノールアミン及びアルキルジアルカノールアミンには、ヤシ油から誘導されたモノエタノールアミン又はココモノエタノールアミン、ヤシ油から誘導されたジエタノールアミン、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミン、ラウリン酸モノエタノールアミン、ラウリン酸ジエタノールアミン及びラウリン酸モノイソプロパノールアミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。典型的には、ヤシ油中のアルキル基は、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、オレイル及びリノレイル基の混合基を含む。
【0045】
典型的には、アルキルモノアルカノールアミン及びアルキルジアルカノールアミンは、Akzo Nobelから市販されている。
【0046】
アルキルアルカノールアミンの例には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない:
オレイルジエタノールアミン、ヤシ油から誘導されたジエタノールアミン、及び牛脂から誘導されたジエタノールアミンなど。
【0047】
有用なアルコキシル化アルキルジアルカノールアミンの例には、ポリオキシプロピレン−、ポリオキシブチレン−アルキルジエタノールアミン又はアルキルジイソプロパノールアミンが含まれる。アルコキシル化アルキルジエタノールアミンが好ましく、プロポキシル化アルキルジエタノールアミンが特に好ましい。アルキルジエタノールアミン部分は、好ましくはアルキルジエタノールアミンであり、より好ましくは、ラウリン酸ジエタノールアミン、カプリン酸ジエタノールアミン、カプリル酸ジエタノールアミン、カプリル酸/カプリン酸ジエタノールアミン、デカン酸ジエタノールアミン、ミリスチン酸ジエタノールアミン、パルミチン酸ジエタノールアミン、ステアリン酸ジエタノールアミン、イソステアリン酸ジエタノールアミン、オレイン酸ジエタノールアミン、リノール酸ジエタノールアミン、オクチルデカン酸ジエタノールアミン、2−ヘプチルウンデカン酸ジエタノールアミン、ヤシ油から誘導されたアルキルジエタノールアミン、牛脂から誘導されたアルキルジエタノールアミン、大豆油から誘導されたアルキルジエタノールアミン、及びパーム核油から誘導されたアルキルジエタノールアミンから誘導される。これらのうち、カプリン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸系、及び大豆油又はヤシ油から誘導されたものが好ましい。
【0048】
好ましいプロポキシル化脂肪酸ジエタノールアミンには、プロポキシル化ビスエトキシカプリルアミン、プロポキシル化ビスエトキシコカミン、プロポキシル化ビスエトキシリノールアミン、プロポキシル化ビスエトキシイソステアラミン、及びこれらの組合せが含まれる。プロポキシル化ビスエトキシコカミンがより好ましい。好ましい具体的な物質は、PPG−1ビスエトキシカプリルアミン、PPG−2ビスエトキシコカミン、PPG−3ビスエトキシリノールアミン、PPG−2ビスエトキシイソステアラミン、及びこれらの組合せである。PPG−2ビスエトキシコカミンが特に好ましい。
【0049】
代替的な一実施形態では、アルコキシル化アルキルジイソプロパノールアミンが使用される。アルキルイソプロパノールアミン部分は、好ましくはアルキルジイソプロパノールアミンであり、より好ましくは、ラウリン酸ジイソプロパノールアミン、カプリン酸ジイソプロパノールアミン、カプリル酸ジイソプロパノールアミン、カプリル酸/カプリン酸ジイソプロパノールアミン、デカン酸ジイソプロパノールアミン、ミリスチン酸ジイソプロパノールアミン、パルミチン酸ジイソプロパノールアミン、ステアリン酸ジイソプロパノールアミン、イソステアリン酸ジイソプロパノールアミン、オレイン酸ジイソプロパノールアミン、リノール酸ジイソプロパノールアミン、オクチルデカン酸ジイソプロパノールアミン、2−ヘプチルウンデカン酸ジイソプロパノールアミン、ヤシ油から誘導されたアルキルジイソプロパノールアミン、牛脂から誘導されたアルキルジイソプロパノールアミン、大豆油から誘導されたジイソプロパノールアミン、及びパーム核油から誘導されたアルキルジイソプロパノールアミンから誘導される。
【0050】
窒素含有反応物は、当該技術分野において周知の方法により調製することができる。アルキルアルカノールアミド及びアルキルアルカノールアミンは、米国特許第4,085,126号;米国特許第7,479,473号及び当該技術分野において周知の他の方法にしたがって調製することもでき;Akzo Nobelから購入することもできる。
【0051】
ホウ素反応物の源
一実施形態では、三酸化ホウ素や、メタホウ酸、オルトホウ酸、四ホウ酸を含むホウ酸、モノ、ジ、又はトリC
1〜C
6アルキルボラートを含むアルキルボラートといった多様な形態のいずれかなどのホウ素の源が反応において使用される。好ましくは、ホウ酸がホウ素の源として使用される。ホウ酸は、当該技術分野において周知の方法により調製することができる。また、Aldrich、Fisher Scientificなどの供給業者から購入することもできる。
【0052】
ヒドロカルビルポリオール反応物
一実施形態では、ヒドロカルビルポリオール反応物は、少なくとも3個の水酸基を有するヒドロカルビルポリオール成分及びエステルを除いたその誘導体を含む。より好ましくは、ヒドロカルビルポリオール成分は以下の構造を有する:
【化6】
式中、nは1〜2である。好ましくは、nは1である。
【0053】
本発明において使用することができるその他のヒドロカルビルポリオールの例には、以下が含まれる:
【化7】
【0054】
潤滑油添加剤組成物の製造方法
潤滑油添加剤組成物は、容器に芳香族溶媒と共に窒素含有反応物を装入することにより調製される。好ましくは、窒素含有反応物はビス−エトキシアルキルアミン(アルキルジエタノールアミンとしても知られる)又はビス−エトキシアルキルアミドである。ホウ酸などのホウ素の源を次いで容器に加える。得られた混合物を、水が実質的に除去されて反応が完了するまで還流した後、例えばグリセロール、ペンタエリトリトールなどの、少なくとも3個の水酸基を有するヒドロカルビルポリオールをその混合物に添加する。
【0055】
一実施形態では、少なくとも3個の水酸基を有するヒドロカルビルポリオールを、ホウ素の源と同時に容器に加える。得られた混合物を次いで2時間還流させる。
【0056】
好ましくは、窒素含有反応物と、ホウ素の源反応物と、グリセロールとの比は、約1:0.2:0.2から1:2.5:2.5までである。より好ましくは、この比は約1:0.2:0.2から1:1.5:1.5までである。さらにより好ましくは、この比は約1:0.4:0.4から1:1:1までである。最も好ましくは、この比は約1:0.5:0.5から1:0.75:0.75までである。
【0057】
添加剤濃縮物
多くの場合、キャリア液中に本発明の油溶性添加剤組成物の濃縮物を形成することが有利であり得る。これらの添加剤濃縮物は、取扱い、輸送、及び最終的には潤滑剤基油へ配合して最終の潤滑剤を得る便利な方法をもたらす。一般に、本発明の油溶性添加剤濃縮物は、それ自体では最終の潤滑剤として使用可能でないか、適していない。むしろ、油溶性添加剤濃縮物は、潤滑剤基油原液と配合されて、最終の潤滑剤を提供するものである。キャリア液は、本発明の油溶性添加剤を容易に溶液化させて、潤滑剤基油原液中に容易に溶解する油添加剤濃縮物をもたらすことが望ましい。さらに、キャリア液は、例えば、高揮発性、高粘度、ヘテロ原子などの不純物を含むいかなる望ましくない特徴も潤滑剤基油原液に、したがって、究極的には最終の潤滑剤に導入しないことが望ましい。したがって、本発明は、不活性キャリア流体及び、総濃縮物に基づいて2.0重量%から90重量%までの、本発明による油溶性添加剤組成物を含む油溶性添加剤濃縮物組成物をさらに提供する。この不活性キャリア流体は、潤滑油とすることもできる。
【0058】
こうした濃縮物は、通常、約2.0重量%から約90重量%までの、好ましくは10重量%から50重量%までの本発明の油溶性添加剤組成物を含有し、さらに、1つ又は複数の当該技術分野において公知であり、後述するその他の添加剤を含有することができる。濃縮物の残部は、実質的に不活性キャリア液である。
【0059】
潤滑油組成物
本発明の一実施形態では、本発明の油溶性添加剤組成物を潤滑粘度の基油と混合して、潤滑油組成物を形成することができる。潤滑油組成物は、成分中最大の量の潤滑粘度の基油及び少量の上述した本発明の油溶性添加剤組成物を含む。
【0060】
本発明において使用することができる潤滑油には、多種多様な炭化水素油、例えばナフテン系基油、パラフィン基油、混合基油など、並びにエステルなどの合成油が含まれる。本発明において使用することができる潤滑油には、バイオマス由来の油、例えば植物及び動物由来の油なども含まれる。潤滑油は、単独で使用することもでき、組み合わせて使用することもでき、一般に、40℃で7から3,300cStまで、通常20から2000cStまでの範囲の粘度を有する。したがって、基油は、精製パラフィン系基油、精製ナフテン系基油、又は潤滑粘度の合成炭化水素油若しくは非炭化水素油とすることができる。基油は、鉱油及び合成油の混合物とすることもできる。本発明において基油として使用される鉱油には、例えば、パラフィン系油、ナフテン系油、及び潤滑油組成物中に普通に使用されるその他の油が含まれる。合成油には、例えば、炭化水素合成油と合成エステルの両方、並びに所望の粘度を有するこれらの混合物が含まれる。炭化水素合成油には、例えば、エチレンの重合から調製された油、すなわち、ポリアルファオレフィンすなわちPAO、又はフィッシャートロプシュ法におけるように、一酸化炭素及び水素ガスを使用する炭化水素合成手順から調製された油が含まれ得る。有用な合成炭化水素油には、適切な粘度を有するアルファオレフィンの液体ポリマーが含まれる。同様に、適切な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンなどを使用することができる。有用な合成エステルには、モノカルボン酸及びポリカルボン酸のエステル、並びにモノヒドロキシアルカノール及びポリオールが含まれる。典型的な例は、アジピン酸ジドデシル、テトラカプロン酸ペンタエリトリトール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジラウリルなどである。モノ及びジカルボン酸並びにモノ及びジヒドロキシアルカノールの混合物から調製された複合体エステルも使用することができる。鉱油と合成油の混合物もまた有用である。
【0061】
本発明の油溶性添加剤を含有する潤滑油組成物は、適量の本発明の油溶性添加剤を潤滑油と、慣用の技術により混合することにより調製される。具体的な基油の選択は、潤滑剤の意図した用途及びその他の添加剤の存在に依存する。本発明の潤滑油組成物中の本発明の油溶性添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、一般に0.05から15重量%まで、好ましくは0.1から1重量%まで、より好ましくは約0.1から0.8重量%まで変動する。
【0062】
潤滑油組成物は、乗用車エンジン、ヘビーデューティーディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、トラクター作動油、マリンディーゼルエンジン、鉄道用ディーゼルエンジンなどにおいて使用することができる。
【0063】
さらなる添加剤
所望の場合、その他の添加剤を、本発明の潤滑油及び潤滑油濃縮組成物に含ませてもよい。こうした添加剤には、抗酸化剤又は酸化防止剤、分散剤、さび止め剤、抗腐食剤などが含まれる。また、消泡剤、安定化剤、防汚剤、粘着性付与剤、チャター防止剤(anti−chatter agent)、滴点向上剤、スクウォーク防止剤(anti−squawk agent)、極圧剤、賦香剤などを含ませてもよい。
【0064】
以下の添加剤成分は、本発明の潤滑油組成物において有利に使用することができる成分の若干の例である。これらのさらなる添加剤の例は、本発明を例示するために提示されるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0065】
金属清浄剤
本発明において使用することができる清浄剤には、アルキル又はアルケニル芳香族スルホナート、金属サリチラート、カルシウムフェナート、ホウ酸化スルホナート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホナート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテナート、アルカン酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、並びにこれらの化学的及び物理的混合物が含まれる。
【0066】
耐摩耗剤
その名前が示すように、こうした剤は可動性金属部品の摩耗を低減する。そのような剤の例には、亜鉛ジチオホスファート、カルバマート(carbarmate)、エステル、及びモリブデン錯体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
さび止め剤(抗さび剤)
抗さび剤は、通常は腐食を受ける物質の腐食を低減する。抗さび剤の例には、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、及びモノオレイン酸ポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。抗さび剤として有用なその他の化合物には、ステアリン酸及びその他のアルキル、ジカルボン酸、金属石ケン、アルキルアミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールのカルボン酸部分エステル、及びリン酸エステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
抗乳化剤
抗乳化剤は、エマルションの分離を促進するために使用される。抗乳化剤の例には、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、ポリエトキシル化アルキルフェノール、ポリエステルアミド、エトキシル化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール誘導体及びカチオン性又はアニオン性高分子電解質が含まれるが、これらに限定されるものではない。異なる種類のポリマーの混合物も使用することができる。
【0069】
摩擦調整剤
追加の摩擦調整剤を本発明の潤滑油に添加してもよい。摩擦調整剤の例には、脂肪族アルコール、アルキル、アミン、エトキシル化アミン、ホウ酸化エステル、その他のエステル、ホスファート、ホスファイト及びホスホナートが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
多機能性添加剤
抗酸化及び耐摩耗特性などの複数の特性を有する添加剤もまた、本発明の潤滑油に添加することができる。多機能性添加剤の例には、硫化オキシモリブデンジチオカルバマート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオアート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチラートアミド、アミン−モリブデン錯体、及び硫黄含有モリブデン錯体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
粘度指数向上剤
粘度調整剤としても知られる粘度指数向上剤は、潤滑油の粘度−温度特性を向上させ、油温が変化しても油の粘度をより安定にする一類の添加剤を含む。粘度指数向上剤を本発明の潤滑油組成物に添加してもよい。粘度指数向上剤の例には、ポリメタクリラート系ポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、ホスホ硫化ポリイソブチレンのアルカリ土類金属塩、水和スチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、及び分散剤型粘度指数向上剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
流動点降下剤
流動点降下剤は、潤滑油中のワックス結晶形成を制御して、流動点低下及び低温流動性能向上をもたらすように設計されたポリマーである。流動点降下剤の例には、ポリメチルメタクリラート、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレンポリマー、及びアルキル化ポリスチレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
発泡防止剤
発泡防止剤は、潤滑油の発泡傾向を低減させるために使用される。発泡防止剤の例には、アルキルメタクリラートポリマー、アルキルアクリラートコポリマー、及びジメチルシロキサンポリマーなどの高分子オルガノシロキサンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
金属不活性化剤
金属不活性化剤は金属表面上に膜を形成し、金属が油を酸化させるのを防止する。金属不活性化剤の例には、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ビスイミダゾールエーテル、及びメルカプトベンゾイミダゾールが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
分散剤
分散剤は、スラッジ、カーボン、すす、酸化生成物、及びその他の沈着物前駆体を拡散させて、これらが凝固するのを防止し、沈着物形成の低減、油酸化の低減、及び粘度増加の低減をもたらす。分散剤の例には、アルケニルスクシンイミド、他の有機化合物で修飾されたアルケニルスクシンイミド、エチレンカーボネート若しくはホウ酸での後処理により変性されたアルケニルスクシンイミド、アルカリ金属若しくは混合アルカリ金属、アルカリ土類金属ボラート、水和アルカリ金属ボラートの分散物、アルカリ土類金属ボラートの分散物、ポリアミド無灰分散剤など、又はこのような分散剤の混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
抗酸化剤
抗酸化剤は、金属表面上のスラッジやワニス様沈着物などの酸化生成物の形成を抑制することにより、鉱油が劣化する傾向を低減させる。本発明において有用な抗酸化剤の例には、フェノール型(フェノール)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−l−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。ジフェニルアミン型酸化防止剤には、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、及びアルキル化アルファ−ナフチルアミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。その他の種類の酸化防止剤には、金属ジチオカルバマート(例えば、亜鉛ジチオカルバマート)、及びメチレンビス(ジブチルジチオカルバマート)が含まれる。
【0077】
用途
本明細書において開示された油溶性添加剤組成物を含有する潤滑油組成物は、潤滑油の摩擦特性を調整するための流体及びグリース組成物のどちらとしても効果的であり、その潤滑油はクランクケース潤滑剤として使用すると、本発明の潤滑油で潤滑されているエンジンの燃料節約の向上をもたらす。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、天然ガスエンジン油、クロスヘッドディーゼルエンジンなどにおけるマリンシリンダー潤滑剤、自動車及び鉄道などにおけるクランクケース潤滑剤、製鋼所などの重機用の潤滑剤、又は軸受用グリースなどとして使用することができる。潤滑剤が流体であるか固体であるかは、通常、増粘剤が存在するかどうかに依存する。典型的な増粘剤には、ポリウレアアセテート、ステアリン酸リチウムなどが含まれる。
【0079】
以下の例は本発明の具体的な実施形態を例示するために提示され、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0080】
(例1)
ビス−エトキシオレイルアミンとグリセロールの混合ホウ酸エステル
フラスコに、ビス−エトキシオレイルアミン6グラム及びトルエン10ミリリットルを仕込んだ。ホウ酸1.04グラムをその溶液に添加した。得られた混合物を2時間還流した後、グリセロール1.54グラムをフラスコに加えた。ビス−エトキシルオレイルアミン、ホウ酸及びグリセロールを、1:1:1の比で添加した。還流を一夜継続した。トルエンを減圧下で除去して、生成物を得た。
【0081】
或いは、ホウ酸の添加を行う際にグリセロールを添加することもできる。この混合物を一夜還流する。トルエンを減圧下で除去して、生成物を得る。
【0082】
(例2〜4)
ビス−エトキシコカミドとグリセロールの混合ホウ酸エステル
混合物を例1にしたがって調製した。その反応において、ビス−エトキシオレイルアミンの代わりにビス−エトキシコカミドを使用した。さらに、ビス−エトキシコカミド:グリセロール:ホウ酸の比をいろいろに変えて合成した。比には、2:1:1、1:1:1及び1:2:2のビス−エトキシコカミド:グリセロール:ホウ酸が含まれる。
【0083】
(例5)
ジプロポキシル化オレイルアミンとグリセロール
フラスコに、Akzo Nobelから購入したPropylmeen O/12 100グラム、ホウ酸24.2g、及びグリセロール36.2gを、それぞれ、1.0:1.5:1.5当量で仕込んだ。その混合物を110℃に加熱し、家庭用電気掃除機による減圧(house vacuum)及び窒素ブランケット下で3時間保持した。ディーンスタークトラップを使用して、水を収集した。その生成物をMazdaスクリーナーで試験した。
【0084】
(例6)
ポリプロポキシル化ビスエトキシコカミドとグリセロール
フラスコに、ポリプロポキシル化ビスエトキシコカミド50g、ホウ酸3.87g、及びグリセロール5.75gを、それぞれ、1:0.75:0.75当量で仕込んだ。その混合物を110℃に加熱し、家庭用電気掃除機による減圧及び窒素ブランケット下で3時間保持した。ディーンスタークトラップを使用して、水を収集した。反応の終了時点で、その生成物をMazdaスクリーナーで試験した。
【0085】
(例7)
ヤシ油から誘導されたジエタノールアミド、ホウ酸、ペンタエリトリトール
フラスコに、ヤシ油から誘導されたジエタノールアミド50グラム、ホウ酸5.06g、及びペンタエリトリトール11.16gを、それぞれ、1.0:0.5:0.5当量で仕込んだ。その混合物を110℃に加熱し、家庭用電気掃除機による減圧及び窒素ブランケット下で3時間保持した。ディーンスタークトラップを使用して、水を収集した。その生成物をMazdaスクリーナーで試験した。
【0086】
(例A(比較))
ビス−エトキシオレイルアミンとブタノールの混合ホウ酸エステル
混合物を例1にしたがって調製した。その反応において、グリセロールの代わりにブタノールを使用した。
【0087】
(例B(比較))
ビス−エトキシコカミドと1−ヘキサノールの混合ホウ酸エステル
混合物を例1にしたがって調製した。アミン反応物の代わりにビス−エトキシコカミドを使用し、グリセロールの代わりに1−ヘキサノールを使用した。
【0088】
(例C(比較))
ビス−エトキシオレイルアミンと1−ヘキサノールの混合ホウ酸エステル
混合物を例1にしたがって調製した。グリセロールの代わりに1−ヘキサノールを使用した。
【0089】
(例D(比較))
ビス−エトキシコカミド、アルコールなし
フラスコに、ビス−エトキシコカミド6グラム及びトルエン10ミリリットルを仕込んだ。ホウ酸1.04グラムをその溶液に添加した。その混合物を2時間還流した。トルエンを減圧下で除去して、生成物を得た。
【0090】
(例E(比較))
ビス−エトキシ牛脂アミン、アルコール共ホウ酸化なし
混合物を比較例Dにしたがって調製した。ビス−エトキシコカミドの代わりにビス−エトキシ牛脂アミンを使用した。
【0091】
(例F(比較))
例FはPropylmeen O/12(プロポキシル化アミン)である。
【0092】
(例G(比較))
例Gはポリプロポキシル化ジエタノールアミドである。
【0093】
(例H(比較))
例Hはヤシ油から誘導されたジエタノールアミドである。
【0094】
例1〜7及び比較例A〜HについてのMazda試験スクリーナーの結果を表5にまとめる。
【0095】
ミニトラクション摩擦試験機(Mini−Traction Machine)により測定された摩擦低減
例1及び3並びに比較例A〜Cにおいて調製した潤滑油添加剤を、摩擦低減特性についてミニトラクション摩擦試験機(MTM)ベンチテストで評価した。
【0096】
ベンチ摩擦計を使用して2つのベースラインを試験した。各ベースライン内で、試験した潤滑剤は全て、摩擦調整剤を除いて、分散剤、清浄剤、亜鉛ジアルキルジチオホスファート、抗酸化剤、ポリメタクリラート流動点降下剤、及びオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、同一の量の添加剤(「ベースライン添加剤パッケージ」)を含有した。
【0097】
本発明の摩擦調整剤(例1〜3)及び比較例の摩擦調整剤(比較例A〜C)を1重量%のトリート率で添加した。
【0098】
上述の組成物をミニトラクション摩擦試験機(MTM)ベンチテストで摩擦性能について試験した。MTMは、PCS Instruments製であり、回転ディスク(52100鋼)に対して負荷されたボール(0.75インチ径の8620鋼製ボール)で働く。その条件は、およそ10〜30ニュートンの荷重、およそ10〜2000mm/sの速度及びおよそ125〜150℃の温度を使用する。このベンチテストでは、摩擦性能は、生成された第2ストライベック曲線下総面積として測定される。総面積値が低いほど、摩擦性能がより良好である。
【表1】
【0099】
乗用車エンジン油中に使用したとき、本発明の摩擦調整剤(例1)を配合した潤滑油組成物は、公知の混合ホウ酸エステルを配合した潤滑油組成物(比較例A)よりも良好な摩擦低減を有した。
【表2】
【0100】
表2は、ヘビーデューティーディーゼルエンジン油中に使用したとき、本発明の摩擦調整剤(例3)を配合した潤滑油組成物が、公知の混合ホウ酸エステル(比較例B及びC)を配合した潤滑油組成物より良好な摩擦低減を有することを示す。
【0101】
(比較例I)
多窒素アミドグリセロールボラート
調製:
フラスコに、イソステアリン酸5.2グラム、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン二塩酸塩4グラム及びK
2CO
32.5gを、それぞれ、1.0:1.0:1.0当量で仕込んだ。その混合物を150℃に加熱し、水冷却器及び窒素ブランケット下で一夜保持した。その反応混合物を次いで酢酸エチルで希釈し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターにかけて、生じた生成物を得た。
【0102】
(例9)
フラスコに、例8における生成物2g、ホウ酸0.22g及びグリセロール0.33gを、それぞれ、1.0:0.75:0.75当量で仕込んだ。その混合物を110℃に加熱し、窒素ブランケット下で3時間保持した。反応の終了時点で、その生成物を収集し、ミニトラクション摩擦試験機で分析した。
【0103】
比較例I及び例9をMTMで評価した。結果を表3にまとめる。
【表3】
【0104】
(例10)
フラスコに、Ethoduomeen T/13 50.76グラム、ホウ酸3.35グラム、及びグリセロール5.04グラムを、それぞれ、1.0:0.5:0.5当量で仕込んだ。その混合物を110℃に加熱し、家庭用電気掃除機による減圧及び窒素ブランケット下で3時間保持した。ディーンスタークトラップを使用して、水を収集した。反応の終了時点で、その生成物をMTMで評価した。
【0105】
EthoduomeenはAkzo Nobelから購入することができ、以下の構造を有する:
【化8】
【0106】
Ethoduomeen T/13(比較例10)もMTMで評価した。
【表4】
【0107】
Mazdaスクリーナー
例2〜4及び比較例Dにおいて調製した潤滑油添加剤を、Mazdaスクリーナーで燃料節約特性について評価した。
【0108】
配合された潤滑油組成物は全て、摩擦調整剤を除いて、分散剤、清浄剤、亜鉛ジアルキルジチオホスファート、抗酸化剤、ポリメタクリラート流動点降下剤、及びオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、同一の量の添加剤(「ベースライン添加剤パッケージ」)を含有した。
【0109】
このベースライン配合物に本発明及び比較例の摩擦調整剤を、0.5重量%のトップトリートとして添加した例4を除き、1重量%のトップトリートとして添加した。
【表5】
【0110】
異なる有機摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物の燃料節約性能を評価した。V−6 2.5Lエンジンを、1400回転/分の回転速度及び約107〜120℃の温度で運転するよう調整した。最初に3回の高洗浄油フラッシュを20分間ずつエンジン中に通した。次いで摩擦調整剤を含まないベースライン潤滑剤配合物を含有する潤滑剤でエンジンを2時間運転した。2時間後、ベースライン添加剤パッケージを含有する潤滑油30グラムを0.5重量%の摩擦調整剤でトップ処理して、特別に適合したオイルフィルキャップからエンジンに加えた。エンジンを2時間安定化させた。
【0111】
正味燃料消費率(BSFC:brake specific fuel consumption)を、トップ処理した潤滑油組成物の添加前の1時間の期間についてBSFCを平均化し、トップ処理した潤滑油組成物の添加直後の2時間の期間についてBSFCを平均化することにより評価した。結果を、トップ処理した潤滑油組成物の添加前の1時間のBSFCと、トップ処理した潤滑油組成物の添加後の2時間のBSFCの間のBSFCの変化として報告する。結果を2回の運転の平均として報告する。負の値が大きいほど燃料節約の利益は高い。この評価の結果を下表に示す。
【表6】
【0112】
混合ホウ酸エステル中の成分間の比を変動させることで、燃料節約性が変化することに着目することは興味深い。もしも1%のトリート率で測定したら、例4が全体で最良の燃料節約を有したであろうと思われる。
【0113】
本発明の混合ホウ酸エステルにより、0.5%及び1%のトリート率でトップ処理された潤滑油組成物は、公知の摩擦調整剤である比較例Dでトップ処理された潤滑油組成物に比べて向上した燃料節約を示す。
【0114】
D12D FE
例1及び3並びに比較例Eで調製した潤滑油添加剤を、本発明の摩擦調整剤及び比較の摩擦調整剤を使用した場合のディーゼルエンジン油における燃料節約の利益について評価した。
【0115】
試験した潤滑油組成物は全て、摩擦調整剤を除いて、分散剤、清浄剤、亜鉛ジアルキルジチオホスファート、抗酸化剤、ポリメタクリラート流動点降下剤、及びオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、同一の量の添加剤(「ベースライン添加剤パッケージ」)を含有した。
【0116】
本発明の2種の摩擦調整剤をベースライン潤滑油組成物に1重量%のトップトリートで添加した。比較の摩擦調整剤をベースライン潤滑油組成物に2重量%のトップトリートで添加した。
【0117】
上述の潤滑油組成物を、Volvo D12D燃料節約(D12DFE)エンジン試験手順(W.van Dam、P.Kleijwegt、M.Torreman、及びG.Parsons「ヘビーデューティーディーゼルエンジンにおける燃料節約向上に対する潤滑剤の寄与(The Lubricant Contribution to Improved Fuel Economy in Heavy Duty Diesel Engines)」SAE Paper 2009−01−2856参照)にしたがって燃料節約性能について試験した。
【表7】
【0118】
D12D FEでは、負の値が大きいほど燃料節約の利益は高い。本発明の摩擦調整剤(例1及び3)が配合された潤滑油組成物は、丘陵地及び平地の両方における燃料節約に関して、グリセロール及びホウ酸と反応させていない、公知の摩擦調整剤であるビス−エトキシ牛脂アミン(比較例E)が配合された潤滑油組成物に比べ顕著な向上を示す。